説明

地盤改良工法

【課題】簡易構成により、特に、施工機の総重量に起因した変位を抑えることができるようにする。
【解決手段】攪拌軸6及び前記攪拌軸に沿って固化材を移送して原地盤中に吐出する供給機構を有した施工機を用いて、対象の地盤改良領域で前記施工機を移動しながら、前記供給機構が前記攪拌軸6の貫入過程などで前記固化材を吐出して原地盤の土と混合した自硬性流動物15aにより造成される改良杭15を、縦横方向に多数を順に造成する地盤改良工法において、前記改良杭15を造成する際は前記自硬性流動物15aを深さ方向に形成する過程で、前記自硬性流動物のうち地表に上昇し排出されるものを自硬性排泥15bとして用いて造成される改良杭と一体となった足場層16を形成し、前記施工機をその足場層16に沿って前進移動して、足場層16及び造成された改良杭15により施工機の総重量を分散支持するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象の地盤改良領域において施工機を移動しながら縦横方向に多数の改良杭を造成する地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良工法には、攪拌軸及び攪拌軸に沿ってセメントスラリーなどの固化材を移送して原地盤中に吐出する供給機構を有した施工機を用い、対象の地盤改良領域で施工機を移動しながら、供給機構が攪拌軸の貫入過程、又は、貫入及び引き抜き過程で固化材を吐出して原地盤の土と混合した自硬性流動物により造成される改良杭を、縦横方向に多数を順に造成することがある。この工法は深層混合処理工法とも称されており、通常は攪拌軸の下側に攪拌翼を有し、供給機構から吐出された固化材を原地盤の土と機械的に混合攪拌される。
【0003】
以上の工法では、杭打設順序として、施工機総重量(数十トン〜数百トン)の影響を受けないようにするため、造成された改良杭ないしは杭列に施工機が載らないように移動する打ち下がり施工が好適とされる。特に、既設構造物(河川を含む。以下、同じ)に接近した領域の施工では、変位影響を最小限に抑える方法として、低変位型の供給機構や比較的軽い施工機を選定して、既設構造物から離れる方向へ移動する打ち下がり施工が多用されている。
【0004】
すなわち、地盤改良領域の付近に既設構造物がある場合は、まず、改良杭を既設構造物に最も近い側に沿って造成し、そこから既設構造物に対し離れる側に向けて、他の改良杭を順に造成する。これは、造成された改良杭や杭列が保護壁として機能し、その後に造成される改良杭による地盤の変形を食い止め既設構造物への影響を防ごうとするものである。他の対策には、既設構造物と地盤改良領域との間に膨張を吸収する変位吸収孔を設けることもある。更に、特許文献1の対策は、図6に示されるごとく固化材に硬化遅延剤を混入することにより、N列目の改良杭列を施工する際には少なくともその直前に施工したN−1列目の改良杭列が未硬化状態を維持するようにして、その未硬化の改良杭列を変位吸収孔として機能させる構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−60880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した防護壁、変位吸収孔、特許文献1の対策は、片側が河川であるような地形条件や既設構造物に極めて近い領域では適用できない場合が多く、しかも原地盤中への固化材の吐出により地盤の体積膨張に起因した変位に有効であっても、施工機の総重量に起因した変位については機能しなかった。この点は、上記した打ち下がり施工でも同様であり、改良杭又は杭列の造成前に施工機の総重量により周囲地盤あるいは周囲構造物に変位を生じ、軽量な施工機に交換しなければならなかった例も報告されている。
【0007】
本発明者らは、以上のような背景から、地盤改良領域が非常に軟弱であったり施工機の総重量が制約されるような実際の施工をとおして、改良杭造成時の地盤の体積変化に起因した変位とともに、改良杭造成前に施工機の総重量に起因した地盤の変位を最小限に抑える方法を検討してきた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の目的は、簡易構成により、特に、施工機の総重量に起因した変位を抑えることができる地盤改良工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、攪拌軸及び前記攪拌軸に沿って固化材を移送して原地盤中に吐出する供給機構を有した施工機を用いて、対象の地盤改良領域で前記施工機を移動しながら、前記供給機構が前記攪拌軸の貫入過程などで前記固化材を吐出して原地盤の土と混合した自硬性流動物により造成される改良杭を、縦横方向に多数を順に造成する地盤改良工法において、前記改良杭を造成する際は前記自硬性流動物を深さ方向に形成する過程で、前記自硬性流動物のうち地表に上昇し排出されるものを自硬性排泥として用いて造成される改良杭と一体となった足場層を形成し、前記施工機を前記足場層に沿って前進移動して、その足場層及び前記造成された改良杭により施工機の総重量を分散支持することを特徴としている。
