説明

地盤注入装置及び地盤注入工法

【課題】高価な部材を用いることなく簡単な構成で地盤に適切な注入量の地盤改良材を注入することができる地盤注入装置及び地盤注入工法を提供する。
【解決手段】本発明の地盤注入装置10は、注入部5と貯蔵部2と圧送手段3と検出部6と、圧送手段3が圧送する地盤改良材の全体量に対し注入部5側に流れる量の比である注入比を所定比率範囲内で変更可能に注入部5及び貯蔵部2の間で地盤改良材を分配する分配部4と、流量が所定量以下且つ圧力が所定圧力以下の場合は、注入比を増加させる制御信号を分配部4に出力する注入比増加部71と流量が所定量超又は圧力が所定圧力超の場合は、注入比を減少させる制御信号を分配部4に出力する注入比減少部72と流量が所定流量と等しく且つ圧力が所定圧力以下の場合は注入比を維持する制御信号を出力する注入比維持ステップとをもつ制御部7と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中に地盤改良材を注入する地盤注入装置及び地盤注入工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から地盤を改良するために、地盤に一つあるいは複数の管を差し込み、地盤改良材である地盤改良材を地盤に注入する工法及び装置が利用されており、例えば特許文献1に開示されている多点地盤注入工法及び装置がある。
【0003】
ところで、地盤改良材を注入する際に地盤の種類などにより、単位時間当たりに注入する量が異なり、ある程度その量が一定になるように制御する必要がある。制御がうまくいかず量が多くなることで地盤が破壊されたり、量が足りないことで地盤が十分に改良されなかったりする。
【特許文献1】特開2000−45259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、地盤改良材を注入するためのポンプなどの装置において、単位時間当たりに所定量になるように適切な制御が可能な装置は高価であったりする。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、高価な部材を用いることなく簡単な構成で地盤に適切な注入量の地盤改良材を注入することができる地盤注入装置及び地盤注入工法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明の構成上の特徴は、
地盤中に差し込まれ、吐出口をもつ注入部と、
地盤中に注入するための地盤改良材が貯蔵されている貯蔵部と、
前記貯蔵部から前記注入部に単位時間当たり所定量以上で前記地盤改良材を圧送する圧送手段と、
前記地盤改良材が前記吐出口から流出する単位時間当たり流量及び圧力を検出し、前記流量に応じた流量信号及び前記圧力に応じた圧力信号を出力する検出部と、
前記注入部及び前記圧送手段の間に位置し、前記圧送手段が圧送する前記地盤改良材の全体量に対し前記注入部側に流れる量の比である注入比を所定比率範囲内で変更可能に前記注入部及び前記貯蔵部の間で前記地盤改良材を分配する分配部と、
前記注入比が前記所定比率範囲内の上限でなく且つ前記流量信号により前記流量が前記所定量以下且つ前記圧力信号により前記圧力が所定圧力以下の場合は、前記注入比を増加させる制御信号を前記分配部に出力する注入比増加部と、前記流量信号により前記流量が前記所定量超又は前記圧力信号により前記圧力が所定圧力超であって、前記注入比が前記所定比率範囲内の下限でない場合は、前記注入比を減少させる制御信号を前記分配部に出力する注入比減少部と、前記流量信号により前記流量が前記所定流量と等しく且つ前記圧力信号より前記圧力が所定圧力以下の場合は前記注入比を維持する制御信号を前記分配部に出力する注入比維持部とをもつ制御部と、を有することである。
【0007】
また請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記圧送手段は、単位時間当たり前記所定量以上であり且つ一定量で前記地盤改良材を圧送する手段であることである。
【0008】
また請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2において、前記分配部は、前記圧送手段、前記注入部、及び前記貯蔵部の間を弁体を回転させて切り替える三方弁と前記弁体を動作させる駆動部とをもつことである。
