説明

地中掘削用の掘削装置、回転式掘削機及び地中掘削工法

【課題】低振動、低騒音で掘削作業ができるようにした地中掘削用の掘削装置、回転式掘削機及び地中掘削工法を提供する。
【解決手段】
地中掘削用の掘削装置1は、掘削装置本体2よりも外径が小さく、掘削側へ進退する複数のビット42a,・・・と、作動流体のエネルギーによって各ビット42a,・・・に打撃力を与えるピストン61を内蔵するピストンケース部材22a,・・・と、各ピストンケース部材22a,・・・に送られる作動流体を貯留する流体貯留部30を有している。各ピストンケース部材22aは、ピストンケース部材22a,・・・にそれぞれ設けてある各ビット41,・・・が互いに時間をずらしながら打撃駆動するようにすべく、ビット41,・・・に打撃力を与えるために往復運動するピストン61の移動距離が各ピストンケース部材22a毎に異なるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中掘削用の掘削装置、回転式掘削機及び地中掘削工法に関する。
更に詳しくは、低振動、低騒音で掘削作業ができるようにした地中掘削用の掘削装置、回転式掘削機及び地中掘削工法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木や建築の分野において、主に岩盤、転石、コンクリート等がある硬質の地盤の掘削に「ダウンザホールハンマ」と称される掘削装置が使用されている。ダウンザホールハンマは、圧縮空気を供給して内部のピストンを駆動させることにより、先端のハンマビットを上下動させ、その打撃によって掘削を行うものである(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−328983号公報(第1図)
【0003】
また、らせん形の錐で孔を掘削する「アースオーガ」と称される掘削装置もあるが、アースオーガは上記したダウンザホールハンマと比べ、岩盤、転石、コンクリート等が存在する硬質の地盤の掘削には適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の第1図に示すように、従来のダウンザホールハンマでは、掘削する孔とほぼ同じ径のハンマビットを上下動させて地盤を打撃するため、一回の打撃ごとに受ける地盤の衝撃が大きく、掘削時に激しい騒音と振動が発生していた。このため、より低振動、低騒音での作業が望まれる例えば住宅密集地や都市部のオフィス街での使用には、適していなかった。
【0005】
(本発明の目的)
そこで本発明の目的は、低振動、低騒音で掘削作業ができるようにした掘削装置、回転式掘削機及び地中掘削工法を提供することにある。
その他の本発明の目的は以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
なお、後述する作用の説明の理解を助けるため、図面において使用した符号を括弧を用いて記載しているが、各構成要件を図面記載のものに限定するものではない。
【0007】
本発明は、掘削装置本体(2)よりも外径が小さく、掘削側へ進退する複数のビット(42a,42b,42c,42d,42e)と、ビット(42a,42b,42c,42d,42e)の数に対応して掘削装置本体(2)内に複数収容されており、作動流体のエネルギーによって各ビット(42a,42b,42c,42d,42e)に打撃力を与えるピストン(61)を内蔵するピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)と、各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)に送られる作動流体を貯留する流体貯留部(30)と、上記ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)の数に対応して複数設けてあり、上記流体貯留部(30)から各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)に送られる作動流体が通る作動流体経路(351,352,352,352,352,352)と、を有しており、各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)は、ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)にそれぞれ設けてある各ビット(41,42a,42b,42c,42d,42e)が互いに時間をずらしながら打撃駆動するようにすべく、ビット(41,42a,42b,42c,42d,42e)に打撃力を与えるために往復運動するピストン(61)の移動距離、ピストン(61)の大きさ、ピストン(61)の重さからなる群から選ばれた少なくとも一つが各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)毎に異なるように設定されている、地中掘削用の掘削装置である。
【0008】
本発明は、掘削装置本体(2)よりも外径が小さく、掘削側へ進退する複数のビット(42a,42b,42c,42d,42e)と、ビット(42a,42b,42c,42d,42e)の数に対応して掘削装置本体(2)内に複数収容されており、作動流体のエネルギーによって各ビット(42a,42b,42c,42d,42e)に打撃力を与えるピストン(61)を内蔵するピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)と、各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)に送られる作動流体を貯留する流体貯留部(30)と、上記ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)の数に対応して複数設けてあり、上記流体貯留部(30)から各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)に送られる作動流体が通る作動流体経路(351,352,352,352,352,352)と、を有しており、各作動流体経路(351,352a,352b,352c・・・)の作動流体が通る内径は、各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)にそれぞれ設けてあるビット(41,42a,42b,42c,42d,42e)が互いに時間をずらしながら打撃駆動するようにすべく、各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)毎に異なるように設定されている、地中掘削用の掘削装置である。