【0009】
以上の本発明において、『固化材』としては、セメントスラリーやそれに類似のものである。『供給機構』としては、施工時に攪拌軸の貫入や固化材の吐出による原地盤の体積膨張ないしは変位を低減するため、原地盤に吐出された固化材を原地盤の土と混合して自硬性流動物とし、その一部を地表に排出可能なものである。これには、請求項4に特定した混合エジエクター吐出方式以外にも、例えば、特公平4−57805号公報、特許第3075449号公報、特許第3125244号公報に開示されている機構、それらに類似する機構を含む。
【0010】
以上の本発明は請求項2から4のように具体化されることがより好ましい。すなわち、
(1)前記地表に排出される自硬性排泥は前記自硬性流動物とほぼ同じ組成からなる構成である(請求項2)。
(2)前記足場層はその下に造成される改良杭を略中心とする広がりで設けられている構成である(請求項3)。
【0011】
(3)前記供給機構は、前記攪拌軸の下部又は攪拌軸に取り付けられた攪拌翼に設けられて、固化材供給手段より導入される固化材を圧縮エアー供給手段より導入される圧縮エアーに同伴して、圧縮エアーと固化材とを霧状に吐出する混合エジェクターを有している構成である(請求項4)。この混合エジェクターは、例えば特許第3622903号公報に開示されているごとく、圧縮エアーと固化材とを霧状に吐出することにより、原地盤の土粒子間の結合力を低減し、固化材と原地盤の土との混合攪拌を促進して均一な自硬性流動物を得られるようにし、かつ、その自硬性流動物の一部を圧縮エアーのリフトアップ効果により地上に排出され易くする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明は、改良杭の造成過程において、供給機構より吐出される固化材と原地盤の土とを混合した自硬性流動物を深さ方向に形成するが、その際、自硬性流動物のうち地表に排出されるものを自硬性排泥として使用して足場層を形成する。施工手順としては、従来の打ち下がり施工とは逆の前進施工、つまり施工機を造成される改良杭と一体化している足場層に沿って前進移動する。このため、本発明は、改良杭の造成過程で地表に上昇排出される自硬性流動物を足場の材料として活用し、かつ、造成される改良杭と一体となった足場層によって施工機の総重量を分散支持して施工機荷重に起因した変位を簡易に低減できる。すなわち、本発明の前進施工は、施工機の総重量に起因した変位を防ぐ変位低減対策として有効にしたことに意義がある。勿論、改良杭が足場層に一体化されているため大きな荷重を受けても変位し難くなる点でも優れている。
【0013】
請求項2の発明は、地表に排出される自硬性排泥は原地盤中に形成される自硬性流動物の一部であり、良質な自硬性排泥として足場層の材料に用いられる点を確認的に特定したものである。
【0014】
請求項3の発明は、足場層はその下に造成される改良杭を略中心とした広がりで設けられているため、造成される改良杭により効率的に補強された状態となり、施工機に対する安定した支持力を付与できる。
【0015】
請求項4の発明は、供給機構が上記した混合エジエクター有し、該エジェクター吐出方式により、原地盤の土粒子間の結合力を低減し、固化材と原地盤の土とを均一に混ぜた自硬性流動物を得られるようにし、その自硬性流動物の一部を圧縮エアーのリフトアップ効果により地上に排出され易くして、原地盤中に吐出される固化材に起因した地盤の体積変化を低減できるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a),(b)は本発明工法の前進施工を説明するための模式図である。
【図2】本発明工法に用いられた供給機構を構成している混合エジェクターなどを示す構成図である。
【図3】本発明工法を適用して地盤改良された第1施工例を示す模式図である。
【図4】上記第1施工例における変位計測結果を示すグラフである
【図5】本発明工法を適用して地盤改良された第2施工例を示す模式図である。
【図6】上記第2施工例における変位計測結果を示すグラフである
【図7】特許文献1に開示されている打ち下がり施工を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の形態例を図面を参照しながら説明する。この形態例では、実際の地盤改良として、図3に示される地盤改良領域で適用した実施例1、図5に示される地盤改良領域での適用した実施例2を挙げる。図1及び図2は各実施例の地盤改良工法に適用した要部を示す模式図である。以下の説明では、各実施例で採用した地盤改良工法において、使用された施工機特徴及び工法特徴を明らかにした後、図3の実施例1、図5の実施例2について詳述する。
