説明

地盤性状判定方法および地盤性状判定装置

【課題】 構造物の地盤に対する影響についての判定を行うときに時間と労力を最小限とし、また、構造物による正確な地盤の状態を判定でき、かつ、構造物の施工上の問題究明に係る原因あるいは新たな構造物による施工方法の探求を視覚的に判定できる地盤性状判定方法および地盤性状判定装置を提供すること。
【解決手段】地盤内に貫入される構造物の外周地盤の温度を測定し、測定した温度分布から前記地盤の性状を判定する貫入構造物外周地盤性状判定方法であって、地盤形成ステップS1と、構造物貫入ステップS2と、地盤断面形成ステップS3と、温度分布測定ステップS4と、判定ステップS5と、を含むこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を押圧または地盤に貫入させる柱状、板状、あるいは塊状の構造物の地盤に対する影響を調査しまた判定するための地盤性状判定方法および地盤性状判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、基礎工事において地盤に、ハンマリング、振動、回転等により杭等の柱状または矢板等の板状の構造物を貫入するための技術が様々提案されている。そのなかの一つとして、杭を回転させながら地盤に貫入させる回転貫入杭工法が知られている。この回転貫入杭工法は、無振動、無騒音により施工できること、また、排出残土がほとんど発生しないため、建設残土処理が不要であること、さらに、セメントミルク等を使用しないため、土壌汚染や地下水汚染の無い環境に優しい工法であること等の利点により、社会的なニーズに合致することから近年盛んに用いられている。
【0003】
回転貫入杭工法を含む杭工法等をはじめとする基礎工事は、地中に構造物を貫入することで行われるため、地中において施工精度の確認が困難であるばかりでなく、周辺に及ぼす影響の調査も難しい。例えば、回転貫入杭工法で使用される回転貫入杭は、その先端に螺旋翼を備えているものも存在する。その螺旋翼を備える杭の回転貫入杭工法では、地盤に貫入する杭の貫入速度の大小により、螺旋翼が通過した地盤が締め固められていた場合、その螺旋翼により締め固めた地盤の性状が乱されることもあると考えられる。
【0004】
そのため、従来、施工する地盤に杭等の構造物を貫入したときの施工精度を確認するための地盤の測定装置が提案されている。例えば、地盤の硬さを測定する装置であるペネトロメータ(非特許文献1)が用いられることや、あるいは、地中にある構造物の周辺地盤の状況を実験的に観測できる模型実験装置(非特許文献2)が知られている。
【0005】
ペネトロメータは、地盤に測針を差し込んで、地盤の硬さを測定するものである。このペネトロメータは、測定したい対象エリアにおいて、一定の間隔をあけた状態で、順次、測針を地盤に差し込むことで各測定ポイントにおける硬さを測定している。
【0006】
模型実験装置は、透明な側面を備えるケース内に多数の棒状アルミニウムの粒子(直径1〜3mm)を地盤として収納し、ケースの上部に配置した垂直移動装置を介して、その垂直移動装置に取り付けられたミニュチュア化した杭等の基礎構造物を、地盤に見立てた棒状アルミニウムの粒子群中に貫入させ、あるいは、棒状アルミニウムの粒子群中にある基礎構造物を引き抜く動作を行うものである。そして、模型実験装置は、垂直移動装置を用いて基礎構造物を移動させたときの地盤の状態を透明な側面から観察し、棒状アルミニウムの粒子の位置が予め透明な側面に記したラインからどのように変化するかを判断し、あるいは、基礎構造物の地盤に対する支持力、引き上げ抵抗力等を測定する等の実験を行うことができるものである。
【非特許文献1】株式会社丸東製作所ホームページ(2005年1月26日検索)<URL http://www.maruto-group.co.jp/soil/S44.htm>
【非特許文献2】株式会社丸東製作所ホームページ(2005年1月26日検索)<URL http://www.maruto-group.co.jp/education_maruto/AMS-822.htm>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の基礎構造物の外周地盤の状態を測定する方法あるいは観察する装置においては、つぎに記す技術面での解決が望まれていた。
ペネトロメータで地盤の硬さを測定する場合は、地盤に測針を差し込む操作を行うため、測針を差し込んだ地盤の周辺が軟化して連続的なエリアの測定が不可能であった。また、地盤の測定エリアにおいて、多数のポイントで測定する必要があるため、時間と労力が著しくかかることになった。
【0008】
一方、模型実験装置は、棒状アルミニウム粒子群を地盤としているため、ラフな地盤内の状態しか再現することができず、また、装置の規模も小さいことから、理論に対する定性的検証を確認できるにすぎなかった。そして、この模型実験装置は、棒状アルミニウムの粒子で地盤を形成しているため、その基礎構造物の外周面における硬度の状態を判定するためには、やはり小型のペネトロメータ等の測定装置が必要になってしまった。
【0009】
また、現場にて基礎構造物における施工上の問題が発生した場合、その施工状況に対する問題点の究明を行うための原因を視覚的に探る手段や、あるいは、新たな基礎構造物による施工方法を探求するときのヒントを探るための地盤の乱れが視覚的に判定できる手段が望まれていた。
【0010】
本発明は、前記の問題に鑑み創案されたものであり、構造物の地盤に対する影響についての判定を行うときに時間と労力を最小限とし、また、構造物による正確な地盤の状態を判定でき、かつ、構造物の施工上の問題究明に係る原因あるいは新たな構造物による施工方法の探求を視覚的に判定できる地盤性状判定方法および地盤性状判定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、地盤断面の温度分布の状態と、地盤断面の地盤硬度の状態とは、相関関係があり、地盤硬度の分布に対応するように温度分布が形成されることを見出したことに伴いなされたものである。つまり、地盤に例えば杭を貫入(地盤に押圧し)させ、その貫入させた地盤(押圧した地盤)の断面においてペネトロメータ等の測定装置により多数の測定ポイントにおける地盤の硬度を測定して硬度分布の状態を調べる。そして、つぎに同じ条件で杭を貫入させた地盤(押圧した地盤)の断面における温度分布を測定して、予め調べた硬度分布と対比するとほぼ地盤の硬度の状態に応じて温度分布の状態が対応していることを見出したことにより本発明に至ったものである。したがって、前記した課題を解決するため、以下のような構成の地盤性状判定方法および地盤性状判定装置とした。なお、地盤断面の温度分布を測定する性質上、温度分布が明確に現れ、かつ、地盤の性状が分かりやすく反映される土粒であることが望まれる。