【0009】
本発明は、流体貯留部(30)に、流体貯留部(30)に供給された作動流体を受けて流通口(3a,3b,3c,3d,3e)に案内する作動流体案内部材(8)が設けてある、地中掘削用の掘削装置である。
【0010】
本発明は、掘削装置本体(2)に、各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)の周りを囲むようにして防振材または/及び防音材(230)が設けてある、地中掘削用の掘削装置である。
【0011】
本発明は、上記記載の掘削装置(1)(1a)と、該掘削装置(1)(1a)に回転運動を与えることができる回転駆動装置(5)とを備えた、回転式掘削機である。
【0012】
本発明は、上記記載の掘削装置(1)(1a)を使用した地中掘削工法であって、掘削装置(1)(1a)に回転運動を与えながら地中掘削を行うことを特徴とする、地中掘削工法である。
【0013】
本明細書及び特許請求の範囲にいう「作動流体」としては、エア(例えば圧搾空気)等の気体や、水、油などいった液体を採用することができる。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲にいう「防振材または/及び防音材」には、防振材または防音材のいずれか一方を含む場合もあるし、あるいは防振材及び防音材の両方(防振及び防音の両方の作用を備えたものも含む)を含む場合もある。
【0015】
(作 用)
本発明に係る掘削装置は、掘削装置本体(2)よりも外径が小さく、掘削側へ進退する複数のビット(41,42a,42b,42c,42d,42e)を備え、次のように作用する。
【0016】
(a)作動流体を貯留する流体貯留部(30)から、作動流体が各作動流体ピストン経路(351,352,352,352,352,352)を通って各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)に送られる。これにより、各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)に内蔵されたピストン(61)が掘削のための打撃力を各ビット(41,42a,42b,42c,42d,42e)に与える。
【0017】
更に本発明では、ビット(41,42a,42b,42c,42d,42e)に打撃力を与えるために往復運動するピストン(61)の移動距離、ピストン(61)の大きさ、ピストン(61)の重さからなる群から選ばれた少なくとも一つが各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)毎に異なるように設定されているか、あるいは各作動流体経路(351,352a,352b,352c・・・)を通る作動流体の内径が各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)毎に異なるように設定されているので、その他のピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)の条件を同じにすることにより、各ビット(41,42a,42b,42c,42d,42e)が互いに時間をずらしながら打撃駆動する。したがって、ビット(41,42a,42b,42c,42d,42e)の一回の打撃ごとに受ける地盤の衝撃は小さい。
【0018】
(b)流体貯留部(30)に作動流体案内部材(8)が設けてあるものは、作動流体案内部材(8)が流体貯留部(30)に供給された作動流体を受けて各作動流体経路(351,352,352,352,352,352)(351,352a,352b,352c・・・)に案内され、各作動流体経路(351,352,352,352,352,352)(351,352a,352b,352c・・・)に均等またはできるだけ均等に作動流体が送られる。これにより、各ピストンケース部材(22a,22b)に送られる作動流体にムラが生じることを防止できる。
【0019】
(c)掘削装置本体(2)にピストンケース(22)の周りを囲むようにして防振材または/及び防音材(230)が設けてあるものでは、ピストンの駆動時に発生する振動や音を防振材または/及び防音材(230)が緩和する。
【0020】
本発明に係る回転式掘削機は、回転駆動装置(5)によって掘削装置(1)(1a)に回転運動を与えながら掘削作業を行う。回転運動を与えることにより、掘削装置(1)(1a)が有するビッド(41,42a,42b,42c,42d,42e)の掘削位置が掘削面に対して移動する。これにより、ビッド(41,42a,42b,42c,42d,42e)が掘削面全体を満遍なく打撃する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。
(a)本発明に係る掘削装置によれば、ビットに打撃力を与えるために往復運動するピストンの移動距離、ピストンの大きさ、ピストンの重さからなる群から選ばれた少なくとも一つが各ピストンケース部材毎に異なるように設定されているか、あるいは各作動流体経路を通る作動流体の内径が各ピストンケース部材毎に異なるように設定されているので、その他のピストンケース部材の条件を同じにすることにより、各ビットは互いに時間をずらして打撃駆動する。
よって、掘削する孔とほぼ同じ径のハンマビットを上下動させて地盤を打撃していた従来のダウンザホールハンマに比べて、ビット一回の打撃ごとに受ける地盤の衝撃は小さく、低振動、低騒音で掘削作業ができる。したがって、より低振動、低騒音での作業が望まれる住宅密集地や都市部のオフィス街などでの使用に適している。
【0022】
また従来では、掘削する孔とほぼ同じ大きな径のハンマビットを駆動させる必要があったため、必然的にハンマビットを上下動させるために必要なエアの消費量が多く、比較的大きなエアコンプレッサーが必要であった。これに対し、本発明では、比較的小さなビットを駆動させれば良いので、一つのビットを進退させるための作動流体(例えばエア)の消費量が小さく、その結果、作動流体を供給する供給装置(例えば、作動流体がエアの場合にはエアコンプレッサー)を小型化できる。よって、供給装置の設置面積も小さくて済み、住宅密集地や都市部のオフィス街等といったスペースの限られた場所での施工に好適である。また供給装置の小型化により、供給装置を駆動させるエンジン等の駆動手段の小型化も可能となるので、駆動手段から発生する振動や騒音も低く抑えることができる。
【0023】
(b)流体貯留部に作動流体案内部材が設けてあるものは、各ピストンケース部材に送られる作動流体にムラが生じることを防止できる。
【0024】