【0009】
また請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜3の何れか1項において、前記注入部の1つに対して前記分配部が少なくとも1つ対応することである。
【0010】
上記課題を解決するための請求項5に係る発明の構成上の特徴は、
地盤中に注入するための地盤改良材が貯蔵されている貯蔵部から単位時間当たり所定量以上で前記地盤改良材を地盤中に差し込まれている注入部へと圧送手段によって圧送する圧送ステップと、
前記地盤改良材が前記注入部の吐出口から地盤中に流出する単位時間当たり流量及び圧力を検出し、前記流量に応じた流量信号及び前記圧力に応じた圧力信号を出力する検出ステップと、
前記圧送手段が圧送する前記地盤改良材の全体量に対し前記注入部側に流れる量の比である注入比を所定比率範囲内で変更可能に前記注入部及び前記貯蔵部の間で前記地盤改良材を分配する分配ステップと、
前記注入比が前記所定比率範囲内の上限でなく且つ前記流量信号により前記流量が前記所定量以下且つ前記圧力信号により前記圧力が所定圧力以下の場合は、前記注入比を増加させる制御信号を出力する注入比増加ステップと、
前記流量信号により前記流量が前記所定量超又は前記圧力信号により前記圧力が所定圧力超であって、前記注入比が前記所定比率範囲内の下限でない場合は、前記注入比を減少させる制御信号を出力する注入比減少ステップと、
前記流量信号により前記流量が前記所定量と等しく且つ前記圧力信号より前記圧力が所定圧力以下の場合は前記注入比を維持する制御信号を出力する注入比維持ステップと、を有することを特徴とすることである。
【0011】
また請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項5において、前記圧送ステップは、単位時間当たり前記所定量以上であり且つ一定量で前記地盤改良材を圧送するステップであることである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明においては、地盤改良材を単位時間当たり所定量以上で圧送する圧送手段と地盤改良材を地盤中に吐出する注入部との間に分配部を有し、制御部が実際に注入部から吐出される地盤改良材の単位時間当たりの流量及び圧力によって、地盤改良材の注入部側及び貯蔵部側に分配される比率を維持又は変更する制御信号を出力することができる。
【0013】
検出された値に基づき圧送手段をオン・オフすることによって所定量に制御する装置は、オンしてもすぐに所定量を圧送するようにはならず、オフしてもすぐに所定量から圧送を停止することが難しいため、注入量を適切に制御することが難しい。しかし、本発明の地盤注入装置は、圧送手段を所定量以上圧送するように作動させたまま分配部の注入比を変更するため、オン・オフによる注入量の大きな増減が発生せず注入量を制御しやすい。よって、注入量を調節することができる比較的高価な装置(圧送手段)を用いることなく、分配部で注入部と貯蓄部とに流入する比率を変更することで注入部での注入量を調節できるため、簡単な構成で地盤注入装置を実現できる。
【0014】
ここで、単位時間当たり所定量とは、地盤に地盤改良材を吐出する際の地盤毎の適切な量である。また、検出部の流量信号及び圧力信号は、流量及び圧力のアナログ値や変換したデジタル値、あるいは所定値を超えたら何らかの値を出力するなどとすることができる。また、注入比は(注入部側に流れる量)/(全体量)で算出され、範囲は0〜1である。所定比率範囲は、0〜1の範囲内で任意に設定でき、例えば0〜1の範囲を設定できる。なお、注入比が1の場合は全て注入部に流れ、0の場合は貯蔵部側に全て流れる。
【0015】
請求項2に係る発明においては、所定量以上で且つ一定量を圧送する圧送手段とすることで、定常運転中は圧送手段をオン・オフ以外の制御をしなくても良いため、本発明の地盤注入装置全体の制御が簡単になる。
【0016】
請求項3に係る発明においては、分配部に三方弁を用いることで安価な部材で地盤注入装置を実現でき且つ構成も簡単である。
【0017】
請求項4に係る発明においては、注入部毎に注入部側に流す比率を調節することができる分配部をもつため、注入部毎に地盤のより適正な注入量で地盤改良材を地盤に注入することができる。