【0012】
地盤性状判定方法は、構造物が押圧する地盤における地盤断面の温度を測定し、測定した温度分布から前記地盤の性状を判定する地盤性状判定方法であって、有底型枠内に人工的に地盤を形成して収納する地盤形成ステップと、前記有底型枠の開口側から前記地盤に押圧させる構造物を、予め設定された施工条件により前記地盤に押圧する構造物押圧ステップと、前記構造物により押圧した地盤の前記有底型枠における側面の少なくとも一部を開放させ、前記構造物により押圧した地盤の地盤断面を形成する地盤断面形成ステップと、前記地盤の地盤断面に対して赤外線熱画像装置により、当該地盤断面の温度分布を、前記地盤に構造物を押圧してから予め設定された時間以内に測定する温度分布測定ステップと、測定した前記地盤断面の温度分布を示す画像から、前記地盤の性状を色別の分布状態と割合で判定する判定ステップと、を含むこととした。
【0013】
このようにした地盤性状判定方法は、はじめに、地盤形成ステップにより、人工的に地盤を有底型枠の中に一定の締め固め硬さとなるように形成し、構造物押圧ステップにより予め設定された施工条件、例えば、所定の押圧力で所定時間等、地盤を構造物により押圧する。このときの構造物としては、例えば、T字形状の脚体、柱状の支柱等である。つぎに、地盤断面形成ステップにより構造物で押圧された地盤を、有底型枠の側面を開放して地盤の一部を除去(切断)して地盤断面を形成する。なお、地盤断面は、構造物の中心あるいはそれ以外での垂直断面等、判定する目的により適宜断面位置を変えても構わない。そして、地盤断面が形成されると温度分布測定ステップにより、赤外線熱画像装置(サーモグラフィ)で地盤断面の温度分布が測定される。さらに、判定ステップでは、例えば、地盤断面の硬度分布と温度分布とがほぼ対応していることが分かっているため、測定された温度分布の画像における色別の分布状態と割合から地盤の構造物に対する硬度状態の変化による支持力等の影響が判定される。
【0014】
また、地盤性状判定方法は、地盤内に貫入される構造物の外周地盤の温度を測定し、測定した温度分布から前記地盤の性状を判定する貫入構造物外周地盤性状判定方法であって、有底型枠内に人工的に地盤を形成して収納する地盤形成ステップと、前記有底型枠の開口側から前記地盤に貫入する構造物を予め設定された施工条件により貫入させる構造物貫入ステップと、前記構造物が貫入した地盤の有底型枠における側面の少なくとも一部を開放させ、前記地盤内の構造物の少なくとも一部または貫入部周辺が現れるように前記地盤の一部を除去して地盤断面を形成する地盤断面形成ステップと、前記地盤の地盤断面に対して赤外線熱画像装置により、当該地盤断面の温度分布を、前記地盤に構造物を貫入させてから予め設定された時間以内に測定する温度分布測定ステップと、測定した前記地盤断面の温度分布を示す画像から、前記地盤の性状を色別の分布状態と割合で判定する判定ステップと、を含むこととした。
【0015】
このようにした地盤性状判定方法によれば、はじめに、地盤形成ステップにおいて、人工的に地盤を有底型枠内に形成する。このときの地盤は、一定の状態となるように、木槌、重り等により締め固められていることが望ましい。地盤が形成されると構造物間入ステップにおいて、例えば、杭、矢板、アンカー、ケーソン等に対応する構造物を予め定めた施工条件により人工的に形成された地盤に貫入させる。このときの施工条件としては、打撃、圧入、振動を含む貫入速度、回転速度等である。
【0016】
また、ここでいう貫入は、打撃、圧入、振動を含むいずれかまたは複数の手段を組み合わせることにより強制的に地盤表面から地盤内に構造物を差し込むことである。なお、ここでいう地盤表面とは、鉛直方向に直行する面方向だけでなく、縦穴の側面、あるいは地盤の斜面等構造物が現場において貫入される面方向を含むものである。さらに、地盤断面形成ステップにおいて、地盤の一部を切断等することで除去し地盤断面を形成する。このときの地盤断面は、地盤内にある構造物の一部が露出する位置での垂直断面、水平断面、傾斜断面、あるいは、構造物に隣接する垂直断面等、いずれの断面であっても構わない。つぎに、温度分布測定ステップにおいて、地盤断面の温度分布を赤外線熱画像装置により測定している。そして、その測定した画像における地盤断面の温度分布と例えば地盤の硬度分布とが対応していることが分かっている。そのため、判定ステップにおいて、構造物の外周辺地盤(地盤断面)の温度分布の画像における色別の分布状態と割合が、例えば、周辺地盤と構造物外周地盤との硬度や密度等の差異として現れ、構造物の地盤に与える性状の乱れ、支持力等の影響を判定することができる。
【0017】
さらに、地盤性状判定方法は、前記地盤形成ステップにおいて前記地盤は、珪砂と粘土とを9対1から1対9の範囲においていずれかの割合で混合した混合土とし、前記混合土に含水率が3〜30%の範囲においていずれかの割合となるように添加して形成した。
このように珪砂と粘土を所定の範囲で混合して混合土とし、かつ所定の割合で水を添加して地盤とすることで、赤外線熱画像装置により温度分布を表示しやすい状態とすることが可能となる。なお、珪砂と粘土の割合は、好ましくは、8対2から2対8、より好ましくは、3対7から7対3の範囲にあることが望ましい。そして、そのときの水の含水率は、5〜20%のいずれかであることがより好ましい。
【0018】
なお、地盤性状判定方法は、地盤断面形成ステップにおいて露出させる前記地盤断面は、前記構造物を中心として当該構造物の軸線周りにおける半周面が露出する断面である構成としてもよい。
