説明

圧電発振器用オフセット回路、圧電発振器、及び圧電発振器の温度補償方法

【課題】圧電発振器用オフセット回路、圧電発振器、圧電発振器の温度補償方法を提供する。
【解決手段】圧電振動子12の発振周波数の温度特性に対応した温度補償電圧64により発振信号66の発振周波数の温度補償を行う発振回路14と、圧電振動子12の温度に対応した検出電圧62を出力する温度センサー16と、温度補償電圧発生回路18との間に介装され、発振周波数の温度の上昇時及び下降時の温度特性にそれぞれ対応して、検出電圧62をオフセットすることにより温度補償電圧64を温度方向にオフセットする第1のオフセット回路46と、温度補償電圧発生回路18と発振回路14との間に介装され、発振周波数の温度の上昇時及び下降時の温度特性にそれぞれ対応して、温度補償電圧64を電圧方向にオフセットする第2のオフセット回路54とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子を発振させる温度補償型発振器(TCXO)を構成し温度補償電圧を出力する圧電発振器オフセット回路及びこれを組み込んだ圧電発振器において、特に圧電振動子のヒステリシス特性に対応した温度補償電圧を出力可能な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から水晶振動子と増幅回路を組み合わせた水晶発振器において、温度に対する発振周波数の安定度が求められる場合には温度補償回路を付加した温度補償型水晶発振器(TCXO)が用いられ、最近では携帯端末、携帯端末の基地局、GPS受信機等広く利用されている。
【0003】
図10に従来技術に係る温度補償型発振器の回路図を示す。特許文献1においては、図10に示すように、温度変化に対して1次関数的に出力が変化する温度検出回路102と、入力された温度検出回路102の出力に基づいて近似3次曲線電圧を出力する近似3次曲線発生回路104、近似3次曲線電圧の増幅率を調整して出力する第1のプログラマブルゲイン増幅器106、前記温度検回路102から分岐して接続され、入力された温度検出回路102の出力の増幅率を調整して出力する第2のプログラマブルゲイン増幅器108と、定電圧発生回路110と、入力された前記定電圧発生回路110からの出力の増幅率を調整して出力する第3のプログラマブルゲイン増幅器112と、前記第1、第2、第3のプログラマブルゲイン増幅器106、108、112を並列に接続し、前記第1、第2、第3のプログラマブルゲイン増幅器106、108、112からの出力を加算して温度補償電圧を出力する加算回路114と、入力された前記温度補償電圧により発振周波数の温度補償を行う電圧制御型水晶発振回路116(VCXO)と、を有する温度補償型発振器100(TCXO)が開示されている。
【0004】
ここで第1のプログラマブルゲイン増幅器106は3次の温度補償電圧、第2のプログラマブルゲイン増幅器108は1次の温度補償電圧、第3のプログラマブルゲイン増幅器112は0次の温度補償電圧(オフセット電圧)を出力しており、電圧制御型水晶発振回路116内のATカット水晶振動子の温度補償を温度変化に対して連続的に行うことができ、温度変化に対して安定した周波数特性を実現できる。ところで上述の第1、第2、第3のプログラマブルゲイン増幅器106、108、112の増幅率は、製造検査工程時に取得するものであり、製造時のスループットの観点から、温度上昇時、または温度下降時のいずれか一方に温度変化した際に発振周波数数が基準周波数となるように調整されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−55624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、水晶振動子の周波数温度特性は、ヒステリシス特性を有している。ヒステリシス特性を有するとは、温度上昇時と下降時において水晶振動子の温度依存性が異なることを意味する。この原因は、温度変化に対する水晶振動子の歪み応力の変化が実際の温度変化に追従できないことや、発振器中の支持構造・接着剤・溶着合金・電極等の熱歪変化等によるもので、水晶振動子を小型化するほど顕著に現れる。
【0007】
さらに、上述のGPS機能を搭載した携帯電話端末などの高精度の電子機器の分野においては、周波数偏差(Δf/f)の許容範囲が非常に狭く、例えば、−30℃〜85℃の温度範囲では周波数偏差(Δf/f)は±0.5ppm以内であることが要求される。
【0008】
そのため、従来のように、温度上昇時、または温度下降時のどちらか一方に温度変化した際の増幅率を取得する方法では、一方向の増幅率しか保存されていないため、増幅率を取得する際と逆方向に温度が変化した場合、システムとして周波数補正をかけてもヒステリシス特性に起因する発振周波数の差分についてはそのまま補正誤差として残ることになる。したがって、これが原因となって、測位にかかる時間が長くなり、結果的に測位誤差が生じたり、GPS衛星との同調が不調となる虞がある、といった問題があった。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点に着目し、圧電振動子の発振周波数のヒステリシス特性の影響を小さくして、安定した発振周波数で発振可能な圧電発振器用オフセット回路、圧電発振器、及び圧電発振器の温度補償方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1]圧電振動子を発振させて発振信号を出力し、入力される前記圧電振動子の発振周波数の温度特性に対応した温度補償電圧により前記発振信号の発振周波数の温度補償を行う発振回路と、前記圧電振動子の温度に対応した検出電圧を出力する温度検出手段と、前記発振回路と前記温度検出手段との間に介装され、前記温度補償電圧を前記検出電圧に対応して出力する温度補償電圧発生回路と、を有する圧電発振器に取り付けられた圧電発振器用オフセット回路であって、前記温度検出手段と前記温度補償電圧発生回路との間に介装され、前記発振周波数の温度の上昇時及び下降時の温度特性にそれぞれ対応して、前記検出電圧をオフセットすることにより前記温度補償電圧を温度方向にオフセットする第1のオフセット回路と、前記温度補償電圧発生回路と前記発振回路との間に介装され、前記発振周波数の温度の上昇時及び下降時の温度特性にそれぞれ対応して、前記温度補償電圧を電圧方向にオフセットする第2のオフセット回路と、を有することを特徴とする圧電発振器用オフセット回路。
【0011】
上記構成により、第1のオフセット回路を介して入力された検出電圧に基づいて温度補償電圧発生回路から出力された温度補償電圧は、第1のオフセット回路における前記検出電圧のオフセット量だけ温度方向にシフトする。さらに第2のオフセット選択回路から出力された温度補償電圧は第2のオフセット回路における前記温度補償電圧のオフセット量だけ電圧方向にシフトする。よって、シフト後の温度補償電圧はシフト前の温度補償電圧と高温領域と低温領域とで互いに接し、高温領域と低温領域との間にシフト前の温度補償電圧とシフト後の温度補償電圧とに囲まれた領域が発生する。これにより圧電振動子のヒステリシス特性と極めて類似した温度特性を得ることができる。したがって一の温度特性を有する温度補償電圧を圧電振動子の温度の上昇時及び下降時の圧電振動子の発振周波数の温度特性に対応させてシフトさせ、圧電振動子のヒステリシス特性に対応した温度補償が可能な圧電発振器用オフセット回路となる。
