地上デジタル放送用リングループアンテナ装置
【課題】簡易な構造で、直径が小さく、小型化が可能な地上デジタル放送用リングループアンテナ装置を提供する。
【解決手段】周囲長が約1λのループ状主放射素子11に対し、その前方に周囲長が約1λの長さの複数のループ状副放射素子12a〜12cを順次約0.2λの間隔を保って平行に設ける。そして、上記主放射素子11及び複数の副放射素子12a〜12cは、同位相の電流が流れるように給電線路15により並列給電する。更に、主放射素子11の後方に約0.15λの間隔を保って複数のループ状反射素子14a〜14cを設ける。上記反射素子14a〜14cは、それぞれ異なる周囲長に設定する。例えば外側の反射素子14aは周囲長を約1.1λ、中央の反射素子14bは周囲長を約1λ、内側の反射素子14cは周囲長を約0.95λに設定する。
【解決手段】周囲長が約1λのループ状主放射素子11に対し、その前方に周囲長が約1λの長さの複数のループ状副放射素子12a〜12cを順次約0.2λの間隔を保って平行に設ける。そして、上記主放射素子11及び複数の副放射素子12a〜12cは、同位相の電流が流れるように給電線路15により並列給電する。更に、主放射素子11の後方に約0.15λの間隔を保って複数のループ状反射素子14a〜14cを設ける。上記反射素子14a〜14cは、それぞれ異なる周囲長に設定する。例えば外側の反射素子14aは周囲長を約1.1λ、中央の反射素子14bは周囲長を約1λ、内側の反射素子14cは周囲長を約0.95λに設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタル放送の送信局、受信局等に用いられる直線偏波または円偏波特性の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
UHF放送用送受信アンテナでは、基幹放送局よりの放送波の通信を行なうためにアンテナの特性は直線偏波、円偏波の広帯域特性なものが要求される。
【0003】
従来、UHF帯の地上デジタル放送用の送受信アンテナでは、直線偏波特性の八木・宇田アンテナが多く利用されている。しかし、この八木・宇田アンテナは、帯域特性が狭帯域である。
【0004】
このため近年では、ループ状のアンテナ素子を用いて帯域特性を改善し、また、円偏波を可能とした円偏波八木・宇田アレイアンテナが考えられている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、地上デジタル放送を行なうUHF帯は、470〜770MHzの非常に広い帯域を有しているので、上記円偏波八木・宇田アレイアンテナでは帯域幅が不十分である。
【非特許文献1】映像情報メディア学会誌Vol.51,No.1,pp.121〜128(1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように従来では、地上デジタル放送用送受信アンテナとして直線偏波特性の八木・宇田アンテナが一般的に使用されているが、帯域特性が狭いという問題があり、また、円偏波を可能とした円偏波八木・宇田アレイアンテナにおいても十分な帯域を得ることができなかった。
【0007】
また、上記従来のアンテナは、アンテナ素子を10素子以上使用することで高利得とすることが可能となり、かつ、素子間隔がλ/4等、比較的大きな間隔に設定されるため構造が大きくなるという問題があった。
【0008】
また、上記従来のアンテナでは、反射素子は使用周波数帯域幅に対して中心周波数で同調するような大きさで構成されており、そのため低い周波数とか高い周波数においては中心周波数より電圧定在波比(VSWR)が劣化していた。
【0009】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、簡易な構造で、直径が小さく、小型化が可能であり、かつ使用周波数帯域の全帯域において良好な電圧定在波比特性が得られる地上デジタル放送用リングループアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置は、ループ状の主放射素子と、前記主放射素子の前方に所定の間隔を保って配置されるループ状の副放射素子と、前記副放射素子の前方に所定の間隔を保って配置される少なくとも1つ以上のループ状の導波素子と、前記主放射素子の後方に所定の間隔を保って配置されるループ状の反射素子と、前記主放射素子及び副放射素子にほぼ同位相の電流が流れるように該主放射素子及び副放射素子に並列給電する給電線路とを具備したことを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、副放射素子を複数設けたことを特徴とする。
【0012】
第3の発明に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置は、ループ状の主放射素子と、前記主放射素子の前方に順次所定の間隔を保って配置されるループ状の複数の副放射素子と、前記主放射素子の後方に所定の間隔を保って配置されるループ状の反射素子と、前記主放射素子及び複数の副放射素子にほぼ同位相の電流が流れるように該主放射素子及び複数の副放射素子に並列給電する給電線路とを具備したことを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、上記第3の発明に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、主放射素子及び副放射素子に一点リアクタンス装荷を設けたことを特徴とする。
【0014】
第5の発明は、上記第1ないし第4の発明に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、主放射素子及び副放射素子の各間隔を約0.2波長に設定したことを特徴とする。
【0015】
第6の発明は、上記第1ないし第5の発明に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、反射素子は、ループ径の異なる複数の反射素子によって構成したことを特徴とする。
【0016】
第7の発明は、上記第1ないし第6の発明に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、各素子は誘電体基板上に金属箔により形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡易な構造で小型化が可能であり、かつ、水平面指向性の利得を高利得とすることができる。また、主放射素子及び副放射素子に同位相の電流が流れるように並列給電することにより、インピーダンス特性を広帯域にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る直線偏波の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の基本的な構成を示したものである。
