説明

地上デジタル放送受信用室内アンテナ装置と当該アンテナを用いたダイバーシチ受信装置

【課題】無指向性アンテナを使用してダイバーシチによる受信効率を向上し、薄型ディスプレイを具備する地上波テレビ受像機に好適な地上デジタル放送受信用室内アンテナ装置を提供する。
【解決手段】室内に設置される薄型の表示パネルを備えたテレビ受像機30に、複数の水平偏波無指向性の折返し型方形ループアンテナ10a〜10dを一列に配置し、前記アンテナ10a〜10dの受信信号の電力の位相を揃え、合成して前記テレビ受像機30に供給する空間ダイバーシチ構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタル放送受信用室内アンテナ装置と当該アンテナを用いたダイバーシチ受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地上デジタル放送を受信する可搬形の小型テレビ受像機では、アンテナを一体に備え、テレビ受像機を移動した場合においても放送波を容易に受信できるようにしたものが考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記のように可搬形の小型テレビ受像機に一体的に設けられるアンテナとしては、シート上にプリント、或いは線状の形態をとるダイポールアンテナやモノポールアンテナが一般的に利用されている。
【0004】
しかし、上記線状の形態をとるアンテナは、線状のアンテナの素子方向に平行な面に偏波面を持つアンテナであり、当該偏波面に対して垂直の面では無指向性となるが、偏波面に対して平行の面では特定の方向にヌルを持つ指向性になり、無指向性ではない。
【0005】
また、可搬形の小型テレビ受像機に一体的に設けられるアンテナとして、従来の無指向性アンテナは構造が複雑で小型化が困難であるので、一般的には使用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−281906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
室内において、地上デジタル放送を視聴する小型テレビ受像機を考えると、アンテナを一体に備え、テレビ受像機を室内の任意の位置に移動した場合でも、良好に放送波を受信できることが望ましい。ただ、以下に説明するように室内の電波環境は屋外と比べて複雑であり、屋外にアンテナを設置する場合のように、単に放送波の到来方向にアンテナを向けるようなことでは済まず、受信環境は不安定で良好な受信状態にすることは簡単ではない。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、複数の小型な無指向性アンテナを使用し、ダイバーシチにより受信効率を向上し、最近の液晶による薄型ディスプレイを具備する地上波テレビ受像機に好適な地上デジタル放送受信用室内アンテナ装置と当該アンテナを用いたダイバーシチ受信装置を提供することを目的とする。
【0009】
すなわち、地上デジタル放送波のような水平偏波を受信する際、周囲を壁面で囲まれた室内のような閉空間では、電波は壁面での反射、散乱により、微小振幅で、遅延時間の差が短いパス群を経路とすることになり、前記パス群を経路とする電波の進行方向が全方向に均一と見なせる、所謂レイリーフェージング環境に近くなることが知られている。
【0010】
なお、前記レイリーフェージング環境は、
(1)直接波はなく。
【0011】
(2)送信ノードからは単一周波数の電波を送信する。
【0012】
(3)独立したキャリアとして分離できる素波(n)の数が非常に多い。
【0013】
(4)各素波(n)の電力がほぼ同一である。
【0014】
(5)素波(n)の位相(伝送距離依存)がランダムである。
【0015】
の条件を満たすような電波環境と定義されている。
【0016】
上記レイリーフェージング環境に近い状態である室内の電波環境において任意の受信点から見たとき、前記の各パス群を経路とする電波は全方向から一様に到来することになるため、単一のアンテナでなく、複数のアンテナをダイバーシチ受信の構成を採用した場合、該ダイバーシチ受信するアンテナ系について、室内の任意の設置位置について良好に受信できる累積確率を高めるためには、詳細は後述するが概略以下のような要件がある。
【0017】
(1)累積確率を高めるためには、上記複数のアンテナの相関性は低いこと、即ち相関係数は小さいことが望ましい。
【0018】
(2)ダイバーシチを構成する個々のアンテナ素子の指向性については無指向である場合、他の指向性を有するアンテナに比べてダイバーシチ受信における相関係数が小さくできる。
【0019】