このように、地盤断面が構造物の半周面を露出する断面、つまり、構造物の中心から対称となる両側を示す広い視野における外周地盤の状態を、赤外線熱画像装置の測定により温度分布の画像を得ることで判定することができる。
【0019】
また、地盤性状判定方法は、前記構造物貫入ステップにおいて前記構造物が杭であり、かつ、前記施工条件が、前記杭を予め設定された貫入速度により前記地盤に貫入させることとした。
このように地盤性状判定方法で使用される構造物を、杭であることとし当該杭が所定速度で貫入したときの地盤断面において温度分布から地盤の性状を判定できる。
【0020】
さらに、地盤性状判定方法は、構造物貫入ステップと地盤断面形成ステップの間に、貫入した構造物を予め設定した力で地盤から引き抜く方向に動作させる引抜動作ステップを行うこととした。
このように地盤性状判定方法において、一旦、地盤に貫入した構造物をその地盤から引き抜く方向に、引抜動作ステップにより力をかけることで、地盤にかかる引抜力に対する地盤の性状についても温度分布で示すことができる。
【0021】
また、地盤性状判定装置は、地盤に貫入した構造物の外周地盤の性状、または、地盤に構造物により押圧した地盤の性状を、温度分布により判定する地盤性状判定装置であって、人工的に形成した地盤を収納する有底型枠と、この有底型枠内の地盤に構造物を予め設定された施工条件により、押圧させるか、または、貫入させる貫入機構と、この貫入機構により前記構造物により押圧した地盤、または、前記構造物を貫入した地盤について、前記有底型枠の側面の一部を解放した状態で、前記地盤の一部を除去して地盤断面を形成するか、または、前記地盤に貫入している構造物の少なくとも一部が露出するように前記地盤を除去して地盤断面を形成する除去機構と、この除去機構で除去して形成した前記地盤断面の温度分布を測定して前記地盤断面における色別の分布状態と割合で画面に表示する赤外線熱画像装置と、を備える構成とした。
【0022】
このように構成した地盤性状判定装置は、有底型枠内に人工的に地盤を形成し地盤を一定の締め固めた状態とし、貫入機構により、杭、柱、矢板、ケーソン等に対応する礎構造物を、予め設定された施工条件となる貫入速度あるいは回転速度等により形成した地盤に貫入あるいは押圧させる。さらに、地盤性状判定装置は、有底型枠の側面の一部を開放させ構造物が貫入あるいは押圧した地盤を除去機構により所定部分を除去し、地盤断面を形成するか、または、地盤に貫入している構造物の一部が露出するように地盤断面を形成する。そして、地盤性状判定装置は、地盤断面が形成されると、赤外線熱画像装置(サーモグラフィー)によりその地盤断面の温度分布を測定し、その温度分布を測定した画像から地盤の性状を判定している。なお、測定した画像における地盤断面の温度分布と例えば地盤の硬度分布とが対応していることが分かっているため、赤外線熱画像装置では、測定した画像により、地盤断面の温度分布の画像における色別の分布状態と割合から地盤の構造物に対する、例えば、地盤の性状の乱れ、支持力等の影響を判定することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る地盤性状判定方法および地盤性状判定装置は、つぎに示すような優れた効果を奏するものである。
地盤性状判定方法は、杭、矢板、アンカー、ケーソン等である構造物を貫入あるいは押圧した地盤を切断して形成した地盤断面の温度分布を測定すれば、その温度分布で示す色別の分布状態および割合と、地盤硬度分布とに相関関係があることを見出しているので、多くの時間および労力をかけることなく、かつ正確に、構造物の押圧による地盤の状態、または、構造物の外周地盤の状態を連続的に判定することが可能となる。そのため、地盤性状判定方法では、構造物の地盤に対する支持力等、構造物が与える地盤に対する影響を判定することができる。また、地盤性状判定方法は、視覚的に地盤の性状を判定することができるため、例えば、現場にて構造物における施工上の問題が発生した場合、その施工状況に対する問題点の究明を行うための原因を視覚的に探ることや、あるいは、新たな構造物による施工方法を探求するときのヒントを探るための地盤の性状や、構造物が地盤に与える影響を視覚的に判定することが可能となる。
【0024】
地盤性状判定方法は、珪砂と粘土を所定の割合とする混合土に所定の割合の水を添加して地盤を形成することにより、温度分布の状態をより鮮明に測定することができるため、構造物が地盤に与える影響、構造物の外周地盤の性状をより正確に判定することが可能となる。
【0025】
地盤性状判定方法は、構造物の軸線周りにおける半周面を露出するように地盤断面を形成して温度分布を測定することにより、温度分布の測定が容易で見やすく、かつ、構造物の中心から連続する地盤の性状を判定することが可能となる。
【0026】
地盤性状判定方法は、構造物が杭でありその施工条件となる貫入速度等を予め設定した場合に、地盤断面の温度分布を測定することで、杭の外周地盤の乱れ等の性状を判定することができる。
【0027】
地盤性状判定方法は、地盤に貫入した構造物を引抜動作ステップにより所定の力で地盤から引き抜く方向に力をかけた後に、その地盤断面の温度分布を測定することで、構造物の引き抜きにおける接地圧分布と摩擦抵抗等の地盤における性状を判定することができる。
【0028】
地盤性状判定装置は、杭、矢板、アンカー、ケーソン等である構造物の外周地盤の性状、または、支柱等の構造物が地盤を押圧したときの地盤の性状、影響等を、地盤断面の温度分布を測定することで判定することができる。また、この地盤性状判定装置は、より実際の環境に近い状態であるため、実験装置として、擁壁の土圧や基礎支持理論等を学ぶときの教材としても適しており、また、土中構造物の設計支援手段としても適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る地盤性状判定方法および地盤性状判定装置の代表的な構成を、図面を参照して説明する。なお、ここでは、構造物として杭を一例として用いて説明するがこれに限定されるものではない。
図1は地盤性状判定方法に用いる地盤性状判定装置の一例を示す模式図、図2(a)〜(e)は地盤性状判定方法における各ステップを模式的に示す模式図である。