図1において、10はアンテナ素子を支持するためのアームで、このアーム10上には、主放射素子11が設けられる。この主放射素子11は、周囲長が約1λ(λ:使用周波数帯域における中心周波数の波長)のループ状の素子により形成される。地上デジタル放送に使用されるUHFの周波数帯域は、現在470〜770MHzとなっている。
【0019】
また、上記アーム10上には、主放射素子11の前方に所定の間隔例えば約0.2λ〜0.25λの間隔を保って副放射素子12が平行に設けられる。この副放射素子12は、周囲長が約1λあるいはそれより若干短い長さのループ素子により形成される。上記主放射素子11及び副放射素子12の給電点には給電線路15が接続され、主放射素子11及び副放射素子12に同位相の電流が流れるように並列給電される。上記給電線路15は、図示しないが、平衡−不平衡可変を行なう変換バランを介して給電部に接続される。
【0020】
更に、上記アーム10上には、副放射素子12の前方に複数例えば2つの導波素子13a、13bが順次所定の間隔例えば約0.2λの間隔を保って平行に設けられる。この導波素子13a、13bは、周囲長が約0.76λ〜1.2λのループ素子により形成される。
【0021】
また、上記アーム10上には、主放射素子11の後方に所定の間隔例えば約0.15λの間隔を保って複数例えば3つの反射素子14a〜14cが設けられる。この反射素子14a〜14cは、ループ素子によって形成されるが、それぞれ異なる周囲長に設定される。例えば外側の反射素子14aは周囲長が約1.1λ、中央の反射素子14bは周囲長が約1λ、内側の反射素子14cは周囲長が約0.95λに設定される。すなわち、反射素子14aは使用周波数帯域の低域周波数、反射素子14bは使用周波数帯域の中心周波数、反射素子14cは使用周波数帯域の高域周波数に対応して設定される。
【0022】
上記第1実施形態に係る直線偏波リングループアンテナは、主放射素子11とその前方に設けた副放射素子12に給電する対称二給電方式を用いたものである。
上記直線偏波リングループアンテナにおいて、1巻きループ素子の入力インピーダンスは、周囲長が約1波長より小さいときは容量性に、それより大きいときは誘導性に動作する。従って、八木・宇田アンテナと同様に、容量性に動作するループ素子を導波素子として、誘導性に動作するループ素子を反射素子として軸方向に配列する。
【0023】
そして、上記主放射素子11として周囲長が約1λのループ素子を使用し、その素子の電流が定在波的にのるように給電すると、ループ素子を含む面と直角な方向に直線偏波が発生する。従って、このループ素子の軸方向に他のループ素子を多素子配列することにより、単方向性で広帯域なリングループアンテナを作成することができる。
【0024】
上記のように構成したリングループアンテナは、半波長アンテナを2段スタックしたもの、つまり八木・宇田アンテナを2段積重ねたものと等しくなる。従って、上記実施形態に示したように5素子構成のリングループアンテナであっても、従来の10〜12素子程度の多素子八木・宇田アンテナと同等の利得を得ることができる。更に、主放射素子11、副放射素子12及び導波素子13a、13bの間隔を従来の八木・宇田アンテナの素子間隔0.25λより狭い、約0.2λ程度に設定できるので、小型化することができる。
【0025】
また、複数の反射素子14a〜14cを使用し、使用周波数帯域、すなわち470〜770MHzのUHF帯域における低域周波数、中心周波数、高域周波数に同調させることにより、低い周波数から高い周波数に亘って良好なVSWR特性を得ることができる。
【0026】
上記図1に示した対称二給電方式を用いた5素子構成の直線偏波リングループアンテナにおいて、UHF帯域の中心周波数を620MHz、主放射素子11及び副放射素子12の周囲長を約1λ、導波素子13a、13bの周囲長を約0.9λ、各素子間隔を0.2λ、反射素子14a〜14cの各対応周波数における周囲長を約1.05λ、主放射素子11と反射素子14a〜14cとの間隔を0.15λに設定した場合、図2(a)に示す水平面指向性(シミュレーション特性)、同図(b)に示す垂直面指向性(シミュレーション特性)が得られた。なお、上記反射素子14aは例えば470MHzの低域周波数に対して、反射素子14bは620MHzの中心周波数に対して、反射素子14cは770MHzの高域周波数に対して、それぞれ周囲長を約1.05λに設定している。また、上記図2(a)、(b)において、aは470MHzの低域周波数における特性、bは620MHzの中心周波数における特性、cは770MHzの高域周波数における指向性を示している。
【0027】
図2(a)に示す水平面指向性では、470〜770MHzのUHF全帯域に亘って8dB以上の指向性が得られた。また、図2(b)に示す垂直面指向性では、水平面指向性とほぼ同じような特性となっている。
【0028】
また、図3は、上記5素子構成の直線偏波リングループアンテナにおけるVSWR特性を示したものである。上記図3に示すVSWR特性では、470〜770MHzにおいて、約−7.5dB(VSWR 2.5)以下が得られた。
上記実施形態によれば、簡易な形状の素子構成で小型化が可能となり、かつ広帯域で高利得の直線偏波リングループアンテナを実現することができた。
【0029】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の基本的な構成を示したものである。
【0030】
図4に示すように、アーム10上には、周囲長が約1λのループ素子により形成された主放射素子11が設けられる。
【0031】
また、上記アーム10上には、主放射素子11の前方に複数例えば3つの副放射素子12a〜12cが所定の間隔例えば約0.2λの間隔を保って平行に設けられる。この副放射素子12a〜12cは、周囲長が約1λあるいはそれより若干短い長さのループ素子により形成される。そして、上記主放射素子11及び複数の副放射素子12a〜12cは、同位相の電流が流れるように給電線路15により並列給電される。
【0032】
更に、上記アーム10上には、主放射素子11の後方に上記第1実施形態と同様に所定の間隔例えば約0.15λの間隔を保って複数例えば3つの反射素子14a〜14cが設けられる。