【0018】
請求項5に係る発明においては、圧送ステップで地盤に地盤改良材を吐出する際の適切な量である単位時間当たり所定量以上で地盤改良材を圧送し、注入比増加ステップ又は注入比減少ステップで実際に地盤に吐出される流量及び圧力によって、注入部又は貯蔵部に分配される比率を維持又は変更し、その制御信号を出力することができる。よって、圧送手段のオン・オフによる制御とは異なり、圧送手段から圧送される地盤改良材を分配ステップで注入部側と貯蔵部側とに分配する比率を注入比増加ステップ又は注入比減少ステップで変更することができるため、適切な量に制御しやすい。
【0019】
請求項6に係る発明においては、請求項2と同様の効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の代表的な実施形態を図1〜図4を参照して説明する。
【0021】
(実施形態)
本実施形態の地盤注入装置10は、図1に示されるように、タンク(貯蔵部)2と、ポンプ(圧送手段)3と、分配部4と、注入部5と、検出部6と、制御部7とを有する。
【0022】
タンク2は、地盤11中に注入する地盤改良材が貯蔵されており、後述するポンプ3と導管81によって接続され、後述する分配部4とバイパス管83によって接続される。
【0023】
ポンプ3は、分配部4と導管82によって接続され、地盤改良材をタンク2から吸い出し、分配部4へと単位時間当たり所定量以上且つ一定量で圧送する。
【0024】
分配部4は、導管82を介してポンプ3から地盤改良材が流入し、後述する注入部5とバイパス管83を介してタンク2にその地盤改良材を流出する。分配部4は、ポンプ3、注入部5、及びタンク2の間を弁体(図示略)を回転させて切り替える三方弁(図示略)とその弁体を動作させる駆動部(図示略)とをもつ。分配部4は、弁体が回転することで注入部5側の開口率及びタンク2に戻る側の開口率がそれぞれ変更され、開口率によって分配部4に流入した全体量に対し注入部5側に流れる量の比である注入比が決まる。分配部4に注入する量を1とした場合、注入比は0〜1の範囲(所定比率範囲)内で変更可能である。
【0025】
注入部5は、管であり途中に単位時間当たりの流量と圧力を検出する検出部6が取り付けられている。そして、分配部4と接続しているのとは反対側の端部が地盤11中に差し込まれ、地盤11中に差し込まれる管の途中あるいは先端に吐出口51を有する。注入部5の先端が地盤11に差し込まれ、地盤改良材を地盤11中に吐出する方法としては、例えば以下のようなものがある。
【0026】
注入部5は、図2に示されるように、予め地盤11中に埋め込まれた注入部5より径の大きい外管55の内部に挿入される。外管55には略円形の開口部551が軸方向に複数箇所リング状に形成されている。この開口部551の形状は軸方向に長い略楕円径やスリット状など、適宜選択可能である。そして、開口部551には、外管55内部から地盤改良材が吐出する圧力によって撓むことで開口部551が地盤11側に開口する逆止弁54が取り付けられている。注入部5は、地盤改良材が吐出する吐出口51を有する地盤改良材用細管52と液体又は気体によって膨張するパッカー53が取り付けられたパッカー用細管(図示略)とが1つの束にまとめられて外管55に挿入される。パッカー53は、膨張したパッカー53が地盤改良材を地盤に注入する位置の外管55の開口部551を塞がないように、配置される。地盤改良材用細管52の吐出口51は、パッカー53とパッカー53との間に位置する。地盤改良材を地盤改良材用細管52から吐出する前に、まずパッカー53を膨張させ、地盤改良材細管52の吐出口51がパッカー53で区切られるようにする。パッカー53によって外管55の内部が区切られた後に、ポンプ3が駆動し地盤改良材が吐出口51から吐出される。吐出した地盤改良材はまず、外管55内部を満たし、開口部551から地盤中に排出される。なお、地盤改良材を地盤11に注入後、外管55は地盤11にそのまま埋め込まれる。
【0027】
