説明

地中蓄熱式暖冷房装置

【課題】低コストでハウス内の根域付近の土壌温度を管理することができる地中蓄熱式暖冷房装置を提供する。
【解決手段】ハウス内の地中の根域付近とそれより深い位置にパイプを敷設し、ヒートポンプ装置により、ハウス内の熱を両パイプに送り込める構成とする。動作モード1により、根域付近とそれより深い蓄熱層の両方に熱が供給され、所定の上限温度に達した場合、動作モード2に切り替え、蓄熱層のみに熱を蓄熱する。根域付近の温度の過上昇を防ぎ、植物の生育適温を維持できるとともに、十分熱を蓄えることができる。そして、ハウス内の温度が所定の下限温度を下回った場合は、動作モード3により、ヒートポンプ装置50を動作モード1又は2のサイクルと逆サイクル運転させ、蓄熱層に蓄えた熱を利用して、ハウス内に空気を加温する。さらに、根域付近の温度が低下した場合は、動作モード4により、蓄熱層に蓄えた熱により根域付近を加温する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウス内の地中に蓄熱し、地中温度及び地上温度を作物の生育促進に適した温度に管理する地中蓄熱式暖冷房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用ハウス(以下、単に「ハウス」と称する)内の作物(例えば菊)の生育促進のため、作物の根域付近を適温に維持する必要があることから、ハウスの地中にパイプを埋設し、そこに温水のような熱媒体を通すことで、作物が栽培されている土壌を暖房する地中熱交換式の温度管理が従来より行われている。
【0003】
例えば、特許文献1は、石油又はガスを熱源とするボイラーにより温水を作り、その温水をハウス内の土壌に埋設されたパイプに通すことで、地中を温める。
【0004】
また、特許文献2は、耕作用地中より深い泥水状の蓄熱地中にパイプを布設し、集熱器で温められた温水を蓄熱地中に送ることで蓄熱する。また、温水に代わって、暖気を蓄熱地中に送ることで蓄熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−244278号公報
【特許文献2】特開平5−260857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1については、温水を生成するのに必要な燃料費が高く、大きな経済的負担となる。また、特許文献2については、泥水状の蓄熱地中に長期間にわたって熱を蓄える構造であって、作物の根域付近の土壌を適温に維持する温度管理を行うことができない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、低コストでハウス内の根域付近の土壌温度を加温できる地中蓄熱式暖冷房装置を提供することにある。
【0008】
本発明の目的は、効率よく且つ低ランニングコストで、地中に熱を蓄熱し、また、ハウス内の根域付近の土壌温度を加温できる地中蓄熱式暖冷房装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の地中蓄熱式暖冷房装置の構成は、地中で水平方向に延びる根域加温用パイプ(3)と、根域加温用パイプより深い地中で水平方向に延びる蓄熱用パイプ(4)と、地上の第一の開口部から延びて途中の分岐位置で分岐し根域加温用パイプと蓄熱用パイプそれぞれの吸入側端部と連通する第一のパイプ(7)と、地上の第二の開口部から延びて途中の分岐位置で分岐し根域加温用パイプと蓄熱用パイプそれぞれの排出側と連通する第二のパイプ(8)と、第一のパイプの第一の開口部から空気を根域加温用パイプに送り、第二のパイプの第二の開口部から排出させる第一のファン(9)と、第一のパイプの第一の開口部から空気を蓄熱用パイプに送り、第二のパイプの第二の開口部から排出させる第二のファン(10)と、地上の温度を検出する第一の温度センサ(21)と、根域加温用パイプ付近の地中温度を検出する第二の温度センサ(25)と、第一、第二の温度センサの検出温度に基づいて、第一のファン及び第二のファンの回転制御を行う制御部(30)とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の地中蓄熱式暖冷房装置は、好ましくは、上記構成において、さらに、第一のパイプの第一の開口部を開閉するための第一の切替弁(13)と、第二のパイプの第二の開口部を開閉するための第二の切替弁(14)とを備え、制御部(30)は、第二の温度センサが所定の下限地中温度未満を検出すると、第一及び第二の切替弁を閉状態にし、第一のファンと第二のファンを互いに回転方向が逆になるように回転させ、根域加温用パイプと蓄熱用パイプ間で空気を循環させることを特徴とする。
【0011】
本発明の地中蓄熱式暖冷房装置の別の構成は、地中で水平方向に延びる根域加温用パイプ(3)と、根域加温用パイプより深い地中で水平方向に延びる蓄熱用パイプ(4)と、地上の第一の開口部から延びて途中の分岐位置で分岐し根域加温用パイプと蓄熱用パイプそれぞれの吸入側端部と連通する第一のパイプ(7)と、地上の第二の開口部から延びて途中の分岐位置で分岐し根域加温用パイプと蓄熱用パイプそれぞれの排出側と連通する第二のパイプ(8)と、第一のパイプの第一の開口部から空気を根域加温用パイプ及び蓄熱用パイプに送り、第二のパイプの第二の開口部から排出させるファン(10)と、根域加温用パイプと第一のパイプとを開閉するための第一の切替弁(15)と、地上の温度を検出する第一の温度センサ(21)と、根域加温用パイプ付近の地中温度を検出する第二の温度センサ(25)と、第一又は第二の温度センサの検出温度に基づいて、第一の切替弁の開閉切替制御を行う制御部(30)とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の地中蓄熱式暖冷房装置の更なる別の構成は、地中で水平方向に延びる根域加温用パイプ(3)と、根域加温用パイプより深い地中で水平方向に延びる蓄熱用パイプ(4)と、根域加温用パイプの両端と接続して地上に延び、根域加温用パイプを含む第一の閉ループを形成する第一のパイプ(5)と、蓄熱用パイプの両端と接続して地上に延び、蓄熱用パイプを含む第二の閉ループを形成する第二のパイプ(6)と、第一の閉ループを循環する液体及び第二の閉ループを循環する液体と地上の空気との間の熱交換を行うヒートポンプ装置(50)と、地上の温度を検出する第一の温度センサ(26)と、根域加温用パイプ付近の地中温度を検出する第二の温度センサ(25)と、第一の温度センサ及び前記第二の温度センサの検出温度に基づいて、ヒートポンプ装置の熱交換を制御する制御部(30)とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の地中蓄熱式暖冷房装置の更なる別の構成は、地上で高設栽培される植物の培地に配設される根域温度調整用パイプ(3)と、地中に埋設される蓄熱用パイプ(4)と、前記根域温度調整用パイプの両端と接続して、前記根域温度調整用パイプを含む第一の閉ループを形成する第一のパイプ(5)と、前記蓄熱用パイプの両端と接続して地上に延び、前記蓄熱用パイプを含む第二の閉ループを形成する第二のパイプ(6)と、前記第一の閉ループを循環する流体及び前記第二の閉ループを循環する流体と地上の空気との間の熱交換を行うヒートポンプ装置(50)と、地上の温度を検出する第一の温度センサ(26)と、前記根域温度調整用パイプ付近の培地内温度を検出する第二の温度センサ(25)と、前記第一の温度センサ及び前記第二の温度センサの検出温度に基づいて、前記ヒートポンプ装置の熱交換を制御する制御部(30)とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ハウス内の暖気を地中の根域付近の層とそれより深い層の2層に送り込む構成とすることで、蓄熱層に熱を蓄え、且つ地中の根域付近及びハウス内の温度をきめ細かく適温に維持することができる。
【0015】
また、熱は地中の土壌自体(パイプの周囲の土)に蓄える構造であり、特別な蓄熱媒体を地中に設ける必要はなく、また太陽光により温められた空気による蓄熱を行うため、加温、蓄熱に必要なエネルギー費用を削減でき、低いランニングコストでの温度管理を可能とする。また、温水などの液体をパイプ内に流通させず、空気を流通させる構成とすることにより、装置構造を簡易化でき且つメンテナンスも容易することができる。
【0016】
また、ヒートポンプ装置を用いて、温水を加熱し地中を循環させることで、高効率且つ低いランニングコストで、地中の根域付近とさらに深い蓄熱層に同時に蓄熱することができる。また、冬季などヒートポンプ装置の効率が落ちる時期又はヒートポンプ装置による加熱が不可能な時期(熱交換器に着霜のおそれがある時期など)においても、蓄熱層に蓄えられた熱を、地中の根域及びハウス内の空気の加温に用いることができ、季節を問わず、常時ハウス内の地上部分及び地中部分の両方の温度を適切に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第1の構成例を示す図である。
【図2】第1の構成例における動作モード1の空気の流れを示す図である。
【図3】第1の構成例における動作モード2の空気の流れを示す図である。
