説明

垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルム、その製造方法、及びそれを用いた偏光板、垂直配向型液晶表示装置

【課題】本発明の目的は、透明性が高く、かつ垂直配向型液晶表示装置の色味ムラや正面コントラストに優れる垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルム、それを用いた偏光板及び垂直配向型液晶表示装置を提供することにある。
【解決手段】フィルム製膜方向とフィルム面内の遅相軸のなす角度が40〜50°であり、かつゴニオフォトメーターの散乱光プロファイルの入射光90°のフィルム散乱光強度を測定した時に、光源から130°の位置における散乱光強度を検出する測定において、該フィルムの試料台への設置方向を遅相軸に合わせた場合とその直交方向にした場合の光強度の差が0.05以下であることを特徴とする垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルム、それを用いた偏光板及び垂直配向型液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ装置の大型化、薄型化の技術開発、製品化が盛んに進められている。代表的なディスプレイ装置として液晶テレビ、プラズマテレビ、有機ELテレビなどが挙げられ、その中でも、特に、液晶テレビの急成長は目覚しく、今後は高画質化とコストダウンの両立が強く期待されている。中でも垂直配向型液晶表示装置(以下、VAモード型液晶表示装置ともいう)は液晶の特性上、黒の締まりに優れ大型液晶テレビに広く採用されている。
【0003】
上記液晶テレビは明所でのコントラストが高いという特徴があり、液晶の特性以外にも、バックライト、輝度向上フィルム、導光板や拡散板の技術を駆使したものである。しかしながらこれらの技術は輝度向上には必須であるものの部材コストが高く大型化には不利なため、光源数や輝度向上フィルムを削減する技術開発が進んでいる。
【0004】
一方、その他の輝度向上技術として従来よりλ/4板が有効であることが知られており、携帯電話やモバイルディスプレイ等の中小型の透過型及び半透過型液晶ディスプレイの多くに使われている。しかし、λ/4板を用いた偏光板を作成するにあたっては、従来、透明樹脂フィルムを製膜した後、これをフィルムの製膜方向または幅手方向に延伸して光学的にフィルム面内に遅相軸を出現させ、必要な面積だけ切り出してから、遅相軸と直線偏光板の透過軸が斜め45°付近になるように配置し、直線偏光板と貼り合わせるという方法が採られてきた。従って、λ/4板の切り出し時のロスや切り出し作業自体の手間などで生産性を上げることができないという課題や、個々のλ/4板と直線偏光板との貼合軸調整バラツキに起因する性能変動が生じやすいなどの課題を抱えており大型液晶テレビなどには用いられてこなかった。
【0005】
この課題に対して斜方延伸方法の技術開示(例えば、特許文献1〜3参照。)があり、斜方延伸して遅相軸が斜方に存在する位相差フィルムを直線偏光板に貼合することで、格段に生産性の良い円偏光板を作ることが可能となった。しかしながら、幅手方向での遅相軸の角度の精度が不十分であったり、フィルムのヘイズが上昇し暗所でのコントラストが低下したり、色味変動が生ずるなどの技術課題があり改良が望まれている。
【特許文献1】国際公開第2003/102639号パンフレット
【特許文献2】特開2005−284024号報
【特許文献3】特開2007−30466号報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、透明性が高く、かつ垂直配向型液晶表示装置の色味ムラや正面コントラストに優れる垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルム、それを用いた生産性の高い偏光板及び表示特性に優れる垂直配向型液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
【0008】
1.フィルム製膜方向とフィルム面内の遅相軸のなす角度が40〜50°であり、かつゴニオフォトメーターの散乱光プロファイルの入射光90°のフィルム散乱光強度を測定した時に、光源から130°の位置における散乱光強度を検出する測定において、該フィルムの試料台への設置方向を遅相軸に合わせた場合とその直交方向にした場合の散乱光強度の差が0.05以下であることを特徴とする垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルム。
【0009】
2.下記式(1)〜式(3)を同時に満たすことを特徴とする前記1に記載の垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルム。
(1) 130≦Ro≦160
(2) 150≦Rt≦230
(3) 0.78≦Ro(480)/Ro(650)≦0.96
ここで、Ro=(nx−ny)×d(nm)
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d(nm)
であり式中、位相差フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸に直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnz、dは位相差フィルムの厚み(nm)を表す。屈折率の測定波長は590nmである。Ro(480)、Ro(650)はそれぞれ波長480nm、650nmで測定した時のRoを表す。
【0010】
3.前記垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルムがセルロースエステルを含み、かつ該セルロースエステルが、下記式(i)、(ii)を満たすことを特徴とする前記1に記載の垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルム。
【0011】
式(i) 2.1≦X+Y≦2.8
式(ii) 0.5≦Y≦1.6
式中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基またはブチリル基の置換度である。
【0012】
4.前記垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルムが、アクリル系重合体、及びピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物を、少なくとも一種含有するセルロースエステルフィルムであることを特徴とする前記1に記載の垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルム。
【0013】
5.前記1〜4のいずれか1項に記載の垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルムの製造方法であって、セルロースエステルを含む加熱溶融物を溶融押出法にてフィルム状に押出した後、該フィルムの長尺方向に対して傾斜方向に延伸し、または収縮を規制する工程を有することを特徴とする垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルムの製造方法。
【0014】
6.前記1〜4のいずれか1項に記載の垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルムを少なくとも一方の面に有することを特徴とする偏光板。
【0015】
7.前記6に記載の偏光板を液晶セルの少なくとも一方の面に有することを特徴とする垂直配向型液晶表示装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、透明性が高く、かつ垂直配向型液晶表示装置の色味ムラや正面コントラストに優れる垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルム、それを用いた生産性の高い偏光板及び表示特性に優れる垂直配向型液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
本発明の垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルム(以下、簡単にVA用位相差フィルムと略す)において、遅相軸がフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角をθ1とするとθ1は40°〜50°であり、好ましくは、42°〜48°である。
【0019】
本発明のVA用位相差フィルムにおいて、製膜方向は、長尺方向と一致する。
【0020】
本発明のVA用位相差フィルムは、円偏光板として使用する場合、下記式(1)〜式(3)を同時に満たすレターデーションを有することが好ましい。
(1) 130≦Ro≦160
(2) 150≦Rt≦230
(3) 0.78≦Ro(480)/Ro(650)≦0.96
なお、Ro=(nx−ny)×d(nm)
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d(nm)
(式中、nxはVA用位相差フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率を、nyは面内で遅相軸に直交する方向の屈折率を、nzは厚み方向の屈折率を、dはVA用位相差フィルムの厚み(nm)をそれぞれ表す。屈折率の測定波長は590nmである。Ro(480)、Ro(650)はそれぞれ波長480nm、650nmで測定したときのRoを表す。)
上記屈折率は、例えばKOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmで求めることができる。
【0021】
〈ゴニオフォトメーターにより測定される散乱光〉
本発明のVA用位相差フィルムは、前記レターデーションを得るために延伸処理をしても、ゴニオフォトメーターによって測定された散乱光が、一定の範囲にあることを特徴とする。
【0022】
正面コントラストを改良させるためには、VA用位相差フィルムのヘイズを低下させることが必要であるとされてきたが、直進光に対応するヘイズを低減するだけでは、必ずしも正面コントラストを所望の値にすることはできないというということが判ってきた。
【0023】
これに対し本発明者らは、異方性散乱を排除することが必要であることを見出した。異方性散乱とは、フィルムの遅相軸方向とそれに直行する方向での散乱光強度の差をいう。この異方性散乱は、ゴニオフォトメーターにより測定される。
【0024】
〈異方性散乱の測定装置〉
図1にゴニオフォトメーター(型式:GP−1−3D、オプテック(株)製)の概略を示す。G1.光源ランプ、G2.分光器、G3.試料台(ステージともいう)、G4.試料(不記載)、G5.受光部分である。
【0025】
光源は、12V50Wハロゲン球、受光部は、光電子増倍管(フォトマル 浜松フォトニクス R636−10)を用いている。
【0026】
(a)は基準光を測定するリファレンス測定或いは透過率測定時における、光源ランプ、分光器、試料台(ステージ)、光の強度を計測する積分球の配置を示す。
【0027】
(b)は測定サンプルを試料台に載せてその反射率測定時における、光源ランプ、分光器、試料台、積分球の配置を示す。
【0028】
試料台は通常は測定サンプル縦掛け式となっていて押え金具で測定サンプルを固定し、その台の下部は角度割出回転テーブルとなっており、試料面と入射面の角度を変えて透過率、反射率を測定することができる構造である。
【0029】
本発明に係る異方性散乱光強度は、(a)の配置で測定することができる。つまり、ゴニオフォトメーターの散乱光プロファイルの入射光90°のフィルムの散乱光強度測定とは、ゴニオフォトメーターの光源からサンプルに対して垂直に光が与えられた時の散乱光強度をいう。
【0030】
光源から130°の位置における散乱光強度を検出する測定する場合とは、(a)の配置状態において、図1に示す、光源の法線方向と、サンプルの観察点と積分球とを結ぶ方向とがなす角θを130°とした場合に測定される散乱光強度をいう。
【0031】
本発明においては、このθが130°の位置における散乱光強度の測定において、フィルム遅相軸を水平に試料台へ設置した場合と垂直に設置した場合の散乱光強度の差が、0.05以下であることを特徴とする。
【0032】
水平及び垂直の条件をとるためには、通常の水準器を使用することができる。
【0033】
θとしては、色々な角度を選択することができるが、本発明では、液晶表示装置としての正面コントラストとの相関が最も高かった130°とした。
【0034】
水平にした場合、垂直にした場合の散乱光強度は0.01〜0.25の範囲であることが好ましく、0.20以下がより好ましく、0.10以下が更に好ましい。
【0035】
散乱光強度の差は、本発明では0.05以下であるが、小さければ小さい方がよい。
【0036】
本発明の散乱光強度を達成するためには、本発明のVA用位相差フィルムが、下記セルロースエステルや、アクリル系重合体、及びピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物を、少なくとも一種含有するセルロースエステルフィルムであることが好ましい(以下、本発明のVA用位相差フィルムをセルロースエステルフィルムという場合もある)。
【0037】
〈セルロースエステル〉
本発明に用いられるセルロースエステルとしては特に限定はないが、セルロースエステルとして炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであり、芳香族カルボン酸のエステルでもよく、特に炭素数が6以下の低級脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0038】
水酸基に結合するアシル基は、直鎖であっても分岐してもよく、また環を形成してもよい。更に別の置換基が置換してもよい。同じ置換度である場合、前記炭素数が多いと複屈折性が低下するため、炭素数としては炭素数2〜6のアシル基の中で選択することが好ましい。前記セルロースエステルとしての炭素数が2〜4であることが好ましく、炭素数が2〜3であることがより好ましい。
【0039】
具体的には、セルロースエステルとしては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基またはブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルを用いることができる。
【0040】
尚、ブチレートを形成するブチリル基としては、直鎖状でも分岐していてもよい。本発明において好ましく用いられるセルロースエステルとしては、特にセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレートが好ましく用いられる。
【0041】
本発明において、レターデーションを調整し延伸に対しレターデーションのばらつきを低減する目的で好ましいセルロースエステルは、下記式(i)及び(ii)を同時に満足することが好ましい。
【0042】
式(i) 2.1≦X+Y≦2.8
式(ii) 0.5≦Y≦1.6
式中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基またはブチリル基、もしくはその混合物の置換度である。
【0043】
また、目的に叶う光学特性を得るために置換度の異なる樹脂を混合して用いても良い。混合比としては10:90〜90:10(質量比)が好ましい。
【0044】
この中で特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。セルロースアセテートプロピオネートでは、1.0≦X≦1.6、1.0≦Y≦1.6であり、2.1≦X+Y≦2.6であることが好ましい。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
【0045】
本発明に用いられるセルロースエステルの数平均分子量は、60000〜300000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。更に70000〜200000のものが好ましく用いられる。
【0046】
セルロースエステルの重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
【0047】
測定条件は以下の通りである。
【0048】
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
【0049】
本発明に用いられる、セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。
【0050】
セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステルは、公知の方法により製造することができる。具体的には特開平10−45804号に記載の方法を参考にして合成することができる。
【0051】
〈アクリル系重合体〉
本発明では、レターデーションを調整し延伸に対しレターデーションのばらつきを低減する目的で、アクリル系重合体をセルロースエステルフィルムに添加することが好ましい。なお、ここでアクリル系重合体にはメタクリル系重合体も含まれる。
【0052】
本発明に用いられるアクリル系重合体としては、セルロースエステルフィルムに含有させた場合、機能として延伸方向に対して負の複屈折性を示すことが好ましく、特に構造が限定されるものではないが、エチレン性不飽和モノマーを重合して得られた重量平均分子量が500以上30000以下である重合体であることが好ましい。
【0053】
(アクリル系重合体の複屈折性試験法)
アクリル系重合体を溶媒に溶解しキャスト製膜した後、加熱乾燥し、透過率80%以上のフィルムについて複屈折性の評価を行った。
【0054】
アッベ屈折率計−4T((株)アタゴ製)に多波長光源を用いて屈折率測定を行った。延伸方向の屈折率ny及び直交する面内方向の屈折率をnxとした。550nmの各々の屈折率について(ny−nx)<0であるフィルムについて、アクリル系重合体は延伸方向に対して負の複屈折性であると判断する。
【0055】