また、地盤改良材が2種類の場合についても説明する。外管55は1液の場合と同じため、説明を省略する。注入部5は、図3に示されるように、二重管の地盤改良材細管56と第1吐出口57及び第2吐出口58を塞ぐように取り付けられている逆流防止の逆止弁59とを有している。そして、地盤改良材用細管56、パッカー53及びパッカー用細管(図示略)が一緒に外管55内部に挿入される。地盤改良材用細管56は第1吐出口57が逆止弁59aで塞がれている中心側に第1液が圧入され、第2吐出口58が逆止弁59bで塞がれている外周側に第2液が圧入される。第1液及び第2液はタンク2にそれぞれ別々に貯液される。逆止弁59は、それぞれの液の圧力により撓み、吐出口57,58から液が吐出される。第1液及び第2液が吐出される前に、パッカー53で外管55内部は仕切られる。パッカー53は、第1吐出口57及び第2吐出口58から吐出される地盤改良材が地盤11に流入する外管55の開口部551を塞がない位置に配置される。第1液及び第2液は、パッカー53で仕切られて外管55内部に充填されると圧力により開口部551を塞ぐように取り付けられている逆止弁54が撓むことで地盤11に流出する。
【0028】
検出部6は、単位時間当たりの流量及び圧力を検出し、流量値を流量信号及び圧力値を圧力信号として、後述する制御部7に出力する。
【0029】
制御部7は、ポンプ3、分配部4及び検出部6のそれぞれと通信ケーブル91〜93で接続されている。制御部7は、検出部6から流量信号及び圧力信号が入力され、それらの信号に基づき分配部4の注入比を変更するための制御信号を分配部4に出力する注入比増加部71と注入比減少部72と、注入比を変更しない制御信号を分配部4に出力する注入比維持部73とをもつ。また、ポンプ3に対して、単位時間当たり所定量以上で圧送するオン信号又は圧送をしないオフ信号を出力する。
【0030】
注入比増加部71は、流量信号と所定量及び圧力信号と所定圧力を比較し、流量が所定量以下且つ圧力が所定圧力以下で且つ注入比が所定比率範囲内の上限ではない場合に、注入比を増加させるように開口率を変更し、変更した開口率(制御信号)を分配部4に出力する。
【0031】
注入比減少部72は、流量信号と所定量、圧力信号と所定圧力を比較し、流量が所定量超又は圧力が所定圧力超であって、注入比が所定比率範囲内の下限でない場合は、注入比を減少させるように開口率を変更し、変更した開口率(制御信号)を分配部4に出力する。
【0032】
ここで、単位時間当たり所定量は、改良しようとしている地盤に地盤改良材を注入する適切な流量のことであり、所定圧力はポンプ3が破損しないための制限値より低い値である。
【0033】
注入比維持部73は、流量信号と所定量及び圧力信号と所定圧力を比較し、流量が所定量と等しく且つ圧力が所定圧力以下で且つ注入比が所定比率範囲内の上限ではない場合に、開口率を変更しない、つまり維持する制御信号を分配部4に出力する。
【0034】
本実施形態の地盤注入装置10は、一つの注入部5に対して、一つのポンプ3、一つの分配部4、1つの検出部6が対応し、一つの注入部ユニットを形成する。そして、制御部7は8つ又は16の注入部ユニットを制御する。
【0035】
本実施形態の地盤注入装置10は、本発明の地盤注入工法に基づき制御される。地盤注入工法の代表的なフローチャートを図4に示す。図4は、制御部7で実行されるロジックの一例を示すフローチャートであり、これに限定されるものではない。
【0036】
まず、単位時間当たり所定量、所定圧力及び1カ所当たり注入量を制御盤(図示略)にて入力する(初期設定ステップS101)。1カ所当たり注入量とは、地盤注入装置10の注入部5を水平方向で複数箇所また鉛直方向で複数箇所挿入し、各箇所の注入量のことである。地盤11の場所や深さにより注入量をそれぞれ設定して地盤改良材を注入する。例えば、図2及び図3に示されるように、1つの外管55に開口部551が鉛直方向で複数有る場合、注入部5をもう一つ挿入し、パッカー53で各注入部5を隔離することで、それぞれの注入箇所に適した注入量で注入する。制御盤は、制御部7が有する表示及び入力画面として、タッチパネル等によって各量を設定・変更できる。初期設定ステップS101では分配部4の注入比を、例えば1と設定する(タンク2側の注入比は0である)。次に、制御部7は初期設定ステップS101で設定した1カ所当たり注入量より若干多い吐出量、ポンプ圧送量をポンプ3毎に初期設定する(ポンプ圧送量設定ステップS102)。