垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板およびそれを用いた垂直配向型液晶表示装置
【課題】厚み方向の位相差を広範囲に制御可能で薄膜化可能な垂直配向型液晶表示装置用楕円を提供し、視野角特性の優れた垂直配向型液晶表示装置を提供する。
【解決手段】少なくとも正の一軸性を示す液晶材料を液晶状態においてホメオトロピック配向させた後、該配向を固定化したホメオトロピック配向液晶フィルムと直線偏光板とからなる垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板。
【解決手段】少なくとも正の一軸性を示す液晶材料を液晶状態においてホメオトロピック配向させた後、該配向を固定化したホメオトロピック配向液晶フィルムと直線偏光板とからなる垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧無印加時に液晶分子が基板に対して垂直に配向する垂直配向型液晶表示装置に関し、特に広視野角を実現し、薄膜化が可能な垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板および該楕円偏光板を配置した垂直配向型液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置における表示モードの1つとして、初期状態において液晶セル内の液晶分子が基板表面に対して垂直に配列する垂直配向モードがある。電圧無印加時には、液晶分子が基板表面に対して垂直に配列し、液晶セルの両側に直線偏光板を直交配置すると黒表示が得られる。
液晶セル内の光学特性は面内方向で等方的であり、理想的な視野角補償が容易に可能である。液晶セルの厚さ方向に正の1軸光学異方性を補償するため、厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する光学素子を液晶セルの片面又は両面と直線偏光板との間に挿入すると、非常に良好な黒表示視角特性が得られる。
電圧印加時においては、液晶分子が基板表面に垂直な方向から基板表面に平行な方向に向って配向を変化させる。この際、液晶配列の均一化が困難である。通常の配向処理である基板表面のラビング処理を用いると、表示品位が著しく低下する。
電圧印加時における液晶配列を均一化するため、基板上の電極形状を工夫し、液晶層内に斜め電界が発生するようにし、均一配向を得る等の提案がある。この方法によれば、均一な液晶配列は得られるが、ミクロ的には不均一な配向領域が生じ、電圧印加時にこの領域が暗領域となる。従って、液晶表示装置の透過率が低下する。
【0003】
特許文献1によれば、ランダム配向した状態を含む液晶層を有する液晶素子の両側に配置する直線偏光板を円偏光板に置き換えた構成が提案されている。直線偏光板の代わりに、直線偏光板と1/4波長板とを組み合わせた円偏光板に置き換えることにより、電圧印加時の暗領域を解消し、高透過率な液晶表示装置を実現できる。しかしながら、円偏光板を用いた垂直配向型液晶表示装置では、直線偏光板を用いた垂直配向型液晶表示装置と比較し視野角特性が狭いという課題があった。特許文献2によれば、円偏光板を用いた垂直配向型液晶表示装置の視野角補償として、負の1軸の光学異方性を有する光学異方素子や2軸光学異方性材料が提案されている。しかし負の1軸の光学異方性を有する光学異方素子により液晶セルの厚さ方向に正の1軸光学異方性を補償できるが、1/4波長板の視野角特性を補償できないため、十分な視野角特性を得ることはできない。また、2軸光学異方性材料の製造を行う場合、得られる位相差板の面内の主屈折率をnx、nyとし、厚さ方向の屈折率をnzとし、かつnx>nyとしたとき、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義されるNzは−1.0<Nz<0.1であり、厚み方向の延伸には限界があり、厚み方向の位相差を広範囲に制御することができない。また前記製造方法では、熱収縮フィルムにより、長尺フィルムを熱収縮させて厚み方向に延伸させているため、得られる位相差板は、長尺フィルムよりも厚みが増加する。前記製造方法で得られる位相差板の厚みは50〜100μm程度であり、液晶表示装置等に要求される薄型化に対しても十分ではなかった。
【特許文献1】特開2002−40428号公報
【特許文献2】特開2003−207782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、視野角特性の優れた垂直配向型液晶表示装置を提供することである。また、垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板として、厚み方向の位相差を広範囲に制御可能で薄型の楕円偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板およびそれを用いた垂直配向型液晶表示装置により、前記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の第1は、少なくとも正の一軸性を示す液晶材料を液晶状態においてホメオトロピック配向させた後、該配向を固定化したホメオトロピック配向液晶フィルムと直線偏光板とからなる垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板、である。
【0007】
本発明の第2は、前記ホメオトロピック配向液晶フィルムが以下の[1]および[2]を満たすことを特徴とする本発明の第1に記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板、である。
[1]0nm≦Re1≦20nm
[2]−500nm≦Rth1≦−30nm
(ここで、Re1は前記ホメオトロピック配向液晶フィルムの面内のリターデーション値を意味し、Rth1は前記ホメオトロピック配向液晶フィルムの厚さ方向のリターデーション値を意味する。前記Re1及びRth1は、それぞれRe1=(Nx1−Ny1)×d1[nm]、Rth1=(Nx1−Nz1)×d1[nm]である。また、d1は前記ホメオトロピック配向液晶フィルムの厚さ、Nx1およびNy1は前記ホメオトロピック配向液晶フィルム面内の主屈折率、Nz1は厚さ方向の主屈折率であり、Nz1>Nx1≧Ny1である。)
【0008】
本発明の第3は、前記ホメオトロピック配向液晶層が、オキセタニル基を有する液晶性高分子化合物を少なくとも含有してなる液晶性組成物を、液晶状態でホメオトロピック配向させた後、前記オキセタニル基を反応せしめて前記ホメオトロピック配向を固定化したものであることを特徴とする本発明の第1または第2に記載の楕円偏光板、である。
【0009】
本発明の第4は、前記の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板が、面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子を有することを特徴とする本発明の第1〜3に記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板、である。
【0010】
本発明の第5は、前記の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板が、面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子と厚さ方向に負の1軸光学異方性を示す以下の[3]および[4]を満たすことを特徴とする第3の光学異方素子とを有することを特徴とする本発明の第1〜4に記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板、である。
[3]0nm≦Re2≦20nm
[4]30nm≦Rth2≦500nm
(ここで、Re2は前記第3の光学異方素子の面内のリターデーション値を意味し、Rth2は前記第3の光学異方素子の厚さ方向のリターデーション値を意味する。前記Re2及びRth2は、それぞれRe2=(Nx2−Ny2)×d2[nm]、Rth2=(Nx2−Nz2)×d2[nm]である。また、d2は前記第3の光学異方素子の厚さ、Nx2およびNy2は前記第3の光学異方素子の面内の主屈折率、Nz2は厚さ方向の主屈折率であり、Nx2≧Ny2>Nz2である。)
【0011】
本発明の第6は、前記第3の光学異方素子が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択される少なくとも一種のポリマー材料であることを特徴とする本発明の第5に記載の楕円偏光板、である。
【0012】
本発明の第7は、前記第1の光学異方素子が、面内で1/4波長の位相差を示しかつ負の2軸性光学異方性を有することを特徴とする本発明の第1〜6に記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板、である。
【0013】
本発明の第8は、総膜厚が400μm以下であることを特徴とする本発明の第1〜7に記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板、である。
【0014】
本発明の第9は、電極を備えた1対の基板間に、電圧無印加時に基板表面に対して垂直配向する液晶分子を含む垂直配向型液晶セルと、前記垂直配向型液晶セル基板の少なくとも片側に垂直配向型液晶セル基板側に請求項1〜7のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板のホメオトロピック配向液晶フィルム側が向かうよう配置し、前記垂直配向型液晶セル基板と前記楕円偏光板との間に、面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子を少なくとも1枚配置したことを特徴とする垂直配向型液晶表示装置、である。
【0015】
本発明の第10は、本発明の第9に記載の垂直配向型液晶表示装置において、垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板を配置した基板と反対側の基板上に、基板側から面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子を少なくとも1枚および直線偏光板を配置したことを特徴とする本発明の第9に記載の垂直配向型液晶表示装置、である。
【0016】
本発明の第11は、前記第1の光学異方素子と前記垂直配向型液晶セルとの間に、少なくとも1枚の厚さ方向に負の1軸光学異方性を示す第3の光学異方素子を有することを特徴とする本発明の第9又は10に記載の垂直配向型液晶表示装置、である。
【0017】
本発明の第12は、前記垂直配向型液晶セルと直線偏光板の間に、面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子を有することを特徴とする本発明の第9〜11に記載の垂直配向型液晶表示装置、である。
【0018】
本発明の第13は、前記第1の光学異方素子が面内で1/4波長の位相差を示し、かつ負の2軸性光学異方性を有することを特徴とする本発明の第9〜12に記載の垂直配向型液晶表示装置、である。
【0019】
本発明の第14は、前記垂直配向型液晶セルの一方の基板が反射機能を有する領域と透過機能を有する領域とを有する基板であることを特徴とする本発明の第9〜13に記載の垂直配向型液晶表示装置、である。
【発明の効果】
【0020】
ホメオトロピック配向液晶フィルムを用いた本発明の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板は、垂直配向型液晶表示装置に配置した場合、視野角を広くすることができるばかりでなく、該垂直配向型液晶表示装置は、表示が明るく、全方位において高コントラストな表示が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板について説明する。
本発明の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板は、少なくとも正の一軸性を示す液晶材料を液晶状態においてホメオトロピック配向させた後、該配向を固定化したホメオトロピック配向液晶フィルムと直線偏光板とからなる。本発明において、液晶材料のホメオトロピック配向を固定化した液晶フィルムを得るに当たって用いられる液晶材料としては、配向基板上もしくは配向基板上に配向膜をコーティングした後、形成させた液晶材料がホメオトロピック配向し、その配向を固定化しうる正の一軸性液晶材料であればよく、低分子液晶化合物、液晶性高分子化合物やこれらの混合物からなる材料であってもよい。
【0022】
前記の低分子液晶化合物は光や熱により反応する反応性基を結合した化合物が配向を容易に固定化できるので好ましい。反応性基としては、ビニル基、アクリロイル基、ビニルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基、アジリジニル基等が好ましいが、他の反応性基、例えばイソシアナート基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、カルボキシル基なども反応条件等によっては使用することができる。
前記の液晶性高分子化合物には主鎖型液晶ポリマーと側鎖型液晶ポリマーとがあるがいずれも使用することができる。主鎖型液晶ポリマーとしては、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミド、ポリカーボネート等が挙げられる。なかでも合成の容易さ、配向性、ガラス転移点などの面から液晶性ポリエステルが好ましく、カチオン重合性基を結合した主鎖型液晶性ポリエステルが特に好ましい。側鎖型液晶ポリマーとしては、ポリアクリレート、ポリマロネート、ポリシロキサン等を挙げることができる。液晶ポリマーは前記の反応性基を結合したものが好ましい。
【0023】
本発明に使用されるホメオトロピック配向液晶フィルムは、例えば前述の液晶材料を配向基板上に展開し、当該液晶材料を配向させた後、必要により光照射および/または加熱処理した後、冷却することにより当該配向状態を固定化することにより製造することができる。
【0024】
前記の主鎖型液晶性ポリエステルは、芳香族ジオール単位(以下、構造単位(A)という。)、芳香族ジカルボン酸単位(以下、構造単位(B)という。)および芳香族ヒドロキシカルボン酸単位(以下、構造単位(C)という。)のうち少なくとも2種を必須単位として含む主鎖型液晶性ポリエステルであって、主鎖末端の少なくとも一方にカチオン重合性基を有する構造単位を含むことを特徴とする主鎖型液晶性ポリエステルである。以下に、構造単位(A)、(B)および(C)について順次説明する。
【0025】
構造単位(A)を導入するための化合物としては下記一般式(a)で表される化合物が好ましく、具体的には、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等若しくはそれらの置換体、4,4’―ビフェノール、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、2,6−ナフタレンジオールなどが挙げられ、特に、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等若しくはそれらの置換体が好ましい。
【0026】
【化1】
【0027】
ただし、式中の−Xは、−H、−CH3、−C2H5、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH2CH3、−CH2CH(CH3)CH3、−CH(CH3)CH2CH3、−C(CH3)3、−OCH3、−OC2H5、−OC6H5、−OCH2C6H5、−F、−Cl、−Br、−NO2、または−CNのいずれかの基であり、特に下記式(a’)で表される化合物が好ましい。
【0028】
【化2】
【0029】
構造単位(B)を導入するための化合物としては下記一般式(b)で表される化合物が好ましく、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等若しくはそれらの置換体、4,4'−スチルベンジカルボン酸若しくはその置換体、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられ、特に、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等若しくはそれらの置換体が好ましい。
【0030】
【化3】
【0031】
ただし、式中の−Xは、−H、−CH3、−C2H5、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH2CH3、−CH2CH(CH3)CH3、−CH(CH3)CH2CH3、−C(CH3)3、−OCH3、−OC2H5、−OC6H5、−OCH2C6H5、−F、−Cl、−Br、−NO2、または−CNのいずれかの基を表す。
【0032】
構造単位(C)を導入するための化合物としては下記一般式(c)で表される化合物が好ましく、具体的には、ヒドロキシ安息香酸若しくはその置換体、4'−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸若しくはその置換体、4'−ヒドロキシ−4−スチルベンカルボン酸若しくはその置換体、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ桂皮酸などが挙げられ、特に、ヒドロキシ安息香酸およびその置換体、4'−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸若しくはその置換体、4'−ヒドロキシ−4−スチルベンカルボン酸若しくはその置換体が好ましい。
【0033】
【化4】
【0034】
ただし、式中の−X、−X1、−X2は、それぞれ個別に、−H、−CH3、−C2H5、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH2CH3、−CH2CH(CH3)CH3、−CH(CH3)CH2CH3、−C(CH3)3、−OCH3、−OC2H5、−OC6H5、−OCH2C6H5、−F、−Cl、−Br、−NO2、または−CNのいずれかの基を表す。
【0035】
主鎖型液晶性ポリエステルは、構造単位として、(A)芳香族ジオール単位、(B)芳香族ジカルボン酸単位、および(C)芳香族ヒドロキシカルボン酸単位のうちから少なくとも2種と、好ましくはさらに主鎖末端の少なくとも一方にカチオン重合性基を有する構造単位(以下、構造単位(D)という。)を含み、サーモトロピック液晶性を示すものであればよく、他の構造単位はこれら条件を満足する限り特に限定されるものではない。
【0036】
主鎖型液晶性ポリエステルを構成する構造単位(A)、(B)および(C)の全構造単位に占める割合は、構造単位(A)、(B)および(C)がジオールあるいはジカルボン酸あるいはヒドロキシカルボン酸として全モノマーの仕込み量に対して占める重量和の比率で表した場合、通常20〜99%、好ましくは30〜95%、特に好ましくは40〜90%の範囲である。20%より少ない場合には、液晶性を発現する温度領域が極端に狭くなるおそれがあり、また99%を越える場合には、カチオン重合性基を有する単位が相対的に少なくなり、配向保持能、機械的強度の向上が得られない恐れがある。
【0037】
次にカチオン重合性基を有する構造単位(D)について説明する。カチオン重合性基としては、エポキシ基、オキセタニル基、およびビニルオキシ基からなる群から選ばれる官能基が好ましく、特にオキセタニル基が好ましい。構造単位(D)を導入するための化合物としては、下記の一般式(d)に示すごとく、フェノール性水酸基あるいはカルボキシル基を有する芳香族化合物に、エポキシ基、オキセタニル基、およびビニルオキシ基から選ばれるカチオン重合性を有する官能基が結合した化合物である。また、芳香環と上記カチオン重合性基との間には、適当なスペーサー部分を有していても良い。
【0038】
【化5】
【0039】
ただし、式中の−X、−X1、−X2、−Y、−Zは、各構造単位毎にそれぞれ独立に以下に示すいずれかの基を表す。
(1)−X、−X1、−X2:−H、−CH3、−C2H5、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH2CH3、−CH2CH(CH3)CH3、−CH(CH3)CH2CH3、−C(CH3)3、−OCH3、−OC2H5、−OC6H5、−OCH2C6H5、−F、−Cl、−Br、−NO2、または−CN
(2)−Y:単結合、−(CH2)n−、−O−、−O−(CH2)n−、−(CH2)n−O−、−O−(CH2)n−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−(CH2)n−、−CO−O−(CH2)n−、−(CH2)n−O−CO−、−(CH2)n−CO−O−、−O−(CH2)n−O−CO−、−O−(CH2)n−CO−O−、−O−CO−(CH2)n−O−、−CO−O−(CH2)n−O−、−O−CO−(CH2)n−O−CO−、−O−CO−(CH2)n−CO−O−、−CO−O−(CH2)n−O−CO−、または−CO−O−(CH2)n−CO−O−(ただし、nは1〜12の整数を示す。)
(3)Z:
【化6】
【0040】
構造単位(D)の中では、カチオン重合性基もしくはカチオン重合性基を含む置換基とフェノール性水酸基あるいはカルボン酸基の結合位置は、これらの基が結合する骨格がベンゼン環の場合は1,4−の位置関係を、ナフタレン環の場合は2,6−の位置関係を、ビフェニル骨格、スチルベン骨格の場合は4,4'−の位置関係にあるものが液晶性の点から好ましい。より具体的には、4−ビニルオキシ安息香酸、4−ビニルオキシフェノール、4−ビニルオキシエトキシ安息香酸、4−ビニルオキシエトキシフェノール、4−グリシジルオキシ安息香酸、4−グリシジルオキシフェノール、4−(オキセタニルメトキシ)安息香酸、4−(オキセタニルメトキシ)フェノール、4'−ビニルオキシ−4−ビフェニルカルボン酸、4'−ビニルオキシ−4−ヒドロキシビフェニル、4'−ビニルオキシエトキシ−4−ビフェニルカルボン酸、4'−ビニルオキシエトキシ−4−ヒドロキシビフェニル、4'−グリシジルオキシ−4−ビフェニルカルボン酸、4'−グリシジルオキシ−4−ヒドロキシビフェニル、4'−オキセタニルメトキシ−4−ビフェニルカルボン酸、4'−オキセタニルメトキシ−4−ヒドロキシビフェニル、6−ビニルオキシ−2−ナフタレンカルボン酸、6−ビニルオキシ−2−ヒドロキシナフタレン、6−ビニルオキシエトキシ−2−ナフタレンカルボン酸、6−ビニルオキシエトキシ−2−ヒドロキシナフタレン、6−グリシジルオキシ−2−ナフタレンカルボン酸、6−グリシジルオキシ−2−ヒドロキシナフタレン、6−オキセタニルメトキシ−2−ナフタレンカルボン酸、6−オキセタニルメトキシ−2−ヒドロキシナフタレン、4−ビニルオキシ桂皮酸、4−ビニルオキシエトキシ桂皮酸、4−グリシジルオキシ桂皮酸、4−オキセタニルメトキシ桂皮酸、4'−ビニルオキシ−4−スチルベンカルボン酸、4'−ビニルオキシ−3'−メトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4'−ビニルオキシ−4−ヒドロキシスチルベン、4'−ビニルオキシエトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4'−ビニルオキシエトキシ−3'−メトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4'−ビニルオキシエトキシ−4−ヒドロキシスチルベン、4'−グリシジルオキシ−4−スチルベンカルボン酸、4'−グリシジルオキシ−3'−メトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4'−グリシジルオキシ−4−ヒドロキシスチルベン、4'−オキセタニルメトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4'−オキセタニルメトキシ−3'−メトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4'−オキセタニルメトキシ−4−ヒドロキシスチルベンなどが好ましい。
【0041】
カチオン重合性基を有する構造単位(D)の主鎖型液晶性ポリエステルを構成する全構造単位に占める割合は、同様に構造単位(D)をカルボン酸あるいはフェノールとして仕込み組成中の重量割合で表した場合、通常1〜60%、好ましくは5〜50%の範囲である。1%よりも少ない場合には、配向保持能、機械的強度の向上が得られない恐れがあり、また60%を越える場合には、結晶性が上がることにより液晶温度範囲が狭まり、どちらの場合も好ましくない。
【0042】
(A)〜(D)の各構造単位は、それぞれ1つまたは2つのカルボキシル基あるいはフェノール性水酸基を有しているが、(A)〜(D)の有するカルボキシル基、フェノール性水酸基は、仕込みの段階においてそれぞれの官能基の当量数の総和を概ねそろえることが望ましい。すなわち、構造単位(D)が遊離のカルボキシル基を有する単位である場合には、((A)のモル数×2)=((B)のモル数×2)+((D)のモル数)、構造単位(D)が遊離のフェノール性水酸基を有する単位である場合には、((A)のモル数×2)+((D)のモル数)=((B)のモル数×2)なる関係を概ね満たすことが望ましい。この関係式から大きく外れる仕込み組成の場合には、カチオン重合に関わる単位以外のカルボン酸あるいはフェノール、もしくはそれらの誘導体が分子末端となることになり、十分なカチオン重合性が得られないばかりか、これら酸性の残基が存在することにより、プロセス上の望む段階以外で重合反応や分解反応が起きてしまうおそれがあり好ましくない。
【0043】
主鎖型液晶性ポリエステルは、(A)、(B)、(C)および(D)以外の構造単位を含有することができる。含有することができる他の構造単位としては、特に限定はなく当該分野で公知の化合物(モノマー)を使用することができる。例えば、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸およびこれら化合物にハロゲン基やアルキル基を導入した化合物や、ビフェノール、ナフタレンジオール、脂肪族ジオールおよびこれら化合物にハロゲン基やアルキル基を導入した化合物等を挙げることができる。
【0044】
また、主鎖型液晶性ポリエステルを構成する単位の原料として光学活性な化合物を用いた場合、該主鎖型液晶性ポリエステルにカイラルな相を付与せしめることが可能となる。かかる光学活性な化合物としては特に制限はないが、例えば、光学活性な脂肪族アルコール(CnH2n+1OH、ただしnは4から14の整数を表す。)、光学活性な脂肪族基を結合したアルコキシ安息香酸(CnH2n+1O−Ph−COOH、ただしnは4から14の整数、Phはフェニル基を表す。)、メントール、カンファー酸、ナプロキセン誘導体、ビナフトール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチルブタンジオール、2−クロロブタンジオール、酒石酸、メチルコハク酸、3−メチルアジピン酸などを挙げることができる。
【0045】
主鎖型液晶性ポリエステルの分子量は、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒(質量比60/40)中、30℃で測定した対数粘度ηが0.03〜0.50dl/gであることが好ましくより好ましくは0.05〜0.15dl/gである。ηが0.03dl/gより小さい場合には、主鎖型液晶性ポリエステルの溶液粘度が低く、フィルム化する際に均一な塗膜が得られない恐れがある。また、0.50dl/gより大きい場合には、液晶配向時に要する配向処理温度が高くなり、配向と架橋が同時に起こり配向性を低下させる危険性がある。
【0046】
本発明において、主鎖型液晶性ポリエステルの分子量制御は専ら仕込み組成により決定される。具体的には分子両末端を封印する形で反応する1官能性モノマー、すなわち前記した構造単位(D)を導入するための化合物の、全仕込み組成における相対的な含有量により、得られる主鎖型液晶性ポリエステルの平均的な重合度(構造単位(A)〜(D)の平均結合数)が決定される。したがって、所望の対数粘度を有する主鎖型液晶性ポリエステルを得るためには、仕込みモノマーの種類に応じて仕込み組成を調整する必要がある。
【0047】
主鎖型液晶性ポリエステルの合成方法としては、通常のポリエステルを合成する際に用いられる方法を採ることができ、特に限定されるものではない。例えば、カルボン酸単位を酸クロリドやスルホン酸無水物などに活性化し、それを塩基の存在下でフェノール単位と反応させる方法(酸クロリド法)、カルボン酸単位とフェノール単位をDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)などの縮合剤を用いて直接縮合させる方法、フェノール単位をアセチル化して、これとカルボン酸単位とを溶融条件下で脱酢酸重合する方法などを用いることが出来る。ただし、溶融条件下での脱酢酸重合を用いる場合には、カチオン重合性基を有するモノマー単位が反応条件下で重合や分解反応を起こすおそれがあるため、反応条件を厳密に制御する必要がある場合が多く、場合によっては適当な保護基を用いたり、あるいは一度別な官能基を有する化合物を反応させておいてから、後でカチオン重合性基を導入するなどの方法を採ることが望ましい場合もある。また、重合反応により得られた粗主鎖型液晶性ポリエステルを、再結晶、再沈などの方法により精製してもよい。
【0048】
このようにして得られた主鎖型液晶性ポリエステルは、NMR(核磁気共鳴法)などの分析手段により、それぞれのモノマーがどのような比率で主鎖型液晶性ポリエステル中に存在するかを同定することができる。特に、カチオン重合性基の量比から、主鎖型液晶性ポリエステルの平均結合数を算出する事ができる。
【0049】
前記カチオン重合性基を含む主鎖型液晶性ポリエステルに他の化合物を配合することも、本発明の範囲を超えない限り可能である。例えば、本発明に用いる主鎖型液晶性ポリエステルと混和しうる他の高分子化合物や各種低分子化合物等を添加しても良い。かかる低分子化合物は、液晶性を有していても有していなくとも良く、架橋性の主鎖型液晶性ポリエステルと反応できる重合性基を有していてもいなくとも良い。重合性基を有する液晶性化合物を用いることが好ましく、例えば以下のものを例示できる。
【0050】
【化7】
【0051】