本発明に用いられる重量平均分子量が500以上30000以下であるアクリル系重合体は、芳香環を側鎖に有するアクリル系重合体またはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系重合体であってもよい。
【0056】
芳香環を側鎖に有するアクリル系重合体またはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系重合体について、好ましくは重量平均分子量が500以上10000以下のものであれば、上記に加え、製膜後のセルロースエステルフィルムの透明性が優れ、透湿度も極めて低く、偏光板用保護フィルムとして優れた性能を示す。
【0057】
該重合体は、重量平均分子量が500以上30000以下であるから、オリゴマーから低分子量重合体の間にあると考えられるものである。このような重合体を合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量を余り大きくしない方法でできるだけ分子量を揃えることのできる方法を用いることが望ましい。
【0058】
特に、本発明に係るセルロースエステルフィルムに用いられるアクリル系重合体としては、分子内に芳香環と水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと、分子内に芳香環を有せず、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーXbと、Xa、Xbを除く共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとを共重合して得られた重量平均分子量2000以上30000以下の重合体X、または芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaと、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下の重合体Yであることが好ましい。
【0059】
[重合体X、重合体Y]
本発明に係るセルロースエステルフィルムのRo及びRtを調整する方法としては、分子内に芳香環と水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと、分子内に芳香環を有せず、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとXa、Xbを除く共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとを共重合して得られた重量平均分子量2000以上30000以下の高分子量の重合体X、そして、より好ましくは、芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaと、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下の低分子量の重合体Yを含有することが好ましい。
【0060】
本発明に用いられる重合体Xは、分子内に芳香環と水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有せず、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとXa、Xbを除く共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとを共重合して得られた重量平均分子量2000以上、30000以下の重合体である。
【0061】
好ましくは、Xaは分子内に芳香環と水酸基を有しないアクリルまたはメタクリルモノマー、Xbは分子内に芳香環を有せず水酸基を有するアクリルまたはメタクリルモノマーである。
【0062】
本発明に用いられる重合体Xは、下記一般式(X)で表される。
【0063】
一般式(X)
−[Xa]m−[Xb]n−[Xc]p
上記一般式(X)において、Xaは分子内に芳香環と水酸基とを有しないエチレン性不飽和モノマーを表し、Xbは分子内に芳香環を有せず、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーを表し、XcはXa、Xbを除く共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを表す。m、n及びpは、各々モル組成比を表す。但し、m≠0、m+n+p=100である。
【0064】
更に、重合体Xとして好ましくは、下記一般式(X−1)で表される重合体である。
【0065】
一般式(X−1)
−[CH2−C(−R1)(−CO22)]m−[CH2−C(−R3)(−CO24−OH)−]n−[Xc]p
上記一般式(X−1)において、R1、R3は、それぞれ水素原子またはメチル基を表す。R2は炭素数1〜12のアルキル基またはシクロアルキル基を表す。R4は−CH2−、−C24−または−C36−を表す。Xcは、[CH2−C(−R1)(−CO22)]または[CH2−C(−R3)(−CO24−OH)−]に重合可能なモノマー単位を表す。m、n及びpは、モル組成比を表す。但しm≠0、m+n+p=100である。
【0066】
本発明に用いられる重合体Xを構成するモノマー単位としてのモノマーを下記に挙げるが、これに限定されない。
【0067】
Xにおいて、水酸基とは、水酸基のみならずエチレンオキシド連鎖を有する基をいう。
【0068】
分子内に芳香環と水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。
【0069】
中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル(i−、n−)であることが好ましい。
【0070】
分子内に芳香環を有せず、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーXbは、水酸基を有するモノマー単位として、アクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、またはこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることができ、好ましくは、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)及びメタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)である。
【0071】
Xcとしては、Xa、Xb以外のモノマーで、かつ共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば、特に制限はないが、芳香環を有していないものが好ましい。
【0072】
Xa及びXbのモル組成比m:nは99:1〜65:35の範囲が好ましく、更に好ましくは95:5〜75:25の範囲である。Xcのpは0〜10である。Xcは複数のモノマー単位であってもよい。
【0073】
Xaのモル組成比が多いと、セルロースエステルとの相溶性が良化するがフィルム厚み方向のレターデーション値Rtが大きくなる。Xbのモル組成比が多いと上記相溶性が悪くなるが、Rtを低減させる効果が高い。
【0074】
また、Xbのモル組成比が上記範囲を超えると製膜時にヘイズが出る傾向があり、これらの最適化を図りXa、Xbのモル組成比を決めることが好ましい。
【0075】
高分子量の重合体Xの分子量は、重量平均分子量が5000以上30000以下であることがより好ましく、更に好ましくは8000以上25000以下である。
【0076】
重量平均分子量を5000以上とすることにより、セルロースエステルフィルムの高温高湿下における寸法変化が少ない等の利点が得られ好ましい。
【0077】
重量平均分子量が30000以下とした場合は、セルロースエステルとの相溶性がより向上し、高温高湿下においてのブリードアウト、更に製膜直後でのヘイズの発生が抑制される。
【0078】
本発明に用いられる重合体Xの重量平均分子量は、公知の分子量調節方法で調整することができる。そのような分子量調節方法としては、例えば、四塩化炭素、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル等の連鎖移動剤を添加する方法等が挙げられる。
【0079】
また、重合温度は、通常、室温から130℃、好ましくは50℃から100℃で行われるが、この温度または重合反応時間を調整することで可能である。
【0080】
なお、重量平均分子量等は、前述の方法に準じて求めることができる。
【0081】
本発明に用いられる低分子量の重合体Yは、芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下の重合体である。重量平均分子量500以上であれば重合体の残存モノマーが減少し好ましい。
【0082】
また、3000以下とすることは、レターデーション値Rt低下性能を維持するために好ましい。Yaは、好ましくは芳香環を有さないアクリルまたはメタクリルモノマーである。
【0083】
本発明に用いられる重合体Yは、下記一般式(Y)で表される。
【0084】
一般式(Y)
−[Ya]k−[Yb]q
上記一般式(Y)において、Yaは芳香環を有しないエチレン性不飽和モノマーを表し、YbはYaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを表す。k及びqは、各々モル組成比を表す。但し、k≠0、k+q=100である。
【0085】
本発明に係る重合体Yにおいて、更に好ましくは下記一般式(Y−1)で表される重合体である。
【0086】
一般式(Y−1)
−[CH2−C(−R5)(−CO26)]k−[Yb]q
上記一般式(Y−1)において、R5は、それぞれ水素原子またはメチル基を表す。R6は炭素数1〜12のアルキル基またはシクロアルキル基を表す。Ybは、[CH2−C(−R5)(−CO26)]と共重合可能なモノマー単位を表す。k及びqは、それぞれモル組成比を表す。但しk≠0、k+q=100である。
【0087】
Ybは、Yaである[CH2−C(−R5)(−CO26)]と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限はない。Ybは複数であってもよい。k+q=100、qは好ましくは0〜30である。
【0088】
芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーを重合して得られる重合体Yを構成するエチレン性不飽和モノマーYaは、アクリル酸エステルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたもの;不飽和酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることができる。
【0089】
Ybは、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限はないが、ビニルエステルとして、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニル等が好ましい。Ybは複数であってもよい。
【0090】
重合体X、Yを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量を余り大きくしない方法で、かつ出来るだけ分子量を揃えることのできる方法を用いることが望ましい。
【0091】
かかる重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、更に特開2000−128911号または同2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることができ、何れも本発明において好ましく用いられる。
【0092】
特に、重合体Yは、分子中にチオール基と2級の水酸基とを有する化合物を連鎖移動剤として使用する重合方法が好ましい。この場合、重合体Yの末端には、重合触媒及び連鎖移動剤に起因する水酸基、チオエーテルを有することとなる。この末端残基により、Yとセルロースエステルとの相溶性を調整することができる。
【0093】
重合体X及びYの水酸基価は、30〜150[mgKOH/g]であることが好ましい。
【0094】
なお、水酸基価の測定は、JIS K 0070(1992)に準ずる。この水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数と定義される。
【0095】
具体的には試料Xg(約1g)をフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬(無水酢酸20mlにピリジンを加えて400mlにしたもの)20mlを正確に加える。フラスコの口に空気冷却管を装着し、95〜100℃のグリセリン浴にて加熱する。
【0096】
1時間30分後、冷却し、空気冷却管から精製水1mlを加え、無水酢酸を酢酸に分解する。
【0097】
次に電位差滴定装置を用いて0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定を行い、得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。
【0098】
更に空試験として、試料を入れないで滴定し、滴定曲線の変曲点を求める。水酸基価は、次の式によって算出する。
【0099】
水酸基価={(B−C)×f×28.05/X}+D
式中、Bは空試験に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、Cは滴定に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、fは0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、Dは酸価、また、28.05は水酸化カリウムの1mol量56.11の1/2を表す。
【0100】
上述の重合体X、重合体Yは何れもセルロースエステルとの相溶性に優れ、蒸発や揮発もなく生産性に優れ、偏光板用保護フィルムとしての保留性がよく、透湿度が小さく、寸法安定性に優れている。
【0101】
重合体Xと重合体Yのセルロースエステルフィルム中での含有量は、下記式(a)、式(b)を満足する範囲であることが好ましい。重合体Xの含有量をXg(質量%=(重合体Xの質量/セルロースエステルの質量)×100)、重合体Yの含有量をYg(質量%)とすると、
式(a) 5≦Xg+Yg≦35(質量%)
式(b) 0.05≦Yg/(Xg+Yg)≦0.4
式(a)の(Xg+Yg)の好ましい範囲は、10〜35質量%である。重合体Xと重合体Yは、セルロースエステル全質量に対し、総量として5質量%以上であれば、レターデーション値Rtの調整に十分な作用をする。
【0102】
重合体Xと重合体Yは、後述するドープ液を構成する素材として直接添加、溶解するか、もしくはセルロースエステルを溶解する有機溶媒に予め溶解した後ドープ液に添加することができる。
【0103】
〈ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物〉
本発明のVA用位相差フィルムは、レターデーションを調整し延伸に対しレターデーションのばらつきを低減する目的で、ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物を含むことが好ましい。
【0104】
エステル化の割合としては、ピラノース構造またはフラノース構造内に存在するOH基の70%以上であることが好ましい。
【0105】
本発明においては、エステル化合物を総称して、糖エステル化合物とも称す。
【0106】
糖エステル化合物の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0107】
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、或いはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース或いはケストース挙げられる。
【0108】
このほか、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
【0109】
これらの化合物の中で、特にピラノース構造とフラノース構造を両方有する化合物が好ましい。
【0110】
例としてはスクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、更に好ましくは、スクロースである。
【0111】
ピラノース構造またはフラノース構造中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。
【0112】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
【0113】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、酢酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
【0114】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができ、より、具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
【0115】
オリゴ糖のエステル化合物を、本発明に係るピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1〜12個を有する化合物として適用できる。
【0116】
オリゴ糖は、澱粉、ショ糖等にアミラーゼ等の酵素を作用させて製造されるもので、本発明に適用できるオリゴ糖としては、例えば、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖が挙げられる。
【0117】
また、前記エステル化合物は、下記一般式(A)で表されるピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下縮合した化合物である。但し、R11〜R15、R21〜R25は、炭素数2〜22のアシル基または水素原子を、m、nはそれぞれ0〜12の整数、m+nは1〜12の整数を表す。
【0118】
【化1】

