地下埋設体の切断方法と引上げ方法
【課題】杭等の地下埋設体の切断長の制限がなく、地下埋設体の除去が能率良く行なえ、工期短縮が可能となる地下埋設体の切断方法と引上げ方法を提供する。
【解決手段】ケーシング5の内壁に縦に設けた液圧シリンダにより掘削体20を閉じ方向に動かすと同時に、ケーシングドライバー3によりケーシング5と共に掘削体20を回転または揺動させて地下埋設体4に切削溝を入れる。その後、ケーシングドライバー3によってケーシング5と共に掘削体20および地下埋設体4の切削溝形成部より上の部分を持ち上げて杭を切断する。この切断時に必要に応じてケーシング5と共に掘削体20を回転または揺動させる。ダブルクラウンを用い、バケット吊りロープに接続された掛金を第2のクラウンに掛け、バケット吊りロープを巻上げる巻上ウインチより強力な巻上げ力を有する装置を用いて掘削体20と共に地下埋設体4を引上げる。
【解決手段】ケーシング5の内壁に縦に設けた液圧シリンダにより掘削体20を閉じ方向に動かすと同時に、ケーシングドライバー3によりケーシング5と共に掘削体20を回転または揺動させて地下埋設体4に切削溝を入れる。その後、ケーシングドライバー3によってケーシング5と共に掘削体20および地下埋設体4の切削溝形成部より上の部分を持ち上げて杭を切断する。この切断時に必要に応じてケーシング5と共に掘削体20を回転または揺動させる。ダブルクラウンを用い、バケット吊りロープに接続された掛金を第2のクラウンに掛け、バケット吊りロープを巻上げる巻上ウインチより強力な巻上げ力を有する装置を用いて掘削体20と共に地下埋設体4を引上げる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設されている鉄筋コンクリート製の杭や柱もしくは壁等の地下埋設体を上部から順次切断する方法と、切断した地下埋設体を引上げる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建造物の基礎に埋設されたコンクリート製の杭や地階の柱、壁等は、この建造物を破壊、撤去した後に除去する必要がある。コンクリート製の杭は、杭の長手方向に埋設された複数本の鉄筋が円環状に配列して埋設される。従ってコンクリート製杭は外周よりこの鉄筋が埋設されている深さまで掘削して鉄筋を切断する必要がある。しかし鉄筋が埋設されている部位は杭内の外周側であり、鉄筋を切断するだけでは杭の切断は難しい。
【0003】
このようなコンクリート製杭を切断する装置として、特許文献1の図2、図3には、ケーシングドライバーにより回転駆動されるケーシングの下部内周に、突出幅が異なる複数のカッタを異なる高さとなる箇所に周方向に分散させて配設し、ケーシングを回転させることにより、杭を頂部から掘削、破砕してコンクリート屑にするものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、クレーンによりワイヤロープを介してケーシング内に切断装置を垂下し、この切断装置はその上部にチャック装置を有し、切断装置の下部にバケットとそのバケットに設けた油圧シリンダにより開閉される半球型の開閉シェルを有し、杭の切断時には、チャック装置によりこの切断装置をケーシング内壁に固定し、開閉シェルにより杭を掴んでケーシングと共に開閉シェルを回転させることにより、杭を切断し、その後、チャック装置による切断装置のケーシングへの固定を解除し、クレーンにより切断装置と共に切断した杭を引き上げるものが開示されている。
【0005】
一方、杭を切断した後、切断した杭をハンマグラブにより把持してクレーンにより吊り上げることが行われる。このハンマグラブは、特許文献3に記載のように、ケーシングドライバーの中掘りに多用されるものである。またこのようなハンマグラブバケットにおいて、クラウンはバケットのシェルを開いて排土させるためのもので、このクラウンはクレーンのブームから垂下すると共に、バケット吊りロープをこのクラウンの内部に貫通した状態で取付けられる。バケットを地上に引上げて排土する際には、バケット吊りロープを巻上げてバケット頂部の吊支用円筒をこのクラウンの係止爪に掛け、シェルが閉じた状態でこのクラウンを介してバケットを支持し、次にバケット吊りロープを巻下げることにより、シェルを開いて排土するものである。通常、このクラウンは、例えば特許文献4、5に示されるように、ブームにワイヤロープやチェーン等の可撓性支持部材を介して支持されるクラウンヘッドと、クラウンヘッドに上下動可能に取付けられた筒状の錘と、この錘がクラウンヘッドに対して相対的に上方、下方に位置を変えることにより掛金が係止可能あるいは通過可能な姿勢または位置に変更される前記係止爪とからなる。
【0006】
【特許文献1】特開平8−120670号公報
【特許文献2】特開2001−323767号公報
【特許文献3】特開平6−317079号公報
【特許文献4】実用新案登録第3032615号公報
【特許文献5】特開平10−54049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の図2、図3に示されるように、コンクリート杭を頂部から全部破砕するものは、杭の切断体積が多く、効率が悪い。
【0008】
一方、特許文献2に記載のものは、開閉シェルの上部にバケット上枠部が存在するため、切断可能な杭の長さは、バケットの上枠部から開閉シェルの掘削刃までの高低差によって杭の切断可能な長さ(例えば2m以下の長さ)に決定されてしまい、能率良く杭の除去ができないという問題点がある。また、特許文献2に記載の方法では、クレーンにより切断した杭の引き上げを行なっているが、杭の外周側に埋設された鉄筋を切断する深さまで杭に切削溝を設けても、クレーンによる引き上げ力では杭を切断することができず、このため、杭を中心まで切断する全工程を開閉シェルにより行なう必要がある。このため、切断に長い時間を要し、このこともさらに杭の撤去の能率を低下させる原因になる。
【0009】
また、切断された杭の重さは長さに比例することから、ハンマグラブを用いて切断可能な長さは、ハンマグラブを巻取り繰出しするバケット吊りロープ用巻上ウインチの巻上げ能力によって左右され、一般的には、この巻上ウインチに10t程度の巻上げ能力を有するものが使用されるから、ハンマグラブバケットの重量を3tとすると、切断された杭の重量は7t程度に制限され、切断可能な長さは7tに相当する重量に相当する長さに制限され、より以上の重さに相当する長さに切断して引上げて能率向上を図ることができないという問題点がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、杭等の地下埋設体の切断長の制限が緩和され、地下埋設体の除去が能率良く行なえ、工期短縮が可能となる地下埋設体の切断方法を提供することを目的とする。また、本発明は、本発明の切断方法と併用する場合に好適で、従来より大きな重量の地下埋設体の引上げが可能であり、能率良く地下埋設体の撤去を行なうことができ、工期短縮が可能となる地下埋設体の引上げ方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の地下埋設体の切断方法は、撤去すべき鉄筋コンクリート製地下埋設体の上の地盤にケーシングドライバーを設置し、
前記ケーシングドライバーによりケーシングを回転または揺動させてケーシングを地下埋設体の頂部から所定の深さに至る深さに建込み、
前記ケーシングの下部内壁に開閉可能に設けた複数枚の掘削体をケーシング内壁に縦に設けた液圧シリンダにより閉じ方向に動かすと同時に、前記ケーシングドライバーにより前記ケーシングと共に前記掘削体を回転または揺動させて地下埋設体に切削溝を入れ、
その後、前記掘削体を前記地下埋設体に食い込ませたままで前記ケーシングドライバーによって前記ケーシングと共に前記掘削体および地下埋設体の前記切削溝形成部より上の部分を持ち上げることにより、地下埋設体を切断することを特徴とする。
【0012】
請求項2の地下埋設体の切断方法は、撤去すべき鉄筋コンクリート製地下埋設体である杭の上の地盤にケーシングドライバーを設置し、
前記ケーシングドライバーによりケーシングを回転または揺動させて前記杭を囲むようにケーシングを杭の頂部から所定の深さに至る深さに建込み、
前記ケーシングの下部内壁に開閉可能に設けた複数枚の掘削体をケーシング内壁に縦に設けた液圧シリンダにより閉じ方向に動かすと同時に、前記ケーシングドライバーにより前記ケーシングと共に前記掘削体を回転または揺動させて杭を外周側より杭内部の鉄筋が切断可能な深さまで杭に切削溝を入れ、
その後、前記掘削体を前記杭に食い込ませたままで前記ケーシングドライバーにより前記ケーシングと共に前記掘削体および杭の前記切削溝形成部より上の部分を持ち上げることにより、杭を切断することを特徴とする。
【0013】
請求項3の地下埋設体の切断方法は、請求項1または2に記載の地下埋設体の切断方法において、
前記地下埋設体の前記切削溝形成部より上の部分を持ち上げて切断する際に、前記ケーシングドライバーにより前記ケーシングを回転または揺動させることによって、前記掘削体と共に地下埋設体の前記切削溝形成部より上の部分を回転または揺動させて杭を切断することを特徴とする。
【0014】
請求項4の地下埋設体の引上げ方法は、請求項1から3までのいずれかに記載の切断された地下埋設体を、クレーンに搭載した巻上ウインチで巻取り繰出しされるバケット吊りロープを介して支持されたハンマグラブバケットを用いて引上げる方法であって、
ハンマグラブバケットの頂部に設ける吊支用円筒を係止する係止爪を有する第1のクラウン以外に、第2のクラウンを設け、この第2のクラウンにより可撓性支持部材を介して前記第1のクラウンを支持し、
前記第2のクラウンを、前記バケット吊りロープの引上げ力より大きな引上げ力を発生させる巻上げ装置により可撓性支持部材を介して支持し、
前記第2のクラウンの係止爪に、前記バケット吊りロープに接続される部材に設けられる掛金を掛け、前記巻上げ装置により前記第2のクラウンを介して前記ハンマグラブバケットと共にこのハンマグラブバケットにより把持した地下埋設体を引上げることを特徴とする。
【0015】
請求項5の地下埋設体の切断方法は、請求項4に記載の地下埋設体の引上げ方法において、
前記ハンマグラブバケットとして、筒状のバケット内に、押圧スプリングにより下方に押圧されかつ昇降可能な昇降フレームを設け、この昇降フレームをバケットの下部に開閉可能に設けられるシェルに連結し、前記昇降フレームに取付けた下シーブとバケット内に設けた上シーブとの間でワイヤロープを掛け回わし、このワイヤロープを、クレーンに搭載した第1の巻上ウインチにより巻取り繰出しされるバケット吊りロープに掛金を有する可撓性支持部材を介して接続し、前記バケットの頂部の吊支用円筒に回動可能に設けたラッチに前記掛金を係止させて前記バケットを前記バケット吊りロープにより支持したシェル開状態と、前記ラッチによる前記掛金の係止を解除して前記バケット吊りロープを巻上げたシェル閉状態とが取り得るハンマグラブバケットを用いると共に、
前記バケット吊りロープの引上げ力より大きな引上げ力を発生させる前記巻上げ装置として、前記クレーンに搭載した第2の巻上ウインチと、この第2の巻上ウインチにより巻取り繰出しされる巻上ロープと、前記ブームの頂部および頂部から垂下した位置で前記巻上ロープをそれぞれ掛け回す上下のシーブブロックを有するものを用い、
前記ラッチの下面に前記掛金を掛けて前記ハンマグラブバケットを前記バケット吊りロープにより支持して浮かせた状態から、前記第1の巻上ウインチの作動により前記バケット吊りロープを繰出し、前記切断された地下埋設体の頂部に前記シェルを被せると共に、前記吊支用円筒を下方に付勢する押圧スプリングのスプリング力により前記吊支用円筒を前記ハンマグラブバケットに対して相対的に下降させて前記ラッチを前記掛金から外す工程と、
前記掛金が前記ラッチから外れた状態で前記バケット吊りロープを前記第1の巻上ウインチにより巻上げて前記掛金を前記吊支用円筒より上方に抜け出させ、バケット内の前記昇降フレーム押圧用押圧スプリングのスプリング力に抗して前記昇降フレームを上昇させることにより、前記シェルを閉じ方向に作動させて地下埋設体の上部をシェルで把持する工程と、
前記第2の巻上ウインチの作動より前記巻上ロープを繰出して前記第2のクラウンを巻下げ、前記掛金を前記第2のクラウン内に通して前記掛金より下方に前記第2のクラウンを位置させる工程と、
前記第2の巻上ウインチにより前記巻上ロープを巻上げ、前記第2のクラウンに設けた係止爪上に前記掛金を掛け、さらに前記巻上ロープを巻上げ、前記巻上ロープの力によりハンマグラブバケットのシェルを閉じる力を発生させてシェルにより地下埋設体を把持する状態を維持すると同時に、前記ハンマグラブバケットと共に地下埋設体を引上げる工程とにより、切断された地下埋設体を地上に引上げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、ケーシングドライバーにより円筒形のケーシングを建込み、そのケーシングの内壁に設けた掘削体を閉じながら回転または揺動させて地下埋設体の切削を行なうので、掘削体の上部空間をオープン構造とした状態で切削を行なうことができ、地下埋設体を切断する長さの制限を受けない。このため、吊り上げるクレーン等による吊り上げ可能な最大限の重さに相当する長さまで地下埋設体を切断することができ、能率良く地下埋設体の除去作業を行なうことができる。
【0017】
また、地下埋設体中に鉄筋が多少残っている状態であっても、強力な引上げ力を発生できるケーシングドライバーによってケーシング、掘削体と共に切削溝を入れた地下埋設体を持ち上げるため、掘削体で囲まれた地下埋設体全体を切断しなくても地下埋設体を切削溝を入れた部分から上の部分を下の部分から切り離すことができる。このため、地下埋設体の掘削体で囲まれた部分全体を切削して切断する場合に比較して切断に要する時間を大幅に短縮することができる。この切断時間の短縮と、前述のように地下埋設体の切断長さの制限が緩和されることとにより、従来より地下埋設体の切断、撤去に要する時間を大幅に短縮することができ、大幅な工期短縮が可能となる。
【0018】
また、掘削体を開閉する液圧シリンダをケーシングの内壁に設けたものを用いることにより、掘削体を開閉する駆動部の要する幅が狭くてすみ、比較的大きな地下埋設体の切断が可能となる。
【0019】
請求項2の発明によれば、ケーシングドライバーにより円筒形のケーシングを建込み、そのケーシングの内壁に設けた掘削体を閉じながら回転または揺動させて杭の切削を行なうので、掘削体の上部空間をオープン構造とした状態で切削を行なうことができ、杭を切断する長さの制限を受けない。このため、吊り上げるクレーン等による吊り上げ可能な最大限の重さに相当する長さまで杭を切断することができ、能率良く杭の除去作業を行なうことができる。
【0020】
また、杭の場合はその外周から所定の深さの鉄筋埋設部位まで切削溝を入れれば、鉄筋が多少残っている状態であっても、強力な引上げ力を発生できるケーシングドライバーによってケーシング、掘削体と共に切削溝を入れた杭を持ち上げるため、掘削体で囲まれた杭を切断しなくても杭の切削溝を入れた部分から上の部分を下の部分から切り離すことができる。このため、杭の掘削体で囲まれた部分全体を切削して切断する場合に比較して切断に要する時間を大幅に短縮することができる。この切断時間の短縮と、前述のように杭の切断長さの制限が緩和されることとにより、従来より杭の切断、撤去に要する時間を大幅に短縮することができ、大幅な工期短縮が可能となる。
【0021】
また、掘削体を開閉する液圧シリンダをケーシングの内壁に設けたものを用いることにより、掘削体を開閉する駆動部の要する幅が狭くてすみ、比較的大きな径の杭の切断が可能となる。
【0022】
請求項3の発明によれば、ケーシングドライバーによりケーシング、掘削体と共に切削溝より上の地下埋設体の部分を回転または揺動させるため、能率良く、短時間に地下埋設体を切断することが可能となる。また、杭がケーシングに対して偏心している等の理由で多少の鉄筋が切断されないで杭内に残留している場合や、地階の柱や壁等の撤去の際に地下埋設体内に鉄筋が残留している場合にも鉄筋をねじ切ることができ、切断が困難な地下埋設体でも切断することが可能となる。
【0023】
請求項4の発明によれば、従来のクラウン(第1のクラウン)に別のクラウン(第2のクラウン)を付加し、この第2のクラウンに掛金を掛けて巻上げ力の大きな巻上げ装置によりバケット吊りロープを介してハンマグラブバケットと共に切断した地下埋設体を引上げるようにしたので、従来より重量の大きな地下埋設体を引上げることが可能となる。このため、請求項1から3に記載の地下埋設体の切断の際に、地下埋設体の切断長さを長くすることができ、地下埋設体の撤去作業を能率良く行なうことができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、ハンマグラブバケットを支持するクレーン自体に搭載された第2の巻上ウインチによりハンマグラブバケットと共に切断された地下埋設体を引上げるため、通常のクレーンに搭載されている2台の巻上ウインチを使用して地下埋設体の引上げ作業を行なうことができ、容易に実施可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は本発明による地下埋設体の切断方法の一実施の形態を示す側面図である。4は地下埋設体である杭であり、1はこの杭の切断装置、2はケーシング5の建込みや切断した杭の引上げ等を行なうクレーンである。切断装置1はケーシングドライバー3とこのケーシングドライバー3により回転駆動されて杭4の周囲の掘削と杭4の切断を行なう装置を取付けたケーシング5とを備える。6は後述の液圧シリンダ23(図4参照)の液圧源7を搭載する作業台である。
