説明

地上デジタルテレビジョン放送における緊急情報の送信装置及び受信装置

【課題】上デジタルテレビジョン放送波の伝送制御信号により緊急情報を伝送する送信装置、及び受信装置を提供する。
【解決手段】本発明の送信装置1は、緊急情報の有無を識別するための起動信号と当該緊急情報とを含む電文情報を生成する緊急情報生成手段11を備える。緊急情報生成手段11は、予め規定された乱数列から、前記緊急情報を送信する際の送信時刻情報によって定まる認証用乱数列を選定して生成する認証用乱数列生成部112と、認証用乱数列により、当該緊急情報に関する時刻情報、当該緊急情報を伝送する事業者の認証に用いる認証情報、及び巡回冗長検査の情報とを含むデータを符号変換して認証子を生成する認証子生成部13と、該認証子を緊急情報に含めて設定する緊急情報設定部114とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタルテレビジョン放送において緊急情報を送受信する技術に関し、特に、緊急警報放送や緊急地震速報などの緊急情報の送信又は受信を、許可された事業者のみが利用可能にする送信装置及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気象庁は、平成19年10月1日から緊急地震速報(例えば、非特許文献1参照)の一般への提供を開始した。これに伴い、テレビジョン並びにラジオの各放送局も前記速報が発表される際には、チャイム音とともにテレビジョン画面に表示または音声で伝えるなどの放送を実施している。尚、緊急地震速報のラジオ放送の一部は、平成20年4月1日から開始している。
【0003】
緊急警報放送の場合に、待機消費電力を抑えて動作し、受信装置の電源が入っていない受信装置を起動して受信装置に知らせる仕組みが知られている。例えば、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting−Terrestrial、ARIB規格STD‐B31)方式の地上デジタルテレビジョンの受信装置は、受信装置の通常動作時の電源が供給されていない場合に、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control: 伝送制御)キャリアに格納される緊急警報放送用起動フラグを検出する伝送制御信号用の受信機能を備えることにより、緊急警報放送用起動フラグが1(緊急警報放送あり)のとき、受信装置の電源を投入し、受信装置に緊急警報放送の視聴を促すことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、受信装置の電源が入っていない場合、あるいは他のチャンネルを受信している場合に、緊急情報時に電源投入あるいはチャンネル切り替えを促すことが開示されており、この制御のため部分受信セグメント内のTMCC信号及びAC信号を受信し、電源投入後あるいはチャンネル切り替え後に、その他の災害・防災情報並びに映像・音声の再生を行う技術が提示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−319771号公報
【特許文献2】特開2007−243936号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“緊急地震速報の概要や処理手法に関する技術的参考資料”、気象庁地震火山部、[平成20年1月31日検索]、インターネット〈URL:http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kaisetsu/Whats_EEW/reference.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の技術はいずれも、地上デジタルテレビジョン放送における緊急情報の自動起動を提示する事業者を認証する技術を提供するものではない。
【0008】
例えば、部分受信セグメント方式(いわゆるワンセグ方式)の送受信装置であれば、この送受信装置の任意のユーザが微弱電波であっても緊急情報を受信して更に他の任意の受信装置に向けて再送信させることも可能である。従って、地震速報などの緊急性の高い緊急情報を悪用して再送信するおそれ(リプレイ攻撃)もあり、社会的な問題も生じうる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、地上デジタルテレビジョン放送において緊急情報を送受信する伝送システムの利用に際し、許可された事業者のみが利用可能にする送信装置及び受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、限られた伝送制御信号(TMCC又はAC信号)のビット数(204ビット)による緊急情報の伝送においても、不特定多数のユーザにサービスを提供する事業者のうち、予め定められた事業者のみが緊急情報の送受信を可能とする送信装置又は受信装置を提供するものであり、特に、予め事業者の送信装置と受信装置との間で秘密裏に保持している乱数列を利用して緊急情報の内容を検証可能にする。
【0011】
