説明

均一のバットとして連続繊維を集積する方法と装置

連続的な繊維又はフィラメントを均一なバットとして集積する方法と装置が、紡糸ダイ形式のフィラメント・エミッタと、ベンチュリ管と、ディフューザと、繊維集積ベッドとを含んでいる。フィラメントは、エミッタから放出された後、下方へ移動する。排気口により、ディフューザ内には、フィラメントの流れに抗する方向の空気流が発生することで、フィラメントは、繊維集積ベッドに接触する前に減速される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続的な加工により繊維をバットに製造することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維材料は、しばしば繊維生成液化材料に開口を通過させることにより1つ以上の液体材料流を生成することで製造される。開口を通過した後、液体流は、冷却され硬化して、固体フィラメントになる。固体フィラメントは、次いでフィラメントが形成された箇所の下にある可動スクリーン上又は多孔ベルト上に集積され、マルチフィラメントが結合され重ねられて、材料バットが形成される。次いで、このバットは、様々な多くの目的に使用できる。例えば、材料が炭素繊維の場合は、バットは、炭素繊維複合システムの構造部材として直接に使用できる。バットは、また細断されて、得られた細片は、例えば吹き付け炭素繊維システムの一部等の様々な多くの用途の構造用支持材として使用できる。
【0003】
ファイバ・フィラメントは、生成され例えば場合、かなり脆くなることが多い。結果として、フィラメントは、可動スクリーン又はベッド上に着床すると、種々の箇所で破断することがある。しかし、フィラメントは無傷に維持されるほうが好ましい。その一部の理由は、破断したフィラメントは、使用時に構造的な支持能を低下させるからであり、かつまた破断したフィラメントは、バットを不連続にすることで、バットが、均一の強度その他の全体特性を有する、フィラメントのランダムな連続的集積体となるのを阻害するからである。
また、連続的なマルチファイバは、列をなして製造されることで、幕状に形成されて、ベルト上に載せられバットを形成する。次いで、別の複数層が第1の層の下流に作られ、平らで、より厚いバットが作られる。幾つかの製造工程をへて形成された後、バットは炉に入れられ、炉内で乾燥される。この作業により、低嵩密度の均一なバットが製造されるのが好ましい。そのほうが比較的迅速かつ一様に乾燥できるからである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書は、材料のバットを形成するために、溶融状又は液体状の材料から連続的な工程で繊維を製造する方法とシステムとを開示するものである。一観点では、スパンファイバから均一な面密度及び体積密度を有するバットを製造する装置が開示される。この装置は、フィラメントを放出する細管又は紡糸口金の出口オリフィスを備えた紡糸パック等のフィラメント・エミッタと、細管または紡糸口金に隣接し紡糸パックからフィラメントを受け取るベンチュリ管と、ベンチュリ管近くの、ベンチュリ管からフィラメントを受け取るディフューザと、フィラメントの流れ方向と逆方向の空気流をディフューザ内に発生させる1つ以上の排気口と、フィラメントを受け取る繊維集積ベッドとを含んでいる。このベッドは、例えば可動スクリーンを含むことができる。
【0005】
ディフューザは、各々1つの排気口を有する2つの対向側部を有することができ、該排気口は、平らな又は湾曲した有孔板を含むことができ、事実上45度の角度で各フィラメントと交差する垂直軸線を有する平面を形成している。ガス流整直器を備えた吸い込みボックスが、繊維捕集ベッド下に取り付けられ、かつ排気ファンに接続されていることで、繊維捕集ベッドのほうへフィラメントを引き込むことができる。
【0006】