(c)掘削装置本体にピストンケースの周りを囲むようにして防振材または/及び防音材が設けてあるものでは、ピストンの駆動時に発生する振動や音が外に漏れたり伝わることをより効果的に防止できる。
【0025】
(d)本発明に係る回転式掘削機及び地中掘削工法によれば、上記した効果を備えた掘削装置に回転運動を与えながら使用することにより、低振動、低騒音での掘削作業ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
図1ないし図7は、本発明に係る地中掘削用の掘削装置の第一の実施例を説明するための図である。
図1は、本実施例に係る掘削装置を先端側から見た斜視説明図、
図2は、図1に示す掘削装置の縦断面説明図、
図3は、図1に示す掘削装置の分解斜視説明図であり、エアタンク部材と、エアタンク部材から取り外した掘削ビット部材を分解した状態で示している。なお、図3においてエアタンク部材3の基部側(上方側)は図示を省略している。
図4は、掘削ビット部材に収容されているピストンケース部材の一つを縦断面して内部構造を表した側面視説明図であり、内蔵されたピストンが上下の往復運動(進退動)している状態を図4(a)〜(d)で経時的に示している。
【0028】
図5(a)は図4(a)で示した同じ縦断面説明図、図5(b)は、掘削ビット部材に収容されている他のピストンケース部材の縦断面説明図、
図6は、図2に示す掘削装置のエアタンク部材内に配置される流体案内部材を示す斜視説明図、
図7は、掘削装置と回転駆動装置で主に構成される回転式掘削機を示す側面視説明図である。
【0029】
図7に示す回転式掘削機6は、図1に示す地中掘削用の掘削装置1と、掘削装置1に回転運動を与えることができる回転駆動装置5とを備えている。
まず、掘削装置1について説明し、その後、回転駆動装置5について説明する。
【0030】
[掘削装置1]
図1及び図2に示すように、掘削装置1はその全体が略円柱状に形成されている。掘削装置1は、掘削側(先部側)に位置する掘削装置本体である掘削ビット部材2と、基部側に位置する作動流体貯留部材であるエアタンク部材3を備えている。
【0031】
掘削ビット部材2は、その先端側に複数のビット41,42a,42b,42c,42d,42eを備えている。各ビット41,・・・は、掘削ビット部材2よりも外径が小さくなって複数設けてある。掘削装置1は、後述する図7に示すように、クレーン(図示省略)により懸吊されることにより、先端の各ビット41,・・・が下を向くように立てた状態で使用される。
【0032】
本実施例では、図1に示すように、各ビット41,・・・は、掘削ビット部材2の軸心部に一箇所設けられた中央ビット41と、中央ビット41を中心とする円周上に等間隔で(中央ビット41の周りに)五箇所設けられた周辺ビット42a,42b,42c,42d,42eで構成されている。後述するように、中央ビット41はヘッド部が円形状に形成されているのに対し、周辺ビット42a,・・・はヘッド部が略三角形状に形成されている。各ビット41,・・・は、同時でなく互いに時間をずらして打撃駆動(上下動または進退)するように構成されている。
【0033】
エアタンク部材3は、固着具であるボルト31とナット32(図1では隠れて見えず、図2を参照)により掘削ビット部材2の基部側に着脱可能に接続されている。図2に示すように、エアタンク部材3には、各ビット41,・・・を駆動させる作動流体であるエアを高圧状態で貯留できるエア貯留部30を備えている。
【0034】
以下、掘削装置1の各構成部材について順を追って詳しく説明する。
【0035】
(掘削ビット部材2)
図3に示すように、掘削ビット部材2は、上から順に、接続体21を備えると共にピストンを含む駆動手段等を収容したピストンケース部材22a,22b,22b,22b,22b,22bの他、ピストンケース取付体23、ドライブチャック24、チャックガイド25、ビット41,・・・等を備えている。
【0036】
各ピストンケース部材22a,22b,・・・は、金属製で円筒形状のピストンケース本体220a,220b・・・を有している。各ピストンケース本体220aの基端部(図3で上部)には接続体21が螺合されている。各ピストンケース本体220aの先端部(図3で下部)には、ドライブチャック24、チャックガイド25を介して各ビット41,・・・が接続される。各ピストンケース部材22a,22bは、各ビット41,・・・と同じ数(本実施例では複数、全体で六ヶ所)設けられている。
【0037】
なお、以下、説明の便宜上、中央ビット41に対応するピストンケース部材22aを「中央ピストンケース部材22a」といい、周辺ビット42に対応するピストンケース部材22bを「周辺ピストンケース部材22b」という場合がある。
【0038】
図4を参照する。図4では、掘削ビット部材に収容されているうちの一つの中央ピストンケース部材22aについて表しているが、その他の周辺ピストンケース部材22bのピストン61についても同じように往復運動する。
【0039】
図4(a)に示すように、ピストンケース本体220aには、ビット41を作動させるピストン61を含む駆動手段等が内蔵(収容)されている。即ち、ピストンケース本体220aには、ピストン61の他、シリンダー62、チェックバルブ63、エアディストリビータ64(リジットバルブ)、バルブスプリング65、フートバルブ66、メイクアップリング、O−リング、ピストンリタイナーリング、ビットリティーナリング等が設けてある。この駆動手段については、公知のダウンザホールハンマの駆動機構(例えば特開昭61−92288号公報記載)と同じか大体同じであるので、詳しい説明を省略する。
【0040】
図4(a)〜(d)を参照して、この駆動機構について簡単に説明する。
まず、図7に示す掘削作業前の掘削装置1を吊り下げた状態では、図4(a)に示すように、先端のビット41はその自重によりピストンケース部材22aの先端へ突出した状態となっている。この状態では、ピストン61の先部側周面部がピストンケース本体220aの内周面に接しており、エアホース351から導入されるエアがピストン61の先部側にまわらない(送られない)。これにより、ピストン61が上昇することはなく(ピストンケース本体220aの基部側へ移動することはなく)、ビット41は駆動停止状態となっている。
【0041】
そして、図4(b)のように、地面(または接地面)である掘削面Lにビット41が当接するまで、吊り下げた状態の掘削装置1を降ろすと、掘削装置1の自重によってビット41がピストンケース本体220a内部に移動する。これにより、ピストン61の先部側周面部とピストンケース本体220aの内周面の間にできた間隙から、エアがピストン61の下部側(先部側)にまわり、図4(c)、更に図4(d)に示すようにピストン61を高速で押し上げる。