【0026】
図2、図3はそれぞれ本発明の切断方法に用いるケーシングドライバー3の一例を示す側面図および平面図である。このケーシングドライバー3は、液圧シリンダ9により水平に設置されるベースフレーム10上の四隅にガイドポスト11を立設し、これらのガイドポスト11に沿って液圧シリンダ12により昇降される昇降フレーム13を取付ける。そしてこの昇降フレーム13に液圧モータ14により歯車機構(図示せず)等の動力伝達装置を介して回転駆動される回転体15を設置する。この回転体15はケーシング5を貫挿可能な円筒形をなすものであり、この回転体15には液圧シリンダ16により開閉される可動バンド17を有するチャック装置19を備える。
【0027】
図4は本発明の切断方法により杭4の切断を行なう前の状況を示す縦断面図である。20は対をなして設けられた掘削体であり、これらの掘削体20は、図5に示すようにケーシング5の下部に固定される軸21を中心に開閉可能に取付けられる。これらの掘削体20は好ましくは一対設けられるが、3個設けてもよい。これらの掘削体20は図5に示すように水平断面形状が弧状をなし、下辺に掘削爪22を有する。
【0028】
23はそれぞれ前記各掘削体20にそれぞれ対応して説けられた液圧シリンダである。これらの液圧シリンダ23は、ケーシング5の内壁における前記掘削体20の上部にピン24により連結して縦向きに取付けられる。これらの液圧シリンダ23のピストンロッドと前記掘削体20とは、リンク25を介して連結される。このリンク25は、土砂侵入時の液圧シリンダ23のピストンロッドの保護と、ケーシング5の回転力が掘削体20を経て液圧シリンダ23に直接かかることを防止し、力の分散を図るためである。
【0029】
図6、図7に示すように、ケーシング5の内壁には、液圧シリンダ23を覆う保護カバー27が、液圧シリンダ23の最大伸長状態でもそのピストンロッドを覆うような上下方向の長さにわたって設けられる。
【0030】
図6に示すように、掘削体20は、その開放状態におけるケーシング内方への突出幅W1を、前記液圧シリンダの保護カバー27を含めたケーシングより内方への突出幅W2より小さく(W2>W1)に設定する。
【0031】
図4および図8に示すように、ケーシング5の下端には複数の掘削爪30が取付けられたケーシング先端部5Aがボルト(図示せず)により着脱可能に取付けられる。ケーシング先端部5Aは、掘削対象物が一般の地盤である場合と、図17〜図19に示すようなコンクリート底盤である場合に使用するものとで交換可能とする。また、杭4の径の相違に呼応して対応可能となるように、掘削内径の異なる掘削爪30を有するものにも交換可能とする。
【0032】
これらの掘削爪30は互いに隣接するもののケーシング5の半径方向の位置を異ならせて取付けられ、矢印29に示すように、ケーシング5を正転方向に回転させて掘削を行なうと、掘削土砂がケーシング5の外側に押し出されてケーシング5の外壁側に圧密されて集積するように構成される。なお、本実施の形態においては、掘削爪30を3つのグループ31,32,33に分け、各グループでは掘削時の回転方向の始端がケーシング5の最も内側にあり、終端が最も外側にあるように配設される。
【0033】
図4に示すように、ケーシング5の最も内側の掘削爪30のケーシング内方への突出幅W3は、前記液圧シリンダ23の保護カバー27を含めたケーシング内方への突出幅W2より大きく(W3>W2)設定される。
【0034】
また、図4、図8に示すように、ケーシング5はその下端に内方に突出したリング34を有し、このリング34と前記掘削体20との間にポケット部35を形成している。
【0035】
図1、図9、図10に示すように、前記液圧シリンダ23の液圧源7を設置する作業台6は、ケーシング5の上端に着脱可能に嵌合して取付けられる構造を有する。この液圧源7は、エンジンと液圧ポンプからなるものである。また、この液圧源7には無線受信装置とその受信信号により作動するコントロール弁とエンジンの始動、停止等の制御を行なう無線制御装置37を有する。なお、作業台6は作業員が上ることが可能であり、無線制御装置37は作業台6上に乗る作業員による操作も可能となるように構成されている。
【0036】
図4、図7に示すように、液圧源7から液圧シリンダ23に作動液を供給する配管は、液圧シリンダ23の頂部からケーシング5の内壁に沿って弧状に配設される弧状配管40と、ケーシング5の内壁に沿って縦に配設され、継ぎ足し用ケーシング5の長さと同じ長さを有し、継手41により継ぎ足される縦配管42と、継手43により液圧源7に接続される配管44とからなる。
【0037】
このような装置を用いて下記のような工程により杭4の切断、撤去を行なう。
(1)杭頭出し
(1−1)油圧ショベル等で該当箇所を掘削し、撤去する杭4の杭頭の位置を確認して埋め戻す。
(1−2)このとき、杭4の杭芯を復元できるように逃げ芯を設置しておく。この逃げ芯とは、図11(A)〜(E)、図12(A)〜(C)の工程図に示すように、ケーシングドライバー3を載置する鉄板48に設けるものであり、この鉄板48の中心に設けられるケーシングの貫通可能な円穴の中心にX,Y方向に張った糸の交点を位置させたものである。
【0038】
(2)ケーシングドライバー据付
図11(A)に示すように、鉄板48に設けたガイドにケーシングドライバー3の4隅を合わせてケーシングドライバー3を載せ、逃げ芯から復元した杭4の杭芯(鉄板48のX,Y方向に張った糸の交点)にケーシングドライバー3の中心を合わせてケーシングドライバー3を設置する。また、図1に示すようにケーシングドライバー3はクレーン2と連結フレーム49により連結して掘削反力が取れるようにする。
【0039】
(3)ケーシング5の建込み
ケーシング5をケーシングドライバー3に建込む。このケーシング5の建込みは、クレーン2の本体2aに搭載される主巻ウインチ56、補巻ウインチ57、第3ウインチ58のうち、第3ウインチ58を用いて行なう。この第3ウインチ58はブーム59の頂部に取付けたシーブブロックと可動のシーブブロック(いずれも図示せず)との間で巻上ロープを複数掛けしたもので、例えば約30t程度の重量を有するケーシングドライバー3を吊り上げることができるものである。
【0040】
(4)ケーシング5の圧入
ケーシングドライバー3によりケーシング5を杭4の目標切断深度まで回転または揺動させて圧入する。すなわち図2に示したケーシングドライバー3内に貫挿したケーシング5を、液圧シリンダ16の収縮によりチャック装置19の可動バンド17を閉じ方向に作動させて把持し、液圧シリンダ12を収縮させて昇降フレーム13を下降させながら、液圧モータ14により回転体15を回転または揺動させて、図4に示したように、掘削爪30を有する先端部のケーシング5Aを付けたケーシング5を所定の深さに建込む。ここで、ケーシング5の頂部に取付けた液圧シリンダ23の液圧源7はケーシング5と共に回転する。このケーシング5を建込んだ状態を図11(B)に示す。
【0041】
(5)切削溝4xの形成
次に図4に示した液圧シリンダ23を伸長させ、掘削爪22を有する掘削体20を閉じ方向に作動させ、液圧モータ14によりケーシング5を回転または揺動させながら、杭4に外周から切削溝4x(図13参照)を設ける。この切削溝4xは杭4に埋設された鉄筋を切断できる深さ(通常はこの鉄筋は杭4の表面から鉄筋の芯にいたる深さが10〜15cm程度の深さになるように円環状に埋設される。)に設ける。この切削溝4xを設ける際の作業状態を図11(C)に示す。
【0042】
(6)杭の切断
次に掘削体20を杭4に食い込ませたまま、ケーシングドライバー3の液圧シリンダ12を伸長させて回転体15をケーシング5、掘削体20と共に持ち上げることにより、杭4を切削溝4xより上の部分を切削溝4xより下の部分から分離、すなわち切断する。これはコンクリートの性質として引張強度が圧縮強度の1/13〜1/10であることを利用したもので、例えば場所打ち杭に使用されるコンクリートの圧縮強度は32N/mm2程度であることから、引張強度は2.5〜3.2N/mm2程度になるため、未切削部の径を700mm程度とすると、80〜100t程度の引上げ力で切断できることになる。ここで、ケーシングドライバー3の液圧シリンダ12による引抜き力は通常例えば200t以上にも達するので、例えば切断された杭4Aの部分やケーシング5等を含めた重さが例えば30tであり、切断に要する力前記80〜100tを付加されたとしても、ケーシングドライバー3の引上げ力よりはるかに小さいので、容易に切断できる。この切断後の状態を図11(D)に示す。
【0043】
(7)切断におけるケーシング5等の回転または揺動
図11(D)に示すように、ケーシング5と共に掘削体20を持ち上げて切断しようとしても切断できない場合には、液圧モータ14を作動させてケーシング5、掘削体2と共に杭4の切削溝4xより上の部分4Aを回転または揺動させることにより、杭4の切断を行なう。これもコンクリートのせん断強度が圧縮強度の1/6〜1/4である性質を利用したものである。
なお、持ち上げにより杭4の切断が行なえたか否かは、液圧シリンダ12のボトム側油圧を監視することにより確認できる。すなわち、この油圧が低下した時点が杭4の切断が完了した時点である。また、液圧シリンダ12の伸長によるケーシング5等を持ち上げると同時に、液圧モータ14の作動によりケーシング5を回転または揺動させながら杭4の切断を行なう場合も、液圧モータの入口側油圧の監視し、その油圧の低下によって杭の切断を確認することができる。なお、この切断を行なう場合、最初からケーシング5を持ち上げながらケーシング5を回転または揺動させて切断を行なってもよい。引上げながら回転力を与えてせん断させるとその切断に寄与する効果は大きい。特に鉄筋が残っている場合などに、鉄筋をねじ切って杭4を切断することができる。
【0044】
(8)切断した杭の撤去
次に、図1に示した補巻ウインチ57により巻取り繰出しされるバケット吊りロープ46により支持されたハンマグラブバケット45(図14参照)により、切断された杭4Aを図11(E)に示すように把持し、図12(A)に示すように地上に引上げて撤去する。図14は切断した杭4Aをハンマグラブバケット45のシェル45aにより把持した状態を示す。
【0045】
(9)ケーシング継ぎ足し
次に図12(B)に示すように、前述した第3ウインチ58を用いて継ぎ足すべきケーシング5を吊り上げ、ケーシングドライバー3に貫挿されているケーシング5上に下ろし、継ぎ足す。そして液圧シリンダ16を伸長させてケーシング5のチャックを解除した状態で液圧シリンダ12の伸長により昇降フレーム13を持ち上げ、次に液圧シリンダ16を収縮させてチャック装置19の可動バンド17を閉じ方向に作動させてケーシング5を把持し、液圧シリンダ12を収縮させて昇降フレーム13を下降させながら、液圧モータ14により回転体15を回転または揺動させて、図4に示したように、掘削爪30を有する先端部のケーシング5Aで杭4の周囲を掘削しながらケーシング5を所定の深さに建込む。ケーシング5を建込んだ状態を図12(C)に示す。なお、ケーシング5の継ぎ足しの際には、液圧源7や無線制御装置37を搭載した作業台6はクレーン2によりケーシング5の頂部から外し、代わりにケーシング5をクレーン2により継ぎ足し用ケーシング5を吊り込んでケーシング5と縦配管42の継ぎ足しを行なう。その後、作業台6をケーシング5上に再度搭載する。
【0046】
(10)繰り返し
上記(3)ないし(8)の工程を既存杭の全部が撤去されるまで繰り返す。
【0047】
このように、ケーシング5の内壁に液圧シリンダ23を縦に設けて掘削体20を閉じながらケーシング5と共に掘削体20を回転または揺動させて切削溝4xを入れて鉄筋を切断し、その後、ケーシング5を掘削体20と共に持ち上げ、さらには必要に応じて回転または揺動させて杭4を切断すれば、杭4の上部空間をオープン構造として切断することができるので、杭4を切断する長さの制限を受けない。従って切断した杭4Aを吊り上げるクレーン2等の荷重限界重さに相当する長さまで切断することができ、能率良く杭の除去作業を行なうことができる。
【0048】
また、切削溝4xを入れた杭4に多少切断できない鉄筋が残っている状態であっても、ケーシングドライバー3でケーシング5、掘削体20と共に切削溝4xを入れた杭4Aを持ち上げるため、掘削体20で囲まれた杭4の外周近傍に切削溝4xを設ければよく、杭4全体を切断しなくてもよい。このため、掘削体20で囲まれた杭4全体を切削して切断する場合に比較して切断に要する時間を大幅に短縮することができる。この切断時間の短縮と、前述のように杭4の切断長さの制限の緩和とにより、従来より杭4の切断、撤去の能率を大幅に向上させることができ、大幅な工期短縮が可能となる。
【0049】
また、掘削体20を開閉する液圧シリンダ23をケーシング5の内壁に縦に設けたものを用いることにより、従来のようにバケットに開閉シェルを取付けたもの、あるいは液圧シリンダをケーシングの内方に向けてその内端にカッタを取付けたものに比較し、掘削体20を開閉する駆動部の設置に要する幅が狭くてすみ、比較的大きな径の杭4の切断が可能となる。
【0050】
なお、ケーシング5や掘削体20のサイズは、切断対象となる杭4の直径に応じて変更すればよいが、杭4の直径が大きすぎて杭4を囲んだ状態で掘削できない場合には、図15(A),(B)に示すように、ケーシング5により杭4に縦に切削溝4yを入れて一部4Bを撤去し、その後、図15(C)に示すように、点線で示す前回のケーシング5の位置を実線で示す位置に変え、残りの部分4Cを撤去するようにしてもよい。この場合にも、杭4B,4Cの部分における切削溝4xから上の部分の持ち上げおよび回転または揺動による捩じ切りにより鉄筋を切断する方法を採用することができる。
【0051】
また本発明の切断方法は、図16に示すように、地階の床部66と同時に壁部(または柱部)67等の地下埋設体を掘削して撤去する場合にも用いることができる。図16において、5は地階の床部66と共に壁部(または柱部)67を掘削しているケーシングであり、前記掘削体20等の図示を省略して示している。本発明において、床部66や壁部(または柱部)67をケーシング5により掘削した後、引き上げて回転または揺動させることにより、前記掘削体20により鉄筋を捩じ切り、切断することができる。
【0052】
図17は前記床部66や壁部(または柱部)67等の地下埋設体を掘削する場合に好適なケーシングの底面図、図18および図19はそのケーシングの下端部を内側から見た部分図である。この実施の形態においては、前記リング34に土砂の複数の導入口50を設け、この導入口50は図19に示すようにボルト51によって着脱可能に取付けられる蓋52によって閉塞できるように構成したものである。53はポケット部35に溜まる掘削屑55が導入口50から落下することを防止するストッパ、54は掘削屑をポケット部35に掬い上げるために導入口50から斜め下方に突出させて設けた突出片である。
【0053】
このようなケーシングの底部の構造は、約1m程度の厚みのあるコンクリート建造物の底盤を掘削する場合に好適なものである。この底盤においては、ケーシング5による掘削によって生じるコンクリート掘削屑が硬いため、ケーシング5と掘削された穴の内壁との間に掘削屑を圧密することが困難となり、掘削屑が掘進の障害となる。このような事態の発生を防止し、円滑な掘削を可能にするため、図18に示すように、ケーシング5を回転させて掘削爪30により底盤を掘削する際には、掘削屑55が導入口50から突出片54を経て前記ポケット部35に上がり、ストッパ53で止めて溜めるようにしたものである。一般的な地盤の掘削においては、図19に示すように、ボルト51により蓋52を取付けて塞ぐことにより、掘削土砂をケーシング5の外壁側に圧密させて蓄積する。このように、蓋52を前記導入部50に着脱することにより、ケーシング5をコンクリートの掘削と一般の地盤の掘削に兼用することができる。
【0054】
本発明の切断方法を実施する場合、液圧シリンダ23の液圧源としては、図20に示すものを用いることができる。図20の実施の形態においては、ケーシングドライバー3のガイドポスト11等の静止部に、液圧シリンダ60により昇降される昇降フレーム61を設置し、その昇降フレーム61上に軸受62を介して旋回可能に旋回体63を設置し、この旋回体63に前記液圧シリンダ23を作動させる液圧源7や無線制御装置37を搭載する作業台6を設置すると共に、旋回体63に前記ケーシング5を把持するチャック装置64を設けたものである。
【0055】
この実施の形態においては、ケーシング5を回転させて杭4の周囲の地切りあるいは杭4の切断を行なう際には、チャック装置64によりケーシング5を把持して作業台6をケーシング5と共に回転させる。
【0056】
新たなケーシング5を継ぎ足した後、チャック装置64を開いてケーシング5のチャックを解き、液圧シリンダ60を伸長させると共に、ケーシングドライバー3のチャック装置19によるケーシング5のチャックを解き、液圧シリンダ12を伸長させ、再度チャック装置19,64によりケーシング5をチャックして地切り掘削および杭4の切削を行なう。
【0057】
この実施の形態によれば、ケーシング5の継ぎ足しの際に、昇降フレーム61を昇降させることにより、液圧源7を搭載した作業台6をケーシング5上から撤去する必要がなく、ケーシング5の継ぎ足し作業が能率的に行なえ、杭4の切断を能率良く行なえる。なお、液圧シリンダ60や昇降フレーム61はケーシングドライバー3の周囲の地盤に支持させてもよい。
【0058】