前記バット製造装置は、種々の空気供給部を備えている。一観点では、一次ガス供給部は、細管又は紡糸金口の出口でフィラメントの周囲にガスを吹き付けでき、紡糸パック内に1対の対向するガスプレナムを含むことができる。二次ガス供給部は、整流器を有する複数ガス供給導管とフィラメントの両側の開口とを含み、フィラメントの周囲にガスを供給することもできる。前記ディフューザは、ベンチュリ管に近い第1端部からベンチュリ管から離れた第2端部まで幅が増大しており、また、前記紡糸パックは、1列に間隔をおいて設けられた複数の細管又は紡糸金口により孔があけられた面を有する紡糸ダイを含むことができる。別の実施例では、ディフューザが、ベンチュリ管近くの第1端部からベンチュリ管から遠い第2端部まで幅が増大する曲線状の壁を有することができる。
【0007】
別の観点では、複数の、例えば4つ以上の紡糸装置を含むシステムが開示されるが、該紡糸装置は、各々1つ以上の紡糸パックと、ベンチュリ管と、ディフューザと、ディフューザ内の1つ以上の排出口とを有している。事実上直線の移動方向を有する可動ベッドは、フィラメントを受け取り、それにより、第1紡糸装置からのフィラメントが可動ベッド上に堆積し、続く紡糸装置からのフィラメントが第1紡糸装置からのフィラメント上に堆積される。可動ベッドは、例えば有孔ベルトを有することができ、ベッドにフィラメントを引き付ける1つ以上の吸引ボックス上方に配置することができる。前記システムは、また複数紡糸装置の各々と連通する流体供給導管を含んでいる。各紡糸パックは、1列に間隔をおいて設けられた複数の細管又は紡糸口金により孔があけられた面を有する紡糸ダイを含むことができ、紡糸装置は、細管又は紡糸口金により形成される直線と直角の直線上に配置できる。
【0008】
本発明により繊維バットを製造する方法も開示され、該方法は、複数フィラメントを生成する段階と、ベンチュリ管及びディフューザを介してフィラメントを下方へ向ける段階と、上向きの成分を有する空気流の流れる区域を通過させることで、複数フィラメントを第1速度から第2速度へ減速させる段階と、フィラメント・ベッド上に複数フィラメントを堆積させる段階とを含んでいる。フィラメント・ベッドは、繊維ベッドを除去するさいには、直線方向に移動し、また第2の複数フィラメントを形成するためには、前記諸段階が反復され、第2のフィラメントがベッド上の前のフィラメントの上に堆積される。これらのフィラメントは、また冷却されて、液体状態から固体状態となり、ベンチュリ管内で繊細化される。
本発明の1つ以上の実施例の詳細を、以下で添付図面につき説明する。本発明の他の特徴、目的、利点は、該説明及び図面、並びに請求項により明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、連続ブロースパン繊維を均一なバットとして集積する装置10の断面図である。図2は、図1のブロー紡糸パックを、より詳細に示す断面図である。ブロー紡糸パック12は、基部20に取り付けられたブロー紡糸ダイ18を有している。ブロー紡糸ダイ18は、アンカーボルト26で結合された紡糸末口24と側板22とを含んでいる。供給路28は、繊維溶融体またはポリマーを受け取り、溶融体溜め30に送り、このピッチが細管または紡糸金口32から排出され、連続的なフィラメントが形成される。マルチ細管または紡糸金口31(図4参照)が備えられているので、多数のフィラメントが同時に製造され、フィラメントの幕が形成される。紡糸パック12は加熱されることで、繊維溶融体は溶融状態に維持される。
【0010】
図2を見ると、一次空気供給部が、溶融体溜め30の両側にブロー紡糸パック12の長さに沿って延びる1対の一次ガスプレナム34を含んでいる。一次ガスプレナム34は、各々細管又は紡糸金口32に隣接する出口を有する通路又はスロット36を有していることで、フィラメントが紡糸ダイ18を出るさいに、一次ガスがフィラメント周囲に吹き付けられる。この一次ガスは、繊維が細管又は紡糸金口32を出た後、中心にまとまるのを助け、かつ得られたフィラメントが細管又は紡糸金口32を出た後に冷却され硬化するさいに、フィラメントを繊細化する。