そして、制御部7はポンプ3にポンプ圧送量で圧送するようにオン信号を出力し(圧送ステップS103)、ポンプ検出部(図示略)によって検出されたポンプ3の圧送量を圧送量信号として受け取る(ポンプ圧送量検出ステップS104)。制御部7は、ポンプ圧送量検出ステップS104で検出された圧送量信号に基づき、ポンプ3のポンプ圧送量からポンプ圧送量誤差を算出し、許容誤差を超えている場合は、ポンプ3を停止し、ポンプ圧送量を若干減少させる調整を行い、ポンプ圧送量設定ステップS102に戻る(ポンプ圧送量調整ステップS105)。ここで、ポンプ圧送量誤差とはポンプ圧送量検出ステップS104で検出されたポンプ圧送量から1カ所当たり注入量を引いた当たりであり、許容誤差とは1カ所当たり注入量と許容できる注入量の上限との差である。
【0037】
ポンプ3の圧送量から算出されるポンプ圧送量誤差が許容誤差の範囲内であれば、分配部4に流入する地盤改良材が、設定された注入比に従って、注入部5とタンク2とに流出させられる(分配ステップS106)。そして、検出部6によって検出された単位時間当たり流量を流量信号として受け取る(検出ステップS107)。
【0038】
そして、注入比が所定比率範囲内の上限でなく且つ流量信号が所定流量と同じで且つ圧力信号が所定圧力以下の場合に、分配部4の開口率を変更しない(維持する)制御信号を分配部に出力する(維持ステップS108)。注入比が所定比率範囲内の上限でなく且つ流量信号が所定量以下で且つ圧力信号が所定圧力以下の場合に、注入比を増加させる開口率を出力する(増加ステップS109)。流量が所定量超又は圧力が所定圧力超であって、注入比が所定比率範囲内の下限でない場合は、注入比を減少させる開口率を出力する(減少ステップS110)。本発明の地盤注入工法は、制御部7からポンプ3に地盤改良材の圧送を停止するオフ信号が出力されるまで、検出ステップS106と維持ステップS108、増加ステップS109、又は減少ステップS110とを繰り返す。注入比の変更つまり開口率の変更は、一定の値に増減させる方法あるいは流量と所定量との差に基づく注入比から増減させる率を変更する等が考えられる。
【0039】
本実施形態の地盤注入装置10及び地盤注入工法は、ポンプ3が地盤改良材を単位時間当たり所定量以上で圧送し、実際の流量及び圧力が所定量及び所定圧力によって、分配部4の注入部5側の開口率(注入比)を変えて分配する量を変更する。圧送手段3が地盤改良材を一定量で圧送しつ続け、分配部4にて注入部5とタンク2とに流入する比率を変更するため、オン・オフによる注入量の大きな増減が発生しにくく、注入部5が地盤11に地盤改良材を注入する量を調節しやすい。そして、分配部4としては開口率(注入比)を変更するものでよいため、分配部4自体もそれほど高価な装置を用いることもなく、また装置全体の構成もシンプルである。そして、検出ステップS107で流量及び圧力を検出し、注入比維持ステップS108、注入比増加ステップS109又は注入比減少ステップS110にて分配部4の開口率(注入比)を変更する、を繰り返すことで適切な注入量で地盤11に地盤改良材を注入できるため、工法もシンプルである。
【0040】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、地盤注入工法の注入比維持ステップS108、注入比増加ステップS109又は注入比減少ステップS110において、流量及び圧力を所定値と同時に比較しているが、流量を基本的に比較することで分配部4の開口率(注入比)を維持・変更し、圧力が所定圧力を超えた場合に開口率を変更するような割り込みを行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態の地盤注入装置10を模式的に示した説明図である。
【図2】本実施形態の地盤注入装置10の地盤中に差し込まれた注入部5の構成を示す説明図である。
【図3】本実施形態の地盤注入装置10の地盤中に差し込まれた注入部5の構成を示す説明図である。
【図4】本実施形態の地盤注入工法を表すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0042】
10:地盤注入装置、11:地盤、
2:タンク、
3:ポンプ、
4:分配部、
5:注入部、51:吐出口、52,56:地盤改良材用細管、53:パッカー、54,