【0119】
11〜R15、R21〜R25は、ベンゾイル基、水素原子であることが好ましい。ベンゾイル基は更に置換基R26(pは0〜5)を有していてもよく、例えばアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、フェニル基が挙げられ、更にこれらのアルキル基、アルケニル基、フェニル基は置換基を有していてもよい。オリゴ糖も本発明に用いられるエステル化合物と同様な方法で製造することができる。
【0120】
以下に、本発明に係るエステル化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0121】
【化2】

【0122】
【化3】

【0123】
【化4】

【0124】
【化5】

【0125】
【化6】

【0126】
【化7】

【0127】
【化8】

【0128】
【化9】

【0129】
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、位相差値の変動を抑制して、表示品位を安定化する為に、糖エステル化合物を、セルロースエステルフィルムの1〜30質量%含むことが好ましく、特には、5〜30質量%含むことが好ましい。
【0130】
〈その他の添加剤〉
(可塑剤)
本発明のVA用位相差フィルムは、本発明の効果を得る上で必要に応じて可塑剤を含有することができる。
【0131】
可塑剤は特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤及び多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。
【0132】
そのうち、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
【0133】
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
【0134】
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは次の一般式(c)で表される。
【0135】
一般式(c) R1−(OH)n
但し、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/またはフェノール性水酸基を表す。
【0136】
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0137】
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
【0138】
特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0139】
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0140】
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0141】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0142】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
【0143】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
【0144】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基或いはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
【0145】
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0146】
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
【0147】
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
【0148】
【化10】

【0149】
【化11】

【0150】
【化12】

【0151】
【化13】

【0152】
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
【0153】
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
【0154】
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
【0155】
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
【0156】
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
【0157】
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
【0158】
多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は3価〜20価であることが好ましい。
【0159】
多価カルボン酸は次の一般式(d)で表される。
【0160】
一般式(d)R2(COOH)m(OH)n
(但し、R2は(m+n)価の有機基、mは2以上の正の整数、nは0以上の整数、COOH基はカルボキシル基、OH基はアルコール性またはフェノール性水酸基を表す)
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0161】
トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸またはその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。特にオキシ多価カルボン酸を用いることが、保留性向上などの点で好ましい。
【0162】
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては特に制限はなく公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。
【0163】
例えば炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪族飽和アルコールまたは脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
【0164】
また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコールまたはその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールまたはその誘導体なども好ましく用いることができる。
【0165】
多価カルボン酸としてオキシ多価カルボン酸を用いる場合は、オキシ多価カルボン酸のアルコール性またはフェノール性の水酸基をモノカルボン酸を用いてエステル化しても良い。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0166】
脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
【0167】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
【0168】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
【0169】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上もつ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に酢酸、プロピオン酸、安息香酸であることが好ましい。
【0170】
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0171】
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でも良いし、二種以上の混合であっても良い。
【0172】
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることが更に好ましい。酸価を上記範囲にすることによって、レターデーションの環境変動も抑制されるため好ましい。
【0173】
なお、酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
【0174】
特に好ましい多価カルボン酸エステル化合物の例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0175】
例えば、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が挙げられる。
【0176】
ポリエステル系可塑剤は特に限定されないが、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有するポリエステル系可塑剤を用いることができる。ポリエステル系可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(c)で表せる芳香族末端エステル系可塑剤を用いることができる。
【0177】
一般式(c) B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはベンゼンモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
一般式(c)中、Bで示されるベンゼンモノカルボン酸残基とGで示されるアルキレングリコール残基またはオキシアルキレングリコール残基またはアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基またはアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られる。
【0178】
本発明で使用されるポリエステル系可塑剤のベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0179】
本発明に用いることのできるポリエステル系可塑剤の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
【0180】
特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースエステルとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
【0181】
また、上記芳香族末端エステルの炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
【0182】
芳香族末端エステルの炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種または2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。
【0183】
本発明で使用されるポリエステル系可塑剤は、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、水酸基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、水酸基価は15mgKOH/g以下のものである。
【0184】
以下に、本発明に用いることのできる芳香族末端エステル系可塑剤の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0185】
【化14】