本発明の送信装置は、地上デジタルテレビジョン放送波の伝送制御信号により緊急情報を送信する送信装置であって、緊急情報の有無を識別するための起動信号と当該緊急情報とを含む電文情報を生成する緊急情報生成手段と、前記電文情報を地上デジタルテレビジョン放送波の伝送制御信号により伝送する緊急情報伝送手段とを備え、前記緊急情報生成手段は、予め規定された乱数列から、前記緊急情報を送信する際の送信時刻情報によって定まる認証用乱数列を選定して生成する手段と、前記認証用乱数列により、当該緊急情報に関する時刻情報、当該緊急情報を伝送する事業者の認証に用いる認証情報、及び巡回冗長検査の情報とを含むデータを符号変換して認証子を生成する手段と、該認証子を緊急情報に含めて設定する手段とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の送信装置において、前記認証用乱数列は、前記緊急情報を送信する際の送信時刻情報によって特定の関数から定まる前記予め規定された乱数列内のビット位置からの所定のビット数分からなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の送信装置において、前記予め規定された乱数列、及び前記特定の関数は、送受信間で共通であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の送信装置において、前記認証子は、前記認証用乱数列と前記認証子を構成するデータの双方のビット数を揃えて排他的論理和を実行して生成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の送信装置において、前記認証子は、前記緊急情報を送信する際の送信時刻または地震発生時刻などの時刻情報を鍵情報として暗号化されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の送信装置において、当該緊急情報に関する時刻情報は、気象庁から配信された地震発生時刻又は送信時刻からなることを特徴とする。
【0017】
更に、本発明の受信装置は、地上デジタルテレビジョン放送波の伝送制御信号により緊急情報を受信する受信装置であって、緊急情報の有無を識別するための起動信号と当該緊急情報とを含む電文情報を前記伝送制御信号から抽出する信号抽出手段と、前記緊急情報の有無を前記起動信号から検証する起動信号検証手段と、前記緊急情報が有りを示す場合に、前記緊急情報を検証する緊急情報検証手段とを備え、前記緊急情報検証手段は、予め規定された乱数列から、前記緊急情報を受信する際の受信時時刻情報によって定まる検証用乱数列を選定して生成する手段と、前記検証用乱数列により、当該緊急情報内の予め規定された認証子を符号変換し、当該緊急情報に関する時刻情報、当該緊急情報を伝送する事業者の認証に用いる認証情報、及び巡回冗長検査の情報を含むデータを復元する手段と、当該緊急情報に関する時刻情報、当該緊急情報を伝送する事業者の認証に用いる認証情報、及び前記巡回冗長検査の情報をそれぞれ抽出して検査する手段とを有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の受信装置において、前記緊急情報検証手段が、当該緊急情報に関する時刻情報、当該緊急情報を伝送する事業者の認証に用いる認証情報、及び前記巡回冗長検査の情報をそれぞれ検査して正当であると判断した場合に、当該緊急情報について警告を発する警告発生手段を更に備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の受信装置において、前記検証用乱数列は、前記緊急情報を受信する際の受信時時刻情報によって特定の関数から定まる前記予め規定された乱数列内のビット位置からの所定のビット数分からなることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の受信装置において、前記予め規定された乱数列、及び前記特定の関数は、送受信間で共通であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の受信装置において、前記認証子は、前記認証用乱数列と前記認証子を構成するデータの双方のビット数を揃えて排他的論理和を実行して生成されており、前記緊急情報検証手段は、前記検証用乱数列による排他的論理和を実行して前記認証子を復元することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の受信装置において、前記認証子は、前記緊急情報を送信する際の送信時刻または地震発生時刻などの時刻情報を鍵情報として暗号化されており、前記緊急情報検証手段は、前記緊急情報を受信する際の受信時刻情報を鍵情報として前記認証子を復元することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の受信装置において、当該緊急情報に関する時刻情報は、気象庁から配信された地震発生時刻又は送信時刻からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、特定の乱数列を保持している事業者のみが、正当な緊急情報を作成することができる。特に、送信側では、認証に用いる時刻情報に応じて使用する乱数が変化するために、同一の情報を複数回使用することが困難となり、リプレイ攻撃に対して安全性を高めることができる。また、秘密情報である乱数列を攻撃者に推測されにくくすることができる。
【0025】
また、本発明によれば、受信した放送波から、緊急情報の起動信号を受信して緊急情報が有ると判断しても、時刻情報の照合と乱数列による事業者の照合を行なうように構成することができるため、正規の事業者から提供された緊急情報ではないと自動的に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による一実施例の事業者送信装置と受信装置とを備える伝送システムを示す概略図である。
【図2】本発明による一実施例の事業者送信装置を示す図である。
【図3】本発明による一実施例の事業者送信装置における緊急情報生成部の機能ブロック図である。
【図4】本発明による一実施例の事業者送信装置における伝送するAC信号内の一例を示す電文情報である。
【図5】本発明による一実施例の受信装置を示す図である。
【図6】本発明による一実施例の受信装置における緊急情報検証成部の機能ブロック図である。
【図7】本発明による一実施例の事業者送信装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明による一実施例の受信装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明による一実施例の事業者送信装置及び受信装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