【0033】
上記第2実施形態に係るリングループアンテナ装置は、主放射素子11及び副放射素子12a〜12cの全てに給電する並列給電方式を用いたものである。
【0034】
上記のように主放射素子11及び副放射素子12a〜12cの全てに給電するように構成した場合、各素子における反射が無くなり、変換バランを設けなくても給電線路15への漏洩電流を無くすことかできる。この結果、変換バランを設ける必要が無くなり、より広帯域化を図ることが可能になる。
【0035】
次に、上記直線偏波リングループアンテナの具体的な構成例について説明する。図5は、上記図4に示した5素子構成の直線偏波リングループアンテナの具体的な構成例を示したもので、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【0036】
図5に示すようにアーム10上に上記主放射素子11を設けると共に、その前方に複数の副放射素子12a〜12cを所定の間隔で設ける。そして、上記アーム10内に給電線路15を設け、上記図4で説明したように第2主放射素子11及び副放射素子12a〜12cの給電端子に並列給電する。上記給電線路15は、同軸給電ケーブル17に接続され、アーム10の外部に導出される。上記同軸給電ケーブル17の先端には、給電用コネクタ18が設けられる。
【0037】
また、上記アーム10上には、主放射素子11の後方に所定の間隔で例えば3個の反射素子14a〜14cを配置する。この反射素子14a〜14cは、上記したように使用周波数帯域における低域周波数、中心周波数、高域周波数に対応して設けられる。
【0038】
上記図4及び図5に示したように並列給電方式による5素子構成の直線偏波リングループアンテナにおいて、UHF帯域の中心周波数を620MHz、主放射素子11の周囲長を約1λ、副放射素子12a〜12cの周囲長を約0.9λ、各素子間隔を0.2λ、反射素子14a〜14cの各対応周波数における周囲長を約1.05λ、主放射素子11と反射素子14a〜14cとの間隔を0.15λに設定した場合、図6(a)に示す水平面指向性(シミュレーション特性)、同図(b)に示す垂直面指向性(シミュレーション特性)が得られた。なお、上記反射素子14aは470MHzの低域周波数に対して、反射素子14bは620MHzの中心周波数に対して、反射素子14cは770MHzの高域周波数に対して、それぞれ周囲長を約1.05λに設定している。
【0039】
図7(a)は上記並列給電方式を用いた5素子構成の直線偏波リングループアンテナの水平面指向性の実測値、同図(b)は同アンテナの垂直面指向性の実測値を示したものである。上記図6(a)、(b)及び図7(a)、(b)において、aは470MHzの低域周波数における特性、bは620MHzの中心周波数における特性、cは770MHzの高域周波数における指向性を示している。
【0040】
上記図6(a)及び図7(a)に示す水平面指向性では、470〜770MHzのUHF全帯域に亘って8dB以上の指向性が得られた。また、図6(b)及び図7(b)に示す垂直面指向性では、水平面指向性とほぼ同じような特性となっている。
【0041】
上記のように上記並列給電方式を用いた5素子構成の直線偏波リングループアンテナでは、水平面指向性及び垂直面指向性共に良好な特性が得られた。
【0042】
また、図8は、上記並列給電方式を用いた5素子構成の直線偏波リングループアンテナにおけるVSWR特性を示したものである。
また、図9は、上記並列給電方式を用いた5素子構成の直線偏波リングループアンテナにおけるVSWR特性の実測値を示したものである。上記図9において、
a点は、周波数:470MHz、VSWR:1.65
b点は、周波数:500MHz、VSWR:1.03
c点は、周波数:600MHz、VSWR:1.07
d点は、周波数:700MHz、VSWR:1.40
e点は、周波数:770MHz、VSWR:2.25
であった。また、特性インピーダンスは、75Ωである。
【0043】
上記図8及び図9に示したVSWR特性では、470〜770MHzのUHF全帯域において、約−7.5dB(VSWR 2.5)以下が得られた。
上記第2実施形態に係る直線偏波リングループアンテナでは、上記の諸特性から明らかなように470〜770MHzのUHF全帯域をカバーする非常に広い広帯域特性が得られた。
【0044】
上記第2実施形態によれば、簡易な形状の素子構成により、アンテナ素子と給電回路を一体化して軽量、かつ小型化が可能となり、しかもUHF全帯域をカバーする広帯域で高利得の直線偏波リングループアンテナを実現することができた。
【0045】
上記第2実施形態では、アンテナを5素子構成とした場合について示したが、更に多素子構成とすることが可能である。図10は上記第2実施形態において、n個の副放射素子12a〜12nを設けた場合の構成例を示したものである。この場合、主放射素子11及び複数の副放射素子12a〜12nの全てに同位相の電流が流れるように給電線路15により並列給電する。
【0046】
上記のように多素子構成とすることにより利得を更に向上することができる。例えば8素子構成とした場合には約10dBiの動作利得、16素子構成とした場合には約12dBiの動作利得を得ることができる。
【0047】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態に係る円偏波リングループアンテナについて説明する。
図11は、本発明の第3実施形態に係る5素子円偏波リングループアンテナの基本的な構成例を示したものである。
この第3実施形態に係る円偏波リングループアンテナは、上記第2実施形態に係る並列給電方式のリングループアンテナにおいて、主放射素子11及び副放射素子12a〜12cの所定位置、すなわち給電線路15に接続される給電点(下端部)からほぼ90°の位置にリアクタンス装荷素子21を設けたものである。この場合、図11に示すように正面方向から見て、主放射素子11及び副放射素子12a〜12cの右側にリアクタンス装荷素子21を設けた場合は右旋円偏波となり、主放射素子11及び副放射素子12a〜12cの左側にリアクタンス装荷素子21を設けた場合は左旋円偏波となる。なお、上記リアクタンス装荷は、物理的に行なう場合と電子的に行なう場合が考えられる。
【0048】
上記のように主放射素子11及び副放射素子12a〜12cにリアクタンス装荷素子21を設けることにより、第2実施形態に示した直線偏波リングループアンテナの構成を変えずに円偏波リングループアンテナとすることができる。
【0049】