次に前述のように切断された地下埋設体を地中から引上げて撤去する場合に好適な本発明による引上げ方法について説明する。この方法はハンマグラブと2つのクラウンを用いる方法である。図21はこの引上げ方法を実施するため、前記地下埋設体の引上げに用いるハンマグラブバケット45とクラウン装置とクレーン2の本体に搭載された前記巻上ウインチ56,57(図1参照)との関連構造を説明する斜視図である。57はこのバケット45を支持するバケット吊りロープ70を巻取り繰出しする補巻ウインチであり、これを以下第1の巻上ウインチと称する。70はこの第1の巻上ウインチ57により巻取り繰出しされるバケット吊りロープであり、このロープ70は前記ブーム59の頂部のシーブ71から垂下される。72は前記主巻ウインチ56により巻取り繰出しされる巻上ロープであり、この巻上ロープ72はブーム59の頂部に取付けられたシーブブロック73の複数のシーブ74と、ブーム59の頂部からこの巻上ロープ72により垂下されたシーブブロック75の複数のシーブ76との間で掛け回わされる。77は垂下されたシーブブロック75の枠に取付けたフックである。以下主巻ウインチ56を第2の巻上ウインチと称する。
【0059】
78は前記バケット45の頂部の吊支用円筒79を着脱可能に係止するためにハンマグラブに従来より備えられたクラウンであり、以下これを第1のクラウンと称す。80は第2のクラウンであり、この第2のクラウン80は前記フック77によりワイヤロープまたはチェーン等の可撓性支持部材81により支持される。前記第1のクラウン78は前記第2のクラウン80により可撓性支持部材82(これは前記可撓性支持部材81を延長したものであってもよい。)を介して支持される。
【0060】
図22は前記バケット45の内部構造の一例を示す断面図である。吊支用円筒79はバケット45の上部に固定したブラケット83に所定の上下幅にわたり摺動自在に取付けられる。この吊支用円筒79は図23の断面図に示すように、押圧スプリング84により下方へ付勢される。85は掛金86を掛ける吊支用円筒79のラッチであり、このラッチ85は前記ブラケット83にピン87を中心として回動自在に取付けられている。図22において、88はバケット45内上部に軸89を介して回転可能に取付けた上方シ−ブ、90はバケット45内に昇降可能に取付けた昇降フレ−ム、91は昇降フレ−ム90に軸92を介して回転可能に取付けた下方シ−ブ、93は上方シーブ88と下方シーブ91とに掛け回されたワイヤロープである。94は上方シーブ88の軸89を支持する支持部材と昇降フレ−ム90との間に設けられ、昇降フレーム90を下方に押圧する押圧スプリングである。
【0061】
95はバケット吊りロープ70にスイベルジョイント96を介して接続したチェ−ンであり、その下部に前記掛金86が取付けられると共に、このチェーン95と前記ワイヤロープ93とがこの掛金86を介して 接続される。
【0062】
45aはバケット45の下端左右部にピン97を中心として開閉可能に取付けたシェルであり、これらのシェル45aは平面視形状が弧状をなす。これらのシェル45aは前記昇降フレーム90とリンク98を介して連結され、昇降フレーム90が上昇、下降するとシェル45aが閉方向、開方向に動作する。
【0063】
図23に示す第1のクラウン78は公知の構造のもので、クラウンヘッド99に軸100を中心に回動可能に複数の係止爪101を取付け、クラウンヘッド99の外側に筒形の錘102を装着したものである。この第1のクラウン78において、錘102がクラウンヘッド99に対して下がった位置にあるときは、吊支用円筒79の上部の突出した係止部79aを係止しない傾斜姿勢となる。一方、錘102がクラウンヘッド99に対して上がった位置になると、係止爪101は吊支用円筒79の係止部79aを係止可能な水平姿勢となる。
【0064】
図24は前記第2のクラウン80を示す側面図、図25はその平面図、図26は図25のA−A断面図である。104は円筒形をなすクラウンヘッドであり、その上部の左右に設けたブラケット105に前記ワイヤロープまたはチェーンからなる可撓性支持部材81がボルト106とナット107により接続される。
【0065】
109は前記掛金86を係止する係止爪である。この係止爪109はクラウンヘッド104の外面に設けた平行板状のブラケット110に取付けた軸111を中心として回動可能に、クラウンヘッド104に設けた窓112に挿入して取付けられる。この係止爪109は複数個(本例では3個)設けられ、図26に示すように、軸111がクラウンヘッド104の外側に偏位して設けられていることにより、通常は係止爪109は図示のように窓112の底部に支持され、掛金86を係止可能な水平の係止姿勢をとる。113はこれらの係止爪109をそれぞれ保護するためにブラケット110に設けたカバーである。
【0066】
114はクラウンヘッド104の外周にクラウンヘッド104に対して上下動可能に装着された筒状の錘であり、この実施の形態においては、錘114に設けた複数本(本例では3本)のロッド115を、クラウンヘッド104の外側に設けたガイド筒116にそれぞれ摺動可能に嵌合することにより、錘114はクラウンヘッド104に対して回り止めして上下動可能に変位できるように構成している。ロッド115の頂部にはストッパ115aが取付けられ、このストッパ115aがガイド筒116の上面に当接することにより、錘114のクラウンヘッド104からの抜け出しが防止される。この実施の形態においては、錘114は自重によりクラウンヘッド104に対して下方に付勢される。この下方への付勢手段としては、スプリングを付加的に用いてもよい。
【0067】
117は前記係止爪109を操作する操作体であり、この操作体117はそれぞれ前記係止爪109の下方部位において、錘114にボルト118により固定して設けられ、錘114がクラウンヘッド104に対して相対的に上動すると、操作体117が係止爪117を押し上げて掛金86を係止しない解除姿勢に変位させるものである。また、操作体117がクラウンヘッド104に対して相対的に下がると、係止爪109が自重により下がり、水平の係止姿勢、すなわち掛金86を上に載せて係止可能な姿勢をとるものである。しかし、この係止姿勢であっても、掛金86を引上げて下方から係止爪109に当てると、係止爪109を上方に押し上げることができ、掛金86をクラウンヘッド104に通過させることができる。
【0068】
この第2のクラウン80には、さらにクラウンヘッド104と錘114との相対位置を保持する手段を有する。この位置保持手段は、クラウンヘッド104の外面にボルト122により取付けたガイド体119と、このガイド体119に設けたガイド溝120に移動可能に押し当てる移動体121とを含む。
【0069】
前記移動体121の取付け装置は、錘114の外面に半径方向に突出させて設けた軸123と、この軸123に回動可能に嵌合しかつ抜け止めして取付けた筒体124と、この筒体124にその半径方向に突出させて一体に設けたアーム部125と、このアーム部125の先端に一体に設けた筒体126とを含む。前記移動体121は前記筒体126内に一部が収容され、この移動体121と筒体126の外端に設けたスプリング受け127との間に押圧スプリング128を介在させ、移動体121の先端をガイド体119のガイド溝120内に押圧して当接させている。129はこれらの位置保持手段を構成する部材を覆うカバーである。
【0070】
図27(A)に示すように、ガイド溝120はほぼハート形をなし、図27(B)に示すように、左側の溝部120aは上方から下方にかけて、溝120の底面の高さが次第に高くなる(錘114の半径方向に突出する)ような傾斜面に形成される。また、図27(C)に示すように、ガイド溝120の右側の溝部120bは下方から上方にかけて、溝120の底面が次第に高くなるように形成される。また、これらの傾斜面に形成された左側溝部120aと右側溝部120bの境界となるガイド溝120の下の部分には移動体121の戻り防止用の段部120cが形成される。また、ガイド溝120の上部の中央部120dは下方に下げた形状としており、図27(D)に示すように、右側の溝部120bの最も高い部分から左側の溝部分120aの最も低い部分にわたり、平面状の底面を有する左下がりの溝部120h、左上がりの溝部120i、前記底面が傾斜した左側の傾斜した溝部120aに連続する溝部120jが形成され、これらの溝部120h、120i、120jの近傍にそれぞれ移動体121の戻り防止用の段部120e、120f、120gが形成されている。
【0071】
図28ないし図31は図24ないし図27に示した第2のクラウン80の係止爪109の操作および動作を説明する図である。いま、図28(A)に示すように、クラウンヘッド104に対して錘114が下がった相対位置にあるとき、ロッドの上部のストッパ115aがガイド筒116の上面に当接した状態で抜け止めされる。このとき、図28(B)に示すように、移動体121は溝部120bの下部の底面にスプリング128の力で圧接する。この状態では、可撓性支持部材81により第2のクラウン80が支持されると共に、第2のクラウン80の錘114がその下方にある第1のクラウン78に当接していない状態である。
【0072】
バケット吊りロープ70によりバケット45を支持した状態において、第2の巻上ウインチ56を作動させて巻上ロープ72を繰出すと、シーブブロック75が下がり、まず第1のクラウン78がバケット45の頂部のブラケット83および吊支用円筒79上に載り、さらに図34(B)に示すように、第1のクラウン78上に第2のクラウン80が載る。これにより、クラウンヘッド104に対して錘114が相対的に上がり、操作体117が係止爪109を押し上げ、掛金86に対して係止爪109を非係止姿勢とする、このとき、操作体117が係止爪109を押し上げる過程においては、アーム部125が多少回動しながら移動体121はガイド体119の右側の溝部120bに沿って相対的に上がる。そして戻り防止用の段部120eを超えてガイド溝120の右上部の浅い溝部120hに達する。この状態を図29(A)、(B)に示す。
【0073】
図29(A)、(B)の状態から第2の巻上ウインチ56により巻上ロープ72を巻取ると、シーブブロック75が上がり、第2のクラウン80も上がるので、第2のクラウン80の錘114が第1のクラウン78から離れ、錘114の自重により錘114がクラウンヘッド104に対して落下しようとするが、移動体121がガイド溝120に嵌まっているので落下が阻止され、錘114の自重により移動体121は左下がりに形成されている溝部120hに沿って移動し、さらに段部120fを超えて溝部120iに至り、この間、錘114はクラウンヘッド104に対して若干下がる。この状態を図30(A)、(B)に示す。この状態では錘114はアーム部125を介して支持され、係止爪109は掛金86に対して非係止姿勢に保持される。
【0074】
次に再び第2の巻上ウインチ56を巻上ロープ24の繰出し方向に作動させて図34(B)に示す状態とすると、再度錘114がクラウンヘッド104に対して相対的に上がる。この錘114の相対的上動に伴い、移動体121はガイド溝120の左上がりの溝部120iに沿って上がり、段部120gを超えて溝部120jに至る。この状態を図31(A)、(B)に示す。
【0075】
続いて第2の巻上ウインチ56を巻上ロープ24の巻取り方向に作動させると、再度第2のクラウン80が上がり、錘114が第1のクラウン78から離れ、錘114がクラウンヘッド104に対して下降するので、移動体121はガイド溝120の左側の溝部120aに沿って下降し、段部120cを超え、溝部120bの下部に至り、ストッパ115aがガイド溝116の上面に当接した状態となり、さらなる下降が防止される。この状態は図28(A)、(B)の状態、すなわち係止爪109は掛金86が係止しうる姿勢となる。
【0076】
このように、バケット45をバケット吊りロープ70により支持した状態において、第2の巻上ウインチ56の巻上ロープ24を巻取り繰出し、第1のクラウン78上に第2のクラウン80を載せたり引上げて離したりするごとに、図28(A)、(B)に示すように係止爪109を係止姿勢にしたり、図30(A)、(B)に示すように係止爪109を非係止姿勢に変更することができる。
【0077】
次に図32ないし図36により、このクラウン装置を備えたハンマグラブを用いて杭の除去作業を行なう場合の地下埋設体の引上げ方法について説明する。図32(A)は前述のように切断した杭4Aを除去するに当り、前記ケーシングドライバー3によって杭4に同心にケーシング5を建込み、前述のように杭4の頂部から所定の長さの箇所に切削溝4xを設け、ケーシング5、掘削体20と共に切削溝4x以上の部分を引上げ、必要に応じて回転または揺動させて切断する。
【0078】
切断杭4Aの把持は、次のように行なわれる。切断杭4Aをバケット45により把持する場合、図22に示すように、ラッチ85の下面に掛金86を掛けてバケット45をバケット吊りロープ70により吊った状態、すなわちシェル45aを開いた状態で第1の巻上ウインチ57の作動によりバケット吊りロープ70を繰出し、シェル45aを切断杭4Aの頂部に被せる。このようにバケット45を下降させてシェル45aにより切断杭4Aを把持したとき、バケット吊りロープ70は下降の慣性力と第2の巻上ウインチ57のブレ−キをかけるタイミングのずれから少し弛む。これによって図23に示す押圧スプリング84のスプリング力により吊支用円筒79が下降し、ラッチ85がピン87を中心に図23の矢印aで示すように回動し、ラッチ85の内端は下向きに回転して掛金86から外れる。
【0079】
このように掛金86がラッチ85から外れた状態でバケット吊りロープ70を巻上げると、バケット吊りロープ70に接続したスイベルジョイント96と吊上用チェ−ン95も一緒に巻上げられ、掛金86は吊支用円筒79より上方に抜け出る。ここで、ワイヤロ−プ93は昇降フレ−ム90に取付けられた下方シ−ブ91とバケット45内上部に取付けられた上方シ−ブ88との間に掛け回されているため、昇降フレ−ム90も上方に引上げられる。これにより昇降フレ−ム90にリンク98を介して連結されたシェル45aが閉じ方向に作動し、切断杭4Aの上部をシェル45aで把持する。このとき、シェル45aに設けられている爪または先端鋭利な複数個の突起(図示せず)が切断杭4Aに食い込み、切断杭4Aの落下が防止される。このようにして切断杭4Aをシェル45aにより把持した状態を図32(A)に示す。また、クラウン78,80の状態を図34(A)に示す。
【0080】
続いて第2の巻上ウインチ56の作動より、巻上ロープ72を繰出し、図32(A)に示すように、シーブブロック76を下降させ、図32(B)に示すように、掛金86より下方に第2のクラウン80を位置させる。ここで、仮に、第2のクラウン80の錘114がクラウンヘッド104に対して下降した位置にあれば、係止爪109が図28(A)に示すように水平の係止姿勢にあるが、第2のクラウン80を掛金86よりも下に下降させるとき、掛金86により係止爪109が上方に押し上げられて回動するので、掛金86を通過させることができる。この場合は、掛金86が第2のクラウン80より上方になるまで第2のクラウン80を下降させた後、今度は巻上ロープ72を巻上げ、図33(A),図35(A)に示すように、第2のクラウン80の係止爪109上に掛金86を係止し、さらに第2の巻上ウインチ56により巻上ロープ72を巻上げれば、バケット45は、バケット45内のワイヤロープ93に張力を掛けた状態、すなわちシェル45aを閉じ方向に付勢した状態で、ワイヤロープ93、掛金86、第2のクラウン80、可撓性支持部材81、シーブブロック73,75に巻かれた巻上ロープ72を介して巻上げられる。このとき、バケット吊りロープ70は弛めた状態とする。
【0081】
もし、図32(A)に示すように第2のクラウン80を下降させる際に、係止爪109が図30(A)、図34(A)に示すような非係止姿勢にあれば、勿論掛金86は第2のクラウン80内を通すことができるが、この場合は、係止爪109を係止姿勢に変更するため、第1のクラウン78をバケット45の頂部のブラケット83および吊支用円筒79上に載せ、さらに第2のクラウン80を下降させて、図32(B)、図34(B)に示すように、第1のクラウン78上に載せる。この第2のクラウン80を第1のクラウン78に載せる操作で移動体121は図30(B)に示す溝部120iから段部120gを超えて図31(B)に示すように溝部120jに移る。その後、巻上ロープ72を巻上げることにより、前に説明したように、クラウンヘッド104に対して錘114と共に操作体117を下降させ、これに伴い移動体121は溝部120aに沿って下降し、係止爪109を図28(A)に示す水平の係止姿勢にする。この状態でさらに第2の巻上ウインチ56により巻上ロープ72を巻上げることにより、図33(A)、図35(A)に示すように、係止爪109上に掛金86を係止した状態となり、切断杭4Aを把持したバケット45を、ワイヤロープ93、掛金86、可撓性支持部材81、シーブブロック73,75に掛け回した巻上ロープ72を介して吊上げることができる。
【0082】
続いて地上に切断杭4Aを降ろす際には、第2の巻上ウインチ56により巻上ロープ72を繰出して図33(B)に示すように切断杭4Aを地面GLに着地させる。この後、第1の巻上ウインチ57を巻上げ方向に操作してバケット45および切断杭4Aを支持しておき、図33(B)、図35(B)に示すように、さらに巻上ロープ72を繰出し、ブラケット83および吊支用円筒79上に第1のクラウン78を載せ、その上に第2のクラウン80を載せる。この動作により、第2のクラウン80の錘114がクラウンヘッド104に対して相対的に上がり、移動体121は図29(B)の溝部120hの位置になり、係止爪109は図29(A)に示す非係止姿勢となる。その後、第2のクラウン80を引上げると、係止爪109は非係止姿勢のままで、移動体121は図30(B)に示す溝部120i(非係止位置)に保持される。