【0030】
図1および図2に示すように、地盤性状判定装置10は、地盤Bを収納した有底型枠30の設置位置の上方に杭(構造物)12を保持して所定速度で回転させる回転機構13と、この回転機構13を上昇降下させる昇降機構14と、有底型枠30の地盤Bの一部を除去して地盤断面BSを形成するための除去機構15と、この除去機構15および昇降機構14ならびに回転機構13等を所定位置で支持するフレーム11と、有底型枠30の正面に配置された赤外線熱画像装置(サーモグラフィ)20と、を主に備えている。
【0031】
回転機構13は、保持する杭12を所定速度で回転させるためのロードセルユニット13aと、このロードセルユニット13aにより回転する杭12のトルクを計測するトルク計13bと、このトルク計で計測したトルクの値等を記録するデータロガー13c等を備えている。
【0032】
昇降機構14は、ロードセルユニット13aおよびトルク計13bを支持してスライド柱14b、14bを介して昇降する昇降支持部14aと、この昇降支持部14aを所定速度で昇降移動させる昇降用モータ14cと、を備えている。なお、昇降機構14は、スライド柱14b,14bの少なくとも一方を回転させることで昇降支持部14aを昇降させることや、また、スライド柱14b,14bに昇降支持部14aをスラド移動させることで昇降させるようにしても構わない。
【0033】
除去機構15は、地盤Bに当接して一部を除去(切断)する地盤除去板15aと、この地盤除去板15aを着脱自在に保持する保持移動部15b、15bと、この保持移動部15b、15bを係合して上下に移動させるための左右のガイド15c、15cと、このガイド15c、15cの少なくとも一方を回転させて当該ガイド15c、15cに係合する保持移動部15b、15bを上下に移動させる駆動モータ15dを備えている。なお、駆動モータ15dは、左右に備える場合には、互いに同期させてガイド15c、15cを回転させるようにしている。
また、保持移動部15b,15bは、地盤除去板15aの保持位置が平面方向において適宜に変更できるように、保持位置が複数形成されていると都合がよい。また、地盤除去板15aは、その中央が杭12の曲率に沿って湾曲して形成されている。この地盤除去板15aは、板の状態として形成されているが、ワイヤーなどの紐状の地盤除去部としても構わない。
【0034】
赤外線熱画像装置20は、対象物から出ている赤外線放射エネルギーを検出し、見かけの温度に変換して、温度分布を画像表示する装置であり、赤外線熱測定部21と、この赤外線熱測定部21で測定した状態を画像表示する測定表示部22とを備えている。
この赤外線熱画像装置20は、地盤断面に対して面の温度分布として捉え、可視化情報として表示でき、また、対象物から離れたところから、非接触で温度測定ができ、さらに、リアルタイムで温度計測ができる。
【0035】
なお、地盤性状判定装置10は、杭12が、保持機構17の位置で着脱自在に係合されるように構成しても構わない。また、有底型枠30の設置位置は、その有底型枠30を直線上に移動させることができるスライド機構L2のスライド面であってもよい。さらに、赤外線熱画像装置20の赤外線熱測定部21をスライドレールL1上に移動可能に配置してもよい。すなわち、有底型枠30の地盤Bに杭12が貫入され地盤断面BSが形成された後に、杭12を保持機構17の位置から係合を外し、スライド機構L2により有底型枠30を移動させ、その移動させた位置において、スライドレールL1を移動させて対面する赤外線熱画像装置20の赤外線熱測定部21により地盤断面BSを測定する構成とする。このように測定位置を杭12の貫入位置と変えることで、つぎの有底型枠30を測定する操作を迅速に行うことが可能となる。
【0036】
つぎに、本発明に係る地盤性状判定装置を適宜用いて地盤性状判定方法の説明を行う。なお、地盤性状判定方法では、図1に示す地盤性状判定装置を必ずしも使用する必要性がないのはもちろんである。
図2に示すように、地盤性状判定方法SAは、地盤形成ステップS1と、構造物貫入ステップS2と、地盤断面形成ステップS3と、温度分布測定ステップS4と、判定ステップS5と、からなる。
【0037】
図2(a)示すように、地盤形成ステップS1は、人工的に有底型枠30内に地盤Bを形成する。有底型枠30は、図2(a)、(c)示すように、ここでは、上部が開口した型底31を有する円筒の筒状体であり、側面壁が2つ割れするように対面する側面壁の位置にフランジ部32、32を備えている。そのため、有底型枠30は、側面型端となるフランジ部32,32を固定しているボルト等を取り外すことで、フランジ部32,32を互いに離間する方向に移動させると、側面壁の半分が取り外しされ内部に収納している地盤Bを露出させることができるものである。
【0038】
有底型枠30内に形成される地盤Bは、ここでは、珪砂と粘土を1対9から9対1の範囲における所定の割合で混合した混合土とし、その混合土に3〜30%の水の含水率となるように添加して形成されている。なお、混合土は、珪砂と粘土の割合が2対8から8対2の範囲であることが好ましく、さらに、3対7から7対3の範囲であることがより好ましく、特に、3対7から4対6の範囲であることが最も好ましい。
【0039】
そして、混合土に添加された水の含水率の割合は、5〜20%であることが好ましく、6〜15%であることがより好ましく、7〜10%であることが最も好ましい。
したがって、地盤Bは、珪砂と粘土を3対7から4対6の範囲で、添加される水が7〜10%の含水率であることがより好ましい状態である。なお、珪砂と粘土を3対7とし、かつ、添加された水の含水率を7%としたときに、後記する温度分布の測定を行った場合、最も温度分布の状態が鮮明に表示される。
【0040】
地盤形成ステップS1では、有底型枠30に収納された地盤Bは、形成されるときに、重りあるいは木槌等により所定の硬さに締め固めされる。そして、有底型枠30内に地盤Bが人工的に形成されると、構造物貫入ステップS2として杭(構造物)12を所定の施工条件により当該地盤Bに貫入させる。
【0041】