まず、本発明による一実施例の事業者送信装置及び受信装置を説明する。
【0028】
図1は、本発明による一実施例の事業者送信装置と受信装置とを備える伝送システムを示す概略図である。特定の事業者送信装置1は、TMCC信号やAC信号を用いて、中継器2を介して複数の受信装置3−1,3−2,3−3(総括して、受信装置3とも称する)に緊急情報を送信する。尚、図1において、3つの受信装置のみを示しているが、任意数とすることができる。
【0029】
事業者は、番組を送信する事業者送信装置1を所有し、放送波を用いて、例えばワンセグ方式の受信側自動起動用の起動信号と起動後に表示するメッセージを受信装置3に送信することができる。また、受信装置3は、事業者から放送波を通じて送信されたワンセグ起動用の起動信号を受信し、受信装置3を起動し、メッセージ表示などを行う。
【0030】
地上デジタル放送波で緊急情報を低遅延伝送するのに、TMCCキャリア又はACキャリアを用いるのが有効である。これは、TMCC信号やAC信号には時間インターリーブが使用されていないためである。以下の説明では、特にAC信号を用いて緊急情報を伝送する例について説明する。
【0031】
図2は、本発明による一実施例の事業者送信装置1を示す図である。一実施例の事業者送信装置1は、緊急情報生成部11と、誤り訂正符号化部12と、再多重部13と、変調部14とを備える。
【0032】
緊急情報生成部11は、気象庁より配信される緊急地震速報などの緊急速報に基づいて、後述で例示する所定の電文フォーマットの緊急情報を生成する。
【0033】
誤り訂正符号化部12は、緊急情報生成部11で生成した緊急情報を含む電文内の情報について、例えば差集合巡回符号(273,191)の短縮符号(187,105)を用いて誤り訂正符号化を施してパリティビットを生成し、伝送するAC信号を生成する。この場合、8ビット程度の誤り訂正が可能となるので、情報の信頼度を高め、より確実な伝送を可能とすることができる。
【0034】
再多重部13は、生成したAC信号を伝送すべきTS(トランスポートストリーム)に再多重する。
【0035】
変調部14は、再多重したTSを変調して、放送波として出力する。
【0036】
事業者送信装置1における機能を代表的に例示したが、AC信号内の情報生成以外は、規定される地上デジタルテレビジョン方式(例えば、ISDB−T方式)に従う構成とすることができる。そのため、本発明に係る緊急情報生成部11について、以下詳細に説明する。
【0037】
図3に、本発明による一実施例の送信装置における緊急情報生成部11の機能ブロック図を示す。また、図4に、本発明による一実施例の事業者送信装置1における伝送するAC信号内の電文情報を例示する。
【0038】
本発明による一実施例の事業者送信装置1は、伝送制御信号の1つであるAC信号を用いて、緊急情報(以下、緊急警報放送及び緊急地震速報を含む情報を総括して、緊急情報と称する)を伝送する地上デジタルテレビジョン放送のサービスにおいて、そのAC信号により緊急情報を伝達する。
【0039】
AC信号は、例えば、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送波の部分受信セグメント(セグメント番号#0)のモード3の同期変調部の場合、キャリア番号#7、#89、#206、#209、#226、#244、#377及び#407の8箇所にあるACキャリアによって運ばれる信号であり、このうちの少なくとも1つのACキャリアで緊急情報を伝送する。
【0040】
即ち伝送制御信号の1つであるTMCC信号と同一フレーム長となるように、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式の1シンボルを基準として、TMCC信号と同一の204シンボルに対してDBPSK信号の204ビットを割り振って1フレームとし、TMCC信号と同一の差動復調の基準、及び同期信号と、緊急地震速報の有無を識別する起動信号と、緊急情報の更新の有無を識別する更新フラグと、緊急地震速報の情報を含む緊急情報とを格納する電文情報(表1に例示する電文情報のフォーマット)を規定する。また、誤り訂正符号化部によって、起動信号、更新フラグ、及び緊急情報について誤り訂正符号を施し、パリティビットを付加することができる。
【0041】
尚、本発明の理解を容易とするために、以下においてはISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送におけるモード3のACキャリアが運ぶAC情報の少なくとも1つを用いる場合について説明するが、他のモードにおいても適用可能であることに留意する。
【0042】
図3を参照するに、緊急情報生成部11は、現在時刻コード生成部111と、認証用乱数列生成部112と、認証子生成部113と、緊急情報設定部114とを備える。
【0043】
認証用乱数列生成部112は、乱数生成部1121と、乱数列ビット位置決定部1122とを有する。
【0044】
認証子生成部113は、時刻情報設定部1131と、認証情報設定部1132と、CRC生成部1133とを備える。
【0045】
現在時刻コード生成部111は、緊急情報を送信する送信時刻(又は現在時刻)の(西暦)年、月、日、時、分、秒を並べたコードを生成する。
【0046】
認証用乱数列生成部112は、乱数生成部1121によって得られる乱数列のうち、乱数列ビット位置決定部1122によって得られる指定されたビット位置から予め定められたビット数の認証用乱数列(即ち、緊急情報を送信する際の送信時刻情報によって定まる認証用乱数列)を選定して生成し、認証子生成部112に送出する。
【0047】
乱数生成部1121は、送受信間(本実施例の事業者送信装置及び受信装置間)で共通の乱数列(又は擬似乱数列)を作り出す機能部である。例えば、暗号理論的に安全な擬似乱数生成器を用いて送受信間で共通の乱数列(例えば、100kbyte以上)を生成して保持する。或いは又、乱数生成部の代わりに、予め用意した乱数列を送受信間で共通に秘密保持しておくこともできる。