【0018】
(施工機特徴)図1及び2は各実施例で適用した地盤改良工法の要部を模式的に示している。まず、地盤改良工法に使用される施工機は、走行式ベースマシン1と、ベースマシン1で移動可能に起立された支持リーダー2と、支持リーダー2の一側に沿って上下動される昇降機構3と、昇降機構3に保持されている回転駆動機構4及びスイベル5と、昇降機構3により昇降されるとともに回転駆動機構4により回転される攪拌軸6と、攪拌軸6の下側に設けられた複数段の攪拌翼7と、攪拌軸6に沿って移送された圧縮エアーと固化材とを霧状に原地盤中に吐出する供給機構とを備えている。
【0019】
施工時には、攪拌軸6が支持用リーダー2及び昇降機構3を介して上下動可能に支持され、地盤下へ貫入されたり引き抜かれる。回転駆動機構4は、攪拌軸6をモーター及び減速ギア機構等を介し正転・逆転するもので、攪拌軸6と共に支持リーダー2に沿って昇降される。符号9は上昇排出される噴射エアーによる汚れを防ぐ防護カバーである。
【0020】
攪拌軸6は、実施例1では図1の拡大図のごとく単軸構成、実施例2では図2に模式化したごとく2軸構成で、各軸の攪拌翼7はそれぞれ2枚で3段構成となっている。また、2軸構成では、各軸の撹拌翼7同士が互いの回転軌跡とラップしない状態に配置されるとともに、両攪拌軸6の間に介在された共廻り防止板17を有している。共廻り防止板17は、攪拌軸6同士の間隔を維持し、各撹拌翼7の回転に伴う土の移動を阻止し易くする。攪拌軸6には施工条件に応じて不図示の掘削刃が下端に装着される。
【0021】
また、上記供給機構は、攪拌軸6の内部上下方向に沿って配置されている配管経路13,14と、地表側に設けられた不図示の固化材供給手段及び圧縮エアー供給手段と、攪拌軸6の下側又は攪拌翼7に装着された混合エジェクター8とを備えている。このうち、配管経路13,14の各上端は、固化材供給手段及び圧縮エアー供給手段の対応配管経路に対しスイベル5などを介し接続されている。各下端は、直に又は接続パイプを介し軸外へ貫通されて、混合エジクター8の対応入口側に接続されている。
【0022】
混合エジェクター8は、図2に原理を示すごとく エアー供給部8a、セメントスラリー(固化材)供給部8b、混合室8c、吐出口8dなどを有している。そして、この構造では、供給部8b内に導入されたセメントスラリーは、供給部8aから導入される圧縮エアーに乗せられて混合室8cに入った後、吐出口8dから所定噴射圧で吐出される。なお、以上の固化材供給手段、圧縮エアー供給手段、混合エジェクター9については、特許第3416744号公報や特許第3622903号公報などを参照されたい。
【0023】
(工法特徴)地盤改良工法では、図1に示されるごとく対象の改良地盤領域10に多数の改良杭15を縦横に順に造成する。この場合、改良杭15は図1の下側に示したごとく杭列L1、L2、L3、L4・・・の順に造成される。この杭造成では、固化材であるセメントスラリーを原地盤の土と攪拌混合した自硬性流動物15aが深さ方向に形成される。この過程では、自硬性流動物15aのうち地表に上昇し排出されるものを自硬性排泥15bとして用い、造成される改良杭15と一体となった足場層16が形成される。杭打設順序としては、施工機を足場層16に沿って前進移動つまり前進施工により行う。
【0024】
詳述すると、施工に際しては、施工機が改良地盤領域10の施工箇所に移動されて、最初の杭造成予定部に位置決めされる。杭造成予定部には、足場層16に応じた凹部12が杭造成に先立って形成される。凹部12は杭造成予定部の地表側の地盤を所定深さに掘削したもの、枠体等で自硬排泥15bを貯めるようにしてもよい。凹部12や前記枠体の設計は、施工箇所の地盤性状や打設する固化材性状などの施工条件、改良杭の造成過程において原地盤に吐出した固化材が地中から地表へ排出される排出量などを考慮し、深さと面的広さが設定される。通常は、例えば30cm〜150cm程度の深さで、かつ、隣接する改良杭同士の上部を足場層16により一体物に連結する大きさである。また、凹部12又は凹部12内に形成される足場層16は、その下に造成される改良杭15の杭径に応じた杭用縦孔11を略中心とする広がりで設けられることが好ましい。
【0025】