一次ガスの所要温度は溶融体の特性に左右される。若干のポリマーの場合、一次ガス温度は、蒸発溶剤の冷却効果を補償するために、溶融体温度より高温にする必要があろう。例えば、溶融体が溶融中間相ピッチの場合、一次ガスは、例えば355°Cに、すなわちピッチ温度より高温にすることができ、これによりピッチ繊維は、溶融フィラメントから固体フィラメントに冷却される前に、繊細化されることが可能になる。
【0011】
再び図1を見ると、ブロー紡糸パック12は、ハウジング15の頂部に取り付けられ、該ハウジングは、個々のフィラメントを受け取り、それらを更に処理する。フィラメントは、入り口46及びのど48を有するベンチュリ管から成るハウジング通路44に入る。ベンチュリ管入り口46は、フィラメントを放出する細管又は紡糸金口32の下方に心合わせされている。フィラメントの周囲へは追加のガスが、2次ガス供給部50から通路44内へ供給される。この二次ガス(例えばろ過されたガス)はフィラメントを下方へ運ぶさいに、フィラメントに対する張力を維持する。基本的な物理的原理(例えばベルヌーイの方程式に代表される)によって、ガスは、細いベンチュリ管のど48に流入すると加速され、のど48を過ぎて通路が広がると減速する。ガスは、対称的に、加圧されて、事実上非渦流として供給される。二つのガス流は、ベンチュリ管入り口46近くでフィラメントと組み合わされ、フィラメントを取り囲んで連行する単一の加速された事実上の層流を形成する。ガス流は事実上層流なので、フィラメントは、細管32からベンチュリ管のど48を経て比較的直線的かつ安定的に維持できる。
【0012】
2次ガス供給部は、ガス導管2、整流器54、ガス供給源56とを含むことができる。ガス導管52は、適当な形式であれば、どのような形式でもよく、特に、紡糸パック12が一列の多数の細管又は紡糸金口を有し、したがって奥行き(図1の図平面と直角に奥に向かって測定して)がある場合には、長方形断面を有していてもよい。整流器54は空気流内に取り付けられた格子板を含み、ガス供給源56は、ファン、ファンに接続されたガス導管、空気ポンプ(例えばマルチ装置が一緒の用いられている場合)、何らかの他の適当な装置のいずれかを含むことができる。
2次ガス流は、更にフィラメントを連行し維持する張力を補助する。2次ガス流は、1次ガス流より更に下流でフィラメントに接触するので、フィラメントを破断する恐れなしにフィラメントに推進力を作用させることができる。結果的に、2次ガスは、1次ガスより大きい体積で、かつまたフィラメント速度より高速で得ることができる。
【0013】
細管又は紡糸金口の出口32とベンチュリ管入り口46との間隔は、スパンファイバの熱硬化特性と、特定繊維溶融体の急冷速度を決定する1次及び2次ガスの冷却効果とによって決められる。ここで使用する場合、「急冷」とは繊維の凝固をいう。急冷点は、繊維生成点であり、この生成点で繊維直径が固定され、この生成点以後には繊維の付加的繊細化、つまり繊維直径の減少は生じない。通常、細管又は紡糸金口の出口32とベンチュリ管入り口46との間隔は、約0.25インチ(0.635cm)〜約100インチ(254cm)だろう。例えば、溶融中間相ピッチから紡糸された繊維は、きわめて急速な急冷速度を有し、ダイ末口の僅かな距離以内で、つまり細管又は紡糸金口の出口のところで凝固できる。ピッチ炭素繊維が急冷された場合、その直径は固定され、繊維は、それ以上は繊細化されない。溶融中間相ピッチから繊維をブロー紡糸する場合の、細管又は紡糸金口の出口32とベンチュリ管入り口46との最適間隔は、約2インチ〜4インチ(約5.08〜10.16cm)と決められた。しかし、この間隔は、他の繊維生成材料の場合には100インチ(254cm)を超えてもよい。
【0014】
他の種類の繊維溶融体の場合、急冷は繊維がベンチュリ管に入った後に初めて行われ、結果として2次供給空気繊維に対する張力が維持されるだけでなく、繊維がベンチュリ管を通過しディフューザの最初の部分を通過する間にも更に繊細化が生じ得る。当業者には分かるだろうが、紡糸パック12とベンチュリ管入り口46との距離を増し、更に閉鎖環境を維持することが望ましい。図5に示すように、ハウジング15を上方へ延長することで、更に紡糸パック12とベンチュリ管入り口46とが隔たっていてもよい。