【0083】
一方、第1のクラウン78においては、図35(B)に示すように(図34(B)、図35(A)でも第1のクラウン78の状態は同様であるが、図34(A)、(B)、図35(A)では係止爪101の図示を省略している。)、錘102はブラケット83上に載るため、クラウンヘッド99に対して錘102が相対的に上がり、係止爪101は水平の係止姿勢であって、吊支用円筒79の係止部79aに係止可能であり、第1の巻上ウインチ56によって巻上ロープ24を巻上げることにより、図36に示すように、係止爪101が吊支用円筒79の係止部79aに係止され、バケット45および切断杭4Aは、第1のクラウン78、可撓性支持部材82、第2のクラウン80、可撓性支持部材81、シーブブロック73、75に巻かれた巻上ロープ72を介して支持することができる。このようにして第1のクラウン78によりバケット45を支持した状態で第1の巻上ウインチ57によりバケット吊りロープ70を繰出せば、シェル45aが開き、切断杭4Aをシェル45aから離し、地面GLに倒すことができる。
【0084】
次に、バケット45を地上に下ろし、第1の巻上ウインチ57によりバケット吊りロープ70を繰出すと、バケット45内の押圧スプリング94(図22参照)によりワイヤロープ93がバケット45内に引き込まれ、掛金86がバケット45内に入る。次に掛金86がバケット45内に入った状態からバケット吊りロープ70を第1の巻上ウインチ57により巻上げると、掛金86が図22、図23に示すラッチ85に掛かり、バケット45をバケット吊りロープ70により吊上げることができる。このバケット吊りロープ70によりバケット45を支持した状態においては、押圧スプリング84が圧縮され、吊支用円筒79が上がり、係止部79aの位置が上がる。この係止部79aが上がった状態で、巻上ロープ72を巻上げて第1のクラウン78を上げると、第1のクラウン78のクラウンヘッド99は錘102に対して相対的に上がるため、係止爪101は係止部79aに邪魔されずに回って傾斜した非係止姿勢となり、係止爪101が係止部79aから外れる。このため、シェル45aが開き、かつバケット45がバケット吊りロープ70のみにより支持された状態、すなわちケーシング5内にバケット45を挿入可能な状態に戻る。
【0085】
このハンマグラブにおいて、第1の巻上ウインチ57と第2の巻上ウインチ56の巻上げ可能な重量を同じく10tと仮定し、シーブブロック73,75のシーブ74,76の数を図示のようにそれぞれ3個とすると、巻上ロープ72によりバケット45と切断杭4Aを吊上げる場合は、60tが吊上げ可能となる(ただし、ワイヤロープ93等の吊上げに係る部材がこの60tの荷重に耐えられると仮定する)。従って従来第1の上ウインチ57のみで例えば10t程度しか吊上げられなかったものでも、第1の巻上ウインチ56を用いることにより、10tを超える埋設物の吊上げが可能となる。このため、従来より切断杭4Aを重量の大きなサイズごとに切断し、吊上げることができるから、切断回数と除去作業の回数を少なくすることができ、前述したように、切断長の制限が緩和された切断方法と併用することにより、杭の除去作業の能率を上げることができる。
【0086】
また、従来より、重量の大きい杭の引上げに2台の巻上ウインチを同調させてバケットの巻上げに用いることも行なわれていたが、この2台の巻上ウインチを同時に作動させる場合に比較し、本発明のように1台の巻上ウインチ56を用いてバケット45を杭4Aと共に引上げる場合、操作が容易となる上、巻上げ時にはワイヤロープ93には常に張力がかかるので、バケット45で把持している杭4A等の地下埋設体が落下するおそれがなく、安全性が向上する。
【0087】
また、バケット45を支持しているバケット吊りロープ70では引上げることができないような転石や埋設木等であっても引上げることが可能となる。
【0088】
本発明のダブルクラウン方式の引上げ方法を実施する場合、前記掛金86に対する係止、非係止の選択は、液圧シリンダや電磁石により掛止めピンや係止爪等の係止体の位置変更や姿勢変更により行なってもよい。ただし、本実施の形態においては、錘114が前記クラウンヘッド104に対して上下に変位することにより、前記掛金86に対して係止姿勢と非係止姿勢に回動可能な係止爪により前記選択手段を構成したので、第2のクラウン80を第1のクラウン78に載せたり、離したりする操作により、係止爪109を操作することができ、係止と係止解除のための液圧シリンダや電磁石等のアクチュエータやそのための配管、配線等が不要となり、構成が簡略化できる。
【0089】
また本実施の形態においては、錘114の位置保持手段が、ガイド体119と、その戻り防止用の段部付きのガイド溝120に沿って移動する移動体121からなるので、液圧シリンダや電磁石等のアクチュエータを付加することなく、錘114のクラウンヘッド104に対する上下動により、係止爪101を係止姿勢と係止解除姿勢に交互に変更することができる。
【0090】
本発明を実施する場合、第2のクラウン80を吊る吊上げ力の大きな吊上げ手段としては、ハンマグラブを構成するクレーン以外の別のクレーンを用いたり、ハンマグラブを構成するクレーンに搭載した巻上ウインチ57より大きな巻上げ力の巻上ウインチを搭載してその巻上ウインチを用いることもできる。しかしながら本実施の形態においては、前記吊上げ力の大きな巻上げ手段が、前記クレーン2に従来より搭載されている主巻ウインチ56と、この主巻ウインチ56により巻上ロープ72を前記ブーム59の頂部とその下部とに設けられたそれぞれ複数のシーブ74,76からなるシーブブロック73,75と、下方のシーブブロック75からなるものを用いたので、通常、ケーシングドライバー3と共に協働するクレーン2に備えられた主巻ウインチ56を大荷重の吊上げに用いることができ、別のクレーンが不要となるという利点がある。
【0091】
なお、主巻ウインチ56、補巻ウインチ57、第3のウインチ58の使用は上記実施の形態に限定されず、主巻ウインチ56または第3の巻上ウインチ58をバケット吊りロープ70の支持に用い、補巻ウインチ57または第3の巻上ウインチ58を巻上ロープ72の巻上げに用いてもよい。
【0092】
また、ケーシング5の下端の掘削爪30の構造、配置を両回転方向に掘削が可能なものとし、揺動によりケーシング5を建込むようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明による杭の切断方法の一実施の形態を説明するケーシングドライバーおよびクレーンの側面図である。
【図2】本実施の形態のケーシングドライバーの側面図である。
【図3】図2のケーシングドライバーの平面図である。
【図4】本実施の形態の切断方法に用いる装置の要部を示す縦断面図である。
【図5】図4のA−A拡大断面図である。
【図6】図4の要部拡大断面図である。
【図7】図4のB−B拡大断面図である。
【図8】図4のケーシングの底面図である。
【図9】本実施の形態の作業台の平面図である。
【図10】図9の作業台の縦断面図である。
【図11】(A)〜(E)は本実施の形態の切断方法を説明する工程の一部を示す縦断面図である。
【図12】(A)〜(C)は本実施の形態の切断方法を説明する工程の残部を示す図である。
【図13】本実施の形態の切断方法を説明する縦断面図である。
【図14】本実施の形態において、切断後の杭の引上げ状況を示す縦断面図である。
【図15】(A)、(B)、(C)はそれぞれ本発明の切断方法の他の例を示す横断面図、縦断面図、横断面図である。
【図16】本発明の切断方法の他の適用例を示す縦断面図である。
【図17】本発明の切断方法を実施するケーシングの他の例を示す底面図である。
【図18】図17のケーシングを内側から見た図である。
【図19】図18において、一般の地盤を掘削する際に土砂の導入口を蓋により塞いだ状態を示す図である。
【図20】本発明による切断方法を実施する液圧源搭載作業台の他の例を示す縦断面図である。
【図21】本発明の引上げ方法を実施する装置の構成例を示す斜視図である。
【図22】本発明の引上げ方法を実施するハンマグラブバケットの一例を示す縦断面図である。
【図23】本発明の引上げ方法を実施する第1のクラウンと掛金のラッチ機構の一例を示す縦断面図である。
【図24】本発明の引上げ方法を実施する第2のクラウンの一例を示す側面図である。
【図25】図24の第2のクラウンの平面図である。
【図26】図25のA−A断面図である。
【図27】(A)は図24〜図26に示した第2のクラウンに設けるガイド体の正面図、(B)、(C)、(D)はそれぞれ(A)のB−B、C−C、D−D断面図である。
【図28】(A)はこの例の第2のクラウンの一動作過程を示す縦断面図、(B)はこの動作過程におけるガイド体のガイド溝と移動体との相対位置関係図である。
【図29】(A)は図28から変化した動作過程を示す縦断面図、(B)はこの動作過程におけるガイド体のガイド溝と移動体との相対位置関係図である。
【図30】(A)は図29から変化した動作過程を示す縦断面図、(B)はこの動作過程におけるガイド体のガイド溝と移動体との相対位置関係図である。
【図31】(A)は図30から変化した動作過程を示す縦断面図、(B)はこの動作過程におけるガイド体のガイド溝と移動体との相対位置関係図である。
【図32】(A)、(B)は杭の切断後に本例のハンマグラブを用いて切断杭の除去作業を行なう場合の一部工程図である。
【図33】(A)、(B)、(C)は図32に続く杭の除去作業における残りの工程図である。
【図34】(A)、(B)は図32、図33の杭の除去作業における第1、第2のクラウンおよび掛金の相対関係図である。
【図35】(A)、(B)は図32、図33の杭の除去作業における第1、第2のクラウンおよび掛金の相対関係図である。
【図36】図32、図33の杭の除去作業における第1、第2のクラウンおよび掛金の相対関係図である。
【符号の説明】
【0094】
1:切断装置、2:クレーン、3:ケーシングドライバー、4、4A:杭、5:ケーシング、6:作業台、7:液圧源、9:液圧シリンダ、10:ベースフレーム、11:ガイドポスト、12:液圧シリンダ、13:昇降フレーム、14:液圧モータ、15:回転体、16:液圧シリンダ、17:可動バンド、19:チャック装置、20:掘削体、21:軸、22:掘削爪、23:液圧シリンダ、24:ピン、25:リンク、27:保護カバー、30:掘削爪、31,32,33:掘削爪グループ、34:リング、35:ポケット部、37:無線制御装置、40:弧状配管、41:継手、42:縦配管、43:継手、44:配管、45:ハンマグラブ、50:導入口、51:ボルト、52:蓋、53:ストッパ、54:突出片、55:掘削屑、56:第2の巻上ウインチ、57:第1の巻上ウインチ、58:第3の巻上ウインチ、59:ブーム、60:液圧シリンダ、61:昇降フレーム、62:軸受、63:旋回体、64:チャック装置、70:バケット吊りロープ、71:シーブ、73,75:シーブブロック、74,76:シーブ、77:フック、78:第1のクラウン、79:吊支用円筒、79a:係止部、80:第2のクラウン、81,82:可撓性支持部材、83:ブラケット、84:押圧スプリング、85:ラッチ、86:掛金、88:上方シーブ、89:軸、90:昇降フレーム、91:下方シーブ、93:ワイヤロープ、94:押圧スプリング、95:チェーン、96:スイベルジョイント、98:リンク、99:クラウンヘッド、101:係止爪、102:錘、104:クラウンヘッド、105:ブラケット、106:ボルト、107:ナット、109:係止爪、110:ブラケット、112:窓、113:カバー、114:錘、115:ロッド、115a:ストッパ、116:ガイド筒、117:操作体、118:ボルト、119:ガイド体、120:ガイド溝、121:移動体、123:軸、124:筒体、125:アーム部、126:筒体、127:スプリング受け、128:押圧スプリング、129:カバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設されている鉄筋コンクリート製の杭や柱もしくは壁等の地下埋設体を上部から順次切断する方法と、切断した地下埋設体を引上げる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建造物の基礎に埋設されたコンクリート製の杭や地階の柱、壁等は、この建造物を破壊、撤去した後に除去する必要がある。コンクリート製の杭は、杭の長手方向に埋設された複数本の鉄筋が円環状に配列して埋設される。従ってコンクリート製杭は外周よりこの鉄筋が埋設されている深さまで掘削して鉄筋を切断する必要がある。しかし鉄筋が埋設されている部位は杭内の外周側であり、鉄筋を切断するだけでは杭の切断は難しい。
【0003】
このようなコンクリート製杭を切断する装置として、特許文献1の図2、図3には、ケーシングドライバーにより回転駆動されるケーシングの下部内周に、突出幅が異なる複数のカッタを異なる高さとなる箇所に周方向に分散させて配設し、ケーシングを回転させることにより、杭を頂部から掘削、破砕してコンクリート屑にするものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、クレーンによりワイヤロープを介してケーシング内に切断装置を垂下し、この切断装置はその上部にチャック装置を有し、切断装置の下部にバケットとそのバケットに設けた油圧シリンダにより開閉される半球型の開閉シェルを有し、杭の切断時には、チャック装置によりこの切断装置をケーシング内壁に固定し、開閉シェルにより杭を掴んでケーシングと共に開閉シェルを回転させることにより、杭を切断し、その後、チャック装置による切断装置のケーシングへの固定を解除し、クレーンにより切断装置と共に切断した杭を引き上げるものが開示されている。
【0005】
一方、杭を切断した後、切断した杭をハンマグラブにより把持してクレーンにより吊り上げることが行われる。このハンマグラブは、特許文献3に記載のように、ケーシングドライバーの中掘りに多用されるものである。またこのようなハンマグラブバケットにおいて、クラウンはバケットのシェルを開いて排土させるためのもので、このクラウンはクレーンのブームから垂下すると共に、バケット吊りロープをこのクラウンの内部に貫通した状態で取付けられる。バケットを地上に引上げて排土する際には、バケット吊りロープを巻上げてバケット頂部の吊支用円筒をこのクラウンの係止爪に掛け、シェルが閉じた状態でこのクラウンを介してバケットを支持し、次にバケット吊りロープを巻下げることにより、シェルを開いて排土するものである。通常、このクラウンは、例えば特許文献4、5に示されるように、ブームにワイヤロープやチェーン等の可撓性支持部材を介して支持されるクラウンヘッドと、クラウンヘッドに上下動可能に取付けられた筒状の錘と、この錘がクラウンヘッドに対して相対的に上方、下方に位置を変えることにより掛金が係止可能あるいは通過可能な姿勢または位置に変更される前記係止爪とからなる。
【0006】
【特許文献1】特開平8−120670号公報
【特許文献2】特開2001−323767号公報
【特許文献3】特開平6−317079号公報
【特許文献4】実用新案登録第3032615号公報
【特許文献5】特開平10−54049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の図2、図3に示されるように、コンクリート杭を頂部から全部破砕するものは、杭の切断体積が多く、効率が悪い。
【0008】
一方、特許文献2に記載のものは、開閉シェルの上部にバケット上枠部が存在するため、切断可能な杭の長さは、バケットの上枠部から開閉シェルの掘削刃までの高低差によって杭の切断可能な長さ(例えば2m以下の長さ)に決定されてしまい、能率良く杭の除去ができないという問題点がある。また、特許文献2に記載の方法では、クレーンにより切断した杭の引き上げを行なっているが、杭の外周側に埋設された鉄筋を切断する深さまで杭に切削溝を設けても、クレーンによる引き上げ力では杭を切断することができず、このため、杭を中心まで切断する全工程を開閉シェルにより行なう必要がある。このため、切断に長い時間を要し、このこともさらに杭の撤去の能率を低下させる原因になる。
【0009】
また、切断された杭の重さは長さに比例することから、ハンマグラブを用いて切断可能な長さは、ハンマグラブを巻取り繰出しするバケット吊りロープ用巻上ウインチの巻上げ能力によって左右され、一般的には、この巻上ウインチに10t程度の巻上げ能力を有するものが使用されるから、ハンマグラブバケットの重量を3tとすると、切断された杭の重量は7t程度に制限され、切断可能な長さは7tに相当する重量に相当する長さに制限され、より以上の重さに相当する長さに切断して引上げて能率向上を図ることができないという問題点がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、杭等の地下埋設体の切断長の制限が緩和され、地下埋設体の除去が能率良く行なえ、工期短縮が可能となる地下埋設体の切断方法を提供することを目的とする。また、本発明は、本発明の切断方法と併用する場合に好適で、従来より大きな重量の地下埋設体の引上げが可能であり、能率良く地下埋設体の撤去を行なうことができ、工期短縮が可能となる地下埋設体の引上げ方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の地下埋設体の切断方法は、撤去すべき鉄筋コンクリート製地下埋設体の上の地盤にケーシングドライバーを設置し、