【0042】
その後、ピストン61が所要の位置まで上昇すると、再び、ピストン61の先部側周面部がピストンケース本体220aの内周面に接し、エアがピストン61の先部側にまわらないようになる。これにより、エアがピストン61の上部側にまわり、押し上げられたピストン61が逆に高速で押し下げられ、図4(a)に示すように先端のビット41を打撃する。これによって、フートバルブ66から入ったエアがビット41内を通ってビット41先部側から排出されると共に、ビット41が先端に突出して打撃駆動される。この繰り返されるピストン61の上下の往復運動に伴う衝撃力によって、掘削側のビット41が(他のピストンケース部材22bのビット42aも同様に)進退し、地中を掘り込んでいく。ビット41の進退ストロークは、例えば約1〜3センチである。
【0043】
上記したように、掘削ビット部材2には上記した中央ピストンケース部材22a以外に、5本の周辺ピストンケース部材22b,・・・が設けられている。そして、この中央ピストンケース部材22aと、その他の5本の各周辺ピストンケース部材22b,・・・とは、各ピストンケース本体220a,220bの長さと、収容されている各ピストン61,61aの大きさが、それぞれ互いに異なっている。
【0044】
即ち、図5(a)に示す中央ピストンケース部材22aのピストンケース本体220aに比べて、例えば図5(b)に示す周辺ピストンケース部材22bのピストンケース本体220bの長手方向の長さが短くなっている。即ち、図5(a)に示すエアディストリビータ64からビット41までの距離L1よりも、図5(b)に示すエアディストリビータ64からビット42aまでの距離L2の方が短い。
【0045】
更に、ピストンケース本体220bの長さに対応して、図5(a)に示す中央ピストンケース部材22aのピストン61よりも、図5(b)に示す周辺ピストンケース部材22bのピストン61aの方が長手方向の長さが短くなっている。つまり、長さが短いピストン61aの方がピストン61と比べて、その重量が軽くなっている。
【0046】
このようなピストンケース部材22a,22bの構成により、図2に示すエア貯留部30から各エアホース351,352に送られるエアの量が同じであっても、図5(b)に示す周辺ピストンケース部材22bのピストン61aの方が、より少ないエアの量で駆動する。したがって、図5(b)に示す周辺ピストンケース部材22bの方が、図5(a)に示す中央ピストンケース部材22aに比べて、時間あたりの打撃回数が多くなっている。
【0047】
例えば図5(a)に示す中央ピストンケース部材22aがビット41を仮に1分間に1200回程度打撃駆動させるとすると、図5(b)に示す周辺ピストンケース部材22bがビット42aを1分間に200回程度多い、1400回打撃駆動するといった具合に設定することができる。
【0048】
更に、図示はしていないが、他のビット42a,42c,42d,42eに対応する残る4本の周辺ピストンケース部材22b,・・・についても同様に、各ピストンケース本体220bの長さと、収容されている各ピストンの大きさがそれぞれ互いに異なっている。これにより、1分間あたりの打撃回数が互いに異なっている(例えば1分間あたりにビット42aでは1600回、ビット42cでは1800回、ビット42dでは2000回,ビット42eでは2200回等に設定できる)。その結果、図1に示す6つの各ビット41,・・・は、同時でなく互いに時間がずれながら上下動して地盤を掘削できるようになっている。
【0049】
なお、上記した時間あたりの各ビット41,・・・の打撃回数は、同じビットでも掘削対象である地層の硬さにより変動する。硬い地層の場合、地盤を打撃した後の各ビット41,・・・の戻りが速く、これに追従して各ピストン61,・・・の上下動が激しくなるため、各ビット41,・・・の打撃回数が増加する。
【0050】
図2に示すように、各ピストンケース本体220a,220bの基端部に位置する接続体21は、作動流体の経路である孔211(図3では見えず)を有し、基端側が断面凸状に形成されている。その凸状部分が差込部222を構成し、差込部222がエアタンク部材3へ差し入れられて装着される。そうして、エアタンク部材3から接続体21の差込部222を介して送られるエアによって、各ピストンケース部材22a内の駆動手段が駆動する。
【0051】
各ピストンケース部材22a,22b(本実施例では合計で6本)は、略円柱形状の取付体であるピストンケース取付体23(図3参照)に着脱可能に取り付けられている。ピストンケース取付体23は、筒状本体231(図2参照)と、筒状本体231の先部側の開口部に固着されているカバー体233(以下、「先部カバー体233」という)と、筒状本体231の基部側の開口部に固着されているカバー体234(以下、「基部カバー体234」という)で主に構成されている。
【0052】
更にピストンケース取付体23の内部には、円筒形状で細長いケーシングであるピストンケースケーシング232(図2参照)が収容されている。このピストンケースケーシング232に、ピストンケース本体220a,220bが差し入れられた状態で取り付けられる。ピストンケースケーシング232はピストンケース本体220a,220bと同じ数設けられており、その軸心方向がピストンケース取付体23の長手方向と同じになるように設けてある。
【0053】
先部カバー体233は所要の厚みを有し、ピストンケース部材22aを挿設するための孔である挿通孔235がそれぞれ設けられている。同じく、基部カバー体234は所要の厚みを有し、ピストンケース部材22a,22bを挿設するための孔である挿通孔236(図2参照)がそれぞれ設けられている。本実施例では、挿通孔235,236は中央部に一箇所、中央部を中心とする円周上に等間隔で五箇所の合計で六ヶ所に設けてある。
【0054】
図2に示すように、この上下二つのカバー体233,234によって挟まれた状態で、上記したピストンケースケーシング232が固着され、筒状本体231内に収容されている。ピストンケースケーシング232の先端側の孔(符号省略)は、先部カバー体233の挿通孔235と連通している。ピストンケースケーシング232の基端側の孔(符号省略)は、基部カバー体234の挿通孔236と連通している。
【0055】
更に、ピストンケース取付体23(筒状本体231)内のピストンケース本体220a,220b間に形成されている空隙部分には、防振材または/及び防音材として砂230(図2参照)が充填されている。
【0056】