図12(a)は上記5素子構成の円偏波リングループアンテナの軸比特性で、横軸に周波数(MHz)を取り、縦軸に軸比(dB)を取って示した。
図12(b)は上記5素子構成の円偏波リングループアンテナの利得特性で、横軸に周波数(MHz)を取り、縦軸に利得(dB)を取って示した。
【0050】
上記円偏波特性の指向性は、UHF帯域の全帯域に亘っての良好な特性ではないが、特定な周波数では良好な軸比が得られた。また、利得特性は、UHF帯域の全帯域に亘って安定した利得が得られた。
【0051】
なお、上記第3実施形態では、5素子構成の円偏波リングループアンテナに実施した場合について示したが、更に多素子構成としても良いことは勿論である。
また、上記各実施形態では、3つの反射素子14a〜14cを使用し、反射素子14aは470MHzの低域周波数、反射素子14bは620MHzの中心周波数、反射素子14cは770MHzの高域周波数に対してそれぞれ周囲長を設定したが、各反射素子の周囲長は上記周波数に限定されるものではなく、その他の任意の周波数に対して設定し得るものである。
また、上記各実施形態では、3つの反射素子14a〜14cを用いて構成した場合について説明したが、その他、例えば1つあるいは2つ以上の反射素子により構成しても良い。
【0052】
更に、上記各実施形態では、アンテナ素子をループ状に形成した場合について説明したが、その他、例えば直線状に形成しても、上記実施形態と同様の特性を得ることができる。
また、上記各実施形態では、470〜770MHz帯の一般用UHF帯受信アンテナを例として説明したが、その他、例えばデジタル地上波放送用の中継局の送受信アンテナとしても実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1実施形態に係る直線偏波の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の基本構成図。
【図2】(a)は同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の水平面指向性を示す図、(b)は垂直面指向性を示す図。
【図3】同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置のVSWR特性を示す図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る直線偏波の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の基本構成図。
【図5】同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の具体的な構成例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図。
【図6】(a)は同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の水平面指向性を示す図、(b)は垂直面指向性を示す図。
【図7】(a)は同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の水平面指向性の実測値、(b)は同垂直面指向性の実測値。
【図8】同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置のVSWR特性を示す図。
【図9】同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置のVSWR特性の実測値。
【図10】同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、n個の副放射素子を設けた場合の構成例を示す図。
【図11】本発明の第3実施形態に係る円偏波の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の基本構成図。
【図12】(a)は同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の軸比特性を示す図、(b)は利得特性を示す図。
【符号の説明】
【0054】
10…アーム、11…主放射素子、12、12a〜12n…副放射素子、13a、13b…導波素子、14a〜14c…反射素子、15…給電線路、17…同軸給電ケーブル、18…給電用コネクタ、21…リアクタンス装荷素子。
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタル放送の送信局、受信局等に用いられる直線偏波または円偏波特性の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
UHF放送用送受信アンテナでは、基幹放送局よりの放送波の通信を行なうためにアンテナの特性は直線偏波、円偏波の広帯域特性なものが要求される。
【0003】
従来、UHF帯の地上デジタル放送用の送受信アンテナでは、直線偏波特性の八木・宇田アンテナが多く利用されている。しかし、この八木・宇田アンテナは、帯域特性が狭帯域である。
【0004】
このため近年では、ループ状のアンテナ素子を用いて帯域特性を改善し、また、円偏波を可能とした円偏波八木・宇田アレイアンテナが考えられている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、地上デジタル放送を行なうUHF帯は、470〜770MHzの非常に広い帯域を有しているので、上記円偏波八木・宇田アレイアンテナでは帯域幅が不十分である。
【非特許文献1】映像情報メディア学会誌Vol.51,No.1,pp.121〜128(1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように従来では、地上デジタル放送用送受信アンテナとして直線偏波特性の八木・宇田アンテナが一般的に使用されているが、帯域特性が狭いという問題があり、また、円偏波を可能とした円偏波八木・宇田アレイアンテナにおいても十分な帯域を得ることができなかった。
【0007】
また、上記従来のアンテナは、アンテナ素子を10素子以上使用することで高利得とすることが可能となり、かつ、素子間隔がλ/4等、比較的大きな間隔に設定されるため構造が大きくなるという問題があった。
【0008】
また、上記従来のアンテナでは、反射素子は使用周波数帯域幅に対して中心周波数で同調するような大きさで構成されており、そのため低い周波数とか高い周波数においては中心周波数より電圧定在波比(VSWR)が劣化していた。
