説明

地盤注入工法

【課題】削孔壁の崩壊を防止し、ボーリング孔の注入浸透源を保持して均質な浸透固結を可能にし、かつ広範囲な地盤改良を短期間に施工し得る。
【解決手段】地盤1の近傍地表面2から地盤1中に屈曲して、または屈曲と直線を任意に組み合わせてボーリングし、このボーリング孔3中に、複数の外管吐出口5を有する外管7を設置し、この外管7内に、三個以上の膨縮パッカ8を間隔をあけて設けて互いに隣接する膨縮パッカ8、8間を吐出位置9とし、かつ、内管吐出口10が別々の吐出位置9に位置する注入液流路11と、膨縮パッカ8に流体を送って膨張させ、あるいは排出して収縮させるパッカ流路12とをそれぞれ内部に独立して形成された内管13を移動自在に挿入し、パッカ流路12を通して三個以上の膨縮パッカ8に流体を送って膨縮パッカ8を膨張させ、これにより互いに隣接する膨縮パッカ8、8によって挟まれるすき間14に管内空間15を形成し、内管吐出口10から注入液を地盤1に注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟弱地盤、漏水地盤等、液状化の恐れのある地盤、汚染地盤などの地盤注入工法に係り、特に、地盤注入を施し難い既設構造物下方の支持地盤、廃棄物処理場の底盤あるいは溜め池や貯水池下方等の地盤注入工法に係り、詳細には、地盤注入を施し難い既設構造物下方の支持地盤を急速かつ確実に、かつ経済的に地盤注入し、地盤沈下や、地震時における地盤の液状化を未然に防止し得、さらに廃棄物処理場からの有害物質の溶出を防止し得、さらに溜め池や貯水池からの漏水を防止し得る地盤注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物基礎の液状化対策工では、従来、建造物基礎下に水平方向にボーリングして複数の吐出口を有する注入外管を設置し、さらにその外管内に注入内管を挿入して外管吐出口から順次に地盤中に注入液を注入して地盤を固結する方法が用いられている。
【0003】
液状化防止工は大容量土の地盤改良であるため、経済的に、かつ確実に地盤改良を行う必要がある。このためには、注入は低吐出速度で土粒子間浸透を行わなければならない。この場合、地盤改良に長い時間を要し、かつ工期が長くなり、このため、工事費が高くなる。これを防ぐためには複数の吐出口から同時注入することにより、一つの吐出口からは低吐出速度で注入しながら、全体的には大吐出速度での注入を可能にして経済性の向上を計ることが考えられる。
【0004】
しかし、水平方向に注入外管を設置すると、上部からの土圧によって注入外管は断面が変形しやすく、かつ注入管の軸方向にも変形しやすくなり、注入内管の挿入移動が困難になる。特に内管の軸方向に複数の吐出口を設ける場合には、内管先端の注入部が長くなり、外管の変形による影響をうけやすくなるという問題があった。
【特許文献1】特開平2003−346885号公報
【特許文献2】特開平2003−261934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は建造物基礎の液状化対策工のように建造物基礎地盤を水平方向に改良する地盤注入工法において、注入管の変形の問題を解決し、注入液を複数の選定した注入管吐出口から同時に、かつ各吐出口における注入状況に応じて最適の注入浸透を可能とし、これにより、所定位置に所定形状の固結体を経済的に、かつ確実に形成することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
そこで、本発明の目的は建造物下方の地盤を固結する液状化対策のための注入のように、特に水平方向に設置した注入管からの注入で一定の形状に、急速に固結することを可能にしたものであって、注入液を選定した複数の注入ポイントに設置した外管吐出口から同時に注入することにより、所定の位置に、所定の形状に、均質な浸透固結を可能にし、かつ広範囲な地盤改良を短期間に施工し得、上述の公知技術に存する欠点を改良した地盤注入工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の本発明の目的を達成するため、本発明によれば、改良すべき地盤の近傍地表面から地盤中に屈曲して、または屈