ここで、nは2〜12の整数を、また−V−および−Wはそれぞれ以下のいずれかの基を表す。
−V−: 単結合、−O−、−O−CmH2m−O−(ただし、mは2〜12の整数)
−W:
【化8】
【0052】
なお、添加する高分子化合物や低分子化合物が光学活性である場合、組成物としてカイラルな液晶相を誘起させることができる。かかる組成物は、ねじれネマチック配向構造やコレステリック配向構造を有するフィルムの製造に利用することができる。
【0053】
側鎖型液晶ポリマーとしては、前述のようにポリ(メタ)アクリレート、ポリマロネート、ポリシロキサン等が挙げられるが、中でも下記一般式(1)で表される反応性基を結合したポリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【化9】
【0054】
式(1)において、R3は、それぞれ独立に、水素またはメチル基を表し、R4は、それぞれ独立に、水素、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シアノ基、ブロモ基、クロロ基、フルオロ基またはカルボキシル基を表し、R5は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基を表し、R6は、炭素数1から24までの炭化水素基を表し、L2は、それぞれ独立に、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−CH=CH−または−C≡C−を表し、pは、1から10までの整数を表し、qは、0から10までの整数を表し、a、b、c、d、eおよびfは、ポリマー中の各ユニットのモル比(a+b+c+d+e+f=1.0、ただし、c+d+e=0ではない)を表す。
【0055】
式(1)で表される側鎖型高分子液晶性化合物を構成する各成分のモル比は、a+b+c+d+e+f=1.0、c+d+e=0ではなく、かつ、液晶性を示すことが必要である。この要件を満たせば各成分のモル比は任意でよいが、以下のとおりであることが好ましい。
a:好ましくは0〜0.80、より好ましくは0.05〜0.50
b:好ましくは0〜0.90、より好ましくは0.10〜0.70
c:好ましくは0〜0.50、より好ましくは0.10〜0.30
d:好ましくは0〜0.50、より好ましくは0.10〜0.30
e:好ましくは0〜0.50、より好ましくは0.10〜0.30
f:好ましくは0〜0.30、より好ましくは0.01〜0.10
【0056】
これらのポリ(メタ)アクリレート中の各成分は、上記の条件を満たせば、6種類の成分すべてが存在する必要もない。
また、R4は、好ましくは、水素、メチル基、ブチル基、メトキシ基、シアノ基、ブロモ基、フルオロ基であり、特に好ましくは、水素、メトキシ基またはシアノ基であり、L2は、好ましくは、単結合、−O−、−O−CO−または−CO−O−であり、R6は、好ましくは、炭素数2、3、4、6、8および18の炭化水素基を表す。
さらに、一般式(1)で表される側鎖型高分子液晶性化合物は、各成分a〜fのモル比や配向形態により複屈折率が変化するが、ネマチック配向をとった場合の複屈折率は0.001〜0.300であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.25である。
【0057】
上記の側鎖型液晶ポリマーの各成分に該当するそれぞれの(メタ)アクリル化合物は、通常の有機化学の合成方法により得ることができる。オキセタニル基を有する(メタ)アクリル化合物は、後述する式(7)、(8)および(9)に該当する化合物の合成に類似した方法により容易に得ることができる。
【0058】
上記の側鎖型液晶ポリマーは、各成分に該当する上記方法で得られたそれぞれの(メタ)アクリル化合物の(メタ)アクリル基をラジカル重合またはアニオン重合により共重合することにより容易に合成することができる。重合条件は特に限定されるものではなく、通常の条件を採用することができる。
【0059】
ラジカル重合の例としては、各成分に該当する(メタ)アクリル化合物をジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの溶媒に溶かし、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や過酸化ベンゾイル(BPO)などを開始剤として、60〜120℃で数時間反応させる方法が挙げられる。また、液晶相を安定に出現させるために、臭化銅(I)/2,2’−ビピリジル系や2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシ・フリーラジカル(TEMPO)系などを開始剤としたリビングラジカル重合を行い、分子量分布を制御する方法も有効である。これらのラジカル重合は脱酸素条件下に行う必要がある。
【0060】
アニオン重合の例としては、各成分に該当する(メタ)アクリル化合物をテトラヒドロフラン(THF)などの溶媒に溶かし、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、グリニャール試薬などの強塩基を開始剤として反応させる方法が挙げられる。また、開始剤や反応温度を最適化することでリビングアニオン重合とし、分子量分布を制御することもできる。これらのアニオン重合は、脱水かつ脱酸素条件で行う必要がある。
【0061】
側鎖型液晶ポリマーは、重量平均分子量が1,000〜200,000であるものが好ましく、3,000〜50,000のものが特に好ましい。この範囲外では強度が不足したり、配向性が悪化したりして好ましくない。
【0062】
本発明において、液晶性組成物は下記一般式(2)で表されるジオキセタン化合物を含有することが好ましい。
【化10】
【0063】
式(2)において、R7は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基を表し、L3は、それぞれ独立に、単結合または−(CH2)n−(nは1〜12の整数)を表し、X1は、それぞれ独立に、単結合、−O−、−O−CO−または−CO−O−を表し、M1は、式(3)または式(4)で表されるいずれかであり、式(3)および式(4)中のP1は、それぞれ独立に式(5)から選ばれる基を表し、P2は式(6)から選ばれる基を表し、L4は、それぞれ独立に単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−O−CO−または−CO−O−を表す。
−P1−L4−P2−L4−P1− (3)
−P1−L4−P1− (4)
【化11】
【化12】
【0064】
式(5)および式(6)において、Etはエチル基を、iPrはイソプロピル基を、nBuはノルマルブチル基を、tBuはターシャリーブチル基をそれぞれ表す。
より具体的には、M1基から見て左右のオキセタニル基を結合している連結基は異なっても(非対称型)同一でも(対称型)よく、特に2つのL3が異なる場合や他の連結基の構造によっては液晶性を示さないこともあるが、使用には制約とならない。
一般式(2)で表される化合物は、M1、L3およびX1の組み合わせから多くの化合物を例示することができるが、好ましくは、下記の化合物を挙げることができる。
【化13】
【0065】
これらの化合物は有機化学における通常の合成方法に従って合成することができ、合成方法は特に限定されるものではない。
合成にあたっては、オキセタニル基がカチオン重合性を有するため、強い酸性条件下では、重合や開環などの副反応を起こすことを考慮して、反応条件を選ぶ必要がある。なお、オキセタニル基は類似のカチオン重合性官能基であるオキシラニル基などと比べて、副反応を起こす可能性が低い。さらに、類似したアルコール、フェノール、カルボン酸などの各種化合物をつぎつぎに反応させることもあり、適宜保護基の活用を考慮してもよい。
【0066】
より具体的な合成方法としては、例えば、ヒドロキシ安息香酸を出発化合物として、ウィリアムソンのエーテル合成法等によりオキセタニル基を結合させ、次いで得られた化合物と本発明に適したジオールとを、酸クロリド法やカルボジイミドによる縮合法等を用いて結合させる方法や、逆に予めヒドロキシ安息香酸の水酸基を適当な保護基で保護し、本発明に適したジオールと縮合後、保護基を脱離させ、適当なオキセタニル基を有する化合物(オキセタン化合物)、例えばハロアルキルオキセタン等と水酸基とを反応させる方法などが挙げられる。
【0067】
オキセタン化合物と水酸基との反応は、用いられる化合物の形態や反応性により適した反応条件を選定すればよいが、通常、反応温度は−20℃〜180℃、好ましくは10℃〜150℃が選ばれ、反応時間は10分〜48時間、好ましくは30分〜24時間である。これらの範囲外では反応が充分に進行しなかったり、副反応が生じたりして好ましくない。また、両者の混合割合は、水酸基1当量につき、オキセタン化合物0.8〜1.2当量が好ましい。
【0068】
本発明で用いる液晶材料においては、前記側鎖型液晶ポリマーの他に、液晶性を損なわずに混和し得る種々の化合物を含有することができる。含有することができる化合物としては、オキセタニル基、エポキシ基、ビニルエーテル基などのカチオン重合性官能基を有する化合物、フィルム形成能を有する各種の高分子物質、液晶性を示す各種の低分子液晶性化合物や高分子液晶性化合物などが挙げられる。前記の側鎖型液晶ポリマーを組成物として用いる場合、組成物全体に占める前記の側鎖型液晶ポリマーの割合は、10質量%以上、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。側鎖型液晶ポリマーの含有量が10質量%未満ではフィルム形成能が不足したり組成物中に占める重合性基濃度が低くなり、重合後の機械的強度が不十分となるため好ましくない。
【0069】
また前記液晶材料は配向処理された後、オキセタニル基をカチオン重合させて架橋することにより、当該液晶状態を固定化することができる。このため、液晶材料中に、光や熱などの外部刺激でカチオンを発生する光カチオン発生剤および/または熱カチオン発生剤を含有させておくことが好ましい。また必要によっては各種の増感剤を併用してもよい。
【0070】
光カチオン発生剤とは、適当な波長の光を照射することによりカチオンを発生できる化合物を意味し、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系などを例示することが出来る。これら化合物の対イオンとしては、アンチモネート、フォスフェート、ボレートなどが好ましく用いられる。具体的な化合物としては、Ar3S+SbF6−、Ar3P+BF4−、Ar2I+PF6−(ただし、Arはフェニル基または置換フェニル基を示す。)などが挙げられる。また、スルホン酸エステル類、トリアジン類、ジアゾメタン類、β−ケトスルホン、イミノスルホナート、ベンゾインスルホナートなども用いることができる。
【0071】
熱カチオン発生剤とは、適当な温度に加熱されることによりカチオンを発生できる化合物であり、例えば、ベンジルスルホニウム塩類、ベンジルアンモニウム塩類、ベンジルピリジニウム塩類、ベンジルホスホニウム塩類、ヒドラジニウム塩類、カルボン酸エステル類、スルホン酸エステル類、アミンイミド類、五塩化アンチモン−塩化アセチル錯体、ジアリールヨードニウム塩−ジベンジルオキシ銅、ハロゲン化ホウ素−三級アミン付加物などを挙げることができる。
【0072】
これらのカチオン発生剤の液晶材料中への添加量は、用いる側鎖型液晶性高分子物質を構成するメソゲン部分やスペーサ部分の構造や、オキセタニル基当量、液晶の配向条件などにより異なるため一概には言えないが、側鎖型液晶性高分子物質に対し、通常100質量ppm〜20質量%、好ましくは1000質量ppm〜10質量%、より好ましくは0.2質量%〜7質量%の範囲である。100質量ppmよりも少ない場合には、発生するカチオンの量が十分でなく重合が進行しないおそれがあり、また20質量%よりも多い場合には、液晶フィルム中に残存するカチオン発生剤の分解残存物等が多くなり耐光性などが悪化するおそれがあるため好ましくない。
【0073】
次に配向基板について説明する。
配向基板としては、まず平滑な平面を有するものが好ましく、有機高分子材料からなるフィルムやシート、ガラス板、金属板などを挙げることができる。コストや連続生産性の観点からは有機高分子からなる材料を用いることが好ましい。有機高分子材料の例としては、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムが挙げられる。またポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、ポリシクロオレフィン、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムも挙げられる。これらはブレンド物であってもよい。
これらのなかでも、光学フィルムとして用いられるトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン等のプラスチックフィルムが賞用される。有機高分子材料のフィルムとしては、特にゼオノア(商品名,日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(商品名,日本ゼオン(株)製)、アートン(商品名,JSR(株)製)などのノルボルネン構造を有するポリマー物質からなるプラスチックフィルムが光学的にも優れた特性を有するので好ましい。また金属フィルムとしては、例えばアルミニウムなどから形成される当該フィルムが挙げられる。
【0074】
前述の液晶材料を用い、安定してホメオトロピック配向を得るためには、これらの基板を構成する材料が長鎖(通常炭素数4以上、好ましくは8以上)のアルキル基やフッ素化炭化水素基を有しているか、基板表面にこれらの基を有する化合物の層を有することがより好ましい。なお、これら有機高分子材料は単独で基板として用いても良いし、他の基板の上に薄膜として形成させていても良い。
【0075】
長鎖(通常炭素数4以上、好ましくは8以上)のアルキル基やフッ素化炭化水素基を有する化合物の層(配向膜)の形成工程について説明する。
配向膜を形成する材料は溶液状態にしての塗布が、配向膜厚や表面性の制御から好ましい。当該溶液は、当該材料を溶解できる溶媒を用いて適宜行うことができる。例えばPVAの溶液を調製する溶媒は、当該PVAを溶解できる溶媒であれば特に制限はなく、通常は水やメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールやこれらの混合物が使用される。
なお、溶解に当たっては塗布や液晶の配向に悪影響を及ぼさない各種の添加剤を添加してもよい。また、溶解を促進するために加温してもよい。
【0076】
基材上に配向膜を形成するために使用される塗布方式は特に制限はなく、特に大面積の配向膜の塗布方法は、やわらかい樹脂版を用いるフレキソ印刷方式、ディスペンサー方式、グラビアコート方式、マイクログラビア方式、スクリーン印刷方式、リップコート方式、ダイコート方式など挙げることができる。これらの中でグラビアコート方式、リップコート方式やダイコート方式が好ましい。
塗布された配向膜は、必要により乾燥を行う。乾燥温度は、通常、PVAの場合はその耐熱性から限定されるが、目的によってはそれ以上であってもよい。一般には、50℃〜180℃、好ましくは80℃〜160℃である。また乾燥時間も特に制限はないが、通常は10秒〜60分、好ましくは1分〜30分がよい。被乾燥膜と乾燥装置との相対的な移動速度は相対風速で60m/分〜1200m/分が好ましい。
【0077】
液晶の分野においては、基板に対して布等で一定方向に擦るラビング処理を行うことが一般的であるが、本発明に使用されるホメオトロピック配向液晶フィルムは、面内の異方性が基本的に生じない配向構造であるため、必ずしもラビング処理を必要としない。しかしながら、液晶材料を塗布したときのはじき抑制の観点からは弱いラビング処理を施すことがより好ましい。ラビング条件を規定する重要な設定値としては周速比がある。これはラビング布をロールに巻きつけて回転させつつ基板を擦る場合の、布の移動速度と基板の移動速度の比を表す。本発明においては弱いラビング処理とは、通常周速比が50以下、より好ましくは25以下、特に好ましくは10以下である。周速比が50より大きい場合、ラビングの効果が強すぎて液晶材料が完全に垂直に配向しきれず、垂直方向より面内方向に倒れた配向となる恐れがある。
【0078】
次に、本発明に使用されるホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法について説明する。液晶フィルム製造の方法としてはこれらに限定されるものではないが、前述の液晶材料を前述の配向基板上に展開し、当該液晶材料を配向させた後、光照射および/または加熱処理することにより当該配向状態を固定化することにより製造することができる。
液晶材料を配向基板上に展開して液晶材料層を形成する方法としては、液晶材料を溶融状態で直接配向基板上に塗布する方法や、液晶材料の溶液を配向基板上に塗布後、塗膜を乾燥して溶媒を留去させる方法が挙げられる。
【0079】
溶液の調製に用いる溶媒に関しては、本発明の液晶材料を溶解でき適当な条件で留去できる溶媒であれば特に制限はなく、一般的にアセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ブトキシエチルアルコール、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノールなどのエーテルアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチルなどのエステル類、フェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系などやこれらの混合系が好ましく用いられる。また、配向基板上に均一な塗膜を形成するために、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤などを溶液に添加してもよい。
さらに、前述の液晶性高分子化合物の配向の固定化を容易ならしめるために、液晶性高分子化合物に結合されている重合可能な基と同一の反応性を有する基を1分子内に2個以上有する低分子化合物(液晶性、非液晶性を問わない)や接着性を向上させうるような各種化合物を添加することもできる。
【0080】
液晶材料を直接塗布する方法でも、溶液を塗布する方法でも、塗布方法については、塗膜の均一性が確保される方法であれば、特に限定されることはなく公知の方法を採用することができる。例えば、スピンコート法、ダイコート法、カーテンコート法、ディップコート法、ロールコート法などが挙げられる。
液晶材料の溶液を塗布する方法では、塗布後に溶媒を除去するための乾燥工程を入れることが好ましい。この乾燥工程は、塗膜の均一性が維持される方法であれば、特に限定されることなく公知の方法を採用することができる。例えば、ヒーター(炉)、温風吹きつけなどの方法が挙げられる。
【0081】
液晶フィルムの膜厚は、液晶表示装置の方式や種々の光学パラメーターに依存することから一概には言えないが、通常0.2μm〜10μm、好ましくは0.3μm〜5μm、さらに好ましくは0.5μm〜2μmである。膜厚が0.2μmより薄い場合、十分な視野角改良あるいは輝度向上効果を得ることができない恐れがある。また10μmを越えると、液晶表示装置が不必要に色付く等の恐れがある。
【0082】
続いて、配向基板上に形成された液晶材料層を、熱処理などの方法で液晶配向を形成し、光照射および/または加熱処理で硬化を行い固定化する。最初の熱処理では、使用した液晶材料の液晶相発現温度範囲に加熱することで、該液晶材料が本来有する自己配向能により液晶を配向させる。熱処理の条件としては、用いる液晶材料の液晶相挙動温度(転移温度)により最適条件や限界値が異なるため一概には言えないが、通常10〜250℃、好ましくは30℃〜160℃の範囲であり、該液晶材料のガラス転移点(Tg)以上の温度、さらに好ましくはTgより10℃以上高い温度で熱処理するのが好ましい。あまり低温では、液晶配向が充分に進行しないおそれがあり、また高温では液晶材料中のカチオン重合性反応基や配向基板に悪影響を与えるおそれがある。また、熱処理時間については、通常3秒〜30分、好ましくは10秒〜20分の範囲である。3秒より短い熱処理時間では、液晶配向が充分に完成しないおそれがあり、また30分を超える熱処理時間では、生産性が悪くなるため、どちらの場合も好ましくない。 該液晶材料層を熱処理などの方法で液晶配向を形成したのち、液晶配向状態を保ったまま液晶材料を組成物中のオキセタニル基の重合反応により硬化させる。硬化工程は、完成した液晶配向を硬化(架橋)反応により液晶配向状態を固定化し、より強固な膜に変性することを目的にしている。
【0083】
本発明の液晶材料は重合性のオキセタニル基を持つため、その反応基の重合(架橋)には、カチオン重合開始剤(カチオン発生剤)を用いるのが好ましいことは前述のとおりである。また、重合開始剤としては、熱カチオン発生剤より光カチオン発生剤の使用が好ましい。
光カチオン発生剤を用いた場合、光カチオン発生剤の添加後、液晶配向のための熱処理までの工程を暗条件(光カチオン発生剤が解離しない程度の光遮断条件)で行えば、液晶材料は配向段階までは硬化することなく、充分な流動性をもって液晶配向することができる。この後、適当な波長の光を発する光源からの光を照射することによりカチオンを発生させ、液晶材料層を硬化させる。
【0084】
光照射の方法としては、用いる光カチオン発生剤の吸収波長領域にスペクトルを有するようなメタルハライドランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、アークランプ、レーザーなどの光源からの光を照射し、光カチオン発生剤を開裂させる。1平方センチメートルあたりの照射量としては、積算照射量として通常1〜2000mJ、好ましくは10〜1000mJの範囲である。ただし、光カチオン発生剤の吸収領域と光源のスペクトルが著しく異なる場合や、液晶材料自身に光源からの光の吸収能がある場合などはこの限りではない。これらの場合には、適当な光増感剤や、吸収波長の異なる2種以上の光カチオン発生剤を混合して用いるなどの方法を採ることもできる。
光照射時の温度は、該液晶材料が液晶配向をとる温度範囲である必要がある。また、硬化の効果を充分にあげるためには、該液晶材料のTg以上の温度で光照射を行うのが好ましい。
【0085】
以上のような工程により製造した液晶材料層は、充分強固な膜となっている。具体的には、硬化反応によりメソゲンが3次元的に結合され、硬化前と比べて耐熱性(液晶配向保持の上限温度)が向上するのみでなく、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐クラック性などの機械的強度に関しても大幅に向上する。
【0086】
なお、配向基板として、光学的に等方でない、あるいは得られる液晶フィルムが最終的に目的とする使用波長領域において不透明である、もしくは配向基板の膜厚が厚すぎて実際の使用に支障を生じるなどの問題がある場合、配向基板上で形成された形態から、偏光板、目的とする使用波長領域で障害とならないような基板や位相差機能を有する延伸フィルムに転写した形態も使用しうる。転写方法としては公知の方法を採用することができる。例えば、特開平4−57017号公報や特開平5−333313号公報に記載されているように液晶フィルム層を粘着剤もしくは接着剤を介して、配向基板とは異なる基板を積層した後に、該積層体から配向基板を剥離することで液晶フィルムのみを転写する方法等を挙げることができる。
転写に使用する粘着剤もしくは接着剤は、後述のように光学グレードのものであれば特に制限はなく、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系など一般に用いられているものを用いることができる。
【0087】
以上のようにして得られるホメオトロピック配向液晶フィルム層は、当該液晶層の光学位相差を垂直入射から傾けた角度で測定することによって定量化することができる。ホメオトロピック配向液晶層の場合、この位相差値は垂直入射について対称的である。
光学位相差の測定には数種の方法を利用することができ、例えば自動複屈折測定装置(王子計測機器(株)製)および偏光顕微鏡を利用することができる。このホメオトロピック配向液晶層はクロスニコル偏光子間で黒色に見える。このようにしてホメオトロピック配向性を評価した。
【0088】
本発明に使用されるホメオトロピック配向液晶フィルムは、液晶フィルムの厚さをd1、液晶フィルム面内の主屈折率をNx1およびNy1、厚さ方向の主屈折率をNz1、かつ、Nz1>Nx1≧Ny1とした場合に、面内のリターデーション値(Re1=(Nx1−Ny1)×d1[nm])および厚さ方向のリターデーション値(Rth1=(Nx1−Nz1)×d1[nm])が、以下の[1]および[2]を満たすことが好ましい。
[1]0nm≦Re1≦20nm
[2]−500nm≦Rth1≦−30nm
【0089】
ホメオトロピック配向液晶フィルムの光学パラメータであるRe1値、Rth1値は、液晶表示装置の方式や種々の光学パラメーターに依存することから一概には言えないが、550nmの単色光に対して、ホメオトロピック配向液晶フィルムの面内のリターデーション値(Re1)は、通常0nm〜20nm、好ましくは0nm〜10nm、さらに好ましくは0nm〜5nmの範囲であり、かつ、厚さ方向のリターデーション値(Rth1)は、通常−500nm〜−30nm、好ましくは−400nm〜−50nm、さらに好ましくは−400nm〜−100nmに制御されたものである。
【0090】
前記Re1値及びRth1値を上記範囲にすることにより、液晶表示装置の視野角改良フィルムとしては、液晶表示の色調補正を行いながら視野角を広げることが可能となる。Re1値が20nmより大きい場合、大きい面内の位相差値の影響で、液晶表示装置の正面特性を悪化させる恐れがある。また、Rth1値が−30nmより大きいあるいは−500nmより小さい場合には、十分な視野角改良効果が得られないかあるいは、斜めから見たときに不必要な色付きが生じる恐れがある。
【0091】
またホメオトロピック配向液晶フィルムは、下記[5]および[6]で表される条件を満たすことが好ましい。
[5] −0.5≦Δn≦−0.0005
[6] Δn=Nx1−Nz1
【0092】
前記[5]および[6]において、Δnは、前記ホメオトロピック配向液晶フィルム(複屈折層)の厚さ方向の複屈折率を示し、Nx1、Ny1およびNz1は前述のように、前記ホメオトロピック配向液晶フィルムにおける3つの軸方向における屈折率をそれぞれ示す。なお、生産性の向上や、前記複屈折層を含む光学フィルムの薄型化の点から、より好ましくは−0.2≦Δn≦−0.005 である。
【0093】
また、ホメオトロピック配向液晶フィルムに替えて厚さ方向に正の1軸性を有する光学異方素子として延伸フィルムを用いようとしても厚み方向の延伸には限界があるため、厚み方向の位相差を広範囲に制御することができない。また熱収縮フィルムにより、長尺フィルムを熱収縮させて厚み方向に延伸させる手法も用いられているが、厚さ方向の複屈折率は0.003以下で得られるフィルムの厚みは50〜100μm程度あり、元の長尺フィルムよりも厚みが増してしまい、液晶表示装置の薄型化要求に伴う楕円偏光板全体の薄膜化の要求に対応することは困難である
楕円偏光板の膜厚は近年の薄型化要求から望ましくは400μm以下、特に望ましくは300μm以下がよい。
【0094】
次に、本発明の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板を用いた垂直配向型液晶表示装置について説明する。
本発明の垂直配向型液晶表示装置は、電極を備えた1対の基板間に、電圧無印加時に基板表面に対して垂直配向する液晶分子を含む垂直配向型液晶セルと、前記垂直配向型液晶セル基板の少なくとも片側に本発明の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板のホメオトロピック配向液晶フィルム側が向かうよう配置し、前記垂直配向型液晶セル基板と前記楕円偏光板との間に、面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子を少なくとも1枚配置したことを特徴とするものである。
【0095】
前記第1の光学異方素子は面内で1/4波長の位相差を示す光学素子と面内で1/2波長の位相差を示す第2の光学異方素子からなる広帯域1/4波長板といわれる光学素子からなっていてもよい。また前記第1の光学異方素子と前記垂直配向型液晶セルとの間に、少なくとも1枚の厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方素子を配置することが更なる広視野角化の観点から好ましく、また前記垂直配向型液晶セルと直線偏光板の間に、面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子を配置することが好ましい。
【0096】
本発明の楕円偏光板を構成する直線偏光板としては、通常、偏光子の片側または両側に保護フィルムを有するものが使用される。偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用でき、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムを延伸して二色性材料(沃素、染料)を吸着・配向したものが好適に用いられる。偏光子の厚さも特に制限されないが、5〜80μm程度が一般的である。
【0097】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよく、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0098】
前記偏光子の片側または両側に設けられている保護フィルムには、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。前記保護フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、あるいは前記ポリマーのブレンド物などが保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。その他、アクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型ないし紫外線硬化型樹脂などをフィルム化したものなどが挙げられる。保護フィルムの厚さは、一般には500μm以下であり、1〜300μmが好ましい。特に5〜200μmとするのが好ましい。