この構造物貫入ステップS2では、図2(b)に示すように、杭12を所定の施工条件により地盤Bに貫入させるために、貫入速度、回転速度、あるいは、打撃が必要なものであれば、ハンマリング機構、振動による圧入を行うものであれば、バイブレーション機構を介して杭12を地盤Bに貫入している。
【0042】
例えば、図1に示すように、一例として、ロードセルユニット13aおよびトルク計13bを備える回転機構13と、圧入機構としての昇降機構14とを用いて、所定回転速度において所定貫入速度になるように調整して、有底型枠30に人工的に形成された地盤Bに杭12を貫入している。
なお、ここで使用される杭12(図10(a)参照)は、その先端が胴体部分より先端に向かうに従って細くなるように形成された堀削刃を有し、かつ、その堀削刃の直上の胴体部分に螺旋翼を有するものを例示して説明する。
【0043】
杭12が地盤Bに貫入されると、図2(c)に示すように、地盤断面形成ステップS3において、杭12の一部または杭12を貫入した貫入部周辺の地盤が露出するように一部の地盤を除去する。この地盤断面形成ステップS3は、ここでは、地盤性状判定装置10における除去機構15を用いて除去することや、あるいは、作業者の手作業により地盤切断工具等を使用して行っても構わない。なお、地盤Bの一部を除去する際には、有底型枠30の側面壁を取り外して地盤Bの一部を除去している。
【0044】
地盤断面形成ステップS3において形成される地盤断面BSは、測定する目的に応じてその断面位置が決定される。例えば、地盤断面形成ステップS3では、杭12の半周面が露出するように一部の地盤を除去して地盤断面BSを形成すると、杭12の左右の地盤の性状が最大面積となるように設定できる。
【0045】
なお、形成される地盤断面BSは、例えば、図3(a)に示すように、杭12の一部が軸線方向において露出するように、小さな角度の扇型を同じ幅となる扇型柱状に除去(切り取った)して地盤断面BS1として形成することや、あるいいは、図3(b)に示すように、貫入した杭12の貫入部周辺の地盤断面BS2が露出するように形成しても構わない。また、図3(c)に示すように、地盤断面BS3として、杭12を垂直としたときにその垂直から所定角度の斜面が露出するように形成してもよい。さらに、図3(d)に示すように、地盤断面BS4として、斜面と垂直面とが同時に形成されるようにすることや、あるいは、図3(e)に示すように、杭12の側面が露出する部分としない部分の両垂直断面が露出するように地盤断面BS5として形成しても構わない。
【0046】
地盤断面BSが形成されると、図2(d)に示すように、温度分布測定ステップS4において、形成した地盤断面BSについて赤外線熱画像装置(サーモグラフィ)20により温度分布を、その杭12が貫入されてから予め設定された時間内に測定する。この温度分布測定ステップ4では、杭12が貫入されてから予め設定された時間内として15分以内に測定している。杭12を貫入して地盤断面BSを形成しなるべく迅速に測定することで、杭12が貫入したときに土粒と接触して発生する熱の状態を明確に認識できるため、好ましくは杭12を貫入してから10分以内、より好ましくは、5分以内であることが望ましい。
【0047】
そして、図2(e)に示すように、判定ステップS5において、地盤断面BSの温度分布が測定されて測定表示部22の画面に表示されると、その温度分布を示す地盤断面BSの状態が、杭12を貫入する前では、ほぼ一様な温度分布であることと比較して温度変化した温度分布となることで、地盤の性状を示しているので、杭12の地中内における当該杭外周地盤の性状として判定することができるものである。なお、判定ステップS5において、温度分布の状態と、地盤の性状である硬度分布の状態とが相関関係を示すことは、すでに述べたようにして本発明者において新たに確認されたものである。
【0048】
地盤の硬度分布と温度分布との相関関係について図4、図5を参照して説明する。図4に示すように、温度分布を測定した地盤断面BSに、所定幅となる網目mを有する枠体Mをスケールガイドとして配置し、その網目mの交差点において、ハンディタイプのポケットペネトロメータ(地盤硬度測定器)Pにより地盤断面BSの硬度を測定する。そして、図5(a)、(b)に示すように、地盤断面BSにおける温度分布の画像G1の状態と地盤硬度分布の画像Gsの状態を比較してみると、ある硬度の範囲と、温度分布のある色の範囲とが同じ分布状態で表れていることが分かる。すなわち、地盤断面BSを地盤硬度測定器Pで多数の測定ポイントにおいて測定した画像Gsと、赤外線熱画像装置20において測定した温度分布を示す画像G1とでは、ほぼ一致する分布状態となる。
【0049】
例えば、図5(a)に示すように、所定範囲の値以上の硬度(硬度大)と、所定範囲の値の硬度(硬度小)と、硬度小とする値以下となる硬度それぞれのエリア範囲は、図5(b)に示すように、所定範囲の値以上となる温度(赤色)と、所定範囲の値の温度(ピンク色)と、それ以下の温度の値(うすい青色)となる温度それぞれのエリア位置および範囲と、ほぼ対応するように示されている。そのために、地盤断面BSの温度分布を測定すれば、地盤断面BSの性状である例えば地盤硬度の状態が判定でき、その結果、構造物に対する地盤の支持力等が判定できることになる。なお、図5(a)では、「応力の伝達力なし」は、硬度が0.15(N/mm2)以下、「硬度小」は、0.15〜0.30(N/mm2)の範囲、「硬度大」は、0.30〜0.40(N/mm2)の範囲として示す。そして、図5(b)では、「うすい青色」は、杭を貫入する前の地盤温度に対して温度差が0,0〜0.5℃の範囲、「ピンク色」は、0.5〜0.8℃の範囲、「赤色」は、0.8〜1.0℃の範囲として示す。ここで示す色表示は、赤外線熱画面装置20において任意に設定できるものであることはいうまでもない。
【0050】
図5に示すように、高い温度を示すエリア範囲を赤色で表示したとき、その赤色に近い色のエリア範囲が大きいほど、地盤が杭12の貫入の影響を受けたことを示している。また、地盤の温度が高いときに、地盤の硬度が大きいということは、その赤色に近いエリア範囲が杭12の周りに多く分布していれば、地盤に対する支持力が大きくなっていることを示しているといえるはずである。また、図示しないが、逆に、温度が低いエリア範囲が杭12の周りに広く分布しているとしたら、地盤に対する乱れの影響を伴って、杭12の地盤に対する支持力は、小さくなくなっているといえる。