曲と直線を任意に組み合わせてボーリングし、得られたボーリング孔中に、逆止弁を備えた複数の外管吐出口を有する外管を設置し、この外管内に、外側長手方向に三個以上の膨縮パッカを間隔をあけて設けて互いに隣接する膨縮パッカ間を吐出位置とし、かつ、内管吐出口が別々の吐出位置に位置する注入液流路と、膨縮パッカに流体を送って膨張させ、あるいは排出して収縮させるパッカ流路とをそれぞれ内部に独立して形成された内管を移動自在に挿入し、前記吐出位置を外管吐出口に合致させた後、パッカ流路を通して前記三個以上の膨縮パッカに流体を送って該膨縮パッカを膨張させ、これにより互いに隣接する膨縮パッカによって挟まれるすき間に管内空間を形成し、内管吐出口から注入液を管内空間および外管吐出口を経て地盤に注入することを特徴とする。
【0008】
さらに、上述の目的を達成するため、本発明によれば、改良すべき地盤の近傍地表面から地盤中に屈曲して、または屈曲と直線を任意に組み合わせてボーリングし、得られたボーリング孔中に、外側長手方向に三個以上の外管パッカを間隔をあけてはめ込み、かつ互いに隣接する外管パッカ間に外管吐出口を有する外管を設置し、この外管内に、外側長手方向に三個以上の膨縮パッカを間隔をあけて設けて互いに隣接する膨縮パッカ間を吐出位置とし、この吐出位置に内管吐出口が位置する注入液流路と、膨縮パッカに流体を送って膨張させ、あるいは排出して収縮させるパッカ流路とをそれぞれ内部に独立して形成した内管を移動自在に挿入し、前記三個以上の膨縮パッカに流体を送って該膨縮パッカを膨張させた後、次いで外管パッカ間の外管吐出口から注入液流路の内管吐出口を通して地盤中に注入液を注入することを特徴とする。
【0009】
さらに、上述の目的を達成するため、本発明によれば、改良すべき地盤の近傍地表面から地盤中に屈曲して、または屈曲と直線を任意に組み合わせて複数本ボーリングし、得られた各ボーリング孔中に、逆止弁を備えた複数の外管吐出口を有する外管を設置し、この外管内に、外側長手方向に三個以上の膨縮パッカを間隔をあけて設けて互いに隣接する膨縮パッカ間を吐出位置とし、かつ、内管吐出口が別々の吐出位置に位置する複数の注入液流路と、膨縮パッカに流体を送って膨張させ、あるいは排出して収縮させるパッカ流路とをそれぞれ内部に独立して形成された内管を移動自在に挿入し、前記吐出位置を外管吐出口に合致させた後、パッカ流路を通して前記三個以上の膨縮パッカに流体を送って該膨縮パッカを膨張させ、これにより互いに隣接する膨縮パッカによって挟まれるすき間に管内空間を形成し、注入液を内管吐出口を通して注入液送液装置から管内空間および外管吐出口を経て地盤に注入することを特徴とし、前記注入液送液装置が制御部と、注入液槽と、この注入液槽に連結され、注入液を加圧、送液する注入液加圧部と、加圧された注入液を地盤中における各注入管に送り出す送液管とを備え、前記注入液加圧部および送液管は制御部に接続され、制御部の制御のもとに注入液を前記複数の外管吐出口から地盤中に同時注入することを特徴とする。
【0010】
上述の外管は次の(a)、(b)または(c)の工程によって地盤中に設置される。
【0011】
(a)ドリルヘッドを先端に装着したボーリングロッドをケーシング中に挿入し、ドリルヘッドを回転しながら改良すべき地盤の近傍地表面から地盤中に屈曲して、または屈曲と直線を組み合わせて押し込んでボーリングし、ボーリング孔が所定の位置に達したのち、ボーリングロッドを引き抜き、残ったケーシング中に逆止弁を備えた複数の外管吐出口を有する外管を挿入してケーシングを引き抜き、外管を地盤中に設置する。
【0012】
(b)改良すべき地盤の近傍地表面から、ケーシングを回転しながら地盤中に押し込み、屈曲して、または屈曲と直線を任意に組み合わせてボーリングし、得られたボーリング孔のケーシング中に、逆止弁を備えた複数の外管吐出口を有する外管を挿入してケーシングを引き抜き、外管を地盤に設置する。
【0013】