また各ピストンケース本体220a,220bの先端部は、先部カバー体233から一部突出している。この突出部分の孔(符号省略)に、図3に示す略筒状のドライブチャック24の基端側がややきつく押し込まれた状態で取り付けられる。ドライブチャック24の先端側の孔241には、チャックガイド25を介し各ビット41,・・・の基部側が進退自在に収納される。
【0057】
チャックガイド25は平面視略円形状で所要の厚みを有し、ピストンケース取付体23の先端(先部カバー体233)に固着されている。チャックガイド25の固着には、固着具であるボルト251と、ピストンケース取付体23側から取り付けられるナット252(図3でピストンケース取付体23の左側に図示)が使用されている。
【0058】
チャックガイド25の先部側には、中央に底面視円形の凹部253と、凹部253を取り囲むようにして底面視V字状の溝である所要数の凹部254が放射状に設けてある。凹部253には、底面視円形状のヘッド部411を備えた中央ビット41が配置される。各凹部254には、底面視略三角形状のヘッド部421を備えた周辺ビット42が配置される。各ビット41,・・・のヘッド部411,421には、超硬合金製のボタンチップ412が多数設けてある。
【0059】
チャックガイド25には、各ビット41,・・・と同じ数の孔で構成された取付部である取付孔255が設けてある。取付孔255は上記した凹部253と凹部254内に位置している。この取付孔255の基部側にはドライブチャック24の先端部が嵌め入れられる。ドライブチャック24は六角ナット状の回り止め部242を有し、チャックガイド25の取付孔255には回り止め部242が嵌め入れられる六角状の凹部256(図2参照)が形成されている。
【0060】
各ビット41,・・・の基部側はスプライン軸として形成され、この基部側が取付孔255の先端部から嵌め入れられることにより、内周壁に凹凸の係合用の溝条(図示省略)を形成したドライブチャック24の内部に装着されている。各ビット41,・・・の基部側は、上記したビットリティーナリングとO−リングにより、ドライブチャック24側から外れないように装着される。
【0061】
また図1に示すように、ピストンケース取付体23の外周には軸方向に沿って突条であるフラットバー26が所要数設けられている。本実施例では、フラットバー26は周方向に所要の間隔をおいて複数(合計で六箇所)設けてある。そして、地盤の掘削作業時に掘削した孔の内部に発生する粉砕した岩盤や土砂(スライム)は、掘削ビット部材2(チャックガイド25)の先部側から噴射されるエアによって掘削した孔とフラットバー26,26間との隙間を通って地表面へ送り出される。
【0062】
(エアタンク部材3)
エアタンク部材3の基端部(図2で上端部)には、エアを導入するための連結ジョイント34が設けてある。連結ジョイント34から導入されたエアは、エアタンク部材3内のエア貯留部30内に貯留される。符号340は、連結ジョイント34の吹き出し孔を示している。
【0063】
図3に示すように、エアタンク部材3の先部側には、掘削ビット部材2の基端部(各ピストンケース部材22の差込部222側)と連結するための連結体33が設けられている。更に図2に示すように、連結体33よりも基部側(図2で上方側)の内部にエア貯留部30が設けてある。エア貯留部30は、平面視円形状の板状体で構成された区画体300によって連結体33側と区画されている。
【0064】
図3に示すように、連結体33の先部には連結孔331が所要数設けてある。そして、図2に示すように、この各連結孔331に差し込まれたピストンケース部材22a,・・・の差込部222に、各エアホース351,352の一端部(図2で下端部)がそれぞれ接続されている。
【0065】
各エアホース351,352の他端部(図2で上端部)は、上記区画体300に形成された作動流体の流通孔である区画孔3a,3d,3f(図2では3つの区画孔を図示。図示していない残り3つの区画孔は符号を省略)にそれぞれ接続されている。各区画孔3a,・・・及び各エアホース351,352は、各ピストンケース部材22a,22bへ作動流体を送るための作動流体流通部を構成している。
【0066】
なお、図2ではすべてのエアホースを図示してないが、エアホースはピストンケース部材22a,22bの全数に対応して(ピストンケース部材22a,22bと同じ数、本実施例では6本)設けられている。また本実施例では、各エアホース351,352が収容されている連結体33は、全体として中空の略筒状体となっているが、中実状に形成することもできる。
【0067】
本実施例では、各区画孔3aは円形の孔で構成されている。各区画孔3aは、各ピストンケース部材22a,22bの数に対応して設けてある。即ち、区画体300の中心部に区画孔3f(以下、「中央区画孔3f」という場合がある。)が一箇所設けてあり、この中央区画孔3fを中心とする円周上に区画孔3a,3d,3f,・・・(以下、「各周辺区画孔3a」という場合がある。)が等間隔で五箇所設けてある。
【0068】
中央区画孔3fには、図1に示す中央ビット41に対応する中央ピストンケース部材22aから導出されたエアホース351(図2参照。以下、「中央エアホース351」という)が接続されている。中央区画孔3fを囲む残りの各周辺区画孔3a,・・・は、図1に示す周辺ビット42a,・・・に対応するピストンケース部材22bから導出されたエアホース352(図2参照。以下、「周辺エアホース352」という)がそれぞれ接続されている。この中央エアホース351と各周辺エアホース352の内径と長さはすべて同じである。
【0069】
(エア案内部材8)
エア貯留部30内には、連結ジョイント34から供給されるエアを区画体300の各区画孔3a,・・・に案内するための作動流体案内部材であるエア案内部材8が設けてある。図6に示すように、エア案内部材8は、盃(さかずき)のような形をしている。
【0070】
エア案内部材8は、連結ジョイント34の吹き出し孔340からエアを受ける半球状(ボール状)の受部81と、受部81を支える略円錐体の錐壁部で構成される支持体82を有している。本実施例では、支持体82の基端部823(図2で下端部)は区画体300の周縁部付近に固定されているが、エア貯留部30の内壁面304に直接的または間接的に固定することもできる。
【0071】
図6に示す支持体82には、支持体82内部にエアを取り入れる所要数の取入部である取入孔821が設けてある。取入孔821は、支持体82の先部側寄り(図6で上側)と基部側寄り(図6で下側)に、支持体82の周面方向に沿って等間隔で所要数(本実施例では複数、8箇所)設けてある。各取入孔821は、区画体300の各区画孔3a,・・・に向かって放出されるように、図2で下斜め方向に傾けて設けてある。