【0048】
乱数列ビット位置決定部1122は、送受信間で共通に秘密保持される特定の関数f(t)によって、現在時刻コード生成部で生成した時刻コードから乱数列内のビット位置を特定する機能を有する。従って、認証用乱数列は、緊急情報を送信する際の送信時刻情報によって特定の関数から定まる予め規定された乱数列内のビット位置からの所定のビット数分からなる。この特定の関数f(t)は、送受信間で共通であり、送受信間で同一の乱数列からビット位置を指定して、送受信間で同一の認証/検証用乱数列を導出できるものであれば、ハッシュ関数のような非線形関数や、多次元関数のような線形関数など、如何なるものでもよいが、例えばハッシュ関数のように、入力に対してランダムな値を出力する関数が望ましい。
【0049】
時刻情報設定部1131は、「地震発生時刻」又は「現在時刻」からなる「時刻情報」を、伝送する電文情報における「認証子」内の情報として設定する。
【0050】
認証情報設定部1132は、例えば事業者によって生成される緊急情報のメッセージを含むことが可能な、又は緊急情報のメッセージとは別に、送受信間で秘密保持される「認証情報」を、伝送する電文情報における「認証子」内の情報として設定する。
【0051】
CRC生成部1133は、「時刻情報」及び「認証情報」に、CRC(Cyclic Redundancy check)符号を付加して、伝送する電文情報における「認証子」内の情報として設定する。
【0052】
認証子生成部113は、設定される当該緊急情報に関する「時刻情報」、当該緊急情報を伝送する事業者の認証に用いる「認証情報」及び「CRC(巡回冗長検査)」の情報とを含むデータを符号変換して認証子を生成して、緊急情報設定部114に送出する。ここで云う符号変換として、認証子を、緊急情報を送信する際の送信時刻または地震発生時刻などの時刻情報を鍵情報として暗号化されたものとするか、又は、認証用乱数列と認証情報等(例えば、地震発生時刻や事業者コード)のデータの双方のビット数を揃えて排他的論理和を実行して生成されたものとすることができる。
【0053】
緊急情報設定部114は、認証子生成部113によって生成された認証子を含む緊急情報を、ACキャリアを用いて伝送する電文情報内に設定する。
【0054】
図4を参照して、ACキャリアによって運ばれる電文の構成について説明する。
【0055】
「差動復調の基準」は、TMCC信号と同様に、キャリア番号kのSP信号に割り当てられるBPSK信号の値Wと同じ生成多項式(x11+ x+1)に基づく値であり、例えば、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送波の部分受信セグメント(セグメント番号#0)におけるACキャリア(モード3の同期変調部)の場合、キャリア番号#7、#89、#206、#209、#226、#244、#377及び#407の8箇所に対し割り当てられる値である。この8箇所のACキャリアが運ぶAC情報に記述の差動復調の基準として格納されるWは、各々0、0、0、0、0、1、1及び0である。
【0056】
「同期信号」は、16ビットの同期信号であり、その値は「0011010111101110」(奇数フレーム)及びその反転(偶数フレーム)という、奇数フレームと偶数フレームで異なる値をとる。そのDBPSK変調波は、Wが0の場合、奇数フレームが「1、1、−1、1、1、−1、−1、1、−1、1、−1、−1、1、−1、1、1」であり、偶数フレームが「−1、1、1、1、−1、−1、1、1、1、1、1、−1、−1、−1、−1、1」である。そしてWが1の場合、これらの反転となる。このように、「同期信号」は振幅と位相が既知の信号となっている。
【0057】
緊急情報の有無を識別する1ビット(又は2ビットとしてもよい)の「起動信号」が「同期信号」につづく。「起動信号」の値は、緊急情報がある場合には、‘1’のビットを表す値として「同期信号」の最後のシンボルの位相を反転し、緊急情報がない場合には、‘0’のビットを表す値としてその位相を継続する。
【0058】
「更新フラグ」は、例えば2ビットで構成し、緊急情報の内容が更新されるたびにインクリメントするようにして、巡回させることで緊急情報の内容の更新の有無の識別に用いる。別の例として、伝送される緊急情報の内容が更新されるたびに、値が更新(1から0へ、又は0から1へ更新)される「更新フラグ」(1ビット)を使用することで、更新時のみ受信動作を行なうように制御すれば緊急情報を受信している受信装置1の内部処理量を効率的に削減させることができる。或いは又、「更新フラグ」は、「起動信号」の更なる冗長性を持たせるために「起動信号」の起動時のフラグ値と同一の値で開始するように設定することもできる。このように、「更新フラグ」は、「起動信号」が緊急情報のある旨を示す値を継続している間に緊急情報の内容の更新がある場合を対象として1ビットとすることができるが、その更新頻度が実際の運用において2つ以上とする場合に、「更新フラグ」に2ビット以上を割り当てることもできる。
【0059】
上記の例では、緊急情報は、例えば、緊急情報識別信号、各種識別信号、及び認証子からなるものとしているが他の情報を追加することや、階層構造にして更に多数の情報を連続的にAC信号のフレームで伝送するように構成することができる。
【0060】
「緊急情報識別信号」は、緊急情報の種別を示す信号である。緊急情報が緊急地震速報を表すのか、緊急警報放送を表すのかといった情報を提供する。例えば、割り当てるビット数を3ビットとし、「000」を緊急地震速報、「001」を緊急警報放送、「010」を緊急地震速報のテスト信号、「011」を緊急警報放送のテスト信号とする。尚、「起動信号」と同様に、各3ビットの値はDBPSK変調された値として伝送される。「起動信号」が例えば‘1’の値(緊急情報あり)を示した時に、「緊急情報識別信号」の値を読み、緊急情報の種別、つまり、どのような内容の緊急情報であるのかを識別することができる。
【0061】