【0186】
【化15】

【0187】
(紫外線吸収剤)
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、紫外線吸収剤を含有することもできる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
【0188】
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
【0189】
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の市販品であり好ましく使用できる。
【0190】
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。
【0191】
この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
【0192】
本発明に係わるVA用位相差フィルムは紫外線吸収剤を2種以上を含有することが好ましい。
【0193】
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0194】
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒或いはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。
【0195】
無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
【0196】
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、VA用位相差フィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、フィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
【0197】
(酸化防止剤)
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に液晶画像表示装置などがおかれた場合には、セルロースエステルフィルムの劣化が起こる場合がある。
【0198】
酸化防止剤は、例えば、セルロースエステルフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりセルロースエステルフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、前記セルロースエステルフィルム中に含有させるのが好ましい。
【0199】
酸化防止剤、または熱劣化防止剤としては、通常知られているものを使用することができる。特に、フェノール系、ラクトン系、イオウ系、二重結合系、ヒンダードアミン系、リン系化合物のものを好ましく用いることができる。
【0200】
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。
【0201】
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
【0202】
上記フェノール系化合物としては、2,6−ジアルキルフェノールの構造を有するものが好ましく、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社、“Irganox1076”、“Irganox1010”という商品名で市販されているものが好ましい。
【0203】
ラクトン系化合物としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社から、“IrgafosXP40”、“IrgafosXP60”という商品名で市販されているものを含むものが好ましい。
【0204】
リン系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“SumilizerGP”、(株)ADEKAから“ADK STAB PEP−24G”、“ADK STAB PEP−36”及び“ADK STAB 3010”、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社から“IRGAFOS P−EPQ”、エーピーアイコーポレーション株式会社から“GSY−P101”という商品名で市販されているものが好ましい。
【0205】
ヒンダードアミン系化合物は、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社から、“Tinuvin144”及び“Tinuvin770”、(株)ADEKAから“ADK STAB LA−52”という商品名で市販されているものが好ましい。
【0206】
イオウ系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“Sumilizer TPL−R”及び“Sumilizer TP−D”という商品名で市販されているものが好ましい。
【0207】
また、二重結合系化合物としては、住友化学株式会社から、“Sumilizer GM”及び“Sumilizer GS”という商品名で市販されているものが好ましい。
【0208】
更に、酸捕捉剤として米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物を含有させることも可能である。
【0209】
これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0210】
(微粒子)
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、微粒子を含有することが好ましい。
【0211】
本発明に使用される微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
【0212】
微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
【0213】
微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜400nmが好ましく、更に好ましいのは10〜300nmである。
【0214】
これらは主に粒径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されていてもよく、平均粒径100〜400nmの粒子であれば凝集せずに一次粒子として含まれていることも好ましい。
【0215】
セルロースエステルフィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.01〜1質量%であることが好ましく、特に0.05〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成のVA用位相差フィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
【0216】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0217】
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0218】
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0219】
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972VがVA用位相差フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明に係るVA用位相差フィルムにおいては、少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0であることが好ましい。
【0220】
各種添加剤は製膜前のセルロースエステル含有溶液であるドープにバッチ添加してもよいし、添加剤溶解液を別途用意してインライン添加してもよい。特に微粒子は濾過材への負荷を減らすために、一部または全量をインライン添加することが好ましい。
【0221】
添加剤溶解液をインライン添加する場合は、ドープとの混合性をよくするため、少量のセルロースエステルを溶解するのが好ましい。好ましいセルロースエステルの量は、溶剤100質量部に対して1〜10質量部で、より好ましくは、3〜5質量部である。
【0222】
本発明においてインライン添加、混合を行うためには、例えば、スタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。
【0223】
〈VA用位相差フィルムの製造方法〉
次に、本発明のVA用位相差フィルムに好ましいセルロースエステルフィルムを例にとって、その製造方法について説明する。
【0224】
本発明に係るセルロースエステルフィルムは溶液流延法で製造されたフィルムであっても溶融流延法で製造されたフィルムであっても好ましく用いることができるが、後述する斜方延伸機との組み合わせの場合には、残留溶媒の影響を考慮しなくてもよい溶融流延法を用いることが好ましい。
【0225】
本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造は、セルロースエステル及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延、乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
【0226】
〈溶液流延法〉
(ドープ調整工程)
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
【0227】
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。
【0228】
良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。
【0229】
そのため、セルロースエステルの平均酢化度(アセチル基置換度)によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
【0230】
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
【0231】
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
【0232】
また、セルロースエステルの溶解に用いられる溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられる。
【0233】
回収溶剤中に、セルロースエステルに添加されている添加剤、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分などが微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
【0234】
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。
【0235】
溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。
【0236】
また、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
【0237】
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0238】
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。
【0239】
好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
【0240】
もしくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステルを溶解させることができる。
【0241】
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。
【0242】
このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
【0243】
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
【0244】
濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
【0245】
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。
【0246】
より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
【0247】
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。
【0248】
