説明

地下構造体の施工方法

【課題】 地下構造体の構築に要する施工時間、施工コストを低減することが可能な地下構造体の施工方法を提供する。
【解決手段】 地下構造体の施工に際して、地盤10の掘削前に、地中にソイルセメント21を主体としH形鋼22で補強される土留壁20を四方に施工し、この土留壁20の上端部に補強枠30を施工し、地盤10の掘削後に、掘削底面上に耐圧底盤40を施工し、その後に地盤10の掘削によって露呈した土留壁20の内側面に内装50を施工する。補強枠30と耐圧底盤40は鉄筋コンクリート製であり、土留壁40にはH形鋼22が所定間隔にて立設されていて、補強枠30と耐圧底盤40の各鉄筋31,42はH形鋼22に溶接されている。土留壁20の内側面は地盤の掘削時またはその後に所定厚で削り取られていて、この削り取られた部位に内装50が施工されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造体の施工方法、例えば、小規模な地下室や、地下式二段駐車場(上下二段に駐車スペースを有していて、下方の駐車スペースが地中にあり、上方の駐車スペースが地上にある駐車場)における地下駐車場、或いは貯水槽等の構築に際して実施される地下構造体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の地下構造体の施工方法は、例えば、下記特許文献1に示されている。この特許文献1に記載されている地下構造体の施工方法では、地盤の掘削に先行して、又は掘削と並行して、山止め(山止め支柱の間に木板その他のパネルを建て込んだもの)を四方に施工し、地盤の掘削後、底版コンクリートの施工に先行して又はその施工後に、前記山止めの内壁面に発泡プラスチックを必要な層厚に一様に吹き付け施工し、その後、前記山止めの内壁面に沿う配置で壁鉄筋と壁用型枠を設け、前記壁用型枠との間に壁コンクリートを直接打設して、地下構造体を構築するようになっている。
【特許文献1】特開平10−159111号公報
【0003】
上記した特許文献1に記載されている地下構造体の施工方法においては、山止めの施工に際して、山止め支柱の間に木板その他のパネルを建て込む必要があり、また、地盤掘削後に周壁を構築する際、前記山止めの内壁面(四方の壁面全体)に発泡プラスチックを必要な層厚に一様に吹き付け施工し、その後、前記山止めの内壁面(四方の壁面全体)に沿う配置で壁鉄筋と壁用型枠を設け、前記壁用型枠との間に壁コンクリートを直接打設する必要があって、地下構造体における周壁の構築に要する工程および作業時間が多くて改善の余地がある。
【0004】
また、この施工方法によって構築した地下構造体においては、その周壁が、山止め、発泡プラスチックおよび鉄筋コンクリートの三層構造となり、その壁厚を薄くすることが難しいため、地下構造体の周壁によって包囲される地下構造体の内容積を十分に確保できないおそれがある(換言すれば、地下構造体の内容積を必要十分に確保するためには、必要以上に大きな構築予定地が必要となる)。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、上記した課題に対処すべくなされた地下構造体の施工方法であり、地盤の掘削前に、地中にソイルセメントを主体とし補強材で補強される土留壁を四方に施工し、この土留壁の上端部に補強枠を施工し、地盤の掘削後に、掘削底面上に耐圧底盤を施工し、その後に地盤の掘削によって露呈した前記土留壁の内側面に内装を施工して、地下構造体を構築することに特徴がある。
【0006】
本発明による地下構造体の施工方法を実施した場合には、地中にソイルセメントを主体とし補強材で補強される土留壁を四方に施工する工程(従来の山止めを施工する工程に比して容易な工程)と、土留壁の上端部に補強枠を施工する工程(従来の山止めの内壁面(四方の壁面全体)に沿う配置で壁鉄筋と壁用型枠を設け、前記壁用型枠との間に壁コンクリートを直接打設する工程に比して容易な工程)と、地盤の掘削によって露呈した土留壁の内側面に内装を施工する工程(従来の山止めの内壁面(四方の壁面全体)に発泡プラスチックを必要な層厚に一様に吹き付け施工する工程と同程度の工程)によって、地下構造体における周壁を構築すること、すなわち、土留壁を地下構造体の周壁として利用することが可能である。
【0007】
このため、地下構造体における周壁の構築に要する工程および作業時間を従来に比して少なくし得て、地下構造体における周壁の構築に要する施工時間、施工コストの低減を図ることが可能であり、地下構造体の構築に要する施工時間、施工コストを低減することが可能である。