【0051】
なお、回転させて貫入した杭12では、その先端支持力や摩擦抵抗等についても温度分布から判定することができる。つまり、杭12を回転貫入させることにより杭12の先端部に極限鉛直荷重を作用させると、杭12の周辺と先端部の地盤とが破壊されて土粒子の粗密に変化が現れ、その結果、土粒子の密度変化の状態を温度分布によって捉えることができる。
【0052】
なお、図6に示すように、構造物貫入ステップS2と地盤断面形成ステップS3の間に、引抜動作ステップS2aを行うことで、構造物12の引き抜きにおける接地圧力分布と摩擦抵抗との関係を、地盤断面の温度分布を示す画像から判定することができる。この引抜動作ステップS2aを行う場合においては、図7に示すように、有底型枠30は、既に説明した構成の他に、形成した地盤Bが有底型枠30からすっぽり抜けないためのストッパとして周縁部34と、有底型枠30自体が持ち上がらないための固定用フランジ部33とを備えていると都合がよい。
【0053】
そのため、引抜動作ステップS2aを含む地盤性状判定方法SBでは、構造物貫入ステップS2により貫入させた杭12を、軸線方向に例えば図1の昇降機構14を介して予め設定された力で一定時間上昇させる動作を行い、その後、すでに説明した地盤断面形成ステップS3、その他のステップを行って杭12の一部を地表方向へと移動させ、地盤断面BSの温度分布を測定した画像から地盤断面BSの性状を判定することができる。なお、引抜動作ステップS2aを行った場合の地盤断面における温度分布の状態を図8(d)に示す。図8(a)〜(e)は地盤性状判定方法で使用される各構造物の地盤断面での性状を視覚的に認識できる状態として模式的に示す断面図である。図8(d)に示すように、引抜動作ステップS2aを行った場合、図8(a)の温度分布の状態と異なることが分かる。すなわち、杭12の引抜動作により地盤断面BSに杭12の引抜動作により発生した温度分布の状態が扇型に示されており、引抜動作による地盤断面BSの性状が判定できる。
【0054】
なお、図8(b)に示すように、先端から後端まで一様な棒状の杭12Aを所定の施工条件により地盤Bに貫入させたときは、図8(a)の状態と比較して、杭12Aの場合と、杭12の場合とでは、地盤断面BSに示される温度分布の状態が異なることが分かる。それと同様に図8(c)に示すように、段差を備える杭12Bの場合も、図8(a)の地盤断面BSの温度分布の状態が異なることが判定できる。
【0055】
したがって、地盤性状判定方法SA、SBは、図8(a)〜(d)に示すように、形状の異なる杭12,12A,12B等あるいは、地盤に対する異なる力を付加することによる地盤断面BSにおける性状の状態が認識できる。そのため、現場にて構造物における施工上の問題(例えば、支持力)が発生した場合、その施工状況に対する問題点の究明を行うための原因を視覚的に探ることや、あるいは、新たな構造物による施工方法を探求するときのヒントを探るためや、さらには、地盤の性状を学習教材として、地盤断面の温度分布を観察することで視覚的に判定できるので都合がよい。
【0056】
また、図8(e)に示すように、地盤Bに貫入しないT字型の構造物としての脚体12Cによる地盤Bの性状を判定することも可能となる。この脚体12Cの地盤Bに対する性状を判定するための地盤性状判定方法SC(図6参照)として図9を参照して説明する。なお、すでに説明した構成については同じ符号を付して説明を省略する。また、地盤性状判定方法SCは、図6において、地盤性状判定方法SAの構造物貫入ステップS2の代わりに、構造物押圧ステップSbを行うものである。
【0057】
図9(a)に示すように、地盤形成ステップS1を行い、つづいて、図9(b)に示すように、形成した地盤Bに対して、構造物であるT字型の脚体12Cを所定の押圧力により押圧する構造物押圧ステップSbを行う。この構造物押圧ステップSbでは、図1に示す杭12の代わりに脚体12Cを用いて所定の押圧力、押圧速度(回転を付加しても可)で、所定時間において地盤Bを押圧する。
【0058】
さらに、脚体12Cを上昇させ、地盤断面形成ステップS3、温度分布測定ステップS4、判定ステップS5を行う。温度分布測定ステップS4は、脚体12Cを上昇させてから迅速に行うことにより、より鮮明に地盤断面BSの温度分布を測定することが可能となる。
なお、脚体12Cを押圧したままで、地盤断面形成ステップS3以降の各ステップを行っても構わない。
以上説明したように、地盤性状判定方法SCでは、脚体12Cを地盤Bに押圧したときの地盤の性状は温度分布を測定することで判定が可能になる。
【0059】
[実施例]
つぎに本発明の実施例を、図10ないし図12を参照して説明する。なお、この実施例で使用された地盤性状判定装置は、図1に示すものとする。ここでは、杭の螺旋翼を一種類にし、回転速度を40回/minと一定にして、4種類の貫入速度の杭について、貫入速度の違いが杭外周地盤の乱れに及ぼす影響を、図11に示すように、ポケットペネトロメータの測定による硬度を示す画像(右側列)、着色層の変化を示す画像(中央列)、およびサーモグラフィによる温度分布を示す画像(左側列)から判定した。
【0060】
図10(a)に示すように、使用する構造物となる回転貫入する杭は、軸径が48.7mm、螺旋翼径が72.8mm、螺旋翼が形成されているピッチ13.7mm、先端の掘削刃の高さが18.2mmに形成されたものを使用した。また、有底型枠としての模型土槽は、鋼製であり、直径が260mm、高さが500mmのものを使用した。この模型土槽(以下、土槽という)は、二つに割れになっており、杭貫入後に地盤を垂直方向に切断できるように構成されている。
【0061】