このことから、前記受信点に配置するアンテナは、偏波面に対して無指向性であるアンテナを複数使用して、各アンテナ間の相関が小さい、すなわち各アンテナ間の相関をなるべく小さい状態にして、アンテナダイバーシチにより前記複数の無指向性のアンテナの各受信信号を合成することで受信効率を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1の発明に係る地上デジタル放送受信用室内アンテナ装置は、室内に設置される薄型の表示パネルを備えたテレビ受像機に、複数の水平偏波無指向性の小型アンテナ素子を一列に配置し、該複数の小型アンテナの受信信号の電力の位相を揃えて合成して前記テレビ受像機に供給する空間ダイバーシチ構成としたことを特徴とする。
【0021】
第2の発明は、前記第1の発明に係る地上デジタル放送受信用室内アンテナ装置において、前記小型アンテナ素子は、約1波長の長さのループアンテナ素子を表示パネルの厚さより短い一辺を持つ細長い形状に折り返して構成したことを特徴とする。
【0022】
第3の発明に係るダイバーシチ受信装置は、前記第1又は第2の発明の地上デジタル放送受信用室内アンテナ装置を一体に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、室内の反射波やマルチパスが複雑に入り乱れた電波環境においても、テレビ受像機の設置場所を選ばずにテレビ放送波を良好に受信できる地上デジタル放送受信用室内アンテナ装置と当該アンテナを用いた地上デジタル放送受信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る無指向性アンテナの概略構成を示し、(a)は基本となる方形ループアンテナの上面図、(b)は方形ループアンテナを中央で折り返して構成した折返し型方形ループアンテナの斜視図である。
【図2】同実施形態に係る折返し型方形ループアンテナの具体的な構成を示す斜視図である。
【図3】同実施形態に係る折返し型方形ループアンテナを平面状に展開した状態を示す図である。
【図4】同実施形態に係る折返し型方形ループアンテナの水平面指向性を示す図である。
【図5】液晶テレビ受像機の上部に4個の折返し型方形ループアンテナを配置する場合のイメージを示す斜視図である。
【図6】4個の折返し型方形ループアンテナを使用した最大比合成法によるダイバーシチ受信回路の構成を示すブロック図である。
【図7】ダイバーシチ受信回路におけるブランチ数及び相関係数の違いによる受信率改善度を求める累積確率曲線を示す図である。
【図8】ダイバーシチ受信を行う場合において、無指向性アンテナと指向性アンテナにおけるアンテナ間の距離と相関係数との関係を示す特性図である。
【図9】地上デジタル放送を受信する実験環境である建物の見取り図である。
【図10】折返し型方形ループアンテナ及びダイポールアンテナによりダイバーシチ受信を行った場合の観測結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
本実施形態では、アンテナ素子として無指向性アンテナを使用して空間ダイバーシチ構成とする。
【0027】
図1は本実施形態に係る無指向性アンテナの概略構成例を示したもので、(a)は基本となる方形ループアンテナ素子11の上面図、(b)は上記方形ループアンテナ素子11を中央で折り返して構成した折返し型方形ループアンテナ10の斜視図である。
【0028】
方形ループアンテナ素子11は、図1(a)に示すように全長が約1λのものを使用し、一方の短辺部に給電点12を設けている。上記λは使用周波数の波長、例えば使用周波数帯における下端に近い周波数の波長である。以下の説明では周波数500MHzの波長600mmをλとして説明する。上記方形ループアンテナ素子11を図1(b)に示すように長辺部の中央から折返し、下側に第1ループ素子13a、上側に第2ループ素子13bを形成して水平面に配置する。上記第1ループ素子13a及び第2ループ素子13b間の折返し部を平行線路14により接続し、第1ループ素子13aと第2ループ素子13bとを所定の間隔で対向配置する。給電点12は、例えば第1ループ素子13aに設けられる。
【0029】
上記折返し型方形ループアンテナ10は、詳細を後述するように可搬形の小型液晶テレビ受像機に装着して使用するが、短辺(奥行き)の長さを設置する液晶テレビ受像機の表示パネルの厚さに略同じか、より小さく設定し、該表示パネル部に容易に装着できるようにする。
【0030】
図1(a)に示す方形ループアンテナ素子11において、短辺に設けた給電点12に給電すると、矢印で示すように給電点12から長辺方向に電流が流れ、長辺の中央で電流の方向が反転する。すなわち、方形ループアンテナ素子11の各辺における電流分布は、短辺では中央位置が最大で両端側が順次低下する。また、ループの長辺では中央位置の電流がゼロで、この中央位置から短辺方向に向かって逆方向の電流が流れ、端部方向に行くに従って順次大きくなる。
【0031】