【0072】
このような構成により、図2で上方に示す連結ジョイント34の吹き出し孔340から供給されたエアは、エア案内部材8の受部81に当たった後、受部81の凹部面に沿って跳ね返り、更に弧を描くようにして支持体82側へ戻って各取入孔821を抜け、各区画体300の各区画孔3a,・・・へ送られる。
【0073】
(エアタンク部材3の外周部分)
図2に示すように、エアタンク部材3の連結体33よりも基部側(図2で上部側)は、連結体33をほぼ境にして基部側にむかってややすぼまって形成されている。この連結体33よりもやや径小に形成された径小部分36の外径は、後述する回転駆動装置5(図7参照)に設けてある筒状のドライブブッシュ51の内径と合うように作られている。
【0074】
そして、図7に示すように、掘削装置1を立てた状態で、掘削装置1の基端部からドライブブッシュ51を嵌め込んで落とし込むと、ドライブブッシュ51はエアタンク部材3の径大となっている部分(連結体33付近)で止まり、下に落ちない。これについての詳しい作用は、後述する。
【0075】
更に、図1に示すように、エアタンク部材3の外周には軸方向に沿って突条であるフラットバー361が所要数設けられている。本実施例では、フラットバー361は複数(合計で六箇所)設けてある。そして、掘削作業時に、このフラットバー361が後述する回転テーブル(ロータリテーブル)を備えた回転駆動装置5(図5参照)のドライブブッシュ51の内壁部に設けてある係合溝に係合し、ドライブブッシュ51の回転駆動力(回転運動)が掘削装置1に伝達される。
【0076】
[回転駆動装置5]
一方、図7に示す回転駆動装置5は、上記したように掘削装置1に回転運動を与えるものである。回転駆動装置5は、回転駆動装置本体50と、回転駆動装置本体50を支えるアウトリガ52を備えている。上記したように、回転駆動装置本体50は、ドライブブッシュ51を介して掘削装置1を装着でき、掘削装置1に回転運動を与える回転テーブル(図7では隠れて表れない)を備えている。
【0077】
(作 用)
掘削装置1を備えた回転式掘削機6の作用について説明する。
なお、本実施例では、地盤に杭用の孔を掘削する場合を例に挙げて、回転式掘削機6の作用を説明する。
【0078】
まず、図7に示すように、回転式掘削機6を構成する回転駆動装置5は、例えばH鋼等で組んだ仮設足場600上に載置される。一方、掘削装置1の基端部に、地盤に掘削する孔の長さに応じてケリーロッド7を所要数(必要数)接続する。本実施例では、ケリーロッド7を一つ繋げているが、二以上(複数)接続しても良い。
【0079】
ケリーロッド7はエア供給管を内蔵している。ケリーロッド7と掘削装置1はピン、ボルト、ナット等からなる固着具(図示省略)で固着される。ケリーロッド7を繋いだ掘削装置1は、クレーン(図面では表れず)によって懸吊支持される。図7で符号73は、クレーンに接続されたワイヤを示している。
【0080】
そして、回転駆動装置5の回転テーブル(図7では隠れて表れず)にドライブブッシュ51をセットする。更にクレーンで懸吊支持しながら、掘削装置1のエアタンク部材3のフラットバー361をドライブブッシュ51の内壁の溝である係合溝(図面では隠れて表れず)に係合させる。そうして、クレーンにより掘削装置1を吊り降ろしながら掘削を開始する。
【0081】
掘削時において、回転テーブルからドライブブッシュ51に伝達される回転駆動力はエアタンク部材3に伝達されて掘削装置1が回転する。ケリーロッド7の上端には、クレーンにより懸吊支持するための支持軸71が設けてある。この支持軸71に、掘削装置1にエアを供給する供給管72が接続されている。また支持軸71にはエアスイベル(図示省略)が設けてある。
【0082】
供給管72から送られるエアは、ケリーロッド7のエア供給管を通って掘削装置1に送られる。掘削装置1に送られたエアは、図2に示す連結ジョイント34の吹き出し孔340から放出されエア貯留部30に貯留される。
【0083】
吹き出し孔340から供給されたエアは、エア案内部材8の受部81に当たった後、受部81の凹部面に沿って跳ね返り、更に弧を描くようにして支持体82側に戻って各取入孔821を抜け、各区画体300の各区画孔3a,・・・へ送られる。
【0084】
更に、エアは各区画孔3a,・・・に対応するエアホース351,352を通って各ピストンケース部材22a,・・・に導入されて各ピストン61,61a,・・・を駆動し、先端のビット41,42a,・・・を上下動させる。
【0085】
そして、上記したように、各ピストンケース部材22aでは、そのピストンケース本体220a,220bの長さと、収容されている各ピストン61a,・・・の大きさが互いに異なり、1分間あたりの打撃回数が互いに異なっている。これにより、各ビット41,42aは互いに時間がずれながら上下動し、同時に連続して地盤を打撃することはない。更に、ビット41,42は掘削する孔に対して径小のものを使用しているため、ビット41,42一回の打撃ごとに受ける地面の衝撃は小さい。
【0086】
以上のようなことから、掘削する孔とほぼ同じ径の一つのハンマビットを上下動させて地面を打撃していた従来のダウンザホールハンマを比べ、低騒音、低振動で掘削作業ができる。したがって、住宅密集地や都市部のオフィス街等での使用に好適である。
【0087】
更に、回転駆動装置5によって掘削装置1に回転運動が与えられることで、掘削装置1が有する各周辺ビット42a,・・・の掘削位置が掘削面に対して移動する。これにより、各ビッド41,42が掘削面全体を満遍なく打撃する。また、掘削装置1が回転することにより、掘削時に発生する粉砕した岩盤や土砂(スライム)が円滑に地表面へ送り出される。
【0088】
また図2に示すように、各ビット41,・・・を作動させるピストン61等の駆動手段はピストンケース本体220a,220b内に収容され、更に筒状のピストンケースケーシング232によって覆われており、更には防振材または/及び防音材である砂230が充填された筒状本体231内に収容されている。これにより、駆動手段の駆動時に発生する音や振動が外部に漏れたり伝わることが防止し、低騒音・低振動化を可能としている。
【0089】
また本実施例では、回転駆動装置5がアウトリガ52を備えているので、アウトリガ52によって掘削作業時の安定性が向上するだけでなく、回転駆動装置本体50を接地面に直接載置して掘削を行う場合に比べ、回転駆動装置本体50から接地面に伝わる振動が緩和される。これにより、より効果的に低振動、低騒音化を図ることができる。
【0090】