前記ケーシングドライバーによりケーシングを回転または揺動させてケーシングを地下埋設体の頂部から所定の深さに至る深さに建込み、
前記ケーシングの下部内壁に開閉可能に設けた複数枚の掘削体をケーシング内壁に縦に設けた液圧シリンダにより閉じ方向に動かすと同時に、前記ケーシングドライバーにより前記ケーシングと共に前記掘削体を回転または揺動させて地下埋設体に切削溝を入れ、
その後、前記掘削体を前記地下埋設体に食い込ませたままで前記ケーシングドライバーによって前記ケーシングと共に前記掘削体および地下埋設体の前記切削溝形成部より上の部分を持ち上げることにより、地下埋設体を切断することを特徴とする。
【0012】
請求項2の地下埋設体の切断方法は、撤去すべき鉄筋コンクリート製地下埋設体である杭の上の地盤にケーシングドライバーを設置し、
前記ケーシングドライバーによりケーシングを回転または揺動させて前記杭を囲むようにケーシングを杭の頂部から所定の深さに至る深さに建込み、
前記ケーシングの下部内壁に開閉可能に設けた複数枚の掘削体をケーシング内壁に縦に設けた液圧シリンダにより閉じ方向に動かすと同時に、前記ケーシングドライバーにより前記ケーシングと共に前記掘削体を回転または揺動させて杭を外周側より杭内部の鉄筋が切断可能な深さまで杭に切削溝を入れ、
その後、前記掘削体を前記杭に食い込ませたままで前記ケーシングドライバーにより前記ケーシングと共に前記掘削体および杭の前記切削溝形成部より上の部分を持ち上げることにより、杭を切断することを特徴とする。
【0013】
請求項3の地下埋設体の切断方法は、請求項1または2に記載の地下埋設体の切断方法において、
前記地下埋設体の前記切削溝形成部より上の部分を持ち上げて切断する際に、前記ケーシングドライバーにより前記ケーシングを回転または揺動させることによって、前記掘削体と共に地下埋設体の前記切削溝形成部より上の部分を回転または揺動させて杭を切断することを特徴とする。
【0014】
請求項4の地下埋設体の引上げ方法は、請求項1から3までのいずれかに記載の切断された地下埋設体を、クレーンに搭載した巻上ウインチで巻取り繰出しされるバケット吊りロープを介して支持されたハンマグラブバケットを用いて引上げる方法であって、
ハンマグラブバケットの頂部に設ける吊支用円筒を係止する係止爪を有する第1のクラウン以外に、第2のクラウンを設け、この第2のクラウンにより可撓性支持部材を介して前記第1のクラウンを支持し、
前記第2のクラウンを、前記バケット吊りロープの引上げ力より大きな引上げ力を発生させる巻上げ装置により可撓性支持部材を介して支持し、
前記第2のクラウンの係止爪に、前記バケット吊りロープに接続される部材に設けられる掛金を掛け、前記巻上げ装置により前記第2のクラウンを介して前記ハンマグラブバケットと共にこのハンマグラブバケットにより把持した地下埋設体を引上げることを特徴とする。
【0015】
請求項5の地下埋設体の切断方法は、請求項4に記載の地下埋設体の引上げ方法において、
前記ハンマグラブバケットとして、筒状のバケット内に、押圧スプリングにより下方に押圧されかつ昇降可能な昇降フレームを設け、この昇降フレームをバケットの下部に開閉可能に設けられるシェルに連結し、前記昇降フレームに取付けた下シーブとバケット内に設けた上シーブとの間でワイヤロープを掛け回わし、このワイヤロープを、クレーンに搭載した第1の巻上ウインチにより巻取り繰出しされるバケット吊りロープに掛金を有する可撓性支持部材を介して接続し、前記バケットの頂部の吊支用円筒に回動可能に設けたラッチに前記掛金を係止させて前記バケットを前記バケット吊りロープにより支持したシェル開状態と、前記ラッチによる前記掛金の係止を解除して前記バケット吊りロープを巻上げたシェル閉状態とが取り得るハンマグラブバケットを用いると共に、
前記バケット吊りロープの引上げ力より大きな引上げ力を発生させる前記巻上げ装置として、前記クレーンに搭載した第2の巻上ウインチと、この第2の巻上ウインチにより巻取り繰出しされる巻上ロープと、前記ブームの頂部および頂部から垂下した位置で前記巻上ロープをそれぞれ掛け回す上下のシーブブロックを有するものを用い、
前記ラッチの下面に前記掛金を掛けて前記ハンマグラブバケットを前記バケット吊りロープにより支持して浮かせた状態から、前記第1の巻上ウインチの作動により前記バケット吊りロープを繰出し、前記切断された地下埋設体の頂部に前記シェルを被せると共に、前記吊支用円筒を下方に付勢する押圧スプリングのスプリング力により前記吊支用円筒を前記ハンマグラブバケットに対して相対的に下降させて前記ラッチを前記掛金から外す工程と、
前記掛金が前記ラッチから外れた状態で前記バケット吊りロープを前記第1の巻上ウインチにより巻上げて前記掛金を前記吊支用円筒より上方に抜け出させ、バケット内の前記昇降フレーム押圧用押圧スプリングのスプリング力に抗して前記昇降フレームを上昇させることにより、前記シェルを閉じ方向に作動させて地下埋設体の上部をシェルで把持する工程と、
前記第2の巻上ウインチの作動より前記巻上ロープを繰出して前記第2のクラウンを巻下げ、前記掛金を前記第2のクラウン内に通して前記掛金より下方に前記第2のクラウンを位置させる工程と、
前記第2の巻上ウインチにより前記巻上ロープを巻上げ、前記第2のクラウンに設けた係止爪上に前記掛金を掛け、さらに前記巻上ロープを巻上げ、前記巻上ロープの力によりハンマグラブバケットのシェルを閉じる力を発生させてシェルにより地下埋設体を把持する状態を維持すると同時に、前記ハンマグラブバケットと共に地下埋設体を引上げる工程とにより、切断された地下埋設体を地上に引上げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、ケーシングドライバーにより円筒形のケーシングを建込み、そのケーシングの内壁に設けた掘削体を閉じながら回転または揺動させて地下埋設体の切削を行なうので、掘削体の上部空間をオープン構造とした状態で切削を行なうことができ、地下埋設体を切断する長さの制限を受けない。このため、吊り上げるクレーン等による吊り上げ可能な最大限の重さに相当する長さまで地下埋設体を切断することができ、能率良く地下埋設体の除去作業を行なうことができる。
【0017】
また、地下埋設体中に鉄筋が多少残っている状態であっても、強力な引上げ力を発生できるケーシングドライバーによってケーシング、掘削体と共に切削溝を入れた地下埋設体を持ち上げるため、掘削体で囲まれた地下埋設体全体を切断しなくても地下埋設体を切削溝を入れた部分から上の部分を下の部分から切り離すことができる。このため、地下埋設体の掘削体で囲まれた部分全体を切削して切断する場合に比較して切断に要する時間を大幅に短縮することができる。この切断時間の短縮と、前述のように地下埋設体の切断長さの制限が緩和されることとにより、従来より地下埋設体の切断、撤去に要する時間を大幅に短縮することができ、大幅な工期短縮が可能となる。
【0018】
また、掘削体を開閉する液圧シリンダをケーシングの内壁に設けたものを用いることにより、掘削体を開閉する駆動部の要する幅が狭くてすみ、比較的大きな地下埋設体の切断が可能となる。
【0019】
請求項2の発明によれば、ケーシングドライバーにより円筒形のケーシングを建込み、そのケーシングの内壁に設けた掘削体を閉じながら回転または揺動させて杭の切削を行なうので、掘削体の上部空間をオープン構造とした状態で切削を行なうことができ、杭を切断する長さの制限を受けない。このため、吊り上げるクレーン等による吊り上げ可能な最大限の重さに相当する長さまで杭を切断することができ、能率良く杭の除去作業を行なうことができる。
【0020】
また、杭の場合はその外周から所定の深さの鉄筋埋設部位まで切削溝を入れれば、鉄筋が多少残っている状態であっても、強力な引上げ力を発生できるケーシングドライバーによってケーシング、掘削体と共に切削溝を入れた杭を持ち上げるため、掘削体で囲まれた杭を切断しなくても杭の切削溝を入れた部分から上の部分を下の部分から切り離すことができる。このため、杭の掘削体で囲まれた部分全体を切削して切断する場合に比較して切断に要する時間を大幅に短縮することができる。この切断時間の短縮と、前述のように杭の切断長さの制限が緩和されることとにより、従来より杭の切断、撤去に要する時間を大幅に短縮することができ、大幅な工期短縮が可能となる。
【0021】
また、掘削体を開閉する液圧シリンダをケーシングの内壁に設けたものを用いることにより、掘削体を開閉する駆動部の要する幅が狭くてすみ、比較的大きな径の杭の切断が可能となる。
【0022】
請求項3の発明によれば、ケーシングドライバーによりケーシング、掘削体と共に切削溝より上の地下埋設体の部分を回転または揺動させるため、能率良く、短時間に地下埋設体を切断することが可能となる。また、杭がケーシングに対して偏心している等の理由で多少の鉄筋が切断されないで杭内に残留している場合や、地階の柱や壁等の撤去の際に地下埋設体内に鉄筋が残留している場合にも鉄筋をねじ切ることができ、切断が困難な地下埋設体でも切断することが可能となる。
【0023】
請求項4の発明によれば、従来のクラウン(第1のクラウン)に別のクラウン(第2のクラウン)を付加し、この第2のクラウンに掛金を掛けて巻上げ力の大きな巻上げ装置によりバケット吊りロープを介してハンマグラブバケットと共に切断した地下埋設体を引上げるようにしたので、従来より重量の大きな地下埋設体を引上げることが可能となる。このため、請求項1から3に記載の地下埋設体の切断の際に、地下埋設体の切断長さを長くすることができ、地下埋設体の撤去作業を能率良く行なうことができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、ハンマグラブバケットを支持するクレーン自体に搭載された第2の巻上ウインチによりハンマグラブバケットと共に切断された地下埋設体を引上げるため、通常のクレーンに搭載されている2台の巻上ウインチを使用して地下埋設体の引上げ作業を行なうことができ、容易に実施可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は本発明による地下埋設体の切断方法の一実施の形態を示す側面図である。4は地下埋設体である杭であり、1はこの杭の切断装置、2はケーシング5の建込みや切断した杭の引上げ等を行なうクレーンである。切断装置1はケーシングドライバー3とこのケーシングドライバー3により回転駆動されて杭4の周囲の掘削と杭4の切断を行なう装置を取付けたケーシング5とを備える。6は後述の液圧シリンダ23(図4参照)の液圧源7を搭載する作業台である。
【0026】
図2、図3はそれぞれ本発明の切断方法に用いるケーシングドライバー3の一例を示す側面図および平面図である。このケーシングドライバー3は、液圧シリンダ9により水平に設置されるベースフレーム10上の四隅にガイドポスト11を立設し、これらのガイドポスト11に沿って液圧シリンダ12により昇降される昇降フレーム13を取付ける。そしてこの昇降フレーム13に液圧モータ14により歯車機構(図示せず)等の動力伝達装置を介して回転駆動される回転体15を設置する。この回転体15はケーシング5を貫挿可能な円筒形をなすものであり、この回転体15には液圧シリンダ16により開閉される可動バンド17を有するチャック装置19を備える。
【0027】
図4は本発明の切断方法により杭4の切断を行なう前の状況を示す縦断面図である。20は対をなして設けられた掘削体であり、これらの掘削体20は、図5に示すようにケーシング5の下部に固定される軸21を中心に開閉可能に取付けられる。これらの掘削体20は好ましくは一対設けられるが、3個設けてもよい。これらの掘削体20は図5に示すように水平断面形状が弧状をなし、下辺に掘削爪22を有する。
【0028】
23はそれぞれ前記各掘削体20にそれぞれ対応して説けられた液圧シリンダである。これらの液圧シリンダ23は、ケーシング5の内壁における前記掘削体20の上部にピン24により連結して縦向きに取付けられる。これらの液圧シリンダ23のピストンロッドと前記掘削体20とは、リンク25を介して連結される。このリンク25は、土砂侵入時の液圧シリンダ23のピストンロッドの保護と、ケーシング5の回転力が掘削体20を経て液圧シリンダ23に直接かかることを防止し、力の分散を図るためである。
【0029】
図6、図7に示すように、ケーシング5の内壁には、液圧シリンダ23を覆う保護カバー27が、液圧シリンダ23の最大伸長状態でもそのピストンロッドを覆うような上下方向の長さにわたって設けられる。
【0030】
図6に示すように、掘削体20は、その開放状態におけるケーシング内方への突出幅W1を、前記液圧シリンダの保護カバー27を含めたケーシングより内方への突出幅W2より小さく(W2>W1)に設定する。
【0031】
図4および図8に示すように、ケーシング5の下端には複数の掘削爪30が取付けられたケーシング先端部5Aがボルト(図示せず)により着脱可能に取付けられる。ケーシング先端部5Aは、掘削対象物が一般の地盤である場合と、図17〜図19に示すようなコンクリート底盤である場合に使用するものとで交換可能とする。また、杭4の径の相違に呼応して対応可能となるように、掘削内径の異なる掘削爪30を有するものにも交換可能とする。
【0032】
これらの掘削爪30は互いに隣接するもののケーシング5の半径方向の位置を異ならせて取付けられ、矢印29に示すように、ケーシング5を正転方向に回転させて掘削を行なうと、掘削土砂がケーシング5の外側に押し出されてケーシング5の外壁側に圧密されて集積するように構成される。なお、本実施の形態においては、掘削爪30を3つのグループ31,32,33に分け、各グループでは掘削時の回転方向の始端がケーシング5の最も内側にあり、終端が最も外側にあるように配設される。
【0033】
図4に示すように、ケーシング5の最も内側の掘削爪30のケーシング内方への突出幅W3は、前記液圧シリンダ23の保護カバー27を含めたケーシング内方への突出幅W2より大きく(W3>W2)設定される。
【0034】
また、図4、図8に示すように、ケーシング5はその下端に内方に突出したリング34を有し、このリング34と前記掘削体20との間にポケット部35を形成している。
【0035】
図1、図9、図10に示すように、前記液圧シリンダ23の液圧源7を設置する作業台6は、ケーシング5の上端に着脱可能に嵌合して取付けられる構造を有する。この液圧源7は、エンジンと液圧ポンプからなるものである。また、この液圧源7には無線受信装置とその受信信号により作動するコントロール弁とエンジンの始動、停止等の制御を行なう無線制御装置37を有する。なお、作業台6は作業員が上ることが可能であり、無線制御装置37は作業台6上に乗る作業員による操作も可能となるように構成されている。
【0036】
図4、図7に示すように、液圧源7から液圧シリンダ23に作動液を供給する配管は、液圧シリンダ23の頂部からケーシング5の内壁に沿って弧状に配設される弧状配管40と、ケーシング5の内壁に沿って縦に配設され、継ぎ足し用ケーシング5の長さと同じ長さを有し、継手41により継ぎ足される縦配管42と、継手43により液圧源7に接続される配管44とからなる。
【0037】
このような装置を用いて下記のような工程により杭4の切断、撤去を行なう。
(1)杭頭出し
(1−1)油圧ショベル等で該当箇所を掘削し、撤去する杭4の杭頭の位置を確認して埋め戻す。
(1−2)このとき、杭4の杭芯を復元できるように逃げ芯を設置しておく。この逃げ芯とは、図11(A)〜(E)、図12(A)〜(C)の工程図に示すように、ケーシングドライバー3を載置する鉄板48に設けるものであり、この鉄板48の中心に設けられるケーシングの貫通可能な円穴の中心にX,Y方向に張った糸の交点を位置させたものである。
【0038】
(2)ケーシングドライバー据付
図11(A)に示すように、鉄板48に設けたガイドにケーシングドライバー3の4隅を合わせてケーシングドライバー3を載せ、逃げ芯から復元した杭4の杭芯(鉄板48のX,Y方向に張った糸の交点)にケーシングドライバー3の中心を合わせてケーシングドライバー3を設置する。また、図1に示すようにケーシングドライバー3はクレーン2と連結フレーム49により連結して掘削反力が取れるようにする。
【0039】
(3)ケーシング5の建込み
ケーシング5をケーシングドライバー3に建込む。このケーシング5の建込みは、クレーン2の本体2aに搭載される主巻ウインチ56、補巻ウインチ57、第3ウインチ58のうち、第3ウインチ58を用いて行なう。この第3ウインチ58はブーム59の頂部に取付けたシーブブロックと可動のシーブブロック(いずれも図示せず)との間で巻上ロープを複数掛けしたもので、例えば約30t程度の重量を有するケーシングドライバー3を吊り上げることができるものである。
【0040】
(4)ケーシング5の圧入
ケーシングドライバー3によりケーシング5を杭4の目標切断深度まで回転または揺動させて圧入する。すなわち図2に示したケーシングドライバー3内に貫挿したケーシング5を、液圧シリンダ16の収縮によりチャック装置19の可動バンド17を閉じ方向に作動させて把持し、液圧シリンダ12を収縮させて昇降フレーム13を下降させながら、液圧モータ14により回転体15を回転または揺動させて、図4に示したように、掘削爪30を有する先端部のケーシング5Aを付けたケーシング5を所定の深さに建込む。ここで、ケーシング5の頂部に取付けた液圧シリンダ23の液圧源7はケーシング5と共に回転する。このケーシング5を建込んだ状態を図11(B)に示す。
【0041】
