説明

垂直共振器型発光ダイオード

【課題】 光出射側の反射層の構造をより簡単にし、高温側でも発光出力の低下し難い、新規な垂直共振器型発光ダイオードを提供する。
【解決手段】 発光層となる活性層5と、活性層5を挟んで形成された光反射側の第1反射層3及び光出射側の第2反射層9とを有する垂直共振器型発光ダイオード1であって、第1及び第2反射層3,9は、互いに屈折率が異なる半導体交互層を1対として、この対を複数積層した構造を有し、第2反射層9の対数が、第1反射層3の対数の1/10以上、かつ、1/3以下とする。第1反射層の対数を、11対以上、かつ、41対以下とすれば、より発光出力を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック光ファイバー用の光源などに使用される垂直共振器型発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック光ファイバー(POF)用の光源として、レーザーダイオードより安価である発光ダイオードが注目されている。より高出力、高速応答性を実現するためには、従来の発光ダイオードでは不十分であり、光を共振させる共振器を有する垂直共振器型発光ダイオードが必要となっている。
【0003】
垂直共振器型発光ダイオードは、活性層を含むダブルヘテロ構造の上下から、活性層からの光を共振させるための反射層で挟み込み、活性層から発光された光を活性層に対して垂直方向に共振させる垂直共振器を有している。この反射層は、高屈折率膜と低屈折率膜が交互に積層したブラック反射層を多対積層することで反射率を高めている。この反射層の反射率は、光出射側の反射率を他方の反射率よりも低くすることで、活性層で発光した光を反射層から選択的に出射することができる。
【0004】
この垂直共振器型発光ダイオードは、100℃の高温度領域での使用が考えられており、温度による発光出力の変化が小さいダイオードが求められている。特許文献1には、垂直共振器型発光ダイオードにおいて、光出射側、つまり、ダイオード表面側の反射層に複数の反射帯域特性をもたせることで、高温領域における発光出力の低下を防ぐことが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−332615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示されているように、光出射側の反射層に複数の反射帯域特性をもたせるためには、反射層の設計の複雑さと、そのブラッグ反射層の対数を例えば18対以上としているので、光出射側の反射層を形成するための結晶成長時間が長くなるという課題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、垂直共振器の構造において、光出射側の反射層の構造をより簡単にし、高温側でも発光出力の低下し難い、新規な垂直共振器型発光ダイオードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、垂直共振器型発光ダイオードの共振器構造において、光出射側の反射層の対数を、光反射層側の反射層の対数に対して、1/10以上、かつ、1/3以下とすることで、発光出力の温度依存性が改善されるという知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の垂直共振器型発光ダイオードは、発光層となる活性層と、この活性層を挟んで形成された光反射側の第1反射層及び光出射側の第2反射層とを有する垂直共振器型発光ダイオードであって、第1及び第2反射層は、互いに屈折率が異なる半導体交互層を1対として、この対を複数積層した構造を有し、第2反射層の対数が、第1反射層の対数の1/10以上、かつ、1/3以下であることを特徴とする。
上記構成によれば、光出射側の第2反射層の対数を、光反射側の第1反射層の対数の1/10以上で1/3以下とすることにより、室温における発光出力が低下せず、かつ発光出力の温度依存性が改善される垂直共振器型発光ダイオードを実現することができる。
【0010】