フィラメントは、ベンチュリ管を通過した後、頂部から底部へ向かって拡大しているディフューザ57に入る。ベンチュリ管とディフューザとの境界は、適当な箇所に所在すると考えていい。例えば、ベンチュリ管は、ベンチュリ管のど48の最小幅のところが端部と考えてよく、ディフューザは、通路44の残りの部分と考えてよい。また、ベンチュリ管は、通路44の拡大部分の一部を含み、ディフューザは、通路44の残りの部分を含むと考えてもよい。
【0015】
ディフューザ57は、上部58と、下部62と、出口70とを含んでいる。上部58は、対向するディフューザ壁60によって画成された通路44の拡大部分とすることができる。上部58は、頂部から底部へ向かって寸法が増しているので、空気の垂直方向速度が、上部58の頂部から底部へ向かって減速され、フィラメントの垂直方向速度も減速されて、フィラメントが、水平方向に移動し始めることで、頂部でのより高い速度と底部でのより低い速度とが調節される。図1に示すように、ディフューザ壁60は曲線状であり、ディフューザ壁60の間隔は、ガスの制御された膨張を可能にする割合で増大している。このことによって、ディフューザ壁60からのガス流解離の防止が補助され、フィラメントのもつれや不均一な束又は固まりを発生させる逆流又は渦流又は乱流の発生が防止される。
【0016】
ディフューザ57は鐘状又はスカート状の下部62を含み、そこでは通路44からのガスの一部が下降するフィラメントの流れから分離される。下部62の各側に設けられた1つ以上の排気口64は、排気が下部62から引き出され、図に流れ方向を矢印で示すように、概して水平方向及び上方へ流れて排気プレナム66に流入するように、配向されている。排気口64は、下部62のディフューザ壁に設けた単なる開口でよいが、またスクリーン、可とう性の有孔板、その他適当な構成のものを含んでいてもよい。排気は、排気導管68からガスが除去されることにより下部62に発生する相対的な真空によって排出される。排気導管68は、排気ファンに接続してもよいし、マルチ装置に通じる中央導管システムに接続してもよい。同じように、排気は排気導管68から供給導管56へ再循環させてもよい。
【0017】
図1では、下部62のディフューザ壁がディフューザ57の上部から滑らかに移行するように構成され、外方へ曲線を描くことで、ディフューザ下部での排気流の水平方向成分と、より多くの垂直方向成分とが得られる。このようにすることで、排気の水平方向成分は、更にガス流を拡散させ、それによりガス流が減速し、下部62の側方へ広がることが可能になり、繊維が更に広がることになる。排気の上行成分は、下降するフィラメントに上昇力を与え、フィラメントは集積面14に着床する前に更に減速される。排気速度が制御できることで、フィラメントは、排気口64内に吸い込まれることなく、もっぱら水平方向に広がるだけとなる。結果的に、フィラメントは、集積面14上に比較的軟着床し、破断したり損傷したりする可能性は低くなる。フィラメントも、またより均一でランダムなバットを形成する。排気口64は、別の形状を有していてもよく、例えばディフューザ壁60の下部を有孔板として構成することもできる。また、排気口64は、複数垂直面を有することにより、水平方向のガス流のみを発生させることも可能である。他の適当な構成も使用できる。
【0018】
フィラメントは、集積面14上に着床することで集積され、比較的ランダムなバットが生成される。集積面14は、ディフューザ出口70の下で移動する。集積面14は、集積面下の真空ボックス74内へガスが吸い込まれるように、孔あけされるか、そうでなければ多孔性の又は途切れた面にすることができる。例えば集積面14は、一連の連結バー、スクリーン、その他適当な構成を含むことができる。