施工では、攪拌軸6が回転駆動機構4により回転されて所定の深さまで貫入される。この貫入過程、又は、貫入と引き抜きの各過程にて攪拌混合が行われる。この操作では、例えば、固化材であるセメントスラリーが配管経路13を通って混合エジェクター8の供給部8bに圧送されるとともに、圧縮エアーが配管経路14を通って混合エジェクター8の供給部8aまで圧送される。そして、混合エジェクター8は、供給部8aが所定圧になると不図示の弁機構が開状態に切り換えられ、圧縮エアーが供給部8aから混合室8cへ導入され、供給部8bのセメントスラリーがその圧縮エアーに乗せられて混合室8cに入った後、吐出口8dから圧縮エアーとセメントスラリーとを霧状に原地盤の土へ向けて噴出する。この噴出態様は、セメントスラリーが圧縮エアーに同伴されて霧状に噴出され、例えば撹拌翼7の回転軌跡内で撹拌翼7の回転方向である前方へ噴射している。
【0026】
以上のエアー同伴吐出態様では、圧縮エアーの噴射圧及びセメントスラリーの供給量を制御することにより、例えば、翼前方に存在する土の塊等を粉砕したり細分化した土や土粒子の流動性を効率的に高める。その結果、この施工では、改良杭用の均一な自硬性流動物15aが得られ、かつ、その自硬性流動物15aの一部を圧縮エアーのリフトアップ効果により攪拌軸6に沿って上昇し、自硬性排泥15bとして地表側の凹部12に排出し易くなる。この排出量は他の吐出工法に比べてかなり多い。通常は、投入されたセメントスラリー量と同程度となり、地盤内での体積変化が低減され、かつ、凹部12に効率よく貯められる。
【0027】
また、以上の地盤改良工法において、前進施工では、図1の下側に例示したごとく改良杭15として、杭列L1の各改良杭15が終了したときに施工機をその杭列L1上に乗るよう移動し、次の杭列L2の各改良杭15を造成する。続いて、施工機をその杭列L2上に乗るよう移動し、次の杭列L3の各改良杭15を造成する。続いて、施工機をその杭列L3上に乗るよう移動し、次の杭列L4の各改良杭15を造成する。続いて、施工機をその杭列L4上に乗るよう移動し、これを最終の杭列まで繰り返すことになる。この前進施工では、施工機の総重量が足場層16及び造成された改良杭15により分散支持されるため、軟弱地盤であっても施工機荷重に起因した変位を大幅に低減できる。
【0028】
(実施例1)図3は実際の地盤改良で採用された前進施工の事例1を示している。この事例1の本工事は、河川改修に先立ち、改修護岸の基礎地盤を深層混合処理工法にて改良し、護岸の沈下低減及び滑り破壊の防止を図る。工事概要を以下に示す。
(1)改良工法は、CI−CMC工法(図2に示した混合エジェクターの吐出方式であり、1600mm×2軸)
(2)回良率は、ap=46.8%
(3)改良強度は、quck=200KN/m
(4)施工機は、標準施工機(日立住反重機械建機クレーン(株)製のSP110) (5)機械総重量は、122.8t
(6)機械接地圧は、162KN/m
【0029】
この地盤改良領域の地盤は、厚さ10〜20m程度の軟弱な沖積層(粘性土、有機質土)で構成されており、また、変位を起こしやすい河川沿いの改良であるため、河川護岸(許容変位±10cm)の変位に留意した施工が必要であった。
【0030】
地盤改良施工中は、図3に示す16箇所(河川の片側に黒丸で示した箇所)に変位杭を設置し、動態観測を実施した。河川護岸の許容変位が100mmであることから、変位の管理基準を以下の様に設定して施工を実施した。なお、本工事では、上記した足場層は改良杭上に厚さが約50cmとなるよう敷設した。
・一次管理値は50mm(許容値×0.5)である。施工では変位量が一次管理値を超えた場合、監督員に報告し、施工方法(打設順序、施工速度など)の変更等を協議する。
・二次管理値は80mm(許容値×0.8)である。施工では変位量が二次管理値を超えた場合、施工を一時中断し、対策について協議する。
【0031】
図4の変位計測結果は、以上の設定で行ったときの水平変位量の計測結果の一例を示している。横軸は施工日、縦軸は変位量(mm)である。実施工において、深層混合処理は、当初、低変位工法であるCI−CMC工法を用いて打ち下がり施工を実施する計画であったため、河川側り最前列から施工を開始した。その結果、施工開始4日間で40mm度の変位が発生し、同様の方法で施工を継続した場合、許容量を超えることが予想された。そこで、変位の要因を究明するため、施工時に発生する排泥量を計測したところ、投入スラリー量と同程度であった。そこで、変位の要因が施工機荷重にあると考え、打設順序を打ち下がり施工から前進施工に変更した。その結果、増加傾向にあった変位が止まり、前進施工による変位低減効果が確認された。本工事は、水平変位量50mm以下で施工を完了した。
【0032】
(実施例2)図5は実際の地盤改良で採用された前進施工の事例2を示している。この事例2の本工事は、河川改修に先立ち、改修護岸基礎を深層混合処理工法にて改良することにより、護岸基礎地盤の沈下抑止及び支持力の確保を図るものである。工事概要を以下に示す。