上記構成において、第1反射層の対数は、好ましくは、11対以上、かつ、41対以下である。この構成によれば、第1反射層の反射率が高くなり、高発光出力の垂直共振器型発光ダイオードとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光出射側の反射層の構造が単純で、かつ、発光出力の温度による変化の少ない高出力の垂直共振器型発光ダイオードを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面により詳細に説明する。各図において同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
図1は、本発明に係る垂直共振器型発光ダイオードの断面構造を示す図であり、図2は図1の平面図である。即ち、図2のX一X線に沿った断面図が図1である。図1に示すように、本発明の垂直共振器型発光ダイオード1は、n型基板2と、光反射側であるn型の第1反射層3(以下、適宜第1反射層と呼ぶ)と、n型クラッド層4と活性層5とp型クラッド層6とを含むダブルヘテロ接合7と、一部に開孔部を有する電流狭窄層8と、光出射側であるp型の第2反射層9(以下、適宜第2反射層と呼ぶ)と、その上部に設けられるp型電極層10と、電極層10を含む発光ダイオード表面を覆う保護膜13と、を含み形成されている。第2反射層9は、p型クラッド層上に電流狭窄層を有する場合、電流狭窄層8の開孔部と開孔部の上方及び開孔部を有する電流狭窄層8上とに、層状に形成されている。この電流狭窄層8の開孔部は、垂直共振器型発光ダイオード1の電流通路及び光の取り出し領域となる。電極層10においては、電流狭窄層8と対抗した位置に形成されている。そして、基板2及び電極層10には、それぞれ、電極12,13が形成されている。
ここで、電流狭窄層8は、n型層又は故意には不純物を添加しない所謂、ノンドーブ層である。ノンドープ層は、i(真性半導体)又はn- のような半絶縁層や高抵抗層としてもよい。なお、基板をn型として説明したが、その反対導電型のp型基板でもよく、その場合には、上記各層の伝導型を基板に応じて変更すればよい。
【0013】
発光部となるダブルヘテロ接合7中の活性層5は、量子井戸構造からなる活性層22としてもよい。量子井戸構造からなる活性層22は、禁制帯幅の異なる薄い半導体層を交互に積層して形成できる、単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることができる。この量子井戸構造を最適化すれば、図1に示した単一層からなる活性層5に対して、より高出力で、高速応答ができる垂直共振器型発光ダイオード1を実現することができる,
【0014】
上記活性層5を挟んで、ブラッグ反射層である第1反射層3と第2反射層9が形成されている。この場合、図1のy方向における、第1反射層3と第2反射層9との間隔、すなわち、上記ダブルヘテロ接合7の厚さが、垂直共振器長Lres に相当する。この垂直共振器長Lres は、下記(1)式で与えられる。
res =(n・λ)/(2・m0 ) (1)
ここで、nは任意の整数、λは垂直共振器型発光ダイオードの発光波長、m0 はダブルヘテロ接合層の平均屈折率である。
【0015】
第1及び第2反射層3,9は、互いに相違する屈折率、すなわち、相対的に高い屈折率を有する層(以下、高屈折率膜と呼ぶ)と相対的に低い屈折率を有する層(以下、低屈折率膜と呼ぶ)を有している。この高屈折率膜の膜厚は、その屈折率をm1 とすると、λ/(4・m1 )とし、同様に、低屈折率膜の屈折率をm2 とすると、その膜厚をλ/(4・m2 )とすればよい。第1及び第2反射層3,9は、互いに屈折率が異なる半導体交互層を1対として、この対を多対積層することで、第1及び第2反射層3,9を形成している。
【0016】
この場合、第1反射層3の反射率を上部にある光出射側の第2反射層9の反射率よりも高めることで、活性層5で発光した光を第2反射層9側から効率良く出射することができる。このためには、反射側である第1反射層3の対数(P1 )を光出射側の第2反射層9の対数(P2 )よりも多くすることで、活性層5で発光した光を第2反射層9側から出射することができる。
【0017】
本発明の特徴は、光出射側、即ち第2反射層9の対数P2 を、第1反射層3の対数P1 に対して1/3以下、1/10以上としたことである。つまり、1/10≦P2 /P1 ≦1/3とすることで、周囲温度による発光出力の変化が小さい垂直共振型発光ダイオードとすることができる。