(c)改良すべき地盤の近傍地表面から地盤中にドリルヘッドを先端に装着したボーリングロッドを外管中に挿入し、ドリルヘッドを回転しながら屈曲して、または屈曲と直線を任意に組み合わせてボーリングロッドとともに押し込んでボーリングし、ボーリング孔が所定の位置に達したのち、ボーリングロッドを引き抜いて外管を地盤に設置する。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる地盤注入工法は改良すべき地盤に屈曲して、または屈曲と直線を任意に組み合わせてボーリングし、得られたボーリング孔中に、複数の外管吐出口を有する外管を設置し、この外管内に、外側長手方向に三個以上の膨縮パッカを間隔をあけてはめ込んで互いに隣接する膨縮パッカ間を噴出位置とし、かつ、内管吐出口が別々の吐出位置に位置する注入液流路と、膨縮パッカに流体を送って膨張させ、あるいは排出して収縮させるパッカ流路とをそれぞれ内部に独立して形成された内管を移動自在に挿入し、これにより吐出口から注入液を地盤に注入するようにしたから、地盤注入を施し難い既設構造物下方の支持地盤を急速かつ確実に、かつ経済的に地盤注入し、地盤沈下や、地震時における地盤の液状化を未然に防止し得、さらに廃棄物処理場からの有害物質の溶出を防止し得、さらに溜め池や貯水池からの漏水を防止し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面を用いて詳述する。図1は地盤中に挿入された本発明にかかる注入管の外管および内管を表した部分断面図である。図2は図1に示される注入管の実際の施工に使用される注入管の断面図である。図3は外管パッカを三個以上有する外管を地盤中に設置した状態の断面図である。図4は図3の外管に本発明にかかる内管を挿入した状態の断面図である。図5は構造物直下の改良すべき地盤処理の基本模式図である。図6は構造物直下の改良すべき地盤処理の基本模式図である。
【0016】
まず、図5に示されるように、ビル、廃棄物処理場、溜め池、貯水池等、移動不可能な構造物21の直下の改良すべき地盤1aの近傍地表面2から地盤1中に屈曲して、または屈曲と直線を組み合わせて、例えば、図5では最初に斜めに屈曲して、続いて構造物21の直下の改良すべき地盤1aに直線状に、さらに続いて、斜めに屈曲して、対向側の近傍地表面2まで削孔し、ボーリング孔3を形成する。
【0017】
図6は、従来の垂直削孔22ならびに斜め直線状の斜め削孔23と、曲線状(屈曲)ボーリング孔3とを併用した例である。この方法では、従来の技術にさらに本発明のボーリング孔3を併用するので、改良すべき地盤1aは一層確実かつ迅速に固結され、固結領域24を形成する。
【0018】
本発明はこのようにして得られたボーリング孔3中に図1に示されるように外管7を設置し、この外管7内に内管13を移動自在に挿入して注入管Aを地盤1中に形成する。外管7は逆止弁としてゴムスリーブ4を備えた複数の外管吐出口5を有して構成される。また、内管13は外側長手方向に三個以上の膨縮パッカ8を間隔をあけてはめ込んで、互いに隣接する膨縮パッカ8、8間を吐出位置9とし、かつ、内管吐出口10と別々の吐出位置9に位置する注入液流路11と、膨縮パッカ8に流体を出入口12aを通して送って膨張させ、あるいは排出して収縮させるパッカ流路12とをそれぞれ内部に独立して形成することにより構成される。
【0019】
上述の構成からなる注入管Aは吐出位置9を外管吐出口5に合致させた後、パッカ流路12を通して三個以上の膨縮パッカ8に水、空気等の流体を出入口12aから送って膨縮パッカ8を膨張させ、これにより互いに隣接する膨縮パッカ8によって挟まれるすき間14に管内空間15を形成し、内管吐出口10から注入液を管内空間15および外管吐出口5を経て地盤1中に注入する。なお、注入液は自動制御の注入液送液装置Xを用い、注入液槽35からポンプ36、36を経て内管13の注入液流路11に送液される。Fは流量計、Pは圧力計である。注入液送液装置Xについては後述する。
【0020】
上述の注入管Aは次いで、膨縮パッカ8から流体を排出して膨縮パッカ8を収縮し、内管13を移動して吐出位置9を他の外管吐出口5に合致させ、注入ステージを移動の後、膨縮パッカ8を膨張させて管内空間15を形成し、上述と同様にして繰り返し注入液を地盤1中に注入し続ける。
【0021】