(5)切削溝4xの形成
次に図4に示した液圧シリンダ23を伸長させ、掘削爪22を有する掘削体20を閉じ方向に作動させ、液圧モータ14によりケーシング5を回転または揺動させながら、杭4に外周から切削溝4x(図13参照)を設ける。この切削溝4xは杭4に埋設された鉄筋を切断できる深さ(通常はこの鉄筋は杭4の表面から鉄筋の芯にいたる深さが10〜15cm程度の深さになるように円環状に埋設される。)に設ける。この切削溝4xを設ける際の作業状態を図11(C)に示す。
【0042】
(6)杭の切断
次に掘削体20を杭4に食い込ませたまま、ケーシングドライバー3の液圧シリンダ12を伸長させて回転体15をケーシング5、掘削体20と共に持ち上げることにより、杭4を切削溝4xより上の部分を切削溝4xより下の部分から分離、すなわち切断する。これはコンクリートの性質として引張強度が圧縮強度の1/13〜1/10であることを利用したもので、例えば場所打ち杭に使用されるコンクリートの圧縮強度は32N/mm2程度であることから、引張強度は2.5〜3.2N/mm2程度になるため、未切削部の径を700mm程度とすると、80〜100t程度の引上げ力で切断できることになる。ここで、ケーシングドライバー3の液圧シリンダ12による引抜き力は通常例えば200t以上にも達するので、例えば切断された杭4Aの部分やケーシング5等を含めた重さが例えば30tであり、切断に要する力前記80〜100tを付加されたとしても、ケーシングドライバー3の引上げ力よりはるかに小さいので、容易に切断できる。この切断後の状態を図11(D)に示す。
【0043】
(7)切断におけるケーシング5等の回転または揺動
図11(D)に示すように、ケーシング5と共に掘削体20を持ち上げて切断しようとしても切断できない場合には、液圧モータ14を作動させてケーシング5、掘削体2と共に杭4の切削溝4xより上の部分4Aを回転または揺動させることにより、杭4の切断を行なう。これもコンクリートのせん断強度が圧縮強度の1/6〜1/4である性質を利用したものである。
なお、持ち上げにより杭4の切断が行なえたか否かは、液圧シリンダ12のボトム側油圧を監視することにより確認できる。すなわち、この油圧が低下した時点が杭4の切断が完了した時点である。また、液圧シリンダ12の伸長によるケーシング5等を持ち上げると同時に、液圧モータ14の作動によりケーシング5を回転または揺動させながら杭4の切断を行なう場合も、液圧モータの入口側油圧の監視し、その油圧の低下によって杭の切断を確認することができる。なお、この切断を行なう場合、最初からケーシング5を持ち上げながらケーシング5を回転または揺動させて切断を行なってもよい。引上げながら回転力を与えてせん断させるとその切断に寄与する効果は大きい。特に鉄筋が残っている場合などに、鉄筋をねじ切って杭4を切断することができる。
【0044】
(8)切断した杭の撤去
次に、図1に示した補巻ウインチ57により巻取り繰出しされるバケット吊りロープ46により支持されたハンマグラブバケット45(図14参照)により、切断された杭4Aを図11(E)に示すように把持し、図12(A)に示すように地上に引上げて撤去する。図14は切断した杭4Aをハンマグラブバケット45のシェル45aにより把持した状態を示す。
【0045】
(9)ケーシング継ぎ足し
次に図12(B)に示すように、前述した第3ウインチ58を用いて継ぎ足すべきケーシング5を吊り上げ、ケーシングドライバー3に貫挿されているケーシング5上に下ろし、継ぎ足す。そして液圧シリンダ16を伸長させてケーシング5のチャックを解除した状態で液圧シリンダ12の伸長により昇降フレーム13を持ち上げ、次に液圧シリンダ16を収縮させてチャック装置19の可動バンド17を閉じ方向に作動させてケーシング5を把持し、液圧シリンダ12を収縮させて昇降フレーム13を下降させながら、液圧モータ14により回転体15を回転または揺動させて、図4に示したように、掘削爪30を有する先端部のケーシング5Aで杭4の周囲を掘削しながらケーシング5を所定の深さに建込む。ケーシング5を建込んだ状態を図12(C)に示す。なお、ケーシング5の継ぎ足しの際には、液圧源7や無線制御装置37を搭載した作業台6はクレーン2によりケーシング5の頂部から外し、代わりにケーシング5をクレーン2により継ぎ足し用ケーシング5を吊り込んでケーシング5と縦配管42の継ぎ足しを行なう。その後、作業台6をケーシング5上に再度搭載する。
【0046】
(10)繰り返し
上記(3)ないし(8)の工程を既存杭の全部が撤去されるまで繰り返す。
【0047】
このように、ケーシング5の内壁に液圧シリンダ23を縦に設けて掘削体20を閉じながらケーシング5と共に掘削体20を回転または揺動させて切削溝4xを入れて鉄筋を切断し、その後、ケーシング5を掘削体20と共に持ち上げ、さらには必要に応じて回転または揺動させて杭4を切断すれば、杭4の上部空間をオープン構造として切断することができるので、杭4を切断する長さの制限を受けない。従って切断した杭4Aを吊り上げるクレーン2等の荷重限界重さに相当する長さまで切断することができ、能率良く杭の除去作業を行なうことができる。
【0048】
また、切削溝4xを入れた杭4に多少切断できない鉄筋が残っている状態であっても、ケーシングドライバー3でケーシング5、掘削体20と共に切削溝4xを入れた杭4Aを持ち上げるため、掘削体20で囲まれた杭4の外周近傍に切削溝4xを設ければよく、杭4全体を切断しなくてもよい。このため、掘削体20で囲まれた杭4全体を切削して切断する場合に比較して切断に要する時間を大幅に短縮することができる。この切断時間の短縮と、前述のように杭4の切断長さの制限の緩和とにより、従来より杭4の切断、撤去の能率を大幅に向上させることができ、大幅な工期短縮が可能となる。
【0049】
また、掘削体20を開閉する液圧シリンダ23をケーシング5の内壁に縦に設けたものを用いることにより、従来のようにバケットに開閉シェルを取付けたもの、あるいは液圧シリンダをケーシングの内方に向けてその内端にカッタを取付けたものに比較し、掘削体20を開閉する駆動部の設置に要する幅が狭くてすみ、比較的大きな径の杭4の切断が可能となる。
【0050】
なお、ケーシング5や掘削体20のサイズは、切断対象となる杭4の直径に応じて変更すればよいが、杭4の直径が大きすぎて杭4を囲んだ状態で掘削できない場合には、図15(A),(B)に示すように、ケーシング5により杭4に縦に切削溝4yを入れて一部4Bを撤去し、その後、図15(C)に示すように、点線で示す前回のケーシング5の位置を実線で示す位置に変え、残りの部分4Cを撤去するようにしてもよい。この場合にも、杭4B,4Cの部分における切削溝4xから上の部分の持ち上げおよび回転または揺動による捩じ切りにより鉄筋を切断する方法を採用することができる。
【0051】
また本発明の切断方法は、図16に示すように、地階の床部66と同時に壁部(または柱部)67等の地下埋設体を掘削して撤去する場合にも用いることができる。図16において、5は地階の床部66と共に壁部(または柱部)67を掘削しているケーシングであり、前記掘削体20等の図示を省略して示している。本発明において、床部66や壁部(または柱部)67をケーシング5により掘削した後、引き上げて回転または揺動させることにより、前記掘削体20により鉄筋を捩じ切り、切断することができる。
【0052】
図17は前記床部66や壁部(または柱部)67等の地下埋設体を掘削する場合に好適なケーシングの底面図、図18および図19はそのケーシングの下端部を内側から見た部分図である。この実施の形態においては、前記リング34に土砂の複数の導入口50を設け、この導入口50は図19に示すようにボルト51によって着脱可能に取付けられる蓋52によって閉塞できるように構成したものである。53はポケット部35に溜まる掘削屑55が導入口50から落下することを防止するストッパ、54は掘削屑をポケット部35に掬い上げるために導入口50から斜め下方に突出させて設けた突出片である。
【0053】
このようなケーシングの底部の構造は、約1m程度の厚みのあるコンクリート建造物の底盤を掘削する場合に好適なものである。この底盤においては、ケーシング5による掘削によって生じるコンクリート掘削屑が硬いため、ケーシング5と掘削された穴の内壁との間に掘削屑を圧密することが困難となり、掘削屑が掘進の障害となる。このような事態の発生を防止し、円滑な掘削を可能にするため、図18に示すように、ケーシング5を回転させて掘削爪30により底盤を掘削する際には、掘削屑55が導入口50から突出片54を経て前記ポケット部35に上がり、ストッパ53で止めて溜めるようにしたものである。一般的な地盤の掘削においては、図19に示すように、ボルト51により蓋52を取付けて塞ぐことにより、掘削土砂をケーシング5の外壁側に圧密させて蓄積する。このように、蓋52を前記導入部50に着脱することにより、ケーシング5をコンクリートの掘削と一般の地盤の掘削に兼用することができる。
【0054】
本発明の切断方法を実施する場合、液圧シリンダ23の液圧源としては、図20に示すものを用いることができる。図20の実施の形態においては、ケーシングドライバー3のガイドポスト11等の静止部に、液圧シリンダ60により昇降される昇降フレーム61を設置し、その昇降フレーム61上に軸受62を介して旋回可能に旋回体63を設置し、この旋回体63に前記液圧シリンダ23を作動させる液圧源7や無線制御装置37を搭載する作業台6を設置すると共に、旋回体63に前記ケーシング5を把持するチャック装置64を設けたものである。
【0055】
この実施の形態においては、ケーシング5を回転させて杭4の周囲の地切りあるいは杭4の切断を行なう際には、チャック装置64によりケーシング5を把持して作業台6をケーシング5と共に回転させる。
【0056】
新たなケーシング5を継ぎ足した後、チャック装置64を開いてケーシング5のチャックを解き、液圧シリンダ60を伸長させると共に、ケーシングドライバー3のチャック装置19によるケーシング5のチャックを解き、液圧シリンダ12を伸長させ、再度チャック装置19,64によりケーシング5をチャックして地切り掘削および杭4の切削を行なう。
【0057】
この実施の形態によれば、ケーシング5の継ぎ足しの際に、昇降フレーム61を昇降させることにより、液圧源7を搭載した作業台6をケーシング5上から撤去する必要がなく、ケーシング5の継ぎ足し作業が能率的に行なえ、杭4の切断を能率良く行なえる。なお、液圧シリンダ60や昇降フレーム61はケーシングドライバー3の周囲の地盤に支持させてもよい。
【0058】
次に前述のように切断された地下埋設体を地中から引上げて撤去する場合に好適な本発明による引上げ方法について説明する。この方法はハンマグラブと2つのクラウンを用いる方法である。図21はこの引上げ方法を実施するため、前記地下埋設体の引上げに用いるハンマグラブバケット45とクラウン装置とクレーン2の本体に搭載された前記巻上ウインチ56,57(図1参照)との関連構造を説明する斜視図である。57はこのバケット45を支持するバケット吊りロープ70を巻取り繰出しする補巻ウインチであり、これを以下第1の巻上ウインチと称する。70はこの第1の巻上ウインチ57により巻取り繰出しされるバケット吊りロープであり、このロープ70は前記ブーム59の頂部のシーブ71から垂下される。72は前記主巻ウインチ56により巻取り繰出しされる巻上ロープであり、この巻上ロープ72はブーム59の頂部に取付けられたシーブブロック73の複数のシーブ74と、ブーム59の頂部からこの巻上ロープ72により垂下されたシーブブロック75の複数のシーブ76との間で掛け回わされる。77は垂下されたシーブブロック75の枠に取付けたフックである。以下主巻ウインチ56を第2の巻上ウインチと称する。
【0059】
78は前記バケット45の頂部の吊支用円筒79を着脱可能に係止するためにハンマグラブに従来より備えられたクラウンであり、以下これを第1のクラウンと称す。80は第2のクラウンであり、この第2のクラウン80は前記フック77によりワイヤロープまたはチェーン等の可撓性支持部材81により支持される。前記第1のクラウン78は前記第2のクラウン80により可撓性支持部材82(これは前記可撓性支持部材81を延長したものであってもよい。)を介して支持される。
【0060】
図22は前記バケット45の内部構造の一例を示す断面図である。吊支用円筒79はバケット45の上部に固定したブラケット83に所定の上下幅にわたり摺動自在に取付けられる。この吊支用円筒79は図23の断面図に示すように、押圧スプリング84により下方へ付勢される。85は掛金86を掛ける吊支用円筒79のラッチであり、このラッチ85は前記ブラケット83にピン87を中心として回動自在に取付けられている。図22において、88はバケット45内上部に軸89を介して回転可能に取付けた上方シ−ブ、90はバケット45内に昇降可能に取付けた昇降フレ−ム、91は昇降フレ−ム90に軸92を介して回転可能に取付けた下方シ−ブ、93は上方シーブ88と下方シーブ91とに掛け回されたワイヤロープである。94は上方シーブ88の軸89を支持する支持部材と昇降フレ−ム90との間に設けられ、昇降フレーム90を下方に押圧する押圧スプリングである。
【0061】
95はバケット吊りロープ70にスイベルジョイント96を介して接続したチェ−ンであり、その下部に前記掛金86が取付けられると共に、このチェーン95と前記ワイヤロープ93とがこの掛金86を介して 接続される。
【0062】
45aはバケット45の下端左右部にピン97を中心として開閉可能に取付けたシェルであり、これらのシェル45aは平面視形状が弧状をなす。これらのシェル45aは前記昇降フレーム90とリンク98を介して連結され、昇降フレーム90が上昇、下降するとシェル45aが閉方向、開方向に動作する。
【0063】
図23に示す第1のクラウン78は公知の構造のもので、クラウンヘッド99に軸100を中心に回動可能に複数の係止爪101を取付け、クラウンヘッド99の外側に筒形の錘102を装着したものである。この第1のクラウン78において、錘102がクラウンヘッド99に対して下がった位置にあるときは、吊支用円筒79の上部の突出した係止部79aを係止しない傾斜姿勢となる。一方、錘102がクラウンヘッド99に対して上がった位置になると、係止爪101は吊支用円筒79の係止部79aを係止可能な水平姿勢となる。
【0064】
図24は前記第2のクラウン80を示す側面図、図25はその平面図、図26は図25のA−A断面図である。104は円筒形をなすクラウンヘッドであり、その上部の左右に設けたブラケット105に前記ワイヤロープまたはチェーンからなる可撓性支持部材81がボルト106とナット107により接続される。
【0065】
109は前記掛金86を係止する係止爪である。この係止爪109はクラウンヘッド104の外面に設けた平行板状のブラケット110に取付けた軸111を中心として回動可能に、クラウンヘッド104に設けた窓112に挿入して取付けられる。この係止爪109は複数個(本例では3個)設けられ、図26に示すように、軸111がクラウンヘッド104の外側に偏位して設けられていることにより、通常は係止爪109は図示のように窓112の底部に支持され、掛金86を係止可能な水平の係止姿勢をとる。113はこれらの係止爪109をそれぞれ保護するためにブラケット110に設けたカバーである。
【0066】
114はクラウンヘッド104の外周にクラウンヘッド104に対して上下動可能に装着された筒状の錘であり、この実施の形態においては、錘114に設けた複数本(本例では3本)のロッド115を、クラウンヘッド104の外側に設けたガイド筒116にそれぞれ摺動可能に嵌合することにより、錘114はクラウンヘッド104に対して回り止めして上下動可能に変位できるように構成している。ロッド115の頂部にはストッパ115aが取付けられ、このストッパ115aがガイド筒116の上面に当接することにより、錘114のクラウンヘッド104からの抜け出しが防止される。この実施の形態においては、錘114は自重によりクラウンヘッド104に対して下方に付勢される。この下方への付勢手段としては、スプリングを付加的に用いてもよい。
【0067】
117は前記係止爪109を操作する操作体であり、この操作体117はそれぞれ前記係止爪109の下方部位において、錘114にボルト118により固定して設けられ、錘114がクラウンヘッド104に対して相対的に上動すると、操作体117が係止爪117を押し上げて掛金86を係止しない解除姿勢に変位させるものである。また、操作体117がクラウンヘッド104に対して相対的に下がると、係止爪109が自重により下がり、水平の係止姿勢、すなわち掛金86を上に載せて係止可能な姿勢をとるものである。しかし、この係止姿勢であっても、掛金86を引上げて下方から係止爪109に当てると、係止爪109を上方に押し上げることができ、掛金86をクラウンヘッド104に通過させることができる。
【0068】
この第2のクラウン80には、さらにクラウンヘッド104と錘114との相対位置を保持する手段を有する。この位置保持手段は、クラウンヘッド104の外面にボルト122により取付けたガイド体119と、このガイド体119に設けたガイド溝120に移動可能に押し当てる移動体121とを含む。
【0069】
前記移動体121の取付け装置は、錘114の外面に半径方向に突出させて設けた軸123と、この軸123に回動可能に嵌合しかつ抜け止めして取付けた筒体124と、この筒体124にその半径方向に突出させて一体に設けたアーム部125と、このアーム部125の先端に一体に設けた筒体126とを含む。前記移動体121は前記筒体126内に一部が収容され、この移動体121と筒体126の外端に設けたスプリング受け127との間に押圧スプリング128を介在させ、移動体121の先端をガイド体119のガイド溝120内に押圧して当接させている。129はこれらの位置保持手段を構成する部材を覆うカバーである。
