説明

地中レーダ画像処理法

【課題】 管路等の人工物を地中レーダなどにより探査した場合の画像を処理して測定現場で目的の人工物を容易に判定できる効率的な処理法を提供する。
【解決手段】 各測定位置における受信信号をデコンボリューション等により処理して反射信号の遅延時間を推定し、推定された遅延時間と測定位置の差が所定の範囲内にあるものを同じグループに帰属させることにより推定遅延時間をグループ化し、グループごとに同一グループの画素の中で最も遅延時間が短い位置の近傍に反射点があると仮定して、同グループの画素による反射点の推定を行い、推定された反射点に同グループに属する遅延時間の評価値と推定誤差によって決まる評価値を与え、近距離にある推定位置を統合することにより、同一対象物による可能性が高い推定位置を統合して、推定位置の確度を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
管路等の人工物を地中レーダなどにより探査した場合の画像を処理して測定現場で目的の人工物を容易に判定できる効率的な処理法を提供する。
【背景技術】
【0002】
地中レーダ等の近距離レーダの画像を処理する方法に関する。特に、人工物など周囲との境界が明確な対象からの反射信号を特定して対象の判定を容易にする方法に関する。本方法は地中レーダだけでなく、対象物の像を得るのに開口合成的な手法を必要とする音波探査および地震探査にも適用可能である。
【0003】
【特許文献1】特開2004−198195号公報
【特許文献2】特開2001−033564号公報
【特許文献3】特開2002−107449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地中レーダは指向性が低いので対象からの反射を分離するための処理が必要である。
現在このために使用されている手法は凡そ以下のように分類される。
・マイグレーション
開口合成的な方法である。一般に、複数の対象物の反射が重なり合っている場合には対象物の無い場所に虚像を生じる欠点がある。計算方法には遅延時間を計算する方法(ディフラクションスタックマイグレーション)とFFTを用いる方法がある。前者は格子点ごとに計算処理を行なう必要があるために多大な量の計算を必要とし、調査結果を現場で処理するような用途には適していない。一方、後者は計算処理に要する時間は少ないが、虚像を発生しやすいという欠点がある。
特に、地中レーダの場合は測定対象とする空間の大きさに比べてレーダ信号の持続時間が長いという特殊な事情により、これらの方法には対象物の明瞭な位置を得るのが難しいという欠点がある。
・トモグラフィ
計算量が極めて多大であるために、現場での処理にはまったく適していない。
以上のように、現在使われている処理法は、多大な計算時間を要する、また、特に複数の対象物が近接して存在する場合に虚像を生じるという欠点がある。本発明はこれら2つの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
図5は本発明の処理フローの一例を示す図である。
ステップ101:地中レーダの送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方を移動しながら反射信号を取得する。
ステップ102:デコンボリューション、MUSIC法等により処理して反射信号の遅延時間を推定する。
ステップ103:受信信号を孤立反射体からの反射信号の重なりとみなし、ステップ102で得られた遅延時間を最も適切に説明可能な孤立物体の位置を推定する。
ステップ104:推定された遅延時間を確からしさを基に統合して、遅延時間の推定誤差を軽減するとともに、確からしさの低い遅延時間を除外して偽の対象物が発生するのを抑制する。
ステップ105:推定された遅延時間と測定位置の差が所定の範囲内にあるものを同じグループに帰属させることにより推定遅延時間をグループ化し、グループごとに同一グループの画素の中で最も遅延時間が短い位置の近傍に反射点があると仮定して、同グループの画素による反射点の推定を行い、推定された反射点に同グループに属する遅延時間の評価値と推定誤差によって決まる評価値を与える。