ここで、第2反射層9の対数P2 を、第1反射層3の対数P1 に対して1/3以上とすると、周囲温度の上昇に伴い発光出力の低下が顕著になるので好ましくない。逆に、第2反射層9の対数P2 を、第1反射層3の対数P1 に対して1/10以下とすると、共振器内で光の共振による増幅が十分に起こらないため、高い発光出力が得られないので好ましくない。
【0018】
第1反射層3の反射率を向上させるためには、その対数を、11対以上、かつ、41対以下にすることが好ましい。この対数を10.5対以下とすると、共振器内で光の共振による増幅を十分に生起できないために、高い発光出力と十分な指向性が得られないので好ましくない。逆に、41.5対以上とすると、結晶成長の時間も長くなる上に、活性層5の発光により生じた熱の放熱が不十分となり、逆に発光出力の低下を引き起こしてしまうので好ましくない。
ここで、上記の対数で、整数ではない10.5対などの表記は、高屈折率膜、低屈折率膜のどちらか一方が対となっていない状態で積層されていることを示している。例えば10.5対とは、第1反射層3が、高屈折率膜及び低屈折率膜からなる対が10対と、さらに、高屈折率膜又は低屈折率膜が1層積層された膜と、から構成されている。
【0019】
第1及び第2反射層3,9において、高屈折率及び低屈折率の層の組合せとしては、高屈折率の層をAlr Ga1-r As(ここで、rはAl組成であり、0<r<1である)、低屈折率の層をAlAsとからなる交互層が使用できる。このような交互に積層する第1及び第2反射層3,9を、Alr Gal-r As/AlAsとして示す。
【0020】
高屈折率及び低屈折率の層の組み合わせとしては、低屈折率層のAlAsの代わりに、Als Ga1-s As(ここで、sはA1組成であり、0<s<1であり、s>r)とし、高屈折率の層をAlr Ga1-r Asとしてもよい。低屈折率層のAl組成sを、0.4<s<1とし、高屈折率層のAl組成rを、0<r<0.6とし、かつ、低屈折率層のAl組成sと高屈折率層のAl組成rとの関係を、s≧r+0.4とすることで、高い反射率の膜を形成することができる。
【0021】
さらに、n型基板2と第1反射層3との間には、図示しないバッフア層を挿入してもよい。このバッフア層を挿入することにより、結晶性の高い第1反射層3を形成することができる。
【0022】
垂直共振器型発光ダイオード1の表面を保護膜となる絶縁物13で被覆してもよい。保護膜13は、プラズマCVD法で、Si系の酸化膜又は窒化膜などを堆積して形成することができる。この膜の厚さは、(n1 /4)×(λ/m3 )(n1 :奇数、m3 :酸化膜又は窒化膜の屈折率)とし、光に対して透過率の高い膜とすればよい。
【実施例1】
【0023】
以下、本発明の垂直共振器型発光ダイオード1の実施例について説明する。
実施例1の垂直共振器型発光ダイオード1は、図1に示す電流狭窄層を備えた構造を有している。
先ず、第1工程として、MOCVD法を用いてn型GaAs基板2上に第1回目のエピタキシャル成長層として、図示していないn型バッファ層、第1反射層3、n型Al0.5 In0.5 Pから成る第1クラッド層4、InxGa1−xPを含む量子井戸層からなる活性層、p−Al0.5 In0.5 Pから成る第2クラッド層6、n型Al0.5 In0.5 P電流狭窄層8を、順に成長させた。活性層7の発光波長は650nmとし、共振器長は652nmとなるようクラッド層4,6の厚みを設計した。この段階で、エピタキシャルウェハを取り出した。
【0024】
第2の工程として、出射窓部を形成するパターニング工程を行い、出射窓部となる領域の電流狭窄層8を部分的に除去し、再洗浄工程を行った。
続いて、上記部分的に出射窓部が形成された電流狭窄層8上に埋込エピタキシャル成長を行った。この2回目の成長は、1回目の成長と同様、MOCVD法を用いて、第2反射層9と、厚さが100nmのp型GaAs電極層10と、を順に成長させた。
その後、エピタキシャル成長面の表面へのAu/AuSbZnの2層から成る電極13及び基板裏面へのAuGeNi合金から成る電極12を形成する工程と、保護膜の形成工程、ダイシング工程などを経て、垂直共振器型発光ダイオード1を製造した。
【0025】
実施例1においては、第1及び第2反射層3,9は、何れも1対となる交互層を、高屈折率膜をAl0.45Ga0.55As(45nm)とし、低屈折率膜をAlAs(52.5nm)とし、この交互層を多対積層した構造とした。具体的には、第1反射層3の対数(P1 )を20.5対とし、第2反射層9の対数(P2 )を2.5対とした。この場合、第2反射層9の対数と第1反射層3の対数の比、つまり、P2 /P1 は、1/10である。