【0070】
図27(A)に示すように、ガイド溝120はほぼハート形をなし、図27(B)に示すように、左側の溝部120aは上方から下方にかけて、溝120の底面の高さが次第に高くなる(錘114の半径方向に突出する)ような傾斜面に形成される。また、図27(C)に示すように、ガイド溝120の右側の溝部120bは下方から上方にかけて、溝120の底面が次第に高くなるように形成される。また、これらの傾斜面に形成された左側溝部120aと右側溝部120bの境界となるガイド溝120の下の部分には移動体121の戻り防止用の段部120cが形成される。また、ガイド溝120の上部の中央部120dは下方に下げた形状としており、図27(D)に示すように、右側の溝部120bの最も高い部分から左側の溝部分120aの最も低い部分にわたり、平面状の底面を有する左下がりの溝部120h、左上がりの溝部120i、前記底面が傾斜した左側の傾斜した溝部120aに連続する溝部120jが形成され、これらの溝部120h、120i、120jの近傍にそれぞれ移動体121の戻り防止用の段部120e、120f、120gが形成されている。
【0071】
図28ないし図31は図24ないし図27に示した第2のクラウン80の係止爪109の操作および動作を説明する図である。いま、図28(A)に示すように、クラウンヘッド104に対して錘114が下がった相対位置にあるとき、ロッドの上部のストッパ115aがガイド筒116の上面に当接した状態で抜け止めされる。このとき、図28(B)に示すように、移動体121は溝部120bの下部の底面にスプリング128の力で圧接する。この状態では、可撓性支持部材81により第2のクラウン80が支持されると共に、第2のクラウン80の錘114がその下方にある第1のクラウン78に当接していない状態である。
【0072】
バケット吊りロープ70によりバケット45を支持した状態において、第2の巻上ウインチ56を作動させて巻上ロープ72を繰出すと、シーブブロック75が下がり、まず第1のクラウン78がバケット45の頂部のブラケット83および吊支用円筒79上に載り、さらに図34(B)に示すように、第1のクラウン78上に第2のクラウン80が載る。これにより、クラウンヘッド104に対して錘114が相対的に上がり、操作体117が係止爪109を押し上げ、掛金86に対して係止爪109を非係止姿勢とする、このとき、操作体117が係止爪109を押し上げる過程においては、アーム部125が多少回動しながら移動体121はガイド体119の右側の溝部120bに沿って相対的に上がる。そして戻り防止用の段部120eを超えてガイド溝120の右上部の浅い溝部120hに達する。この状態を図29(A)、(B)に示す。
【0073】
図29(A)、(B)の状態から第2の巻上ウインチ56により巻上ロープ72を巻取ると、シーブブロック75が上がり、第2のクラウン80も上がるので、第2のクラウン80の錘114が第1のクラウン78から離れ、錘114の自重により錘114がクラウンヘッド104に対して落下しようとするが、移動体121がガイド溝120に嵌まっているので落下が阻止され、錘114の自重により移動体121は左下がりに形成されている溝部120hに沿って移動し、さらに段部120fを超えて溝部120iに至り、この間、錘114はクラウンヘッド104に対して若干下がる。この状態を図30(A)、(B)に示す。この状態では錘114はアーム部125を介して支持され、係止爪109は掛金86に対して非係止姿勢に保持される。
【0074】
次に再び第2の巻上ウインチ56を巻上ロープ24の繰出し方向に作動させて図34(B)に示す状態とすると、再度錘114がクラウンヘッド104に対して相対的に上がる。この錘114の相対的上動に伴い、移動体121はガイド溝120の左上がりの溝部120iに沿って上がり、段部120gを超えて溝部120jに至る。この状態を図31(A)、(B)に示す。
【0075】
続いて第2の巻上ウインチ56を巻上ロープ24の巻取り方向に作動させると、再度第2のクラウン80が上がり、錘114が第1のクラウン78から離れ、錘114がクラウンヘッド104に対して下降するので、移動体121はガイド溝120の左側の溝部120aに沿って下降し、段部120cを超え、溝部120bの下部に至り、ストッパ115aがガイド溝116の上面に当接した状態となり、さらなる下降が防止される。この状態は図28(A)、(B)の状態、すなわち係止爪109は掛金86が係止しうる姿勢となる。
【0076】
このように、バケット45をバケット吊りロープ70により支持した状態において、第2の巻上ウインチ56の巻上ロープ24を巻取り繰出し、第1のクラウン78上に第2のクラウン80を載せたり引上げて離したりするごとに、図28(A)、(B)に示すように係止爪109を係止姿勢にしたり、図30(A)、(B)に示すように係止爪109を非係止姿勢に変更することができる。
【0077】
次に図32ないし図36により、このクラウン装置を備えたハンマグラブを用いて杭の除去作業を行なう場合の地下埋設体の引上げ方法について説明する。図32(A)は前述のように切断した杭4Aを除去するに当り、前記ケーシングドライバー3によって杭4に同心にケーシング5を建込み、前述のように杭4の頂部から所定の長さの箇所に切削溝4xを設け、ケーシング5、掘削体20と共に切削溝4x以上の部分を引上げ、必要に応じて回転または揺動させて切断する。
【0078】
切断杭4Aの把持は、次のように行なわれる。切断杭4Aをバケット45により把持する場合、図22に示すように、ラッチ85の下面に掛金86を掛けてバケット45をバケット吊りロープ70により吊った状態、すなわちシェル45aを開いた状態で第1の巻上ウインチ57の作動によりバケット吊りロープ70を繰出し、シェル45aを切断杭4Aの頂部に被せる。このようにバケット45を下降させてシェル45aにより切断杭4Aを把持したとき、バケット吊りロープ70は下降の慣性力と第2の巻上ウインチ57のブレ−キをかけるタイミングのずれから少し弛む。これによって図23に示す押圧スプリング84のスプリング力により吊支用円筒79が下降し、ラッチ85がピン87を中心に図23の矢印aで示すように回動し、ラッチ85の内端は下向きに回転して掛金86から外れる。
【0079】
このように掛金86がラッチ85から外れた状態でバケット吊りロープ70を巻上げると、バケット吊りロープ70に接続したスイベルジョイント96と吊上用チェ−ン95も一緒に巻上げられ、掛金86は吊支用円筒79より上方に抜け出る。ここで、ワイヤロ−プ93は昇降フレ−ム90に取付けられた下方シ−ブ91とバケット45内上部に取付けられた上方シ−ブ88との間に掛け回されているため、昇降フレ−ム90も上方に引上げられる。これにより昇降フレ−ム90にリンク98を介して連結されたシェル45aが閉じ方向に作動し、切断杭4Aの上部をシェル45aで把持する。このとき、シェル45aに設けられている爪または先端鋭利な複数個の突起(図示せず)が切断杭4Aに食い込み、切断杭4Aの落下が防止される。このようにして切断杭4Aをシェル45aにより把持した状態を図32(A)に示す。また、クラウン78,80の状態を図34(A)に示す。
【0080】
続いて第2の巻上ウインチ56の作動より、巻上ロープ72を繰出し、図32(A)に示すように、シーブブロック76を下降させ、図32(B)に示すように、掛金86より下方に第2のクラウン80を位置させる。ここで、仮に、第2のクラウン80の錘114がクラウンヘッド104に対して下降した位置にあれば、係止爪109が図28(A)に示すように水平の係止姿勢にあるが、第2のクラウン80を掛金86よりも下に下降させるとき、掛金86により係止爪109が上方に押し上げられて回動するので、掛金86を通過させることができる。この場合は、掛金86が第2のクラウン80より上方になるまで第2のクラウン80を下降させた後、今度は巻上ロープ72を巻上げ、図33(A),図35(A)に示すように、第2のクラウン80の係止爪109上に掛金86を係止し、さらに第2の巻上ウインチ56により巻上ロープ72を巻上げれば、バケット45は、バケット45内のワイヤロープ93に張力を掛けた状態、すなわちシェル45aを閉じ方向に付勢した状態で、ワイヤロープ93、掛金86、第2のクラウン80、可撓性支持部材81、シーブブロック73,75に巻かれた巻上ロープ72を介して巻上げられる。このとき、バケット吊りロープ70は弛めた状態とする。
【0081】
もし、図32(A)に示すように第2のクラウン80を下降させる際に、係止爪109が図30(A)、図34(A)に示すような非係止姿勢にあれば、勿論掛金86は第2のクラウン80内を通すことができるが、この場合は、係止爪109を係止姿勢に変更するため、第1のクラウン78をバケット45の頂部のブラケット83および吊支用円筒79上に載せ、さらに第2のクラウン80を下降させて、図32(B)、図34(B)に示すように、第1のクラウン78上に載せる。この第2のクラウン80を第1のクラウン78に載せる操作で移動体121は図30(B)に示す溝部120iから段部120gを超えて図31(B)に示すように溝部120jに移る。その後、巻上ロープ72を巻上げることにより、前に説明したように、クラウンヘッド104に対して錘114と共に操作体117を下降させ、これに伴い移動体121は溝部120aに沿って下降し、係止爪109を図28(A)に示す水平の係止姿勢にする。この状態でさらに第2の巻上ウインチ56により巻上ロープ72を巻上げることにより、図33(A)、図35(A)に示すように、係止爪109上に掛金86を係止した状態となり、切断杭4Aを把持したバケット45を、ワイヤロープ93、掛金86、可撓性支持部材81、シーブブロック73,75に掛け回した巻上ロープ72を介して吊上げることができる。
【0082】
続いて地上に切断杭4Aを降ろす際には、第2の巻上ウインチ56により巻上ロープ72を繰出して図33(B)に示すように切断杭4Aを地面GLに着地させる。この後、第1の巻上ウインチ57を巻上げ方向に操作してバケット45および切断杭4Aを支持しておき、図33(B)、図35(B)に示すように、さらに巻上ロープ72を繰出し、ブラケット83および吊支用円筒79上に第1のクラウン78を載せ、その上に第2のクラウン80を載せる。この動作により、第2のクラウン80の錘114がクラウンヘッド104に対して相対的に上がり、移動体121は図29(B)の溝部120hの位置になり、係止爪109は図29(A)に示す非係止姿勢となる。その後、第2のクラウン80を引上げると、係止爪109は非係止姿勢のままで、移動体121は図30(B)に示す溝部120i(非係止位置)に保持される。
【0083】
一方、第1のクラウン78においては、図35(B)に示すように(図34(B)、図35(A)でも第1のクラウン78の状態は同様であるが、図34(A)、(B)、図35(A)では係止爪101の図示を省略している。)、錘102はブラケット83上に載るため、クラウンヘッド99に対して錘102が相対的に上がり、係止爪101は水平の係止姿勢であって、吊支用円筒79の係止部79aに係止可能であり、第1の巻上ウインチ56によって巻上ロープ24を巻上げることにより、図36に示すように、係止爪101が吊支用円筒79の係止部79aに係止され、バケット45および切断杭4Aは、第1のクラウン78、可撓性支持部材82、第2のクラウン80、可撓性支持部材81、シーブブロック73、75に巻かれた巻上ロープ72を介して支持することができる。このようにして第1のクラウン78によりバケット45を支持した状態で第1の巻上ウインチ57によりバケット吊りロープ70を繰出せば、シェル45aが開き、切断杭4Aをシェル45aから離し、地面GLに倒すことができる。
【0084】
次に、バケット45を地上に下ろし、第1の巻上ウインチ57によりバケット吊りロープ70を繰出すと、バケット45内の押圧スプリング94(図22参照)によりワイヤロープ93がバケット45内に引き込まれ、掛金86がバケット45内に入る。次に掛金86がバケット45内に入った状態からバケット吊りロープ70を第1の巻上ウインチ57により巻上げると、掛金86が図22、図23に示すラッチ85に掛かり、バケット45をバケット吊りロープ70により吊上げることができる。このバケット吊りロープ70によりバケット45を支持した状態においては、押圧スプリング84が圧縮され、吊支用円筒79が上がり、係止部79aの位置が上がる。この係止部79aが上がった状態で、巻上ロープ72を巻上げて第1のクラウン78を上げると、第1のクラウン78のクラウンヘッド99は錘102に対して相対的に上がるため、係止爪101は係止部79aに邪魔されずに回って傾斜した非係止姿勢となり、係止爪101が係止部79aから外れる。このため、シェル45aが開き、かつバケット45がバケット吊りロープ70のみにより支持された状態、すなわちケーシング5内にバケット45を挿入可能な状態に戻る。
【0085】
このハンマグラブにおいて、第1の巻上ウインチ57と第2の巻上ウインチ56の巻上げ可能な重量を同じく10tと仮定し、シーブブロック73,75のシーブ74,76の数を図示のようにそれぞれ3個とすると、巻上ロープ72によりバケット45と切断杭4Aを吊上げる場合は、60tが吊上げ可能となる(ただし、ワイヤロープ93等の吊上げに係る部材がこの60tの荷重に耐えられると仮定する)。従って従来第1の上ウインチ57のみで例えば10t程度しか吊上げられなかったものでも、第1の巻上ウインチ56を用いることにより、10tを超える埋設物の吊上げが可能となる。このため、従来より切断杭4Aを重量の大きなサイズごとに切断し、吊上げることができるから、切断回数と除去作業の回数を少なくすることができ、前述したように、切断長の制限が緩和された切断方法と併用することにより、杭の除去作業の能率を上げることができる。
【0086】
また、従来より、重量の大きい杭の引上げに2台の巻上ウインチを同調させてバケットの巻上げに用いることも行なわれていたが、この2台の巻上ウインチを同時に作動させる場合に比較し、本発明のように1台の巻上ウインチ56を用いてバケット45を杭4Aと共に引上げる場合、操作が容易となる上、巻上げ時にはワイヤロープ93には常に張力がかかるので、バケット45で把持している杭4A等の地下埋設体が落下するおそれがなく、安全性が向上する。
【0087】
また、バケット45を支持しているバケット吊りロープ70では引上げることができないような転石や埋設木等であっても引上げることが可能となる。
【0088】
本発明のダブルクラウン方式の引上げ方法を実施する場合、前記掛金86に対する係止、非係止の選択は、液圧シリンダや電磁石により掛止めピンや係止爪等の係止体の位置変更や姿勢変更により行なってもよい。ただし、本実施の形態においては、錘114が前記クラウンヘッド104に対して上下に変位することにより、前記掛金86に対して係止姿勢と非係止姿勢に回動可能な係止爪により前記選択手段を構成したので、第2のクラウン80を第1のクラウン78に載せたり、離したりする操作により、係止爪109を操作することができ、係止と係止解除のための液圧シリンダや電磁石等のアクチュエータやそのための配管、配線等が不要となり、構成が簡略化できる。
【0089】
また本実施の形態においては、錘114の位置保持手段が、ガイド体119と、その戻り防止用の段部付きのガイド溝120に沿って移動する移動体121からなるので、液圧シリンダや電磁石等のアクチュエータを付加することなく、錘114のクラウンヘッド104に対する上下動により、係止爪101を係止姿勢と係止解除姿勢に交互に変更することができる。
【0090】
本発明を実施する場合、第2のクラウン80を吊る吊上げ力の大きな吊上げ手段としては、ハンマグラブを構成するクレーン以外の別のクレーンを用いたり、ハンマグラブを構成するクレーンに搭載した巻上ウインチ57より大きな巻上げ力の巻上ウインチを搭載してその巻上ウインチを用いることもできる。しかしながら本実施の形態においては、前記吊上げ力の大きな巻上げ手段が、前記クレーン2に従来より搭載されている主巻ウインチ56と、この主巻ウインチ56により巻上ロープ72を前記ブーム59の頂部とその下部とに設けられたそれぞれ複数のシーブ74,76からなるシーブブロック73,75と、下方のシーブブロック75からなるものを用いたので、通常、ケーシングドライバー3と共に協働するクレーン2に備えられた主巻ウインチ56を大荷重の吊上げに用いることができ、別のクレーンが不要となるという利点がある。
【0091】
なお、主巻ウインチ56、補巻ウインチ57、第3のウインチ58の使用は上記実施の形態に限定されず、主巻ウインチ56または第3の巻上ウインチ58をバケット吊りロープ70の支持に用い、補巻ウインチ57または第3の巻上ウインチ58を巻上ロープ72の巻上げに用いてもよい。
【0092】
また、ケーシング5の下端の掘削爪30の構造、配置を両回転方向に掘削が可能なものとし、揺動によりケーシング5を建込むようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明による杭の切断方法の一実施の形態を説明するケーシングドライバーおよびクレーンの側面図である。
【図2】本実施の形態のケーシングドライバーの側面図である。
【図3】図2のケーシングドライバーの平面図である。
【図4】本実施の形態の切断方法に用いる装置の要部を示す縦断面図である。
【図5】図4のA−A拡大断面図である。
【図6】図4の要部拡大断面図である。