好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
【0249】
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
【0250】
ここで、ドープの流延について説明する。
【0251】
(流延、乾燥工程)
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
【0252】
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
【0253】
好ましい支持体温度は0〜40℃であり、5〜30℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
【0254】
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
【0255】
(剥離工程)
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
【0256】
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
【0257】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
尚、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
【0258】
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。剥離張力は300N/m以下で剥離することが好ましい。
【0259】
(延伸工程)
本発明で目標とするレターデーション値Ro、Rtを得るには、本発明の好ましい構成を有するセルロースエステルフィルムに、更に延伸操作により屈折率制御を行うことが好ましい。
【0260】
本発明においては、フィルム製膜方向に対してフィルム面内の遅相軸が40°〜50°の角度をなすことを特徴とし、そのためには角度を調整して延伸する方法が採用される。
【0261】
角度を調整する方法としては、製膜方向に延伸し又は収縮を規制してから、前記製膜方向に対して傾斜方向に延伸し又は収縮を規制することが好ましく、例えば、特開2003−340916号公報実施例1に使用された延伸装置を用いる方法、特開2005−284024号公報図1、製造例2に記載の延伸装置を用いる方法、特開2007−30466号公報に記載の延伸方法、特開2007−94007号公報実施例1に使用された延伸装置を用いる方法等を好ましく用いることができ、流延後オンラインで延伸製膜されてもよいし、製膜後改めて延伸してもよい。
【0262】
中でも特開2005−30466号に記載の方法を用いることが特に好ましい。
【0263】
更に以下の方法を併用してもよい。
(1)搬送を屈曲させて左右の行路差をつける方法
(2)スピンドルにより左右クリップ速度差をつける方法
(3)左右独立の屈曲角を持たせて左右の速度差をつける方法
以下、本発明の実施形態について、斜方延伸する場合について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は以下の実施態様に限定されるものではない。
【0264】
図2及び図3に、本発明の一実施形態であるフィルム延伸装置(伸縮装置)1の平面及び断面を示す。フィルム延伸装置1は、フィルム2を供給する供給装置3と、フィルムを加熱する縦延伸装置4と、フィルム2を下流に搬送する中間搬送装置5とからなる縦延伸工程(縦伸縮工程)6と、フィルム2を搬送しながら搬送方向に対して傾斜し方向に延伸する斜方延伸機7と、斜方延伸機7の中央部を覆うように設けられ、フィルム2を加熱する斜方延伸加熱装置8とからなる斜方延伸工程(斜方伸縮工程)9と、フィルム2を巻き取る巻取装置10とからなっている。
【0265】
供給装置3は、フィルム2を巻き付けた原反リール11が装着され、フィルム2を基準ロール12とニップロール13で挟み込んで所定の搬送速度で送り出す。縦延伸装置4は、フィルム2に上下から互い違いに熱風を吹きかける熱風ダクト(加熱手段)14を有する断熱材で構成した箱体である。中間搬送装置5は、フィルム2を比率ロール15とニップロール16で挟み込んで搬送し、搬送方向と平行なE1方向に延伸する。
【0266】
斜方延伸機7は、フィルム2の両側に配した延伸チェイン17でフィルム2を搬送しながら、搬送方向に対して角度αだけ傾斜したE2方向に延伸するものであるが詳細は後述する。斜方延伸炉8は、フィルム2に上下から熱風を吹きかける熱風ダクト18を有する断熱材で構成した箱体である。巻取装置10は、テンションロール19で張力を調整しながら、フィルム2を製品リール20に巻き取る。
【0267】
図4に、斜方延伸機7の構成を示す。斜方延伸機7は、平行する2本の延伸チェイン17と、延伸チェイン17にそれぞれ一定間隔で設けた多数のベース21と、それぞれのベース21に一定方向に摺動可能に取り付けたアーム22と、それぞれのアーム22の先端に設けたクリップ23とからなっている。クリップ23は、フィルム2の両側縁部を把持できるようになっており、延伸チェイン17はフィルム2の面に垂直なスプロケット24に架け渡されて周回するようになっている。また、クリップ23はアーム上を移動したり、フィルム2を把持しながら搬送方向に対して適度に角度が変わるようになっていてもよい。
【0268】
図5は、斜方延伸機7の更に詳細な構造を示す。延伸チェイン17には1コマおきにベース21が固定されている。ベース21にはそれぞれ延伸チェイン17に対して45°(図2の角度α)傾斜した2つの摺動軸25が設けられ、それぞれの摺動軸25に沿って摺動可能にアーム22が取り付けられている。アーム22の上部には、ベアリングからなる位置決め部材26が設けられており、ガイド27で位置決め部材26を案内することでアーム22を突出及び後退させるようになっている。アーム22の先端に設けたクリップ23は、公知のフィルム把持機構であり、ガイド28で開閉(フィルム2の把持又は解放)される。
【0269】
斜方延伸機7は、延伸チェイン17のベース21からアーム22を突出させてクリップ23によりフィルム2の両側縁部を把持し、延伸チェイン17が進行することでフィルム2を搬送する。この間に、クリップ23でフィルム2を把持したままアーム22を後退させることでフィルム2をアーム22の摺動する方向(図1のE2方向)に延伸して拡幅する。拡幅の際、アーム22の摺動方向に対向するアーム22どうしの後退量は等しくなっている。フィルム2が拡幅された後、一定の保持過程、緩和過程を経てクリップ23は、フィルム2を開放されてもよい。流延後オンラインで延伸する場合、保持過程では、保持時間が左右異なるため厚み方向のレターデーションにバラツキが生じる可能性があり、熱風供給口の形状を傾斜方向と並行することが好ましい。そして、アーム22は、更に後退し、延伸チェイン17がスプロケット24に沿って折り返されるときにクリップ23がフィルム2に接触しないようにする。
【0270】
続いて、以上の構成からなるフィルム延伸装置1におけるフィルム2の延伸について説明する。
【0271】
縦延伸部6において、フィルム2は、基準ロール12で所定の速度で送り出され、比率ロール15によって基準ロール12よりも速い速度で搬送されると、縦延伸炉4内で加熱された部分が搬送方向(E1方向)に、比率ロール15の基準ロール12に対する搬送速度の比と同じ比率で延伸される。この縦方向の延伸によって、フィルム2は、分子が搬送方向に並び、縦方向の配向角が付与される。
【0272】
更に、斜方延伸部9において、フィルム2は、搬送方向に対して角度αだけ傾斜下方向にE2方向に延伸される。この傾斜方向の延伸によって、フィルム2には、E2方向の引っ張りと、フィルム2の変形に対する応力とが作用し、E2方向よりも搬送方向に対して大きな角度に分子を配列させようとする延伸力が働き、傾斜方向の配向角が付与される。
【0273】
この結果、フィルム2は、縦延伸部6において付与された配向角と、斜方延伸部9において付与された配向角とを足し合わせた方向の配向角を得、縦延伸部6及び斜方延伸部9における延伸の強さ(延伸比率)に応じて位相差値が与えられる。
【0274】
フィルム2をフィルム延伸装置1で斜方延伸して配向フィルムを製造する場合、実際にフィルム2を縦延伸部6及び斜方延伸部9で延伸し、得られたフィルム2の配向角を測定し、所望の配向角が得られるように、比率ロール15の速度を増減することで、縦延伸部6における延伸比率を調整する。また、斜方延伸部9における延伸比率を調整することで所望の位相差値を得る。
【0275】
2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に0.8〜1.5倍、幅方向に1.1〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に0.8〜1.0倍、幅方向に1.2〜2.0倍に範囲で行うことが好ましい。
【0276】
延伸温度は150℃〜210℃が好ましく、更に好ましくは160℃〜200℃であり、更に好ましくは170℃〜200℃以下で延伸するのが好ましい。
【0277】
フィルム中の残留溶媒は20〜0%が好ましく、更に好ましくは15〜0%で延伸するのが好ましい。
【0278】
具体的には175℃で残留溶媒が11%で延伸する、或いは175℃で残留溶媒が2%で延伸するのが好ましい。もしくは185℃で残留溶媒が11%で延伸するのが好ましく、或いは185℃で残留溶媒が1%未満で延伸するのが好ましい。
【0279】
(乾燥工程)
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0280】
乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
【0281】
乾燥工程における乾燥温度は40〜200℃で段階的に高くしていくことが好ましい。
【0282】
セルロースエステルフィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが用いられる。特に膜厚は10〜100μmであることが特に好ましい。更に好ましくは20〜60μmである。
【0283】
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、幅1〜4mのものが用いられる。特に幅1.4〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.6〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる。
【0284】
〈溶融流延法〉
図6は、溶融流延法で用いられる製造装置の一例である。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0285】
押出し機101、フィルター102、スタチックミキサー103、ダイ(厚み調整手段含む)104、タッチロール105、第1冷却ロール106、第2冷却ロール107、剥離ロール108、ダンサーロール109、延伸機110、スリッター111、厚み測定手段112、エンボスリング及びバックロール113、巻き取り機114、巻き取られたフィルム115で構成されている。
【0286】
本発明に用いられるセルロースエステルは、通常パウダー状で入手される。本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造方法においては、パウダー状セルロースエステルを用いてもよいが、パウダーをペレット状に成形して使用することが取り扱いの観点から好ましい。
【0287】
パウダーをペレット状に成形する際には、公知の単軸押出し機や2軸押出し機を用いることができる。例えばパウダー状セルロースエステルを押出し機のホッパーより投入し、セルロースエステルの(Tg+100)℃程度の温度で溶融混練してダイスからストランド状物を押出し、該ストランド状物を水冷などの方法により冷却した後、ペレタイザーにて切断し、ペレットを得ることができる。
【0288】
パウダー状セルロースエステルをホッパーに投入する際に、必要に応じてフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤などの各種酸化防止剤や、高級脂肪酸アミドや高級脂肪残金属塩などの滑剤などを添加してペレット化してもよい。
【0289】
パウダーは予めTg付近の温度で乾燥することが好ましい。またペレット状に成形する際にはベント付きの押出し機を用いて押出し機中を吸引しながら成形することが好ましい。
【0290】
セルロースエステルからなるペレットは、Tg付近の温度で十分乾燥して用いることが好ましい。乾燥時に重合体が酸化されて劣化することを抑制するためには、窒素下で乾燥することが望ましい。
【0291】
セルロースエステルは、単軸または2軸押出し機中で溶融混練されて流延ダイよりシート状に押出される。通常押出し機の温度は、樹脂温度が(Tg+100)℃〜(Tg+200)℃の範囲となるように設定される。
【0292】
