説明

地中構造物の浮き上がり防止工法

【課題】道路の占有面積が小さく、かつ工事費の大幅な低減ができる地中構造物の浮き上がり防止工法を提供することである。
【解決手段】地中構造物の浮き上がり防止工法は、地中構造物6の底部下側における地盤9に薬液を注入して改良地盤を形成することを特徴とし、砂地盤9への薬液の注入は、地中構造物6の底部8に内部から削孔した注入孔10に逆止弁付き注入管11を設置して行うことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地中構造物の浮き上がり防止工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震災害時にマンホ−ルやボックスカルバートなどの地中構造物が浮き上がる現象が多く見受けられる。この原因は地中構造物の周辺地盤の液状化によるものである。この地中構造物を地中に設置する場合は、図3に示すように、原地盤16を所定の深さまで掘削した後に、該掘削底部17に砕石18などで基盤層19を構築し、この上に地中構造物20を設置する。そして、この地中構造物20と原地盤16との隙間に砂で埋め戻しを行っているが、この埋め戻した緩い砂地盤21が液状化の要因になっている。従来、この液状化対策としては、砂地盤と液状化しない土砂との置換、砂地盤の液状化防止工法の実施、地中構造物自体の補強などの方法が採られている。また、その他の地中構造物の浮き上がり防止工法としては、例えば特開2002−227185号公報の発明が開示されている。
【特許文献1】特開平2002−227185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の液状化対策における砂地盤と液状化しない土砂との置換は、道路を大きく開削する必要があるために交通量の多い道路では適用が困難である。また砂地盤の液状化防止工法の実施は、施工時における道路の占有面積が比較的小さいものの、工事費における薬液費の割合が非常に高いため、工事費が嵩むという問題があった。
【0004】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、道路の占有面積が小さく、かつ工事費の大幅な低減ができる地中構造物の浮き上がり防止工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するための地中構造物の浮き上がり防止工法は、地中構造物の底部下側における地盤に薬液を注入して改良地盤を形成することを特徴とする。また薬液の注入は、地中構造物の底部に内部から削孔した注入孔に逆止弁付き注入管を設置して行うことを含む。また地中構造物はマンホールおよびボックスカルバートであることを含むものである。
【発明の効果】
【0006】
地中構造物の底部下側における地盤にのみ薬液を注入して改良地盤を形成するため、道路の占有面積を小さくすることができるとともに、薬液の注入量も少なくなるので、工事費を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の地中構造物の浮き上がり防止工法(以下、浮き上がり防止工法という)の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0008】
ここにおいて地中構造物はマンホールやボックスカルバートである。これらの地中構造物の周辺の埋戻し地盤が液状化したときに地中構造物に作用する浮力は、地盤が液状化することによる泥水圧である。この液状化時に地中構造物の側面に作用する泥水圧は釣り合っているため、周辺地盤の液状化は地中構造物の浮き上がりに影響を及ぼさない。よって地中構造物の浮き上がりに影響する力は、地中構造物の底部下側の埋戻し砂(基礎捨石層)の液状化で発生する泥水圧による浮力である。そこで、地中構造物の底部下側のごく薄い液状下層に限定して地盤改良を行うものである。
【0009】
図1は浮き上がり防止工法を示すものであり、原地盤1が所定の深さまで掘削された掘削底部2に砕石3と目詰め砂4とによる基盤層5が構築され、この上に地中構造物であるマンホール6が設置され、このマンホール6の周囲に埋め戻し砂地盤7があるものが対象になり、この埋戻し砂地盤7の水位は高く液状化しやすい地盤になっている。
【0010】
まずマンホール6の底部8に内側から基盤層5まで貫通する注入孔10を削孔する。この注入孔10の削孔時にはマンホール内に地下水が浸入したり、あるいは注入した薬液が浸入するため、注入孔10に逆止弁付き注入管11を挿入してマンホール内へのこれらの浸入を防止する。
【0011】
次に、この注入管11に地上の薬液プラント12からの注入ホース13を接続し、ポンプにより活性シリカなどの溶液型の薬液をマンホール6の底部下側の地盤9に注入する。この薬液の注入により基盤層5における目詰め砂4が硬化して必要な強度を備えた地盤改良が行われる。この地盤改良は、マンホール6を支持する底部下側の地盤9のみを行うものであり、この地盤9のみの改良であっても液状化による浮き上がりを防ぐことができる。
【0012】
そして、このような薬液の注入が完了した後に、図2に示すように、注入ホース13および逆止弁付き注入管11を撤去し、注入孔10をモルタル15などで塞ぐと、改良地盤の上にマンホール6が設置された状態になる。この方法は周辺道路14の占有面積も小さく、しかもマンホール6の底部下側の地盤9のみを対象としているため、簡単かつ経済的な改良を行うことができる。特に、既に地中に埋設されたマンホールやボックスカルバートの底部下側の地盤9を簡単に改良することができるので、大地震によりマンホール6周辺の埋戻し砂地盤7が液状化したとしても浮き上がりを防ぐことができるようになる。
【0013】
なお、上記の実施の形態においてはマンホール6を対象にして説明したが、ボックスカルバートやその他の地中構造物についても同じ方法で行うものとする。
【0014】
また上記の実施の形態においては地中構造物であるマンホールの内側から底部下側の地盤に薬液を注入したが、この方法に限定されるものではなく、マンホールの内側を利用せずに、マンホールの底部下側の地盤に薬液を直接注入することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】浮き上がり防止工法を示し、(1)はマンホールの底部に逆止弁付き注入管をセットした断面図、(2)は同平面図である。
【図2】底部下側の地盤が改良されたマンホールの断面図である。
【図3】従来のマンホールの断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1、16 原地盤
2、17 掘削底部
3、18 砕石
4 目詰め石
5、19 基盤層
6 マンホール
7、21 埋戻し砂地盤
8 底部
9 底部下側の地盤
10 注入孔
11 逆止弁付き注入管
12 薬液プラント
13 注入ホース
14 周辺道路
15 モルタル
20 地中構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中構造物の底部下側における地盤に薬液を注入して改良地盤を形成することを特徴とする地中構造物の浮き上がり防止工法。
【請求項2】
薬液の注入は、地中構造物の底部に内部から削孔した注入孔に逆止弁付き注入管を設置して行うことを特徴とする請求項1に記載の地中構造物の浮き上がり防止工法。
【請求項3】
地中構造物はマンホールおよびボックスカルバートであることを特徴とする請求項1または2に記載の地中構造物の浮き上がり防止工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−202219(P2008−202219A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36028(P2007−36028)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(397028016)株式会社日水コン (18)
【Fターム(参考)】