【0008】
また、本発明の実施に際して、前記補強枠と前記耐圧底盤が鉄筋コンクリート製であり、前記土留壁には前記ソイルセメント中に前記補強材としてのH形鋼が所定間隔にて立設されていて、前記補強枠と前記耐圧底盤の各鉄筋が前記H形鋼に溶接されていることも可能である。この場合には、地下構造体を高強度にて構築することが可能である。
【0009】
また、本発明の実施に際して、前記土留壁の内側面は地盤の掘削時またはその後に所定厚で削り取られていて、この削り取られた部位に前記内装が施工されていることも可能である。この場合には、内装が土留壁の施工時の壁厚内で施工されるため、限られた構築予定地に構築される地下構造体の内容積を十分に確保することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1および図2は、本発明による地下構造体の施工方法において、地盤10の掘削前に、地中にソイルセメント21を主体とする土留壁20を四方に施工した状態を示している。図3は、本発明による地下構造体の施工方法において、土留壁20の施工後に、土留壁20の上端部に補強枠30を施工した状態を示している。
【0011】
図4および図5は、本発明による地下構造体の施工方法において、補強枠30の施工後に、地盤10を掘削した状態を示している。図6は、地盤10の掘削後に、掘削底面11上に耐圧底盤40を施工した状態を示している。図7は、耐圧底盤40の施工後に地盤10の掘削によって露呈した土留壁20の内側面20aに内装50を施工した状態を示している。
【0012】
土留壁20は、公知の掘削混練機を用いて掘削土とセメントミルクを混練することで地表面GLから地中に構築されたソイルセメント21を主体とするものであり、内部に所定間隔にて立設した複数個のH形鋼22によって補強されている。なお、ソイルセメント21は、図4に示したように、地盤10が公知の掘削機により掘削される際(地盤10の掘削時であっても、掘削後であってもよい)に、内壁面が所定厚で削り取られてH形鋼22の一部が露呈するようになっている。また、各H形鋼22は、ソイルセメント21が硬化する前に、ソイルセメント21内に所定の間隔にて建て込まれている。
【0013】
補強枠30は、鉄筋コンクリート製であり、土留壁20における各H形鋼22の上端部が露呈するようにソイルセメント21を取り除いた状態で施工されていて、その鉄筋31は各H形鋼22に溶接されている。
【0014】
耐圧底盤40は、耐圧防水の鉄筋コンクリート製であって、掘削底面11上に、砕石を敷き詰めてなる砕石層61と、この砕石層61上に施したコンクリート層(ステコンともよばれるもの)62を施工した後に施工されていて、その鉄筋41は各H形鋼22に溶接されている。
【0015】
内装50は、土留壁20におけるソイルセメント21の所定厚で削り取られた部位に施工されていて、土留壁20の内壁面20aに沿って設けたワイヤーメッシュ51と、このワイヤーメッシュ51を埋めるように吹き付けたモルタル52によって構成されている。
【0016】
上記した実施形態においては、地下構造体の構築予定地にて、地盤10の掘削前に、図1および図2に示したように、地中にソイルセメント21を主体としH形鋼22で補強される土留壁20を四方に施工し、土留壁20の施工後に、図3に示したように、土留壁20の上端部に補強枠30を施工し、補強枠30の施工後に、図4および図5に示したように、地盤10を掘削し、地盤10の掘削後に、図6に示したように、掘削底面11上に砕石層61上とコンクリート層62と耐圧底盤40を施工し、耐圧底盤40の施工後に、図7に示したように、地盤10の掘削によって露呈した土留壁20の内側面20aに内装50を施工することによって、地下構造体が構築されている。
【0017】
ところで、上記した実施形態においては、地中にソイルセメント21を主体としH形鋼22で補強される土留壁20を四方に施工する工程(従来の山止めを施工する工程に比して容易な工程)と、土留壁20の上端部に補強枠30を施工する工程(従来の山止めの内壁面(四方の壁面全体)に沿う配置で壁鉄筋と壁用型枠を設け、前記壁用型枠との間に壁コンクリートを直接打設する工程に比して容易な工程)と、地盤10の掘削によって露呈した土留壁20の内側面20aに内装50を施工する工程(従来の山止めの内壁面(四方の壁面全体)に発泡プラスチックを必要な層厚に一様に吹き付け施工する工程と同程度の工程)によって、地下構造体における周壁が構築されている。