ステップ106:評価値の低い推定位置を除外することにより偽の対象物が発生するのを抑制し、 近距離にある推定位置を統合することにより、同一対象物による可能性が高い推定位置を統合して、推定位置の確度を高める。
以下で各処理の詳細を述べる。
【0006】
[測定方法]
解決法を説明するために、本発明が扱うデータの取得方法について地中レーダを例に説明する。
地中レーダでは、通常受信アンテナおよび送信アンテナの少なくとも一方を測定対象領域上の地表面で移動しながら送信アンテナから電磁波が発射された時刻に同期して受信アンテナで信号を受信する。地震波探査では受波器および送波器のいずれか一方を移動して測定する方法が多く行なわれるが、地中レーダでは送信アンテナと受信アンテナを対にして同時に移動しながら測定する場合が大部分である。
【0007】
本発明による画像処理は
(1) 送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方を移動しながら反射信号を取得する。
(2) 各測定位置における受信信号をデコンボリューション等により処理して、反射信号の遅延時間を推定する。
(3) 受信信号を孤立反射体からの反射信号の重なりとみなし、(2)で得られた遅延時間を最も適切に説明可能な孤立物体の位置を推定する。
という手順で行う。
【0008】
手順(2)で推定された遅延時間は一般に誤差および偽の推定時間を含む。そこで本発明では、
(A) 推定された遅延時間を確からしさを基に統合して、遅延時間の推定誤差を軽減するとともに、確からしさの低い遅延時間を除外して偽の対象物が発生するのを抑制する。
また、本発明の目的は孤立物体とみなせる対象物探索のための現場における迅速な処理であるので、手順(3)においては、
(B) 手順(2)で推定された遅延時間と測定位置の差が所定の範囲内にあるものを同じグループに帰属させることにより推定遅延時間をグループ化する。グループごとに、同一グループの画素の中で最も遅延時間が短い位置の近傍に反射点があると仮定して、同グループの画素による反射点の推定を行うことにより、処理時間を短縮する。このとき、推定された反射点に同グループに属する遅延時間の評価値と推定誤差によって決まる評価値を与える。
【0009】
(C) 適切さの低い推定位置除外することにより偽の対象物が発生するのを抑制する。
(D) 近距離にある推定位置を統合することにより、同一対象物による可能性が高い推定位置を統合して、推定位置の確度を高める。
【発明の効果】
【0010】
(1) 処理速度が速い。
(2) 対象物の位置と反射強度を特定できるために、連続物体の同定など高度な処理を行なうことが容易になる。
(3) 対象物の推定位置が明瞭になる。そのため、測定結果の解釈が容易になる。
【実施例】
【0011】
[受信データ]
説明を簡単にするために、また、通常の地中レーダによる測定を考慮して、送信機XT(送信アンテナ)と受信機XR(受信アンテナ)を所定の相互位置関係に保持しながら移動して受信信号を受信する。ここで、送信機XTとは測定対象領域に電磁波、地震波等のセンシングを行なう信号を送出する手段を指す。また、受信機XRとは電磁波、地震波等センシングを行なう信号を検知する手段を指す。
説明のために座標を定義する。信号が送出される方向をx軸、送信機XT、受信機XRが移動する方向をy軸、これら2軸に直交して右手系をなす方向をz軸とする。
x = 0 の面に沿って送信機XT、受信機XRを移動して測定を行なう場合を例にとって説明する。送信機XT、受信機XRを移動する面が平坦である限りこの仮定により一般性を失うことは無い。説明の都合上以後この面をセンシング面と呼ぶことにする。測定点はセンシング面上に並んでいるものとする。送信機XT、受信機XRの移動は直線に沿ってでも、曲線に沿ってでも構わない。
【0012】
以下の説明では、アンテナを直線的に移動して2次元のデータを取得するものとする。また、送信アンテナのみを移動する場合、受信アンテナのみを移動する場合もフィルタに変更を加えるだけで全く同様に扱うことができる。
測定点がy座標方向にNy個並んでいる。測定点の位置PMをy座標方向に番号付けして
【数1】