なお、上述の注入管Aは外管7の外壁6と削孔壁16との間の空間17にシールグラウト18を填充し、注入液をシールグラウト18を破って地盤1中に注入することもできる。また、内管13の少なくとも先端部分13aは金属、硬質プラスチック等の硬質材料で、かつ一体化して形成される。しかも、この一体化された先端部分13aはホース等の撓み部材19によって部分的に形成される。本発明にかかる注入管Aは地盤1中で横方向に挿入されるため、上方からの土圧により内管13に変形が生じることもある。この場合でも、内管13の先端部分13aは硬質材料で一体化して形成され、しかも部分的に撓み部材19によって形成されるため、注入液流路11およびパッカ流路12はいずれも変形に追従し、円滑に注入に供することができる。
【0022】
図2は図1に示される注入管の現場で現実に使用される実際の注入管を表した断面図であって、特に先端部分13aがゴム管等の撓み部材19によって連結される。この注入管の場合も、図1と同様、注入液は自動制御の注入液送液装置Xを用い、注入液槽35からポンプ36を経て内管13の注入液流路11に送液される。
【0023】
図3は外管パッカ20を三個以上有する外管7を地盤1中に設置した状態の断面図である。この外管7の設置はまず、ボーリング孔3を削孔の後、図示しないが、外管パッカ20を膨張させない状態で外管7をボーリング孔3中に挿入する。次いで、図示しないが、外管パッカ20中に水、空気等の流体を導入して膨張させ、外管パッカ20を形成するための内管を外管7に挿入して図3に示されるように、外管7を地盤1のボーリング孔3中に設置する。外管7の外管パッカ20、20間には外管吐出口5が設けられる。
【0024】
図4は地盤1に設置された外管7に内管13を移動自在に挿入して得られる本発明にかかる他の形態の注入管Aである。この内管13は図1と同様、外側長手方向に複数の膨縮パッカ8を間隔をあけて設け、互いに隣接する膨縮パッカ8間を吐出位置9とし、この吐出位置9に内管吐出口10が位置する注入液流路11と、膨縮パッカ8に出入口12aから流体を送って膨張させ、あるいは排出して収縮させるパッカ流路12とを内部に独立して形成される。そして、前記三個以上の膨縮パッカ8に流体を送って膨縮パッカを膨張させた後、次いで、外管パッカ20、20間の外管吐出口5から注入液流路11の内管吐出口10を通して地盤1中に注入液を注入する。
【0025】
図4の注入管Aの場合も、図1と同様、膨縮パッカ8から流体を排出して膨縮パッカ8を収縮し、内管13を移動して吐出位置9を他の外管吐出口5に合致させ、注入ステージを移動の後、膨縮パッカ8を膨張させ、同様にして繰り返し注入液を地盤1中に注入する。なお、内管13の先端部分13aもまた、図1と同様、硬質材料で一体化して形成され、しかも、この先端部分13aもまた、部分的に撓み部材19で形成される。
【0026】
上述の注入管Aは地盤1中に挿入するに際して、まず、外管7を例えば図7のようにして地盤1中に埋設する、これを図7を用いて説明すると、近傍地表面2に発進杭25を形成するとともに、ボーリングマシン26を設置する。次いで、近傍地表面2のボーリングマシン26から発進杭25を経て、先端にドリルヘッド27を備えたボーリングロッド28を、ドリルヘッド27を回転しながら改良すべき地盤1a中に押し込み、削孔する。このとき、ボーリングロッド28はケーシング29中に挿入された状態で削孔する。削孔を曲げるときには、図示しないが、ドリルヘッド27の先端テーパ刃を曲げる方向に調整して削孔を続ける。この削孔は反対側の近傍地表面2に到達するまで行ってもよいが、図7に示されるように、改良すべき地盤1aの末端まで行なうだけでも充分である。
【0027】
続いて、ボーリングロッド28を引き抜いてケーシング29のみを地盤1中に残す。このとき、削孔(ボーリング孔3)はケーシング29によって保護される。さらに続いて、ケーシング29の中に図示しないが、逆止弁を備えた複数の外管吐出口5、5・・・5を有する外管7を挿入するとともにケーシング29を引き抜き、外管7の外壁6と削孔壁16との間の空間17にシールグラウト18を填充して図1に示すように外管7を地盤中に設置する。なお、図3および図4に示すように、外管7が外管パッカ20を備えた場合には、ケーシング29を引き抜いた後、ボーリング孔3中に外管7を外管パッカ20が膨張されていない状態で挿入し、その後に外管パッカ20を膨張させて外管7を地盤1中に設置する。シールグラウト18は用いない。