【0012】
[適用例2]前記検出電圧の上昇・下降を検出して前記圧電振動子の温度の上昇及び下降を判定する判定信号を出力する判定回路を有し、前記温度補償電圧発生回路は、前記温度補償電圧を前記圧電振動子の温度の上昇時及び下降時のいずれか一方の温度特性に対応して出力し、前記第1のオフセット回路は、前記一方の温度特性の反対の他方の温度特性に対応した前記検出電圧のオフセット量が設定され、前記判定信号に基づいて前記検出電圧を前記検出電圧のオフセット量だけオフセットし、前記第2のオフセット回路は、前記他方の温度特性に対応した前記温度補償電圧のオフセット量が設定され、前記判定信号に基づいて入力した前記温度補償電圧を前記温度補償電圧のオフセット量だけオフセットすることを特徴とする適用例1に記載の圧電発振器用オフセット回路。
【0013】
上記構成において、圧電振動子の温度の上昇時及び下降時のいずれか一方においてオフセット量を一定量とし他方においてゼロに設定することができる。よって前記一方の温度特性に合わせて温度補償電圧発生回路に入力する温度係数を合わせることにより、温度補償を高精度に行うことができる。また前記一方の場合には第1のオフセット回路及び第2のオフセット選択回路を作動させずに検出電圧及び温度補償電圧を後段に通過させる構成が可能となる。したがって第1のオフセット回路及び第2のオフセット選択回路は圧電振動子の温度の上昇時及び下降時のいずれか一方のオフセット量を実現する構成が不要となり、構成を簡略化してコストを抑制することが可能な圧電発振器用オフセット回路となる。
【0014】
[適用例3]前記検出電圧及び前記温度補償電圧に設定されたオフセット量は、前記圧電振動子の温度の上昇時の設定最低温度と設定最高温度、及び前記圧電振動子の温度の下降時の基準温度における温度補償電圧において、前記オフセット量によって生じる電圧方向の差分の総和が最小となるように、または前記圧電振動子の温度の下降時の設定最低温度と設定最高温度、及び前記圧電振動子の温度の上昇時の基準温度の温度補償電圧において、前記オフセット量によって生じる電圧方向の差分の総和が最小となるように、それぞれ算出されたことを特徴とする適用例2に記載の圧電発振器用オフセット回路。
【0015】
上記構成により、設定最低温度を下限とし、設定最高温度を上限とした設定温度範囲において圧電振動子のヒステリシス特性に高精度に対応した温度補償電圧を出力することが可能な圧電発振器用オフセット回路となる。
【0016】
[適用例4]適用例1乃至3のいずれか1例に記載の圧電発振器用オフセット回路を、前記圧電発振器に組みこんで形成したことを特徴とする圧電発振器。
【0017】
上記構成により、一の温度特性を有する温度補償電圧を圧電振動子の温度の上昇時及び下降時の圧電振動子の発振周波数の温度特性に対応させてシフトさせ、圧電振動子のヒステリシス特性に対応した温度補償が可能な圧電発振器となる。
【0018】
[適用例5]圧電振動子を発振させて発振信号を出力し、入力される前記圧電振動子の発振周波数の温度特性に対応した温度補償電圧により前記発振信号の発振周波数の温度補償を行う発振回路と、前記圧電振動子の温度に対応した検出電圧を出力する温度検出手段と、前記発振回路と前記温度手段との間に介装され、前記温度補償電圧を前記検出電圧に対応して出力する温度補償電圧発生回路と、を有する圧電発振器の温度補償方法であって、前記圧電振動子の温度の上昇時及び下降時の前記発振周波数の温度特性にそれぞれ対応して前記温度補償電圧を電圧方向にオフセットするとともに、前記圧電振動子の温度の上昇時及び下降時の前記発振周波数の温度特性にそれぞれ対応して前記検出電圧をオフセットすることにより前記温度補償電圧を温度方向にオフセットすることを特徴とする圧電発振器の温度補償方法。
【0019】
上記方法により、温度補償電圧発生回路に入力される温度補償電圧は、前記検出電圧のオフセット量だけ温度方向にシフトする。さらに温度補償電圧発生回路から出力された温度補償電圧は前記温度補償電圧のオフセット量だけ電圧方向にシフトする。よって、シフト後の温度補償電圧はシフト前の温度補償電圧と高温領域と低温領域とで互いに接し、高温領域と低温領域との間にシフト前の温度補償電圧とシフト後の温度補償電圧とに囲まれた領域が発生する。これにより圧電振動子のヒステリシス特性と極めて類似した温度特性を得ることができる。したがって一の温度特性を有する温度補償電圧を圧電振動子の温度の上昇時及び下降時の圧電振動子の発振周波数の温度特性に対応させてシフトさせ、圧電振動子のヒステリシス特性に対応した温度補償が可能となる。
【0020】
[適用例6]前記温度補償電圧発生回路は、前記検出電圧に基づいて前記圧電振動子の温度の上昇時及び下降時のいずれか一方の温度特性を有する電圧を前記発振回路に出力するとともに、前記検出電圧の上昇・下降を検出し前記圧電振動子の温度の上昇及び下降を判定する判定信号を出力し、前記温度補償電圧を、前記判定信号に基づいて前記一方の温度特性の反対の他方の温度特性に対応して設定された前記温度補償電圧のオフセット量だけオフセットし、前記検出電圧を、前記判定信号に基づいて前記他方の温度特性に対応して設定された前記検出電圧のオフセット量だけオフセットすることを特徴とする適用例5に記載の圧電発振器の温度補償方法。
【0021】
上記方法において、圧電振動子の温度の上昇時及び下降時のいずれか一方においてオフセット量を一定量とし他方においてゼロに設定することになる。よって前記一方の温度特性に合わせた温度補償電圧発生回路に基づいて温度補償を高精度に行うことができる。
【0022】
[適用例7]前記検出電圧及び前記温度補償電圧に設定されたオフセット量は、前記圧電振動子の温度の上昇時の設定最低温度と設定最高温度、及び前記圧電振動子の温度の下降時の基準温度における温度補償電圧において、前記オフセット量によって生じる電圧方向の差分の総和が最小となるように、または前記圧電振動子の温度の下降時の設定最低温度と設定最高温度、及び前記圧電振動子の温度の上昇時の基準温度における温度補償電圧において、前記オフセット量によって生じる電圧方向の差分の総和が最小となるように、それぞれ算出したことを特徴とする適用例6に記載の圧電発振器の温度補償方法。
【0023】
上記方法により、設定最低温度を下限とし、設定最高温度を上限とした設定温度範囲において圧電振動子のヒステリシス特性に高精度に対応した温度補償電圧を出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の温度補償回路の回路図である。
【図2】本実施形態の判定回路の回路図である。
【図3】本実施形態の第1のオフセット回路の回路図である。
【図4】本実施形態の第2のオフセット回路の回路図である。
【図5】本実施形態の温度補償回路の温度補償の概念を示し、図5(a)は圧電振動子の発振周波数の温度変化に対するヒステリシス特性を示す図、図5(b)は、圧電振動子の発振周波数の温度上昇時の温度特性(f)と温度下降時の温度特性(f)の周波数方向の差分(f−f、ヒステリシス量)を示す図、図5(c)は圧電振動子の発振周波数の温度上昇時の温度特性(f)と、前記温度特性について温度方向及び周波数方向に平行移動させた温度特性(f’)の図である。