【0018】
このため、地下構造体における周壁の構築に要する工程および作業時間を従来に比して少なくし得て、地下構造体における周壁の構築に要する施工時間、施工コストの低減を図ることが可能であり、地下構造体の構築に要する施工時間、施工コストを低減することが可能である。
【0019】
また、上記した実施形態においては、補強枠30と耐圧底盤40が鉄筋コンクリート製であり、土留壁20にはソイルセメント21中に複数個のH形鋼22が所定間隔にて立設されていて、補強枠30と耐圧底盤40の各鉄筋31,41が各H形鋼22に溶接されている。このため、地下構造体を高強度にて構築することが可能である。
【0020】
また、上記した実施形態においては、地盤10が掘削される際(地盤10の掘削時であっても、掘削後であってもよい)に、土留壁20の内側面20aが所定厚で削り取られていて、この削り取られた部位に内装50が施工されている。このため、内装50が土留壁20の施工時の壁厚内で施工されるため、限られた構築予定地に構築される地下構造体の内容積を十分に確保することが可能である。
【0021】
上記した実施形態においては、ソイルセメント21中のH形鋼22と補強枠30と耐圧底盤40の各鉄筋31,41が溶接される実施形態について説明したが、H形鋼22と各鉄筋31,41が溶接されないようにして実施することも可能である。また、上記実施形態においては、ソイルセメント21を補強する補強材としてH形鋼22を採用した実施形態について説明したが、H形鋼22に代えてI形鋼等の他の補強材を採用して実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による地下構造体の施工方法において、地盤の掘削前に、地中にソイルセメントを主体とする土留壁を四方に施工した状態を示す縦断正面図である。
【図2】図1に示した状態の平面図である。
【図3】本発明による地下構造体の施工方法において、土留壁の上端部に補強枠を施工した状態を示す縦断正面図である。
【図4】本発明による地下構造体の施工方法において、補強枠の施工後に、地盤を掘削した状態を示す縦断正面図である。
【図5】図4に示した状態の平面図である。
【図6】本発明による地下構造体の施工方法において、地盤の掘削後に、掘削底面上に耐圧底盤を施工した状態を示す縦断正面図である。
【図7】本発明による地下構造体の施工方法において、耐圧底盤の施工後に地盤の掘削によって露呈した土留壁の内側面に内装を施工した状態を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0023】
10…地盤、11…掘削底面、20…土留壁、21…ソイルセメント、22…H形鋼、30…補強枠、31…補強枠の鉄筋、40…耐圧底盤、41…耐圧底盤の鉄筋、50…内装、61…砕石層、62…コンクリート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の掘削前に、地中にソイルセメントを主体とし補強材で補強される土留壁を四方に施工し、この土留壁の上端部に補強枠を施工し、地盤の掘削後に、掘削底面上に耐圧底盤を施工し、その後に地盤の掘削によって露呈した前記土留壁の内側面に内装を施工して、地下構造体を構築する地下構造体の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の地下構造体の施工方法において、前記補強枠と前記耐圧底盤が鉄筋コンクリート製であり、前記土留壁には前記ソイルセメント中に前記補強材としてのH形鋼が所定間隔にて立設されていて、前記補強枠と前記耐圧底盤の各鉄筋が前記H形鋼に溶接されていることを特徴とする地下構造体の施工方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の地下構造体の施工方法において、前記土留壁の内側面は地盤の掘削時またはその後に所定厚で削り取られていて、この削り取られた部位に前記内装が施工されていることを特徴とする地下構造体の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−2413(P2007−2413A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180169(P2005−180169)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(592019316)中村土木株式会社 (4)
【Fターム(参考)】