【0028】
さらに、上述の外管7は図7を参考にして説明すると、改良すべき地盤1aの近傍地表面2から、ケーシング29を回転しながら地盤1に押し込み、屈曲して、または屈曲と直線を任意に組み合わせてボーリングし、得られたボーリング孔3のケーシング29中に逆止弁を備えた複数の外管吐出口5、5・・・5を有する外管7を挿入するとともに、シールグラウト18を填充しながらケーシング29を引き抜き、図1に示すように外管7をシールグラウト18でシールして地盤1に設置してもよい。
【0029】
さらにまた、上述の外管7は改良すべき地盤1aの近傍地表面2から地盤1中に外管7そのものを回転しながら屈曲して、または屈曲と直線と任意に組み合わせてボーリングロッド28とともに押し込んでボーリングし、ボーリング孔3が所定の位置に達したのち、ボーリングロッド28を引き抜いて図1に示されるように、外管7を地盤1に設置する。
【0030】
図8は注入液送液装置Xを用いた本発明にかかる地盤注入工法の説明図である。図8において、上述と同様、地盤1の地盤改良を施すべき個所に、地表面2から斜め下方にわん曲して、次いで、水平方向にボーリング孔3を削孔する。このボーリング孔3に図1に示されるような逆止弁4を備えた複数の外管吐出口5、5・・・5を有する外管7を設置し、この外管7内に、図1に示されるように、外側長手方向に三個以上の膨縮パッカ8、8・・・8を間隔をあけて設けて互いに隣接する膨縮パッカ8、8間を吐出位置9とし、かつ内管吐出口10が別々の吐出位置9に位置する複数の注入液流路11と、膨縮パッカ8に流体を送って膨張させ、あるいは排出して収縮させるパッカ流路12とをそれぞれ内部に独立して形成された内管13を移動自在に挿入し、吐出位置9を外管吐出口5に合致させた後、パッカ流路12を通して三個以上の膨縮パッカ8、8・・・8に流体を送って膨縮パッカ8を膨張させ、これにより互いに隣接する膨縮パッカ8、8によって挟まれるすき間14に管内空間15を形成し、注入液を内管吐出口10を通して注入液送液装置Xから管内空間15および外管吐出口5を経て地盤1に注入する。図8では、上述の外管7および内管13の詳細な記載は省略し、外管7内に内管13が移動自在に挿入された状態を注入管Aとして表す。
【0031】
図8に示される注入液送液装置Xは制御部30、注入液加圧部31、注入液分配部32,注入部33および送液系34から構成される。操業を手動で行う場合には、制御部30は必要としない。以下、制御部30を用いた例について具体的に詳述する。
【0032】
注入液加圧部31は図8に示されるように、注入液槽35からの注入液をポンプ36(グラウトポンプ)により加圧し、加圧注入液として送液系34を介して注入液分配部32に送液する。グラウトポンプ36は制御部30の注入監視盤30aからの指示を受け、注入液を所望の圧力に加圧する。
【0033】
注入液分配部32は複数本の分岐管37、37・・・37を備える。これら分岐管37、37・・・37はそれぞれ先端に注入管Aと連結する連結部38を有する。この連結部38は所定の注入管Aを通して所定の注入量を注入し終わった時点、あるいは所定の注入圧に達した時点で、その分岐管37を他の注入管Aに連結換えすることもできる。
【0034】
上述の分岐管37、37・・・37は図8に示されるように、送液系34を介して加圧部31と連結された分配部39からのそれぞれ伸長して配置され、先端の連結部38で注入管Aと連結される。そして、加圧部31からの加圧注入液は分配容器39を介して各分岐管37、37・・・37に分配され、注入管Aに送液される。なお、この分配容器39には図示しない攪拌装置を備えることもできる。また、各分岐管37、37・・・37は分配容器39を経たずに、直後、加圧部31からの送液系34と連結することもできる。
【0035】
また、図8において、分岐流量計f1、・・・fi、の総量を測定することにより送液流量計40の流量を把握することができ、このため、送液流量計40は必ずしも必要としない。さらに、送液圧力計41は必ずしも送液系34に設けなくても、直後、分配容器39に設けてもよい。V〜Vは分岐バルブ、P〜Pは分岐圧力計、30bは操作盤30cは注入記録盤、30dはデータ入力装置、42は送液バルブである。また、43は膨縮パッカ8に流体を送液する圧力ボンベ、44は内管自動昇降機であって、いずれも制御部30と接続され、制御部30からの指示を受けて作動する。