【図6】温度補償電圧の温度方向のオフセット量及び電圧方向のオフセット量の算出工程のフロー図である。
【図7】本実施形態の温度補償回路の作用効果を示す図である。
【図8】本実施形態の第1のオフセット回路の変形例の回路図である。
【図9】本実施形態の第2のオフセット回路の変形例の回路図である。
【図10】従来技術に係る温度補償型発振器の回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0026】
図1に本実施形態に係る圧電発振器用オフセット回路を組み込んだ圧電発振器の回路図を示す。本実施形態に係る圧電発振器用オフセット回路は、圧電振動子12を発振させて発振信号66を出力し、入力される前記圧電振動子12の発振周波数の温度特性に対応した温度補償電圧64により前記発振信号66の発振周波数の温度補償を行う発振回路14と、前記圧電振動子12の温度に対応した検出電圧62を出力する温度検出手段(温度センサー16)と、前記発振回路14と前記温度検出手段(温度センサー16)との間に介装され、前記温度補償電圧64を前記検出電圧62に対応して出力する温度補償電圧発生回路18と、を有する圧電発振器10に取り付けられた圧電発振器用オフセット回路であって、前記温度検出手段(温度センサー16)と前記温度補償電圧発生回路18との間に介装され、前記発振周波数の温度の上昇時及び下降時の温度特性にそれぞれ対応して、前記検出電圧62をオフセットすることにより前記温度補償電圧64を温度方向にオフセットする第1のオフセット回路46と、前記温度補償電圧発生回路18と前記発振回路14との間に介装され、前記発振周波数の温度の上昇時及び下降時の温度特性にそれぞれ対応して、前記温度補償電圧64を電圧方向にオフセットする第2のオフセット回路54と、を有するものである。
【0027】
また、前記温度補償電圧発生回路18は、前記温度補償電圧64を前記圧電振動子12の温度の上昇時及び下降時のいずれか一方の温度特性に対応して出力し、前記圧電発振器用オフセット回路は、前記検出電圧の上昇・下降を検出し圧電振動子12の温度の上昇及び下降を判定する判定信号68を出力する判定回路32を有し、前記第1のオフセット回路46は、前記一方の温度特性の反対の他方の温度特性に対応した前記検出電圧62のオフセット量が設定され、前記判定信号68に基づいて前記検出電圧62を前記検出電圧62のオフセット量だけオフセットし、前記第2のオフセット回路54は、前記他方の温度特性に対応した前記温度補償電圧64のオフセット量が設定され、前記判定信号68に基づいて入力した前記温度補償電圧64を前記温度補償電圧64のオフセット量だけオフセットするものである。
【0028】
したがって本実施形態に係る圧電発振器の温度補償方法は、圧電振動子12を発振させて発振信号66を出力し、入力される前記圧電振動子12の発振周波数の温度特性に対応した温度補償電圧64により前記発振信号66の発振周波数の温度補償を行う発振回路14と、前記圧電振動子12の温度に対応した検出電圧62を出力する温度検出手段となる温度センサー16との間に介装され、前記温度補償電圧64を前記検出電圧62に対応して出力する圧電発振器10の温度補償方法であって、圧電振動子12の温度の上昇時及び下降時の前記発振周波数の温度特性にそれぞれ対応して、前記温度補償電圧64を電圧方向にオフセットするとともに、前記検出電圧62をオフセットすることにより前記温度補償電圧64を温度方向にオフセットするものである。
【0029】
また、前記温度補償電圧発生回路18は、前記検出電圧62に基づいて前記圧電振動子12の温度の上昇時及び下降時のいずれか一方の温度特性を有する電圧を前記発振回路14に出力するとともに、前記検出電圧62の上昇・下降を検出し前記圧電振動子12の温度の上昇及び下降を判定する判定信号68を出力し、前記温度補償電圧64を、前記判定信号68に基づいて前記一方の温度特性の反対の他方の温度特性に対応して設定された前記温度補償電圧64のオフセット量だけオフセットし、前記検出電圧62を、前記判定信号68に基づいて前記他方の温度特性に対応して設定された前記検出電圧62のオフセット量だけオフセットするものである。
【0030】
図1に示すように圧電発振器10においては、温度検出手段となる温度センサー16、第1のオフセット回路46、温度補償電圧発生回路18、発振回路14に接続する第2のオフセット回路54の順に直列に接続されている。また判定回路32は、入力側が温度センサー16に接続され、出力側が第1のオフセット回路46及び第2のオフセット回路54に接続されている。
【0031】
圧電振動子12は、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の圧電材料から形成され、水晶であれば周波数温度特性に優れるATカット振動子が望ましい。このようなATカット水晶振動子は、発振回路14から交流電圧を受けて、厚みすべり振動により所定の発振周波数で発振することができる。このATカットによる厚みすべり振動を用いた圧電振動子の発振周波数は、基準温度(25℃近辺)を中心として3次曲線となる温度特性を有している。
【0032】
発振回路14は、圧電振動子12を発振源とする例えばコルピッツ型の発振回路であるとともに、温度補償電圧64を入力して圧電振動子12の発振周波数の温度補償を行うことができる。
【0033】
温度センサー16は、ダイオード構造を有しており、順方向電流を流し、温度によって変化するダイオードの端子間電位であるアナログの検出電圧62を第1のオフセット回路46及び判定回路32に出力するものである。ここで検出電圧62は温度上昇とともに1次関数的に減少し、出力される検出電圧62は測定される温度に対応したものとなっている。なお、温度センサー16は圧電振動子12に隣接して配置することが望ましい。これにより圧電振動子12の温度を測定誤差を抑制して測定することができ、温度補償電圧64の出力誤差を抑制することができる。
【0034】
温度補償電圧発生回路18は、4次電圧発生回路20、3次電圧発生回路22、2次電圧発生回路24、1次電圧発生回路26、0次電圧発生回路28、加算回路30により構成されている。
【0035】
本実施形態のように圧電振動子12がATカット水晶振動子である場合、圧電振動子12の発振周波数の温度特性Δf/fは以下の近似曲線より表わすことができる。
【数1】

【0036】
ここでfは基準温度(25℃)における発振周波数(基準周波数)、Tは基準温度、Aは4次の温度係数、Bは3次の温度係数、Cは2次の温度係数、Dは1次の温度係数、Eは0次の温度係数(オフセット係数)である。よってこのような温度特性を有する発振回路14(圧電振動子12)の温度補償を行うために、温度補償電圧64(Vh、後述の理想補償電圧も同様)は、以下のような温度特性を有する必要がある。
【数2】

ここで、Vc、Vc、Vc、Vc、Vcは、それぞれ数式1の−A、−B、−C、−D、−Eに対応する。
【0037】