更に上記したように、従来では、掘削する孔とほぼ同じ大きな径のハンマビットを駆動させる必要があったため、必然的にハンマビットを上下動させるために必要なエアの消費量が多く、比較的大きなエアコンプレッサーが必要であった。
【0091】
これに対し、本実施例では、掘削する孔に対して径小の各ビット41,・・・を駆動させれば良いので、一つのビットを上下動させるためのエアの消費量が小さく、その結果、使用するエアコンプレッサーを小型化できる。よって、エアコンプレッサーの設置面積も小さくて済み、住宅密集地や都市部のオフィス街等といったスペースの限られた場所での施工に好適である。またエアコンプレッサーの小型化により、エアコンプレッサーを駆動させる原動機の小型化も可能になるので、原動機から発生する振動や騒音も低く抑えることができる。
【0092】
なお、本実施例では各ビット41,・・・を合計で六ヶ所設けた掘削ビット部材2を使用しているが、特にその数を限定するものではない。本実施例では、掘削ビット部材2の直径は例えば450〜700mmである。
【0093】
本実施例とは相違して、例えばビットを五箇所設けて掘削ビット部材2を構成した場合(軸心部に一箇所、その周りに四箇所)では、掘削ビット部材2の直径を例えば450mm以下とすることができる。更に、例えばビットを六〜七箇所設けて掘削ビット部材2を構成した場合(軸心部に一箇所、その周りに五箇所または六箇所)では、掘削ビット部材2の直径は例えば700mm以上とすることができる。
【0094】
更に図8は、ビットの数や位置を変えて製造した掘削装置の各種のバリエーションを示しており、ビットの先端から掘削装置を見た状態を概略的に示している。図8では、各ビット47を小さな円で示し、掘削ビット部材2を大きな円で示している。
【0095】
このビット47全体の数や位置についても、実施例1に特に限定するものではなく、図8に示すような様々なバリエーションの掘削装置1b〜1jが考えられる。即ち、図8に示すように、例えば四箇所〜十箇所設けることもできるし、三箇所あるいは十一箇所以上設けることもできる。また中央のビット47を省略しても良く、中央に一箇所、二箇所、あるいは3箇所またはそれ以上設けることもできる。
【0096】
なお、ケリーロッド7の代わりに、エア供給管を有するスクリュー軸を使用することもできる。スクリュー軸を使用すれば、掘削時に発生する粉砕した岩盤や土砂(スライム)をより円滑に地表面へ送り出す(排土する)ことができる。またエアタンク部材3の周面部に排土用の螺旋羽根を設けることもできる。
【0097】
また本実施例では、回転テーブルを備えた回転駆動装置5を用いて掘削作業を行った場合について説明したが、掘削装置1に回転運動を与える手段は特に回転テーブルに限定するものではなく、三点式杭打ち機やリーダー等といった公知の回転駆動手段を採用することができる。
【実施例2】
【0098】
図9は、本発明に係る地中掘削用の掘削装置の第二の実施例を説明するための図であり、エアホースの太さが良く分かるように、エアホースを含む部分を拡大して表した部分拡大断面説明図である。
なお、実施例1で示した作用のうち同様のものは説明を省略する。また、実施例1で説明した箇所については、説明を省略し、主に相異点を説明する。
【0099】
実施例1(図2参照)では、各ピストンケース部材22a,22bにおけるピストンケース本体220a,220bの長さと、収容されているピストン61a,・・・の大きさが互いに異なっており、これによって、各ビット41,・・・は、同時でなく互いに時間をずらして打撃駆動する。
【0100】
これに対し、本実施例に係る掘削装置1a(図9参照)では、各ピストンケース本体220a,220bの長さと、収容されているピストンの大きさを含むその他の条件が同じであって、各ピストンケース部材22a,22bは中央ビット41を有するか、周辺ビット42aを有するかの違い以外は、すべて同じものを使用している。
【0101】
そこで、各ビット41,・・・が同時でなく互いに時間をずらして打撃駆動するようにすべく、本実施例では、各ピストンケース部材22a,22bに接続されているエアホース351,352a,352b,352c・・・の径をそれぞれ変えている。これにより、エア貯留部30から各ピストンケース部材22a,22bに導入されるエアの到達時間にズレを生じさせ、各ビット41,・・・が打撃駆動するタイミングをずらしている。
【0102】
なお、各エアホース351,352a,352b,352c・・・の径だけでなく、その長さも併せて変えることで、各ピストンケース部材22a,22bに導入されるエアの到達時間にズレが生じるようにしても良い。
その他の作用及び効果は、実施例1と同じか大体において同じであるため、説明を省略する。
【0103】
なお、本明細書で使用している用語と表現はあくまで説明上のものであって、限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。また、本発明は図示の実施例に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【0104】
更に、特許請求の範囲には、請求項記載の内容の理解を助けるため、図面において使用した符号を括弧を用いて記載しているが、特許請求の範囲を図面記載のものに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】実施例1に係る掘削装置を先端側から見た斜視説明図。
【図2】図1に示す掘削装置の縦断面説明図。
【図3】図1に示す掘削装置の分解斜視説明図。
【図4】掘削ビット部材に収容されているピストンケース部材の一つを縦断面して内部構造を表した側面視説明図。
【図5】図5(a)は図4(a)で示した同じ縦断面説明図、図5(b)は掘削ビット部材に収容されている他のピストンケース部材の縦断面説明図。
【図6】図2に示す掘削装置のエアタンク部材内に配置される流体案内部材を示す斜視説明図。
【図7】掘削装置と回転駆動装置で主に構成される回転式掘削機を示す側面視説明図。
【図8】ビットの数や位置を変えて製造した掘削装置の各種のバリエーションを示す概略説明図。
【図9】本発明に係る地中掘削用の掘削装置の第二の実施例を説明するための部分拡大断面説明図。
【符号の説明】
【0106】
1,1a 掘削装置
2 掘削ビット部材
3 エアタンク部材
3a,3d,3f 区画孔
5 回転駆動装置
6 回転式掘削機
7 ケリーロッド
8 エア案内部材
21 接続体
22a,22b ピストンケース部材
23 ピストンケース取付体
24 ドライブチャック
25 チャックガイド
26 フラットバー
30 エア貯留部
31 ボルト
32 ナット
33 連結体
34 連結ジョイント