使用した地盤は、笠岡粘土と7号系珪砂とを笠岡粘土7対7号系珪砂3の割で混合土を形成し、水を混合土1kgに対して7%添加して形成した。混合土を7対3にした理由は、この比率がサーモグラフィの画像を最もよくここでは反映することを見出したからである。そして、この地盤の土粒は、図10(b)に示すものを使用した。そして、この土粒を5回に分けて土槽に投入し、それぞれの投入ごとに木槌にて10回打撃して締め固めた。そして、地盤は、締め固め後の乾燥密度が、1.02t/m3である。なお、投入ごとに層が分かるように着色した色砂(笠岡粘土または7号系珪砂のいずれかに着色)を配置した。
【0062】
このように人工的に形成した地盤に対して、回転速度を40回/minと一定にし、4種類の貫入速度(45,90,270,450mm/min)にて杭を貫入した。それぞれの貫入速度を1回当たりの貫入量で表すと、45mm/minの場合、1.125mmとなり、90mm/minの場合、2.250mmとなり、270mm/minの場合、6.750となり、450mm/minの場合、11.250mmとなった。
【0063】
杭を地盤に貫入後、側壁面の半分を開放して地盤の半分を除去し地盤断面を形成し、22mmの網目の枠体を配置して、その網目の交点における地盤の硬度をポケットペネトロメータにより測定し、また、サーモグラフィにより地盤断面の温度分布を測定し、地盤断面を画像として撮影した。その状態を図11に示す。図11では、各貫入速度において、中央列が色砂を視認できる画像とし、その左側例の画像が地盤硬度の分布を示し、中央列の右側列の画像が地盤の温度分布を示すものである。なお、地盤断面の地盤硬度の分布は、杭を貫入する前にも行っており、ポケットペネトロメータによる測定では、貫入力量が5〜10Nであった。また、同様に杭の貫入前の地盤断面の温度分布の測定を行っており、測定温度が1℃であった。
【0064】
また、図12は、地盤の深度、杭(構造物)の回転速度およびトルクとの関係を示すグラフ図であり、貫入速度45mm/minおよび90mm/minの場合のトルクは、深度方向に対して増大し続けていることが分かる。また、貫入速度270mm/minの場合は、深度200mmからトルクが一定となり、また、貫入速度450mm/minの場合は、深度150mm当たりからトルクが一定となっていることが分かる。このことは、杭の貫入性状が大幅に異なっていることを予想させる。
【0065】
図11に示すように、貫入速度45mm/minおよび90mm/minの場合の地盤断面では、ポケットペネトロメータによる測定によると、貫入力量が杭外周辺地盤では、55〜60Nまで増大した(5〜10Nと比較して大きく増大した)。一方、貫入速度270mm/minおよび450mm/minの場合の地盤断面では、5N以下に低下しており、明らかに杭外周地盤が乱されていることが分かる。この杭外周地盤の状態の乱れを地盤硬度の分布と対応している温度分布により示す画像からも明らかとなっていることが分かる。
【0066】
つまり、貫入速度270mm/minおよび270mm/minの条件で杭を貫入させた場合、図11(c)、(d)に示すように、中央列において、杭の周囲に空洞が形成されてしまい、杭を貫入させた後の地盤への影響が大きいことを示している。この杭の回りに空洞が形成される状態は、左側列および右側列で示す硬度分布および温度分布の測定結果にも対応している。
一方、貫入速度45mm/minおよび90mm/minの条件で杭を貫入させた場合、図11(a)、(b)に示すように、中央列において、杭の周りに空洞が形成されることはなかった。さらに、貫入速度45mm/minの場合では、90mm/minの場合と比較すると、杭の周りの地盤において影響を強く受けている範囲が広いことが分かる。そして、貫入速度90mm/minの場合、45mm/minと比較すると、図11(b)に示すように、左側列において、小さな影響の範囲は広いが、地盤へ強い影響を与えている範囲が狭いことが分かる。したがって、貫入速度90mm/minの場合、他の条件と比べて、螺旋翼の形状と貫入速度とが最適の関係にあって、良好な施工状態にあることを示している。
【0067】
地盤断面を示す画像では、1℃から2℃前後に温度が上昇していることが測定され、また、温度上昇の温度分布は、杭の貫入速度により異なることが分かる。地盤(地盤断面)における温度上昇は、杭の貫入に伴って土粒子が移動し、その移動に伴って発生する土粒子相互の摩擦熱や螺旋翼と土の摩擦によるものと考えられる。ここでいう高温領域を示す範囲が比較的に狭いことから、温度上昇範囲が狭い図11(a)(b)では、螺旋翼の推進力が作用している状態を表していると考えられる。一方、図11(d)では、杭の周囲に高温領域を示す範囲が比較的に広がっていることから、温度上昇範囲が広く、昇降機構14(図1参照)からの押し込み力により、強制的に貫入された状態を表していると考えられる。
【0068】
以上説明したように、地盤断面の温度分布を測定して画面に表示することで、地盤の性状を、その表示した画像にける色別の分布状態と割合から判定することができ、その判定の結果は、ほぼ硬度測定器等の測定機器で行った結果と一致していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る地盤性状判定装置の全体を模式的に示す模式図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明に係る地盤性状判定方法の各ステップを模式的に示す斜視図である。
【図3】(a)〜(e)は、本発明に係る地盤性状判定方法における地盤断面ステップで形成される地盤断面のそれぞれの状態を示す斜視図である。
【図4】(a)、(b)は、本発明で用いる地盤断面の温度分布と地盤断面の硬度分布を比較するときに地盤断面の硬度分布を測定する一例を示す斜視図である。
【図5】(a)、(b)は、本発明で使用する地盤断面の温度分布と地盤断面の硬度分布を比較した状態を示す画像の正面図である。
【図6】本発明に係る地盤性状判定方法の流れを示すフローチャート図である。
【図7】(a)、(b)は、本発明に係る地盤性状判定方法において引抜動作ステップの状態を模式的に示す斜視図である。
【図8】(a)〜(e)は、本発明に係る地盤性状判定方法で使用される各構造物の地盤断面での性状を視覚的に認識できる状態として模式的に示す断面図である。
【図9】(a)〜(e)は、本発明に係る他の地盤性状判定方法における各ステップを模式的に示す斜視図である。