【図4】第1の構成例における動作モード3の空気の流れを示す図である。
【図5】第1の構成例における動作モード4の空気の流れを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第2の構成例を示す図であり、第2の構成例における動作モード1の空気の流れを示す図である。
【図7】第2の構成例における動作モード2、3の空気の流れを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第3の構成例を示す図であり、第3の構成例における動作モード1の空気の流れを示す図である。
【図9】第3の構成例における動作モード2の空気の流れを示す図である。
【図10】第3の構成例における動作モード3の空気の流れを示す図である。
【図11】本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第4の構成例を示す図である。
【図12】ヒートポンプ装置50の第4の構成例におけるヒートポンプ装置50の動作を示す図である(動作モード1−4)。
【図13】ヒートポンプ装置50の第4の構成例におけるヒートポンプ装置50の動作を示す図である(動作モード5−6)。
【図14】本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第5の構成例を示す図である。
【図15】ヒートポンプ装置50の第5の構成例におけるヒートポンプ装置50の動作を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第6の構成例を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第7の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0019】
<第1の構成例>
図1は、本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第1の構成例を示す図である。ハウス1は、一重又は二重のビニールハウス又はガラスハウスなどの植物・作物栽培用の農業用ハウスである。保温用カーテンフィルム2は、ハウス1内を上下に区画し、必要に応じてカーテンフィルム2で覆うことにより、暖気の上昇を抑え、地面付近の保温効果を高めることができる。
【0020】
このハウス1内の地中の地下50cm〜80cm程度に、根域加温用パイプ3を水平に埋設し、さらにこの根域加温用パイプ3より深い地下100cm〜160cm程度に蓄熱用パイプ4を水平に埋設する。根域加温用パイプ3は、作物の根を加温するためのパイプであり、作物の根域付近に敷設される。蓄熱用パイプ4は、土壌に熱を蓄えるためのパイプである。なお、作物の浅根性又は深根性の違いにより、各パイプ3、4の埋設深さは、上述した数値に限らず、適宜調節される。
【0021】
根域加温用パイプ3と蓄熱用パイプ4の両端には、地上に延びるパイプ7、8が連通している。パイプ7、8は、地上の開口部7a、8aから地中方向に延び、途中の分岐位置7d、8dで分岐し、それぞれ根域加温用パイプ3と蓄熱用パイプ4と連通する。パイプ7は吸入用パイプであり、吸入用ファン9、10が通路に設けられており、その地上開口部(吸入口)7aからハウス内1の空気(暖気)を吸入し、それぞれ根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4に空気を送り込む。また、パイプ8は排出用パイプであり、パイプ7の吸入口7aから吸入された空気は、それぞれ根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4を通り、パイプ8の地上開口部(排出口)8aから排出される。なお、吸入用ファン9、10の設置位置は、パイプ7に限らず、パイプ8であってもよく、さらには、地中の根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4であってもよい。
【0022】
なお、吸入口7a及び排出口8a(蓄熱用パイプ4と連通)は、ハウス1内で温められて上昇する空気を吸入するために、ハウス1内の上部、好ましくは、保温用カーテンフィルム2より上方側に設けられる。また、パイプ7、8は、吸入口7a、8aより低い位置で開口する別の開口部7b、8bを備える。別の開口部7b、8bは、保温用カーテンフィルム2より下方側に設けられる。第一の構成例では、別の開口部7b、8bは、パイプ7の根域加温用パイプ3と連通する分岐部分からさらに分岐した端部である。
【0023】
各パイプ7、8の地中側端部(地中パイプ3又は4との連通している箇所から突出している部分)7c、8cは、結露だまりとなっており、パイプ内で結露した水分を地中に排出可能とするために、水分透過可能なフィルタなどを介して開口させておく。
【0024】
さらに、各開口部7a、8a、7b、8bをそれぞれ開閉する弁11、12、13及び14が設けられ、さらに、パイプ7、8のそれぞれ根域加温用パイプ3と連通する分岐部分を開閉する弁15、16が設けられる。弁11、12、13及び14の設置位置は、パイプ7、8における根域加温用パイプ3と蓄熱用パイプ4との分岐位置7d、8dよりそれぞれ開口部7a、8a側である。
【0025】
温度センサが各所に設けられる。具体的には、開口部7a、8a、7b、8b付近及び根域加温用パイプ3が埋設された付近の地中に、それぞれ温度センサ21、22、23、24、25が設置される。
【0026】
制御部30は、コンピュータ装置であり、以下に説明するように、温度センサ21、22、23、24、25からの温度情報に基づいて、ファン9、10及び弁11、12、13、14、15、16の動作を制御する。初期状態として、ファン9、10は停止しており、弁11、12、13、14、15、16も閉状態とする。制御部30は、ハウス内外のいずれに設置されてもよく、有線又は無線により温度センサ、ファン、弁と電気的に接続している。
【0027】
(動作モード1)
動作モード1は、ハウス1内の空気(暖気)を根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4の両方に流すモードであり、図2は、第1の構成例における動作モード1の空気の流れを示す。
【0028】
日中、ハウス1内は太陽光により温められ、ハウス1内の温度は上昇し、暖気はハウス1内の上部に集まる。制御部30は、ハウス1内の上部の吸入口7aの温度センサ23の検知温度が加温に十分な所定温度以上となると(温度センサ25の検知温度は所定上限温度以下)、制御部30はファンと弁を次の状態にする。
【0029】
ファン 9:回転
ファン10:回転
弁11:開
弁12:開
弁13:閉
弁14:閉
弁15:開
弁16:開
これにより、吸入口7aから暖気が根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4に通り、土壌との熱交換により、根域付近の土壌が加温されるともに、蓄熱用パイプ4付近の土壌に熱が蓄積される。熱交換された空気は、排出口8aから排出される。
【0030】
温度センサ21の検知温度と温度センサ22の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、熱交換量が少なくなり、最大蓄熱量に達したものと判断して、ファン9、10の動作を停止する。
【0031】
(動作モード2)
動作モード2は、ハウス1内の空気(暖気)を蓄熱用パイプ4にのみ流すモードであり、図3は、第1の構成例における動作モード2の空気の流れを示す。
【0032】
動作モード1により、暖気を地中に導入することにより、根域付近の地中温度が上昇する。そして、温度センサ25の検知温度が根域付近の所定上限温度を超えると、制御部30は、動作モード1の弁開閉状態に対して、弁15、16を閉じ、ファン9の回転を停止する。すなわち、制御部30は、ファンと弁を次の状態にする。
【0033】
ファン 9:停止
ファン10:回転
弁11:開
弁12:開
弁13:閉
弁14:閉
弁15:閉
弁16:閉
これにより、根域加温用パイプ3への空気流入が停止し、根域付近の加温が止められる。所定上限温度は、栽培している植物・作物によって適宜設定されるが、上限温度を超えると、植物の生育が妨げられることになる。ただし、暖気は、蓄熱用パイプ4には流れているので、蓄熱は継続して行われる。蓄熱用パイプ4付近の地中に蓄積される熱は根域付近の土壌(地中)を加温しない。
【0034】
さらに、温度センサ21の検知温度と温度センサ22の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、熱交換量が少なくなり、最大蓄熱量に達したものと判断して、ファン10の動作も停止する。
【0035】
(動作モード3)
動作モード3は、蓄熱用パイプ4付近に蓄熱された地中の熱をハウス1内に放出するモードであり、図4は、第1の構成例における動作モード3の空気の流れを示す。
【0036】
夜間、ハウス内の気温が低下した場合(ハウス内の気温が所定温度未満まで低下すると)、日中、蓄熱用パイプ4付近に蓄積された熱をハウス内に放出させる。ハウス内の気温を検知する温度センサは、温度センサ21、22、23、24のどれでもよい。制御部30は、温度センサ21、22、23、24の少なくとも一つの検知温度が所定温度未満となると、制御部30は、蓄熱用パイプ4付近に蓄積された熱をハウス内に放出させるために、ファンと弁を次の状態にする。好ましくは、保温用カーテンフィルム2により、ハウス1を上下に仕切ることで、暖気がハウス1内上部に上昇するのを抑え、ハウス1内の地上付近を効率的に加温することができる。空気の吸入口・排出口として、保温用カーテンフィルム2により低い位置の開口部7b、8bが用いられる。
【0037】
ファン 9:停止
ファン10:回転
弁11:閉
弁12:閉
弁13:開
弁14:開
弁15:開
弁16:開
これにより、吸入口7bから吸入される冷気は、蓄熱用パイプ4を通過することで熱交換され、暖気として排出口8bから排出され、ハウス1内に放出される。
【0038】
温度センサ23の検知温度と温度センサ24の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、蓄積された熱量が少なくなったものと判断して、ファン10の動作を停止する。
【0039】
(動作モード4)
動作モード4は、蓄熱用パイプ4付近に蓄熱された地中の熱で根域付近の土壌を加温するモードであり、図5は、第1の構成例における動作モード4の空気の流れを示す。
【0040】
根域付近の土壌の温度が低下した場合(温度センサ25の検知温度が所定温度未満まで低下すると)、蓄熱用パイプ4付近に蓄積された熱により、根域付近の土壌を加温する。そのために、制御部30は、ファンと弁を次の状態にする。
【0041】
ファン 9:逆回転
ファン10:回転
弁11:閉
弁12:閉
弁13:閉
弁14:閉
弁15:開
弁16:開
これにより、根域加温用パイプ3と蓄熱用パイプ4による閉ループが形成され、その閉ループ内で空気を循環させることで、蓄熱用パイプ4を通過して温められた空気を根域加温用パイプ3に送り込み、根域付近の土壌を加温することができる。
【0042】
温度センサ25の検知温度が根域付近の所定上限温度を超えると、制御部30は、ファン9、10の回転を停止する。これにより、根域付近の加温が止められる。
【0043】
このように、本実施の形態例では、ハウス内の地中の根域付近とそれより深い位置にパイプを敷設し、ハウス内の暖気を両パイプに送り込める構成とする。動作モード1により、根域付近とそれより深い蓄熱層の両方に暖気が送られ、所定の上限温度に達したら、動作モード2に切り替え、蓄熱層のみに暖気を送り込む。根域付近の温度の過上昇を防ぎ、植物の生育適温を維持できるとともに、十分熱を蓄えることができる。そして、ハウス内の温度が所定の下限温度を下回った場合は、動作モード3により、蓄熱層に蓄えた熱をハウス内に放出し、根域付近の温度が低下した場合は、動作モード4により、蓄熱層に蓄えた熱により根域付近を加温する。このように、一日における気温変化に応じて、地中の根域付近及びハウス内の温度をきめ細かく適温に維持することができる。
【0044】
<第2の構成例>
図6は、本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第2の構成例を示す図である。第2の構成例は、第1の構成例と比較して、弁11、12、13、14、15、16が設けられず、ファン9、10で空気の流れを制御する。弁による通路の遮断を行わずとも、ファンによる強制的な吸入・排出により、実質的に空気の流れを制御することができる。第1の構成例よりも、装置が簡略化され、メンテナンスが容易となり、コスト削減に寄与する。
【0045】
吸入側のパイプ7の開口部は開口部7aのみとなる。さらに、排出側のパイプ8の開口部は8aのみである。
【0046】
第2の構成例では、開口部7a、8aは、保温用カーテンフィルム2より下部に設けられるが、太陽光によりハウス1内全体が十分に温まっている場合は、開口部7aから暖気を吸入可能である。もちろん、パイプ7、8をハウス1上部まで延ばし、開口部7a、8aが保温用カーテンフィルム2より上部に設けられるようにしてもよい。
【0047】
第2の構成例では、制御部30は、上述した動作モード1、動作モード2及び動作モード3の制御を実行する。
【0048】
(動作モード1)
図6は、第2の構成例における動作モード1の空気の流れを示す。具体的には、制御部30は、ハウス1内の上部の吸入口7aの温度センサ21の検知温度が加温に十分な所定温度以上となると(温度センサ25の検知温度は所定上限温度以下)、ファン9、10を以下の状態にする。
【0049】
ファン 9:回転
ファン10:回転
このように、ファン9、10の両方を回転させることで、吸入口7aからハウス1内の空気(暖気)を吸入し、根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4の両方に送り込み、地中で熱交換させ、排出口8aから排出する。
【0050】
温度センサ21の検知温度と温度センサ22の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、熱交換量が少なくなり、最大蓄熱量に達したものと判断して、ファン9、10の動作を停止する。
【0051】
(動作モード2)
動作モード1の状態において、温度センサ25の検知温度が所定上限温度を超えると、制御部30は、ファン9の回転を停止させる。すなわち、制御部30は、ファンを以下の状態にする。
【0052】
ファン 9:停止
ファン10:回転
これにより、ハウス1内の空気(暖気)を蓄熱用パイプ4のみに流す。図7は、第2の構成例における動作モード2の空気の流れを示す。
【0053】
温度センサ21の検知温度と温度センサ22の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、制御部30はファン10の動作を停止する。
【0054】
(動作モード3)
夜間、ハウス内の気温が低下した場合(ハウス内の気温が所定温度未満まで低下すると)、日中、蓄熱用パイプ4付近に蓄積された熱をハウス内に放出させる。具体的には、制御部30は、温度センサ21、22の少なくとも一つの検知温度が所定温度未満となると、制御部30は、蓄熱用パイプ4付近に蓄積された熱をハウス内に放出させるために、ファンと弁を次の状態にする。
【0055】
ファン 9:停止
ファン10:回転
これは、図7の動作モード2による空気の流れと同じであり、温度条件のみが異なる。動作モード3により、吸入口7aから吸入される冷気は、蓄熱用パイプ4を通過することで熱交換され、暖気として排出口8aから排出され、ハウス1内に放出される。好ましくは、保温用カーテンフィルム2により、ハウス1を上下に仕切ることで、暖気がハウス1内上部に上昇するのを抑え、ハウス1内の地上付近を効率的に加温することができる。
【0056】
温度センサ21の検知温度と温度センサ22の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、蓄積された熱量が少なくなったものと判断して、ファン10の動作を停止する。
【0057】
<第3の構成例>
図8は、本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第3の構成例を示す図である。第3の構成例は、第1の構成例と比較して、ファン9、10を共通化して一つのファン10により、根域加温用パイプ3と蓄熱用パイプ4の両方に暖気を送り込める位置、すなわち、パイプ7の分岐点7dより上部のパイプ7にファン10設け、さらに、排出側において、弁12、16を省略した構成である。パイプ7は、異なる高さの地上位置に2つの開口部7a、7bを備え、パイプ8も、異なる高さの地上位置に2つの開口部8a、8bを備える。
【0058】
第3の構成例では、制御部30は、上述した動作モード1、動作モード2及び動作モード3の制御を実行する。
【0059】
(動作モード1)
制御部30は、ファン10を回転させることで、ハウス1内の空気(暖気)を根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4の両方に流す。図8は、第3の構成例における動作モード1の空気の流れを示す。具体的には、制御部30は、ハウス1内の上部の吸入口7aの温度センサ23の検知温度が加温に十分な所定温度以上となると(温度センサ25の検知温度は所定上限温度以下)、制御部30はファンと弁を次の状態にする。暖気をより効率的に吸入するための空気の吸入口・排出口として、保温用カーテンフィルム2により高い位置の開口部7a、8aが用いられる。
【0060】
ファン10:回転
弁11:開
弁12:開
弁13:閉
弁15:開
これにより、吸入口7aから暖気が根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4に通り、土壌との熱交換により、根域付近の土壌が加温されるともに、蓄熱用パイプ4付近の土壌に熱が蓄積される。熱交換された空気は、排出口8aから排出される。
【0061】
また、制御部30は、温度センサ21の検知温度と温度センサ22の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、ファン10の動作を停止する。
【0062】
(動作モード2)
動作モード1の状態において、温度センサ25の検知温度が所定上限温度を超えると、制御部30は弁15を閉じる。すなわち、制御部30はファンと弁を次の状態にする。
【0063】
ファン10:回転
弁11:開
弁12:開
弁13:閉
弁15:閉
これにより、ハウス1内の空気(暖気)を蓄熱用パイプ4のみに流す。図9は、第3の構成例における動作モード2の空気の流れを示す。
【0064】
温度センサ21の検知温度と温度センサ22の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、制御部30はファン10の動作を停止する。
【0065】
(動作モード3)
図10は、第3の構成例における動作モード3の空気の流れを示す。制御部30は、温度センサ21、22、23、24の少なくとも一つの検知温度が所定温度未満となると、制御部30は、蓄熱用パイプ4付近に蓄積された熱をハウス内に放出させるために、ファンと弁を次の状態にする。好ましくは、保温用カーテンフィルム2により、ハウス1を上下に仕切ることで、暖気がハウス1内上部に上昇するのを抑え、ハウス1内の地上付近を効率的に加温することができる。地上付近を効率的に温めるための空気の吸入口・排出口として、保温用カーテンフィルム2により低い位置の開口部7b、8bが用いられる。
【0066】
ファン10:回転
弁11:閉
弁12:閉
弁13:開
弁15:閉
これにより、吸入口7bから吸入される冷気は、蓄熱用パイプ4を通過することで熱交換され、暖気として排出口8bから排出され、ハウス1内に放出される。
【0067】
温度センサ21の検知温度と温度センサ22の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、蓄積された熱量が少なくなったものと判断して、ファン10の動作を停止する。
【0068】
上述した各構成例における温度管理制御は、好ましくは冬期における地中の根域付近の加温、ハウス内の地上部分の加温として利用されるが、夏期におけるハウス内の冷却及び土壌の冷却にも利用可能である。すなわち、ハウス内の暖気を地中で熱交換させ、冷気を排出することで、ハウス内の気温を低下させることができる。また、夜間などハウス内の温度が比較的低くなったとき、根域付近の土壌温度が適温より高いままの場合、ハウス内の空気を根域加温用パイプ3に流すことにより、根域付近の土壌温度を低下させることができる。ハウス外の冷気を導入する構成が付加されてもよい。
【0069】
蓄熱用パイプ4は、一層に限らず、深さの異なる複数の層にわたって敷設されてもよい(垂直方向の並列敷設)。もちろん、同一層において、並列に敷設することもできる(水平方向の並列敷設)。根域加温用パイプ3も、ハウス内の作物作付け面下に並列に敷設可能である(水平方向の並列敷設)。
【0070】
また、暗渠用パイプ(図示せず)が地中に敷設されている場合、蓄熱用パイプ4は、暗渠用パイプより下層に敷設されることが好ましい。暗渠用パイプの下層側は、土壌内の水分がその上層側より多いため、熱容量が大きく、暗渠用パイプの上層側と比較してより多くの熱を蓄えることができるからである。
【0071】
<第4の構成例>
図11は、本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第4の構成例を示す図である。第4の構成例は、上述の第1乃至第3の構成例と比較して、空気に代わって水などの液体を根域加温パイプ3及び蓄熱用パイプ4を通す構成であり、根域加温パイプ3及び蓄熱用パイプ4はそれぞれ閉ループを形成する。さらに、循環する液体はヒートポンプにより加熱される。液体は好ましくは水であり、ヒートポンプにより加熱された温水が各閉ループを循環する。以下、温水を例に説明する。ただし、根域加温パイプ3及び蓄熱用パイプ4を流れる流体として、空気などの気体の使用を排除するものではなく、根域加温パイプ3及び蓄熱用パイプ4には、気体及び液体を含む流体を流すことができる。
【0072】
パイプ5は、根域加温用パイプ3の両端に接続して地上に延び、根域加温用パイプ3とともに閉ループを形成する。地上の温水タンク17はパイプ5と接続し、根域加温用パイプ3の閉ループの一部を形成する。パイプ6は、蓄熱用パイプ4の両端に接続して地上に延び、蓄熱用パイプ4とともに閉ループを形成する。地上の温水タンク18はパイプ6と接続し、蓄熱用パイプ4の閉ループの一部を形成する。また、ポンプ19及びポンプ20がそれぞれパイプ5及びパイプ6に設けられ、各閉ループ内の温水を循環させる。
【0073】
パイプ5及びパイプ6は、それぞれ温水タンク17及び18の両側で接続管5a、5bによりそれぞれ連通しており、接続管5a、5bはそれぞれ弁41、42により開閉可能となっている。また、パイプ5には、接続管5aの接続位置と温水タンク17の一端側との間に弁43、接続管5bの接続位置と温水タンク17の他端側との間に弁44が設けられ、パイプ6には、接続管5aの接続位置と温水タンク18の一端側との間に弁44、接続管5bの接続位置と温水タンク18の他端側との間に弁46が設けられる。
【0074】
ヒートポンプ装置50は、ハウス1内の空気と熱交換を行う熱交換器51A、温水タンク17と熱交換を行う熱交換器51B、温水タンク18と熱交換を行う熱交換器51Cを有し、温水タンク17内の水と熱交換器51B間の熱の授受は循環路61を流れる液体(例えば水)により行われ、温水タンク18内の水と熱交換器51C間の熱の授受は循環路62を流れる冷媒(例えば水)により行われる。ヒートポンプ装置50の動作については、後述するが、ヒートポンプの基本原理については公知であるので、その詳細な説明は省略する。ヒートポンプは、電気ヒータと比較して、同じ消費電力で3〜6倍の熱エネルギーを暖房に利用することができ、高効率且つ低ランニングコストの暖冷房装置として利用可能である。
【0075】
温度センサが各所に設けられる。具体的には、ハウス1内のカーテンフィルム2より上の位置に温度センサ26が設置され、カーテンフィルム2よりも下の位置に温度センサ27が設置され、根域加温用パイプ3が埋設された付近の地中に温度センサ25が設置される。さらに、温水タンク17及び温水タンク8内の水温をそれぞれ検出する温度センサ28、29が設けられる。
【0076】
制御部30は、コンピュータ装置であり、以下に説明するように、温度センサ25、26、27、28、29からの温度情報に基づいて、ポンプ19、20及び弁41、42、43、44、45、46、及びヒートポンプ装置50の動作を制御する。初期状態として、ポンプ19、20は停止しており、弁41、42、43、44、45、46も閉状態とする。制御部30は、ハウス内外のいずれに設置されてもよく、有線又は無線により温度センサ、ファン、弁と電気的に接続している。また、制御部30は、ヒートポンプ装置50に内蔵される制御装置であってもよい。
【0077】
(動作モード1)
動作モード1は、根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4の両方に流れる温水を加熱し循環させるモードである。
【0078】
図12及び13は、第4の構成例におけるヒートポンプ装置50の動作を示す図であり、ヒートポンプ装置50は、ハウス1内の空気と熱交換を行う熱交換器51A、根域加温用パイプ3を流れる温水と熱交換を行う51B、蓄熱用パイプ4を流れる温水と熱交換を行う51C、膨張弁52、圧縮器53、熱交換器51Bの接続位置を切り替える弁54、55、56及び57を備える。
【0079】
動作モード1では、ヒートポンプ装置50の熱交換器51Aを蒸発器として動作させ、熱交換器51B及び51Cを凝縮器として動作させることで、ハウス1内の大気熱により、根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4内の温水を加熱する。図12(a)は動作モード1におけるヒートポンプ装置50の動作状態、すなわち、弁の開閉状態とヒートポンプサイクル内の冷媒の流れる方向を示す。
【0080】
動作モード1では、熱交換器51Aによりハウス1内の大気熱が取り込まれ、ハウス1内の気温が低下するため、動作モード1は、ある程度の気温低下が許容される時間帯、例えば、ハウス1内の空気が太陽光により温められる日中時間帯に利用されることが想定される。制御部30は、ハウス1内上部の温度センサ26の検知温度が加温に十分な所定温度以上となると、制御部30は、ヒートポンプ装置50を図12(a)の状態で動作させ、ポンプと弁を次の状態にする。また、手動による動作開始操作により、動作モード1が開始されてもよい。
【0081】
ポンプ19:回転(正回転)
ポンプ20:回転(正回転)
弁41:閉
弁42:閉
弁43:開
弁44:開
弁45:開
弁46:開
ヒートポンプ装置50の動作により、熱交換器51Aで取り込まれた熱は、熱交換器51B及び51Cで放出され、それぞれ循環路61、62を流れる液体を加熱し、さらに、温水タンク17、18内の水と熱交換を行い、温水タンク17、18内の温水が加熱される。熱交換器51Aから放出される冷風をハウス1内の上部に導くためのダクト(図示せず)が熱交換器51Aに設けられてもよい。
【0082】
これにより、温水タンク17、18を流れる温水は、それぞれパイプ5及びパイプ6を通って根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4を流れ、土壌との熱交換により、根域付近の土壌が加温されるともに、蓄熱用パイプ4付近の土壌に熱が蓄積される。地中で熱交換された温水は、温水タンク17、18に戻り、再度加熱され、循環する。
【0083】
なお、温水タンク17の温度には上限が設けられることが好ましい。根域付近の地中温度が適温を超えると、根がやける状態となり、植物の生長が阻害されるおそれがある。根域付近を流れる根域加温用パイプ3を流れる温水の温度が比較的高いと、根域加温用パイプ3を流れる温水温度が過度に上昇し、根域加温用パイプ3に近い部分が局所的に適温を超え、根域加温用パイプ3から少し離れた根域部分の地中温度は適温にはほど遠いほど冷たい状態となり、根域全体を十分に加温できない状態が生じる。そのため、適温を超えない比較的低温(例えば40℃程度)の温水を根域加温用パイプ3に流し、根域付近全体をまんべんなく加温できるようにする。そのためには、温水タンク17内の水温(温度センサ28の検知温度)又は根域加温用パイプ3付近の地中温度(温度センサ25の検知温度)が所定の上限温度(温度センサによって上限温度は異なる)を超えると、熱交換器51Bをヒートポンプサイクルから遮断するように、ヒートポンプ装置50の弁54−57の開閉状態を制御する。具体的には、熱交換器51Bをヒートポンプサイクルから遮断する後述する動作モード2におけるヒートポンプ装置50の動作状態であって、図12(b)に示される。動作モード1で運転している間に、間欠的に動作モード2に切り替えることで、温水タンク17の水温が設定温度を超えるのを防ぎ、根やけを防止する。
【0084】
動作モード1の開始により、熱交換器51Aからは冷風が排出され、ハウス1内の気温が低下する。ハウス1内の気温(例えば温度センサ27の検知温度)があらかじめ設定された下限地上温度まで低下した場合は、ヒートポンプ装置50の動作を停止させるとともに、ポンプ19、20の回転を停止する。
【0085】
(動作モード2)
動作モード2は、蓄熱用パイプ4のみに流れる温水を加熱し循環させるモードであり、図12(b)は、第4の構成例における動作モード2のヒートポンプ装置50の動作状態を示す。
【0086】
動作モード1により、根域加温用パイプ3に加熱された温水を循環させることにより、根域付近の地中温度が上昇する。上記動作モード1の項目で述べたように、根域付近の地中温度が適温を超えると、根がやける状態となり、植物の生長が阻害されるおそれがある。そこで、動作モード2では、温度センサ25又は温度センサ28の検知温度が所定上限温度(温度センサによって上限温度は異なる)を超えると、根域の温度上昇を抑えるために、熱交換器51Bからの放熱を停止させ、温水タンク17の水温の加熱を中断する。ポンプ19の運転は継続し、根域加温用パイプ3内の温水循環は続行するが、上限温度を超えない比較的低温の温水が循環するため、根域は根やけが生じる温度にまで上昇しない。
【0087】
図12(b)は動作モード2におけるヒートポンプ装置50の動作状態、すなわち、弁54−57の開閉状態とヒートポンプサイクル内の冷媒の流れる方向を示す。図12(b)では、熱交換器51Aを蒸発器として動作させ、熱交換器51Cを凝縮器として動作させ、熱交換器51Bへの冷媒循環を遮断し、熱交換器51Aで取り込まれた熱は、熱交換器51Cのみから放出される。
【0088】
制御部30は、根域付近の地中温度を測定する温度センサ25の検知温度又は温水タンク17の水温を測定する温度センサ28が所定上限地中温度を超えると、ヒートポンプ装置50を図12(b)の状態で動作させる。ポンプと弁は次の状態であり、動作モード1と同一動作である。また、手動による動作開始操作により、動作モード2に切り替えられてもよい。
【0089】
ポンプ19:回転
ポンプ20:回転
弁41:閉
弁42:閉
弁43:開
弁44:開
弁45:開
弁46:開
ポンプと弁の状態は動作モード1と同様であり、ヒートポンプ装置50における熱交換器51Bのヒートポンプサイクルからの遮断の有無のみで、動作モード1と2は切り替えられる。所定上限温度は、栽培している植物・作物によって適宜設定される。
【0090】
動作モード2による運転により、温水タンク17の水温又は根域加温用パイプ3付近の地中温度が所定の下限温度を下回った場合は、動作モード1に戻る。
【0091】
また、動作モード2での運転により、ハウス1内の気温が低下し、あらかじめ設定された下限地上温度まで低下した場合は、ヒートポンプ装置50の動作を停止させるとともに、ポンプ19、20の回転を停止する。
【0092】
なお、動作モード2では、熱交換器50Aより冷風が放出されることから、夏季などハウス1内の気温が植物・作物の成育に障害は起きる程度に過度に上昇した場合において、ハウス内の空気を冷却する冷房運転としても利用できる。
【0093】
(動作モード3)
動作モード3は、蓄熱用パイプ4付近に蓄熱された地中の熱をハウス1内に放出するモードである。夜間、ハウス内の気温が低下した場合(ハウス内の気温が所定温度未満まで低下すると)、日中、蓄熱用パイプ4付近に蓄積された熱をハウス内に放出させる。ハウス内の気温を検知する温度センサは、ハウス1上部に設置された温度センサ26又はハウス1下部に設置された温度センサ27のどちらでもよい。
【0094】
図12(c)は、第4の構成例における動作モード3のヒートポンプ装置50の動作状態を示す。図12(c)に示す弁54−57の開閉状態及び冷媒の循環方向により、熱交換器51Aを凝縮器として動作させ、熱交換器51Cを蒸発器として動作させる。熱交換器51Bへの冷媒循環を遮断する。これにより、熱交換器51Cで取り込まれた熱は、熱交換器51Aから放出される。熱交換器51Cは、循環路62を流れる液体から熱を吸収し、ヒートポンプサイクルにより、熱交換器51Aから熱が放出される。熱交換器51Aは、ハウス1内の空気と熱交換を行うため、動作モード3では、熱交換器51Aより温風が放出される。熱交換器51Aからの温風は、ハウス1内の比較的低い地上付近に放出されることが好ましいため、例えば、動作モード1及び2の場合とは異なり、放出される温風をハウス1内の地上付近に導くためのダクト(図示せず)が熱交換器51Aに設けられてもよい。例えば、熱交換器51Aのダクトは、分岐を有し、ハウス1の上部と下部とそれぞれ延び、動作モードに応じて、弁により空気の流路が適宜切り替えられる構成であってもよい。
【0095】
熱交換器51Cで熱交換を行った循環路62の液体は、温水タンク18を流れる温水から吸熱する。このとき、温水タンク18で吸熱されて温度低下した温水は、蓄熱用パイプ4を通ることで、蓄熱用パイプ4付近の土壌に蓄積された熱により再加熱され、温水タンク18に戻り、循環路62の液体との熱交換を続けられる。
【0096】
空気を熱源としたヒートポンプ装置では、低温伝熱面に生じる着霜現象の予防が課題として挙げられる。これは冬期暖房時に、低温空気からの採熱となるため、大気の蒸発器側熱交換器の表面温度が0℃以下となり、着霜障害を生じるもので、特に低温多湿地域へのヒートポンプの適用の大きな課題となっている。
【0097】
このように、冬季の夜間など外気温が低い時期においては、熱交換器(蒸発器側)への着霜により熱交換が十分にできず、除霜運転が必要となり、さらに、ヒートポンプの効率(COP)も低下する。動作モード3は、着霜のおそれのある外気温が低い時間帯での運転が想定されるが、蒸発器として動作する熱交換器51Cは、蓄熱用パイプ付近の土壌に蓄熱された地中熱で加熱された温水と熱交換を行うため、着霜は起きず、ヒートポンプの効率低下も防止できる。
【0098】
なお、上述の動作モード1及び2においては、蒸発器として動作する熱交換器51Aはハウス1内の空気と熱交換を行うが、通常、日中の比較的気温の高い時間帯で動作させることが想定され、また、ハウス1内の気温が下限温度を下回ると動作停止するので、熱交換器51Aへの着霜のおそれ、またヒートポンプの効率低下は生じない。
【0099】
制御部30は、ハウス1内の温度センサ26又は27の少なくとも一つの検知温度が所定の下限地上温度未満となると、ヒートポンプ装置50を図12(c)の状態で動作させ、ポンプと弁を次の状態にする。また、手動による動作開始操作により、動作モード3が開始されてもよい。好ましくは、保温用カーテンフィルム2により、ハウス1を上下に仕切ることで、温風がハウス1内上部に上昇するのを抑え、ハウス1内の地上付近を効率的に加温することができる。
【0100】
ファン19:停止
ファン20:回転
弁41:閉
弁42:閉
弁43:開又は閉
弁44:開又は閉
弁45:開
弁46:開
これにより、熱交換器51Aから温風が排出され、ハウス1内に放出される。ハウス1内の温度センサ27の検知温度が所定の上限地上温度に達すると、ヒートポンプ装置50の動作を停止させるとともに、ポンプ20の回転を停止する。
【0101】
(動作モード4)
動作モード4は、蓄熱用パイプ4付近に蓄熱された地中の熱で根域付近の土壌を加温するモードである。動作モード1により、24時間、根域加温用パイプ3に温水を循環させ、根域を加温することも考えられるが、冬季の夜間など気温が氷点下にまで低下する時期において、熱交換器51Aを蒸発器として動作させると、熱交換器51Aからは冷風が放出されるため、ハウス1内の気温がさらに低下し、また、熱交換器51Aは着霜により十分熱交換できなくなるおそれがある。
【0102】
そのため、この動作モード4では、動作モード1により根域を加温できない場合に、蓄熱用パイプ4と根域加温用パイプ3との間で温水を循環させ、蓄熱用パイプ4付近に蓄熱された地中熱を利用して根域を加温する。従って、動作モード4では、ヒートポンプ装置50は動作させない。
【0103】
温度センサ25により検出される根域付近の土壌の温度が所定の下限地中温度より低い場合、蓄熱用パイプ4付近に蓄積された熱により、根域付近の土壌を加温する。そのために、制御部30は、ファンと弁を次の状態にする。
【0104】
ポンプ19:逆回転
ポンプ20:回転
弁41:開
弁42:開
弁43:閉
弁44:閉
弁45:閉
弁46:閉
これにより、弁41、42が開放され、接続管5a、5bを介して根域加温用パイプ3と蓄熱用パイプ4による閉ループが形成され、その閉ループ内で空気を循環させることで、蓄熱用パイプ4を通過して温められた空気を根域加温用パイプ3に送り込み、根域付近の土壌を加温することができる。
【0105】
温度センサ25の検知温度が根域付近の所定上限地中温度を超えると、制御部30は、ポンプ19、20の回転を停止する。これにより、根域付近の加温が止められる。なお、ポンプ19を正回転方向に運転させ、ポンプ20を逆回転方向に運転させてもよい。
【0106】
(動作モード5)
動作モード5は、動作モード4と同様に、蓄熱用パイプ4付近に蓄熱された地中の熱で根域付近の土壌を加温するモードである。動作モード4との相違点は、ヒートポンプ装置の熱交換器50Cを蒸発器、熱交換器50Bを凝縮器としてヒートポンプ装置50を動作させ、蓄熱層に蓄えられた熱で根域付近を加温する。熱交換器50Cは、蓄熱層を循環する温水と熱交換するため、蒸発器として動作させても、着霜のおそれはなく、ヒートポンプサイクルを利用して蓄熱層に熱の移動が可能となる。
【0107】
動作モード5では、ヒートポンプ装置50の熱交換器51Cを蒸発器として動作させ、熱交換器51Bを凝縮器として動作させることで、蓄熱用パイプ4を循環する液体から根域加温用パイプ3を循環する液体に熱が移転し、蓄熱層に蓄えられた熱により、根域加温用パイプ3内の温水を加熱し、蓄熱層に蓄えられた熱が根域付近の土壌に放出される。図13(a)は動作モード5におけるヒートポンプ装置50の動作状態、すなわち、弁54−57の開閉状態とヒートポンプサイクル内の冷媒の流れる方向を示す。
【0108】
温度センサ25により検出される根域付近の土壌の温度が所定の下限地中温度より低い場合、制御部30は、ポンプと弁を次の状態にし、さらに、ヒートポンプ装置50を図13(a)の状態にて動作させる。
【0109】
ポンプ19:回転
ポンプ20:回転
弁41:閉
弁42:閉
弁43:開
弁44:開
弁45:開
弁46:開
ポンプ、弁の状態は、動作モード1及び2と同じである。温度センサ25の検知温度が根域付近の所定上限地中温度を超えると、制御部30は、ヒートポンプ装置50の動作を停止し、ポンプ19、20の回転を停止する。これにより、根域付近の加温が止められる。
【0110】
(動作モード6)
動作モード6は、蓄熱用パイプ4付近に蓄熱された地中の熱を根域付近の土壌に放出するともに、地上のハウス1内にも放出するモードであり、動作モード3と動作モード5の組み合わせである。動作モード6では、ヒートポンプ装置50の熱交換器51Cを蒸発器として動作させ、熱交換器51B及び熱交換器51Aを凝縮器として動作させることで、蓄熱層に蓄えられた熱により、根域加温用パイプ3内の温水を加熱し、さらに、ハウス1内に熱を放出する。図13(b)は動作モード6におけるヒートポンプ装置50の動作状態、すなわち、弁54−57の開閉状態とヒートポンプサイクル内の冷媒の流れる方向を示す。
【0111】
動作モード6では、温度センサ26又は27により検出されるハウス1内の気温が所定の下限地中温度より低く、且つ温度センサ25により検出される根域付近の土壌の温度が所定の下限地上温度より低い場合、制御部30は、ポンプと弁を次の状態にし、さらに、ヒートポンプ装置50を図13(b)の状態にて動作させる。
【0112】
ポンプ19:回転
ポンプ20:回転
弁41:閉
弁42:閉
弁43:開
弁44:開
弁45:開
弁46:開
ポンプ、弁の状態は、動作モード1及び2と同じである。温度センサ25の検知温度が根域付近の所定上限地中温度を超えるか、ハウス1内の温度センサ27又は27の検知温度が所定上限地上温度を超えるかのいずれかで、制御部30は、動作モード6から、所定上限温度を超えていない方の動作モード3又は5に切り替える。
【0113】
(動作モード7)
動作モード7は、根域付近の熱を蓄熱層に放出するモードであり、根域付近の地中を冷却するために利用するモードである。上述の動作モード1から動作モード2への切替のように、根やけ防止のため、根域付近地中温度が適温を超えないようにする必要があるが、夏季などの高温時期では、動作モード1により加熱せずとも、根域付近が所定の上限温度を超える場合があり得る。根域付近の熱をハウス1内の大気に放出すると、大気内の気温が過度に上昇するおそれがあるため、動作モード7では、根域付近の熱をハウス1内の大気ではなく、根域付近に熱的影響を与えないより深層の蓄熱層に熱を放出する。
【0114】
すなわち、動作モード7は、上述の動作モード5の逆運転であり、ヒートポンプ装置の熱交換器50Cを凝縮器、熱交換器50Bを蒸発器としてヒートポンプ装置50を動作させる。これにより、根域加温用パイプ3を循環する液体から蓄熱用パイプ4を循環する液体に熱が移転し、根域付近の土壌の熱が蓄熱層に放出され、根域付近を冷却することができる。
【0115】
図13(c)は動作モード7におけるヒートポンプ装置50の動作状態、すなわち、弁54−57の開閉状態とヒートポンプサイクル内の冷媒の流れる方向を示す。図13(c)では、熱交換器51Bを蒸発器として動作させ、熱交換器51Cを凝縮器として動作させ、熱交換器51Aへの冷媒循環を遮断し、熱交換器51Bで取り込まれた熱は、熱交換器51Cから放出される。
【0116】
制御部30は、根域付近の地中温度を測定する温度センサ25の検知温度又は温水タンク17の水温を測定する温度センサ28が冷却を要する上限地中温度を超えると、ヒートポンプ装置50を図13(c)の状態で動作させる。
【0117】
温度センサ25により検出される根域付近の土壌の温度が所定の下限地中温度より低い場合、制御部30は、ポンプと弁を次の状態にし、さらに、ヒートポンプ装置50を図13(c)の状態にて動作させる。
【0118】
ポンプ19:回転
ポンプ20:回転
弁41:閉
弁42:閉
弁43:開
弁44:開
弁45:開
弁46:開
ポンプ、弁の状態は、動作モード1及び2と同じである。温度センサ25の検知温度が冷却を不要とする所定の下限地中温度を下回ると、制御部30は、ヒートポンプ装置50の動作を停止し、ポンプ19、20の回転を停止する。これにより、根域付近の冷却が止められる。
【0119】
<第5の構成例>
図14は、本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第5の構成例を示す図である。第5の構成例は、第4の構成例と比較して、温水タンク17が、パイプ5及びパイプ6と共用になっており、パイプ5には、温水タンク17を流れないバイパス路5cが接続する。温水タンク17を流れる流量とバイパス路5cを流れる流量は比例弁47により調整可能であり、混合割合に応じて、根域加温用パイプ3を流れる温水の温度が制御される。例えば、温度センサ25の検知温度に基づいて、根域加温用パイプ3を流れる温水の温度が上限温度以下(第4の構成例における温水タンク17の上限温度以下)になるように比例弁47における混合割合をフィードバック制御する。
【0120】
また、温水タンクを一つとすることで、ヒートポンプ装置50は、第4の構成例のように、熱交換器を3つ用意する必要なく、2つの熱交換器51A、51Bを用いることで、上述の各動作モード1、3−4での運転が可能となる。第5の構成例では、熱交換器が2つなので、動作モード2、5−7は存在しない。動作モード1、3−4におけるポンプ、弁の状態は、第4の構成例と同一である。
【0121】
図15は、ヒートポンプ装置50の第5の構成例におけるヒートポンプ装置50の動作を示す図である。図15(a)は動作モード1に対応し、熱交換器51Aが蒸発器、熱交換器51Bが凝縮器として動作する。また、図15(b)は、動作モード3に対応し、熱交換器51Aが凝縮器、熱交換器51Bが蒸発器として動作する。
【0122】
なお、動作モード1において、温水タンク17内の水温が過度に上昇すると、比例弁47による混合制御では、根域加温用パイプ3を流れる温水の温度を上限温度以下に抑えられない可能性がある。その場合は、ヒートポンプ装置50を一旦停止させ、温水タンク17の水温上昇を抑える。これにより、根域の温度上昇を防ぐことができるが、蓄熱層への蓄熱量も抑えられることになる。この点においては、第4の構成例は、根域加温用と蓄熱層用に別々の温水タンク17、18が設けられているため、第4の構成例における蓄熱層用の温水タンク18は根域の温度に制限を受けず、動作モード2により加熱が可能となり、第5の構成例よりも多くの熱量を蓄熱層に蓄えることができる。
【0123】
このように、本実施の形態例では、ハウス内の地中の根域付近とそれより深い位置にパイプを敷設し、ヒートポンプ装置により、ハウス内の熱を両パイプに送り込める構成とする。動作モード1により、根域付近とそれより深い蓄熱層の両方に熱が供給され、所定の上限温度に達した場合、動作モード2に切り替え、蓄熱層のみに熱を蓄熱する。根域付近の温度の過上昇を防ぎ、植物の生育適温を維持できるとともに、十分熱を蓄えることができる。そして、ハウス内の温度が所定の下限温度を下回った場合は、動作モード3により、ヒートポンプ装置50を動作モード1又は2のサイクルと逆サイクル運転させ、蓄熱層に蓄えた熱を利用して、ハウス内に空気を加温する。さらに、根域付近の温度が低下した場合は、動作モード4により、蓄熱層に蓄えた熱により根域付近を加温する。このように、季節や一日における気温変化に応じて、地中の根域付近及びハウス内の温度をきめ細かく適温に維持することができる。
【0124】
<第6の構成例>
図16は、本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第6の構成例を示す図である。第6の構成例は、第4の構成例と比較して、根域加温用パイプ3が地上に配設される構成である。根域加温用パイプ3は、高設栽培装置の培地に配設される。根域加温用パイプ3は、例えば、高設栽培装置で栽培される植物の培地内の根域付近に配置され、または、栽培形態に応じて、培地表面に敷設されてもよい。これにより、地中の根域ではなく、地上の高設栽培装置で栽培される植物の根域の温度調節にも適用可能となる。温度センサ25は、地上の培地の根域付近の温度を測定する。
【0125】
高設栽培装置は、栽培架台をベースとして、地上から適当な高さの栽培架台上に栽培ベッドを配置し、栽培ベッド上の培地を使って、いちごや野菜、花などの植物を栽培するための装置である。高設栽培装置については、例えば、特開平11−279924号公報などに開示されている。日常の手入れや収穫時の作業などを立ったまま行うことができ、作業者の負担を軽減することができる。培地は、培養土、ロックウール、やしがら、籾殻、籾殻燻炭、木材チップなどさまざまなものを用いることができる。また、散水用パイプや排水溝など栽培に必要な諸設備を整えている。
【0126】
第6の構成例の地中温度管理装置は、第4の構成例における動作モードと同じ動作が可能であり、すなわち上述の動作モード1−7での運転が可能である。なお、上述の動作モード7では、根域加温用パイプ3は、根域付近を冷却するように動作するため、その名称にかかわらず、根域温度調整用パイプとして機能する。高設栽培においては、地植え栽培と比較して、培地が日射熱や外気温の影響を受けやすく、特に、高温期(夏期)においては、培地の温度が外気温以上に上昇し、植物の根の生育環境の悪化を招く場合があり、根域を冷却する(しかも、熱をハウス内に排出せず、地中に蓄積させる)ための動作モード7は効果的である。
【0127】
<第7の構成例>
図17は、本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第7の構成例を示す図である。第7の構成例は、第6の構成例と同様に、根域加温用パイプ3が地上に配設される構成であり、上述の第5の構成例において、根域加温用パイプ3が地上に配設される構成である。温度センサ25は、第6の構成例と同様に、地上の培地内の根域付近の温度を測定する。第7の構成例も、例えば、高設栽培装置の培地内に、根域加温用パイプを配設する場合に適用され、上述の第5の構成例で動作可能な動作モード、すなわち、動作モード1、3−4での動作が可能である。
【0128】
また、上述の各構成例において、蓄熱用パイプ4は、一層に限らず、深さの異なる複数の層にわたって複数本を敷設されてもよいし、同一層において、複数本敷設することもできる。根域加温用パイプ3も、ハウス内の植物の栽培列数に応じて並列に複数本敷設可能である。
【符号の説明】
【0129】
1:農業用ハウス、2:保温用カーテンフィルム、3:根域加温用パイプ、4:蓄熱用パイプ、5:閉ループ形成用パイプ、6:閉ループ形成パイプ、7:吸入用パイプ、7a:開口部、7b:開口部、7c:結露だまり、7d:分岐位置8:排出用パイプ、8a:開口部、8b:開口部、8c:結露だまり、8d:分岐位置、9:ファン、10:ファン、11:弁、12:弁、13:弁、14:弁、15:弁、16:弁、17:温水タンク、18:温水タンク、19:ポンプ、20:ポンプ、21:温度センサ、22:温度センサ、23:温度センサ、24:温度センサ、25:温度センサ、26:温度センサ、27:温度センサ、28:温度センサ、29:温度センサ、30:制御部、41:弁、42:弁、43:弁、44:弁、45:弁、46:弁、47:弁、50:ヒートポンプ装置、51A:熱交換器、51B:熱交換器、51C:熱交換器、52:膨張弁、53:圧縮器、54:弁、55:弁、56:弁、57:弁、循環路61、循環路62

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中で水平方向に延びる根域加温用パイプと、
前記根域加温用パイプより深い地中で水平方向に延びる蓄熱用パイプと、
地上の第一の開口部から延びて途中の分岐位置で分岐し前記根域加温用パイプと前記蓄熱用パイプそれぞれの吸入側端部と連通する第一のパイプと、
地上の第二の開口部から延びて途中の分岐位置で分岐し前記根域加温用パイプと前記蓄熱用パイプそれぞれの排出側と連通する第二のパイプと、
前記第一のパイプの前記第一の開口部から空気を前記根域加温用パイプに送り、前記第二のパイプの前記第二の開口部から排出させる第一のファンと、
前記第一のパイプの前記第一の開口部から空気を前記蓄熱用パイプに送り、前記第二のパイプの前記第二の開口部から排出させる第二のファンと、
地上の温度を検出する第一の温度センサと、
前記根域加温用パイプ付近の地中温度を検出する第二の温度センサと、
前記第一の温度センサ及び前記第二の温度センサの検出温度に基づいて、前記第一のファン及び前記第二のファンの回転制御を行う制御部とを備えることを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、前記第一の温度センサが所定温度以上を検出すると、前記第一のファン及び前記第二のファンを回転させ、空気を前記根域加温用パイプ及び前記蓄熱用パイプに送り込むことを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御部は、空気が前記根域加温用パイプ及び前記蓄熱用パイプに送り込まれているとき、前記第二の温度センサが所定の上限地中温度以上を検出すると、前記第一のファンの回転を停止し、前記第二のファンの回転を維持して、前記蓄熱用パイプにのみ空気を送り込むことを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記制御部は、前記第一の温度センサが所定の下限地上温度未満を検出すると、前記第二のファンを回転させ、空気を前記蓄熱用パイプに送り込むことを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記第一のパイプの前記第一の開口部を開閉するための第一の切替弁と、
前記第二のパイプの前記第二の開口部を開閉するための第二の切替弁とを備え、
前記制御部は、前記第二の温度センサが所定の下限地中温度未満を検出すると、前記第一の切替弁及び前記第二の切替弁を閉状態にし、前記第一のファンと前記第二のファンを互いに回転方向が逆になるように回転させ、前記根域加温用パイプと前記蓄熱用パイプ間で空気を循環させることを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記第一のパイプは、前記第一の開口部より低い位置の第三の開口部をさらに備え、
前記第二のパイプは、前記第二の開口部より低い位置の第四の開口部をさらに備え、
前記第三の開口部を開閉するための第三の切替弁と、前記第四の開口部を開閉するための第四の切替弁と、前記第一の温度センサより低い位置の地上温度を検出する第三の温度センサとが設けられ、
前記第一のファンは、前記第三の開口部から空気を前記根域加温用パイプに送り、前記第四の開口部から排出させ、
前記第二のファンは、前記第三の開口部から空気を前記蓄熱用パイプに送り、前記第四の開口部から排出させ、
前記制御部は、前記第三の温度センサの検出温度に基づいて、前記第三の切替弁及び前記第四の切替弁の開閉切替制御を行うことを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記制御部は、前記第三の温度センサが所定温度未満を検出すると、前記第一の切替弁及び前記第二の切替弁を閉状態にし、前記第三の切替弁及び前記第四の切替弁を開状態にし、前記第二のファンを回転させ、空気を前記蓄熱用パイプに送り込むことを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項8】
地中で水平方向に延びる根域加温用パイプと、
前記根域加温用パイプより深い地中で水平方向に延びる蓄熱用パイプと、
地上の第一の開口部から延びて途中の分岐位置で分岐し前記根域加温用パイプと前記蓄熱用パイプそれぞれの吸入側端部と連通する第一のパイプと、
地上の第二の開口部から延びて途中の分岐位置で分岐し前記根域加温用パイプと前記蓄熱用パイプそれぞれの排出側と連通する第二のパイプと、
前記第一のパイプの前記第一の開口部から空気を前記根域加温用パイプ及び前記蓄熱用パイプに送り、前記第二のパイプの前記第二の開口部から排出させるファンと、
前記根域加温用パイプと前記第一のパイプとを開閉するための第一の切替弁と、
地上の温度を検出する第一の温度センサと、
前記根域加温用パイプ付近の地中温度を検出する第二の温度センサと、
前記第一の温度センサ又は前記第二の温度センサの検出温度に基づいて、前記第一の切替弁の開閉切替制御を行う制御部とを備えることを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記制御部は、前記第一の温度センサが所定温度以上を検出すると、前記第一の切替弁を開状態にし、前記ファンを回転させ、空気を第一及び前記蓄熱用パイプに送り込むことを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記制御部は、空気が前記第一のパイプ及び前記蓄熱用パイプに送り込まれているとき、前記第二の温度センサが所定の上限地中温度以上を検出すると、前記第一の切替弁を閉状態にし、前記蓄熱用パイプにのみ空気を送り込むことを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項11】
請求項8において、
前記制御部は、前記第一の温度センサが所定の下限地上温度未満を検出すると、前記第一の切替弁を閉状態にし、前記ファンを回転させ、空気を前記蓄熱用パイプに送り込むことを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項12】
地中で水平方向に延びる根域温度加温用パイプと、
前記根域加温用パイプより深い地中で水平方向に延びる蓄熱用パイプと、
前記根域加温用パイプの両端と接続して地上に延び、前記根域加温用パイプを含む第一の閉ループを形成する第一のパイプと、
前記蓄熱用パイプの両端と接続して地上に延び、前記蓄熱用パイプを含む第二の閉ループを形成する第二のパイプと、
前記第一の閉ループを循環する液体及び前記第二の閉ループを循環する液体と地上の空気との間の熱交換を行うヒートポンプ装置と、
地上の温度を検出する第一の温度センサと、
前記根域加温用パイプ付近の地中温度を検出する第二の温度センサと、
前記第一の温度センサ及び前記第二の温度センサの検出温度に基づいて、前記ヒートポンプ装置の熱交換を制御する制御部とを備えることを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項13】
請求項12において、
前記ヒートポンプ装置は、地上の空気と熱交換を行う第一の熱交換器と、前記第一の閉ループを循環する液体と熱交換する第二の熱交換器と、前記第二の閉ループを循環する液体と熱交換する第三の熱交換器とを有することを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項14】
請求項12において、
前記ヒートポンプ装置は、地上の空気と熱交換を行う第一の熱交換器と、前記第一の閉ループを循環する液体及び前記第二の閉ループを循環する液体と熱交換する第二の熱交換器とを有することを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項15】
地上で高設栽培される植物の培地に配設される根域温度調整用パイプと、
地中に埋設される蓄熱用パイプと、
前記根域温度調整用パイプの両端と接続して、前記根域温度調整用パイプを含む第一の閉ループを形成する第一のパイプと、
前記蓄熱用パイプの両端と接続して地上に延び、前記蓄熱用パイプを含む第二の閉ループを形成する第二のパイプと、
前記第一の閉ループを循環する流体及び前記第二の閉ループを循環する流体と地上の空気との間の熱交換を行うヒートポンプ装置と、
地上の温度を検出する第一の温度センサと、
前記根域温度調整用パイプ付近の培地内温度を検出する第二の温度センサと、
前記第一の温度センサ及び前記第二の温度センサの検出温度に基づいて、前記ヒートポンプ装置の熱交換を制御する制御部とを備えることを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項16】
請求項15において、
前記ヒートポンプ装置は、地上の空気と熱交換を行う第一の熱交換器と、前記第一の閉ループを循環する液体と熱交換する第二の熱交換器と、前記第二の閉ループを循環する液体と熱交換する第三の熱交換器とを有することを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項17】
請求項15において、
前記ヒートポンプ装置は、地上の空気と熱交換を行う第一の熱交換器と、前記第一の閉ループを循環する液体及び前記第二の閉ループを循環する液体と熱交換する第二の熱交換器とを有することを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項18】
請求項12乃至17のいずれか1項において、
前記制御部は、第一の温度センサが所定温度以上を検出すると、地上の空気から前記第一の閉ループ内の液体及び前記第二の閉ループ内の液体に熱を供給するように前記ヒートポンプ装置を動作させることを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項19】
請求項12、13、15又は16において、
前記ヒートポンプ装置が前記第一の閉ループ内の液体及び前記第二の閉ループ内の液体に熱を供給するように動作しているときに、第二の温度センサが所定の上限地中温度以上を検出すると、前記制御部は、前記第二の閉ループ内の液体への熱供給を停止し、第一の閉ループ内の液体のみに熱を供給するように前記ヒートポンプ装置を動作させることを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項20】
請求項12乃至17のいずれか1項において、
前記制御部は、第一の温度センサが所定の下限地上温度未満を検出すると、第二の閉ループを循環する液体から地上の空気に熱を供給するように前記ヒートポンプ装置を動作させることを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項21】
請求項12乃至17のいずれか1項において、
前記第一の閉ループと前記第二の閉ループを接続する接続パイプと、
前記第一の閉ループを開閉する第一の開閉弁と、
前記第二の閉ループを開閉する第二の開閉弁と、
前記接続パイプを開閉する接続用開閉弁とを備え、
前記制御部は、前記第二の温度センサが所定の下限地中温度未満を検出すると、前記第一の開閉弁及び前記第二の開閉弁を閉状態にし、前記接続用開閉弁を開状態にすることで、前記ヒートポンプ装置が第一の閉ループの液体及び第二の閉ループの液体と熱交換を行う位置を経由せずに、前記蓄熱用パイプと前記根域加温用パイプ間で液体を循環させることを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項22】
請求項12、13、15又は16において、
前記制御部は、前記第二の温度センサが所定の下限地中温度未満を検出すると、前記第二の閉ループを循環する液体から前記第一の閉ループを循環する液体に熱を供給するように前記ヒートポンプ装置を動作させることを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項23】
請求項12、13、15又は16において、
前記制御部は、前記第一の温度センサが下限地上温度未満未満を検出し、且つ前記第二の温度センサが下限地中温度未満を検出すると、第二の閉ループを循環する液体から前記第一の閉ループを循環する液体及び地上の空気に熱を供給するように前記ヒートポンプ装置を動作させることを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。
【請求項24】
請求項12、13、15又は16において、
前記制御部は、前記第二の温度センサが所定の上限地中温度以上を検出すると、前記第一の閉ループを循環する液体から前記第二の閉ループを循環する液体に熱を供給するように前記ヒートポンプ装置を動作させることを特徴とする地中蓄熱式暖冷房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−212010(P2011−212010A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47179(P2011−47179)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(307024967)
【Fターム(参考)】