「各種識別信号」は、「速報ID」(12ビット)や「情報番号」(4ビット)、「電文種別」(2ビット)といった緊急情報に付随する情報信号や、放送事業者識別などの信号が該当する。
【0062】
以下の説明では、「認証子」は、「地震発生時刻」、「認証情報」、及び「CRC(Cyclic Redundancy check)」からなるものとして説明する。
【0063】
「地震発生時刻」は、例えば気象庁が発表する緊急地震速報に従って、(西暦)年、月、日、時、分、秒を並べて作成される。
【0064】
「認証情報・メッセージ」は、例えば事業者を識別する認証用の情報(例えば、事業者コード)や、事業者によって生成される緊急情報のメッセージを格納する領域であり、送受信間で認証及び検証を行なうための暗号化を施して格納することもできる。
【0065】
「CRC」は、送信元の検証に用いるCRC符号を格納する領域である。
【0066】
尚、「認証子」は、さまざまな態様で構成することができることに留意する。例えば、「地震発生時刻」、「認証情報」、及び「CRC」は、任意のビット数で構成することができる。また、「地震発生時刻」の代わりに緊急情報を送信する時刻を表す「現在時刻」とすることができる。或いは又、「認証情報」を「地震発生時刻」とすることもできる。また、「認証子」は、「地震発生時刻」又は「現在時刻」からなる「時刻情報」と「CRC」のみからなるものとすることもできる。
【0067】
次に、本発明による一実施例の受信装置を説明する。
【0068】
図5は、本発明による一実施例の受信装置の概略図である。図6は、本発明による一実施例の受信装置における認証子検証部の概略図である。
【0069】
本実施例の受信装置3は、RF受信部32と、信号抽出部33と、起動信号検証部34と、緊急情報検証部35と、警告発生部36とを備える。
【0070】
RF受信部32は、アンテナ31を介して、一実施例の事業者送信装置から伝送される放送波(無線周波信号)を受信して信号抽出部33に送出する。
【0071】
信号抽出部33は、RF受信部32から受信した信号から、「同期信号」を用いて同期確立し、例えば部分受信セグメントにおけるAC信号を復調して抽出し、起動信号検証部34に送出する。
【0072】
起動信号検証部34は、AC信号内の起動信号を検出し、緊急情報の有無を判別し、判別した結果を緊急情報検証部35に送出する。
【0073】
緊急情報検証部35は、緊急情報の有りを判別する場合に緊急情報を抽出し、緊急情報内に含まれる認証子を「時刻情報の照合」と「CRCの照合(事業者の照合)」によって検証し、正規の事業者から伝送された電文であると判別した場合に、緊急情報内に含まれる情報やメッセージを警告発生部36に送出する。
【0074】
警告発生部36は、緊急情報の有りを判別した後、「時刻情報の照合」と「CRCの照合(事業者の照合)」の結果の双方が正しい時にのみ放送波を通じて送信された緊急情報内の内容を表示又は音声で警告を発する。
【0075】
ここで、本発明に係る緊急情報検証部35について、図6を参照して更に詳細に説明する。
【0076】
緊急情報検証部35は、緊急情報抽出部351と、検証時刻コード生成部352と、検証用乱数列生成部353と、認証子検証部354とを備える。
【0077】
検証用乱数列生成部353は、乱数生成部3531と、乱数列ビット位置決定部3532とを備える。
【0078】
認証子検証部354は、CRC検査部3541と、認証情報検査部3542と、時刻情報検査部3543とを備える。
【0079】
緊急情報抽出部351は、起動信号検証部34を経て緊急情報の有りを判別する場合に緊急情報を抽出し、抽出した緊急情報を認証子検証部352に送出する。尚、図6では、緊急情報抽出部351は、抽出した緊急情報を検証時刻コード生成部352及び検証用乱数列生成部353を介して認証子検証部354に送出する例を示している。
【0080】
検証時刻コード生成部352は、抽出される緊急情報がある場合に、受信装置3側の現在時刻の(西暦)年、月、日、時、分、秒を並べたコードを生成する。
【0081】
乱数生成部3531は、送受信間(本実施例の事業者送信装置1及び受信装置3間)で共通の乱数列(擬似乱数列)を作り出す機能部である。例えば、暗号理論的に安全な擬似乱数生成器を用いて送受信間で共通の乱数列を生成して保持する。或いは又、乱数生成部の代わりに、予め用意した乱数列を送受信間で共通に秘密保持しておくこともできる。従って、この乱数列は、事業者で保存している乱数列を同じものである。また、この乱数列は、利用者が容易にアクセスできないように、秘匿された場所に保存される。
【0082】
乱数列ビット位置決定部3532は、送受信間で共通に秘密保持される特定の関数f(t)によって、検証時刻コード生成部352で生成した時刻コードから乱数列内のビット位置を特定する機能を有する。この特定の関数f(t)から定まる乱数列内のビット位置から、所定のビット数分からなる検証用乱数列を特定することができる。
【0083】
ここで、送信側で生成した認証用乱数列は、送信側の時刻情報を用いて生成されており、一方で、受信側で生成した検証用乱数列は、受信側の時刻情報を用いて生成されていることから、これらの認証用乱数列及び検証用乱数列は、共通の乱数列から抽出されたものでも異なる値をとる可能性がある。
【0084】
そこで、乱数列ビット位置決定部3532は、送信側の時刻情報と受信側の時刻情報とのずれとして、所定時間(例えば、2分)を想定し、検証用乱数列生成部353は、このずれに相当する数の検証用乱数列をそれぞれ抽出する。検証用乱数列の個数の増大を減少するには、送受信間で互いに生成する時刻コードを(西暦)年、月、日、時、分(秒を含まない)を並べて生成したものとするか、又は検証精度を鑑みて当該所定時間を短く設定する。
【0085】
従って、検証用乱数列生成部353は、緊急情報を受信する際の受信時時刻情報によって特定の関数f(t)から定まる送受信間で予め規定された乱数列内のビット位置からの所定のビット数分からなる複数の検証用乱数列を生成し、認証子検証部354にそれぞれ送出する。ここで、予め規定された乱数列、及び特定の関数f(t)は、送受信間で共通であることに留意する。