集積面14の下には真空ボックス74が配置されている。真空ボックス74は、ディフューザ出口70と等しい寸法及び形状でよく、整流器76と有孔板77とを備えることで、集積面14を通過するガス流が、より以上に層流となり均一になる。ガスを供給及び排出する他の構成要素の場合のように、真空ボックス74は、導管78によりファンに接続されるか、又は装置10がより大型のシステム内のマルチ装置の1つであれば、1つ以上の導管により他の複数真空ボックスに接続できる。システムがマルチ装置10を有する場合には、単一の真空ボックスか、セグメントの真空ボックスか、集積面14にバットを保持する負圧発生用の別の構造物のいずれかを備えればよい。また、バットは適当に上方から圧力を加えて定位置に保持してもよい。
【0019】
真空ボックス74を通過する流量は、ディフューザ出口70・集積面14の間隔と、ベンチュリ管のど48を介して供給されるガス量と、排出口64から排出されるガス量とによって調節できる。このバランスのパラメータを選択することによって、フィラメントは、均等な落下速度で集積面14上に着床し、真空ボックス74により得られる十分な吸い込み力によって、バットは、集積面14に保持され、かつ集積面14がディフューザ出口70の下へ移動することで搬出され得る。ディフューザ出口70と真空ボックス74とは、またガスとフィラメントが十分に減速されるように寸法付けされることで、フィラメントは、事実上ランダムに配向されたフィラメントの、ルーズで低密度の連続繊維バットとして集積面14上に堆積する。また、バッフル75が備えられており、該バッフルの構成により、繊維バットは自由に装置10から出られるが、周囲区域との適切な圧力関係は維持することができる。総じて、ガス流は平衡状態なので、真空ボックス74及び排気口64から除去される全ガスは、ベンチュリ管から流入する全ガス量と等しく、このため、システムはその環境に対し中立的である。
【0020】
圧力モニタと、流量モニタと、制御弁(図示せず)とで供給及び排気をモニタし制御することにより、適正圧力が得られ、それによって繊維バットの目標面密度(g/m)と体積密度(g/m)が得られる。当業者には、集積ベッドの速度を増すか、又は紡糸速度を減速することで、バットの面密度が減少することが理解されよう。同じように、バットの体積密度は、給気に対する真空ボックス74からの排気の割合を増すことで高められ、排気に対する給気の割合を増すことで低下させることができる。面密度と体積密度双方の制御は、用途によっては望ましい。例えば低密度バットは、乾燥、溶剤除去、熱処理、サイジングの適用を容易にする。あるいはまた高密度バットは、複合強化材に用いるには望ましい。
取り外し可能な有孔板又はスクリーン79は、集積面14の下に配置され、破断繊維や排気流により集積面14から吸い出される繊維微片を除去又は濾別する。これらの有孔板又はスクリーンは、真空ボックス74の全面にわたって一様なガス流が得られるように設計され、均一なバット形成に役立っている。スクリーン79は、取り外してブラシをかけるか、紡糸作業中や繊維集積工程中に真空清浄することができる。スクリーン79により、整流器76及び有孔板77への破断繊維の詰まりが防止され、真空ボックス74の面上に一様に一定の排気流が作用して繊維集積工程を連続的に行うことが可能になる。
【0021】
装置10は、通路44を取り囲む覆いとして役立つ後壁72と前壁(図示せず)とを備えている。これらの壁は、例えば、ハウジング15に取付けて全体的な囲いのハウジングを形成できる平らなパネルでよい。こうすることで、また洗浄、保守、その他必要のさいには壁を取外して、ハウジング内部に接近できる。壁の間隔は、紡糸パックの長さに応じて設定できるので、細管又は紡糸金口31のすべてが、囲まれた空間内で繊維を放出できる。マルチ紡糸パックを単一の長い紡糸パックの代わりに用いる場合、通路44とディフューザ57との部分に仕切り81(図4参照)を設けてブロー紡糸パックを互いに分離し、例えば、隣接紡糸パックを妨害することなく特定紡糸パックを単独化又は交換できる。ブロー紡糸パック12とハウジング15との間には、滑りパネル16を配置できる。滑りパネル16は、例えば、装置10での製造が停止された場合、ブロー紡糸パック12から出るフィラメントの流れを阻止する位置へ移動できる。加えて、ブロー紡糸パック12には、洗浄その他の保守を行う必要があるが、そうした処置のさいに、滑りパネル16は通路44の汚染を防止することができる。