従って、上記方形ループアンテナ素子11を図1(b)に示すように中央位置で折り返して水平面に配置した折返し型方形ループアンテナ10では、第1ループ素子13aと第2ループ素子13bとの間を接続する平行線路14に流れる電流がゼロで、第1ループ素子13a及び第2ループ素子13bに矢印で示すように同じ方向の電流が流れ、アンテナの各辺の高さ方向の幅を調整することで偏波面に対して無指向性、すなわち水平面で無指向性の特性を持つようにする。
【0032】
次に上記折返し型方形ループアンテナ10の具体的な構成例について説明する。
【0033】
図2は折返し型方形ループアンテナ10の具体的な構成を示す斜視図、図3は折返し型方形ループアンテナ10を平面状に展開した状態を示す図である。
【0034】
この実施形態に係る折返し型方形ループアンテナ10は、図3に示すように横方向の長さL1が約0.39λ、高さH1が約0.07λの1枚の金属板21をループ素子として使用している。
【0035】
上記金属板21は、中央の水平方向に長さL2が約0.37λ、高さ方向の幅d1が約6mmのスリット22を設けてループ状とし、長さL1が約0.39λ、高さH2が0.028λの第1ループ素子13a及び第2ループ素子13bを構成する。
【0036】
また、第1ループ素子13aの下側中央及び第2ループ素子13bの上側中央には、それぞれ幅W1が約0.05λ、深さd2が約0.014λの溝23a、23bを設ける。第1ループ素子13aは、上記溝23aの中央部分において例えば約4mmの幅d3で分離し、その分離した部分の先端に給電点12を設けている。
【0037】
更に、金属板21は、左右両端の上下部分を横幅D1(約0.022λ)、高さH3(約0.014λ)の大きさで切欠き、左右両端の中央部を凸状に形成して先端折曲げ部24a、24bを構成している。
【0038】
そして、上記金属板21は、溝23a、23bの両端部をそれぞれ一方の側に90°折曲げると共に、先端折曲げ部24a、24bをそれぞれ一方の側に90°折曲げ、図2に示すように、長方形状の折返し型方形ループアンテナ10を構成する。
【0039】
上記折返し型方形ループアンテナ10は、横幅L3が約0.15λ、高さH1が約0.07λ、上記W1に相当する部分の奥行きW3が約0.05λの大きさとなる。
【0040】
また、図4は上記折返し型方形ループアンテナ10の水平面指向性を示したもので、図中の符号aは470MHzにおける特性、符号bは620MHzにおける特性、符号cは770MHzにおける特性を示している。
【0041】
上記の指向性の特性から明らかなように本実施形態に係る折返し型方形ループアンテナ10は、地上デジタル放送の470〜770MHzの周波数において略無指向性となっている。
【0042】
図5は、例えば19インチの液晶テレビ受像機30のテレビ本体(本体ケース)31の上部に4個の折返し型方形ループアンテナ10a〜10dを1列に配置してダイバーシチ受信を行う場合のイメージを示す斜視図である。上記各折返し型方形ループアンテナ10a〜10dは、相関係数が0.6以下となる間隔に設定する。
【0043】
19インチの液晶テレビ受像機30の場合、テレビ本体31は例えば横幅が約469mm、液晶表示パネル部の厚さが約42mmである。一方、各折返し型方形ループアンテナ10a〜10dは、横幅L3が約0.15λ、高さH1が約0.07λ、奥行きW3が約0.05λであるので、90×40mmの面を正面に向け、10mmの間隔で1列に配置することができる。この場合、各折返し型方形ループアンテナ10a〜10dの中心間隔は、約100mmとなる。
【0044】
上記のように4個の折返し型方形ループアンテナ10a〜10dを10mm間隔で1列に配置した場合、その全長は約390mmであるので、テレビ本体31の上部に配設することができる。なお、図5では4個の折返し型方形ループアンテナ10a〜10dをテレビ本体31の上方に位置させているが、実際には折返し型方形ループアンテナ10a〜10dをアンテナケースに収納して、その下端から略中央部までをテレビ本体31の上部に埋設することが可能である。
【0045】
次に、複数の折返し型方形ループアンテナ10を使用し、ダイバーシチ受信における受信信号処理方式の一つである最大比合成法によりダイバーシチ受信を行う場合の回路構成について説明する。
【0046】
図6はブランチ数Mを4、すなわち4個の折返し型方形ループアンテナ10a〜10dを使用した最大比合成法による空間ダイバーシチ受信装置40の構成を示すブロック図である。このダイバーシチ受信装置40は、テレビ受像機に併設されるか、テレビ受像機内に設けられる。
【0047】