【0086】
認証子検証部354は、緊急情報抽出部351から得られる抽出した緊急情報内の認証子について検証を行なう機能を有する。より具体的には、認証子検証部354は、検証用乱数列生成部353によって生成した検証用乱数列により、当該緊急情報内の予め規定された認証子を符号変換し、当該緊急情報に関する時刻情報、当該緊急情報を伝送する事業者の認証に用いる認証情報、及び巡回冗長検査の情報を含むデータを復元し、当該緊急情報に関する時刻情報、当該緊急情報を伝送する事業者の認証に用いる認証情報、及び前記巡回冗長検査の情報をそれぞれ抽出して検査する。
【0087】
尚、送信側から伝送される認証子が、認証用乱数列と認証子を構成するデータの双方のビット数を揃えて排他的論理和を実行して生成されている場合には、緊急情報検証部における認証子検証部354は、検証用乱数列による排他的論理和を実行して受信した認証子を復元する。一方、送信側から伝送される認証子が、緊急情報を送信する際の送信時刻または地震発生時刻などの時刻情報を鍵情報として暗号化されている場合には、緊急情報検証部における認証子検証部354は、緊急情報を受信する際の受信時刻情報を鍵情報として受信した認証子を復元する。
【0088】
CRC検査部3541は、受信したデータ(正当な事業者)の正否についてCRC検査を行なう。
【0089】
認証情報検査部3542は、送信側から伝送される予め規定された認証情報が正しいか否かの検査を行なう。
【0090】
時刻情報検査部3543は、送信側から伝送される予め規定された時刻情報が正しいか否かの検査を行なう。
【0091】
本実施例において、認証子検証部354は、緊急情報抽出部351から得られる抽出した緊急情報内の認証子から、その中身の情報を取り出すために、複数の検証用乱数列の各々を用いて認証子内の内部情報の復元を試みる。具体的には、或る1つの検証用乱数列に対して得られる値(以下、認証子相当値と称する)からCRC検査を介して予め規定された認証情報(例えば、ARIBで規定される事業者コード)が所定のビット位置から復元できるかを試みる。複数の検証用乱数列のうち、1つも認証情報が復元できない場合には検証失敗とする。一方、1つも認証情報が復元できた場合には、第1の検証は成功とみなし、認証子内の内部情報のうち、「時刻情報」を取り出す。この取り出した時刻情報(送信側の現在時刻か、又は地震発生時刻)が、受信側の現在時刻に対して所定時間(例えば、2分)以内であれば、第2の検証は成功とみなし、電文を送信した事業者が、緊急情報の伝送が許可された事業者であると判定し、緊急情報内のメッセージ、又は更なる階層構造のメッセージに基づいて警告発生部36により警告を発する。検証に失敗したときは、緊急情報の伝送が許可された事業者ではないと判定し、受信装置3を再び緊急情報電文の受信待機状態に戻す。
【0092】
この事業者送信装置1と受信装置3の動作を、図7〜図9を参照して更に説明する。
【0093】
図7を参照するに、事業者送信装置1は、現在時刻コード生成部111により、緊急情報を送信する送信時刻(又は現在時刻)の西暦)年、月、日、時、分、秒を並べたコードを生成する(ステップS1)。
【0094】
ステップS2にて、事業者送信装置1は、乱数生成部1121により、送受信間で共通の乱数列を生成して保持する。
【0095】
ステップS3にて、事業者送信装置1は、乱数列ビット位置決定部1122により、送受信間で共通に秘密保持される特定の関数f(t)で、現在時刻コード生成部111で生成した時刻コードから乱数列内のビット位置を特定する。
【0096】
ステップS4にて、事業者送信装置1は、認証子生成部113により、「時刻情報」、「認証情報」及び「CRC」からなる認証子を生成する。
【0097】
ステップS5にて、事業者送信装置1は、緊急情報設定部114により、生成した認証子を含む緊急情報を、ACキャリアを用いて伝送する電文情報内に設定して伝送する。
【0098】
図8を参照するに、受信装置3は、検証時刻コード生成部352により、抽出される緊急情報がある場合に、受信装置3側の現在時刻の(西暦)年、月、日、時、分、秒を並べたコードを生成する(ステップS11)。
【0099】
ステップS12にて、受信装置3は、乱数生成部3531により、送受信間(本実施例の事業者送信装置1及び受信装置3間)で共通の乱数列(擬似乱数列)を作り出す。
【0100】
ステップS13にて、受信装置3は、乱数列ビット位置決定部3532により、送受信間で共通に秘密保持される特定の関数f(t)によって、送信側の時刻情報(送信時刻情報又は地震発生時刻)と受信側の時刻情報とのずれとして想定した所定時間(例えば、2分)分の乱数列内のビット位置をそれぞれ特定する。
【0101】
ステップS14にて、受信装置3は、検証用乱数列生成部353により、複数の検証用乱数列を生成し、それぞれの乱数列内のビット位置に対応する値を用いて認証子相当値を抽出する。
【0102】
ステップS15にて、受信装置3は、CRC検査部3541により受信したデータの正否について検査を行ない、この検査に成功すればステップS16に進み、CRC検査に失敗すれば、受信装置3を再び緊急情報電文の受信待機状態に戻す。
【0103】
ステップS16にて、受信装置3は、認証子検証部354により、複数の検証用乱数列の各々を用いて認証子内の内部情報の復元を試み、或る1つの検証用乱数列に対して得られる認証子相当値からCRC検査を介して得られる予め規定された認証情報(例えば、ARIBで規定される事業者コード)が1つ見つかる場合には第1の検証を成功とし、更に、認証子内の内部情報のうち、「時刻情報」を取り出し、この取り出した時刻情報(送信側の現在時刻か、又は地震発生時刻)が、受信側の現在時刻に対して所定時間(例えば、2分)以内であれば、第2の検証は成功とみなす。全ての検証が成功した場合にのみ、電文を送信した事業者が、緊急情報の伝送が許可された事業者であると判定し、ステップS17に進み、検証に失敗すれば、受信装置3を再び緊急情報電文の受信待機状態に戻す。