【0009】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、簡易な構造で、直径が小さく、小型化が可能であり、かつ使用周波数帯域の全帯域において良好な電圧定在波比特性が得られる地上デジタル放送用リングループアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置は、ループ状の主放射素子と、前記主放射素子の前方に所定の間隔を保って配置されるループ状の副放射素子と、前記副放射素子の前方に所定の間隔を保って配置される少なくとも1つ以上のループ状の導波素子と、前記主放射素子の後方に所定の間隔を保って配置されるループ状の反射素子と、前記主放射素子及び副放射素子にほぼ同位相の電流が流れるように該主放射素子及び副放射素子に並列給電する給電線路とを具備したことを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、副放射素子を複数設けたことを特徴とする。
【0012】
第3の発明に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置は、ループ状の主放射素子と、前記主放射素子の前方に順次所定の間隔を保って配置されるループ状の複数の副放射素子と、前記主放射素子の後方に所定の間隔を保って配置されるループ状の反射素子と、前記主放射素子及び複数の副放射素子にほぼ同位相の電流が流れるように該主放射素子及び複数の副放射素子に並列給電する給電線路とを具備したことを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、上記第3の発明に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、主放射素子及び副放射素子に一点リアクタンス装荷を設けたことを特徴とする。
【0014】
第5の発明は、上記第1ないし第4の発明に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、主放射素子及び副放射素子の各間隔を約0.2波長に設定したことを特徴とする。
【0015】
第6の発明は、上記第1ないし第5の発明に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、反射素子は、ループ径の異なる複数の反射素子によって構成したことを特徴とする。
【0016】
第7の発明は、上記第1ないし第6の発明に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、各素子は誘電体基板上に金属箔により形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡易な構造で小型化が可能であり、かつ、水平面指向性の利得を高利得とすることができる。また、主放射素子及び副放射素子に同位相の電流が流れるように並列給電することにより、インピーダンス特性を広帯域にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る直線偏波の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の基本的な構成を示したものである。
図1において、10はアンテナ素子を支持するためのアームで、このアーム10上には、主放射素子11が設けられる。この主放射素子11は、周囲長が約1λ(λ:使用周波数帯域における中心周波数の波長)のループ状の素子により形成される。地上デジタル放送に使用されるUHFの周波数帯域は、現在470〜770MHzとなっている。
【0019】
また、上記アーム10上には、主放射素子11の前方に所定の間隔例えば約0.2λ〜0.25λの間隔を保って副放射素子12が平行に設けられる。この副放射素子12は、周囲長が約1λあるいはそれより若干短い長さのループ素子により形成される。上記主放射素子11及び副放射素子12の給電点には給電線路15が接続され、主放射素子11及び副放射素子12に同位相の電流が流れるように並列給電される。上記給電線路15は、図示しないが、平衡−不平衡可変を行なう変換バランを介して給電部に接続される。
【0020】
更に、上記アーム10上には、副放射素子12の前方に複数例えば2つの導波素子13a、13bが順次所定の間隔例えば約0.2λの間隔を保って平行に設けられる。この導波素子13a、13bは、周囲長が約0.76λ〜1.2λのループ素子により形成される。
【0021】
また、上記アーム10上には、主放射素子11の後方に所定の間隔例えば約0.15λの間隔を保って複数例えば3つの反射素子14a〜14cが設けられる。この反射素子14a〜14cは、ループ素子によって形成されるが、それぞれ異なる周囲長に設定される。例えば外側の反射素子14aは周囲長が約1.1λ、中央の反射素子14bは周囲長が約1λ、内側の反射素子14cは周囲長が約0.95λに設定される。すなわち、反射素子14aは使用周波数帯域の低域周波数、反射素子14bは使用周波数帯域の中心周波数、反射素子14cは使用周波数帯域の高域周波数に対応して設定される。
【0022】
上記第1実施形態に係る直線偏波リングループアンテナは、主放射素子11とその前方に設けた副放射素子12に給電する対称二給電方式を用いたものである。
上記直線偏波リングループアンテナにおいて、1巻きループ素子の入力インピーダンスは、周囲長が約1波長より小さいときは容量性に、それより大きいときは誘導性に動作する。従って、八木・宇田アンテナと同様に、容量性に動作するループ素子を導波素子として、誘導性に動作するループ素子を反射素子として軸方向に配列する。
【0023】
そして、上記主放射素子11として周囲長が約1λのループ素子を使用し、その素子の電流が定在波的にのるように給電すると、ループ素子を含む面と直角な方向に直線偏波が発生する。従って、このループ素子の軸方向に他のループ素子を多素子配列することにより、単方向性で広帯域なリングループアンテナを作成することができる。
【0024】
上記のように構成したリングループアンテナは、半波長アンテナを2段スタックしたもの、つまり八木・宇田アンテナを2段積重ねたものと等しくなる。従って、上記実施形態に示したように5素子構成のリングループアンテナであっても、従来の10〜12素子程度の多素子八木・宇田アンテナと同等の利得を得ることができる。更に、主放射素子11、副放射素子12及び導波素子13a、13bの間隔を従来の八木・宇田アンテナの素子間隔0.25λより狭い、約0.2λ程度に設定できるので、小型化することができる。