(1)改良工法は、CI−CMC工法(混合エジェクターの吐出方式であり、1300mm×単軸)
(2)回良率は、ap=78.5%
(3)改良強度は、quck=150KN/m
(4)施工機は、小型施工機(日本車輌製造(株)製のDHJ12)
(5)機械総重量は、16.1t
(6)機械接地圧は、79KN/m
【0033】
この地盤改良領域の地盤は、非常に軟弱な高含水比腐植土(wn=300%〜1000%)で構成されており、小型のバックホウ(0.4m)でも走行が困難なほど足場が不安定な状態であった。さらに、施工箇所が廃棄物処分場の遮水壁(薄型鋼矢板:シートウオール)に近接(最小離隔1.0m)していたため、施工機の安定及び変位減対策として、小型施工機による前進施工が採用された。
【0034】
本工事では、遮水壁天端に設置した8箇所の観測点(図5中、黒丸で示した測点1〜測点8)及び2箇所の傾斜計(四角で示した2箇所の地中傾斜計)によって動態観測を実施した。また、近接する遮水壁の許容変位が50mmであったため、一次管理値を15mm(許容値×0.3)、二次管理値を30mm(許容値×0.6)として施工を行った。なお、本工事でも、上記した足場層は改良杭上に厚さが約50cmとなるよう敷設した。
【0035】
図6(a),(b)は、以上の設定で行ったときの変位計測結果のうち、処分場に最も接近した位置における遮水壁天端の変位計測結果、つまり測点5〜8での結果を示す。横軸は施工日、縦軸はX方向又はY方向の変位量(mm)である。この事例2でも、CI−CMC工法と前進施工との採用により、最大変位9mm程度の超低変位施工を実現できたことが分かる。以上のように実施例1と2では、いずれの事例も変位が発生しやすい地盤条件下において超低変位の施工を実現しており、前進施工が変位低減対策として有効であったと判断できる。
【0036】
なお、本発明工法は、請求項で特定される構成を備えておればよく、細部は以上の形態を参考にして変更したり展開可能なものである。その例として、供給機構としては、混合エジェクターの吐出方式に限られず、杭施工時に固化材(セメントスラリー)の地中投入量相当を地表へ排出可能な他の方式であっても差し支えない。
【符号の説明】
【0037】
1・・・ベースマシン
2・・・支持リーダー
3・・・昇降機構
4・・・回転駆動機構
5・・・スイベル
6・・・攪拌軸
7・・・攪拌翼
8・・・混合エジェクター
10・・・地盤改良領域(11は杭用縦孔、12は凹部)
13,14・・・配管経路
15・・・改良杭(15aは自硬性流動物、15bは自硬性排泥)
16・・・足場層
L1〜L5・・・杭列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌軸及び前記攪拌軸に沿って固化材を移送して原地盤中に吐出する供給機構を有した施工機を用いて、対象の地盤改良領域で前記施工機を移動しながら、前記供給機構が前記攪拌軸の貫入過程などで前記固化材を吐出して原地盤の土と混合した自硬性流動物により造成される改良杭を、縦横方向に多数を順に造成する地盤改良工法において、
前記改良杭を造成する際は前記自硬性流動物を深さ方向に形成する過程で、前記自硬性流動物のうち地表に上昇し排出されるものを自硬性排泥として用いて造成される改良杭と一体となった足場層を形成し、
前記施工機を前記足場層に沿って前進移動して、その足場層及び前記造成された改良杭により施工機の総重量を分散支持することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
前記地表に排出される自硬性排泥は前記自硬性流動物とほぼ同じ組成からなることを特徴とする請求項1に記載の地盤改良工法。
【請求項3】
前記足場層はその下に造成される改良杭を略中心とする広がりで設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤改良工法。
【請求項4】
前記供給機構は、前記攪拌軸の下部又は攪拌軸に取り付けられた攪拌翼に設けられて、固化材供給手段より導入される固化材を圧縮エアー供給手段より導入される圧縮エアーに同伴して、圧縮エアーと固化材とを霧状に吐出する混合エジェクターを有していることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の地盤改良工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−97491(P2012−97491A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247087(P2010−247087)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【Fターム(参考)】