【0104】
ステップS17にて、受信装置3は、全ての検証が成功して、電文を送信した事業者が緊急情報の伝送が許可された事業者であると判定すると、警告発生部36により、警告を発生する。
【0105】
図9には、事業者送信装置1と受信装置3との間の認証と検証の動作を概略的に示している。事業者送信装置1と受信装置3の双方は、共通の乱数列(例示では、5桁の認証用乱数列105/検証用乱数列106を選択)と共通の関数f(t)101,102とを有している。送信する側の時間情報(送信時刻情報)と、検証する側の時間情報とが一致した場合を説明するものであるが、これらの時間にずれが生じていても、より確かな検証が可能となることは前述したとおりである。認証用乱数列105と認証情報等(例えば、地震発生時刻や事業者コード)とで認証子が生成され(図示103)、電文として伝送される。受信側では、電文を受信して、検証用乱数列106を用いて認証子を抽出して検証し(図示104)、検証に成功すれば警告を発する。
【0106】
以上に説明したように、本実施例の伝送システムでは、優れた効果を奏する。例えば、不特定多数のユーザに送信されているワンセグサービスに対し、送信装置の事業者側と受信装置の事業者側が乱数列を秘密裏に保存してさえいれば、送信時刻情報と受信時時刻情報との前述した許容範囲の所定時間を越えるずれによって緊急情報の使い回しを防止することができるので、予め定められた事業者のみが真の緊急情報を提供又は検証することが可能となる。
【0107】
即ち、特定の乱数列を保存している事業者のみが、正当な認証用のデータを作成することが可能となる。また、時刻情報に応じて使用する乱数が変化するため、同じ認証又は検証する情報を複数回、使用することができず、リプレイ攻撃に対して安全となる。
【0108】
上述した実施例では、本発明の理解を容易にするために、送信側と受信側の時刻情報の許容範囲のずれがある場合を想定して例示したが、送信側と受信側との間で時刻情報を合致させることが可能なように、上記の構成の事業者送信装置1は、上記の構成の受信装置1に対して、定期的に現在時刻情報を提供するように構成することもできる。この場合、受信側は、緊急情報の起動信号が無しのときに、上記の実施例の動作と同様に検証した上で秘匿性を保持したまま取得することができる。この取得した現在時刻の時刻情報を用いて受信装置3の時刻を自動的に設定するか、又はユーザが随意現在時刻を設定することができる。
【0109】
更に、上述した実施例では、送信側と受信側の認証/検証に用いる時刻情報のずれを所定時間(例えば、2分)として説明したが、送信側と受信側の認証/検証に用いる現在時刻情報のずれをT1、受信装置側の現在時刻に対する時間ずれ分をT2とすれば、送信側と受信側の認証/検証に用いる時刻情報のずれは、所定時間T1+T2となる。従って、受信装置3側では、この所定時間T1+T2(現在時刻のずれがないときは、T1=0)を認証時の閾値として設定変更可能にすることで処理時間と緊急情報の検証判定の精度のバランスを随意選定可能にすることもできる。
【0110】
上記の実施例では、送信側では、認証用乱数列105と認証情報等(例えば、地震発生時刻や事業者コード)とで認証子を生成する際に、符号変換を施して生成する例を説明した。これは、認証子の秘匿性を高めるためである。ここで、認証用乱数列105と認証情報等(例えば、地震発生時刻や事業者コード)の双方のビット数を揃えて排他的論理和を実行して認証子を生成する場合には、受信側も排他的論理和を実行して認証子内の情報を復元して検証することができ、受信側での演算負担を軽減し、高速に処理することができる。
【0111】
一方、認証子の暗号化には、様々な方式が適用可能であるが、例えばAES(Advanced Encryption Standard)などの共通鍵暗号化方式を用いて暗号化することができる。
【0112】
上記の実施例では、送信側では、認証子を生成する際に、現在時刻(送信時の時刻)で認証用乱数列を生成するとともに、認証子内に地震発生時刻を含める例を説明したが、暗号処理を施して単に情報の一致を確認する目的であれば、認証子内に地震発生時刻を含める代わりに、現在時刻を含めるように構成することができるし、現在時刻と地震発生時刻の双方を含めるように構成することもできる。
【0113】
別の実施例として、送信側は、AC信号内に、図4に示す「認証子」とは別に、送信側の現在時刻の「時刻情報」と送信側の「メッセージ」とを受信側で分離可能に伝送し、前述の実施例と同様に「認証子」を検証するだけでなく、別途送信された「時刻情報」と受信側の現在時刻とのずれが所定時間(例えば、2分)内であるか否かを検査するように構成することができる。この場合、「認証子」の検査と、別途送信された「時刻情報」の検査の結果が正当である場合に、別途送信された「メッセージ」を表示、又は警告音などで警告を発するように構成することができる。
【0114】
上述した実施例及びその変形例によれば、受信した放送波から、「起動信号」を識別した後に、時刻情報による照合と、乱数列による事業者の照合を行うことが可能となり、許可されていない事業者が勝手に自動起動メッセージを送信しても、受信装置3が自動起動を受け付けなくすることが可能となり、結果として、緊急性の高い情報を悪用する事業者を防ぐことが可能となる。
【0115】
上述の実施例については特定の実施例を代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変形及び置換をすることができる。従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明による受信装置及び送信装置は、迅速、且つ、確実な緊急地震速報の伝達を可能とするとともに、受信側では許可された事業者の緊急情報であることを確かめることができるので、伝送制御信号を用いて緊急情報を伝送する伝送システムの用途に有用である。
【符号の説明】
【0117】
1 事業者送信装置
2 中継器
3,3−1,3−2,3−3 受信装置
11 緊急情報生成部