4個の折返し型方形ループアンテナ10a〜10dにより受信された信号は、RF/IF部41a〜41dに入力され、高周波増幅された後、中間周波信号(IF)に変換されて出力される。このRF/IF部41a〜41dから出力される中間周波信号は、位相調整回路42a〜42dに入力されて信号の電力が同位相に調整され、更に可変増幅器43a〜43dにて各受信信号のレベルに応じて振幅調整、すなわち重み付けされる。この可変増幅器43a〜43dで重み付けされた信号は、加算回路44により合成された後、テレビ受像機本体50の入力端子51よりテレビチューナ45に入力される。
【0048】
上記テレビチューナ45は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)復調部46及び映像・音声復調部47からなり、OFDM復調部46によりデジタルデータを復調して映像・音声復調部47へ出力すると共に、受信レベルやMER(Modulation Error Ratio:変調誤差比)などを検出して制御部48へ出力する。上記MERは、放送局から送信された振幅・位相と、実際の振幅・位相との差を数値化したものである。上記テレビチューナ45の映像・音声復調部47で復調された映像信号及び音声信号は、ディスプレイ装置52へ送られる。
【0049】
上記制御部48は、OFDM復調部46から出力される受信レベルやMERに基づいてダイバーシチ受信装置40における位相調整回路42a〜42dの位相を制御すると共に、可変増幅器43a〜43dの増幅度を制御し、受信信号を同位相にすると共に各受信信号のレベルに応じて重み付けを行い、最も電波の強い方向に指向性を向け、合成後のS/N(signal/noise)比を最大にする。
【0050】
上記ダイバーシチ受信装置40は、ブランチ数M及び相関係数の違いによって受信率の改善度が異なる。ブランチ数Mの違いによる受信率改善度は、図7(a)に示す累積確率曲線(受信レベルの相対比)から求められ、相関係数の違いによる受信率の改善度は、図7(b)に示す累積確率曲線から求められる。
【0051】
図7(a)、(b)に示す累積確率曲線は、横軸は、受信信号レベルをある受信信号レベルを基準としてデシベル単位で目盛った値を示し、縦軸は、横軸に示す受信信号レベル以下の値の観測サンプル数を受信信号レベルの全観測サンプル数(母集団)を基準としてパーセント単位で目盛ったもの、即ち累積確率を示す。
【0052】
横軸の値が高い受信信号レベルにおいて、縦軸の受信信号レベルの観測サンプル数が累積されるとき、即ちグラフの2次元平面上で曲線が右寄りに描かれるとき受信率が高いことを表し、また曲線と曲線が横軸方向に離れているほど改善効果が高いことを表す。
【0053】
上記図7(a)は、ブランチ数M(1〜10)の違いに対する受信率を表し、各ブランチの相関係数が「無相関」すなわち相関係数が「0」の最良の改善効果が得られる状態での特性を示している。図7(b)は、ブランチ数Mが「2」の場合に着目し、「相関係数|ρ|=1〜0」とした場合の受信率を表し、相関係数と累積確率との関係を示している。
【0054】
ダイバーシチ受信回路のブランチ数Mを「1」から「2」に増加した場合、受信率の改善度は、図7(a)に示す「M=1」の累積確率曲線と「M=2」の累積確率曲線から例えば累積確率10%で見ると約8[dB]改善することが分かる。
【0055】
また、図7(b)に示すようにダイバーシチ受信回路のブランチ数Mが「2」の場合において、相関係数|ρ|を「1」〜「0」の範囲で変化すると、例えば累積確率10%で見ると受信率の改善度は約5[dB]である。
【0056】
図8は、複数のアンテナによりダイバーシチ受信を行う場合において、無指向性アンテナと指向性アンテナ(半波長ダイポールアンテナ)におけるアンテナ間の距離と相関係数との関係を示した特性図であり、横軸にアンテナ間の距離d(λ)をとり、縦軸に相関係数(|ρ|)をとって示した。また、図8における実線aは電波の到来角が一様なレイリーフェージング環境下での無指向性アンテナの特性を示し、細線bは指向性アンテナ(半波長ダイポールアンテナ)の特性を示している。
【0057】
上記図8において、相関係数を|ρ|<0.6に設定すると、無指向性アンテナの場合、中心間隔を0.15λ以上に設定すればよいのに対し、指向性アンテナは中心間隔を0.2λ以上に設定する必要がある。
【0058】
以上のことから可搬形のテレビ受像機等の限られた設置スペースに複数のアンテナを配置してダイバーシチ受信を行う場合には、無指向性アンテナの使用が有利と考えられる。
【0059】
次に建物の室内において、上記折返し型方形ループアンテナ10a〜10d及びモノポールアンテナを使用して実際にダイバーシチ受信を行った場合について説明する。
【0060】
図9は、地上デジタル放送を受信する実験環境である建物61の見取り図を示したもので、例えば横幅W11(x軸方向)が6.0m、奥行きW12(y軸方向)が3.68mで、後方から地上デジタル放送波が20°の入射角で到来する。上記建物61には、前面側にガラス窓62及びドア63が設けられ、両側が壁64、65となっている。また、建物61の背面側に床面から所定の高さの壁66が設けられ、その上側にガラス窓67及び3つの金属製ブラインド68a〜68cが設けられている。