とする。ここで、z座標は省略した。また、上付き添え字Tは転置を表す。
送信アンテナと受信アンテナはy軸方向に並んでおり、一定の間隔を保って移動するから、それぞれの基準点(送信アンテナと受信アンテナの中点)から位置をdT、dRとすると、測定点の位置ベクトルの組PMを用いて送信アンテナの位置ベクトルの組PTと受信アンテナの位置ベクトルの組PR
【数2】

と表すことができる。
【0013】
受信信号の長さはMであり、等間隔tsでサンプリングされているものとする。簡単のために送信アンテナから信号が送出された時刻を0とする。すると、受信信号を受信する受信時刻の組tMは信号を発射した時刻を始点とする相対値であり、
【数3】

となる。
測定点PMjおける受信信号sj
【数4】

と表す。全受信データの組sは
【数5】

と表すことができる。
【0014】
[画像空間]
測定対象領域内の対象物の位置および性状の推定値を表示するために画像空間を定義する。画像空間は測定対象領域内に設けられた矩形格子点から構成される。y座標軸方向のj 番目の格子点のy座標yI jは受信データを取得した測定点のy座標である。つまり、
【数6a】

x座標は、信号受信時刻tMの間に信号が往復する距離である。したがって、x 軸方向のm番目の格子点のx座標xImは、時刻tMmを用いると
【数6b】

となる。ここで、csignalは信号の伝搬速度である。
【0015】
[反射の遅延時間と振幅の推定]
地中レーダが送・受信する信号は、送信アンテナと受信アンテナの過渡応答により拡がりを持っているパルス状信号であるために、個々の対象物からの反射信号は、レーダ画像上で無視できない拡がりを持っている。同一の測定点で周波数を所定の間隔で変えながら測定した周波数ごとの受信信号の振幅と位相である場合も、逆フーリエ変換を施せば同様なパルス状信号になるので、状況は同じである。
この拡がりは測定対象である空間の大きさの数10%に達するので、このような画像から対象物の位置を明瞭に推定することは難しい。そこで、本発明においては、反射の遅延時間と振幅から対象物の位置を推定する。一般に逆フィルタによるデコンボリューションは雑音が発生しやすい欠点がある。送・受信アンテナの過渡応答を正確に知ることが難しいこと、反射信号のスペクトルが対象物(反射体)の深さに依存することから、地中レーダの場合は良好なデコンボリューションを行うことは特に困難である。そこで、事後確率を最大にする方法(Jensen,J. A.,Leeman,S (1994): Non-parametric Estimation of Ultrasound Pulses,IEEE Trans. Biomed. Eng. 41,No. 10,929-936.)や、いわゆるMUSIC法など(S. Shrestha and I. Arai: Signal PRocessing of Ground Penetrating Radar Using Spectral Estimation Techniques to Estimate the Position of Buried Targets)を用いて反射信号の遅延時間と振幅を推定する。後者は前者に比べて処理時間が少ないものの、偽の反射を発生しやすい欠点がある。
そこで、本発明では処理時間が短い後者の方法により遅延時間を推定し、推定した遅延時間に付随する振幅を基に遅延時間の取捨選択と統合して偽の反射を低減する手法を考案している。
【0016】
[MUSIC法による遅延時間推定]
以下処理方法について説明するが、その前に上記文献に基づいてMUSIC法による遅延時間の推定について説明する。
MUSIC法による遅延時間の推定は、受信信号Sj= [Sj,0 ,Sj,1 ,… Sj,M-1]Tの周波数スペクトルSj= [Sj,0 ,Sj,1 ,… Sj,M-1]TをFFTなどにより計算する。次に、例えば振幅の絶対値が所定の値より大きいなど適当な周波数帯域中のスペクトル成分Sj'= [Sj,ms' ,Sj,ms+1' ,… Sj,me']Tを用いて遅延時間の推定を行う。
MUSIC法では、受信信号Sj'が真の信号

と雑音Njから構成されていると考えて、
【数7】

とモデル化する。ここで、Aは混合行列、つまり遅延を与える行列である。またLは反射信号(反射点)の個数である。受信信号Sj'の共分散行列RSSを求めて固有値分解する。
【数8】

行列Dは共分散行列RSSの固有値の2乗を対角要素とする行列である。ここで、絶対値が小さな固有値が雑音Njによるもの、絶対値が大きな固有値を真の信号Sjによるものと仮定し、(8)式をさらに
【数9】

と分解する。ここで、DSは絶対値が大きな固有値、つまり、真の信号

に対応する固有値、USはこれらの固有値に対応する固有ベクトルである。DNは絶対値が小さな固有値、つまり、雑音Njに対応する固有値、UNはこれらの固有値に対応する固有ベクトルである。
【0017】
受信信号Sj'がなす空間を、信号空間(真の信号に対応する固有ベクトルなす空間)と雑音空間(雑音に対応する固有ベクトルがなす空間)に分割する。信号空間のベクトルは雑音空間に直交するから、混合行列Aの列ベクトルaj=[aj,0 ,aj,1 ,… aj,L'-1]Tで、雑音空間に直交するものを求めると、遅延時間を得ることができる。列ベクトルaj,l (l = 0,… L'-1)を信号空間を張る固有ベクトルで展開して、展開係数とDSから列ベクトルaj,l (l = 0,… L'-1)に付随する電力を得ることができる。
【0018】
[偽反射の抑制法]
次に、本発明で用いる偽の反射を抑制する方法について説明する。
MUSIC法では、雑音に対応する固有値の個数、あるいは真の信号に対応する固有値の個数を指定する必要がある。地中レーダの受信信号では、反射点の個数は未知である。適当に余裕を持った個数の反射点があるもとして処理を行う。すると、偽の反射が生ずる。予め反射点の個数が分かっている場合でも、付随する電力が大きなものから与えれた個数だけ反射を選択した場合に、検知すべき反射が全てその中に含まれるとは限らず、個数に余裕を持って遅延時間を推定する必要がある場合が多い。
図6(a)は測定された信号を表し、図6(b)および図6(c)は図6(a)に示される測定信号を処理して得られた信号を表している。この場合、図5(b)の黒線で表される真の反射点以外に、破線で表される多くの偽の反射点が得られる。図から分かるようにこれらの偽の反射点は真の反射点の周辺に生ずることが多い。真の反射点に近い位置に多くの反射点が推定されることに変わりは無いが、実際の位置は雑音の状態等により変化する。これらの反射点に付随する電力は顕著な差が無く、電力の差だけで選択することは難しい。
【0019】
そこで、本発明ではこれらの偽の反射点を電力を重みとして反射点の平均位置を求めることにより統合する。つまり、
(1) 互い位置が所定の範囲内の反射点をグループ化する。
(2) グループgに属する反射点を以下の方法で統合する
【数10】