【0022】
本発明を制限するものではない一実施例の場合、ブロー紡糸ダイ、例えば紡糸ダイ18は、溶媒和中間相ピッチからピッチ炭素繊維を50m/secの速度で製造できる。2次ガス供給部50からの2次ガス供給速度と、排気プレナム66からの排気量と、真空ボックス74からの排気量とを制御することによって、繊維が集積面14に衝突する速度は、1m/secに低減できる。
図3は、一様な多層繊維バットを製造するためのシステム100の数台の装置10の断面図である。図示のように、最も左の装置10は、最初に集積面14上にバットを堆積させ、集積面14はバットを左から右へ移動させる。次の装置10は別のバット層を重ね、システム100の最も右で4層のバットになるまで作業が続けられる。次に、多層バットは、繊維の種類や目標最終製品又は用途に応じて、製造したままで使用されるか、又は下流での追加加工、例えば繊維に残る溶剤除去のための乾燥、安定化、炭化、黒鉛化、刺し縫い等の処置を受ける。
【0023】
図4は、図1の4−4線に沿って截断した装置10の縦断面図である。この図では、装置10がマルチ紡糸パック12を含んでいる。この図では、集積面14は図平面に直角に奥へ移動する。繊維80は、出口32から細管又は紡糸金口31を出て、通路44に入る。この図では、ディフューザ57の下部62の排気口64は、有孔板として描かれている。繊維80が下方へ移動すると、下部62の空気流の上昇成分が繊維の下降速度を減速させる。繊維が集積ベッドに近づいたときに、集積面14が、繊維80の速度より遅い速度で移動すると、繊維は、集積面14上を水平に移動するだろう。仕切り81は、通路44内に、また任意にディフューザ内に設けることができ、紡糸パック12を分離することで、隣接紡糸パックを妨害することなく特定紡糸パックを単独化できる。
【0024】
図5は、予め形成された連続的な繊維を均一なバットとして集積する装置110の断面図である。繊維は、例えば連続的なブロー紡糸繊維又は溶融紡糸繊維でよく、該繊維は、装置110内へ導入される前に引張装置を通過する。あるいはまた、該繊維は、適当な装置、例えばスプール又はボビンに蓄えられた予め形成された繊維であり、装置110へ導入される直前に巻き出されたものである。繊維(矢印120で示す)は、装置110のハウジング15の頂部開口130から導入され、ベンチュリ管入り口46を通過する。ベンチュリ管入り口46に入った後の過程及び構成は、図1に示したものと同じである。必要だが、図示はされていない付加的な補助装置は、スプール又はボビンの巻き出し機又は繊維張力装置を含むことができる。それらの機器は当業者には周知のものである。
【0025】
繊維形成装置、例えば溶融紡糸ダイ(図示せず)とベンチュリ管入り口46との距離を増すことが望ましい場合、ハウジング15は、繊維周囲を囲む環境を得るために、上方へ延びる延長部140を有することができる。滑りパネル16と開口130とは、上方への延長部140の底部か頂部のいずれかに配置することができる。
以上、本発明の若干の実施例を説明した。しかし、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく種々の変更態様が可能であることが理解されよう。例えば、本発明を、ここではブロー紡糸ダイの使用に関連して説明したが、本発明は、同じように、溶融紡糸ダイを利用した繊維紡糸システム、又は紡糸されスプールやボビンに蓄えられた繊維や糸でバットを作るシステムにも適用できる。したがって、他の実施例も本発明の特許請求の範囲の枠内にある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】連続的なブロースパン繊維を均一なバットとして集積する装置の断面図。
【図2】図1のブロー紡糸パックの拡大断面図。
【図3】連続ブロースパン繊維から均一な多層繊維バットを製造するシステムの断面図。
【図4】連続ブロースパン繊維を均一なバットとして集積する装置を図1の4−4線に沿って截断した断面図。
【図5】連続繊維を均一なバットとして集積する装置の断面図。