【0099】
保護フィルムとしては、偏光特性や耐久性などの点より、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーが好ましい。特にトリアセチルセルロースフィルムが好適である。なお、偏光子の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。前記偏光子と保護フィルムとは通常、粘着剤等を介して密着している。
接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。
【0100】
前記保護フィルムとしては、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものを用いることができる。
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
【0101】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えば、サンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護層とは別体のものとして設けることもできる。
【0102】
直線偏光板に1/4波長板を組み合わせることにより円偏光板が形成される。円偏光板は、1/4波長板により直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える機能を有する。
垂直配向型液晶セルの両側に直線偏光板を有し、直線偏光板と垂直配向型液晶セルとの間に面内で1/4波長の位相差を有する第1の光学異方素子を有することにより、電圧無印加時には液晶層の観測方向の位相差が0のため上下の偏光板を直交にすることにより暗表示が可能となり、電圧印加時には観測方向の位相差が生じ明表示が可能となる。この場合、1/4波長の位相差を有する第1の光学異方素子の遅相軸と直線偏光板の吸収軸とのなす角度が45度であることにより最も簡単な構成で液晶層に円偏光を入手させることができる。
また、透過機能と反射機能を兼ね備えた半透過反射型の垂直配向型液晶表示装置の場合は、反射時に良好な表示特性を得るため、全波長において1/4波長の位相差を有する第1の光学異方素子を用いるか、直線偏光板と1/4波長板との間に、面内で1/2波長の位相差を有する第2の光学異方素子を用いることもできる。
【0103】
次に、面内で1/4波長の位相差を有する第1の光学異方素子あるいは1/2波長の位相差を有する第2の光学異方素子並びに面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子について説明する。
これらの光学異方素子は所望の位相差機能を有すればよく、例えば、ポリマーフィルムを一軸延伸または二軸延伸したもの、Z軸配向処理したものや液晶性を示す材料を塗工・配向させた配向フィルム膜、等が挙げられる。
【0104】
前記光学異方素子としては、適宜なポリマーからなるフィルムを一軸あるいは二軸延伸処理する手法や特開平5−157911号公報に示されるような熱収縮フィルムにより長尺フィルムの幅方向を熱収縮させて厚み方向に位相差を大きくする手法により製造した複屈折フィルムが好ましく、上記原料としては例えば有機高分子材料からなるフィルムやシートを挙げることができる。例えば、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムが挙げられる。またポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムも挙げられる。さらにイミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルムなども挙げられる。これらのなかでも水素結合性が高く、光学フィルムとして用いられるトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン等のプラスチックフィルムが賞用される。有機高分子材料のフィルムとしては、特に、ゼオノア(商品名,日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(商品名,日本ゼオン(株)製)、アートン(商品名,JSR(株)製)などのノルボルネン構造を有するポリマー物質からなるプラスチックフィルムが好適に用いられる。上記記載のフィルムを延伸処理してなる位相差フィルムが光学的にも優れた特性を有する。
【0105】
液晶ポリマーなどの液晶材料からなる配向フィルムとしては、均一でモノドメインなネマチック配向性を示し、かつその配向状態を容易に固定化できる液晶性高分子を基板上、もしくは配向膜を塗布した基板上で熱処理し、均一、モノドメインなネマチック構造を形成させたのち冷却することによって液晶状態における配向を損なうことなく固定化して製造される配向フィルム膜や、前記液晶ポリマーに光重合性液晶化合物を配合して液晶性組成物とし、基板上もしくは配向膜を塗布した基板上に塗布・配向し重合させた配向フィルム膜を挙げることができる。
【0106】
面内方向にx方向、y方向を取り、厚さ方向をz方向とする場合、正の1軸性光学異方素子は、屈折率としてnx>ny=nzの関係を有する。また、正の2軸性光学異方素子は、屈折率としてnx>nz>nyの関係を有する。負の1軸性光学異方素子は、屈折率としてnx=ny>nzの関係を有する。負の2軸性光学異方素子は、屈折率としてnx>ny>nzの関係を有する。
2軸性をNZ係数=(nx−nz)/(nx−ny)で定義した場合、NZ>1が負の2軸、NZ=1が正の1軸、NZ<1が正の2軸と分類できる。
【0107】
面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子は、第1の光学異方素子の厚さをd3、第1の光学異方素子面内の主屈折率をNx3およびNy3、厚さ方向の主屈折率をNz3、かつ、Nx3>Ny3とした場合に、面内のリターデーション値(Re3=(Nx3−Ny3)×d3[nm])が80〜170nmを有し、第1の光学異方素子のNZ係数(=(Nx3−Nz3)/(Nx3−Ny3))をNZ3とした場合、−1<NZ3<4の関係を有するものが好ましい。
【0108】
第1の光学異方素子の光学パラメータであるRe3値、NZ3値は、液晶表示装置の方式や種々の光学パラメーターに依存することから一概には言えないが、550nmの単色光に対して、第1の光学異方素子面内のリターデーション値(Re3)は、通常80nm〜170nm、好ましくは100nm〜150nm、さらに好ましくは120nm〜140nmの範囲であり、かつ、NZ3値は、−1<NZ3<4、好ましくは0.5<NZ3<3、さらに好ましくは1≦NZ3<3に制御されたものである。
【0109】
面内で1/2波長の位相差を示す第2の光学異方素子は、第2の光学異方素子の厚さをd4、第2の光学異方素子面内の主屈折率をNx4およびNy4、厚さ方向の主屈折率をNz4、かつ、Nx4>Ny4とした場合に、面内のリターデーション値(Re4=(Nx4−Ny4)×d4[nm])が200〜350nmを有し、第2の光学異方素子のNZ係数(=(Nx4−Nz4)/(Nx4−Ny4))をNZ4とした場合、−1<NZ4<4の関係を有するものが好ましい。
【0110】
第2の光学異方素子の光学パラメータであるRe4値、NZ4値は、液晶表示装置の方式や種々の光学パラメーターに依存することから一概には言えないが、550nmの単色光に対して、第2の光学異方素子の面内のリターデーション値(Re4)は、通常200nm〜350nm、好ましくは250nm〜300nm、さらに好ましくは260nm〜280nmの範囲であり、かつ、NZ4値は、−2<NZ4<3、好ましくは−1<NZ4<2、さらに好ましくは0≦NZ4<1.5に制御されたものである。
【0111】
前記Re3,Re4値並びにNZ3,NZ4値を上記範囲にすることにより、液晶表示装置の視野角改良フィルムとしては、液晶表示の色調補正を行いながら視野角を広げることが可能となる。Re3およびRe4値が上記範囲を外れた場合、面内位相差値のずれの影響で、液晶表示装置の正面特性を悪化させる恐れがある。また、NZ3およびNZ4値が上記範囲を外れた場合には、十分な視野角改良効果が得られないかあるいは、斜めから見たときに不必要な色付きが生じる恐れがある。
【0112】
面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子は、第4の光学異方素子の厚さをd5、第4の光学異方素子面内の主屈折率をNx5およびNy5とした場合に、面内のリターデーション値(Re5=(Nx5−Ny5)×d5[nm])が50nm〜350nmを有するものが好ましい。
第4の光学異方素子の光学パラメータであるRe5値は、液晶表示装置の方式や種々の光学パラメーターに依存することから一概には言えないが、550nmの単色光に対して、第4の光学異方素子の面内のリターデーション値(Re5)は、通常50nm〜350nm、好ましくは70nm〜300nm、さらに好ましくは90nm〜280nmの範囲に制御されたものである。Re5値が上記範囲を外れた場合には、十分な視野角改良効果が得られないかあるいは、斜めから見たときに不必要な色付きが生じる恐れがある。
【0113】
次に、厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方素子について説明する。
前記第3の光学異方素子としては、特に限定されないが、非液晶材料としては、耐熱性、耐薬品性、透明性に優れ、剛性にも富むことから、例えば、セルローストリアシレート、ゼオネックス、ゼオノア(共に日本ゼオン(株)製)やアートン(JSR(株)製)のようなポリオレフィン類、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーが好ましい。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性であることから、ポリイミドが特に好ましい。前記ポリイミドとしては、例えば、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミドが好ましい。具体的には、例えば、特表2000−511296号公報に開示された、9,9−ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物、具体的には、下記式(8)に示す繰り返し単位を1つ以上含むポリマーが使用できる。
【0114】
【化14】
【0115】
前記式(8)中、R3〜R6は、水素、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子または炭素数1〜10のアルキル基で置換されたフェニル基、および炭素数1〜10のアルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。好ましくは、R3〜R6は、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子または炭素数1〜10のアルキル基で置換されたフェニル基、および炭素数1〜10のアルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。
【0116】
前記式(8)中、Zは、例えば、炭素数6〜20の4価芳香族基であり、好ましくは、ピロメリット基、多環式芳香族基、多環式芳香族基の誘導体、または下記式(9)で表される基である。
【0117】
【化15】
【0118】
前記式(9)中、Z’は、例えば、共有結合、C(R7)2基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C2H5)2基、または、NR8基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。また、wは、1から10までの整数を表す。R7は、それぞれ独立に、水素またはC(R9)3である。R8は、水素、炭素原子数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。R9は、それぞれ独立に、水素、フッ素、または塩素である。
【0119】
また液晶材料としては、コレステリック液晶性ポリマーなどの液晶材料からなるコレステリック配向フィルム、コレステリック配向層をフィルムにて支持したもの、およびディスコティック液晶層等が挙げられる。まずコレステリック配向フィルムは熱処理等適宜選択される手法によってコレステリックらせん軸がフィルム法線方向に存在するような均一なプラナー配向したものが好ましく、また選択反射波長λsが300nm以下であることが好ましい。
【0120】
また、コレステリック配向を実現する材料としては、液晶性ポリマーに限らず、単体でコレステリック配向を実現できる重合性基を有する液晶モノマー分子、もしくは重合性基を有する液晶性モノマーとキラル化合物の混合物等も好ましく用いられる。これらの材料を熱処理等適宜選択される手法によってコレステリック配向させた後、重合性基を熱、光等好適に用いられる手段によって硬化させ、コレステリック配向を固定化して用いることも出来る。
【0121】
また、負の1軸性光学異方性層を形成する上記以外の液晶材料としてはホモジニアス配向させた重合性のディスコティック液晶化合物も好ましく用いられる。
第3の光学異方素子は、第3の光学異方素子の厚さをd2、第3の光学異方素子面内の主屈折率をNx2およびNy2、厚さ方向の主屈折率をNz2、かつ、Nx2≧Ny2>Nz2とした場合に、面内のリターデーション値(Re2=(Nx2−Ny2)×d2[nm])が0〜20nm、厚さ方向のリターデーション値(Rth2=(Nx2−Nz2)×d2[nm])が30〜500nmであることが好ましい。
【0122】
第3の光学異方素子の光学パラメータであるRe2値、Rth2値は、液晶表示装置の方式や種々の光学パラメーターに依存することから一概には言えないが、550nmの単色光に対して面内のリターデーション値(Re2)は、通常0nm〜20nm、好ましくは0nm〜10nm、さらに好ましくは0nm〜5nmの範囲であり、かつ、厚さ方向のリターデーション値(Rth2)は、通常30〜500nm、好ましくは80〜400nm、さらに好ましくは100〜300nmに制御されたものである。
前記Re2値及びRth2値を上記範囲にすることにより、液晶表示装置の視野角改良フィルムとしては、液晶表示の色調補正を行いながら視野角を広げることが可能となる。Re2値が20nmより大きい場合、大きい正面位相差値の影響で、液晶表示素子の正面特性を悪化させる恐れがある。また、Rth2値が30nmより小さい場合あるいは500nmより大きい場合には、十分な視野角改良効果が得られないかあるいは、斜めから見たときに不必要な色付きが生じる恐れがある。
【0123】
前記の直線偏光板とホメオトロピック配向液晶フィルム、第1、第2、第3および第4の光学異方素子からなる積層体は、それぞれ粘・接着剤層を介して互いに貼り合わせることにより作製することができる。また、基板上に作製されたホメオトロピック配向液晶フィルムを、粘・接着剤層を介して前記直線偏光板あるいは第1あるいは第2あるいは第3の光学異方素子に貼着した後、ホメオトロピック配向を実現するために使用した配向基板を剥離してホメオトロピック配向した液晶部分のみを直線偏光板あるいは第1あるいは第2あるいは第3の光学異方素子に転写する手法によっても積層させることができる。
また、第1、第2、第3の光学異方素子同士の積層方法としては、例えば後述の粘・接着剤層を用いて直接両者を積層する手法、各光学異方素子上に液晶配向能を有する配向膜を設け、均一でモノドメインな液晶配向性を示し、かつその配向状態を容易に固定化できる液晶性高分子を塗布等の手段により設ける手法、フィルム基板上に設けられた液晶化合物を後述の粘着剤もしくは接着剤を用いて別の光学異方素子へ転写する手法等が好適に用いられる。
【0124】
本発明の楕円偏光板は、ホメオトロピック配向を固定化したホメオトロピック配向液晶フィルム層と直線偏光板とを積層した垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板であるが、液晶表示装置の作製に当たっては必要に応じて光拡散層、光制御フィルム、導光板、プリズムシート等の部材を追加してもよい。
【0125】
液晶表示装置として、視野角依存性の少ない光学特性を得ると言う点では、本発明の楕円偏光板の他に、下記の(1)〜(3)のような構成を用いてもよい。なお、下記において「/」は層の界面を表す(以下、同じ)。
(1)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層
(2)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層
(3)本発明の楕円偏光板/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層
【0126】
また、垂直配向型液晶表示装置に配置した構成は、下記の(4)〜(15)等を例示でき、いずれの構成を用いてもよい
(4)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子/直線偏光板
【0127】
(5)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子/直線偏光板
【0128】
(6)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子/直線偏光板
【0129】
(7)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/直線偏光板
【0130】
(8)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/直線偏光板
【0131】
(9)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/直線偏光板
【0132】
(10)本発明の楕円偏光板/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子/直線偏光板
【0133】
(11)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子/直線偏光板
【0134】
(12)本発明の楕円偏光板/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子/直線偏光板
【0135】
(13)本発明の楕円偏光板/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/直線偏光板
【0136】
(14)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/直線偏光板
【0137】
(15)本発明の楕円偏光板/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/直線偏光板
【0138】
なお、直線偏光板、ホメオトロピック配向液晶フィルムや各光学異方素子の積層や転写に用いる粘・接着剤層を形成する粘・接着剤は光学的に等方性で透明なものであれば特に制限されない。例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。また、光や電子線、熱などの外部刺激により反応し重合や架橋するような反応性のものも用いることができる。これらの中でも特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0139】
粘・接着剤層の形成は、適宜な方式で行うことができる。その例としては、例えば、トルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40質量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で前記の偏光板、液晶フィルムや光学素子層上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘・接着剤層を形成してそれを前記の偏光板、液晶フィルムや光学素子層上に移着する方式などが挙げられる。また、粘・接着剤層には、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることのある添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘・接着剤層などであってもよい。
粘・接着剤層の厚さは、貼着する部材を貼着しかつ十分な密着力を維持できる限り特に膜厚に制限はなく、粘・接着剤の特性や粘・接着される部材により適宜選定することができる。楕円偏光板の総厚の低減要求の強いことから、粘・接着剤の厚さは薄いほうが好ましいが、通常は2〜80μm、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜40μmである。この範囲外では、接着力が不足したり、積層時や楕円偏光板の保存時に端部から滲み出すなどして好ましくない。
【0140】
なお、ホメオトロピック配向液晶フィルムを粘・接着剤層を介して、前記直線偏光板あるいは第1、第2あるいは第3の光学異方素子に転写する際には、転写が容易となるよう下記(A)〜(C)のようなプロセスを適宜用いることもできる。
【0141】
(A)配向基板上に形成された液晶配向が固定化されたホメオトロピック配向液晶層を、接着剤層1を介して直接直線偏光板、もしくは光学異方素子へ貼着し、配向基板を剥離してホメオトロピック配向液晶層を直線偏光板もしくは光学異方素子へ転写する。
【0142】
(B)配向基板上に形成された液晶配向が固定化されたホメオトロピック配向液晶層を、接着剤層1を介して再剥離性基板1と接着せしめた後、配向基板を剥離してホメオトロピック配向液晶層を再剥離性基板1に転写し、再剥離性基板1/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層からなる中間体1を作製し、さらに接着剤層2を介して再剥離性基板2と接着せしめた後、再剥離性基板1を剥離し、接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/再剥離性基板2からなる中間体2を作製し、さらに接着剤層1側にセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合した後、セパレートフィルムを剥離し適宜偏光板、もしくは光学異方素子へ貼着し、再剥離性基板2を剥離する。
【0143】
(C)配向基板上に形成された液晶配向が固定化されたホメオトロピック配向液晶層を、接着剤層1を介して再剥離性基板1と接着せしめた後、配向基板を剥離してホメオトロピック配向液晶層を再剥離性基板1に転写し、再剥離性基板1/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層からなる中間体1を作製し、さらに接着剤層2を介して再剥離性基板2と接着せしめた後、再剥離性基板1を剥離し、接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/再剥離性基板2からなる中間体2を作製し、さらに接着剤層1側にセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合した後、再剥離性基板2を剥離しセパレートフィルム/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2からなる中間体3を作製し、さらに接着剤層2側にもセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合しセパレートフィルム/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/粘着剤層/セパレートフィルムからなる中間体4を作製し、セパレートフィルムを剥離し適宜偏光板、もしくは光学異方素子へ貼着する。
【0144】
さらに接着剤に適宜表面改質剤等の添加剤を添加することで、再剥離性基板とホメオトロピック配向液晶層との貼着の際の両者の密着力を低減させ、かつ再剥離性基板と接着剤層との密着力を維持させることで再剥離性基板側に接着剤層が貼着したまま剥離することもできる。その際に用いられる界面活性剤、および添加剤としては光学的欠陥の検査性や剥離性に悪影響を及ぼさない範囲であれば種類、添加量に特に制限はない。このような手法により前記直線偏光板あるいは第1、第2あるいは第3の光学異方素子に転写する際には、転写が容易となるよう下記(D)、(E)のようなプロセスを適宜用いることもできる。
【0145】
(D)配向基板上に形成された液晶配向が固定化されたホメオトロピック配向液晶層を、接着剤層1を介して再剥離性基板1と接着せしめた後、配向基板を剥離してホメオトロピック配向液晶層を再剥離性基板1に転写し、再剥離性基板1/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層からなる中間体1を作製し、さらに接着剤層2を介して再剥離性基板2と接着せしめた後、再剥離性基板1を剥離し、接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/再剥離性基板2からなる中間体2を作製し、さらに接着剤層1側にセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合した後、セパレートフィルムを剥離し適宜偏光板、もしくは光学異方素子へ貼着し、再剥離性基板2を接着剤層2が貼着した状態で剥離する。
【0146】
(E)配向基板上に形成された液晶配向が固定化されたホメオトロピック配向液晶層を、接着剤層1を介して再剥離性基板1と接着せしめた後、配向基板を剥離してホメオトロピック配向液晶層を再剥離性基板1に転写し、再剥離性基板1/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層からなる中間体1を作製し、さらに接着剤層2を介して再剥離性基板2と接着せしめた後、再剥離性基板1を剥離し、接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/再剥離性基板2からなる中間体2を作製し、さらに接着剤層1側にセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合した後、再剥離性基板2を接着剤層2が貼着した状態で剥離しセパレートフィルム/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層からなる中間体5を作製し、さらにホメオトロピック配向液晶層側にもセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合しセパレートフィルム/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/粘着剤層/セパレートフィルムからなる中間体6を作製し、セパレートフィルムを剥離し適宜偏光板、もしくは光学異方素子へ貼着する。
【0147】
またホメオトロピック配向液晶フィルムを粘・接着剤層を介して、前記直線偏光板あるいは第1、第2あるいは第3の光学異方素子に転写する際には、ホメオトロピック配向液晶フィルム表面を表面処理して粘・接着剤層との密着性を向上することができる。表面処理の手段は、特に制限されないが、前記液晶フィルム表面の透明性を維持できるコロナ放電処理、スパッタ処理、低圧UV照射、プラズマ処理などの表面処理法を好適に採用できる。これら表面処理法のなかでもコロナ放電処理が良好である。
【0148】
さらに、ホメオトロピック配向液晶フィルムを粘・接着剤層を介さずとも、前記直線偏光板あるいは第1、第2あるいは第3の光学異方素子上に前述の液晶材料を前述の配向基板上に展開し、当該液晶材料を配向させた後、光照射および/または加熱処理することにより当該配向状態を固定化することにより製造することもできる。適宜必要であれば前記直線偏光板あるいは第1、第2あるいは第3の光学異方素子上に前述の配向膜を設置してから前述の液晶材料を前述の配向基板上に展開し、当該液晶材料を配向させた後、光照射および/または加熱処理することにより当該配向状態を固定化することにより製造することもできる。
【0149】
液晶表示装置としては、特に制限はないが、透過型、反射型、半透過型の各種液晶表示装置を挙げることができる。液晶セルの駆動方式も特に制限はなく、STN−LCD等に用いられるパッシブマトリクス方式、TFT(Thin Film Transistor)電極、TFD(Thin Film Diode)電極等の能動電極を用いるアクティブマトリクス方式、プラズマアドレス方式等のいずれの駆動方式であっても良い。
【0150】
液晶セルを構成する透明基板としては、液晶層を構成する液晶性を示す材料を特定の配向方向に配向させるものであれば特に制限はない。具体的には、基板自体が液晶を配向させる性質を有している透明基板、基板自体は配向能に欠けるが、液晶を配向させる性質を有する配向膜等をこれに設けた透明基板等がいずれも使用できる。また、液晶セルの電極は、ITO等の公知のものが使用できる。電極は通常、液晶層が接する透明基板の面上に設けることができ、配向膜を有する基板を使用する場合は、基板と配向膜との間に設けることができる。
【0151】
液晶層を形成する液晶性を示す材料としては、負の誘電率異方性を有する材料であれば特に制限されず、各種の液晶セルを構成し得る通常の各種低分子液晶物質、高分子液晶物質およびこれらの混合物が挙げられる。また、これらに液晶性を損なわない範囲で色素やカイラル剤、非液晶性物質等を添加することもできる。負の誘電率異方性を示す液晶材料を用いた垂直配向液晶層にカイラル剤を添加し電圧印加時に液晶分子を旋回させれば、電圧印加時の液晶分子の旋回を安定したものとすることができる。更に上下基板のラビング方向を同一方向以外に施す場合、配向処理の軌跡が同一方向でなくなるため筋目が目立ちにくくなる。また、液晶層が90度ツイストしていれば、電圧印加時のディスクリネーション防止のため基板に対し数度傾斜して配向させた場合に液晶分子の傾斜方向にリターデーションが発生するが、基板付近の液晶分子の傾斜した方向が上下の基板付近で互いに90度の角度をなしているため、発生するリターデーションを打ち消すことができ、漏れ光が少ない黒表示が得られる。
【0152】
また、前記垂直配向型液晶セルの一方の基板を反射機能を有する領域と透過機能を有する領域とを有する基板とすることにより半透過反射型の垂直配向型液晶表示装置とすることができる。