ここで、チップの大きさは、320μm×320μm程度であり、光の出射窓部14の直径を80μmとした。
【実施例2】
【0026】
第2反射層9の対数(P2 )を5.5対とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の垂直共振器型発光ダイオードを製造した。この場合、第2反射層9の対数(P2 )と第1反射層3の対数(P1 )の比(P2 /P1 )は、5.5/20.5であり、1/4である。
【0027】
(比較例1)
次に、比較例1について説明する。
第2反射層9の対数(P2 )を10.5対とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1の垂直共振器型発光ダイオードを製造した。この場合、第2反射層9の対数(P2 )と第1反射層3の対数(P1 )の比(P2 /P1 )は、10.5/20.5であり、1/2である。
ここで表1は、実施例1及び2と比較例1の垂直共振器型発光ダイオードにおける第1反射層の対数(P1 )、第2反射層9の対数(P2 )、その第1反射層に対する比(P2 /P1 )及び後述する発光出力の温度依存性(%/℃)を示す表である。
【表1】

【0028】
次に、実施例1及び2と比較例1の垂直共振器型発光ダイオードの発光特性について説明する。
図3は、実施例1及び2と比較例1における垂直共振器型発光ダイオードの発光出力の周囲温度依存性を示す図である。図3において、横軸は周囲温度(℃)を示し、縦軸は25℃の発光出力で規格化した規格化発光出力である。通電した電流は10mAである。発光出力は、実施例1及び2と比較例1の各垂直共振器型発光ダイオードをTO−18ステムにマウントして測定した。その発光出力は、垂直共振器型発光ダイオードに長さ1mのプラスチックファイバー(三菱レーヨン製、EskaMega)に最近接させて光を伝送し、受光して測定した値である。−40℃、−30℃、0℃、25℃、50℃、80℃、100℃、105℃の各温度での発光出力は、各測定温度に設定し、1時間等温保持した後、垂直共振器型発光ダイオードに電流を通電して発光させた。このときの全発光波長強度を、パワーメーターを用いて測定した。なお、25℃における実施例及び比較例における垂直共振器型発光ダイオードの発光強度が最大となる波長は、何れも652nmであった。
【0029】
図3から明らかなように、実施例1のP2 /P1 を1/10とした垂直共振器型発光ダイオード1の、25℃に対する105℃における発光強度の減少割合は−0.14%/℃であり、実施例2のP2 /P1 を1/4とした垂直共振器型発光ダイオード1の上記温度依存性は−0.21%/℃とであり、何れの場合も、温度上昇に伴う発光出力の低下が小さいことが分かった。
【0030】
一方、比較例1のP2 /P1 を1/2とした垂直共振器型発光ダイオードの25℃に対する105℃における発光強度の減少割合は−0.64%/℃と大きく、温度上昇に伴う発光出力の低下が著しいことが分かった。
【0031】
上記実施例1及び2及び比較例1によれば、実施例1及び2の垂直共振器型発光ダイオードにおいては、第2反射層9の対数を第1反射層3の対数に対して、1/4以下とすることにより、発光出力の温度依存性が改善されることが分かり、周囲温度が上昇しても発光出力が低減し難い垂直共振器型発光ダイオード1が得られることが判明した。
【実施例3】
【0032】
次に、実施例3について説明する。
実施例3として、第1反射層3の対数(P1 )を10.5対とし、第2反射層9の対数(P2 )を40.5対とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の垂直共振器型発光ダイオードを製造した。この場合、第2反射層9の対数(P2 )と第1反射層3の対数(P1 )の比(P2 /P1 )は、1/4であり、実施例2の場合と同じ比率であるが、実施例1及び2に対して、第1反射層3の対数(P1 )を大きくした。
【0033】
(比較例2)
次に、比較例2について説明する。