12 誤り訂正符号化部
13 再多重部
14 変調部
31 アンテナ
32 RF受信部
33 信号抽出部
34 起動信号検証部
35 緊急情報検証部
36 警告発生部
105 認証用乱数列
106 検証用乱数列
111 現在時刻コード生成部
112 認証用乱数列生成部
113 認証子生成部
114 緊急情報設定部
351 緊急情報抽出部
352 検証時刻コード生成部
353 検証用乱数列生成部
354 認証子検証部
1121 乱数生成部
1122 乱数列ビット位置決定部
1131 時刻情報設定部
1132 認証情報設定部
1133 CRC生成部
3531 乱数生成部
3532 乱数列ビット位置決定部
3541 CRC検査部
3542 認証情報検査部
3543 時刻情報検査部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上デジタルテレビジョン放送波の伝送制御信号により緊急情報を送信する送信装置であって、
緊急情報の有無を識別するための起動信号と当該緊急情報とを含む電文情報を生成する緊急情報生成手段と、
前記電文情報を地上デジタルテレビジョン放送波の伝送制御信号により伝送する緊急情報伝送手段とを備え、
前記緊急情報生成手段は、
予め規定された乱数列から、前記緊急情報を送信する際の送信時刻情報によって定まる認証用乱数列を選定して生成する手段と、
前記認証用乱数列により、当該緊急情報に関する時刻情報、当該緊急情報を伝送する事業者の認証に用いる認証情報、及び巡回冗長検査の情報とを含むデータを符号変換して認証子を生成する手段と、
該認証子を緊急情報に含めて設定する手段と、
を有することを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記認証用乱数列は、前記緊急情報を送信する際の送信時刻情報によって特定の関数から定まる前記予め規定された乱数列内のビット位置からの所定のビット数分からなることを特徴とする、請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記予め規定された乱数列、及び前記特定の関数は、送受信間で共通であることを特徴とする、請求項2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記認証子は、前記認証用乱数列と前記認証子を構成するデータの双方のビット数を揃えて排他的論理和を実行して生成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項5】
前記認証子は、前記緊急情報を送信する際の送信時刻または地震発生時刻などの時刻情報を鍵情報として暗号化されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項6】
当該緊急情報に関する時刻情報は、気象庁から配信された地震発生時刻又は送信時刻からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項7】
地上デジタルテレビジョン放送波の伝送制御信号により緊急情報を受信する受信装置であって、
緊急情報の有無を識別するための起動信号と当該緊急情報とを含む電文情報を前記伝送制御信号から抽出する信号抽出手段と、
前記緊急情報の有無を前記起動信号から検証する起動信号検証手段と、
前記緊急情報が有りを示す場合に、前記緊急情報を検証する緊急情報検証手段とを備え、
前記緊急情報検証手段は、
予め規定された乱数列から、前記緊急情報を受信する際の受信時時刻情報によって定まる検証用乱数列を選定して生成する手段と、
前記検証用乱数列により、当該緊急情報内の予め規定された認証子を符号変換し、当該緊急情報に関する時刻情報、当該緊急情報を伝送する事業者の認証に用いる認証情報、及び巡回冗長検査の情報を含むデータを復元する手段と、
当該緊急情報に関する時刻情報、当該緊急情報を伝送する事業者の認証に用いる認証情報、及び前記巡回冗長検査の情報をそれぞれ抽出して検査する手段と、
を有することを特徴とする受信装置。
【請求項8】
前記緊急情報検証手段が、当該緊急情報に関する時刻情報、当該緊急情報を伝送する事業者の認証に用いる認証情報、及び前記巡回冗長検査の情報をそれぞれ検査して正当であると判断した場合に、当該緊急情報について警告を発する警告発生手段を更に備えることを特徴とする、請求項7に記載の受信装置。
【請求項9】
前記検証用乱数列は、前記緊急情報を受信する際の受信時時刻情報によって特定の関数から定まる前記予め規定された乱数列内のビット位置からの所定のビット数分からなることを特徴とする、請求項7又は8に記載の送信装置。
【請求項10】
前記予め規定された乱数列、及び前記特定の関数は、送受信間で共通であることを特徴とする、請求項9に記載の受信装置。
【請求項11】
前記認証子は、前記認証用乱数列と前記認証子を構成するデータの双方のビット数を揃えて排他的論理和を実行して生成されており、前記緊急情報検証手段は、前記検証用乱数列による排他的論理和を実行して前記認証子を復元することを特徴とする、請求項7〜10に記載の受信装置。
【請求項12】
前記認証子は、前記緊急情報を送信する際の送信時刻または地震発生時刻などの時刻情報を鍵情報として暗号化されており、前記緊急情報検証手段は、前記緊急情報を受信する際の受信時刻情報を鍵情報として前記認証子を復元することを特徴とする、請求項7〜10に記載の受信装置。
【請求項13】
当該緊急情報に関する時刻情報は、気象庁から配信された地震発生時刻又は送信時刻からなることを特徴とする、請求項7〜12のいずれか一項に記載の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−245897(P2010−245897A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93342(P2009−93342)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】