半透過反射型の垂直配向型液晶表示装置に使用する半透過反射性電極に含まれる反射機能を有する領域(以下、反射層ということがある。)としては、特に制限されず、アルミニウム、銀、金、クロム、白金等の金属やそれらを含む合金、酸化マグネシウム等の酸化物、誘電体の多層膜、選択反射を示す液晶又はこれらの組み合わせ等を例示することができる。これら反射層は平面であっても良く、また曲面であっても良い。さらに反射層は、凹凸形状など表面形状に加工を施して拡散反射性を持たせたもの、液晶セルの観察者側と反対側の該電極基板上の電極を兼備させたもの、またそれらを組み合わせたものであっても良い。
【0153】
本発明の垂直配向型液晶表示装置は、前記した構成部材以外にも他の構成部材を付設することができる。例えば、カラーフィルターを本発明の液晶表示装置に付設することにより、色純度の高いマルチカラー又はフルカラー表示を行うことができるカラー液晶表示装置を作製することができる。
【実施例】
【0154】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例で用いた各分析方法は以下の通りである。
(1)1H−NMRの測定
化合物を重水素化クロロホルムに溶解し、400MHzの1H−NMR(Variant社製INOVA−400)で測定した。
(2)GPCの測定
化合物をテトラヒドロフランに溶解し、東ソー社製8020GPCシステムで、TSK−GEL SuperH1000、SuperH2000、SuperH3000、SuperH4000を直列につなぎ、溶出液としてテトラヒドロフランを用いて測定した。分子量の較正にはポリスチレンスタンダードを用いた。
(3)顕微鏡観察
オリンパス光学社製BH2偏光顕微鏡で液晶の配向状態を観察した。
(4)液晶フィルムのパラメータ測定
王子計測機器社製自動複屈折計KOBRA21ADHを用いた。
(5)DSCの測定(ガラス転移点(Tg)の測定)
液晶層をかきとった後、示差走査型熱量計(DSC、Perkin Elmer社製 DSC−7)を用い、昇温速度20℃/minで測定した。
(6)視野角(等コントラスト曲線)の測定
ELDIM社製 EZcontrast 160Rにより液晶表示装置の視野角測定を実施し等コントラスト曲線を得た。
【0155】
<実施例1>
液晶材料溶液を以下のようにして調製した。
まず、下記式(10)の液晶性ポリマーを合成した。分子量はポリスチレン換算で、数平均分子量Mn=8000、重量平均分子量Mw=15000であった。なお、式(10)は便宜上、ブロック重合体の構造で表記しているが、数字はモノマーのモル構成比を表すものである。式(9)のポリマー1.0gを、9mlのシクロヘキサノンに溶かし、暗所でトリアリルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート50%プロピレンカーボネート溶液(アルドリッチ社製、試薬)0.1gを加えた後、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して液晶材料の溶液を調製した。
【0156】
【化16】
【0157】
配向基板を以下のようにして調製した。
厚さ38μmのポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)(帝人デュポンフィルム(株)製)を15cm角に切り出し、アルキル変性ポリビニルアルコール((株)クラレ製、MP−203(PVA))の5質量%溶液(溶媒は、水とイソプロピルアルコールの質量比1:1の混合溶媒)をスピンコート法により塗布し、50℃のホットプレートで30分乾燥した後、120℃のオーブンで10分間加熱した。次いで、レーヨンのラビング布でラビングした。得られたPVA層の膜厚は1.2μmであった。ラビング時の周速比(ラビング布の移動速度/基板フィルムの移動速度)は4とした。
【0158】
このようにして得られた配向基板に、前述の液晶材料の溶液をスピンコート法により塗布した。次いで60℃のホットプレートで10分乾燥し、150℃のオーブンで2分間熱処理し、液晶材料を配向させた。次いで、60℃に加熱したアルミ板に試料を密着させて置き、その上から、高圧水銀灯ランプにより600mJ/cm2の紫外光(ただし365nmで測定した光量)を照射して、液晶材料(ホメオトロピック配向液晶層の厚み0.8μm)を硬化させた。
【0159】
(積層体1および2の作製)
得られた液晶層(ホメオトロピック配向液晶層)の光学パラメータの測定を行うため、また液晶層の表面を保護するため積層体1および2を下記のように作製した。
得られた配向基板上の液晶層を、市販のUV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)を介してポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)に転写した。すなわち、PVA層上の硬化した液晶層の上に、接着剤層1としてUV−3400を5μm厚となるように塗布し、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムでラミネートして、PETフィルム側から紫外線を照射して接着剤層1を硬化させた後、PVA層およびPENフィルムを剥離し、PETフィルム付きの中間積層体(PETフィルム/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層)を得た。
【0160】
得られた中間積層体のホメオトロピック液晶層上に、市販のUV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)を接着剤層2として5μm厚となるように塗布し、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムでラミネートして、TACフィルム側から紫外線を照射して接着剤層2を硬化させた後、PETフィルムを剥離して、積層体1(接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/TACフィルム)を得た。
得られた積層体1の接着剤層1側に市販のノンキャリア糊をセパレートフィルム付きの状態で貼合した後、TACフィルムを剥離して積層体2(セパレートフィルム/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2)を得た。
【0161】
得られた積層体1をクロスニコルさせた偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向で、コノスコープ観察から正の一軸性屈折率構造を有するホメオトロピック配向であることがわかった。このフィルムを傾けて斜めから光を入射し、同様にクロスニコルで観察したところ、光の透過が観測された。また、同フィルムの光学位相差を自動複屈折測定装置KOBRA21ADHにより測定した。測定光をサンプル表面に対して垂直あるいは斜めから入射して、その光学位相差と測定光の入射角度のチャートから、ホメオトロピック配向を確認した。ホメオトロピック配向では、サンプル表面に対して垂直方向での位相差(正面位相差)がほぼゼロである。このサンプルに関しては、液晶層の遅相軸方向に斜めから位相差を測定したところ、測定光の入射角度の増加に伴い、位相差値が増加したことからホメオトロピック配向が得られていると判断できた。以上から、ホメオトロピック配向性は良好であると判断した。
なお、ホメオトロピック配向液晶フィルムのNx1は1.54、Ny1は1.54、Nz1は1.73であった。
さらに積層フィルムの液晶材料部分のみをかきとり、示差熱測定法(DSC)を用いてTgを測定したところ、Tgは100℃であった。またフィルムの液晶層表面の鉛筆硬度は2H程度で、充分に強固な膜が得られた。
【0162】
(楕円偏光板1の作製)
積層体1の接着剤層1側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着しTACフィルムを剥がして楕円偏光板1(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2)を得た。
【0163】
<実施例2>
(積層体3の作製)
積層体1の接着剤層1側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第1の光学異方素子として面内位相差140nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)を貼着した後、TACフィルムを剥がして積層体3(接着剤層2/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム)を得た。
【0164】
(積層体4の作製)
積層体3のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第3の光学異方素子として負の1軸性を有するTACフィルム(富士フィルム(株)製)を貼着し、積層体4(接着剤層2/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/TACフィルム)を得た。
【0165】
(楕円偏光板2の作製)
積層体4の接着剤層2側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板2(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層2/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/TACフィルム)を得た。楕円偏光板の層膜厚は280μmであった。
【0166】
(垂直配向型液晶表示装置の作製)
バックライト、バックライト側偏光板、垂直配向(VA)型液晶セル、視認側偏光板の順で配置された市販のVA型の液晶テレビに対し、図1に示すように、視認側偏光板の替わりに本発明の楕円偏光板2を配置した。図2に等コントラスト図を示す。本楕円偏光板2を用いない場合に比べ、視野角が拡大し、斜めから見ても良好な画像が得られることが分かった。なお、図2の同心円は20°間隔で描かれている。したがって最外円は中心から80°を示す(以下の図も同様)。
【0167】
<比較例1>
面内位相差140nmの積層体9(接着剤層3/ネマチック配向液晶層/接着剤層4/TACフィルム)の接着剤層3側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着した後TACフィルムを剥離して楕円偏光板25(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層3/ネマチック配向液晶層/接着剤層4)を得た。
実施例2の垂直配向型液晶表示装置の作製に使用したものと同型の市販VA型の液晶テレビに対し、実施例2で使用した楕円偏光板2の替わりに前記楕円偏光板25を配置した。図12に等コントラスト図を示す。本発明の楕円偏光板2を用いた場合に比べ、視野角拡大効果は少なく、斜めから見ても良好な画像が得られなかった。
【0168】
<実施例3>
(積層体5の作製)
下記式(11)で表されるポリエーテルケトン(株式会社日本触媒製:Δn=約0.02)を、メチルイソブチルケトンに溶解し、20重量%のワニスを調製した。このワニスを、面内位相差140nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)に塗布し、100℃で10分熱処理した。その結果、ゼオノアフィルム上に、透明かつ表面が平滑で厚み6μmで、フィルム膜厚方向に負の光学異方性を示すポリエーテルケトンフィルムが形成された積層体5が得られた。
【0169】
【化17】
【0170】
(積層体6の作製)
積層体5のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して前記積層体2の接着剤層2側を貼着し、積層体6(セパレートフィルム/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/粘着剤層/ゼオノアフィルム/ポリエーテルケトンフィルム)を得た。
【0171】
(楕円偏光板3の作製)
積層体6のセパレートフィルムを剥離し直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板3(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/粘着剤層/ゼオノアフィルム/ポリエーテルケトンフィルム)を得た。
【0172】
<実施例4>
(積層体7の作製)
下記式(12)に示すポリイミドを、シクロヘキサノンに溶解して15重量%のポリイミド溶液を調製した。このポリイミド溶液を面内位相差140nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)に塗布し、100℃で10分熱処理した。その結果、ゼオノアフィルム上に、透明かつ表面が平滑で厚み6μmで、フィルム面と垂直方向に負の光学異方性を示すポリイミドフィルムが形成された積層体7が得られた。
【0173】
【化18】
【0174】
(楕円偏光板4の作製)
楕円偏光板1の接着剤層2側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して積層体7のゼオノアフィルム側を貼着し、楕円偏光板4(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/粘着剤層/ゼオノアフィルム/ポリイミドフィルム)を得た。
【0175】
<実施例5>
(楕円偏光板5の作製)
テレフタル酸50mmol、メチルヒドロキノンジアセテート25mmol、カテコールジアセテート25mmolおよび酢酸ナトリウム100mgを用いて窒素雰囲気下で、100℃で30分、150℃で1時間、200℃で1時間と階段状に昇温しながら重合を行った。次に窒素ガスを流しながら250℃で2時間重合を続け、さらに減圧下に同じ温度で1時間重合を行った。次に得られたポリマーをテトラクロロエタンに溶解し濾過したのち、メタノールで再沈殿を行い精製ポリマー9.0gを得た。
このポリマーを用いて濃度15質量%のテトラクロロエタン溶液を精製し、片面にラビング処理したポリイミドの配向膜を有する12cm×12cmのガラス板上(EBC社製)にスピンコート法で塗布した後乾燥した。
【0176】
次にこの試料を空気恒温槽200℃で10分間熱処理した後、恒温槽より取り出して放冷し、配向を固定化しネマチック液晶配向層を得た。得られたネマチック液晶配向層は、膜厚が0.62μmの完全透明で平滑なフィルムであった。このネマチック液晶配向層の配向状態を偏光顕微鏡のクロスニコル下で観察したところ、全領域にわたって欠陥が全く見つからなかった。次に偏光解析を行ってこのフィルムのリタデーション(Δn・d、Δnは複屈折率を、またdは膜厚を示す)を測定したところ、140nm(550nmの値)の値が得られ、ネマチック構造が固定化されていることがわかった(Δn=0.227)。
【0177】
得られた液晶層(ネマチック配向液晶層)をフィルム基板に転写するため積層体8を下記のように作製した。
得られた配向基板上の液晶層を市販のUV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)を介してポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)に転写した。すわわち、ポリイミド膜上の硬化した液晶層の上に、UV硬化型接着剤を接着剤層3として5μm厚となるように塗布し、PETフィルムでラミネートして、PETフィルム側から紫外線を照射して接着剤層3を硬化させた後、ポリイミド配向膜およびガラス基板を剥離し積層体8(PETフィルム/接着剤層3/ネマチック配向液晶層)を作製した。
さらに積層体8の液晶層上に、市販のUV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)を接着剤層4として5μm厚となるように塗布し、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムでラミネートして、TACフィルム側から紫外線を照射して接着剤層2を硬化させた後、PETフィルムを剥離して、積層体9(接着剤層3/ネマチック配向液晶層/接着剤層4/TACフィルム)を得た。
そして前記楕円偏光板1(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2)の接着剤層2側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第一の光学異方素子として前記積層体8のネマチック配向液晶層側と貼着した後PETフィルムを剥離して楕円偏光板5(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/粘着剤層/ネマチック配向液晶層/接着剤層3)を得た。楕円偏光板5の層膜厚は180μmであった。
【0178】
<実施例6>
(フィルム1の作製)
以下の手法で膜厚方向に負の1軸性を有する第3の光学異方素子であるフィルム1を作製した。透明な膜厚110μmのポリカーボネートフィルム(住友化学(株)製)を170℃に加熱した状態で0.3mm/secの速度で延伸したのち、再び170℃に加熱しながら最初の延伸方向と直角の方向に0.5mm/secの速度で延伸した。ポリカーボネートフィルムは2度目の延伸により延伸方向の屈折率が大きくなり延伸方向と直角方向と同程度の屈折率になった。このため、この2回の延伸によりポリカーボネートフィルムは延伸方向と垂直な方向(すなわちフィルム面と垂直な方向)に媒体の異常屈折率を含む負の一軸性光学異方体となった。
(楕円偏光板6の作製)
前記楕円偏光板5の接着剤層3側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第3の光学異方素子として負の1軸性を有する前記フィルム1を貼着し、楕円偏光板6(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/粘着剤層/ネマチック配向液晶層/接着剤層3/粘着剤層/フィルム1)を得た。
【0179】
<実施例7>
(楕円偏光板7の作製)
前記積層体3(接着剤層2/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム)の接着剤層2側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板7(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層2/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム)を得た。
【0180】
<実施例8>
(楕円偏光板8の作製)
前記楕円偏光板7のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第3の光学異方素子として負の1軸性を有するTACフィルム(富士フィルム(株)製)を貼着し、楕円偏光板8(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層2/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/TACフィルム)を得た。
【0181】
<実施例9>
(フィルム2の作製)
面内に位相差を有する位相差フィルム(ピュアエースWR、帝人(株)製)を230℃で縦一軸延伸し、負の2軸性を有するフィルム2を得た。面内の位相差は140nmであった。
(楕円偏光板9の作製)
前記楕円偏光板1(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2)の接着剤層2側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第一の光学異方素子として前記フィルム2を貼着し、楕円偏光板9(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/粘着剤層/フィルム2)を得た。楕円偏光板9の層膜厚は150μmであった。
(垂直配向型液晶表示装置の作製)
バックライト、バックライト側偏光板、VA型液晶セル、視認側偏光板の順で配置された市販のVA型の液晶テレビに対し、図3に示すように、視認側偏光板の替わりに本発明の楕円偏光板9を配置した。図4に等コントラスト図を示す。本楕円偏光板9を用いない場合に比べ、視野角が拡大し、斜めから見ても良好な画像が得られることが分かった。
【0182】
<比較例2>
実施例9の垂直配向型液晶表示装置の作製に使用したものと同型の市販VA型の液晶テレビに対し、楕円偏光板9の替わりに後記の参考例14で得られた楕円偏光板24を配置した。図14に等コントラスト図を示す。本発明の楕円偏光板9を用いた場合に比べ、視野角拡大効果は少なく、斜めから見ても良好な画像が得られなかった。
【0183】
<実施例10>
(積層体10の作製)
前記積層体1の接着剤層1側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第1の光学異方素子として前記フィルム2を貼着した後、TACフィルムを剥離して積層体10(接着剤層2/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/フィルム2)を得た。
(楕円偏光板10の作製)
前記積層体10の接着剤層2側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板10(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層2/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/フィルム2)を得た。
【0184】
<参考例1>
(積層体11の作製)
面内位相差105nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)にコロナ処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して前記積層体8(PETフィルム/接着剤層3/ネマチック配向液晶層)のネマチック配向液晶層側を貼着した後、PETフィルムを剥離して積層体11(接着剤層3/ネマチック配向液晶層/粘着剤層/ゼオノアフィルム)を作製した。
(楕円偏光板11の作製)
前記積層体11のゼオノアフィルム側にコロナ処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板11(接着剤層3/ネマチック配向液晶層/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を作製した。
【0185】
<参考例2>
(楕円偏光板12の作製)
前記楕円偏光板11の接着剤層3側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第3の光学異方素子として負の1軸性を有するTACフィルム(富士フィルム(株)製)を貼着し、楕円偏光板12(TACフィルム/粘着剤層/接着剤層3/ネマチック配向液晶層/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を作製した。
【0186】
<参考例3>
(楕円偏光板13の作製)
面内位相差105nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板13(ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を作製した。
【0187】
<参考例4>
(楕円偏光板14の作製)
前記楕円偏光板13のゼオノアフィルム側にコロナ処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して前記積層体9(接着剤層3/ネマチック配向液晶層/接着剤層4/TACフィルム)の接着剤層3側と貼着し、楕円偏光板14(TACフィルム/接着剤層4/ネマチック配向液晶層/接着剤層3/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を得た。
【0188】
<参考例5>
(楕円偏光板15の作製)
前記楕円偏光板14のTACフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第3の光学異方素子として負の1軸性を有するTACフィルム(富士フィルム(株)製)を貼着し、楕円偏光板15(TACフィルム/粘着剤層/TACフィルム/接着剤層4/ネマチック配向液晶層/接着剤層3/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を得た。
【0189】
<参考例6>
(楕円偏光板16の作製)
積層体7(ポリイミドフィルム/ゼオノアフィルム)のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して楕円偏光板13(ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)のゼオノアフィルム側と貼着し、楕円偏光板16(ポリイミドフィルム/ゼオノアフィルム/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を得た。
【0190】
<参考例7>
(フィルム3の作製)
まず以下の方法でフィルム膜厚方向に負の1軸異方性を有するフィルム3を作製した。
TACフィルムの表面をケン化後、このフィルム上にポリビニルアルコール10質量部、水371質量部、メタノール119質量部、グルタルアルデヒド0.5質量部で構成される配向膜塗布液をスピンコーターで塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥して膜を形成した。次に、形成した膜にフィルムの遅相軸方向と平行の方向にラビング処理を施し、配向膜とした。
次に、配向膜上に、下記式(13)で示されるディスコティック液晶性化合物1.8g、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)0.2g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)0.06g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02g、を3.9gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を、スピンコーターで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、125℃の恒温槽中で3分間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、100℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、30秒間UV照射しディスコティック液晶化合物を架橋した。その後、室温まで放冷した。このようにして、フィルム3(ディスコティック液晶層/配向膜/TACフィルム)を作製した。
【0191】
【化19】
【0192】
(積層体12の作製)
前記フィルム3のTACフィルム側に粘着剤を介して第1の光学異方素子として面内位相差140nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)を貼着し、積層体12(ディスコティック液晶層/配向膜/TACフィルム/粘着剤層/ゼオノアフィルム)を得た。
(積層体13の作製)
面内位相差105nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)にコロナ処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して、前記積層体12のゼオノアフィルム側と貼着し、積層体13(ディスコティック液晶層/配向膜/TACフィルム/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/ゼオノアフィルム)を得た。
(楕円偏光板17の作製)
前記積層体13のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して、直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板17(ディスコティック液晶層/配向膜/TACフィルム/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を作製した。
【0193】
<参考例8>
(積層体14の作製)
面内位相差140nmの位相差フィルム(ゼオノア、日本ゼオン(株)製)にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して面内位相差105nmの位相差フィルム(ピュアエース、帝人(株)製)を貼着し、積層体14(ゼオノアフィルム/粘着剤層/ピュアエースフィルム)を得た。
(フィルム4の作製)
まず以下の方法でフィルム膜厚方向に負の1軸異方性を有するフィルム4を作製した。
光重合性メソゲン化合物(BASF社製LC242)90.5重量部、重合性カイラル剤(BASF社製LC756)9.5重量部および溶媒(シクロヘキサノン)を選択反射中心波長が300nmとなるよう調整配合した溶液に、その固形分に対し、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製,イルガキュア907)を3重量%添加した塗工液(固形分含有量30重量%)を調製した。当該塗工液を、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(配向基材)上にスピンコータを用いて乾燥後の厚みで6μmとなるように塗設し、溶媒を100℃で2分間乾燥させた。得られた膜に、配向基材側から35℃の空気雰囲気下で第1紫外線照射を50mW/cm2で、1秒間行った。その後、紫外線照射なしの状態で、80℃で1分間加熱した。次に、第2紫外線照射を80℃の空気雰囲気下で、5mW/cm2で、60秒間行った。次いで、50℃の窒素雰囲気下で配向基材側から第3紫外線照射を80mW/cm2で、30秒間行い、選択波長が250〜350nmの広帯域コレステリック液晶層を形成した。次いで、コレステリック液晶層側にトリアセチルセルロースフィルムをアクリル系粘着剤で貼り合せ、80℃で5分間乾燥した。次いで、配向基材を静かに剥離しフィルム4(コレステリック液晶層/粘着剤層/TACフィルム)を得た。