【符号の説明】
【0027】
10 バット集積装置
12 ブロー紡糸パック
16 滑りパネル
18 ブロー紡糸ダイ
20 基部
22 側板
24 紡糸末口
26 アンカーボルト
28 供給通路
30 溶融体溜め
31 細管又は紡糸金口
32 細管又は紡糸金口の出口
34 ガスプレナム
36 通路又はスロット
44 通路
46 ベンチュリ管入り口
48 ベンチュリ管ののど
50 ガス供給部
52 ガス導管
54、76 整流器
56 ガス源
57 ディフューザ
58 ディフューザ上部
60 ディフューザ壁
62 ディフューザ下部
64 排気口
66 排気プレナム
68 排気導管
70 ディフューザ出口
72 後壁
74 真空ボックス
77 有孔板
78 導管
79 有孔板又はスクリーン
81 仕切り
100 バット製造システム
110 バット集積装置
120 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロースパン繊維から繊維バットを作製する方法において、
a)紡糸可能な物質を流動可能にするのに十分な温度に加熱する段階と、
b)紡糸可能な物質を紡糸装置内へ送入し、紡糸装置内に配置された少なくとも1つの細管を通過させることにより少なくとも1つの繊維を形成し、しかも前記少なくとも1つの繊維が或る初速を有するようにする段階と、
c)前記少なくとも1つの繊維を少なくとも1つのガス流に接触させ、かつ前記少なくとも1つの繊維をディフューザ内へ送入する段階と、
d)前記繊維を少なくとも1つの追加ガス流に接触させて、前記繊維に張力を加え、しかも前記少なくとも1つの追加ガス流の速度が繊維の前記初速より高くする段階と、
e)前記少なくとも1つの追加ガス流を散逸させ、それによって繊維の速度を最終速度に減速させる段階と、
f)前記繊維を前記最終速度で前記ディフューザから排出させる段階と、
g)前記少なくとも1つの繊維を集積して繊維バットを形成する段階とを含む、ブロースパン繊維から繊維バットを作成する方法。
【請求項2】
更に、前記少なくとも1つの繊維と前記追加ガス流とをベンチュリ管内へ送入する段階を含む、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記追加ガス流の散逸速度を制御することで、繊維の最終速度を制御する段階を含む、請求項1に記載された方法。
【請求項4】
前記追加ガス流の散逸速度を増すことで、繊維バットの体積密度が高められる、請求項3に記載された方法。
【請求項5】
前記紡糸装置を出るさいの繊維の前記初速が、ディフューザを出るさいには、前記最終速度に減速され、しかも前記最終速度に対する前記初速の比は、最大50:1である、請求項3に記載された方法。
【請求項6】
前記繊維が炭素質ピッチから紡糸される、請求項1に記載された方法。
【請求項7】
前記繊維が溶融和中間相ピッチから紡糸される、請求項1に記載された方法。
【請求項8】
ブロー紡糸装置によって製造された繊維バットの面密度(g/m)と体積密度(g/m)とを制御する方法において、
a)前記繊維がブロー紡糸装置を出るさい、該紡糸装置により製造された繊維に初速(m/sec)を与える段階と、
b)ブロー紡糸装置の下で繊維集積面が移動する速度を変更する段階と、
c)前記繊維がブロー紡糸装置を出た後、前記繊維集積面に到達する前に、繊維の初速が減速される値を制御する段階とを含む、ブロー紡糸装置によって製造された繊維バットの面密度と体積密度とを制御する方法。
【請求項9】
前記段階c)が、繊維を、繊維と逆方向に移動するガス流と接触させる作業を含む、請求項8に記載された方法。
【請求項10】
ブロースパン繊維から繊維バットを形成する装置において、
a)紡糸可能な物質を受け取る第1開口と前記物質と繊維として排出する第2開口とを有する少なくとも1つの細管と、排出される繊維に一次ガス流を向ける手段とを含むブロー紡糸ダイと、
b)前記ブロー紡糸ダイの下流に配置されたベンチュリ管とが含まれ、該ベンチュリ管が貫通通路を有し、該通路が第1と第2の開放端部を有し、しかも第1開放端部が、ブロー紡糸ダイから排出される繊維を受け取るように位置決めされており、更に