第1反射層3の対数(P1 )を10.5対とし、第2反射層9の対数(P2 )を2.5対とした以外は、実施例1と同様にして、比較例2の垂直共振器型発光ダイオードを製造した。この場合、第2反射層9の対数(P2 )と第1反射層3の対数(P1 )の比(P2 /P1 )は、1/4であり、実施例2及び3の場合と同じ比率であるが、実施例2及び3に対して、第1反射層3の対数(P1 )を小さくした。
【0034】
実施例2及び3と比較例2の垂直共振器型発光ダイオードは、何れも第2反射層9の対数(P2 )と第1反射層3の対数(P1 )の比(P2 /P1 )を、1/4とし、第1反射層3の対数を変化させた場合である。上記の実施例1と同じ測定方法で、順方向電流を20mA流したときの発光出力及び順方向電流が10mAの場合における発光出力の温度依存性を測定した。表2は、実施例2及び3と比較例2の発光出力及び発光出力の温度依存性を示す表であり、第1及び第2反射層の対数と、その対数比(P2 /P1 )も併せて示している。この対数比(P2 /P1 )は、実施例2,3及び比較例2において、何れも1/4と同じ値である。
【表2】

【0035】
表2から明らかなように、実施例2及び3の第1反射層3の対数を20.5対、40.5対とした場合の発光出力は、それぞれ、1.78mW、1.63mWであった。
一方、比較例2の第1反射層3の対数を10.5対とした場合の発光出力は、1.29mWであり、実施例2及び3に比較して、著しく発光出力が低下することが判明した。
【0036】
発光出力の25℃に対する105℃における発光強度の減少割合は、実施例2及び実施例3において、それぞれ、−0.21%/℃,−0.24%/℃であった。
一方、比較例2の発光出力の25℃に対する105℃における発光強度の減少割合は−0.31%/℃であり、実施例2及び3に比較して、高温の周囲温度において発光出力が低下することが分かった。
これから、対数比(P2 /P1 )を同じ1/4とした場合においても、実施例2及び3は比較例2と比べると、発光出力の温度依存性が小さくなり、高温の周囲温度における発光出力の低下が改善されることが判明した。
【0037】
実施例2及び3と比較例2の垂直共振器型発光ダイオードの比較によれば、第1反射層3の対数を11対以上とすることで、発光出力が大きくなり、さらに、発光出力の温度依存性も改善されることが分かった。表には示していないが、第1反射層3の対数が40.5対以上では、上述したように、結晶成長の時間も長くなる上に、活性層5の発光により生じた熱の放熱が不十分となり、逆に発光出力の低下を引き起こしてしまうので発光出力が低下した。
【0038】
本発明は、上記実施例に記載の垂直共振器型発光ダイオードに限定されることなく、発振波長や発光出力に応じて、第1及び第2反射層3,9の対数の比率は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る垂直共振器型発光ダイオードの断面構造を示す図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】実施例1及び2と比較例1における垂直共振器型発光ダイオードの発光出力の囲温度依存性を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1:垂直共振器型発光ダイオード
2:n型基板
3:n型の第1反射層
4:n型の第1クラッド層
5:活性層
6:p型の第2クラッド層
7:ダブルヘテロ接合(発光部)
8:電流狭窄層
9:p型の第2反射層
10:電極層
11:保護膜
12,13:電極層
14:光の出射窓部
15:ダイシング領域
18:バッファ層
22:量子井戸構造からなる活性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層となる活性層と、該活性層を挟んで形成された光反射側の第1反射層及び光出射側の第2反射層と、を有する垂直共振器型発光ダイオードであって、
上記第1及び第2反射層は、互いに屈折率が異なる半導体交互層を1対として、この対を複数積層した構造を有し、
上記第2反射層の対数が、上記第1反射層の対数の1/10以上、かつ、1/3以下であることを特徴とする、垂直共振器型発光ダイオード。
【請求項2】
前記第1反射層の対数が、11対以上、かつ、41対以下であることを特徴とする、請求項1記載の垂直共振器型発光ダイオード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate