説明

地図生成装置

【課題】陸と水域を区別した地図の生成に必要な情報量を軽減した地図情報生成装置を提供する。
【解決手段】陸と水域との境界を特定するための境界データを記憶する境界データ記憶部11と、所定の位置に対し、陸又は水域のいずれであるかを特定する特定データを記憶する特定データ記憶部12と、地図の生成を要求するリクエストとともに、生成を希望する地図の範囲が指定されると、範囲に含まれる境界の境界データ及び範囲に含まれる位置の特定データを抽出する抽出手段13と、抽出された境界データに基づいて、範囲における陸と水域との境界線を描く描画手段14と、抽出された特定データを用いて、境界線によって生成される閉領域が陸であるか水域であるかを判定する判定手段15と、判定の結果に基づいて、陸であると判定された閉領域に第1の色を割り当て、海であると判定された閉領域に第2の色を割り当てて地図を生成する生成手段16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行機、ヘリコプター、グライダー、飛行船、気球等の航空機において使用する地図を生成する地図生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行機やヘリコプター等の航空機においては、飛行位置等を確認するために地図データをディスプレイに表示することがある。航空機では、広い範囲を飛行することが一般的であり、操縦士は飛行範囲の地形に精通していない場合が多い。また、上空から下方の確認が困難なことも多く、飛行位置を確認することができないこともある。これに対し、航空機ではディスプレイに地図データを表示することで、操縦士に飛行位置を確認させることができる。
【0003】
航空機上で地図を表示する一般的な方法として、図9に示すように、抽出手段22が表示する範囲の地図データを地図データベース(地図DB)21から抽出し、抽出した地図データを表示手段(ディスプレイ)23に表示する方法がある。このような地図表示システム2で利用される地図データは、色分け等を利用して陸又は水域のいずれであるかを区別している。
【0004】
地図DB21におけるデータの記憶方法として、各座標に対し、この座標で特定される位置が陸又は水域のいずれであるかを区別したデータを記憶する方法が一般的に用いられている。このようなデータの記憶方法では、少なくとも飛行領域である全ての領域の座標に対してデータを記憶する必要があり、地図DB21に記憶させるデータ量は膨大なものとなる。また、航空機の飛行領域は広域であるため、地図DB21には必然的に広域の地図データを記憶する必要があるのが現状である。
【0005】
一方、飛行機やヘリコプター等の航空機では、軽量化が望ましく、地図を表示するための一連のシステムを簡易化及び軽量化することが望ましい。これに対し、従来のような、構成の地図データは、上述したようにもともと記憶容量が大きくシステムの簡素化及び軽量化は実現できていない。
【0006】
現在、航空機で利用されるシステムに限られず、様々な地図情報を扱うナビゲーションシステムにおいて、必要なメモリ容量軽減や生成方法の単純化を図り、システムを簡易化することが勧められている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004-354538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1等でも記載されているような従来の方法では、緯度及び経度で特定される各位置(座標)に関し、陸又は水域のいずれであるかを区別するデータが必要である。したがって、記憶装置では、各二次元座標に関するデータを記憶する必要があり、依然として記憶装置に要求されるメモリ容量は十分に軽減されていない。
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、陸と水域を区別した地図の生成に必要な情報量を軽減した地図情報生成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴に係る地図生成装置は、陸と水域との境界を特定するための境界データを記憶する境界データ記憶部と、所定の位置に対し、陸又は水域のいずれであるかを特定する特定データを記憶する特定データ記憶部と、地図の生成を要求するリクエストとともに、生成を希望する地図の範囲が指定されると、範囲に含まれる境界の境界データ及び範囲に含まれる位置の特定データを抽出する抽出手段と、抽出された境界データに基づいて、範囲における陸と水域との境界線を描く描画手段と、抽出された特定データを用いて、境界線によって生成される閉領域が陸であるか水域であるかを判定する判定手段と、判定の結果に基づいて、陸であると判定された閉領域に第1の色を割り当て、海であると判定された閉領域に第2の色を割り当てて地図を生成する生成手段とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、陸と水域を区別した地図の生成に必要な情報量を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の最良の実施形態に係る地図生成装置は、図1に示すように、陸と水域との境界を特定するための境界データを記憶する境界データベース(境界DB)11と、所定の位置に対し、陸又は水域のいずれであるかを特定する特定データを記憶する特定データベース(特定DB)12と、地図の生成を要求するリクエストとともに、生成を希望する地図の範囲が指定されると、範囲に含まれる境界の境界データ及び範囲に含まれる位置の特定データを抽出する抽出手段13と、抽出された境界データに基づいて、範囲に置ける陸と水域との境界線を描く描画手段14と、抽出された特定データを用いて、境界線によって生成される閉領域が陸であるか水域であるかを判定する判定手段15と、判定の結果に基づいて、陸であると判定された閉領域に第1の色を割り当て、海であると判定された閉領域に第2の色を割り当てて地図を生成する生成手段16とを備えている。また、地図生成装置1は、生成手段16で生成した地図を表示する表示手段17を備えている。
【0012】
この地図生成装置1は、例えば、飛行機、ヘリコプター、グライダー、飛行船、気球等の航空機上に搭載されて使用される。ここで、水域とは、海、湖、沼、池、ダム、川等の水が存在する陸以外の領域である。
【0013】
境界DB11で記憶される境界データでは、図2に一例を示すように、陸と水域との境界を特定するポイントの数と、ポイントを表わす座標を含んでいる。この境界データが含む座標を接続することで、陸と水域との境界の一部を描画することができる。図2に示す境界データの例では、ポイントP1〜P5を接続して、陸と水域との境界の一部を描画することができることがわかる。図2では省略するが、境界データは、曲線である境界を忠実に描画することができるように、隣り合うポイントとの接続関係を表わすベクトルデータ等の各ポイントの接続に使用するデータを含んでいても良い。
【0014】
特定DB12で記憶される特定データでは、図3に一例を示すように、所定の座標が陸であることを特定するデータを含んでいる。図3に示す特定データは、地図情報として汎用している陸上の所定の位置に存在する建物等を示すデータを利用して生成されたものである。特定データの構造は、図3に示した一例に限られず、所定の座標が陸又は水域のいずれであるかを特定することができるものであれば、どのような構成であってもよい。
【0015】
抽出手段13には、地図の生成を要求するリクエストとともに、生成を希望する地図の範囲を表わす複数の座標が入力される。抽出手段13は、入力した座標で特定される範囲に含まれる境界データを境界DB11から抽出し、描画手段14に出力する。また、抽出手段13は、同一の範囲に含まれる特定データを特定DB12から抽出し、判定手段15に出力する。
【0016】
描画手段14は、入力した境界データに含まれる座標を接続して陸と水域との境界線を描画し、この境界線データを判定手段15及び生成手段16に出力する。
【0017】
判定手段15は、入力した境界線データで表わされる各閉領域について、特定データに基づいて陸又は水域のいずれであるかを判定し、判定結果を生成手段16に出力する。
【0018】
ここでは、特定データが、図3に示す一例のように陸の座標を特定するデータである場合を例にして説明する。一の境界線によって生成される閉領域に該当する座標が特定データに含まれるとき、判定手段15は、この閉領域を陸であると判定し、同一の境界線に接する他の閉領域を水域であると判定する。また、一の境界線によって生成される閉領域に該当する座標が特定データに含まれないとき、判定手段15は、この閉領域を水域であると判定し、同一の境界線に接する他の閉領域を陸であると判定する。このように、判定手段15は、一の閉領域を陸と判定したときには同一の境界線に接する他の閉領域を水域と判定し、一の閉領域を水域と判定したときには同一の境界線に接する他の閉領域を陸と判定することを繰り返し、全ての閉領域について陸又は水域のいずれであるかを判定する。
【0019】
なお、判定手段15は、判定結果を、閉領域に関する判定結果を得る度、生成手段16に出力してもよいし、メモリ(図示せず)に記憶しておき、全ての閉領域に関する判定が終了した後にまとめて生成手段16に出力してもよい。
【0020】
生成手段16は、判定手段15による判定の結果に基づいて、陸であると判定された閉領域に予め陸に定められる色を割り当て、水域であると判定された閉領域に予め水域に定められる色を割り当てて地図を生成し、表示手段17に表示させる。表示手段17は、いわゆる表示ディスプレイである。例えば、表示手段17において、陸を茶色とし水域を青色としてもよい。また、表示手段17においてオン/オフのみで表示分けしている場合、陸をオン、海をオン等に定めてもよい。
【0021】
上述した地図生成装置1は、中央処理装置(CPU)、記憶装置、メモリ等(図示せず)を有する一般的なコンピュータであり、記憶装置に記憶されている地図生成プログラムを読み出して実行することで、CPUに抽出手段13、描画手段14、判定手段15、生成手段16及び表示手段17が実装される。また、境界DB11及び特定DB12は、記憶装置に相当する。図1に示す例では、境界DB11と特定DB12は独立しているが、同一の記憶装置に、当該地図生成プログラムとともに、境界データ及び特定データを記憶していても同様である。
【0022】
以下に、図4に示すフローチャートを用いて、地図生成装置1において地図が生成される処理を説明する。
【0023】
地図の生成を要求するリクエストが入力されると、抽出手段13は、境界DB11から該当する境界データを抽出するとともに、特定DB12から該当する特定データを抽出する(S1)。その後、描画手段14は、境界データに含まれる座標を接続して境界線を描画する(S2)。
【0024】
描画手段14によって点A〜Dで特定される範囲の地図を表示する場合に、抽出された境界データによって描画された境界線の一例を図5に示す。この図5に示す境界線Lは、ポイントP1〜P8の8点の座標と、ポイントP1の前の座標(図示せず)と、ポイントP8の後の座標(図示せず)とを合わせた10点の座標を接続して描画されている。
【0025】
続いて、判定手段15は、境界線Lの描画によって生成された閉領域に含まれる一の座標の特定データを選択し(S3)、この閉領域が陸又は水域のいずれであるかを判定する(S4)。また、判定手段15は、特定した閉領域と隣り合う閉領域について陸又は水域のいずれであるかを決定する(S5)。
【0026】
例えば、図5で上述したように境界線Lが描画されたとき、図6に示すように閉領域T1と閉領域T2との2つの閉領域ができる。ここで、図3を用いて上述した特定データから、閉領域T1に含まれる座標(α1,β1)は小学校であることが特定できる。また、小学校は、陸に存在する。したがって、判定手段15は、図6に示す閉領域T1を陸と判定する。また、判定手段15は、陸と判定された閉領域T1と境界線Lを介して隣り合う閉領域T2を水域と判定する。
【0027】
他に陸又は水域のいずれであるかを決定していない閉領域があるとき(S6でYES)、ステップS5に戻り、判定手段15によって判定を継続する。一方、他に決定していない閉領域がないとき(S6でNO)、生成手段16は、判定結果に基づいて地図を生成して表示手段17に表示させる(S7)。
【0028】
図6に示す例のデータを判定する場合、判定手段15は、閉領域T1は陸であり閉領域T2が水域である判定結果を出力する。図7は、このようにして出力された結果から表示手段17に表示される地図の一例である。図7に示す地図の一例では、陸部分を斜線で表わし、水域部分を白色で表わしている。
【0029】
描画手段14によって、複数の閉領域が描画された場合の一例について、図8を用いて説明する。図8に示す例では、点A〜Dで指定された領域内に、複数の閉領域T1〜T6が存在する。ここで、特定データから閉領域T1に含まれる座標(α3,β3)が公園であることが特定されると、判定手段15は、閉領域T1を陸であると判定する。続いて、判定手段は、閉領域T1と境界線Lを介して隣り合う閉領域T2,T3を水域であると判定する。次に、閉領域T3と境界線Lを介して隣り合う閉領域T4〜T6を陸であると判定する。このように判定することで、全ての閉領域T1〜T6について、陸又は水域のいずれであるかを判定することができる。
【0030】
上述したように、本発明に係る地図生成装置によれば、境界線に関するデータと、所定の位置が陸又は水域のいずれであるかを特定するデータとを用いて、境界線を描画するとともに、境界線によって形成された閉領域が陸又は水域のいずれであるかを判定し、地図データを生成する。したがって、従来のように各座標に関して、陸又は水域のいずれであるかを特定するデータを記憶する必要が無く、少ない情報量で容易に地図データを生成することができる。
【0031】
本発明に係る地図生成装置は、例えば、海上を飛行する掃海ヘリコプター等の航空機や、自家用ジェット機等の規模の小さい航空機に搭載することで、大きな効果を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る地図生成装置を説明する機能ブロック図である。
【図2】図1の地図生成装置で使用する座標データの一例である。
【図3】図1の地図生成装置で使用する特定データの一例である。
【図4】図1の地図生成装置における処理を説明するフローチャートである。
【図5】図1の地図生成装置で描画された境界線の一例である。
【図6】図1の地図生成装置で使用された特定データの一例である。
【図7】図1の地図生成装置で生成された地図の一例である。
【図8】図1の地図生成装置で生成された地図の他の例である。
【図9】従来の航空機で利用される地図表示のシステムの一例を説明する機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0033】
1…地図生成装置
11…境界データベース(境界データ記憶部)
12…特定データベース(特定データ記憶部)
13…抽出手段
14…描画手段
15…判定手段
16…生成手段
17…表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸と水域との境界を特定するための境界データを記憶する境界データ記憶部と、
所定の位置に対し、陸又は水域のいずれであるかを特定する特定データを記憶する特定データ記憶部と、
地図の生成を要求するリクエストとともに、生成を希望する前記地図の範囲が指定されると、前記範囲に含まれる境界の境界データ及び前記範囲に含まれる位置の特定データを抽出する抽出手段と、
抽出された前記境界データに基づいて、前記範囲における陸と水域との境界線を描く描画手段と、
抽出された前記特定データを用いて、前記境界線によって生成される閉領域が陸であるか水域であるかを判定する判定手段と、
前記判定の結果に基づいて、陸であると判定された閉領域に第1の色を割り当て、海であると判定された閉領域に第2の色を割り当てて地図を生成する生成手段と、
を備えることを特徴とする地図生成装置。
【請求項2】
前記境界データは、前記境界の位置を特定する複数の座標と前記各座標の接続に関する情報を表わすデータであって、
前記リクエストは、生成を希望する前記地図の範囲を特定する複数の座標を含み、
前記抽出手段は、前記複数の座標で特定される前記範囲に含まれる境界データ及び特定データを抽出し、
前記描画手段は、前記抽出手段によって抽出された複数の座標を接続し境界線を描くことを特徴とする請求項1記載の地図生成装置。
【請求項3】
前記判定手段は、
一の境界線によって生成される閉領域が陸であるとき、同一の境界線に接する他の閉領域を水域であると判定し、
一の境界線によって生成される閉領域が水域であるとき、同一の境界線に接する他の閉領域を陸であると判定し、
全ての閉領域が陸又は水域のいずれかであることが判定されるまで、判定を繰り返すことを特徴とする請求項1又は2記載の地図生成装置。
【請求項4】
前記水域は、海、湖、沼、池、ダム、川のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の地図生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−8737(P2009−8737A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167714(P2007−167714)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】