また、押出し機内でのセルロースエステルの劣化を抑制するために押出し機ホッパー部分を窒素シールしたり、フィッシュアイなどの異物の発生を抑制するためにリーフディスクフィルターを使用したり、押出変動を抑制するためにギアポンプを用いてもよい。
【0293】
流延ダイは先端部がシャープエッジ(曲率半径R=0.1μm以下)に加工された形状のものを用いることが、メヤニ発生を抑制する観点から好ましい。
【0294】
流延ダイからシート状に押出された溶融状セルロースエステルは、回転支持体である冷却キャスティングロールと、該キャスティングロールにその周方向に沿って圧接するよう設けられた挟圧回転体である金属製の弾性タッチロールまたは無端ベルトとによりニップが形成され、そのニップ部にシート状の溶融状セルロースエステルを通過させることにより、前記キャスティングロールと弾性タッチロールまたは無端ベルトとで挟圧され所望の表面形状、厚み及び光学性能を有するセルロースエステルフィルムが形成される。
【0295】
弾性タッチロールとしては、特開平03−124425号、特開平08−224772号、特開平07−100960号、特開平10−272676号、WO97−028950、特開平11−235747号、特開2002−36332号、特開2005−172940号や特開2005−280217号に記載されているような表面が薄膜金属スリーブ被覆シリコンゴムロールを使用することができるが、弾性を有するタッチロールであることが好ましい。
【0296】
無端ベルトとは、前記キャスティングロールの周方向に該キャスティングロールと平行に配置された複数のロールによって保持されてなる可撓性の金属スリーブベルトであり、その厚みは100〜1500μmであることが好ましい。
【0297】
無端ベルトの厚みが薄すぎるとベルトの強度が弱く、溶融状セルロースエステルを挟圧する際にベルトが変形するおそれがある。無端ベルトの厚みが厚すぎると、溶融状セルロースエステルを挟圧する圧力が強くなりすぎて、バンクが形成されてしまうことがある。
【0298】
無端ベルトは、直径100〜300mmの二本以上のロールで保持されてなることが好ましい。前記のようなロールで無端ベルトを保持することにより、安定した圧力で溶融状セルロースエステルを挟圧することができる。
【0299】
また無端ベルトの表面温度は50℃以上(Tg−5)℃以下であることが、剥離故障の観点から好ましい。
【0300】
本発明に用いられる製造装置において、流延ダイのリップから押出された溶融状セルロースエステルが弾性タッチロール無端ベルトまたはキャスティングロールに接触するまでの長さ(エアーギャップ)は30〜300mmであることが好ましく、より好ましくは70〜200mmである。
【0301】
このような条件で製造することにより、光学的に均一なフィルムを得ることができる。エアーギャップは、流延ダイのリップから、溶融状セルロースエステルが無端ベルトまたはキャスティングロールのいずれかと接触するまでの最も短い長さである。
【0302】
例えば溶融状セルロースエステルが無端ベルトと先に接触する場合には、流延ダイリップから、無端ベルトと溶融状セルロースエステルとが接触を開始した地点までの最も短い長さである。
【0303】
溶融状セルロースエステルがキャスティングロールと先に接触する場合のエアーギャップも同様にして求められる。エアーギャップは、無端ベルト及びキャスティングロールの大きさ、流延ダイ先端部の形状、キャスティングロール、無端ベルト及び流延ダイの位置関係によりその値を決めることができる。
【0304】
エアーギャップを150mm以下とするためには、200〜400mmφのキャスティングロールを用いることが好ましい。キャスティングロールの表面は、平滑性の高い鏡面仕上げであることが好ましい。
【0305】
キャスティングロールの表面温度の下限値は、波状の皺の発生を抑制及び剥離の観点から、弾性タッチロールまたは無端ベルトの表面温度以上であって、かつ50℃以上であることが好ましく、上限値は(Tg−5)℃以下であることが好ましい。
【0306】
また、キャスティングロールと弾性タッチロールまたは無端ベルトとの間で溶融状セルロースエステルを挟圧する距離は、ダイラインなどの外観不良を改良する効果の点から50〜150mmであり、好ましくは70〜130mmである。
【0307】
弾性タッチロールまたは無端ベルトとキャスティングロールにより挟圧されて冷却固化されたセルロースエステルフィルムは、更に少なくとも1方向に1.01〜5.0倍延伸することが好ましい。延伸によりスジの鋭さが緩やかになり高度に矯正することができるのである。
【0308】
延伸装置は、前述の溶液流延法と同様のものを使用することが好ましい。
【0309】
その後引取機にて引き取られ、フィルムの端部をスリットして取り除いた後巻取り機にてロール状に巻き取られる。
【0310】
引取機のニップロールを利用して、保護フィルムを貼合することもできる。保護フィルムとしては市販のエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるフィルムなどが使用することができ、セルロースエステルフィルムの片面、または両面に貼合することができる。
【0311】
本発明で得られるセルロースエステルからなるフィルムは、多層フィルムであってもよい。多層フィルムである場合、セルロースエステルからなる層を一層以上有していればよい。
【0312】
本発明で得られるフィルムを光学製品に用いる場合には、全ての層がセルロースエステルからなる多層フィルムであることが好ましい。本発明によって多層フィルムを製造する場合には、マルチマニホールド式の流延ダイやフィードブロック式の流延ダイを用いることができる。各層の厚みを正確に制御しやすいため、マルチマニホールド方式の流延ダイを用いることが好ましい。
【0313】
〈セルロースエステルフィルムの物性〉
本発明に係るセルロースエステルフィルムの透湿度は、40℃、90%RHで10〜1200g/m2・24hが好ましく、更に20〜1000g/m2・24hが好ましく、20〜850g/m2・24hが特に好ましい。透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に従い測定することができる。
【0314】
本発明に係るセルロースエステルフィルムは破断伸度は10〜80%であることが好ましく20〜50%であることが更に好ましい。
【0315】
本発明に係るセルロースエステルフィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。
【0316】
また、本発明に係るセルロースエステルフィルムに更に液晶層を塗布することにより、更に広い範囲にわたるレターデーション値を得ることができる。
【0317】
(偏光板の構成)
本発明に係るセルロースエステルフィルムを偏光板保護フィルムとした偏光板、それを用いた本発明の液晶表示装置について説明する。
【0318】
本発明の偏光板は、前記本発明のVA用位相差フィルムを偏光板保護フィルムとして用いて、偏光子の少なくとも一方の面に貼合した偏光板であることが好ましい。本発明の液晶表示装置は、少なくとも一方の液晶セル面に、本発明に係る偏光板が、粘着層を介して貼り合わされたものであることが好ましい。
【0319】
〈直線偏光フィルム〉
直線偏光フィルムとしては、吸収型の直線偏光フィルムである限りにおいて限定されるものではなく、公知の種々の形態のものを適用可能である。一般的には、ポリビニルアルコールのような親水性高分子からなるフィルムを、ヨウ素のような二色性染料で処理して延伸したものや、ポリ塩化ビニルのようなプラスチックフィルムを処理してポリエンを配向させたもの等からなる偏光フィルムの他、当該偏光フィルムを封止フィルムでカバーして保護したもの等が用いられる。
【0320】
〈円偏光フィルムの構成〉
本発明に係る円偏光フィルムの断面構成を図で示す。図7〜図9は、本発明の実施態様の概略図であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0321】
図7は、通常の偏光板(TAC(セルローストリアセテート)/偏光子/TACの構成を有する)に、本発明のVA用位相差フィルムの片面を、粘着剤または接着剤を用いて貼り合せた円偏光板である。この場合、偏光板は市販の偏光板をそのまま使用することができる。
【0322】
図8は、本発明のVA用位相差フィルム(λ/4)1枚と、従来の斜め延伸のみによって形成された位相差フィルム(λ/2)1枚と、通常の直線偏光板とを図にあるような軸角度で貼合した円偏光板である。
【0323】
図9は、本発明のVA用位相差フィルムを片側の偏光板保護フィルムとして、もう一つ別の偏光板保護フィルムとともに直線偏光子フィルムを挟む形で積層、貼合した円偏光板である。
【0324】
もう一方の面には他の偏光板保護フィルムを貼合する。例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上コニカミノルタオプト(株)製)やアクリル樹脂系のフィルムが好ましく用いられる。
【0325】
表示装置の表面側に用いられる偏光板保護フィルムには、防眩層或いはクリアハードコート層のほか、反射防止層、帯電防止層、防汚層、バックコート層を有することが好ましい。
【0326】
〈液晶表示装置〉
本発明のVA用位相差フィルムを貼合した偏光板をVA(MVA、PVA)モード型液晶表示装置に用いることによって、視認性に優れた本発明のVAモード型液晶表示装置を作製することができる。
【0327】
図10は本発明のVAモード型液晶表示装置の一例である。本発明のVA用位相差フィルムは、フィルム面内にある遅相軸を直線偏光子の吸収軸に対し45°傾斜して貼合して円偏光板を形成し、垂直配向型液晶セルの両側に、該遅相軸が直交するように配置される。
【0328】
このようにして、特に画面が30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、色味むらがなく、正面コントラストの高い視認性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
【実施例】
【0329】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0330】
(VA用位相差フィルム1の作製)
〈微粒子分散液〉
微粒子 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0331】
〈微粒子添加液〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに下記セルロースアセテートプロピオネートを添加し、加熱して完全に溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。濾過後のセルロースエステル溶液を十分に攪拌しながら、ここに微粒子分散液をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
【0332】
メチレンクロライド 99質量部
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.65、プロピオニル基置換度0.8、数平均分子量80000、重量平均分子量220000) 4質量部
微粒子分散液 11質量部
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクに下記セルロースアセテートプロピオネートを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、更に可塑剤及び紫外線吸収剤を添加、溶解させた。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
【0333】
主ドープ液100質量部と微粒子添加液2質量部となるように加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分に混合し、次いでベルト流延装置を用い、幅2mのステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体上で、残留溶媒量が110%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体から剥離した。その後、特開2007−94007号公報の実施例1に記載の装置(延伸機A:図11)を用い、温度170℃、倍率1.5倍で遅相軸がフィルム幅方向と45°をなす様に斜め方向に延伸を行い、乾燥させて長尺のVA用位相差フィルム1を得た。
【0334】
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 57質量部
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度0.8、プロピオニル基置換度1.65、数平均分子量80000、重量平均分子量220000) 100質量部
アクリル系重合体C 5質量部
糖エステル化合物例示化合物3 10質量部
可塑剤(a)、(b)、(c)1:1:1の質量比 0.5質量部
トリメチロールプロパントリス(3,4,5−トリメトキシベンゾエート)
1質量部
【0335】
【表1】