【0194】
(積層体15の作製)
前記積層体14のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介してフィルム4のTACフィルム側を貼着し、積層体15(コレステリック液晶層/粘着剤層/TACフィルム/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/ピュアエースフィルム)を得た。
(楕円偏光板18の作製)
前記積層体15のピュアエースフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板18(コレステリック液晶層/粘着剤層/TACフィルム/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/ピュアエースフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を作製した。
【0195】
<参考例9>
(フィルム5の作製)
まず以下の方法でフィルム面内方向に正の1軸異方性を有するフィルム5を作製した。
光重合性メソゲン化合物(BASF社製LC242)100重量部および溶媒(シクロヘキサノン)を混合した溶液に、その固形分に対し、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製,イルガキュア907)を3重量%添加した塗工液(固形分含有量30重量%)を調製した。当該塗工液を、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(配向基材)上にスピンコーターを用いて乾燥後の厚みで6μmとなるように塗設し、溶媒を100℃で2分間乾燥させた。得られた膜に、配向基材側から35℃の空気雰囲気下で第1紫外線照射を50mW/cm2で、1秒間行った。その後、紫外線照射なしの状態で、80℃で1分間加熱した。次に、第2紫外線照射を80℃の空気雰囲気下で、5mW/cm2で、60秒間行い、フィルム面内に正の1軸異方性を有するネマチック液晶層を形成した。次いで、ネマチック液晶層側にトリアセチルセルロースフィルムをアクリル系粘着剤で貼り合せ、80℃で5分間乾燥した。次いで、配向基材を静かに剥離しフィルム5(ネマチック液晶配向層/粘着剤層/TACフィルム)を得た。
【0196】
(フィルム6の作製)
面内に位相差を有する位相差フィルム(アートン、JSR(株)製)を230℃で縦一軸延伸し、負の2軸性を有するフィルム6を得た。面内位相差は140nmであった。
(積層体16の作製)
前記フィルム6にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第4の光学異方素子として面内に正の1軸性を有するフィルム5のTACフィルム側を貼着し、積層体16(フィルム6/粘着剤層/ネマチック液晶配向層/粘着剤層/TACフィルム)を得た。
(楕円偏光板19の作製)
前記積層体16のTACフィルム側にコロナ処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板19(フィルム6/粘着剤層/ネマチック液晶配向層/粘着剤層/TACフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を作製した。
【0197】
<参考例10>
(楕円偏光板20の作製)
前記楕円偏光板13(ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第4の光学異方素子として負の2軸性を有する前記フィルム6を貼着し、楕円偏光板20(フィルム6/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を得た。
【0198】
<参考例11>
(楕円偏光板21の作製)
前記積層体5(ポリエーテルケトンフィルム/ゼオノアフィルム)のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板21(ポリエーテルケトンフィルム/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を得た。
【0199】
<参考例12>
(楕円偏光板22の作製)
面内位相差140nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板22(ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を得た。
【0200】
<参考例13>
(楕円偏光板23の作製)
前記楕円偏光板22(ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して前記第3の光学異方素子として負の1軸性を有する前記フィルム1を貼着し、楕円偏光板23(フィルム1/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を得た。
【0201】
<参考例14>
(楕円偏光板24の作製)
第1の光学異方素子として負の2軸性を有する前記フィルム6にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板24(フィルム6/粘着剤層/直線偏光板)を得た。
【0202】
<実施例11〜13>
実施例2で使用したものと同型のVA型の液晶テレビを用いて図5に示すように前記の実施例1〜10および参考例1〜14で得た楕円偏光板および光学異方素子と垂直配向型液晶表示セルとを配置し、垂直配向型液晶表示装置を作製した(使用した楕円偏光板番号等は表1参照)。
その結果、本発明の楕円偏光板を用いない場合に比べ、視野角が拡大し、斜めから見ても良好な画像が得られることが分かった。
なお、実施例13の等コントラスト図を図6に示す。
【0203】
<比較例3>
バックライト側偏光板、VA型液晶セル、視認側偏光板の順で配置された市販のVA型の液晶テレビに対し、図15に示すように、視認側偏光板の替わりに前記楕円偏光板25を、バックライト側偏光板の代わりに前記楕円偏光板12を配置した。その結果、本発明の楕円偏光板を用いた場合に比べ、視野角拡大効果は少なく、斜めから見ても良好な画像が得られなかった。
なお、等コントラスト図を図16に示す。
【0204】
<比較例4>
実施例13の第3の光学異方素子の厚さ方向のリタデーションRth2を10nmとした以外は実施例13と同様にして図5に示す垂直配向型液晶表示装置を作製した。その結果、本発明の楕円偏光板を用いた場合に比べ、視野角拡大効果は少なく、斜めから見ても良好な画像が得られなかった。
なお、等コントラスト図を図17に示す。
【0205】
<実施例14〜16>
実施例2で使用したものと同型のVA型の液晶テレビを用いて図5の配置において、第4の光学異方素子を配置しなかった以外は実施例11と同様に行い、垂直配向型液晶表示装置を作製した(使用した楕円偏光板番号等は表1参照)。
その結果、本発明の楕円偏光板を用いない場合に比べ、視野角が拡大し、斜めから見ても良好な画像が得られることが分かった。
【0206】
<実施例17〜19>
実施例2で使用したものと同型のVA型の液晶テレビを用いて図7の配置において、第3の光学異方素子を配置しなかった以外は実施例11と同様に行い、垂直配向型液晶表示装置を作製した(使用した楕円偏光板番号等は表1参照)。
その結果、本発明の楕円偏光板を用いない場合に比べ、視野角が拡大し、斜めから見ても良好な画像が得られることが分かった。
なお、実施例19の等コントラスト図を図8に示す。
【0207】
<実施例20〜22>
実施例2で使用したものと同型のVA型の液晶テレビを用いて図9に示すように前記の実施例1〜10および参考例1〜14で得た楕円偏光板および光学異方素子と垂直配向型液晶表示セルとを配置し、垂直配向型液晶表示装置を作製した(使用した楕円偏光板番号等は表1参照)。
その結果、本発明の楕円偏光板を用いない場合に比べ、視野角が拡大し、斜めから見ても良好な画像が得られることが分かった。
なお、実施例22の等コントラスト図を図10に示す。
【0208】
<実施例23>
(積層体17の作製)
前記中間積層体(PETフィルム/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層)に市販のUV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)にシリコーン系表面改質剤(ペインタッド32、東レ・ダウコーニング(株)製)を4重量部添加したものを接着剤層5として5μm厚となるように塗布し、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムでラミネートして、TACフィルム側から紫外線を照射して接着剤層5を硬化させた後、PETフィルムを剥離して、積層体17(接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層5/TACフィルム)を得た。
【0209】
(積層体18の作製)
積層体17の接着剤層1側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第1の光学異方素子として面内位相差140nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)を貼着した後、TACフィルムを接着剤層5が貼着した状態で剥がして積層体18(ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム)を得た。
(積層体19の作製)
積層体18のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第3の光学異方素子として負の1軸性を有するTACフィルム(富士フィルム(株)製)を貼着し、積層体19(ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/TACフィルム)を得た。
【0210】
(楕円偏光板26の作製)
直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して積層体19のホメオトロピック配向液晶層面と貼着し、楕円偏光板26(直線偏光板/粘着剤層/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/TACフィルム)を得た。
【0211】
<比較例5>
ポリスチレンをフィルム面内方向に2軸延伸させ、厚さ方向の位相差が−195nmの光学的に正の1軸性を有するフィルム7を作製した。実施例2のホメオトロピック配向液晶層を、フィルム7に置き換えた以外は実施例2と同様にして図5に示す垂直配向型液晶表示装置を作製した。その結果、本発明の楕円偏光板に比べ、大幅に厚みが増し総膜厚が450μmとなった。
【0212】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】実施例2で用いた垂直配向型液晶表示装置の断面模式図である。
【図2】実施例2における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【図3】実施例9で用いた垂直配向型液晶表示装置の断面模式図である。
【図4】実施例9における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【図5】実施例13で用いた垂直配向型液晶表示装置の断面模式図である。
【図6】実施例13における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【図7】実施例19で用いた垂直配向型液晶表示装置の断面模式図である。
【図8】実施例19における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【図9】実施例22で用いた垂直配向型液晶表示装置の断面模式図である。
【図10】実施例22における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【図11】比較例1で用いた垂直配向型液晶表示装置の断面模式図である。
【図12】比較例1における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【図13】比較例2で用いた垂直配向型液晶表示装置の断面模式図である。
【図14】比較例2における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【図15】比較例3で用いた垂直配向型液晶表示装置の断面模式図である。
【図16】比較例3における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【図17】比較例4における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【符号の説明】
【0214】
1 直線偏光板
2 ホメオトロピック配向液晶フィルム
3 第1の光学異方素子
4 第1の光学異方素子(負の2軸性)
5 第3の光学異方素子
6 第4の光学異方素子
7 垂直配向型液晶セル
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧無印加時に液晶分子が基板に対して垂直に配向する垂直配向型液晶表示装置に関し、特に広視野角を実現し、薄膜化が可能な垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板および該楕円偏光板を配置した垂直配向型液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置における表示モードの1つとして、初期状態において液晶セル内の液晶分子が基板表面に対して垂直に配列する垂直配向モードがある。電圧無印加時には、液晶分子が基板表面に対して垂直に配列し、液晶セルの両側に直線偏光板を直交配置すると黒表示が得られる。
液晶セル内の光学特性は面内方向で等方的であり、理想的な視野角補償が容易に可能である。液晶セルの厚さ方向に正の1軸光学異方性を補償するため、厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する光学素子を液晶セルの片面又は両面と直線偏光板との間に挿入すると、非常に良好な黒表示視角特性が得られる。
電圧印加時においては、液晶分子が基板表面に垂直な方向から基板表面に平行な方向に向って配向を変化させる。この際、液晶配列の均一化が困難である。通常の配向処理である基板表面のラビング処理を用いると、表示品位が著しく低下する。
電圧印加時における液晶配列を均一化するため、基板上の電極形状を工夫し、液晶層内に斜め電界が発生するようにし、均一配向を得る等の提案がある。この方法によれば、均一な液晶配列は得られるが、ミクロ的には不均一な配向領域が生じ、電圧印加時にこの領域が暗領域となる。従って、液晶表示装置の透過率が低下する。
【0003】
特許文献1によれば、ランダム配向した状態を含む液晶層を有する液晶素子の両側に配置する直線偏光板を円偏光板に置き換えた構成が提案されている。直線偏光板の代わりに、直線偏光板と1/4波長板とを組み合わせた円偏光板に置き換えることにより、電圧印加時の暗領域を解消し、高透過率な液晶表示装置を実現できる。しかしながら、円偏光板を用いた垂直配向型液晶表示装置では、直線偏光板を用いた垂直配向型液晶表示装置と比較し視野角特性が狭いという課題があった。特許文献2によれば、円偏光板を用いた垂直配向型液晶表示装置の視野角補償として、負の1軸の光学異方性を有する光学異方素子や2軸光学異方性材料が提案されている。しかし負の1軸の光学異方性を有する光学異方素子により液晶セルの厚さ方向に正の1軸光学異方性を補償できるが、1/4波長板の視野角特性を補償できないため、十分な視野角特性を得ることはできない。また、2軸光学異方性材料の製造を行う場合、得られる位相差板の面内の主屈折率をnx、nyとし、厚さ方向の屈折率をnzとし、かつnx>nyとしたとき、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義されるNzは−1.0<Nz<0.1であり、厚み方向の延伸には限界があり、厚み方向の位相差を広範囲に制御することができない。また前記製造方法では、熱収縮フィルムにより、長尺フィルムを熱収縮させて厚み方向に延伸させているため、得られる位相差板は、長尺フィルムよりも厚みが増加する。前記製造方法で得られる位相差板の厚みは50〜100μm程度であり、液晶表示装置等に要求される薄型化に対しても十分ではなかった。
【特許文献1】特開2002−40428号公報
【特許文献2】特開2003−207782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、視野角特性の優れた垂直配向型液晶表示装置を提供することである。また、垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板として、厚み方向の位相差を広範囲に制御可能で薄型の楕円偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板およびそれを用いた垂直配向型液晶表示装置により、前記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の第1は、少なくとも正の一軸性を示す液晶材料を液晶状態においてホメオトロピック配向させた後、該配向を固定化したホメオトロピック配向液晶フィルムと直線偏光板とからなる垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板、である。
【0007】
本発明の第2は、前記ホメオトロピック配向液晶フィルムが以下の[1]および[2]を満たすことを特徴とする本発明の第1に記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板、である。
[1]0nm≦Re1≦20nm
[2]−500nm≦Rth1≦−30nm
(ここで、Re1は前記ホメオトロピック配向液晶フィルムの面内のリターデーション値を意味し、Rth1は前記ホメオトロピック配向液晶フィルムの厚さ方向のリターデーション値を意味する。前記Re1及びRth1は、それぞれRe1=(Nx1−Ny1)×d1[nm]、Rth1=(Nx1−Nz1)×d1[nm]である。また、d1は前記ホメオトロピック配向液晶フィルムの厚さ、Nx1およびNy1は前記ホメオトロピック配向液晶フィルム面内の主屈折率、Nz1は厚さ方向の主屈折率であり、Nz1>Nx1≧Ny1である。)
【0008】
本発明の第3は、前記ホメオトロピック配向液晶層が、オキセタニル基を有する液晶性高分子化合物を少なくとも含有してなる液晶性組成物を、液晶状態でホメオトロピック配向させた後、前記オキセタニル基を反応せしめて前記ホメオトロピック配向を固定化したものであることを特徴とする本発明の第1または第2に記載の楕円偏光板、である。
【0009】
本発明の第4は、前記の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板が、面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子を有することを特徴とする本発明の第1〜3に記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板、である。
【0010】
本発明の第5は、前記の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板が、面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子と厚さ方向に負の1軸光学異方性を示す以下の[3]および[4]を満たすことを特徴とする第3の光学異方素子とを有することを特徴とする本発明の第1〜4に記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板、である。
[3]0nm≦Re2≦20nm
[4]30nm≦Rth2≦500nm
(ここで、Re2は前記第3の光学異方素子の面内のリターデーション値を意味し、Rth2は前記第3の光学異方素子の厚さ方向のリターデーション値を意味する。前記Re2及びRth2は、それぞれRe2=(Nx2−Ny2)×d2[nm]、Rth2=(Nx2−Nz2)×d2[nm]である。また、d2は前記第3の光学異方素子の厚さ、Nx2およびNy2は前記第3の光学異方素子の面内の主屈折率、Nz2は厚さ方向の主屈折率であり、Nx2≧Ny2>Nz2である。)
【0011】
本発明の第6は、前記第3の光学異方素子が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択される少なくとも一種のポリマー材料であることを特徴とする本発明の第5に記載の楕円偏光板、である。
【0012】
本発明の第7は、前記第1の光学異方素子が、面内で1/4波長の位相差を示しかつ負の2軸性光学異方性を有することを特徴とする本発明の第1〜6に記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板、である。
【0013】
本発明の第8は、総膜厚が400μm以下であることを特徴とする本発明の第1〜7に記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板、である。
【0014】
本発明の第9は、電極を備えた1対の基板間に、電圧無印加時に基板表面に対して垂直配向する液晶分子を含む垂直配向型液晶セルと、前記垂直配向型液晶セル基板の少なくとも片側に垂直配向型液晶セル基板側に請求項1〜7のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板のホメオトロピック配向液晶フィルム側が向かうよう配置し、前記垂直配向型液晶セル基板と前記楕円偏光板との間に、面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子を少なくとも1枚配置したことを特徴とする垂直配向型液晶表示装置、である。
【0015】
本発明の第10は、本発明の第9に記載の垂直配向型液晶表示装置において、垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板を配置した基板と反対側の基板上に、基板側から面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子を少なくとも1枚および直線偏光板を配置したことを特徴とする本発明の第9に記載の垂直配向型液晶表示装置、である。
【0016】
本発明の第11は、前記第1の光学異方素子と前記垂直配向型液晶セルとの間に、少なくとも1枚の厚さ方向に負の1軸光学異方性を示す第3の光学異方素子を有することを特徴とする本発明の第9又は10に記載の垂直配向型液晶表示装置、である。
【0017】
本発明の第12は、前記垂直配向型液晶セルと直線偏光板の間に、面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子を有することを特徴とする本発明の第9〜11に記載の垂直配向型液晶表示装置、である。
【0018】
本発明の第13は、前記第1の光学異方素子が面内で1/4波長の位相差を示し、かつ負の2軸性光学異方性を有することを特徴とする本発明の第9〜12に記載の垂直配向型液晶表示装置、である。
【0019】
本発明の第14は、前記垂直配向型液晶セルの一方の基板が反射機能を有する領域と透過機能を有する領域とを有する基板であることを特徴とする本発明の第9〜13に記載の垂直配向型液晶表示装置、である。
【発明の効果】
【0020】
ホメオトロピック配向液晶フィルムを用いた本発明の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板は、垂直配向型液晶表示装置に配置した場合、視野角を広くすることができるばかりでなく、該垂直配向型液晶表示装置は、表示が明るく、全方位において高コントラストな表示が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板について説明する。
本発明の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板は、少なくとも正の一軸性を示す液晶材料を液晶状態においてホメオトロピック配向させた後、該配向を固定化したホメオトロピック配向液晶フィルムと直線偏光板とからなる。本発明において、液晶材料のホメオトロピック配向を固定化した液晶フィルムを得るに当たって用いられる液晶材料としては、配向基板上もしくは配向基板上に配向膜をコーティングした後、形成させた液晶材料がホメオトロピック配向し、その配向を固定化しうる正の一軸性液晶材料であればよく、低分子液晶化合物、液晶性高分子化合物やこれらの混合物からなる材料であってもよい。
【0022】
前記の低分子液晶化合物は光や熱により反応する反応性基を結合した化合物が配向を容易に固定化できるので好ましい。反応性基としては、ビニル基、アクリロイル基、ビニルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基、アジリジニル基等が好ましいが、他の反応性基、例えばイソシアナート基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、カルボキシル基なども反応条件等によっては使用することができる。
前記の液晶性高分子化合物には主鎖型液晶ポリマーと側鎖型液晶ポリマーとがあるがいずれも使用することができる。主鎖型液晶ポリマーとしては、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミド、ポリカーボネート等が挙げられる。なかでも合成の容易さ、配向性、ガラス転移点などの面から液晶性ポリエステルが好ましく、カチオン重合性基を結合した主鎖型液晶性ポリエステルが特に好ましい。側鎖型液晶ポリマーとしては、ポリアクリレート、ポリマロネート、ポリシロキサン等を挙げることができる。液晶ポリマーは前記の反応性基を結合したものが好ましい。
【0023】
本発明に使用されるホメオトロピック配向液晶フィルムは、例えば前述の液晶材料を配向基板上に展開し、当該液晶材料を配向させた後、必要により光照射および/または加熱処理した後、冷却することにより当該配向状態を固定化することにより製造することができる。
【0024】
前記の主鎖型液晶性ポリエステルは、芳香族ジオール単位(以下、構造単位(A)という。)、芳香族ジカルボン酸単位(以下、構造単位(B)という。)および芳香族ヒドロキシカルボン酸単位(以下、構造単位(C)という。)のうち少なくとも2種を必須単位として含む主鎖型液晶性ポリエステルであって、主鎖末端の少なくとも一方にカチオン重合性基を有する構造単位を含むことを特徴とする主鎖型液晶性ポリエステルである。以下に、構造単位(A)、(B)および(C)について順次説明する。
【0025】
構造単位(A)を導入するための化合物としては下記一般式(a)で表される化合物が好ましく、具体的には、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等若しくはそれらの置換体、4,4’―ビフェノール、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、2,6−ナフタレンジオールなどが挙げられ、特に、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等若しくはそれらの置換体が好ましい。
【0026】
【化1】
【0027】
ただし、式中の−Xは、−H、−CH3、−C2H5、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH2CH3、−CH2CH(CH3)CH3、−CH(CH3)CH2CH3、−C(CH3)3、−OCH3、−OC2H5、−OC6H5、−OCH2C6H5、−F、−Cl、−Br、−NO2、または−CNのいずれかの基であり、特に下記式(a’)で表される化合物が好ましい。
【0028】
【化2】
【0029】
構造単位(B)を導入するための化合物としては下記一般式(b)で表される化合物が好ましく、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等若しくはそれらの置換体、4,4'−スチルベンジカルボン酸若しくはその置換体、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられ、特に、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等若しくはそれらの置換体が好ましい。
【0030】
【化3】
【0031】
ただし、式中の−Xは、−H、−CH3、−C2H5、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH2CH3、−CH2CH(CH3)CH3、−CH(CH3)CH2CH3、−C(CH3)3、−OCH3、−OC2H5、−OC6H5、−OCH2C6H5、−F、−Cl、−Br、−NO2、または−CNのいずれかの基を表す。
【0032】
構造単位(C)を導入するための化合物としては下記一般式(c)で表される化合物が好ましく、具体的には、ヒドロキシ安息香酸若しくはその置換体、4'−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸若しくはその置換体、4'−ヒドロキシ−4−スチルベンカルボン酸若しくはその置換体、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ桂皮酸などが挙げられ、特に、ヒドロキシ安息香酸およびその置換体、4'−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸若しくはその置換体、4'−ヒドロキシ−4−スチルベンカルボン酸若しくはその置換体が好ましい。
【0033】
【化4】
【0034】
ただし、式中の−X、−X1、−X2は、それぞれ個別に、−H、−CH3、−C2H5、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH2CH3、−CH2CH(CH3)CH3、−CH(CH3)CH2CH3、−C(CH3)3、−OCH3、−OC2H5、−OC6H5、−OCH2C6H5、−F、−Cl、−Br、−NO2、または−CNのいずれかの基を表す。