【図10】(a)は、本発明に係る地盤性状判定方法の実施例において地盤に使用した土粒の粒径と通過質量百分率との関係を示すグラフ図、(b)は杭の先端部分の構成を示す模式図である。
【図11】(a)〜(d)は、本発明に係る地盤性状判定方法の実施例において地盤硬度分布画像(左側列)と、地盤視覚画像(中央列)と、地盤温度分布画像(右側列)とを比較した状態を模式的に示す模式図である。
【図12】本発明に係る地盤性状判定方法の実施例において地盤の深度、構造物の回転速度およびトルクとの関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0070】
SA 地盤性状判定方法
SB 地盤性状判定方法
SC 地盤性状判定方法
B 地盤
BS 地盤断面
S1 地盤形成ステップ
S2 構造物貫入ステップ
S2a 引抜動作ステップ
S3 地盤切断ステップ
S4 地盤断面測定ステップ
S5 地盤断面判定ステップ
10 地盤性状判定装置
11 フレーム
12 杭(構造物)
13 回転機構(貫入機構)
14 昇降機構(貫入機構)
15 除去機構
17 係合部
20 赤外線熱画像装置
21 赤外線熱測定部
22 測定表示部
L1 スライド機構
L2 スライド機構
30 有底型枠
31 型底
32 フランジ部
BS1〜BS5 地盤断面
M 枠体
m 網目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物が押圧する地盤における地盤断面の温度を測定し、測定した温度分布から前記地盤の性状を判定する地盤性状判定方法であって、
有底型枠内に人工的に地盤を形成して収納する地盤形成ステップと、
前記有底型枠の開口側から前記地盤に押圧させる構造物を、予め設定された施工条件により前記地盤に押圧する構造物押圧ステップと、
前記構造物により押圧した地盤の前記有底型枠における側面の少なくとも一部を開放させ、前記構造物により押圧した地盤の地盤断面を形成する地盤断面形成ステップと、
前記地盤の地盤断面に対して赤外線熱画像装置により、当該地盤断面の温度分布を、前記地盤に構造物を押圧してから予め設定された時間以内に測定する温度分布測定ステップと、
測定した前記地盤断面の温度分布を示す画像から、前記地盤の性状を色別の分布状態と割合で判定する判定ステップと、
を含むことを特徴とする地盤性状判定方法。
【請求項2】
地盤内に貫入される構造物の外周地盤の温度を測定し、測定した温度分布から前記地盤の性状を判定する地盤性状判定方法であって、
有底型枠内に人工的に地盤を形成して収納する地盤形成ステップと、
前記有底型枠の開口側から前記地盤に貫入する構造物を予め設定された施工条件により貫入させる構造物貫入ステップと、
前記構造物が貫入した地盤の有底型枠における側面の少なくとも一部を開放させ、前記地盤内の構造物の少なくとも一部または貫入部周辺が現れるように前記地盤の一部を除去して地盤断面を形成する地盤断面形成ステップと、
前記地盤の地盤断面に対して赤外線熱画像装置により、当該地盤断面の温度分布を、前記地盤に構造物を貫入させてから予め設定された時間以内に測定する温度分布測定ステップと、
測定した前記地盤断面の温度分布を示す画像から、前記地盤の性状を色別の分布状態と割合で判定する判定ステップと、
を含むことを特徴とする地盤性状判定方法。
【請求項3】
前記地盤形成ステップにおいて前記地盤は、珪砂と粘土とを9対1から1対9の範囲においていずれかの割合で混合した混合土とし、前記混合土に含水率が3〜30%の範囲においていずれかの割合となるように添加して形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の地盤性状判定方法。
【請求項4】
前記地盤断面形成ステップにおいて露出させる前記地盤断面は、前記構造物を中心として当該構造物の軸線周りにおける半周面が露出する断面であることを特徴とする請求項2に記載の地盤性状判定方法。
【請求項5】
前記構造物貫入ステップにおいて前記構造物が杭であり、かつ、前記施工条件が、前記杭を予め設定された貫入速度により前記地盤に貫入させることを特徴とする請求項2または請求項4に記載の地盤性状判定方法。
【請求項6】
前記構造物貫入ステップと前記地盤断面形成ステップの間に、前記貫入した構造物を予め設定した力で地盤から引き抜く方向に動作させる引抜動作ステップを行うことを特徴とする請求項2に記載の地盤性状判定方法。
【請求項7】
地盤に貫入した構造物の外周地盤の性状、または、構造物により押圧した地盤の性状を、温度分布により判定する地盤性状判定装置であって、
人工的に形成した地盤を収納する有底型枠と、この有底型枠内の地盤に構造物を予め設定された施工条件により、押圧させるか、または、貫入させる貫入機構と、この貫入機構により前記構造物により押圧した地盤、または、前記構造物を貫入した地盤について、前記有底型枠の側面の一部を解放した状態で、前記地盤の一部を除去して地盤断面を形成するか、または、前記地盤に貫入している構造物の少なくとも一部が露出するように前記地盤を除去して地盤断面を形成する除去機構と、この除去機構で除去して形成した前記地盤断面の温度分布を測定して前記地盤断面における色別の分布状態と割合で画面に表示する赤外線熱画像装置と、を備えることを特徴とする地盤性状判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−208338(P2006−208338A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24507(P2005−24507)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年7月31日に社団法人日本建築学会により発行された2004年度大会(北海道)学術講演梗概集B−1分冊にて発表 平成16年8月30日に社団法人日本建築学会が主催した2004年度大会(北海道)において、「回転貫入杭の貫入速度が杭外周地盤の乱れに及ぼす影響」の表題にて発表
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】