【0336】
尚、上記アクリル重合体は、特開2000−128911号公報に記載の重合方法により塊状重合を行った。
【0337】
(VA用位相差フィルム2の作製)
VA用位相差フィルム1から、延伸装置を特開2003−340916号実施例−1に記載の装置(延伸機B:図12)に変更し、温度170℃、倍率1.5倍で遅相軸がフィルム幅方向と45°をなす様に斜め方向に延伸を行い長尺のVA用位相差フィルム2を作製した。
【0338】
(VA位相差フィルム3の作製)
VA用位相差フィルム1から、図2〜図5で示す延伸装置(延伸機C)に変更し、温度170℃、倍率1.5倍で遅相軸がフィルム幅方向と45°をなす様に斜め方向に延伸を行い長尺のVA用位相差フィルム3を作製した。
【0339】
(VA用位相差フィルム4の作製)
VA用位相差フィルム3に対して、延伸機Cを用い、アクリル系重合体を除き、トリメチロールプロパントリス(3,4,5−トリメトキシベンゾエート)を5.5質量部添加に変更した以外は同様にして長尺のVA用位相差フィルム4を作製した。
【0340】
(VA用位相差フィルム5の作製)
VA用位相差フィルム3に対して、アクリル系重合体、糖エステル化合物を除き、可塑剤(a)、(b)、(c)の総量を5.5質量部に変更した以外は同様にして長尺のVA用位相差フィルム5を作製した。
【0341】
(VA用位相差フィルム6の作製)
VA用位相差フィルム3に対して、延伸機Cを用い、アクリル系重合体を表2記載のように変更した以外は同様にして長尺のVA用位相差フィルム6を作製した。
【0342】
(VA用位相差フィルム7の作製)
(ペレット作製)
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.23、プロピオニル基置換度1.31、数平均分子量75000) 100質量部
アクリル系重合体C 5.5質量部
糖エステル化合物例示化合物3 5.5質量部
トリメチロールプロパントリス(3,4,5−トリメトキシベンゾエート)
1質量部
IRGANOX−1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1質量部
SumilizerGP(住友化学社製) 0.5質量部
上記材料に、シリカ粒子0.05質量部を加え、窒素ガスを封入したV型混合機で30分混合した後、ストランドダイを取り付けた2軸押出し機(PCM30(株)池貝社製)を用いて240℃で溶融させ、長さ4mm、直径3mmの円筒形のペレットを作製した。このとき、せん断速度は、25(mm/s)に設定した。得られたペレットを100℃5時間乾燥させ、含水率100ppmとし、幅300mmのTダイを取り付けた単軸押出し機(GT−50;(株)プラスチック工学研究所社製)に供給して押出し機及びTダイを250℃に設定して製膜を行った。Tダイ表面にはハードクロムメッキを施し面粗度0.1Sの鏡面仕上げを行った。Tダイから出たフィルムは110℃に温度調整したクロムメッキ鏡面の第1冷却ロールに落下させた。
【0343】
第1冷却ロールに密着したフィルムは、第1冷却ロールの円周部分を中心角10°搬送された後、弾性タッチロールで押圧した。このとき、フィルムの幅手250mmの全面に対し、4N/mmの圧力で接触した。押圧されたフィルムは第1冷却ロールの中心角150°の円周部分で接触した後、更に、第2冷却ロール(温度110℃)、第3冷却ロール(温度80℃)の合計3本の冷却ロールに順に外接させて、冷却固化してフィルムとし、剥離ロールによって剥離した。その後、特開2007−94007号公報の実施例1に記載の装置(延伸機A)を用い、温度170℃、倍率2倍で遅相軸がフィルム幅方向と45°をなす様に斜め方向に延伸を行い、乾燥させて長尺のVA用位相差フィルム7を作製した。
【0344】
(VA用位相差フィルム8〜17の作製)
更に、表2に示すように延伸機(延伸機B、延伸機C)、延伸角度、延伸温度、延伸倍率、セルロースエステル置換度、アクリル系重合体、糖エステル化合物を変更した以外は、VA用位相差フィルム7と同様にして長尺のVA用位相差フィルム8〜17を作製した。
【0345】
(VA用位相差フィルム18の作製)
VA用位相差フィルム7から、アクリル系重合体を除き、トリメチロールプロパントリス(3,4,5−トリメトキシベンゾエート)を5.5質量部添加に変更した以外は同様にして、長尺のVA用位相差フィルム18を作製した。
【0346】
(VA用位相差フィルム19の作製)
VA用位相差フィルム7からアクリル系重合体及び糖エステル化合物例示化合物3を除き、トリメチロールプロパントリス(3,4,5−トリメトキシベンゾエート)を10質量部添加に変更した以外は同様にして、以外は同様にして、長尺のVA用位相差フィルム19を作製した。
【0347】
《評価》
上記作製したVA用位相差フィルムを用いて下記評価を実施した。
【0348】
(散乱光強度の差)
ゴニオフォトメーター型式:GP−1−3D、オプテック(株)製(光源は、12V50Wハロゲン球、受光部は、光電子増倍管(フォトマル 浜松フォトニクス R636−10))を用いて測定した。
【0349】
なお、測定時の光量は、θ=180°での光量にて補正し(フォトマル受光感度:−185V)、この光量での測定値を散乱光強度とした。
【0350】
サンプルは、フィルムの遅相軸を水平、垂直に試料台に固定してそれぞれ測定し、散乱光強度の差を求めた。
【0351】
(レターデーションRo、Rtの測定)
得られたフィルムから試料35mm×35mmを切り出し、25℃,55%RHで2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株))で、590nmにおける垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値より算出した。
【0352】
(ヘイズ)
ヘイズメーター1001DP型、日本電色工業(株)製を使用してJIS K−6714に準じて測定した。
【0353】
VA用位相差フィルムの構成、評価結果を表2、表3に示す。
【0354】
【表2】