よって4次電圧発生回路20は付属する記憶領域(不図示)にVcの情報が記憶され、圧電振動子12の温度、すなわち検出電圧62(温度T)から基準温度における検出電圧(温度T)との差分(T−T)の4乗とVcの情報との積に対応する電圧を出力する。3次電圧発生回路22は付属する記憶領域(不図示)にVcの情報が記憶され、前記差分の3乗とVcの情報の積に対応する電圧を出力する。2次電圧発生回路24は付属する記憶領域(不図示)にVcの情報が記憶され、前記差分の2乗とVcの情報の積に対応する電圧を出力する。1次電圧発生回路26は付属する記憶領域(不図示)にVcの情報が記憶され、前記差分とVcの情報の積に対応する電圧を出力する。0次電圧発生回路28は付属する記憶領域(不図示)にVcの情報が記憶され、Vcの情報に対応する電圧を出力する。さらにこれらの電圧は加算回路30において加算され温度補償電圧64が生成される。
【0038】
こうして生成された温度補償電圧64を発振回路14に出力することにより、発振回路14は使用温度範囲内の任意の温度において基準周波数とほぼ同一の発振周波数の発振信号66を出力することができる。なお本実施形態において上述の各温度係数は、圧電振動子12の温度を上昇させたときの圧電振動子12の発振周波数の温度特性に対応するように算出されている。また、これらの温度係数は後述の工程により演算される。さらに、A及びCは、B、D、Eに比べて値が小さいので4次電圧発生回路20及び2次電圧発生回路24は省略してもよい。
【0039】
図2に判定回路32の回路図を示す。判定回路32は、温度センサー16から出力される検出電圧62の上昇・下降から圧電振動子12の温度の上昇・下降を判定するものである。判定回路32は検出電圧62の上昇時は圧電振動子12の温度が下降すると判定し、これに伴う判定信号を出力する。逆に検出電圧62の下降時には圧電振動子12の温度が上昇する判定を行ない、これに伴う判定信号68を出力する。
【0040】
判定回路32は、分周器34、ADコンバータ36、遅延回路38、DAコンバータ40、ヒステリシスコンパレータ42、1ビットDAコンバータ44から構成されている。
分周器34は、例えば発振回路14からの発振信号66を分周して分周して得られるサンプリングクロックをADコンバータ36に出力するものである。
【0041】
ADコンバータ36は、温度センサー16から出力されるアナログの検出電圧62をサンプリングクロックの周期ごとにデジタルデータに変換して遅延回路38に出力するものである。
【0042】
遅延回路38にはデジタル化された検出電圧62が入力される。そして遅延回路38は、次回のサンプリングに係るデジタル化された検出電圧62が入力されるまで、前回のサンプリングに係るデジタル化された検出電圧62を過去の検出電圧62aとして保持するとともにDAコンバータ40に出力することができる。
【0043】
ヒステリシスコンパレータ42は、DAコンバータにおいてアナログ化されて出力された過去の検出電圧62aと現在の検出電圧62とを比較し、その大小関係を低電圧L及び高電圧Hにより出力するものである。ヒステリシスコンパレータ42は、プラス側の差動入力42aがDAコンバータ40に抵抗R1を介して接続され、マイナス側の差動入力42bが温度センサー16に接続されている。またプラス側の差動入力42aは出力42cに抵抗R2を介して接続され正帰還回路を形成している。よってマイナス側の差動入力42bに接続された現在の検出電圧62は過去の検出電圧62aに対してヒステリシス特性を有している。これによりヒステリシスコンパレータ42の出力42cが温度の微妙な揺らぎに対して敏感に反応しないようにしている。ここでR2=20×R1とすることにより現在の検出電圧62は過去の検出電圧62aに対して電圧比で5%の不感帯を形成している。
【0044】
ここで、圧電振動子12の温度が下降する場合は、現在の検出電圧62は過去の検出電圧62aよりも低くなるので出力はHとなる。逆に圧電振動子12の温度が上昇する場合は、現在の検出電圧62は過去の検出電圧62aよりも高くなるので出力はLとなる。
【0045】
1ビットDAコンバータ44は、ヒステリシスコンパレータ42の出力42cに接続され、出力42cを後述の第1のオフセット回路46、及び第2のオフセット回路54で用いる電圧に変換するものである。本実施形態においては電圧Hを1.6Vに変換し、電圧Lを0.9Vに変換している。この2つの電圧が判定信号68となり、1.6Vの場合が圧電振動子12の温度の上昇を示し、0.9Vの場合が圧電振動子12の温度の下降を示すことになる。
【0046】
図3に第1のオフセット回路46の回路図を示す。第1のオフセット回路46は、判定信号68と参照電圧(Vref:1.2V)との差動増幅を行なう差動増幅回路48と、参照電圧側の差動増幅に伴う電流に対応して電流を発生させるカレントミラー回路50と、検出電圧62を基準としカレントミラー回路50側の電圧を反転増幅することにより前記検出電圧62をマイナス側にオフセットするオペアンプ52と、を有する。
【0047】
差動増幅回路は、定電流源48aと、ゲートが判定信号68側に接続されたNchトランジスタ48bと、ゲートが参照電圧側に接続されたNchトランジスタ48cと、ゲート・ドレイン間をショートしダイオードとして作用するPchトランジスタ48d、48eと、を有する。ここで、判定信号68の電圧が1.6V、すなわち圧電振動子12の温度が上昇している場合は、差動増幅回路56において判定信号68側に接続されたNchトランジスタ48bが導通する。逆に判定信号68の電圧が0.9Vの場合、すなわち圧電振動子12の温度が下降している場合は、参照電圧側に接続されたNchトランジスタ48cが導通する。よってカレントミラー回路50は圧電振動子12の温度が下降している場合にオペアンプ52に電流50aを出力する。
【0048】
オペアンプ52は、反転増幅の増幅比を調整する可変抵抗52aと、可変抵抗52aの抵抗値の情報を記憶するメモリ52bと、メモリ52bに記憶された抵抗値の情報をデコードして可変抵抗52aの抵抗値を調整するデコーダ(不図示)とを有する。ここで圧電振動子12の温度が上昇しているときは、カレントミラー回路50から出力される電流50aはないので、オペアンプ52はバッファ回路として機能する。このため、オペアンプ52の出力(検出電圧62b)は入力される検出電圧62と同じとなり、検出電圧62bのオフセットは行なわれない。一方、圧電振動子12の温度が下降しているときは、カレントミラー回路50からの電流50aが可変抵抗52aに流れるのでオペアンプ52の出力(検出電圧62b)には一定量の電圧降下が発生する。この電圧降下が検出電圧62bに対するオフセット量となる。ここで検出電圧62は電圧方向にオフセットされているが、検出電圧62は1次関数的な温度特性を有しているため、検出電圧62bは見かけ上温度方向にオフセットされることになる。よって、オフセット量は可変抵抗52aの抵抗値により決定されるが、圧電振動子12の発振周波数のヒステリシス特性に対応して温度補償電圧64を温度方向に後述のΔTだけシフトさせる量に設計されている。
【0049】
図4に第2のオフセット回路54の回路図を示す。第2のオフセット回路54は、判定信号68と参照電圧(Vref:1.2V)との差動増幅を行なう差動増幅回路56と、参照電圧側の差動増幅に伴う電流に対応して電流を発生させるカレントミラー回路58と、温度補償電圧64を基準としカレントミラー回路58側の電圧を反転増幅することにより前記温度補償電圧64をマイナス側にオフセットするオペアンプ60と、を有する。