【0036】
図9は注入液送液装置として多連装注入装置を用いた本発明にかかる地盤注入工法の説明図であって、注入液を貯蔵する注入液槽35と、一プラント中にそれぞれモータ等の独立したあるいは図示しないが共通の駆動源45で作動し、かつ制御部30に接続されて制御される多数のユニットポンプ46、46・・・46と、これら各ユニットポンプ46、46・・・46から伸長され、配置される送液管47,47・・・47とを備えて構成される。各送液管47、47・・・47の先端に連結部38を備え、地盤1のボーリング孔3に挿入された注入管Aの図示しない内管13の注入液流路11に連結される。注入液槽35中の注入液は各ユニットポンプ46、46・・・46の作動により任意の注入速度、注入圧力あるいは注入量で各注入管Aの注入液流路11に圧送され、複数の外管吐出口5、5・・・5からゴムスリーブ4を押し開けて同時に地盤1に多点注入される。Vは分岐バルブである。圧力ボンベ43および自動昇降機44は図8と同様に制御部30からの指示を受けて作動する。
【0037】
本発明にかかる注入工法は特に建物等の構造物下方の処理に適している。例えば、図10のように構造物21下方の深さ方向に複数層積層して処理することもでき、あるいはさらに、図12の平面図に示されるように、構造物21下方に水平面に注入孔を複数本並列して設定し、あるいはさらに、図11に示すように深さ方向に設定し、複数層形成することもできる。
【0038】
本発明は図12の浸透の挙動を複数の吐出口から同時注入するという手法とともに、注入液を注入液加圧部から複数の注入液送液系統を通して前記地盤中の注入ポイントに注入し、前記複数の注入液送液系統には流量圧力検出器を設け、これら検出器から検出された注入液の流量および/または圧力のデータを注入監視盤を備えた集中管理装置に送信し、注入液送液系統からの注入状況を前記注入監視盤の画面に表示し、一括監視を行いながら、選定した複数の注入ポイントから注入を同時に行い、それぞれの注入状況を把握することにより各注入管路における注入開始から終了に至るまでの工程はそれぞれ別々に行いながら、かつ、全体の注入管理を行うことが可能なため、図11、図12における注入液の挙動に基づき、所定の場所に所定の形状の固結体を形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
地盤の改良すべき個所に、任意形状のボーリング孔を穿孔し、このボーリング孔から複数の吐出口を介して注入液を地盤中に同時に注入して改良するようにしたから、水平方向に設置した注入管からの注入にもかかわらず、所定の位置に所定の浸透固結形態に浸透固結を可能にするとともに、地盤注入の施し難い既設構造物下方の支持地盤を急速かつ確実に、かつ広範囲に地盤改良を施工し得、産業上有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明にかかる注入管を説明するための基本構造を表した断面図である。
【図2】実際の施工に使用される注入管の断面図である。
【図3】外管パッカを三個以上有する外管を地盤中に設置した状態の断面図である。
【図4】図3の外管に本発明にかかる内管を挿入した状態の断面図である。
【図5】構造物直下の改良すべき地盤処理の基本模式図である。
【図6】構造物直下の改良すべき地盤処理の他の基本模式図である。
【図7】構造物下方のボーリング状態を表した説明図である。
【図8】注入液送液装置を用いて本発明注入工法を実施するための説明図である。
【図9】他の注入液送液装置を用いて本発明注入工法を実施するための説明図である。
【図10】構造物下方の地盤注入例の縦断面図である。
【図11】本発明方法で注入固結した状態を表した説明図である。
【図12】構造物下方の地盤注入例の平面図である。
【符号の説明】
【0041】
A 注入管
X 注入液送液装置
1 地盤
1a 改良すべき地盤
2 地表面
3 ボーリング孔
4 逆止弁(ゴムスリーブ)
5 外管吐出口
6 外壁
7 外管
8 膨縮パッカ
9 吐出位置