【0035】
主鎖型液晶性ポリエステルは、構造単位として、(A)芳香族ジオール単位、(B)芳香族ジカルボン酸単位、および(C)芳香族ヒドロキシカルボン酸単位のうちから少なくとも2種と、好ましくはさらに主鎖末端の少なくとも一方にカチオン重合性基を有する構造単位(以下、構造単位(D)という。)を含み、サーモトロピック液晶性を示すものであればよく、他の構造単位はこれら条件を満足する限り特に限定されるものではない。
【0036】
主鎖型液晶性ポリエステルを構成する構造単位(A)、(B)および(C)の全構造単位に占める割合は、構造単位(A)、(B)および(C)がジオールあるいはジカルボン酸あるいはヒドロキシカルボン酸として全モノマーの仕込み量に対して占める重量和の比率で表した場合、通常20〜99%、好ましくは30〜95%、特に好ましくは40〜90%の範囲である。20%より少ない場合には、液晶性を発現する温度領域が極端に狭くなるおそれがあり、また99%を越える場合には、カチオン重合性基を有する単位が相対的に少なくなり、配向保持能、機械的強度の向上が得られない恐れがある。
【0037】
次にカチオン重合性基を有する構造単位(D)について説明する。カチオン重合性基としては、エポキシ基、オキセタニル基、およびビニルオキシ基からなる群から選ばれる官能基が好ましく、特にオキセタニル基が好ましい。構造単位(D)を導入するための化合物としては、下記の一般式(d)に示すごとく、フェノール性水酸基あるいはカルボキシル基を有する芳香族化合物に、エポキシ基、オキセタニル基、およびビニルオキシ基から選ばれるカチオン重合性を有する官能基が結合した化合物である。また、芳香環と上記カチオン重合性基との間には、適当なスペーサー部分を有していても良い。
【0038】
【化5】
【0039】
ただし、式中の−X、−X1、−X2、−Y、−Zは、各構造単位毎にそれぞれ独立に以下に示すいずれかの基を表す。
(1)−X、−X1、−X2:−H、−CH3、−C2H5、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH2CH3、−CH2CH(CH3)CH3、−CH(CH3)CH2CH3、−C(CH3)3、−OCH3、−OC2H5、−OC6H5、−OCH2C6H5、−F、−Cl、−Br、−NO2、または−CN
(2)−Y:単結合、−(CH2)n−、−O−、−O−(CH2)n−、−(CH2)n−O−、−O−(CH2)n−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−(CH2)n−、−CO−O−(CH2)n−、−(CH2)n−O−CO−、−(CH2)n−CO−O−、−O−(CH2)n−O−CO−、−O−(CH2)n−CO−O−、−O−CO−(CH2)n−O−、−CO−O−(CH2)n−O−、−O−CO−(CH2)n−O−CO−、−O−CO−(CH2)n−CO−O−、−CO−O−(CH2)n−O−CO−、または−CO−O−(CH2)n−CO−O−(ただし、nは1〜12の整数を示す。)
(3)Z:
【化6】
【0040】
構造単位(D)の中では、カチオン重合性基もしくはカチオン重合性基を含む置換基とフェノール性水酸基あるいはカルボン酸基の結合位置は、これらの基が結合する骨格がベンゼン環の場合は1,4−の位置関係を、ナフタレン環の場合は2,6−の位置関係を、ビフェニル骨格、スチルベン骨格の場合は4,4'−の位置関係にあるものが液晶性の点から好ましい。より具体的には、4−ビニルオキシ安息香酸、4−ビニルオキシフェノール、4−ビニルオキシエトキシ安息香酸、4−ビニルオキシエトキシフェノール、4−グリシジルオキシ安息香酸、4−グリシジルオキシフェノール、4−(オキセタニルメトキシ)安息香酸、4−(オキセタニルメトキシ)フェノール、4'−ビニルオキシ−4−ビフェニルカルボン酸、4'−ビニルオキシ−4−ヒドロキシビフェニル、4'−ビニルオキシエトキシ−4−ビフェニルカルボン酸、4'−ビニルオキシエトキシ−4−ヒドロキシビフェニル、4'−グリシジルオキシ−4−ビフェニルカルボン酸、4'−グリシジルオキシ−4−ヒドロキシビフェニル、4'−オキセタニルメトキシ−4−ビフェニルカルボン酸、4'−オキセタニルメトキシ−4−ヒドロキシビフェニル、6−ビニルオキシ−2−ナフタレンカルボン酸、6−ビニルオキシ−2−ヒドロキシナフタレン、6−ビニルオキシエトキシ−2−ナフタレンカルボン酸、6−ビニルオキシエトキシ−2−ヒドロキシナフタレン、6−グリシジルオキシ−2−ナフタレンカルボン酸、6−グリシジルオキシ−2−ヒドロキシナフタレン、6−オキセタニルメトキシ−2−ナフタレンカルボン酸、6−オキセタニルメトキシ−2−ヒドロキシナフタレン、4−ビニルオキシ桂皮酸、4−ビニルオキシエトキシ桂皮酸、4−グリシジルオキシ桂皮酸、4−オキセタニルメトキシ桂皮酸、4'−ビニルオキシ−4−スチルベンカルボン酸、4'−ビニルオキシ−3'−メトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4'−ビニルオキシ−4−ヒドロキシスチルベン、4'−ビニルオキシエトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4'−ビニルオキシエトキシ−3'−メトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4'−ビニルオキシエトキシ−4−ヒドロキシスチルベン、4'−グリシジルオキシ−4−スチルベンカルボン酸、4'−グリシジルオキシ−3'−メトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4'−グリシジルオキシ−4−ヒドロキシスチルベン、4'−オキセタニルメトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4'−オキセタニルメトキシ−3'−メトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4'−オキセタニルメトキシ−4−ヒドロキシスチルベンなどが好ましい。
【0041】
カチオン重合性基を有する構造単位(D)の主鎖型液晶性ポリエステルを構成する全構造単位に占める割合は、同様に構造単位(D)をカルボン酸あるいはフェノールとして仕込み組成中の重量割合で表した場合、通常1〜60%、好ましくは5〜50%の範囲である。1%よりも少ない場合には、配向保持能、機械的強度の向上が得られない恐れがあり、また60%を越える場合には、結晶性が上がることにより液晶温度範囲が狭まり、どちらの場合も好ましくない。
【0042】
(A)〜(D)の各構造単位は、それぞれ1つまたは2つのカルボキシル基あるいはフェノール性水酸基を有しているが、(A)〜(D)の有するカルボキシル基、フェノール性水酸基は、仕込みの段階においてそれぞれの官能基の当量数の総和を概ねそろえることが望ましい。すなわち、構造単位(D)が遊離のカルボキシル基を有する単位である場合には、((A)のモル数×2)=((B)のモル数×2)+((D)のモル数)、構造単位(D)が遊離のフェノール性水酸基を有する単位である場合には、((A)のモル数×2)+((D)のモル数)=((B)のモル数×2)なる関係を概ね満たすことが望ましい。この関係式から大きく外れる仕込み組成の場合には、カチオン重合に関わる単位以外のカルボン酸あるいはフェノール、もしくはそれらの誘導体が分子末端となることになり、十分なカチオン重合性が得られないばかりか、これら酸性の残基が存在することにより、プロセス上の望む段階以外で重合反応や分解反応が起きてしまうおそれがあり好ましくない。
【0043】
主鎖型液晶性ポリエステルは、(A)、(B)、(C)および(D)以外の構造単位を含有することができる。含有することができる他の構造単位としては、特に限定はなく当該分野で公知の化合物(モノマー)を使用することができる。例えば、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸およびこれら化合物にハロゲン基やアルキル基を導入した化合物や、ビフェノール、ナフタレンジオール、脂肪族ジオールおよびこれら化合物にハロゲン基やアルキル基を導入した化合物等を挙げることができる。
【0044】
また、主鎖型液晶性ポリエステルを構成する単位の原料として光学活性な化合物を用いた場合、該主鎖型液晶性ポリエステルにカイラルな相を付与せしめることが可能となる。かかる光学活性な化合物としては特に制限はないが、例えば、光学活性な脂肪族アルコール(CnH2n+1OH、ただしnは4から14の整数を表す。)、光学活性な脂肪族基を結合したアルコキシ安息香酸(CnH2n+1O−Ph−COOH、ただしnは4から14の整数、Phはフェニル基を表す。)、メントール、カンファー酸、ナプロキセン誘導体、ビナフトール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチルブタンジオール、2−クロロブタンジオール、酒石酸、メチルコハク酸、3−メチルアジピン酸などを挙げることができる。
【0045】
主鎖型液晶性ポリエステルの分子量は、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒(質量比60/40)中、30℃で測定した対数粘度ηが0.03〜0.50dl/gであることが好ましくより好ましくは0.05〜0.15dl/gである。ηが0.03dl/gより小さい場合には、主鎖型液晶性ポリエステルの溶液粘度が低く、フィルム化する際に均一な塗膜が得られない恐れがある。また、0.50dl/gより大きい場合には、液晶配向時に要する配向処理温度が高くなり、配向と架橋が同時に起こり配向性を低下させる危険性がある。
【0046】
本発明において、主鎖型液晶性ポリエステルの分子量制御は専ら仕込み組成により決定される。具体的には分子両末端を封印する形で反応する1官能性モノマー、すなわち前記した構造単位(D)を導入するための化合物の、全仕込み組成における相対的な含有量により、得られる主鎖型液晶性ポリエステルの平均的な重合度(構造単位(A)〜(D)の平均結合数)が決定される。したがって、所望の対数粘度を有する主鎖型液晶性ポリエステルを得るためには、仕込みモノマーの種類に応じて仕込み組成を調整する必要がある。
【0047】
主鎖型液晶性ポリエステルの合成方法としては、通常のポリエステルを合成する際に用いられる方法を採ることができ、特に限定されるものではない。例えば、カルボン酸単位を酸クロリドやスルホン酸無水物などに活性化し、それを塩基の存在下でフェノール単位と反応させる方法(酸クロリド法)、カルボン酸単位とフェノール単位をDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)などの縮合剤を用いて直接縮合させる方法、フェノール単位をアセチル化して、これとカルボン酸単位とを溶融条件下で脱酢酸重合する方法などを用いることが出来る。ただし、溶融条件下での脱酢酸重合を用いる場合には、カチオン重合性基を有するモノマー単位が反応条件下で重合や分解反応を起こすおそれがあるため、反応条件を厳密に制御する必要がある場合が多く、場合によっては適当な保護基を用いたり、あるいは一度別な官能基を有する化合物を反応させておいてから、後でカチオン重合性基を導入するなどの方法を採ることが望ましい場合もある。また、重合反応により得られた粗主鎖型液晶性ポリエステルを、再結晶、再沈などの方法により精製してもよい。
【0048】
このようにして得られた主鎖型液晶性ポリエステルは、NMR(核磁気共鳴法)などの分析手段により、それぞれのモノマーがどのような比率で主鎖型液晶性ポリエステル中に存在するかを同定することができる。特に、カチオン重合性基の量比から、主鎖型液晶性ポリエステルの平均結合数を算出する事ができる。
【0049】
前記カチオン重合性基を含む主鎖型液晶性ポリエステルに他の化合物を配合することも、本発明の範囲を超えない限り可能である。例えば、本発明に用いる主鎖型液晶性ポリエステルと混和しうる他の高分子化合物や各種低分子化合物等を添加しても良い。かかる低分子化合物は、液晶性を有していても有していなくとも良く、架橋性の主鎖型液晶性ポリエステルと反応できる重合性基を有していてもいなくとも良い。重合性基を有する液晶性化合物を用いることが好ましく、例えば以下のものを例示できる。
【0050】
【化7】
【0051】
ここで、nは2〜12の整数を、また−V−および−Wはそれぞれ以下のいずれかの基を表す。
−V−: 単結合、−O−、−O−CmH2m−O−(ただし、mは2〜12の整数)
−W:
【化8】
【0052】
なお、添加する高分子化合物や低分子化合物が光学活性である場合、組成物としてカイラルな液晶相を誘起させることができる。かかる組成物は、ねじれネマチック配向構造やコレステリック配向構造を有するフィルムの製造に利用することができる。
【0053】
側鎖型液晶ポリマーとしては、前述のようにポリ(メタ)アクリレート、ポリマロネート、ポリシロキサン等が挙げられるが、中でも下記一般式(1)で表される反応性基を結合したポリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【化9】
【0054】
式(1)において、R3は、それぞれ独立に、水素またはメチル基を表し、R4は、それぞれ独立に、水素、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シアノ基、ブロモ基、クロロ基、フルオロ基またはカルボキシル基を表し、R5は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基を表し、R6は、炭素数1から24までの炭化水素基を表し、L2は、それぞれ独立に、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−CH=CH−または−C≡C−を表し、pは、1から10までの整数を表し、qは、0から10までの整数を表し、a、b、c、d、eおよびfは、ポリマー中の各ユニットのモル比(a+b+c+d+e+f=1.0、ただし、c+d+e=0ではない)を表す。
【0055】
式(1)で表される側鎖型高分子液晶性化合物を構成する各成分のモル比は、a+b+c+d+e+f=1.0、c+d+e=0ではなく、かつ、液晶性を示すことが必要である。この要件を満たせば各成分のモル比は任意でよいが、以下のとおりであることが好ましい。
a:好ましくは0〜0.80、より好ましくは0.05〜0.50
b:好ましくは0〜0.90、より好ましくは0.10〜0.70
c:好ましくは0〜0.50、より好ましくは0.10〜0.30
d:好ましくは0〜0.50、より好ましくは0.10〜0.30
e:好ましくは0〜0.50、より好ましくは0.10〜0.30
f:好ましくは0〜0.30、より好ましくは0.01〜0.10
【0056】
これらのポリ(メタ)アクリレート中の各成分は、上記の条件を満たせば、6種類の成分すべてが存在する必要もない。
また、R4は、好ましくは、水素、メチル基、ブチル基、メトキシ基、シアノ基、ブロモ基、フルオロ基であり、特に好ましくは、水素、メトキシ基またはシアノ基であり、L2は、好ましくは、単結合、−O−、−O−CO−または−CO−O−であり、R6は、好ましくは、炭素数2、3、4、6、8および18の炭化水素基を表す。
さらに、一般式(1)で表される側鎖型高分子液晶性化合物は、各成分a〜fのモル比や配向形態により複屈折率が変化するが、ネマチック配向をとった場合の複屈折率は0.001〜0.300であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.25である。
【0057】
上記の側鎖型液晶ポリマーの各成分に該当するそれぞれの(メタ)アクリル化合物は、通常の有機化学の合成方法により得ることができる。オキセタニル基を有する(メタ)アクリル化合物は、後述する式(7)、(8)および(9)に該当する化合物の合成に類似した方法により容易に得ることができる。
【0058】
上記の側鎖型液晶ポリマーは、各成分に該当する上記方法で得られたそれぞれの(メタ)アクリル化合物の(メタ)アクリル基をラジカル重合またはアニオン重合により共重合することにより容易に合成することができる。重合条件は特に限定されるものではなく、通常の条件を採用することができる。
【0059】
ラジカル重合の例としては、各成分に該当する(メタ)アクリル化合物をジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの溶媒に溶かし、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や過酸化ベンゾイル(BPO)などを開始剤として、60〜120℃で数時間反応させる方法が挙げられる。また、液晶相を安定に出現させるために、臭化銅(I)/2,2’−ビピリジル系や2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシ・フリーラジカル(TEMPO)系などを開始剤としたリビングラジカル重合を行い、分子量分布を制御する方法も有効である。これらのラジカル重合は脱酸素条件下に行う必要がある。
【0060】
アニオン重合の例としては、各成分に該当する(メタ)アクリル化合物をテトラヒドロフラン(THF)などの溶媒に溶かし、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、グリニャール試薬などの強塩基を開始剤として反応させる方法が挙げられる。また、開始剤や反応温度を最適化することでリビングアニオン重合とし、分子量分布を制御することもできる。これらのアニオン重合は、脱水かつ脱酸素条件で行う必要がある。
【0061】
側鎖型液晶ポリマーは、重量平均分子量が1,000〜200,000であるものが好ましく、3,000〜50,000のものが特に好ましい。この範囲外では強度が不足したり、配向性が悪化したりして好ましくない。
【0062】
本発明において、液晶性組成物は下記一般式(2)で表されるジオキセタン化合物を含有することが好ましい。
【化10】
【0063】
式(2)において、R7は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基を表し、L3は、それぞれ独立に、単結合または−(CH2)n−(nは1〜12の整数)を表し、X1は、それぞれ独立に、単結合、−O−、−O−CO−または−CO−O−を表し、M1は、式(3)または式(4)で表されるいずれかであり、式(3)および式(4)中のP1は、それぞれ独立に式(5)から選ばれる基を表し、P2は式(6)から選ばれる基を表し、L4は、それぞれ独立に単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−O−CO−または−CO−O−を表す。
−P1−L4−P2−L4−P1− (3)
−P1−L4−P1− (4)
【化11】
【化12】
【0064】
式(5)および式(6)において、Etはエチル基を、iPrはイソプロピル基を、nBuはノルマルブチル基を、tBuはターシャリーブチル基をそれぞれ表す。
より具体的には、M1基から見て左右のオキセタニル基を結合している連結基は異なっても(非対称型)同一でも(対称型)よく、特に2つのL3が異なる場合や他の連結基の構造によっては液晶性を示さないこともあるが、使用には制約とならない。
一般式(2)で表される化合物は、M1、L3およびX1の組み合わせから多くの化合物を例示することができるが、好ましくは、下記の化合物を挙げることができる。
【化13】
【0065】
これらの化合物は有機化学における通常の合成方法に従って合成することができ、合成方法は特に限定されるものではない。
合成にあたっては、オキセタニル基がカチオン重合性を有するため、強い酸性条件下では、重合や開環などの副反応を起こすことを考慮して、反応条件を選ぶ必要がある。なお、オキセタニル基は類似のカチオン重合性官能基であるオキシラニル基などと比べて、副反応を起こす可能性が低い。さらに、類似したアルコール、フェノール、カルボン酸などの各種化合物をつぎつぎに反応させることもあり、適宜保護基の活用を考慮してもよい。
【0066】
より具体的な合成方法としては、例えば、ヒドロキシ安息香酸を出発化合物として、ウィリアムソンのエーテル合成法等によりオキセタニル基を結合させ、次いで得られた化合物と本発明に適したジオールとを、酸クロリド法やカルボジイミドによる縮合法等を用いて結合させる方法や、逆に予めヒドロキシ安息香酸の水酸基を適当な保護基で保護し、本発明に適したジオールと縮合後、保護基を脱離させ、適当なオキセタニル基を有する化合物(オキセタン化合物)、例えばハロアルキルオキセタン等と水酸基とを反応させる方法などが挙げられる。
【0067】
オキセタン化合物と水酸基との反応は、用いられる化合物の形態や反応性により適した反応条件を選定すればよいが、通常、反応温度は−20℃〜180℃、好ましくは10℃〜150℃が選ばれ、反応時間は10分〜48時間、好ましくは30分〜24時間である。これらの範囲外では反応が充分に進行しなかったり、副反応が生じたりして好ましくない。また、両者の混合割合は、水酸基1当量につき、オキセタン化合物0.8〜1.2当量が好ましい。
【0068】
本発明で用いる液晶材料においては、前記側鎖型液晶ポリマーの他に、液晶性を損なわずに混和し得る種々の化合物を含有することができる。含有することができる化合物としては、オキセタニル基、エポキシ基、ビニルエーテル基などのカチオン重合性官能基を有する化合物、フィルム形成能を有する各種の高分子物質、液晶性を示す各種の低分子液晶性化合物や高分子液晶性化合物などが挙げられる。前記の側鎖型液晶ポリマーを組成物として用いる場合、組成物全体に占める前記の側鎖型液晶ポリマーの割合は、10質量%以上、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。側鎖型液晶ポリマーの含有量が10質量%未満ではフィルム形成能が不足したり組成物中に占める重合性基濃度が低くなり、重合後の機械的強度が不十分となるため好ましくない。
【0069】
また前記液晶材料は配向処理された後、オキセタニル基をカチオン重合させて架橋することにより、当該液晶状態を固定化することができる。このため、液晶材料中に、光や熱などの外部刺激でカチオンを発生する光カチオン発生剤および/または熱カチオン発生剤を含有させておくことが好ましい。また必要によっては各種の増感剤を併用してもよい。
【0070】
光カチオン発生剤とは、適当な波長の光を照射することによりカチオンを発生できる化合物を意味し、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系などを例示することが出来る。これら化合物の対イオンとしては、アンチモネート、フォスフェート、ボレートなどが好ましく用いられる。具体的な化合物としては、Ar3S+SbF6−、Ar3P+BF4−、Ar2I+PF6−(ただし、Arはフェニル基または置換フェニル基を示す。)などが挙げられる。また、スルホン酸エステル類、トリアジン類、ジアゾメタン類、β−ケトスルホン、イミノスルホナート、ベンゾインスルホナートなども用いることができる。
【0071】
熱カチオン発生剤とは、適当な温度に加熱されることによりカチオンを発生できる化合物であり、例えば、ベンジルスルホニウム塩類、ベンジルアンモニウム塩類、ベンジルピリジニウム塩類、ベンジルホスホニウム塩類、ヒドラジニウム塩類、カルボン酸エステル類、スルホン酸エステル類、アミンイミド類、五塩化アンチモン−塩化アセチル錯体、ジアリールヨードニウム塩−ジベンジルオキシ銅、ハロゲン化ホウ素−三級アミン付加物などを挙げることができる。
【0072】
これらのカチオン発生剤の液晶材料中への添加量は、用いる側鎖型液晶性高分子物質を構成するメソゲン部分やスペーサ部分の構造や、オキセタニル基当量、液晶の配向条件などにより異なるため一概には言えないが、側鎖型液晶性高分子物質に対し、通常100質量ppm〜20質量%、好ましくは1000質量ppm〜10質量%、より好ましくは0.2質量%〜7質量%の範囲である。100質量ppmよりも少ない場合には、発生するカチオンの量が十分でなく重合が進行しないおそれがあり、また20質量%よりも多い場合には、液晶フィルム中に残存するカチオン発生剤の分解残存物等が多くなり耐光性などが悪化するおそれがあるため好ましくない。
【0073】
次に配向基板について説明する。
配向基板としては、まず平滑な平面を有するものが好ましく、有機高分子材料からなるフィルムやシート、ガラス板、金属板などを挙げることができる。コストや連続生産性の観点からは有機高分子からなる材料を用いることが好ましい。有機高分子材料の例としては、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムが挙げられる。またポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、ポリシクロオレフィン、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムも挙げられる。これらはブレンド物であってもよい。
これらのなかでも、光学フィルムとして用いられるトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン等のプラスチックフィルムが賞用される。有機高分子材料のフィルムとしては、特にゼオノア(商品名,日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(商品名,日本ゼオン(株)製)、アートン(商品名,JSR(株)製)などのノルボルネン構造を有するポリマー物質からなるプラスチックフィルムが光学的にも優れた特性を有するので好ましい。また金属フィルムとしては、例えばアルミニウムなどから形成される当該フィルムが挙げられる。
【0074】
前述の液晶材料を用い、安定してホメオトロピック配向を得るためには、これらの基板を構成する材料が長鎖(通常炭素数4以上、好ましくは8以上)のアルキル基やフッ素化炭化水素基を有しているか、基板表面にこれらの基を有する化合物の層を有することがより好ましい。なお、これら有機高分子材料は単独で基板として用いても良いし、他の基板の上に薄膜として形成させていても良い。
【0075】
長鎖(通常炭素数4以上、好ましくは8以上)のアルキル基やフッ素化炭化水素基を有する化合物の層(配向膜)の形成工程について説明する。
配向膜を形成する材料は溶液状態にしての塗布が、配向膜厚や表面性の制御から好ましい。当該溶液は、当該材料を溶解できる溶媒を用いて適宜行うことができる。例えばPVAの溶液を調製する溶媒は、当該PVAを溶解できる溶媒であれば特に制限はなく、通常は水やメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールやこれらの混合物が使用される。
なお、溶解に当たっては塗布や液晶の配向に悪影響を及ぼさない各種の添加剤を添加してもよい。また、溶解を促進するために加温してもよい。
【0076】
基材上に配向膜を形成するために使用される塗布方式は特に制限はなく、特に大面積の配向膜の塗布方法は、やわらかい樹脂版を用いるフレキソ印刷方式、ディスペンサー方式、グラビアコート方式、マイクログラビア方式、スクリーン印刷方式、リップコート方式、ダイコート方式など挙げることができる。これらの中でグラビアコート方式、リップコート方式やダイコート方式が好ましい。
塗布された配向膜は、必要により乾燥を行う。乾燥温度は、通常、PVAの場合はその耐熱性から限定されるが、目的によってはそれ以上であってもよい。一般には、50℃〜180℃、好ましくは80℃〜160℃である。また乾燥時間も特に制限はないが、通常は10秒〜60分、好ましくは1分〜30分がよい。被乾燥膜と乾燥装置との相対的な移動速度は相対風速で60m/分〜1200m/分が好ましい。
【0077】
液晶の分野においては、基板に対して布等で一定方向に擦るラビング処理を行うことが一般的であるが、本発明に使用されるホメオトロピック配向液晶フィルムは、面内の異方性が基本的に生じない配向構造であるため、必ずしもラビング処理を必要としない。しかしながら、液晶材料を塗布したときのはじき抑制の観点からは弱いラビング処理を施すことがより好ましい。ラビング条件を規定する重要な設定値としては周速比がある。これはラビング布をロールに巻きつけて回転させつつ基板を擦る場合の、布の移動速度と基板の移動速度の比を表す。本発明においては弱いラビング処理とは、通常周速比が50以下、より好ましくは25以下、特に好ましくは10以下である。周速比が50より大きい場合、ラビングの効果が強すぎて液晶材料が完全に垂直に配向しきれず、垂直方向より面内方向に倒れた配向となる恐れがある。
【0078】
次に、本発明に使用されるホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法について説明する。液晶フィルム製造の方法としてはこれらに限定されるものではないが、前述の液晶材料を前述の配向基板上に展開し、当該液晶材料を配向させた後、光照射および/または加熱処理することにより当該配向状態を固定化することにより製造することができる。
液晶材料を配向基板上に展開して液晶材料層を形成する方法としては、液晶材料を溶融状態で直接配向基板上に塗布する方法や、液晶材料の溶液を配向基板上に塗布後、塗膜を乾燥して溶媒を留去させる方法が挙げられる。
【0079】
溶液の調製に用いる溶媒に関しては、本発明の液晶材料を溶解でき適当な条件で留去できる溶媒であれば特に制限はなく、一般的にアセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ブトキシエチルアルコール、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノールなどのエーテルアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチルなどのエステル類、フェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系などやこれらの混合系が好ましく用いられる。また、配向基板上に均一な塗膜を形成するために、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤などを溶液に添加してもよい。
さらに、前述の液晶性高分子化合物の配向の固定化を容易ならしめるために、液晶性高分子化合物に結合されている重合可能な基と同一の反応性を有する基を1分子内に2個以上有する低分子化合物(液晶性、非液晶性を問わない)や接着性を向上させうるような各種化合物を添加することもできる。