【0025】
また、複数の反射素子14a〜14cを使用し、使用周波数帯域、すなわち470〜770MHzのUHF帯域における低域周波数、中心周波数、高域周波数に同調させることにより、低い周波数から高い周波数に亘って良好なVSWR特性を得ることができる。
【0026】
上記図1に示した対称二給電方式を用いた5素子構成の直線偏波リングループアンテナにおいて、UHF帯域の中心周波数を620MHz、主放射素子11及び副放射素子12の周囲長を約1λ、導波素子13a、13bの周囲長を約0.9λ、各素子間隔を0.2λ、反射素子14a〜14cの各対応周波数における周囲長を約1.05λ、主放射素子11と反射素子14a〜14cとの間隔を0.15λに設定した場合、図2(a)に示す水平面指向性(シミュレーション特性)、同図(b)に示す垂直面指向性(シミュレーション特性)が得られた。なお、上記反射素子14aは例えば470MHzの低域周波数に対して、反射素子14bは620MHzの中心周波数に対して、反射素子14cは770MHzの高域周波数に対して、それぞれ周囲長を約1.05λに設定している。また、上記図2(a)、(b)において、aは470MHzの低域周波数における特性、bは620MHzの中心周波数における特性、cは770MHzの高域周波数における指向性を示している。
【0027】
図2(a)に示す水平面指向性では、470〜770MHzのUHF全帯域に亘って8dB以上の指向性が得られた。また、図2(b)に示す垂直面指向性では、水平面指向性とほぼ同じような特性となっている。
【0028】
また、図3は、上記5素子構成の直線偏波リングループアンテナにおけるVSWR特性を示したものである。上記図3に示すVSWR特性では、470〜770MHzにおいて、約−7.5dB(VSWR 2.5)以下が得られた。
上記実施形態によれば、簡易な形状の素子構成で小型化が可能となり、かつ広帯域で高利得の直線偏波リングループアンテナを実現することができた。
【0029】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の基本的な構成を示したものである。
【0030】
図4に示すように、アーム10上には、周囲長が約1λのループ素子により形成された主放射素子11が設けられる。
【0031】
また、上記アーム10上には、主放射素子11の前方に複数例えば3つの副放射素子12a〜12cが所定の間隔例えば約0.2λの間隔を保って平行に設けられる。この副放射素子12a〜12cは、周囲長が約1λあるいはそれより若干短い長さのループ素子により形成される。そして、上記主放射素子11及び複数の副放射素子12a〜12cは、同位相の電流が流れるように給電線路15により並列給電される。
【0032】
更に、上記アーム10上には、主放射素子11の後方に上記第1実施形態と同様に所定の間隔例えば約0.15λの間隔を保って複数例えば3つの反射素子14a〜14cが設けられる。
【0033】
上記第2実施形態に係るリングループアンテナ装置は、主放射素子11及び副放射素子12a〜12cの全てに給電する並列給電方式を用いたものである。
【0034】
上記のように主放射素子11及び副放射素子12a〜12cの全てに給電するように構成した場合、各素子における反射が無くなり、変換バランを設けなくても給電線路15への漏洩電流を無くすことかできる。この結果、変換バランを設ける必要が無くなり、より広帯域化を図ることが可能になる。
【0035】
次に、上記直線偏波リングループアンテナの具体的な構成例について説明する。図5は、上記図4に示した5素子構成の直線偏波リングループアンテナの具体的な構成例を示したもので、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【0036】
図5に示すようにアーム10上に上記主放射素子11を設けると共に、その前方に複数の副放射素子12a〜12cを所定の間隔で設ける。そして、上記アーム10内に給電線路15を設け、上記図4で説明したように第2主放射素子11及び副放射素子12a〜12cの給電端子に並列給電する。上記給電線路15は、同軸給電ケーブル17に接続され、アーム10の外部に導出される。上記同軸給電ケーブル17の先端には、給電用コネクタ18が設けられる。
【0037】
また、上記アーム10上には、主放射素子11の後方に所定の間隔で例えば3個の反射素子14a〜14cを配置する。この反射素子14a〜14cは、上記したように使用周波数帯域における低域周波数、中心周波数、高域周波数に対応して設けられる。
【0038】
上記図4及び図5に示したように並列給電方式による5素子構成の直線偏波リングループアンテナにおいて、UHF帯域の中心周波数を620MHz、主放射素子11の周囲長を約1λ、副放射素子12a〜12cの周囲長を約0.9λ、各素子間隔を0.2λ、反射素子14a〜14cの各対応周波数における周囲長を約1.05λ、主放射素子11と反射素子14a〜14cとの間隔を0.15λに設定した場合、図6(a)に示す水平面指向性(シミュレーション特性)、同図(b)に示す垂直面指向性(シミュレーション特性)が得られた。なお、上記反射素子14aは470MHzの低域周波数に対して、反射素子14bは620MHzの中心周波数に対して、反射素子14cは770MHzの高域周波数に対して、それぞれ周囲長を約1.05λに設定している。
【0039】
図7(a)は上記並列給電方式を用いた5素子構成の直線偏波リングループアンテナの水平面指向性の実測値、同図(b)は同アンテナの垂直面指向性の実測値を示したものである。上記図6(a)、(b)及び図7(a)、(b)において、aは470MHzの低域周波数における特性、bは620MHzの中心周波数における特性、cは770MHzの高域周波数における指向性を示している。
【0040】
上記図6(a)及び図7(a)に示す水平面指向性では、470〜770MHzのUHF全帯域に亘って8dB以上の指向性が得られた。また、図6(b)及び図7(b)に示す垂直面指向性では、水平面指向性とほぼ同じような特性となっている。
【0041】
上記のように上記並列給電方式を用いた5素子構成の直線偏波リングループアンテナでは、水平面指向性及び垂直面指向性共に良好な特性が得られた。
【0042】
また、図8は、上記並列給電方式を用いた5素子構成の直線偏波リングループアンテナにおけるVSWR特性を示したものである。
また、図9は、上記並列給電方式を用いた5素子構成の直線偏波リングループアンテナにおけるVSWR特性の実測値を示したものである。上記図9において、