【図7】図4のB−B拡大断面図である。
【図8】図4のケーシングの底面図である。
【図9】本実施の形態の作業台の平面図である。
【図10】図9の作業台の縦断面図である。
【図11】(A)〜(E)は本実施の形態の切断方法を説明する工程の一部を示す縦断面図である。
【図12】(A)〜(C)は本実施の形態の切断方法を説明する工程の残部を示す図である。
【図13】本実施の形態の切断方法を説明する縦断面図である。
【図14】本実施の形態において、切断後の杭の引上げ状況を示す縦断面図である。
【図15】(A)、(B)、(C)はそれぞれ本発明の切断方法の他の例を示す横断面図、縦断面図、横断面図である。
【図16】本発明の切断方法の他の適用例を示す縦断面図である。
【図17】本発明の切断方法を実施するケーシングの他の例を示す底面図である。
【図18】図17のケーシングを内側から見た図である。
【図19】図18において、一般の地盤を掘削する際に土砂の導入口を蓋により塞いだ状態を示す図である。
【図20】本発明による切断方法を実施する液圧源搭載作業台の他の例を示す縦断面図である。
【図21】本発明の引上げ方法を実施する装置の構成例を示す斜視図である。
【図22】本発明の引上げ方法を実施するハンマグラブバケットの一例を示す縦断面図である。
【図23】本発明の引上げ方法を実施する第1のクラウンと掛金のラッチ機構の一例を示す縦断面図である。
【図24】本発明の引上げ方法を実施する第2のクラウンの一例を示す側面図である。
【図25】図24の第2のクラウンの平面図である。
【図26】図25のA−A断面図である。
【図27】(A)は図24〜図26に示した第2のクラウンに設けるガイド体の正面図、(B)、(C)、(D)はそれぞれ(A)のB−B、C−C、D−D断面図である。
【図28】(A)はこの例の第2のクラウンの一動作過程を示す縦断面図、(B)はこの動作過程におけるガイド体のガイド溝と移動体との相対位置関係図である。
【図29】(A)は図28から変化した動作過程を示す縦断面図、(B)はこの動作過程におけるガイド体のガイド溝と移動体との相対位置関係図である。
【図30】(A)は図29から変化した動作過程を示す縦断面図、(B)はこの動作過程におけるガイド体のガイド溝と移動体との相対位置関係図である。
【図31】(A)は図30から変化した動作過程を示す縦断面図、(B)はこの動作過程におけるガイド体のガイド溝と移動体との相対位置関係図である。
【図32】(A)、(B)は杭の切断後に本例のハンマグラブを用いて切断杭の除去作業を行なう場合の一部工程図である。
【図33】(A)、(B)、(C)は図32に続く杭の除去作業における残りの工程図である。
【図34】(A)、(B)は図32、図33の杭の除去作業における第1、第2のクラウンおよび掛金の相対関係図である。
【図35】(A)、(B)は図32、図33の杭の除去作業における第1、第2のクラウンおよび掛金の相対関係図である。
【図36】図32、図33の杭の除去作業における第1、第2のクラウンおよび掛金の相対関係図である。
【符号の説明】
【0094】
1:切断装置、2:クレーン、3:ケーシングドライバー、4、4A:杭、5:ケーシング、6:作業台、7:液圧源、9:液圧シリンダ、10:ベースフレーム、11:ガイドポスト、12:液圧シリンダ、13:昇降フレーム、14:液圧モータ、15:回転体、16:液圧シリンダ、17:可動バンド、19:チャック装置、20:掘削体、21:軸、22:掘削爪、23:液圧シリンダ、24:ピン、25:リンク、27:保護カバー、30:掘削爪、31,32,33:掘削爪グループ、34:リング、35:ポケット部、37:無線制御装置、40:弧状配管、41:継手、42:縦配管、43:継手、44:配管、45:ハンマグラブ、50:導入口、51:ボルト、52:蓋、53:ストッパ、54:突出片、55:掘削屑、56:第2の巻上ウインチ、57:第1の巻上ウインチ、58:第3の巻上ウインチ、59:ブーム、60:液圧シリンダ、61:昇降フレーム、62:軸受、63:旋回体、64:チャック装置、70:バケット吊りロープ、71:シーブ、73,75:シーブブロック、74,76:シーブ、77:フック、78:第1のクラウン、79:吊支用円筒、79a:係止部、80:第2のクラウン、81,82:可撓性支持部材、83:ブラケット、84:押圧スプリング、85:ラッチ、86:掛金、88:上方シーブ、89:軸、90:昇降フレーム、91:下方シーブ、93:ワイヤロープ、94:押圧スプリング、95:チェーン、96:スイベルジョイント、98:リンク、99:クラウンヘッド、101:係止爪、102:錘、104:クラウンヘッド、105:ブラケット、106:ボルト、107:ナット、109:係止爪、110:ブラケット、112:窓、113:カバー、114:錘、115:ロッド、115a:ストッパ、116:ガイド筒、117:操作体、118:ボルト、119:ガイド体、120:ガイド溝、121:移動体、123:軸、124:筒体、125:アーム部、126:筒体、127:スプリング受け、128:押圧スプリング、129:カバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撤去すべき鉄筋コンクリート製地下埋設体の上の地盤にケーシングドライバーを設置し、
前記ケーシングドライバーによりケーシングを回転または揺動させてケーシングを地下埋設体の頂部から所定の深さに至る深さに建込み、
前記ケーシングの下部内壁に開閉可能に設けた複数枚の掘削体をケーシング内壁に縦に設けた液圧シリンダにより閉じ方向に動かすと同時に、前記ケーシングドライバーにより前記ケーシングと共に前記掘削体を回転または揺動させて地下埋設体に切削溝を入れ、
その後、前記掘削体を前記地下埋設体に食い込ませたままで前記ケーシングドライバーによって前記ケーシングと共に前記掘削体および地下埋設体の前記切削溝形成部より上の部分を持ち上げることにより、地下埋設体を切断することを特徴とする地下埋設体の切断方法。
【請求項2】
撤去すべき鉄筋コンクリート製地下埋設体である杭の上の地盤にケーシングドライバーを設置し、
前記ケーシングドライバーによりケーシングを回転または揺動させて前記杭を囲むようにケーシングを杭の頂部から所定の深さに至る深さに建込み、
前記ケーシングの下部内壁に開閉可能に設けた複数枚の掘削体をケーシング内壁に縦に設けた液圧シリンダにより閉じ方向に動かすと同時に、前記ケーシングドライバーにより前記ケーシングと共に前記掘削体を回転または揺動させて杭を外周側より杭内部の鉄筋が切断可能な深さまで杭に切削溝を入れ、
その後、前記掘削体を前記杭に食い込ませたままで前記ケーシングドライバーにより前記ケーシングと共に前記掘削体および杭の前記切削溝形成部より上の部分を持ち上げることにより、杭を切断することを特徴とする地下埋設体の切断方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の地下埋設体の切断方法において、
前記地下埋設体の前記切削溝形成部より上の部分を持ち上げて切断する際に、前記ケーシングドライバーにより前記ケーシングを回転または揺動させることによって、前記掘削体と共に地下埋設体の前記切削溝形成部より上の部分を回転または揺動させて杭を切断することを特徴とする地下埋設体の切断方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の切断された地下埋設体を、クレーンに搭載した巻上ウインチで巻取り繰出しされるバケット吊りロープを介して支持されたハンマグラブバケットを用いて引上げる方法であって、
ハンマグラブバケットの頂部に設ける吊支用円筒を係止する係止爪を有する第1のクラウン以外に、第2のクラウンを設け、この第2のクラウンにより可撓性支持部材を介して前記第1のクラウンを支持し、
前記第2のクラウンを、前記バケット吊りロープの引上げ力より大きな引上げ力を発生させる巻上げ装置により可撓性支持部材を介して支持し、
前記第2のクラウンの係止爪に、前記バケット吊りロープに接続される部材に設けられる掛金を掛け、前記巻上げ装置により前記第2のクラウンを介して前記ハンマグラブバケットと共にこのハンマグラブバケットにより把持した地下埋設体を引上げることを特徴とする地下埋設体の引上げ方法。
【請求項5】
請求項4に記載の地下埋設体の引上げ方法において、
前記ハンマグラブバケットとして、筒状のバケット内に、押圧スプリングにより下方に押圧されかつ昇降可能な昇降フレームを設け、この昇降フレームをバケットの下部に開閉可能に設けられるシェルに連結し、前記昇降フレームに取付けた下シーブとバケット内に設けた上シーブとの間でワイヤロープを掛け回わし、このワイヤロープを、クレーンに搭載した第1の巻上ウインチにより巻取り繰出しされるバケット吊りロープに掛金を有する可撓性支持部材を介して接続し、前記バケットの頂部の吊支用円筒に回動可能に設けたラッチに前記掛金を係止させて前記バケットを前記バケット吊りロープにより支持したシェル開状態と、前記ラッチによる前記掛金の係止を解除して前記バケット吊りロープを巻上げたシェル閉状態とが取り得るハンマグラブバケットを用いると共に、
前記バケット吊りロープの引上げ力より大きな引上げ力を発生させる前記巻上げ装置として、前記クレーンに搭載した第2の巻上ウインチと、この第2の巻上ウインチにより巻取り繰出しされる巻上ロープと、前記ブームの頂部および頂部から垂下した位置で前記巻上ロープをそれぞれ掛け回す上下のシーブブロックを有するものを用い、
前記ラッチの下面に前記掛金を掛けて前記ハンマグラブバケットを前記バケット吊りロープにより支持して浮かせた状態から、前記第1の巻上ウインチの作動により前記バケット吊りロープを繰出し、前記切断された地下埋設体の頂部に前記シェルを被せると共に、前記吊支用円筒を下方に付勢する押圧スプリングのスプリング力により前記吊支用円筒を前記ハンマグラブバケットに対して相対的に下降させて前記ラッチを前記掛金から外す工程と、
前記掛金が前記ラッチから外れた状態で前記バケット吊りロープを前記第1の巻上ウインチにより巻上げて前記掛金を前記吊支用円筒より上方に抜け出させ、バケット内の前記昇降フレーム押圧用押圧スプリングのスプリング力に抗して前記昇降フレームを上昇させることにより、前記シェルを閉じ方向に作動させて地下埋設体の上部をシェルで把持する工程と、
前記第2の巻上ウインチの作動より前記巻上ロープを繰出して前記第2のクラウンを巻下げ、前記掛金を前記第2のクラウン内に通して前記掛金より下方に前記第2のクラウンを位置させる工程と、
前記第2の巻上ウインチにより前記巻上ロープを巻上げ、前記第2のクラウンに設けた係止爪上に前記掛金を掛け、さらに前記巻上ロープを巻上げ、前記巻上ロープの力によりハンマグラブバケットのシェルを閉じる力を発生させてシェルにより地下埋設体を把持する状態を維持すると同時に、前記ハンマグラブバケットと共に地下埋設体を引上げる工程とにより、切断された地下埋設体を地上に引上げることを特徴とする地下埋設体の引上げ方法。
【請求項1】
撤去すべき鉄筋コンクリート製地下埋設体の上の地盤にケーシングドライバーを設置し、
前記ケーシングドライバーによりケーシングを回転または揺動させてケーシングを地下埋設体の頂部から所定の深さに至る深さに建込み、
前記ケーシングの下部内壁に開閉可能に設けた複数枚の掘削体をケーシング内壁に縦に設けた液圧シリンダにより閉じ方向に動かすと同時に、前記ケーシングドライバーにより前記ケーシングと共に前記掘削体を回転または揺動させて地下埋設体に切削溝を入れ、
その後、前記掘削体を前記地下埋設体に食い込ませたままで前記ケーシングドライバーによって前記ケーシングと共に前記掘削体および地下埋設体の前記切削溝形成部より上の部分を持ち上げることにより、地下埋設体を切断することを特徴とする地下埋設体の切断方法。
【請求項2】
撤去すべき鉄筋コンクリート製地下埋設体である杭の上の地盤にケーシングドライバーを設置し、
前記ケーシングドライバーによりケーシングを回転または揺動させて前記杭を囲むようにケーシングを杭の頂部から所定の深さに至る深さに建込み、
前記ケーシングの下部内壁に開閉可能に設けた複数枚の掘削体をケーシング内壁に縦に設けた液圧シリンダにより閉じ方向に動かすと同時に、前記ケーシングドライバーにより前記ケーシングと共に前記掘削体を回転または揺動させて杭を外周側より杭内部の鉄筋が切断可能な深さまで杭に切削溝を入れ、
その後、前記掘削体を前記杭に食い込ませたままで前記ケーシングドライバーにより前記ケーシングと共に前記掘削体および杭の前記切削溝形成部より上の部分を持ち上げることにより、杭を切断することを特徴とする地下埋設体の切断方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の地下埋設体の切断方法において、
前記地下埋設体の前記切削溝形成部より上の部分を持ち上げて切断する際に、前記ケーシングドライバーにより前記ケーシングを回転または揺動させることによって、前記掘削体と共に地下埋設体の前記切削溝形成部より上の部分を回転または揺動させて杭を切断することを特徴とする地下埋設体の切断方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の切断された地下埋設体を、クレーンに搭載した巻上ウインチで巻取り繰出しされるバケット吊りロープを介して支持されたハンマグラブバケットを用いて引上げる方法であって、
ハンマグラブバケットの頂部に設ける吊支用円筒を係止する係止爪を有する第1のクラウン以外に、第2のクラウンを設け、この第2のクラウンにより可撓性支持部材を介して前記第1のクラウンを支持し、
前記第2のクラウンを、前記バケット吊りロープの引上げ力より大きな引上げ力を発生させる巻上げ装置により可撓性支持部材を介して支持し、
前記第2のクラウンの係止爪に、前記バケット吊りロープに接続される部材に設けられる掛金を掛け、前記巻上げ装置により前記第2のクラウンを介して前記ハンマグラブバケットと共にこのハンマグラブバケットにより把持した地下埋設体を引上げることを特徴とする地下埋設体の引上げ方法。
【請求項5】
請求項4に記載の地下埋設体の引上げ方法において、
前記ハンマグラブバケットとして、筒状のバケット内に、押圧スプリングにより下方に押圧されかつ昇降可能な昇降フレームを設け、この昇降フレームをバケットの下部に開閉可能に設けられるシェルに連結し、前記昇降フレームに取付けた下シーブとバケット内に設けた上シーブとの間でワイヤロープを掛け回わし、このワイヤロープを、クレーンに搭載した第1の巻上ウインチにより巻取り繰出しされるバケット吊りロープに掛金を有する可撓性支持部材を介して接続し、前記バケットの頂部の吊支用円筒に回動可能に設けたラッチに前記掛金を係止させて前記バケットを前記バケット吊りロープにより支持したシェル開状態と、前記ラッチによる前記掛金の係止を解除して前記バケット吊りロープを巻上げたシェル閉状態とが取り得るハンマグラブバケットを用いると共に、
前記バケット吊りロープの引上げ力より大きな引上げ力を発生させる前記巻上げ装置として、前記クレーンに搭載した第2の巻上ウインチと、この第2の巻上ウインチにより巻取り繰出しされる巻上ロープと、前記ブームの頂部および頂部から垂下した位置で前記巻上ロープをそれぞれ掛け回す上下のシーブブロックを有するものを用い、
前記ラッチの下面に前記掛金を掛けて前記ハンマグラブバケットを前記バケット吊りロープにより支持して浮かせた状態から、前記第1の巻上ウインチの作動により前記バケット吊りロープを繰出し、前記切断された地下埋設体の頂部に前記シェルを被せると共に、前記吊支用円筒を下方に付勢する押圧スプリングのスプリング力により前記吊支用円筒を前記ハンマグラブバケットに対して相対的に下降させて前記ラッチを前記掛金から外す工程と、
前記掛金が前記ラッチから外れた状態で前記バケット吊りロープを前記第1の巻上ウインチにより巻上げて前記掛金を前記吊支用円筒より上方に抜け出させ、バケット内の前記昇降フレーム押圧用押圧スプリングのスプリング力に抗して前記昇降フレームを上昇させることにより、前記シェルを閉じ方向に作動させて地下埋設体の上部をシェルで把持する工程と、
前記第2の巻上ウインチの作動より前記巻上ロープを繰出して前記第2のクラウンを巻下げ、前記掛金を前記第2のクラウン内に通して前記掛金より下方に前記第2のクラウンを位置させる工程と、
前記第2の巻上ウインチにより前記巻上ロープを巻上げ、前記第2のクラウンに設けた係止爪上に前記掛金を掛け、さらに前記巻上ロープを巻上げ、前記巻上ロープの力によりハンマグラブバケットのシェルを閉じる力を発生させてシェルにより地下埋設体を把持する状態を維持すると同時に、前記ハンマグラブバケットと共に地下埋設体を引上げる工程とにより、切断された地下埋設体を地上に引上げることを特徴とする地下埋設体の引上げ方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2008−267034(P2008−267034A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113016(P2007−113016)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【出願人】(503032946)日立住友重機械建機クレーン株式会社 (104)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【出願人】(503032946)日立住友重機械建機クレーン株式会社 (104)
【Fターム(参考)】
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