【0355】
【表3】

【0356】
本発明の試料は、斜方延伸により所望のレターデーション値を有し、かつヘイズが低いことが分かる。
【0357】
次いで上記作製したVA用位相差フィルムを用いて偏光板、液晶表示装置を作製した。
【0358】
(偏光板の作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールの長尺フィルムを、MD方向に一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光フィルム(偏光子)を得た。
【0359】
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子とVA用位相差フィルム1〜19と、偏光子を挟んで裏面側に長尺のコニカミノルタタックKC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)を偏光板保護フィルムとして貼り合わせ偏光板を作製した。その際偏光子、VA用位相差フィルム、KC4UYの各々の長手方向を揃えるように貼合した。
【0360】
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化したVA用位相差フィルム1〜19とセルロースエステルフィルムKC4UYを得た。
【0361】
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
【0362】
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したVA用位相差フィルム及びセルロースエステルフィルムの上にのせて配置した。
【0363】
工程4:工程3で積層したVA用位相差フィルムと偏光子と裏面側セルロースエステルフィルムを圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
【0364】
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子とVA用位相差フィルムと裏面側セルロースエステルフィルムとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板1〜19を作製した。
【0365】
(液晶表示装置の作製)
視野角測定を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
【0366】
垂直配向型液晶表示装置であるSONY製40型ディスプレイKLV−40J3000の予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板1〜19をそれぞれ液晶セルのガラス面の両面に貼合した。
【0367】
その際、その偏光板の貼合の向きは、本発明のVA用位相差フィルムの面が、液晶セル側となるように、かつ、偏光子の吸収軸が直交するように行い、液晶表示装置1〜19を各々作製した。
【0368】
この液晶表示装置について色味変動及び正面コントラストについて評価した。結果を表4に示す。
【0369】
《評価》
(色味変動の評価)
上記作製した各液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて色味変動について測定した。CIE1976、UCS座標において、上下方向(表示法線から上80°〜下80°)での最大色味変動幅Δu’v’を比較した。
【0370】
(正面コントラストの評価)
23℃55%RHの環境で、各々の液晶表示装置のバックライトを1週間連続点灯した後、測定を行った。測定にはELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて、液晶表示装置で白表示と黒表示の表示画面の法線方向からの輝度を測定し、その比を正面コントラストとした。
【0371】
正面コントラスト=(表示装置の法線方向から測定した白表示の輝度)/(表示装置の法線方向から測定した黒表示の輝度)
【0372】
【表4】

【0373】
表4の結果から、本発明のVA用位相差フィルムを用いた液晶表示装置1〜3、6〜8、10〜16は色味変動、正面コントラストに優れた液晶表示装置であることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0374】
【図1】ゴニオフォトメーターの概略図である。
【図2】本発明の延伸装置の一つの概略図である。
【図3】本発明の延伸装置の一つの概略図である。
【図4】本発明の延伸装置の一つの概略図である。
【図5】本発明の延伸装置の一つの概略図である。
【図6】本発明の溶融流延製膜装置の概略図である。
【図7】本発明の円偏光板の実施態様の一つである。
【図8】本発明の円偏光板の実施態様の一つである。
【図9】本発明の円偏光板の実施態様の一つである。
【図10】本発明の液晶表示装置の一例である。
【図11】実施例に用いた延伸装置(延伸装置A)の概略図である。
【図12】実施例に用いた延伸装置(延伸装置B)の概略図である。
【符号の説明】
【0375】
G1 光源ランプ
G2 分光器
G3 試料台(ステージ)
G5 受光部分
G6 サンプル押えバネ
G7 角度割り出し回転テーブル
θ 光源の法線方向と、サンプルの観察点と積分球とを結ぶ方向とがなす角
1 延伸装置
2 フィルム
3 フィルム供給装置
4 縦延伸装置
5 中間搬送装置
6 縦延伸工程
7 斜方延伸装置
8 斜方延伸加熱装置
9 斜方延伸工程
10 巻き取り装置
11 原反リール
12 基準ロール
13 ニップロール
14 熱風ダクト
15 比率ロール
16 ニップロール
17 延伸チェイン
18 熱風ダクト
19 テンションロール
20 巻き取り装置
E1 搬送方向(製膜方向)と平行な方向
E2 搬送方向(製膜方向)に対して角度αだけ傾斜した方向
21 ベース
22 アーム
23 クリップ
24 スプロケット
25 摺動軸
26 位置決め部材
27 ガイド
28 ガイド
101 押出し機
102 フィルター
103 スタチックミキサー
104 ダイ(厚み調整手段含む)
105 タッチロール
106 第1冷却ロール
107 第2冷却ロール
108 剥離ロール
109 ダンサーロール
110 延伸機
111 スリッター
112 厚み測定手段
113 エンボスリング及びバックロール
114 巻き取り機
115 巻き取られたフィルム
201 フィルム
210 恒温室
211 レール
212 把持手段
213 予熱ゾーンと延伸ゾーンとの境目
214 延伸ゾーンと固定ゾーンとの境目
221 引き出しロール
222 巻き取りロール
301 フィルム
302 予熱ゾーン
303 加熱延伸ゾーン
304 冷却ゾーン
305 延伸フィルム
306,307 スクリュー
308,381 クリップ
309,391 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム製膜方向とフィルム面内の遅相軸のなす角度が40〜50°であり、かつゴニオフォトメーターの散乱光プロファイルの入射光90°のフィルム散乱光強度を測定した時に、光源から130°の位置における散乱光強度を検出する測定において、該フィルムの試料台への設置方向を遅相軸に合わせた場合とその直交方向にした場合の散乱光強度の差が0.05以下であることを特徴とする垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルム。
【請求項2】
下記式(1)〜式(3)を同時に満たすことを特徴とする請求項1に記載の垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルム。
(1) 130≦Ro≦160
(2) 150≦Rt≦230
(3) 0.78≦Ro(480)/Ro(650)≦0.96
ここで、Ro=(nx−ny)×d(nm)
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d(nm)
であり式中、位相差フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸に直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnz、dは位相差フィルムの厚み(nm)を表す。屈折率の測定波長は590nmである。Ro(480)、Ro(650)はそれぞれ波長480nm、650nmで測定した時のRoを表す。
【請求項3】
前記垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルムがセルロースエステルを含み、かつ該セルロースエステルが、下記式(i)、(ii)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルム。
式(i) 2.1≦X+Y≦2.8
式(ii) 0.5≦Y≦1.6
式中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基またはブチリル基の置換度である。
【請求項4】
前記垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルムが、アクリル系重合体、及びピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物を、少なくとも一種含有するセルロースエステルフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルムの製造方法であって、セルロースエステルを含む加熱溶融物を溶融押出法にてフィルム状に押出した後、該フィルムの長尺方向に対して傾斜方向に延伸し、または収縮を規制する工程を有することを特徴とする垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の垂直配向型液晶表示装置用位相差フィルムを少なくとも一方の面に有することを特徴とする偏光板。
【請求項7】
請求項6に記載の偏光板を液晶セルの少なくとも一方の面に有することを特徴とする垂直配向型液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−162801(P2009−162801A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339129(P2007−339129)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】