10 内管吐出口
11 注入液流路
12 パッカ流路
12a 出入口
13 内管
13a 先端部分
14 すき間
15 管内空間
16 削孔壁
17 空間
18 シールグラウト
19 撓み部材
20 外管パッカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良すべき地盤の近傍地表面から地盤中に屈曲して、または屈曲と直線を任意に組み合わせてボーリングし、得られたボーリング孔中に、逆止弁を備えた複数の外管吐出口を有する外管を設置し、この外管内に、外側長手方向に三個以上の膨縮パッカを間隔をあけて設けて互いに隣接する膨縮パッカ間を吐出位置とし、かつ、内管吐出口が別々の吐出位置に位置する注入液流路と、膨縮パッカに流体を送って膨張させ、あるいは排出して収縮させるパッカ流路とをそれぞれ内部に独立して形成された内管を移動自在に挿入し、前記吐出位置を外管吐出口に合致させた後、パッカ流路を通して前記三個以上の膨縮パッカに流体を送って該膨縮パッカを膨張させ、これにより互いに隣接する膨縮パッカによって挟まれるすき間に管内空間を形成し、内管吐出口から注入液を管内空間および外管吐出口を経て地盤に注入することを特徴とする地盤注入工法。
【請求項2】
請求項1において、さらに、膨縮パッカから流体を排出して膨縮パッカを収縮し、内管を移動して吐出位置を他の外管吐出口に合致させ、注入ステージを移動の後、膨縮パッカを膨張させて管内空間を形成し、同様にして繰り返し注入液を地盤中に注入する請求項1に記載の地盤注入工法。
【請求項3】
請求項1において、注入液流路およびパッカ流路の挿入された内管は少なくとも先端部分が硬質材料で一体化して形成される請求項1に記載の地盤注入工法。
【請求項4】
請求項3において、硬質材料で一体化された内管先端部分は部分的に撓み部材で形成される請求項3に記載の地盤注入工法。
【請求項5】
改良すべき地盤の近傍地表面から地盤中に屈曲して、または屈曲と直線を任意に組み合わせてボーリングし、得られたボーリング孔中に、外側長手方向に三個以上の外管パッカを間隔をあけてはめ込み、かつ互いに隣接する外管パッカ間に外管吐出口を有する外管を設置し、この外管内に、外側長手方向に三個以上の膨縮パッカを間隔をあけて設けて互いに隣接する膨縮パッカ間を吐出位置とし、この吐出位置に内管吐出口が位置する注入液流路と、膨縮パッカに流体を送って膨張させ、あるいは排出して収縮させるパッカ流路とをそれぞれ内部に独立して形成した内管を移動自在に挿入し、前記三個以上の膨縮パッカに流体を送って該膨縮パッカを膨張させた後、次いで外管パッカ間の外管吐出口から注入液流路の内管吐出口を通して地盤中に注入液を注入することを特徴とする地盤注入工法。
【請求項6】
請求項5において、さらに、膨縮パッカから流体を排出して膨縮パッカを収縮し、内管を移動して吐出位置を他の外管吐出口に合致させ、注入ステージを移動の後、膨縮パッカを膨張させ、同様にして繰り返し注入液を地盤中に注入する請求項5に記載の地盤注入工法。
【請求項7】
請求項5において、注入液流路およびパッカ流路の挿入された内管は少なくとも先端部分が硬質材料で一体化して形成される請求項5に記載の地盤注入工法。
【請求項8】
請求項5において、硬質材料で一体化された内管先端部分は部分的に撓み部材で形成される請求項5に記載の地盤注入工法。
【請求項9】
改良すべき地盤の近傍地表面から地盤中に屈曲して、または屈曲と直線を任意に組み合わせて複数本ボーリングし、得られた各ボーリング孔中に、逆止弁を備えた複数の外管吐出口を有する外管を設置し、この外管内に、外側長手方向に三個以上の膨縮パッカを間隔をあけて設けて互いに隣接する膨縮パッカ間を吐出位置とし、かつ、内管吐出口が別々の吐出位置に位置する複数の注入液流路と、膨縮パッカに流体を送って膨張させ、あるいは排出して収縮させるパッカ流路とをそれぞれ内部に独立して形成された内管を移動自在に挿入し、前記吐出位置を外管吐出口に合致させた後、パッカ流路を通して前記三個以上の膨縮パッカに流体を送って該膨縮パッカを膨張させ、これにより互いに隣接する膨縮パッカによって挟まれるすき間に管内空間を形成し、注入液を内管吐出口を通して注入液送液装置から管内空間および外管吐出口を経て地盤に注入することを特徴とし、前記注入液送液装置が制御部と、注入液槽と、この注入液槽に連結され、注入液を加圧、送液する注入液加圧部と、加圧された注入液を地盤中における各注入管に送り出す送液管とを備え、前記注入液加圧部および送液管は制御部に接続され、制御部の制御のもとに注入液を前記複数の外管吐出口から地盤中に同時に注入することを特徴とする地盤注入工法。