により、統合した反射点の位置(遅延時間)<tg>と、それに付随する電力Egを求める。ここで、tgiはグループgに属する反射点の遅延時間、Egiは同反射点に付随する電力である。また、Lgは同グループに含まれる反射点の個数である。
(3) 統合後の反射点を付随する電力が大きなものから所定の個数選択する。
前述の統合前の反射点にこのような処理を施した結果が図6(c)であり、黒線で表される真の反射点とともに、処理された結果が破線で表されている。真の反射点からずれた位置に統合される場合もあるが、概ね真の反射点に近い位置に反射点が得られている。
【0020】
[対象物の位置の推定]
統合前の反射点の位置が雑音の状態によって変化することから、統合後の反射点の位置も雑音の状況に応じて変化する。そこで、位置推定の信頼性を高めるために、全受信データの組s = [s0,s1,… sNx-1]を用いて対象物の位置を推定する。
【0021】
[真の遅延時間の計算法]
位置推定法の説明の前提として、対象物の位置が与えられたときに測定点で得られる反射信号の遅延時間を計算する方法を説明する。
点pTから送信された信号が位置q(xq,yq) にある点状対象物Qによって反射され、点pRで受信されるときの反射信号の遅延時間T (pT,pR,q) は、送信機XTを発射した信号が点状対象物Qに達し、さらに対象物Qで反射して受信機XRに達するのに要する時間であるから
【数11】

で与えられる。ここで|| v || はベクトルvのノルムを表す。
【0022】
[遅延時間のグループ化]
全受信データの組s = [s0,s1,… sNx-1]に対して、[反射の遅延時間と振幅の推定]の項で述べられている方法により遅延時間の推定を行う。すると、各受信信号sj,j=0,…Nx-1に対して遅延時間の組
【数12a】

が得られる。適当なしきい値δt、δyを用意して
【数12b】


である遅延時間を同一グループに帰属させ、遅延時間をグループ化する。この処理によりそれぞれの要素数がLGm個(m=0,…NG-1)のNG個のグループが作成されたとする。グループm (m=0,…NG-1)は推定遅延時間の組
【数12c】


によって構成される。ここで、Tmj(pMkj)はtm = [tM0,tM1,… tMM-1]T のいずれかであり、pMkjは測定点の座標PM = [pM0,pM1,… pMNy-1]の何れかである。
【0023】
[推定法]
測定位置pMj ,j = 1,… Ny-1での測定における反射点Qからの反射信号の真の遅延時間を遅延時間tq(PMj)とする。同一グループjに属する推定遅延時間


に対して、遅延時間の推定誤差をe(pMj) とすると
【数13】


である。推定誤差e(pMj)が平均値0、分散σの正規分布をなすとすると、真の遅延時間が


であるときに推定遅延時間が

である確率は
【数14】

であるから、
【数15a】

を最大にする

を求めれば、与えられた遅延時間の推定値の下で最も事後確率が高くなる対象物の位置が求められる。つまり、
【数15b】

真の遅延時間は未知であるから、分散σも未知である。そこで、本発明では分散 の適当な推定値を用いる。例えば、遅延時間の推定値の変動の分散を用いる。さらに、遅延時間の推定値に重みをつけることも可能である。そこで、本発明では遅延時間の推定値

に付随する電力

を重みとして、
【数16a】

を最大とする方法も採用する。つまり、
【数16b】

本発明では遅延時間をグループ化し、グループごとに式(15)あるいは(16)を適用する。このとき、以下のような手順で処理を行う。
【0024】
(1) グループに含まれる遅延時間推定値