【0050】
差動増幅回路56は、定電流源56aと、ゲートが判定信号68側に接続されたNchトランジスタ56bと、ゲートが参照電圧側に接続されたNchトランジスタ56cと、ゲート・ドレイン間をショートしダイオードとして作用するPchトランジスタ56d、56eと、を有する。ここで、判定信号68の電圧が1.6V、すなわち圧電振動子12の温度が上昇している場合は、差動増幅回路56において判定信号68側に接続されたNchトランジスタ56bが導通する。逆に判定信号68の電圧が0.9Vの場合、すなわち圧電振動子12の温度が下降している場合は、参照電圧側に接続されたNchトランジスタ56cが導通する。よってカレントミラー回路58は圧電振動子12の温度が下降している場合にオペアンプ60に電流58aを出力する。
【0051】
オペアンプ60は、反転増幅の増幅比を調整する可変抵抗60aと、可変抵抗60aの抵抗値の情報を記憶するメモリ60bと、メモリ60bに記憶された抵抗値の情報をデコードして可変抵抗60aの抵抗値を調整するデコーダ(不図示)とを有する。ここで圧電振動子12の温度が上昇しているときは、カレントミラー回路58から出力される電流58aはなく、オペアンプ60はバッファ回路として機能する。このため、オペアンプ60の出力(温度補償電圧64a)は入力される温度補償電圧64と同じとなり、温度補償電圧64aのオフセットは行なわれない。一方、圧電振動子12の温度が下降しているときは、カレントミラー回路58からの電流58aが可変抵抗60aに流れるので、オペアンプ60の出力(温度補償電圧64a)には一定量の電圧降下が発生する。この電圧降下が温度補償電圧64aに対するオフセット量となる。このオフセット量は可変抵抗60aの抵抗値により決定されるが、圧電振動子12の発振周波数のヒステリシス特性に対応して温度補償電圧64を電圧方向に後述のΔVだけシフトさせる量に設計されている。
【0052】
本実施形態において,温度補償電圧64は圧電振動子12の温度の上昇時の圧電振動子12の発振周波数の温度特性に対応して生成される。よって第1のオフセット回路46及び第2のオフセット回路54では、温度上昇時のオフセット量はゼロ、すなわちオフセットを発生させない状態とし、温度下降時のオフセット量のみそれぞれ一定量与える構成となっている。
【0053】
図5に本実施形態の温度補償回路による温度補償の概念を示す。図5(a)は圧電振動子の発振周波数の温度変化に対するヒステリシス特性を示す図である。図5(b)は、圧電振動子の発振周波数の温度上昇時の温度特性(f)と温度下降時の温度特性(f)の周波数方向の差分(f−f、ヒステリシス量)を示す図である。図5(c)は圧電振動子の発振周波数の温度上昇時の温度特性(f)と、前記温度特性について温度方向及び周波数方向に平行移動させた温度特性(f’)の図である。
【0054】
本実施形態の圧電発振器10における温度補償について説明する。図5(a)に示すように、ATカット水晶振動子の発振周波数の温度上昇時の温度特性(f)と温度下降時の温度特性(f)が一致しないため、温度変化に対してヒステリシス特性を有している。このとき、図5(b)に示すように圧電振動子の発振周波数の温度上昇時の温度特性(f)と温度下降時の温度特性(f)の周波数方向の差分(f−f、ヒステリシス量)をとると2次関数的な形状を有していることがわかる。この差分は基準温度で最も大きくなり、低温域及び高温域でほぼゼロとなる。一方本願発明者は、図5(c)に示すように、温度上昇時の温度特性(f)を温度方向及び周波数方向に一定量平行移動させた温度特性(f’)を描くと図5(a)に類似したヒステリシス特性が得られることがわかった。さらに平行移動前の温度特性(f)と平行移動後の温度特性(f’)の周波数方向の差分をとると上述同様に2次関数的な形状を有していることが分かった。そこで本実施形態では温度上昇時の圧電振動子12の発振周波数の温度特性に対応した温度補償電圧64aを温度上昇時の温度補償電圧として用いる。一方、温度下降時において圧電振動子12の発振周波数の温度特性に近似的に対応するように、温度補償電圧64aを温度方向及び電圧方向にそれぞれオフセットさせて用いることとした。そこで、それぞれのオフセット量を以下の工程により求めることとした。
【0055】
図6に温度補償電圧の温度方向のオフセット量及び電圧方向のオフセット量の算出工程のフロー図を示す。温度補償電圧64aの温度方向のオフセット量(ΔT)及び電圧方向のオフセット量(ΔV)の算出は以下のように行なう。
【0056】
まず本実施形態の圧電発振器10が接続される発振回路14の温度補償電圧の入力端子(不図示)に所定の電圧Vhを出力する電圧発生器(不図示)を接続する。そして発振回路14を任意の温度設定が可能なチャンバー(不図示)に収めるとともに、発振回路14により圧電振動子12を発振させる。
【0057】
そしてチャンバー(不図示)の温度、即ち圧電振動子12の温度を上昇させつつ、基準周波数と同じ発振周波数で発振させるようにVhを調整し、これを理想補償電圧として測定する。本実施形態では第1温度点(設定最低温度、例:−25℃)、第2温度点(例:0℃)、第3温度点(基準温度、例:+25℃)、第4温度点(例:+55℃)、第5温度点(設定最高温度、例:+75℃)の順に温度を上昇させ、各温度点において理想補償電圧Vhを測定する。そしてPC等において上述の数式2に各温度点とVhとの関係を入力して連立方程式を形成し、温度係数に対応する係数Vc、Vc、Vc、Vc、Vcを算出する。
【0058】
そして上述同様に、Vcの情報を4次の温度係数の情報として4次電圧発生回路20に付属の記憶領域(不図示)に記憶する。Vcの情報を3次の温度係数の情報として3次電圧発生回路22に付属の記憶領域(不図示)に記憶する。Vc、の情報を2次の温度係数の情報として2次電圧発生回路24に付属の記憶領域(不図示)に記憶する。Vcの情報を1次の温度係数の情報として1次電圧発生回路26に付属の記憶領域(不図示)に記憶する。Vcの情報を0次の温度係数の情報として0次電圧発生回路28に付属の記憶領域(不図示)に記憶する。
【0059】
次に圧電振動子12の温度を+75℃から+25℃(基準温度)に下降させ、温度上昇時の基準温度における基準周波数と同じ発振周波数となるようにVhを調整し、これを理想補償電圧として測定する。
【0060】
ここで、数式2を、温度方向にΔT、電圧方向にΔVだけ平行移動すると電圧Vh’は以下のようになる。
【数3】

【0061】
ここで、温度上昇時の−25℃で測定されたVhをVh、温度下降時の+25℃で測定されたVhをVh、温度上昇時の+75℃で測定されたVhをVhとし、T=−25℃、T=+25℃、T=+75℃とする。そこでPC等において、Vh(k=1、2、3)と数式3との差分、すなわち以下の式を演算して、数式4の値が最小となるようにΔT及びΔVを算出する。
【数4】

【0062】
数式4においては変数がΔTとΔVの2つが存在するので、PC等においてΔVを固定した状態でΔTをスイープ(変化)させて、ΔVをある値に固定した場合の数式4の値の最小値とそのときのΔTを算出する。そしてΔVを一定の範囲(例えば−15mV〜+15mV)で一定の刻み幅でスイープ(変化)させ、スイープごとに固定されたΔVに対応する数式4の値の最小値とΔTを順次求める。そしてΔVの全範囲おいて算出された数式4の値が最小値群の中から最小となる数式4の値の最小値と、そのときのΔVとΔTを抽出する。このようにして算出されたΔTを対応する抵抗値に換算した情報を第1のオフセット回路46のメモリ52bに記憶し、ΔVに対応する抵抗値に換算した情報を第2のオフセット回路54のメモリ60bに記憶する。