【0080】
液晶材料を直接塗布する方法でも、溶液を塗布する方法でも、塗布方法については、塗膜の均一性が確保される方法であれば、特に限定されることはなく公知の方法を採用することができる。例えば、スピンコート法、ダイコート法、カーテンコート法、ディップコート法、ロールコート法などが挙げられる。
液晶材料の溶液を塗布する方法では、塗布後に溶媒を除去するための乾燥工程を入れることが好ましい。この乾燥工程は、塗膜の均一性が維持される方法であれば、特に限定されることなく公知の方法を採用することができる。例えば、ヒーター(炉)、温風吹きつけなどの方法が挙げられる。
【0081】
液晶フィルムの膜厚は、液晶表示装置の方式や種々の光学パラメーターに依存することから一概には言えないが、通常0.2μm〜10μm、好ましくは0.3μm〜5μm、さらに好ましくは0.5μm〜2μmである。膜厚が0.2μmより薄い場合、十分な視野角改良あるいは輝度向上効果を得ることができない恐れがある。また10μmを越えると、液晶表示装置が不必要に色付く等の恐れがある。
【0082】
続いて、配向基板上に形成された液晶材料層を、熱処理などの方法で液晶配向を形成し、光照射および/または加熱処理で硬化を行い固定化する。最初の熱処理では、使用した液晶材料の液晶相発現温度範囲に加熱することで、該液晶材料が本来有する自己配向能により液晶を配向させる。熱処理の条件としては、用いる液晶材料の液晶相挙動温度(転移温度)により最適条件や限界値が異なるため一概には言えないが、通常10〜250℃、好ましくは30℃〜160℃の範囲であり、該液晶材料のガラス転移点(Tg)以上の温度、さらに好ましくはTgより10℃以上高い温度で熱処理するのが好ましい。あまり低温では、液晶配向が充分に進行しないおそれがあり、また高温では液晶材料中のカチオン重合性反応基や配向基板に悪影響を与えるおそれがある。また、熱処理時間については、通常3秒〜30分、好ましくは10秒〜20分の範囲である。3秒より短い熱処理時間では、液晶配向が充分に完成しないおそれがあり、また30分を超える熱処理時間では、生産性が悪くなるため、どちらの場合も好ましくない。 該液晶材料層を熱処理などの方法で液晶配向を形成したのち、液晶配向状態を保ったまま液晶材料を組成物中のオキセタニル基の重合反応により硬化させる。硬化工程は、完成した液晶配向を硬化(架橋)反応により液晶配向状態を固定化し、より強固な膜に変性することを目的にしている。
【0083】
本発明の液晶材料は重合性のオキセタニル基を持つため、その反応基の重合(架橋)には、カチオン重合開始剤(カチオン発生剤)を用いるのが好ましいことは前述のとおりである。また、重合開始剤としては、熱カチオン発生剤より光カチオン発生剤の使用が好ましい。
光カチオン発生剤を用いた場合、光カチオン発生剤の添加後、液晶配向のための熱処理までの工程を暗条件(光カチオン発生剤が解離しない程度の光遮断条件)で行えば、液晶材料は配向段階までは硬化することなく、充分な流動性をもって液晶配向することができる。この後、適当な波長の光を発する光源からの光を照射することによりカチオンを発生させ、液晶材料層を硬化させる。
【0084】
光照射の方法としては、用いる光カチオン発生剤の吸収波長領域にスペクトルを有するようなメタルハライドランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、アークランプ、レーザーなどの光源からの光を照射し、光カチオン発生剤を開裂させる。1平方センチメートルあたりの照射量としては、積算照射量として通常1〜2000mJ、好ましくは10〜1000mJの範囲である。ただし、光カチオン発生剤の吸収領域と光源のスペクトルが著しく異なる場合や、液晶材料自身に光源からの光の吸収能がある場合などはこの限りではない。これらの場合には、適当な光増感剤や、吸収波長の異なる2種以上の光カチオン発生剤を混合して用いるなどの方法を採ることもできる。
光照射時の温度は、該液晶材料が液晶配向をとる温度範囲である必要がある。また、硬化の効果を充分にあげるためには、該液晶材料のTg以上の温度で光照射を行うのが好ましい。
【0085】
以上のような工程により製造した液晶材料層は、充分強固な膜となっている。具体的には、硬化反応によりメソゲンが3次元的に結合され、硬化前と比べて耐熱性(液晶配向保持の上限温度)が向上するのみでなく、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐クラック性などの機械的強度に関しても大幅に向上する。
【0086】
なお、配向基板として、光学的に等方でない、あるいは得られる液晶フィルムが最終的に目的とする使用波長領域において不透明である、もしくは配向基板の膜厚が厚すぎて実際の使用に支障を生じるなどの問題がある場合、配向基板上で形成された形態から、偏光板、目的とする使用波長領域で障害とならないような基板や位相差機能を有する延伸フィルムに転写した形態も使用しうる。転写方法としては公知の方法を採用することができる。例えば、特開平4−57017号公報や特開平5−333313号公報に記載されているように液晶フィルム層を粘着剤もしくは接着剤を介して、配向基板とは異なる基板を積層した後に、該積層体から配向基板を剥離することで液晶フィルムのみを転写する方法等を挙げることができる。
転写に使用する粘着剤もしくは接着剤は、後述のように光学グレードのものであれば特に制限はなく、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系など一般に用いられているものを用いることができる。
【0087】
以上のようにして得られるホメオトロピック配向液晶フィルム層は、当該液晶層の光学位相差を垂直入射から傾けた角度で測定することによって定量化することができる。ホメオトロピック配向液晶層の場合、この位相差値は垂直入射について対称的である。
光学位相差の測定には数種の方法を利用することができ、例えば自動複屈折測定装置(王子計測機器(株)製)および偏光顕微鏡を利用することができる。このホメオトロピック配向液晶層はクロスニコル偏光子間で黒色に見える。このようにしてホメオトロピック配向性を評価した。
【0088】
本発明に使用されるホメオトロピック配向液晶フィルムは、液晶フィルムの厚さをd1、液晶フィルム面内の主屈折率をNx1およびNy1、厚さ方向の主屈折率をNz1、かつ、Nz1>Nx1≧Ny1とした場合に、面内のリターデーション値(Re1=(Nx1−Ny1)×d1[nm])および厚さ方向のリターデーション値(Rth1=(Nx1−Nz1)×d1[nm])が、以下の[1]および[2]を満たすことが好ましい。
[1]0nm≦Re1≦20nm
[2]−500nm≦Rth1≦−30nm
【0089】
ホメオトロピック配向液晶フィルムの光学パラメータであるRe1値、Rth1値は、液晶表示装置の方式や種々の光学パラメーターに依存することから一概には言えないが、550nmの単色光に対して、ホメオトロピック配向液晶フィルムの面内のリターデーション値(Re1)は、通常0nm〜20nm、好ましくは0nm〜10nm、さらに好ましくは0nm〜5nmの範囲であり、かつ、厚さ方向のリターデーション値(Rth1)は、通常−500nm〜−30nm、好ましくは−400nm〜−50nm、さらに好ましくは−400nm〜−100nmに制御されたものである。
【0090】
前記Re1値及びRth1値を上記範囲にすることにより、液晶表示装置の視野角改良フィルムとしては、液晶表示の色調補正を行いながら視野角を広げることが可能となる。Re1値が20nmより大きい場合、大きい面内の位相差値の影響で、液晶表示装置の正面特性を悪化させる恐れがある。また、Rth1値が−30nmより大きいあるいは−500nmより小さい場合には、十分な視野角改良効果が得られないかあるいは、斜めから見たときに不必要な色付きが生じる恐れがある。
【0091】
またホメオトロピック配向液晶フィルムは、下記[5]および[6]で表される条件を満たすことが好ましい。
[5] −0.5≦Δn≦−0.0005
[6] Δn=Nx1−Nz1
【0092】
前記[5]および[6]において、Δnは、前記ホメオトロピック配向液晶フィルム(複屈折層)の厚さ方向の複屈折率を示し、Nx1、Ny1およびNz1は前述のように、前記ホメオトロピック配向液晶フィルムにおける3つの軸方向における屈折率をそれぞれ示す。なお、生産性の向上や、前記複屈折層を含む光学フィルムの薄型化の点から、より好ましくは−0.2≦Δn≦−0.005 である。
【0093】
また、ホメオトロピック配向液晶フィルムに替えて厚さ方向に正の1軸性を有する光学異方素子として延伸フィルムを用いようとしても厚み方向の延伸には限界があるため、厚み方向の位相差を広範囲に制御することができない。また熱収縮フィルムにより、長尺フィルムを熱収縮させて厚み方向に延伸させる手法も用いられているが、厚さ方向の複屈折率は0.003以下で得られるフィルムの厚みは50〜100μm程度あり、元の長尺フィルムよりも厚みが増してしまい、液晶表示装置の薄型化要求に伴う楕円偏光板全体の薄膜化の要求に対応することは困難である
楕円偏光板の膜厚は近年の薄型化要求から望ましくは400μm以下、特に望ましくは300μm以下がよい。
【0094】
次に、本発明の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板を用いた垂直配向型液晶表示装置について説明する。
本発明の垂直配向型液晶表示装置は、電極を備えた1対の基板間に、電圧無印加時に基板表面に対して垂直配向する液晶分子を含む垂直配向型液晶セルと、前記垂直配向型液晶セル基板の少なくとも片側に本発明の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板のホメオトロピック配向液晶フィルム側が向かうよう配置し、前記垂直配向型液晶セル基板と前記楕円偏光板との間に、面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子を少なくとも1枚配置したことを特徴とするものである。
【0095】
前記第1の光学異方素子は面内で1/4波長の位相差を示す光学素子と面内で1/2波長の位相差を示す第2の光学異方素子からなる広帯域1/4波長板といわれる光学素子からなっていてもよい。また前記第1の光学異方素子と前記垂直配向型液晶セルとの間に、少なくとも1枚の厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方素子を配置することが更なる広視野角化の観点から好ましく、また前記垂直配向型液晶セルと直線偏光板の間に、面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子を配置することが好ましい。
【0096】
本発明の楕円偏光板を構成する直線偏光板としては、通常、偏光子の片側または両側に保護フィルムを有するものが使用される。偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用でき、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムを延伸して二色性材料(沃素、染料)を吸着・配向したものが好適に用いられる。偏光子の厚さも特に制限されないが、5〜80μm程度が一般的である。
【0097】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよく、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0098】
前記偏光子の片側または両側に設けられている保護フィルムには、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。前記保護フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、あるいは前記ポリマーのブレンド物などが保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。その他、アクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型ないし紫外線硬化型樹脂などをフィルム化したものなどが挙げられる。保護フィルムの厚さは、一般には500μm以下であり、1〜300μmが好ましい。特に5〜200μmとするのが好ましい。
【0099】
保護フィルムとしては、偏光特性や耐久性などの点より、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーが好ましい。特にトリアセチルセルロースフィルムが好適である。なお、偏光子の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。前記偏光子と保護フィルムとは通常、粘着剤等を介して密着している。
接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。
【0100】
前記保護フィルムとしては、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものを用いることができる。
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
【0101】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えば、サンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護層とは別体のものとして設けることもできる。
【0102】
直線偏光板に1/4波長板を組み合わせることにより円偏光板が形成される。円偏光板は、1/4波長板により直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える機能を有する。
垂直配向型液晶セルの両側に直線偏光板を有し、直線偏光板と垂直配向型液晶セルとの間に面内で1/4波長の位相差を有する第1の光学異方素子を有することにより、電圧無印加時には液晶層の観測方向の位相差が0のため上下の偏光板を直交にすることにより暗表示が可能となり、電圧印加時には観測方向の位相差が生じ明表示が可能となる。この場合、1/4波長の位相差を有する第1の光学異方素子の遅相軸と直線偏光板の吸収軸とのなす角度が45度であることにより最も簡単な構成で液晶層に円偏光を入手させることができる。
また、透過機能と反射機能を兼ね備えた半透過反射型の垂直配向型液晶表示装置の場合は、反射時に良好な表示特性を得るため、全波長において1/4波長の位相差を有する第1の光学異方素子を用いるか、直線偏光板と1/4波長板との間に、面内で1/2波長の位相差を有する第2の光学異方素子を用いることもできる。
【0103】
次に、面内で1/4波長の位相差を有する第1の光学異方素子あるいは1/2波長の位相差を有する第2の光学異方素子並びに面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子について説明する。
これらの光学異方素子は所望の位相差機能を有すればよく、例えば、ポリマーフィルムを一軸延伸または二軸延伸したもの、Z軸配向処理したものや液晶性を示す材料を塗工・配向させた配向フィルム膜、等が挙げられる。
【0104】
前記光学異方素子としては、適宜なポリマーからなるフィルムを一軸あるいは二軸延伸処理する手法や特開平5−157911号公報に示されるような熱収縮フィルムにより長尺フィルムの幅方向を熱収縮させて厚み方向に位相差を大きくする手法により製造した複屈折フィルムが好ましく、上記原料としては例えば有機高分子材料からなるフィルムやシートを挙げることができる。例えば、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムが挙げられる。またポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムも挙げられる。さらにイミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルムなども挙げられる。これらのなかでも水素結合性が高く、光学フィルムとして用いられるトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン等のプラスチックフィルムが賞用される。有機高分子材料のフィルムとしては、特に、ゼオノア(商品名,日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(商品名,日本ゼオン(株)製)、アートン(商品名,JSR(株)製)などのノルボルネン構造を有するポリマー物質からなるプラスチックフィルムが好適に用いられる。上記記載のフィルムを延伸処理してなる位相差フィルムが光学的にも優れた特性を有する。
【0105】
液晶ポリマーなどの液晶材料からなる配向フィルムとしては、均一でモノドメインなネマチック配向性を示し、かつその配向状態を容易に固定化できる液晶性高分子を基板上、もしくは配向膜を塗布した基板上で熱処理し、均一、モノドメインなネマチック構造を形成させたのち冷却することによって液晶状態における配向を損なうことなく固定化して製造される配向フィルム膜や、前記液晶ポリマーに光重合性液晶化合物を配合して液晶性組成物とし、基板上もしくは配向膜を塗布した基板上に塗布・配向し重合させた配向フィルム膜を挙げることができる。
【0106】
面内方向にx方向、y方向を取り、厚さ方向をz方向とする場合、正の1軸性光学異方素子は、屈折率としてnx>ny=nzの関係を有する。また、正の2軸性光学異方素子は、屈折率としてnx>nz>nyの関係を有する。負の1軸性光学異方素子は、屈折率としてnx=ny>nzの関係を有する。負の2軸性光学異方素子は、屈折率としてnx>ny>nzの関係を有する。
2軸性をNZ係数=(nx−nz)/(nx−ny)で定義した場合、NZ>1が負の2軸、NZ=1が正の1軸、NZ<1が正の2軸と分類できる。
【0107】
面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子は、第1の光学異方素子の厚さをd3、第1の光学異方素子面内の主屈折率をNx3およびNy3、厚さ方向の主屈折率をNz3、かつ、Nx3>Ny3とした場合に、面内のリターデーション値(Re3=(Nx3−Ny3)×d3[nm])が80〜170nmを有し、第1の光学異方素子のNZ係数(=(Nx3−Nz3)/(Nx3−Ny3))をNZ3とした場合、−1<NZ3<4の関係を有するものが好ましい。
【0108】
第1の光学異方素子の光学パラメータであるRe3値、NZ3値は、液晶表示装置の方式や種々の光学パラメーターに依存することから一概には言えないが、550nmの単色光に対して、第1の光学異方素子面内のリターデーション値(Re3)は、通常80nm〜170nm、好ましくは100nm〜150nm、さらに好ましくは120nm〜140nmの範囲であり、かつ、NZ3値は、−1<NZ3<4、好ましくは0.5<NZ3<3、さらに好ましくは1≦NZ3<3に制御されたものである。
【0109】
面内で1/2波長の位相差を示す第2の光学異方素子は、第2の光学異方素子の厚さをd4、第2の光学異方素子面内の主屈折率をNx4およびNy4、厚さ方向の主屈折率をNz4、かつ、Nx4>Ny4とした場合に、面内のリターデーション値(Re4=(Nx4−Ny4)×d4[nm])が200〜350nmを有し、第2の光学異方素子のNZ係数(=(Nx4−Nz4)/(Nx4−Ny4))をNZ4とした場合、−1<NZ4<4の関係を有するものが好ましい。
【0110】
第2の光学異方素子の光学パラメータであるRe4値、NZ4値は、液晶表示装置の方式や種々の光学パラメーターに依存することから一概には言えないが、550nmの単色光に対して、第2の光学異方素子の面内のリターデーション値(Re4)は、通常200nm〜350nm、好ましくは250nm〜300nm、さらに好ましくは260nm〜280nmの範囲であり、かつ、NZ4値は、−2<NZ4<3、好ましくは−1<NZ4<2、さらに好ましくは0≦NZ4<1.5に制御されたものである。
【0111】
前記Re3,Re4値並びにNZ3,NZ4値を上記範囲にすることにより、液晶表示装置の視野角改良フィルムとしては、液晶表示の色調補正を行いながら視野角を広げることが可能となる。Re3およびRe4値が上記範囲を外れた場合、面内位相差値のずれの影響で、液晶表示装置の正面特性を悪化させる恐れがある。また、NZ3およびNZ4値が上記範囲を外れた場合には、十分な視野角改良効果が得られないかあるいは、斜めから見たときに不必要な色付きが生じる恐れがある。
【0112】
面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子は、第4の光学異方素子の厚さをd5、第4の光学異方素子面内の主屈折率をNx5およびNy5とした場合に、面内のリターデーション値(Re5=(Nx5−Ny5)×d5[nm])が50nm〜350nmを有するものが好ましい。
第4の光学異方素子の光学パラメータであるRe5値は、液晶表示装置の方式や種々の光学パラメーターに依存することから一概には言えないが、550nmの単色光に対して、第4の光学異方素子の面内のリターデーション値(Re5)は、通常50nm〜350nm、好ましくは70nm〜300nm、さらに好ましくは90nm〜280nmの範囲に制御されたものである。Re5値が上記範囲を外れた場合には、十分な視野角改良効果が得られないかあるいは、斜めから見たときに不必要な色付きが生じる恐れがある。
【0113】
次に、厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方素子について説明する。
前記第3の光学異方素子としては、特に限定されないが、非液晶材料としては、耐熱性、耐薬品性、透明性に優れ、剛性にも富むことから、例えば、セルローストリアシレート、ゼオネックス、ゼオノア(共に日本ゼオン(株)製)やアートン(JSR(株)製)のようなポリオレフィン類、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーが好ましい。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性であることから、ポリイミドが特に好ましい。前記ポリイミドとしては、例えば、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミドが好ましい。具体的には、例えば、特表2000−511296号公報に開示された、9,9−ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物、具体的には、下記式(8)に示す繰り返し単位を1つ以上含むポリマーが使用できる。
【0114】
【化14】
【0115】
前記式(8)中、R3〜R6は、水素、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子または炭素数1〜10のアルキル基で置換されたフェニル基、および炭素数1〜10のアルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。好ましくは、R3〜R6は、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子または炭素数1〜10のアルキル基で置換されたフェニル基、および炭素数1〜10のアルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。
【0116】
前記式(8)中、Zは、例えば、炭素数6〜20の4価芳香族基であり、好ましくは、ピロメリット基、多環式芳香族基、多環式芳香族基の誘導体、または下記式(9)で表される基である。
【0117】
【化15】
【0118】
前記式(9)中、Z’は、例えば、共有結合、C(R7)2基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C2H5)2基、または、NR8基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。また、wは、1から10までの整数を表す。R7は、それぞれ独立に、水素またはC(R9)3である。R8は、水素、炭素原子数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。R9は、それぞれ独立に、水素、フッ素、または塩素である。
【0119】
また液晶材料としては、コレステリック液晶性ポリマーなどの液晶材料からなるコレステリック配向フィルム、コレステリック配向層をフィルムにて支持したもの、およびディスコティック液晶層等が挙げられる。まずコレステリック配向フィルムは熱処理等適宜選択される手法によってコレステリックらせん軸がフィルム法線方向に存在するような均一なプラナー配向したものが好ましく、また選択反射波長λsが300nm以下であることが好ましい。
【0120】
また、コレステリック配向を実現する材料としては、液晶性ポリマーに限らず、単体でコレステリック配向を実現できる重合性基を有する液晶モノマー分子、もしくは重合性基を有する液晶性モノマーとキラル化合物の混合物等も好ましく用いられる。これらの材料を熱処理等適宜選択される手法によってコレステリック配向させた後、重合性基を熱、光等好適に用いられる手段によって硬化させ、コレステリック配向を固定化して用いることも出来る。
【0121】
また、負の1軸性光学異方性層を形成する上記以外の液晶材料としてはホモジニアス配向させた重合性のディスコティック液晶化合物も好ましく用いられる。
第3の光学異方素子は、第3の光学異方素子の厚さをd2、第3の光学異方素子面内の主屈折率をNx2およびNy2、厚さ方向の主屈折率をNz2、かつ、Nx2≧Ny2>Nz2とした場合に、面内のリターデーション値(Re2=(Nx2−Ny2)×d2[nm])が0〜20nm、厚さ方向のリターデーション値(Rth2=(Nx2−Nz2)×d2[nm])が30〜500nmであることが好ましい。
【0122】
第3の光学異方素子の光学パラメータであるRe2値、Rth2値は、液晶表示装置の方式や種々の光学パラメーターに依存することから一概には言えないが、550nmの単色光に対して面内のリターデーション値(Re2)は、通常0nm〜20nm、好ましくは0nm〜10nm、さらに好ましくは0nm〜5nmの範囲であり、かつ、厚さ方向のリターデーション値(Rth2)は、通常30〜500nm、好ましくは80〜400nm、さらに好ましくは100〜300nmに制御されたものである。
前記Re2値及びRth2値を上記範囲にすることにより、液晶表示装置の視野角改良フィルムとしては、液晶表示の色調補正を行いながら視野角を広げることが可能となる。Re2値が20nmより大きい場合、大きい正面位相差値の影響で、液晶表示素子の正面特性を悪化させる恐れがある。また、Rth2値が30nmより小さい場合あるいは500nmより大きい場合には、十分な視野角改良効果が得られないかあるいは、斜めから見たときに不必要な色付きが生じる恐れがある。
【0123】
前記の直線偏光板とホメオトロピック配向液晶フィルム、第1、第2、第3および第4の光学異方素子からなる積層体は、それぞれ粘・接着剤層を介して互いに貼り合わせることにより作製することができる。また、基板上に作製されたホメオトロピック配向液晶フィルムを、粘・接着剤層を介して前記直線偏光板あるいは第1あるいは第2あるいは第3の光学異方素子に貼着した後、ホメオトロピック配向を実現するために使用した配向基板を剥離してホメオトロピック配向した液晶部分のみを直線偏光板あるいは第1あるいは第2あるいは第3の光学異方素子に転写する手法によっても積層させることができる。
また、第1、第2、第3の光学異方素子同士の積層方法としては、例えば後述の粘・接着剤層を用いて直接両者を積層する手法、各光学異方素子上に液晶配向能を有する配向膜を設け、均一でモノドメインな液晶配向性を示し、かつその配向状態を容易に固定化できる液晶性高分子を塗布等の手段により設ける手法、フィルム基板上に設けられた液晶化合物を後述の粘着剤もしくは接着剤を用いて別の光学異方素子へ転写する手法等が好適に用いられる。
【0124】
本発明の楕円偏光板は、ホメオトロピック配向を固定化したホメオトロピック配向液晶フィルム層と直線偏光板とを積層した垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板であるが、液晶表示装置の作製に当たっては必要に応じて光拡散層、光制御フィルム、導光板、プリズムシート等の部材を追加してもよい。
【0125】
液晶表示装置として、視野角依存性の少ない光学特性を得ると言う点では、本発明の楕円偏光板の他に、下記の(1)〜(3)のような構成を用いてもよい。なお、下記において「/」は層の界面を表す(以下、同じ)。
(1)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層
(2)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層
(3)本発明の楕円偏光板/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層
【0126】
また、垂直配向型液晶表示装置に配置した構成は、下記の(4)〜(15)等を例示でき、いずれの構成を用いてもよい
(4)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子/直線偏光板
【0127】
(5)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子/直線偏光板
【0128】
(6)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子/直線偏光板
【0129】
(7)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/直線偏光板
【0130】
(8)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/直線偏光板
【0131】
(9)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/厚さ方向に負の1軸光学異方性を有する第3の光学異方性層/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/直線偏光板