【0061】
上記建物61は、地上デジタル放送波が到来する背面側の金属製ブラインド68a〜68cを下ろして電波を遮蔽し、地上デジタル放送の直接波が室内69に入らないようにして、室内69をレイリーフェージング環境に近い電波環境としている。
【0062】
そして、上記室内69に図示右側の壁65に近接して測定エリア71を設定した。この測定エリア71は、例えば横幅が約0.8m、奥行きが約1.0mで、その中心位置と右側の壁65との距離D11が約0.6m、中心位置と後方の壁66までの距離D12が約1.6mとなっている。
【0063】
そして、上記室内68の測定エリア71において、折返し型方形ループアンテナ10a〜10d及びモノポールアンテナを使用し、地上デジタル放送27チャネル、周波数557.14MHz、NHK総合テレビ放送について、4ブランチ、最大比合成法によるダイバーシチ受信を行った。
【0064】
図10(a)は、折返し型方形ループアンテナ10a〜10dをx軸方向に並行するように配置してダイバーシチ受信を行った場合の受信レベルの観測結果(カラーチャート)であり、同図(b)は折返し型方形ループアンテナ10a〜10dをy軸方向に平行するように配置してダイバーシチ受信を行った場合の受信レベルの観測結果である。
【0065】
図10(c)は、モノポールアンテナをx軸方向に平行するように配置してダイバーシチ受信を行った場合の受信レベルの観測結果(カラーチャート)であり、同図(d)はモノポールアンテナをy軸方向に平行するように配置してダイバーシチ受信を行った場合の受信レベルの観測結果である。
【0066】
上記の観測結果から明らかなように、本発明による折返し型方形ループアンテナ10a〜10dを用いたダイバーシチ受信による室内での受像がモノポールアンテナを用いた場合に比較し、良好なエリアをより広く確保できており、ダイバーシチ受信による高効率合成の効果が得られていることが解る。
【0067】
以上説明したように本発明は、室内において地上デジタル放送のような水平偏波を受信する際に無指向性アンテナの形状を小型化し難いという点を解決し、無指向性アンテナの比較的近距離の配置でも相関を小さくできる特徴を生かし、スマートな形状とダイバーシチ受信による高効率合成を両立させることができる。
【0068】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【符号の説明】
【0069】
10、10a〜10d…折返し型方形ループアンテナ、11…方形ループアンテナ素子、12…給電点、13a…第1ループ素子、13b…第2ループ素子、14…平行線路、21…金属板、22…スリット、23a、23b…溝、24a、24b…先端折曲げ部、30…液晶テレビ受像機、31…テレビ本体、40…ダイバーシチ受信装置、41a〜41d…RF/IF部、42a〜42d…位相調整回路、43a〜43d…可変増幅器、44…加算回路、45…テレビチューナ、46…OFDM復調部、47…映像・音声復調部、48…制御部、50…テレビ受像機本体、51…入力端子、52…ディスプレイ装置、61…建物、62…ガラス窓、63…ドア、64、65、66…壁、67…ガラス窓、68a〜68c…金属製ブラインド、69…室内、71…測定エリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に設置される薄型の表示パネルを備えたテレビ受像機に、複数の水平偏波無指向性の小型アンテナ素子を一列に配置し、該複数の小型アンテナの受信信号の電力の位相を揃えて合成して前記テレビ受像機に供給する空間ダイバーシチ構成としたことを特徴とする地上デジタル放送受信用室内アンテナ装置。
【請求項2】
前記小型アンテナ素子は、約1波長の長さのループアンテナ素子を表示パネルの厚さより短い一辺を持つ細長い形状に折り返して構成したことを特徴とする請求項1に記載の地上デジタル放送受信用室内アンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の地上デジタル放送受信用室内アンテナを一体に設けたことを特徴とするダイバーシチ受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−191406(P2012−191406A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52777(P2011−52777)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(504378814)八木アンテナ株式会社 (190)
【Fターム(参考)】