a点は、周波数:470MHz、VSWR:1.65
b点は、周波数:500MHz、VSWR:1.03
c点は、周波数:600MHz、VSWR:1.07
d点は、周波数:700MHz、VSWR:1.40
e点は、周波数:770MHz、VSWR:2.25
であった。また、特性インピーダンスは、75Ωである。
【0043】
上記図8及び図9に示したVSWR特性では、470〜770MHzのUHF全帯域において、約−7.5dB(VSWR 2.5)以下が得られた。
上記第2実施形態に係る直線偏波リングループアンテナでは、上記の諸特性から明らかなように470〜770MHzのUHF全帯域をカバーする非常に広い広帯域特性が得られた。
【0044】
上記第2実施形態によれば、簡易な形状の素子構成により、アンテナ素子と給電回路を一体化して軽量、かつ小型化が可能となり、しかもUHF全帯域をカバーする広帯域で高利得の直線偏波リングループアンテナを実現することができた。
【0045】
上記第2実施形態では、アンテナを5素子構成とした場合について示したが、更に多素子構成とすることが可能である。図10は上記第2実施形態において、n個の副放射素子12a〜12nを設けた場合の構成例を示したものである。この場合、主放射素子11及び複数の副放射素子12a〜12nの全てに同位相の電流が流れるように給電線路15により並列給電する。
【0046】
上記のように多素子構成とすることにより利得を更に向上することができる。例えば8素子構成とした場合には約10dBiの動作利得、16素子構成とした場合には約12dBiの動作利得を得ることができる。
【0047】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態に係る円偏波リングループアンテナについて説明する。
図11は、本発明の第3実施形態に係る5素子円偏波リングループアンテナの基本的な構成例を示したものである。
この第3実施形態に係る円偏波リングループアンテナは、上記第2実施形態に係る並列給電方式のリングループアンテナにおいて、主放射素子11及び副放射素子12a〜12cの所定位置、すなわち給電線路15に接続される給電点(下端部)からほぼ90°の位置にリアクタンス装荷素子21を設けたものである。この場合、図11に示すように正面方向から見て、主放射素子11及び副放射素子12a〜12cの右側にリアクタンス装荷素子21を設けた場合は右旋円偏波となり、主放射素子11及び副放射素子12a〜12cの左側にリアクタンス装荷素子21を設けた場合は左旋円偏波となる。なお、上記リアクタンス装荷は、物理的に行なう場合と電子的に行なう場合が考えられる。
【0048】
上記のように主放射素子11及び副放射素子12a〜12cにリアクタンス装荷素子21を設けることにより、第2実施形態に示した直線偏波リングループアンテナの構成を変えずに円偏波リングループアンテナとすることができる。
【0049】
図12(a)は上記5素子構成の円偏波リングループアンテナの軸比特性で、横軸に周波数(MHz)を取り、縦軸に軸比(dB)を取って示した。
図12(b)は上記5素子構成の円偏波リングループアンテナの利得特性で、横軸に周波数(MHz)を取り、縦軸に利得(dB)を取って示した。
【0050】
上記円偏波特性の指向性は、UHF帯域の全帯域に亘っての良好な特性ではないが、特定な周波数では良好な軸比が得られた。また、利得特性は、UHF帯域の全帯域に亘って安定した利得が得られた。
【0051】
なお、上記第3実施形態では、5素子構成の円偏波リングループアンテナに実施した場合について示したが、更に多素子構成としても良いことは勿論である。
また、上記各実施形態では、3つの反射素子14a〜14cを使用し、反射素子14aは470MHzの低域周波数、反射素子14bは620MHzの中心周波数、反射素子14cは770MHzの高域周波数に対してそれぞれ周囲長を設定したが、各反射素子の周囲長は上記周波数に限定されるものではなく、その他の任意の周波数に対して設定し得るものである。
また、上記各実施形態では、3つの反射素子14a〜14cを用いて構成した場合について説明したが、その他、例えば1つあるいは2つ以上の反射素子により構成しても良い。
【0052】
更に、上記各実施形態では、アンテナ素子をループ状に形成した場合について説明したが、その他、例えば直線状に形成しても、上記実施形態と同様の特性を得ることができる。
また、上記各実施形態では、470〜770MHz帯の一般用UHF帯受信アンテナを例として説明したが、その他、例えばデジタル地上波放送用の中継局の送受信アンテナとしても実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1実施形態に係る直線偏波の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の基本構成図。
【図2】(a)は同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の水平面指向性を示す図、(b)は垂直面指向性を示す図。
【図3】同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置のVSWR特性を示す図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る直線偏波の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の基本構成図。
【図5】同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の具体的な構成例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図。
【図6】(a)は同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の水平面指向性を示す図、(b)は垂直面指向性を示す図。
【図7】(a)は同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の水平面指向性の実測値、(b)は同垂直面指向性の実測値。
【図8】同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置のVSWR特性を示す図。
【図9】同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置のVSWR特性の実測値。