36 径小部分
41〜42e,47 ビット
50 回転駆動装置本体
51 ドライブブッシュ
52 アウトリガ
61,61b ピストン
62 シリンダー
63 チェックバルブ
64 エアディストリビータ
65 バルブスプリング
66 フートバルブ
71 支持軸
72 供給管
73 ワイヤ
81 受部
82 支持体
211 孔
220a,220b ピストンケース本体
222 差込部
230 砂
231 筒状本体
232 ピストンケースケーシング
233 先部カバー体
234 基部カバー体
235,236 挿通孔
241 孔
242 回り止め部
251 ボルト
252 ナット
253 凹部
254 凹部
255 取付孔
256 凹部
300 区画体
304 内壁面
331 連結孔
340 吹き出し孔
351,352a,352b,352c エアホース
361 フラットバー
411,421 ヘッド部
412 ボタンチップ
421 ヘッド部
600 仮設足場
821 取入孔
823 基端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削装置本体(2)よりも外径が小さく、掘削側へ進退する複数のビット(42a,42b,42c,42d,42e)と、
ビット(42a,42b,42c,42d,42e)の数に対応して掘削装置本体(2)内に複数収容されており、作動流体のエネルギーによって各ビット(42a,42b,42c,42d,42e)に打撃力を与えるピストン(61)を内蔵するピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)と、
各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)に送られる作動流体を貯留する流体貯留部(30)と、
上記ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)の数に対応して複数設けてあり、上記流体貯留部(30)から各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)に送られる作動流体が通る作動流体経路(351,352,352,352,352,352)と、
を有しており、
各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)は、ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)にそれぞれ設けてある各ビット(41,42a,42b,42c,42d,42e)が互いに時間をずらしながら打撃駆動するようにすべく、ビット(41,42a,42b,42c,42d,42e)に打撃力を与えるために往復運動するピストン(61)の移動距離、ピストン(61)の大きさ、ピストン(61)の重さからなる群から選ばれた少なくとも一つが各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)毎に異なるように設定されている、
地中掘削用の掘削装置。
【請求項2】
掘削装置本体(2)よりも外径が小さく、掘削側へ進退する複数のビット(42a,42b,42c,42d,42e)と、
ビット(42a,42b,42c,42d,42e)の数に対応して掘削装置本体(2)内に複数収容されており、作動流体のエネルギーによって各ビット(42a,42b,42c,42d,42e)に打撃力を与えるピストン(61)を内蔵するピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)と、
各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)に送られる作動流体を貯留する流体貯留部(30)と、
上記ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)の数に対応して複数設けてあり、上記流体貯留部(30)から各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)に送られる作動流体が通る作動流体経路(351,352,352,352,352,352)と、
を有しており、
各作動流体経路(351,352a,352b,352c・・・)の作動流体が通る内径は、各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)にそれぞれ設けてあるビット(41,42a,42b,42c,42d,42e)が互いに時間をずらしながら打撃駆動するようにすべく、各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)毎に異なるように設定されている、
地中掘削用の掘削装置。
【請求項3】
流体貯留部(30)には、流体貯留部(30)に供給された作動流体を受けて流通口(3a,3b,3c,3d,3e)に案内する作動流体案内部材(8)が設けてある、
請求項1または2記載の地中掘削用の掘削装置。
【請求項4】
掘削装置本体(2)には、各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b,22b)の周りを囲むようにして防振材または/及び防音材(230)が設けてあることを特徴とする、
請求項1ないし3のいずれかに記載の地中掘削用の掘削装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の掘削装置(1)(1a)と、該掘削装置(1)(1a)に回転運動を与えることができる回転駆動装置(5)とを備えた、
回転式掘削機。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の掘削装置(1)(1a)を使用した地中掘削工法であって、
掘削装置(1)(1a)に回転運動を与えながら地中掘削を行うことを特徴とする、
地中掘削工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−138474(P2008−138474A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327639(P2006−327639)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【特許番号】特許第4076565号(P4076565)
【特許公報発行日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(505046282)
【Fターム(参考)】