【0063】
図7に本実施形態の温度補償回路の作用効果を示す。図7(a)は圧電振動子の温度の上昇時の発振周波数の温度特性に対応した温度補償電圧を用いて温度補償を行った場合のグラフを示す。図7(b)は圧電振動子の温度の上昇時の発振周波数の温度特性に対応した温度補償電圧を温度下降時に温度方向及び電圧方向にシフトさせて温度補償を行った場合のグラフを示す。
【0064】
上記構成に係る圧電発振器10の動作について説明する。図5(a)に示すように、圧電振動子12の発振周波数は温度上昇時及び温度下降時において同一の温度特性を有さずヒステリシス特性を有している。よって図7(a)に示すように、温度補償電圧64を圧電振動子12の温度の上昇時の発振周波数の温度特性に対応して生成した場合、圧電振動子12の温度を上昇させたときの温度補償は良好に行われている。しかし逆に圧電振動子12の温度を下降させたときの温度補償は良好に行われず、使用温度領域において500ppb程度の周波数偏差が発生する。本実施形態が想定するGPS機能を有する機器にこのような周波数偏差が生じると、従来技術で述べたように測位性能に悪影響を及ぼすことになる。
【0065】
一方、図7(b)に示すように、本実施形態の圧電発振器10においては、温度補償電圧64(温度補償電圧64a)は圧電振動子12の発振周波数の温度上昇時の温度特性の逆特性となる近似曲線(数式2)による温度特性を有するため、発振回路14から出力される発振信号の温度補償を良好に行うことができる。さらに温度下降時には圧電振動子12の発振周波数の温度下降時の温度特性に対応する温度補償電圧を生成するため、温度補償電圧64を温度方向にΔT、電圧方向にΔVだけシフトさせる。これにより圧電振動子12の発振周波数の温度下降時の温度特性に対応する温度補償電圧64aを近似的に生成している。そして近似的に生成された温度補償電圧64aにより、圧電振動子12の温度が下降時でも温度補償を良好に行うことができる。
【0066】
本実施形態においては温度補償電圧64を圧電振動子12の発振周波数の上昇時の温度特性に対応して生成しているが、逆に下降時の温度特性に対応して生成することが可能である。まず温度補償電圧を求めるため、上述同様に圧電振動子12の温度を+75℃、+55℃、+25℃、0℃、−25℃の順に温度を下げていく。そして各温度において圧電振動子12の発振周波数が、温度下降時の基準温度における圧電振動子12の基準周波数となるように数式2のVhを調整し、これを理想補償電圧として測定する。
【0067】
次に上述同様に数式2におけるVc、Vc、Vc、Vc、Vcの値を算出し、各値を対応する温度補償電圧発生器18に付属する記憶領域(不図示)に記憶させ、温度補償電圧65が出力可能な状態とする。そして圧電振動子12の温度を+25℃に上昇させ、この温度において圧電振動子12の発振周波数が、温度下降時の基準温度における圧電振動子12の基準周波数となるように数式2のVhを調整し、これを理想補償電圧として測定する。そして温度下降時の−25℃、温度上昇時の+25℃、温度下降時の+75℃におけるVhを用いて、上述同様に数式4の値が最小となるようにΔTとΔVを算出する。このようにΔTとΔVを算出した後、ΔTに対応する抵抗値の情報を後述の変形例となる第1のオフセット回路46のメモリ52bに記憶し、ΔVに対応する抵抗値の情報を後述の変形例となる第2のオフセット回路54のメモリ60bに記憶する。
【0068】
図8に第1のオフセット回路の変形例を示す。第1のオフセット回路70は、判定信号68と参照電圧(Vref:1.2V)との差動増幅を行なう差動増幅回路72と、参照電圧側の差動増幅に伴う電流に対応して電流を発生させる第1のカレントミラー回路74と、第1のカレントミラー回路74から出力された電流に対応した引き込み電流76aを発生させる第2のカレントミラー回路76と、検出電圧62を基準とし前記引き込み電流76aに基づいて第2のカレントミラー回路76側の電圧を反転増幅することにより前記検出電圧62をプラス側にオフセットするオペアンプ78と、を有する。
【0069】
差動増幅回路72は、定電流源72aと、ゲートが判定信号68側に接続されたNchトランジスタ72bと、ゲートが参照電圧側に接続されたNchトランジスタ72cと、ゲート・ドレイン間をショートしダイオードとして作用するPchトランジスタ72c、72dと、を有する。ここで、判定信号68の電圧が0.9V、すなわち圧電振動子12の温度が下降している場合は、差動増幅回路72において参照電圧側に接続されたNchトランジスタ72cが導通する。逆に判定信号68の電圧が1.6Vの場合、すなわち圧電振動子12の温度が上昇している場合は、判定信号68側に接続されたNchトランジスタ72bが導通する。よって第1のカレントミラー回路74は圧電振動子12の温度が下降している場合には第2のカレントミラー回路76に電流を出力する。このとき第2のカレントミラー回路76は第1のカレントミラー回路74から出力された電流に対応して引き込み電流76aを発生させる。
【0070】
オペアンプ78は、反転増幅の増幅比を調整する可変抵抗78aと、可変抵抗78aの抵抗値の情報を記憶するメモリ78bと、メモリ78bに記憶された抵抗値の情報をデコードして可変抵抗78aの抵抗値を調整するデコーダ(不図示)とを有する。ここで圧電振動子12の温度が下降しているときは、第2のカレントミラー回路76への引き込み電流76aはないので、オペアンプ78はバッファ回路として機能する。このためオペアンプ78の出力(検出電圧62a)は、入力される検出電圧62と同じとなり、検出電圧62aのオフセットは行なわれない。一方、圧電振動子12の温度が下降しているときは、第2のカレントミラー回路76への引き込み電流76aが可変抵抗78aを介してオペアンプ78の出力から流れる。このためオペアンプ78の出力(検出電圧62c)には一定量の電圧上昇が発生する。この電圧上昇が検出電圧62cに対するオフセット量となる。このオフセット量は可変抵抗78aの抵抗値により決定されるが、圧電振動子12の発振周波数のヒステリシス特性に対応して温度補償電圧65を温度方向に上述のΔTだけシフトさせる量に設計されている。
【0071】
図9に第2のオフセット回路の変形例を示す。第2のオフセット回路80は、判定信号68と参照電圧(Vref:1.2V)との差動増幅を行なう差動増幅回路82と、参照電圧側の差動増幅に伴う電流に対応して電流を発生させる第1のカレントミラー回路84と、第1のカレントミラー回路84から出力された電流に対応した引き込み電流86aを発生させる第2のカレントミラー回路86と、温度補償電圧65を基準とし前記引き込み電流86aに基づいて第2のカレントミラー回路86側の電圧を反転増幅することにより前記温度補償電圧65をプラス側にオフセットするオペアンプ88と、を有する。
【0072】