59:逆止弁、55:外管、551:開口部、57:第1吐出口、58:第2吐出口、
6:検出部、
7:制御部、71:注入比増加部、72:注入比減少部、
81,82:導管、83:バイパス管、
91〜93:通信ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に差し込まれ、吐出口をもつ注入部と、
地盤中に注入するための地盤改良材が貯蔵されている貯蔵部と、
前記貯蔵部から前記注入部に単位時間当たり所定量以上で前記地盤改良材を圧送する圧送手段と、
前記地盤改良材が前記吐出口から流出する単位時間当たり流量及び圧力を検出し、前記流量に応じた流量信号及び前記圧力に応じた圧力信号を出力する検出部と、
前記注入部及び前記圧送手段の間に位置し、前記圧送手段が圧送する前記地盤改良材の全体量に対し前記注入部側に流れる量の比である注入比を所定比率範囲内で変更可能に前記注入部及び前記貯蔵部の間で前記地盤改良材を分配する分配部と、
前記注入比が前記所定比率範囲内の上限でなく且つ前記流量信号により前記流量が前記所定量以下且つ前記圧力信号により前記圧力が所定圧力以下の場合は前記注入比を増加させる制御信号を前記分配部に出力する注入比増加部と、前記流量信号により前記流量が前記所定量超又は前記圧力信号により前記圧力が所定圧力超であって前記注入比が前記所定比率範囲内の下限でない場合は前記注入比を減少させる制御信号を前記分配部に出力する注入比減少部と、前記流量信号により前記流量が前記所定流量と等しく且つ前記圧力信号より前記圧力が所定圧力以下の場合は前記注入比を維持する制御信号を前記分配部に出力する注入比維持部とをもつ制御部と、を有することを特徴とする地盤注入装置。
【請求項2】
前記圧送手段は、単位時間当たり前記所定量以上であり且つ一定量で前記地盤改良材を圧送する手段である請求項1に記載の地盤注入装置。
【請求項3】
前記分配部は、前記圧送手段、前記注入部、及び前記貯蔵部の間を弁体を回転させて切り替える三方弁と前記弁体を動作させる駆動部とをもつ請求項1又は2に記載の地盤注入装置。
【請求項4】
前記注入部の1つに対して前記分配部が少なくとも1つ対応する請求項1〜3の何れか1項に記載の地盤注入装置。
【請求項5】
地盤中に注入するための地盤改良材が貯蔵されている貯蔵部から単位時間当たり所定量以上で前記地盤改良材を地盤中に差し込まれている注入部へと圧送手段によって圧送する圧送ステップと、
前記地盤改良材が前記注入部の吐出口から地盤中に流出する単位時間当たり流量及び圧力を検出し、前記流量に応じた流量信号及び前記圧力に応じた圧力信号を出力する検出ステップと、
前記圧送手段が圧送する前記地盤改良材の全体量に対し前記注入部側に流れる量の比である注入比を所定比率範囲内で変更可能に前記注入部及び前記貯蔵部の間で前記地盤改良材を分配する分配ステップと、
前記注入比が前記所定比率範囲内の上限でなく且つ前記流量信号により前記流量が前記所定量以下且つ前記圧力信号により前記圧力が所定圧力以下の場合は、前記注入比を増加させる制御信号を出力する注入比増加ステップと、
前記流量信号により前記流量が前記所定量超又は前記圧力信号により前記圧力が所定圧力超であって、前記注入比が前記所定比率範囲内の下限でない場合は、前記注入比を減少させる制御信号を出力する注入比減少ステップと、
前記流量信号により前記流量が前記所定量と等しく且つ前記圧力信号より前記圧力が所定圧力以下の場合は前記注入比を維持する制御信号を出力する注入比維持ステップと、を有することを特徴とする地盤注入工法。
【請求項6】
前記圧送ステップは、単位時間当たり前記所定量以上であり且つ一定量で前記地盤改良材を圧送するステップである請求項5に記載の地盤注入工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−121282(P2010−121282A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293261(P2008−293261)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(390020488)太洋基礎工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】