【図10】同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、n個の副放射素子を設けた場合の構成例を示す図。
【図11】本発明の第3実施形態に係る円偏波の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の基本構成図。
【図12】(a)は同実施形態に係る地上デジタル放送用リングループアンテナ装置の軸比特性を示す図、(b)は利得特性を示す図。
【符号の説明】
【0054】
10…アーム、11…主放射素子、12、12a〜12n…副放射素子、13a、13b…導波素子、14a〜14c…反射素子、15…給電線路、17…同軸給電ケーブル、18…給電用コネクタ、21…リアクタンス装荷素子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ状の主放射素子と、前記主放射素子の前方に所定の間隔を保って配置されるループ状の副放射素子と、前記副放射素子の前方に所定の間隔を保って配置される少なくとも1つ以上のループ状の導波素子と、前記主放射素子の後方に所定の間隔を保って配置されるループ状の反射素子と、前記主放射素子及び副放射素子にほぼ同位相の電流が流れるように該主放射素子及び副放射素子に並列給電する給電線路とを具備したことを特徴とする地上デジタル放送用リングループアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、副放射素子を複数設けたことを特徴とする地上デジタル放送用リングループアンテナ装置。
【請求項3】
ループ状の主放射素子と、前記主放射素子の前方に順次所定の間隔を保って配置されるループ状の複数の副放射素子と、前記主放射素子の後方に所定の間隔を保って配置されるループ状の反射素子と、前記主放射素子及び複数の副放射素子にほぼ同位相の電流が流れるように該主放射素子及び複数の副放射素子に並列給電する給電線路とを具備したことを特徴とする地上デジタル放送用リングループアンテナ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、主放射素子及び副放射素子に一点リアクタンス装荷を設けたことを特徴とする地上デジタル放送用リングループアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、主放射素子及び副放射素子の各間隔を約0.2波長に設定したことを特徴とする地上デジタル放送用リングループアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、前記反射素子は、ループ径の異なる複数の反射素子によって構成したことを特徴とする地上デジタル放送用リングループアンテナ装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、各素子は誘電体基板上に金属箔により形成したことを特徴とする地上デジタル放送用リングループアンテナ装置。
【請求項1】
ループ状の主放射素子と、前記主放射素子の前方に所定の間隔を保って配置されるループ状の副放射素子と、前記副放射素子の前方に所定の間隔を保って配置される少なくとも1つ以上のループ状の導波素子と、前記主放射素子の後方に所定の間隔を保って配置されるループ状の反射素子と、前記主放射素子及び副放射素子にほぼ同位相の電流が流れるように該主放射素子及び副放射素子に並列給電する給電線路とを具備したことを特徴とする地上デジタル放送用リングループアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、副放射素子を複数設けたことを特徴とする地上デジタル放送用リングループアンテナ装置。
【請求項3】
ループ状の主放射素子と、前記主放射素子の前方に順次所定の間隔を保って配置されるループ状の複数の副放射素子と、前記主放射素子の後方に所定の間隔を保って配置されるループ状の反射素子と、前記主放射素子及び複数の副放射素子にほぼ同位相の電流が流れるように該主放射素子及び複数の副放射素子に並列給電する給電線路とを具備したことを特徴とする地上デジタル放送用リングループアンテナ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、主放射素子及び副放射素子に一点リアクタンス装荷を設けたことを特徴とする地上デジタル放送用リングループアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、主放射素子及び副放射素子の各間隔を約0.2波長に設定したことを特徴とする地上デジタル放送用リングループアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、前記反射素子は、ループ径の異なる複数の反射素子によって構成したことを特徴とする地上デジタル放送用リングループアンテナ装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の地上デジタル放送用リングループアンテナ装置において、各素子は誘電体基板上に金属箔により形成したことを特徴とする地上デジタル放送用リングループアンテナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−50439(P2006−50439A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231294(P2004−231294)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000101857)アンテナ技研株式会社 (4)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(303049843)株式会社加藤電気工業所 (3)
【出願人】(504270046)ブロードワイヤレス株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000101857)アンテナ技研株式会社 (4)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(303049843)株式会社加藤電気工業所 (3)
【出願人】(504270046)ブロードワイヤレス株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
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