差動増幅回路82は、定電流源82aと、ゲートが判定信号側に接続されたNchトランジスタ82bと、ゲートが参照電圧側に接続されたNchトランジスタ82cと、ゲート・ドレイン間をショートしダイオードとして作用するPchトランジスタ82d、82eと、を有する。ここで、判定信号68の電圧が0.9V、すなわち圧電振動子12の温度が下降している場合は、差動増幅回路82において参照電圧側に接続されたNchトランジスタ82cが導通する。逆に判定信号68の電圧が1.6Vの場合、すなわち圧電振動子12の温度が上昇している場合は、判定信号68側に接続されたNchトランジスタ82bが導通する。よって第1のカレントミラー回路84は圧電振動子12の温度が下降している場合に第2のカレントミラー回路86に電流を出力する。このとき第2のカレントミラー回路86は第1のカレントミラー回路84から出力された電流に対応して引き込み電流86aを発生させる。
【0073】
オペアンプ88は、反転増幅の増幅比を調整する可変抵抗88aと、可変抵抗88aの抵抗値の情報を記憶するメモリ88bと、メモリ88bに記憶された抵抗値の情報をデコードして可変抵抗88aの抵抗値を調整するデコーダ(不図示)とを有する。ここで圧電振動子12の温度が下降しているときは、第2のカレントミラー回路86に出力する引き込み電流86aはないので、オペアンプ88はバッファ回路として機能する。このためオペアンプ88の出力(温度補償電圧65a)は、入力される温度補償電圧65と同じとなり、温度補償電圧65aのオフセットは行なわれない。一方、圧電振動子12の温度が上昇しているときは、第2のカレントミラー回路86への引き込み電流86aが可変抵抗88aを介してオペアンプ88の出力から流れる。このためオペアンプ88の出力(温度補償電圧65a)には一定量の電圧上昇が発生する。この電圧上昇が温度補償電圧65aに対するオフセット量となる。このオフセット量は可変抵抗88aの抵抗値により決定されるが、圧電振動子12の発振周波数のヒステリシス特性に対応して温度補償電圧65を電圧方向に上述のΔVだけシフトさせる量に設計されている。
【0074】
本実施形態においては、温度補償電圧64、65が、圧電振動子12の温度の上昇時または下降時の発振周波数の温度特性に対応して生成されている。しかし例えば上昇時の温度特性及び下降時の温度特性の中間値となる温度特性に対応した温度補償電圧を生成し、上昇時のΔT、ΔV、下降時のΔT、ΔVを算出する。そして温度上昇時及び温度下降のオフセット量を可変可能な第1、第2のオフセット回路(不図示)のメモリ(不図示)にそれぞれ記憶し、温度の上昇及び下降に対応して検出電圧62及び温度補償電圧のオフセット量を調整するようにしてもよい。
【0075】
また数式4に基づいて演算において、PC等においてΔTを固定した状態でΔVを変化させて、ΔTをある値に固定した場合の数式4の値の最小値とそのときのΔVを算出する。そしてΔTを一定の範囲で一定の刻み幅でスイープ(変化)させ、スイープごとに固定されたΔTに対応する数式4の値の最小値とΔVを順次求める。そしてΔTの全範囲おいて算出された数式4の値が最小値群の中から最小となる数式4の値の最小値と、そのときのΔVとΔTを抽出してもよい。
【0076】
さらに、本実施形態の圧電発振器用オフセット回路を、上述の圧電発振器に組み込むことにより、圧電振動子12のヒステリシス特性に対応した温度補償が可能な圧電発振器10を形成できることは言うまでもない。
【0077】
以上述べたように本実施形態に係る圧電発振器用オフセット回路、圧電発振器の温度補償方法によれば、第1には、第1のオフセット回路46、70を介して入力された検出電圧62に基づいて温度補償電圧発生回路18から出力された温度補償電圧64、65は、第1のオフセット回路46における前記検出電圧62のオフセット量だけ温度方向にシフトする。さらに第2のオフセット選択回路54、80から出力された温度補償電圧64a、65aは第2のオフセット回路54、80における前記温度補償電圧64、65のオフセット量だけ電圧方向にシフトする。よって、シフト後の温度補償電圧64a、65aはシフト前の温度補償電圧64、65と高温領域と低温領域とで互いに接し、高温領域と低温領域との間にシフト前の温度補償電圧64、65とシフト後の温度補償電圧64a、65aとに囲まれた領域が発生する。このため圧電振動子12のヒステリシス特性と極めて類似した温度特性を得ることができる。したがって一の温度特性を有する温度補償電圧64、65を圧電振動子12の温度の上昇時及び下降時の圧電振動子12の発振周波数の温度特性に対応させてシフトさせ、圧電振動子12のヒステリシス特性に対応した温度補償が可能となる。
【0078】
第2には、圧電振動子12の温度の上昇時及び下降時のいずれか一方においてオフセット量を一定量とし他方においてゼロに設定することができる。よって前記一方の温度特性に合わせて温度補償電圧発生回路18に入力する温度係数を合わせることにより、温度補償を高精度に行うことができる。また前記一方の場合には第1のオフセット回路46、70及び第2のオフセット選択回路54、80を作動させずに検出電圧62及び温度補償電圧64、65を後段に通過させる構成が可能となる。したがって第1のオフセット回路46、70及び第2のオフセット選択回路54、80は圧電振動子12の温度の上昇時及び下降時のいずれか一方のオフセット量を実現する構成が不要となり、構成を簡略化してコストを抑制することが可能となる。
【0079】
第3には、前記検出電圧62及び前記温度補償電圧64にそれぞれ設定されたオフセット量(ΔT、ΔV)は、圧電振動子12の温度の上昇時の設定最低温度と設定最高温度、及び圧電振動子12の温度の下降時の基準温度における温度補償電圧64において、前記オフセット量によって生じる電圧方向の差分の総和が最小となるように、または圧電振動子12の温度の下降時の設定最低温度と設定最高温度、及び圧電振動子12の温度の上昇時の基準温度の温度補償電圧65において、前記オフセット量によって生じる電圧方向の差分の総和が最小となるように、それぞれ算出したことにより、設定最低温度を下限とし、設定最高温度を上限とした設定温度範囲において圧電振動子12のヒステリシス特性に高精度に対応した温度補償電圧64、65を出力することが可能な圧電発振器10となる。
【0080】
また本実施形態に係る圧電発振器によれば、一の温度特性を有する温度補償電圧を圧電振動子12の温度の上昇時及び下降時の圧電振動子の発振周波数の温度特性に対応させてシフトさせ、圧電振動子のヒステリシス特性に対応した温度補償が可能な圧電発振器となる。
【符号の説明】
【0081】
10………温度補償回路、12………圧電振動子、14………発振回路、16………温度センサー、18………温度補償電圧発生回路、20………4次電圧発生回路、22………3次電圧発生回路、24………2次電圧発生回路、26………1次電圧発生回路、28………0次電圧発生回路、30………加算回路、32………判定回路、34………分周器、36………ADコンバータ、38………遅延回路、40………DAコンバータ、42………ヒステリシスコンパレータ、42a………差動入力、42b………差動入力、42c………出力、44………1ビットDAコンバータ、46………第1のオフセット回路、48………差動増幅回路、48a………定電流源、48b………Nchトランジスタ、48c………Nchトランジスタ、48d………Pchトランジスタ、48e………Pchトランジスタ、50………カレントミラー回路、50a………電流、52………オペアンプ、52a………可変抵抗、52b………メモリ、54………第2のオフセット回路、56………差動増幅回路、56a………定電流源、56b………Nchトランジスタ、56c………Nchトランジスタ、56d………Pchトランジスタ、56e………Pchトランジスタ、58………カレントミラー回路、58a………電流、60………オペアンプ、60a………可変抵抗、60b………メモリ、62………検出電圧、62a………検出電圧、62b………検出電圧、64………温度補償電圧、64a………温度補償電圧、65………温度補償電圧、65a………温度補償電圧、66………発振信号、68………判定信号、70………第1のオフセット回路、72………差動増幅回路、72a………定電流源、
72b………Nchトランジスタ、72c………Nchトランジスタ、72d………Pchトランジスタ、72e………Pchトランジスタ74………第1のカレントミラー回路、76………第2のカレントミラー回路、76a………引き込み電流、78………オペアンプ、78a………可変抵抗、78b………メモリ、80………第2のオフセット回路、82………差動増幅回路、84………第1のカレントミラー回路、86………第2のカレントミラー回路、86a………引き込み電流、88………オペアンプ、88a………可変抵抗、88b………メモリ、100………温度補償型発振器、102………温度検出回路、104………近似3次曲線発生回路、106………第1のプログラマブルゲイン増幅器、108………第2のプログラマブルゲイン増幅器、110………定電圧発生回路、112………第3のプログラマブルゲイン増幅器、114………加算回路、116………電圧制御型水晶発振回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子を発振させて発振信号を出力し、入力される前記圧電振動子の発振周波数の温度特性に対応した温度補償電圧により前記発振信号の発振周波数の温度補償を行う発振回路と、前記圧電振動子の温度に対応した検出電圧を出力する温度検出手段と、前記発振回路と前記温度検出手段との間に介装され、前記温度補償電圧を前記検出電圧に対応して出力する温度補償電圧発生回路と、を有する圧電発振器に取り付けられた圧電発振器用オフセット回路であって、
前記温度検出手段と前記温度補償電圧発生回路との間に介装され、前記発振周波数の温度の上昇時及び下降時の温度特性にそれぞれ対応して、前記検出電圧をオフセットすることにより前記温度補償電圧を温度方向にオフセットする第1のオフセット回路と、
前記温度補償電圧発生回路と前記発振回路との間に介装され、前記発振周波数の温度の上昇時及び下降時の温度特性にそれぞれ対応して、前記温度補償電圧を電圧方向にオフセットする第2のオフセット回路と、を有することを特徴とする圧電発振器用オフセット回路。
【請求項2】
前記検出電圧の上昇・下降を検出して前記圧電振動子の温度の上昇及び下降を判定する判定信号を出力する判定回路を有し、
前記温度補償電圧発生回路は、
前記温度補償電圧を前記圧電振動子の温度の上昇時及び下降時のいずれか一方の温度特性に対応して出力し、
前記第1のオフセット回路は、
前記一方の温度特性の反対の他方の温度特性に対応した前記検出電圧のオフセット量が設定され、前記判定信号に基づいて前記検出電圧を前記検出電圧のオフセット量だけオフセットし、
前記第2のオフセット回路は、
前記他方の温度特性に対応した前記温度補償電圧のオフセット量が設定され、前記判定信号に基づいて入力した前記温度補償電圧を前記温度補償電圧のオフセット量だけオフセットすることを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器用オフセット回路。
【請求項3】
前記検出電圧及び前記温度補償電圧に設定されたオフセット量は、
前記圧電振動子の温度の上昇時の設定最低温度と設定最高温度、及び前記圧電振動子の温度の下降時の基準温度における温度補償電圧において、前記オフセット量によって生じる電圧方向の差分の総和が最小となるように、
または前記圧電振動子の温度の下降時の設定最低温度と設定最高温度、及び前記圧電振動子の温度の上昇時の基準温度の温度補償電圧において、前記オフセット量によって生じる電圧方向の差分の総和が最小となるように、それぞれ算出されたことを特徴とする請求項2に記載の圧電発振器用オフセット回路。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電発振器用オフセット回路を、前記圧電発振器に組みこんで形成したことを特徴とする圧電発振器。
【請求項5】
圧電振動子を発振させて発振信号を出力し、入力される前記圧電振動子の発振周波数の温度特性に対応した温度補償電圧により前記発振信号の発振周波数の温度補償を行う発振回路と、前記圧電振動子の温度に対応した検出電圧を出力する温度検出手段と、前記発振回路と前記温度手段との間に介装され、前記温度補償電圧を前記検出電圧に対応して出力する温度補償電圧発生回路と、を有する圧電発振器の温度補償方法であって、
前記圧電振動子の温度の上昇時及び下降時の前記発振周波数の温度特性にそれぞれ対応して前記温度補償電圧を電圧方向にオフセットするとともに、
前記圧電振動子の温度の上昇時及び下降時の前記発振周波数の温度特性にそれぞれ対応して前記検出電圧をオフセットすることにより前記温度補償電圧を温度方向にオフセットすることを特徴とする圧電発振器の温度補償方法。
【請求項6】
前記温度補償電圧発生回路は、前記検出電圧に基づいて前記圧電振動子の温度の上昇時及び下降時のいずれか一方の温度特性を有する電圧を前記発振回路に出力するとともに、
前記検出電圧の上昇・下降を検出し前記圧電振動子の温度の上昇及び下降を判定する判定信号を出力し、
前記温度補償電圧を、
前記判定信号に基づいて前記一方の温度特性の反対の他方の温度特性に対応して設定された前記温度補償電圧のオフセット量だけオフセットし、
前記検出電圧を、
前記判定信号に基づいて前記他方の温度特性に対応して設定された前記検出電圧のオフセット量だけオフセットすることを特徴とする請求項5に記載の圧電発振器の温度補償方法。
【請求項7】
前記検出電圧及び前記温度補償電圧に設定されたオフセット量は、
前記圧電振動子の温度の上昇時の設定最低温度と設定最高温度、及び前記圧電振動子の温度の下降時の基準温度における温度補償電圧において、前記オフセット量によって生じる電圧方向の差分の総和が最小となるように、
または前記圧電振動子の温度の下降時の設定最低温度と設定最高温度、及び前記圧電振動子の温度の上昇時の基準温度における温度補償電圧において、前記オフセット量によって生じる電圧方向の差分の総和が最小となるように、それぞれ算出したことを特徴とする請求項6に記載の圧電発振器の温度補償方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−234086(P2011−234086A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102051(P2010−102051)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】