c)ベンチュリ管の下流に配置されたディフューザが含まれ、該ディフューザが、ベンチュリ管を貫通する前記通路の第2開放端部の下流に位置する第1開放端部と、前記繊維が前記ディフューザを出ることを可能にする第2開放端部とを有しており、しかも前記ディフューザが1つ以上の排気口を含み、これらの排気口が、ディフューザ内に繊維の流れ方向に抗する方向の空気流を発生させる、ブロースパン繊維から繊維バットを形成する装置。
【請求項11】
更に、前記ベンチュリ管に入る前に、繊維に2次ガス流を向ける手段を含んでいる、請求項10に記載された装置。
【請求項12】
前記ベンチュリ管と前記ディフューザとが、ベンチュリ管の中心を垂直に貫通する軸線を中心とした対向壁を有している、請求項10に記載された装置。
【請求項13】
前記軸線とベンチュリ管第2開放端部の対向壁との間隔が、該軸線とベンチュリ管の第1開放端部の対向壁との間隔より大きい、請求項12に記載された装置。
【請求項14】
前記軸線とディフューザの第2開放端部の対向壁との間隔が、前記軸線とディフューザ第1開放端部の対向壁との間隔より大きい、請求項12に記載された装置。
【請求項15】
前記ディフューザが上部と下部とを含んでいる、請求項14に記載された装置。
【請求項16】
前記ディフューザ上部の対向壁の少なくとも一部が、前記軸線に対し外方へ湾曲している、請求項15に記載された装置。
【請求項17】
前記ディフューザ下部の対向壁の少なくとも一部が、前記軸線に対し外方へ湾曲している、請求項15に記載された装置。
【請求項18】
前記ディフューザ内に配置された排気口を付加的に含んでいる、請求項10に記載された装置。
【請求項19】
前記排気口が前記ディフューザ下部の対向壁内に1つ以上の開口を含んでいる、請求項18に記載された装置。
【請求項20】
前記排気口が有孔板を含んでいる、請求項19に記載された装置。
【請求項21】
付加的に、前記ディフューザから排出される空気量を制御する手段を含んでいる、請求項18に記載された装置。
【請求項22】
繊維を集積する面を付加的に含んでいる、請求項10に記載された装置。
【請求項23】
前記集積面の下に空気を排出する手段を付加的に含んでいる、請求項22に記載された装置。
【請求項24】
前記ベンチュリ管と前記ディフューザとが隣接している、請求項10に記載された装置。
【請求項25】
前記細管の第2開口と前記ベンチュリ管の第1開放端部との間隔が、約0.25インチ(0.635cm)−約100インチ(254cm)である請求項10に記載された装置。
【請求項26】
前記少なくとも1つの細管の第2開口と、前記ベンチュリ管の第1開放端部との間隔が、約2インチ(5.08cm)−約4インチ(10.16cm)である、請求項25に記載された装置。
【請求項27】
前記ベンチュリ管と、前記ディフューザと、前記少なくとも1つの繊維に対しベンチュリ管に入る前に2次ガス流を向ける前記手段とが、ハウジングによって取り囲まれている、請求項11に記載された装置。
【請求項28】
前記ハウジングが上方への延長部を含むことで、前記少なくとも1つの細管の第2開口と前記ベンチュリ管の貫通通路の第1開放端部との間の通路を取り囲む密閉環境が得られる、請求項27に記載された装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−500289(P2007−500289A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521951(P2006−521951)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/023864
【国際公開番号】WO2005/012619
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(506027480)ユニバーシティ オブ テネシー リサーチ ファンデーション (1)
【Fターム(参考)】