【請求項10】
請求項9において、前記注入液送液装置は制御部と、注入液加圧部と、複数本の注入管に通じる複数の分岐管を有し、前記加圧部からの加圧注入液を各分岐管に分配する注入液分配部と、前記加圧部から前記注入液分配部に通じる加圧注入液の送液系と、この送液系に備えられた送液流量計および/または送液圧力計とを備え,これら注入液分配部、送液部、送液流量計および/または送液圧力計はそれぞれ制御部に接続されてなり、注入液を制御部の制御のもとに一つの送液系から複数の注入液流路に同時に送液して複数の外管吐出口から同時に注入し、これにより広範囲の地盤を急速かつ確実に改良する請求項9に記載の地盤注入工法。
【請求項11】
請求項9において、前記注入液送液装置は制御部と、注入液槽と、一プラント中に多数
備えられるとともに、それぞれ注入液槽に接続され、かつ、独立した、あるいは共通の駆動源で作動するユニットポンプと、一方が前記各ユニットポンプに連結され、他方が前記複数の注入管にそれぞれ連結された送液管とを備え、これらユニットポンプおよび送液管はそれぞれ制御部に接続されてなり、前記注入液槽中の注入液を前記制御部の制御のもとに、各ユニットポンプの作動により各送液管に圧送し、複数の外管吐出口から同時に地盤に注入する請求項9に記載の地盤注入工法。
【請求項12】
請求項9において、さらに、膨縮パッカから流体を排出して膨縮パッカを収縮し、内管を移動して吐出位置を他の外管吐出口に合致させ、注入ステージを移動の後、膨縮パッカを膨張させて管内空間を形成し、同様にして繰り返し注入液を地盤中に注入する請求項9に記載の地盤注入工法。
【請求項13】
請求項9において、注入液流路およびパッカ流路の挿入された内管は少なくとも先端部分が硬質材料で一体化して形成される請求項9に記載の地盤注入工法。
【請求項14】
請求項13において、硬質材料で一体化された内管先端部分は部分的に撓み部材で形成される請求項13に記載の地盤注入工法。
【請求項15】
請求項1、5、9、10または11において、前記外管は次の(a)、(b)または(c)の工程によって地盤中に設置される請求項1、5、9、10または11に記載の地盤注入工法。
(a)ドリルヘッドを先端に装着したボーリングロッドをケーシング中に挿入し、ドリルヘッドを回転しながら改良すべき地盤の近傍地表面から地盤中に屈曲して、または屈曲と直線を組み合わせて押し込んでボーリングし、ボーリング孔が所定の位置に達したのち、ボーリングロッドを引き抜き、残ったケーシング中に逆止弁を備えた複数の外管吐出口を有する外管を挿入してケーシングを引き抜き、外管を地盤中に設置する。
(b)改良すべき地盤の近傍地表面から、ケーシングを回転しながら地盤中に押し込み、屈曲して、または屈曲と直線を任意に組み合わせてボーリングし、得られたボーリング孔のケーシング中に、逆止弁を備えた複数の外管吐出口を有する外管を挿入してケーシングを引き抜き、外管を地盤に設置する。
(c)改良すべき地盤の近傍地表面から地盤中にドリルヘッドを先端に装着したボーリングロッドを外管中に挿入し、ドリルヘッドを回転しながら屈曲して、または屈曲と直線を任意に組み合わせてボーリングロッドとともに外管を押し込んでボーリングし、ボーリング孔が所定の位置に達したのち、ボーリングロッドを引き抜いて外管を地盤に設置する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−9401(P2006−9401A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187694(P2004−187694)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000162652)強化土エンジニヤリング株式会社 (116)
【Fターム(参考)】