の中で最小のものを見つける。この遅延時間推定値の最小値をtgMINとし、この最小値が測定された測定位置をpgMIN = (xgMIN,ygMIN)とする。
(2) 測定位置pgMINの直下(同じy座標)に対象物があると仮定して、つまり、 yObj = ygMINと仮定して式(11)により対象物のx座標xObjを求める。
(3) 以下の(a)または(b)の方法で対象物の位置を推定する。
(a) (2)で得た座標(xObj,yObj)を初期値として、ニュートン法、共役勾配法、最急降下法などで(15b)または(16b)を解いて対象物の位置q(xq,yq) と評価値f(q)を求める。評価値が所定の値より大きい場合は、これらを対象物の推定位置qE(xq,yq) と評価値fE (q)とする。
(b) 座標(xObj,yObj)の周辺に適当な間隔で格子点を与え、各格子点で式(15a)あるいは(16a)を評価し、評価値が所定の値より大きかった場合、最大の格子点を対象物の推定位置qE (xq,yq)とする。また、この格子点での評価値を対象物の推定位置での評価値fE (q)とする。
(4) 各グループを処理して得られた対象物の推定位置に対して、推定位置間の距離が所定の距離より小さなものをグループ化する。各グループに属する指定位置qE (xq,yq)に対して評価値fE (q)とする重み付け平均を求め、平均位置を対象物の位置、評価値の和を対象物の反射振幅とする。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、地中レーダ等の近距離レーダの画像を処理する方法であり、各測定位置における受信信号をデコンボリューション等により処理して反射信号の遅延時間を推定し、推定された遅延時間と測定位置の差が所定の範囲内にあるものを同じグループに帰属させることにより推定遅延時間をグループ化する。次に、グループごとに同一グループの画素の中で最も遅延時間が短い位置の近傍に反射点があると仮定して、同グループの画素による反射点の推定を行い、推定された反射点に同グループに属する遅延時間の評価値と推定誤差によって決まる評価値を与え、近距離にある推定位置を統合することにより、同一対象物による可能性が高い推定位置を統合して、推定位置の確度を高める。本発明の画像処理方法により、管路等の人工物を地中レーダなどにより探査する場合、測定現場で目的の人工物を容易に判定できる効率的な処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】受信アンテナのみを移動して測定する場合の測定方法
【図2】図1の測定した場合の受信信号の様子
【図3】送信/受信アンテナを一体で移動して測定する場合の測定方法
【図4】送信/受信アンテナを一体で移動して測定した場合の受信信号の様子
【図5】本発明に係る実施例の処理フローを示す図
【図6】本発明に係る実施例に基づいて処理された測定信号を表す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ信号の送信手段および受信手段の少なくとも一方を各測定位置ごとに送信信号を送出して移動し対象からの反射信号データから対象物の位置を推定する地中レーダ画像処理方法であって、
各測定位置における受信信号から反射信号の遅延時間を推定する第1のステップと、
受信信号を孤立反射体からの反射信号の重なりとみなし第1のステップで得られた遅延時間から孤立物体の位置を推定する第2のステップと、
第2のステップで推定された遅延時間を確からしさに基づいて統合し、確からしさの低い遅延時間を除外する第3のステップと、
第3のステップにより統合された推定遅延時間が所定の範囲内にあるものを同じグループにグループ化し、グループごとに同一グループの画素の中で最も遅延時間が短い位置の近傍に反射点があると仮定して、同グループの画素による反射点の推定を行い、推定された反射点に同グループに属する遅延時間の評価値と推定誤差によって決まる評価値を与える第4のステップと、
第4のステップにより与えられた評価値の低い推定位置を除外して偽の対象物を抑制しする第5のステップと、
近距離にある推定位置を統合することにより、同一対象物による可能性が高い推定位置を統合して、推定位置の確度を高める第6のステップからなる
地中レーダ画像処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の地中レーダ画像処理法であって、
第4のステップにおいて対象物の位置を推定するための評価関数として、仮定した対象物の位置に対する反射信号の遅延時間と手順1で得られた遅延時間に対する評価関数

あるいは

を用いることを特徴とする地中レーダ画像処理法。
【請求項3】
請求項2記載の地中レーダ画像処理法であって、
評価関数

あるいは

において第3のステップで推定された遅延時間の分散を確率密度の分散として用いることを特徴とする地中レーダ画像処理法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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