【0132】
(10)本発明の楕円偏光板/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子/直線偏光板
【0133】
(11)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子/直線偏光板
【0134】
(12)本発明の楕円偏光板/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子/直線偏光板
【0135】
(13)本発明の楕円偏光板/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/直線偏光板
【0136】
(14)本発明の楕円偏光板/面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/直線偏光板
【0137】
(15)本発明の楕円偏光板/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/垂直配向型液晶表示セル/負の2軸性を示しかつ面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方性層/直線偏光板
【0138】
なお、直線偏光板、ホメオトロピック配向液晶フィルムや各光学異方素子の積層や転写に用いる粘・接着剤層を形成する粘・接着剤は光学的に等方性で透明なものであれば特に制限されない。例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。また、光や電子線、熱などの外部刺激により反応し重合や架橋するような反応性のものも用いることができる。これらの中でも特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0139】
粘・接着剤層の形成は、適宜な方式で行うことができる。その例としては、例えば、トルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40質量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で前記の偏光板、液晶フィルムや光学素子層上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘・接着剤層を形成してそれを前記の偏光板、液晶フィルムや光学素子層上に移着する方式などが挙げられる。また、粘・接着剤層には、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることのある添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘・接着剤層などであってもよい。
粘・接着剤層の厚さは、貼着する部材を貼着しかつ十分な密着力を維持できる限り特に膜厚に制限はなく、粘・接着剤の特性や粘・接着される部材により適宜選定することができる。楕円偏光板の総厚の低減要求の強いことから、粘・接着剤の厚さは薄いほうが好ましいが、通常は2〜80μm、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜40μmである。この範囲外では、接着力が不足したり、積層時や楕円偏光板の保存時に端部から滲み出すなどして好ましくない。
【0140】
なお、ホメオトロピック配向液晶フィルムを粘・接着剤層を介して、前記直線偏光板あるいは第1、第2あるいは第3の光学異方素子に転写する際には、転写が容易となるよう下記(A)〜(C)のようなプロセスを適宜用いることもできる。
【0141】
(A)配向基板上に形成された液晶配向が固定化されたホメオトロピック配向液晶層を、接着剤層1を介して直接直線偏光板、もしくは光学異方素子へ貼着し、配向基板を剥離してホメオトロピック配向液晶層を直線偏光板もしくは光学異方素子へ転写する。
【0142】
(B)配向基板上に形成された液晶配向が固定化されたホメオトロピック配向液晶層を、接着剤層1を介して再剥離性基板1と接着せしめた後、配向基板を剥離してホメオトロピック配向液晶層を再剥離性基板1に転写し、再剥離性基板1/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層からなる中間体1を作製し、さらに接着剤層2を介して再剥離性基板2と接着せしめた後、再剥離性基板1を剥離し、接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/再剥離性基板2からなる中間体2を作製し、さらに接着剤層1側にセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合した後、セパレートフィルムを剥離し適宜偏光板、もしくは光学異方素子へ貼着し、再剥離性基板2を剥離する。
【0143】
(C)配向基板上に形成された液晶配向が固定化されたホメオトロピック配向液晶層を、接着剤層1を介して再剥離性基板1と接着せしめた後、配向基板を剥離してホメオトロピック配向液晶層を再剥離性基板1に転写し、再剥離性基板1/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層からなる中間体1を作製し、さらに接着剤層2を介して再剥離性基板2と接着せしめた後、再剥離性基板1を剥離し、接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/再剥離性基板2からなる中間体2を作製し、さらに接着剤層1側にセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合した後、再剥離性基板2を剥離しセパレートフィルム/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2からなる中間体3を作製し、さらに接着剤層2側にもセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合しセパレートフィルム/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/粘着剤層/セパレートフィルムからなる中間体4を作製し、セパレートフィルムを剥離し適宜偏光板、もしくは光学異方素子へ貼着する。
【0144】
さらに接着剤に適宜表面改質剤等の添加剤を添加することで、再剥離性基板とホメオトロピック配向液晶層との貼着の際の両者の密着力を低減させ、かつ再剥離性基板と接着剤層との密着力を維持させることで再剥離性基板側に接着剤層が貼着したまま剥離することもできる。その際に用いられる界面活性剤、および添加剤としては光学的欠陥の検査性や剥離性に悪影響を及ぼさない範囲であれば種類、添加量に特に制限はない。このような手法により前記直線偏光板あるいは第1、第2あるいは第3の光学異方素子に転写する際には、転写が容易となるよう下記(D)、(E)のようなプロセスを適宜用いることもできる。
【0145】
(D)配向基板上に形成された液晶配向が固定化されたホメオトロピック配向液晶層を、接着剤層1を介して再剥離性基板1と接着せしめた後、配向基板を剥離してホメオトロピック配向液晶層を再剥離性基板1に転写し、再剥離性基板1/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層からなる中間体1を作製し、さらに接着剤層2を介して再剥離性基板2と接着せしめた後、再剥離性基板1を剥離し、接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/再剥離性基板2からなる中間体2を作製し、さらに接着剤層1側にセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合した後、セパレートフィルムを剥離し適宜偏光板、もしくは光学異方素子へ貼着し、再剥離性基板2を接着剤層2が貼着した状態で剥離する。
【0146】
(E)配向基板上に形成された液晶配向が固定化されたホメオトロピック配向液晶層を、接着剤層1を介して再剥離性基板1と接着せしめた後、配向基板を剥離してホメオトロピック配向液晶層を再剥離性基板1に転写し、再剥離性基板1/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層からなる中間体1を作製し、さらに接着剤層2を介して再剥離性基板2と接着せしめた後、再剥離性基板1を剥離し、接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/再剥離性基板2からなる中間体2を作製し、さらに接着剤層1側にセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合した後、再剥離性基板2を接着剤層2が貼着した状態で剥離しセパレートフィルム/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層からなる中間体5を作製し、さらにホメオトロピック配向液晶層側にもセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合しセパレートフィルム/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/粘着剤層/セパレートフィルムからなる中間体6を作製し、セパレートフィルムを剥離し適宜偏光板、もしくは光学異方素子へ貼着する。
【0147】
またホメオトロピック配向液晶フィルムを粘・接着剤層を介して、前記直線偏光板あるいは第1、第2あるいは第3の光学異方素子に転写する際には、ホメオトロピック配向液晶フィルム表面を表面処理して粘・接着剤層との密着性を向上することができる。表面処理の手段は、特に制限されないが、前記液晶フィルム表面の透明性を維持できるコロナ放電処理、スパッタ処理、低圧UV照射、プラズマ処理などの表面処理法を好適に採用できる。これら表面処理法のなかでもコロナ放電処理が良好である。
【0148】
さらに、ホメオトロピック配向液晶フィルムを粘・接着剤層を介さずとも、前記直線偏光板あるいは第1、第2あるいは第3の光学異方素子上に前述の液晶材料を前述の配向基板上に展開し、当該液晶材料を配向させた後、光照射および/または加熱処理することにより当該配向状態を固定化することにより製造することもできる。適宜必要であれば前記直線偏光板あるいは第1、第2あるいは第3の光学異方素子上に前述の配向膜を設置してから前述の液晶材料を前述の配向基板上に展開し、当該液晶材料を配向させた後、光照射および/または加熱処理することにより当該配向状態を固定化することにより製造することもできる。
【0149】
液晶表示装置としては、特に制限はないが、透過型、反射型、半透過型の各種液晶表示装置を挙げることができる。液晶セルの駆動方式も特に制限はなく、STN−LCD等に用いられるパッシブマトリクス方式、TFT(Thin Film Transistor)電極、TFD(Thin Film Diode)電極等の能動電極を用いるアクティブマトリクス方式、プラズマアドレス方式等のいずれの駆動方式であっても良い。
【0150】
液晶セルを構成する透明基板としては、液晶層を構成する液晶性を示す材料を特定の配向方向に配向させるものであれば特に制限はない。具体的には、基板自体が液晶を配向させる性質を有している透明基板、基板自体は配向能に欠けるが、液晶を配向させる性質を有する配向膜等をこれに設けた透明基板等がいずれも使用できる。また、液晶セルの電極は、ITO等の公知のものが使用できる。電極は通常、液晶層が接する透明基板の面上に設けることができ、配向膜を有する基板を使用する場合は、基板と配向膜との間に設けることができる。
【0151】
液晶層を形成する液晶性を示す材料としては、負の誘電率異方性を有する材料であれば特に制限されず、各種の液晶セルを構成し得る通常の各種低分子液晶物質、高分子液晶物質およびこれらの混合物が挙げられる。また、これらに液晶性を損なわない範囲で色素やカイラル剤、非液晶性物質等を添加することもできる。負の誘電率異方性を示す液晶材料を用いた垂直配向液晶層にカイラル剤を添加し電圧印加時に液晶分子を旋回させれば、電圧印加時の液晶分子の旋回を安定したものとすることができる。更に上下基板のラビング方向を同一方向以外に施す場合、配向処理の軌跡が同一方向でなくなるため筋目が目立ちにくくなる。また、液晶層が90度ツイストしていれば、電圧印加時のディスクリネーション防止のため基板に対し数度傾斜して配向させた場合に液晶分子の傾斜方向にリターデーションが発生するが、基板付近の液晶分子の傾斜した方向が上下の基板付近で互いに90度の角度をなしているため、発生するリターデーションを打ち消すことができ、漏れ光が少ない黒表示が得られる。
【0152】
また、前記垂直配向型液晶セルの一方の基板を反射機能を有する領域と透過機能を有する領域とを有する基板とすることにより半透過反射型の垂直配向型液晶表示装置とすることができる。
半透過反射型の垂直配向型液晶表示装置に使用する半透過反射性電極に含まれる反射機能を有する領域(以下、反射層ということがある。)としては、特に制限されず、アルミニウム、銀、金、クロム、白金等の金属やそれらを含む合金、酸化マグネシウム等の酸化物、誘電体の多層膜、選択反射を示す液晶又はこれらの組み合わせ等を例示することができる。これら反射層は平面であっても良く、また曲面であっても良い。さらに反射層は、凹凸形状など表面形状に加工を施して拡散反射性を持たせたもの、液晶セルの観察者側と反対側の該電極基板上の電極を兼備させたもの、またそれらを組み合わせたものであっても良い。
【0153】
本発明の垂直配向型液晶表示装置は、前記した構成部材以外にも他の構成部材を付設することができる。例えば、カラーフィルターを本発明の液晶表示装置に付設することにより、色純度の高いマルチカラー又はフルカラー表示を行うことができるカラー液晶表示装置を作製することができる。
【実施例】
【0154】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例で用いた各分析方法は以下の通りである。
(1)1H−NMRの測定
化合物を重水素化クロロホルムに溶解し、400MHzの1H−NMR(Variant社製INOVA−400)で測定した。
(2)GPCの測定
化合物をテトラヒドロフランに溶解し、東ソー社製8020GPCシステムで、TSK−GEL SuperH1000、SuperH2000、SuperH3000、SuperH4000を直列につなぎ、溶出液としてテトラヒドロフランを用いて測定した。分子量の較正にはポリスチレンスタンダードを用いた。
(3)顕微鏡観察
オリンパス光学社製BH2偏光顕微鏡で液晶の配向状態を観察した。
(4)液晶フィルムのパラメータ測定
王子計測機器社製自動複屈折計KOBRA21ADHを用いた。
(5)DSCの測定(ガラス転移点(Tg)の測定)
液晶層をかきとった後、示差走査型熱量計(DSC、Perkin Elmer社製 DSC−7)を用い、昇温速度20℃/minで測定した。
(6)視野角(等コントラスト曲線)の測定
ELDIM社製 EZcontrast 160Rにより液晶表示装置の視野角測定を実施し等コントラスト曲線を得た。
【0155】
<実施例1>
液晶材料溶液を以下のようにして調製した。
まず、下記式(10)の液晶性ポリマーを合成した。分子量はポリスチレン換算で、数平均分子量Mn=8000、重量平均分子量Mw=15000であった。なお、式(10)は便宜上、ブロック重合体の構造で表記しているが、数字はモノマーのモル構成比を表すものである。式(9)のポリマー1.0gを、9mlのシクロヘキサノンに溶かし、暗所でトリアリルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート50%プロピレンカーボネート溶液(アルドリッチ社製、試薬)0.1gを加えた後、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して液晶材料の溶液を調製した。
【0156】
【化16】
【0157】
配向基板を以下のようにして調製した。
厚さ38μmのポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)(帝人デュポンフィルム(株)製)を15cm角に切り出し、アルキル変性ポリビニルアルコール((株)クラレ製、MP−203(PVA))の5質量%溶液(溶媒は、水とイソプロピルアルコールの質量比1:1の混合溶媒)をスピンコート法により塗布し、50℃のホットプレートで30分乾燥した後、120℃のオーブンで10分間加熱した。次いで、レーヨンのラビング布でラビングした。得られたPVA層の膜厚は1.2μmであった。ラビング時の周速比(ラビング布の移動速度/基板フィルムの移動速度)は4とした。
【0158】
このようにして得られた配向基板に、前述の液晶材料の溶液をスピンコート法により塗布した。次いで60℃のホットプレートで10分乾燥し、150℃のオーブンで2分間熱処理し、液晶材料を配向させた。次いで、60℃に加熱したアルミ板に試料を密着させて置き、その上から、高圧水銀灯ランプにより600mJ/cm2の紫外光(ただし365nmで測定した光量)を照射して、液晶材料(ホメオトロピック配向液晶層の厚み0.8μm)を硬化させた。
【0159】
(積層体1および2の作製)
得られた液晶層(ホメオトロピック配向液晶層)の光学パラメータの測定を行うため、また液晶層の表面を保護するため積層体1および2を下記のように作製した。
得られた配向基板上の液晶層を、市販のUV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)を介してポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)に転写した。すなわち、PVA層上の硬化した液晶層の上に、接着剤層1としてUV−3400を5μm厚となるように塗布し、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムでラミネートして、PETフィルム側から紫外線を照射して接着剤層1を硬化させた後、PVA層およびPENフィルムを剥離し、PETフィルム付きの中間積層体(PETフィルム/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層)を得た。
【0160】
得られた中間積層体のホメオトロピック液晶層上に、市販のUV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)を接着剤層2として5μm厚となるように塗布し、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムでラミネートして、TACフィルム側から紫外線を照射して接着剤層2を硬化させた後、PETフィルムを剥離して、積層体1(接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/TACフィルム)を得た。
得られた積層体1の接着剤層1側に市販のノンキャリア糊をセパレートフィルム付きの状態で貼合した後、TACフィルムを剥離して積層体2(セパレートフィルム/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2)を得た。
【0161】
得られた積層体1をクロスニコルさせた偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向で、コノスコープ観察から正の一軸性屈折率構造を有するホメオトロピック配向であることがわかった。このフィルムを傾けて斜めから光を入射し、同様にクロスニコルで観察したところ、光の透過が観測された。また、同フィルムの光学位相差を自動複屈折測定装置KOBRA21ADHにより測定した。測定光をサンプル表面に対して垂直あるいは斜めから入射して、その光学位相差と測定光の入射角度のチャートから、ホメオトロピック配向を確認した。ホメオトロピック配向では、サンプル表面に対して垂直方向での位相差(正面位相差)がほぼゼロである。このサンプルに関しては、液晶層の遅相軸方向に斜めから位相差を測定したところ、測定光の入射角度の増加に伴い、位相差値が増加したことからホメオトロピック配向が得られていると判断できた。以上から、ホメオトロピック配向性は良好であると判断した。
なお、ホメオトロピック配向液晶フィルムのNx1は1.54、Ny1は1.54、Nz1は1.73であった。
さらに積層フィルムの液晶材料部分のみをかきとり、示差熱測定法(DSC)を用いてTgを測定したところ、Tgは100℃であった。またフィルムの液晶層表面の鉛筆硬度は2H程度で、充分に強固な膜が得られた。
【0162】
(楕円偏光板1の作製)
積層体1の接着剤層1側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着しTACフィルムを剥がして楕円偏光板1(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2)を得た。
【0163】
<実施例2>
(積層体3の作製)
積層体1の接着剤層1側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第1の光学異方素子として面内位相差140nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)を貼着した後、TACフィルムを剥がして積層体3(接着剤層2/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム)を得た。
【0164】
(積層体4の作製)
積層体3のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第3の光学異方素子として負の1軸性を有するTACフィルム(富士フィルム(株)製)を貼着し、積層体4(接着剤層2/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/TACフィルム)を得た。
【0165】
(楕円偏光板2の作製)
積層体4の接着剤層2側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板2(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層2/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/TACフィルム)を得た。楕円偏光板の層膜厚は280μmであった。
【0166】
(垂直配向型液晶表示装置の作製)
バックライト、バックライト側偏光板、垂直配向(VA)型液晶セル、視認側偏光板の順で配置された市販のVA型の液晶テレビに対し、図1に示すように、視認側偏光板の替わりに本発明の楕円偏光板2を配置した。図2に等コントラスト図を示す。本楕円偏光板2を用いない場合に比べ、視野角が拡大し、斜めから見ても良好な画像が得られることが分かった。なお、図2の同心円は20°間隔で描かれている。したがって最外円は中心から80°を示す(以下の図も同様)。
【0167】
<比較例1>
面内位相差140nmの積層体9(接着剤層3/ネマチック配向液晶層/接着剤層4/TACフィルム)の接着剤層3側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着した後TACフィルムを剥離して楕円偏光板25(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層3/ネマチック配向液晶層/接着剤層4)を得た。
実施例2の垂直配向型液晶表示装置の作製に使用したものと同型の市販VA型の液晶テレビに対し、実施例2で使用した楕円偏光板2の替わりに前記楕円偏光板25を配置した。図12に等コントラスト図を示す。本発明の楕円偏光板2を用いた場合に比べ、視野角拡大効果は少なく、斜めから見ても良好な画像が得られなかった。
【0168】
<実施例3>
(積層体5の作製)
下記式(11)で表されるポリエーテルケトン(株式会社日本触媒製:Δn=約0.02)を、メチルイソブチルケトンに溶解し、20重量%のワニスを調製した。このワニスを、面内位相差140nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)に塗布し、100℃で10分熱処理した。その結果、ゼオノアフィルム上に、透明かつ表面が平滑で厚み6μmで、フィルム膜厚方向に負の光学異方性を示すポリエーテルケトンフィルムが形成された積層体5が得られた。
【0169】
【化17】
【0170】
(積層体6の作製)
積層体5のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して前記積層体2の接着剤層2側を貼着し、積層体6(セパレートフィルム/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/粘着剤層/ゼオノアフィルム/ポリエーテルケトンフィルム)を得た。
【0171】
(楕円偏光板3の作製)
積層体6のセパレートフィルムを剥離し直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板3(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/粘着剤層/ゼオノアフィルム/ポリエーテルケトンフィルム)を得た。
【0172】
<実施例4>
(積層体7の作製)
下記式(12)に示すポリイミドを、シクロヘキサノンに溶解して15重量%のポリイミド溶液を調製した。このポリイミド溶液を面内位相差140nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)に塗布し、100℃で10分熱処理した。その結果、ゼオノアフィルム上に、透明かつ表面が平滑で厚み6μmで、フィルム面と垂直方向に負の光学異方性を示すポリイミドフィルムが形成された積層体7が得られた。
【0173】
【化18】
【0174】
(楕円偏光板4の作製)
楕円偏光板1の接着剤層2側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して積層体7のゼオノアフィルム側を貼着し、楕円偏光板4(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/粘着剤層/ゼオノアフィルム/ポリイミドフィルム)を得た。
【0175】
<実施例5>
(楕円偏光板5の作製)
テレフタル酸50mmol、メチルヒドロキノンジアセテート25mmol、カテコールジアセテート25mmolおよび酢酸ナトリウム100mgを用いて窒素雰囲気下で、100℃で30分、150℃で1時間、200℃で1時間と階段状に昇温しながら重合を行った。次に窒素ガスを流しながら250℃で2時間重合を続け、さらに減圧下に同じ温度で1時間重合を行った。次に得られたポリマーをテトラクロロエタンに溶解し濾過したのち、メタノールで再沈殿を行い精製ポリマー9.0gを得た。
このポリマーを用いて濃度15質量%のテトラクロロエタン溶液を精製し、片面にラビング処理したポリイミドの配向膜を有する12cm×12cmのガラス板上(EBC社製)にスピンコート法で塗布した後乾燥した。
【0176】
次にこの試料を空気恒温槽200℃で10分間熱処理した後、恒温槽より取り出して放冷し、配向を固定化しネマチック液晶配向層を得た。得られたネマチック液晶配向層は、膜厚が0.62μmの完全透明で平滑なフィルムであった。このネマチック液晶配向層の配向状態を偏光顕微鏡のクロスニコル下で観察したところ、全領域にわたって欠陥が全く見つからなかった。次に偏光解析を行ってこのフィルムのリタデーション(Δn・d、Δnは複屈折率を、またdは膜厚を示す)を測定したところ、140nm(550nmの値)の値が得られ、ネマチック構造が固定化されていることがわかった(Δn=0.227)。
【0177】
得られた液晶層(ネマチック配向液晶層)をフィルム基板に転写するため積層体8を下記のように作製した。
得られた配向基板上の液晶層を市販のUV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)を介してポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)に転写した。すわわち、ポリイミド膜上の硬化した液晶層の上に、UV硬化型接着剤を接着剤層3として5μm厚となるように塗布し、PETフィルムでラミネートして、PETフィルム側から紫外線を照射して接着剤層3を硬化させた後、ポリイミド配向膜およびガラス基板を剥離し積層体8(PETフィルム/接着剤層3/ネマチック配向液晶層)を作製した。
さらに積層体8の液晶層上に、市販のUV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)を接着剤層4として5μm厚となるように塗布し、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムでラミネートして、TACフィルム側から紫外線を照射して接着剤層2を硬化させた後、PETフィルムを剥離して、積層体9(接着剤層3/ネマチック配向液晶層/接着剤層4/TACフィルム)を得た。
そして前記楕円偏光板1(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2)の接着剤層2側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第一の光学異方素子として前記積層体8のネマチック配向液晶層側と貼着した後PETフィルムを剥離して楕円偏光板5(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/粘着剤層/ネマチック配向液晶層/接着剤層3)を得た。楕円偏光板5の層膜厚は180μmであった。
【0178】
<実施例6>
(フィルム1の作製)
以下の手法で膜厚方向に負の1軸性を有する第3の光学異方素子であるフィルム1を作製した。透明な膜厚110μmのポリカーボネートフィルム(住友化学(株)製)を170℃に加熱した状態で0.3mm/secの速度で延伸したのち、再び170℃に加熱しながら最初の延伸方向と直角の方向に0.5mm/secの速度で延伸した。ポリカーボネートフィルムは2度目の延伸により延伸方向の屈折率が大きくなり延伸方向と直角方向と同程度の屈折率になった。このため、この2回の延伸によりポリカーボネートフィルムは延伸方向と垂直な方向(すなわちフィルム面と垂直な方向)に媒体の異常屈折率を含む負の一軸性光学異方体となった。
(楕円偏光板6の作製)
前記楕円偏光板5の接着剤層3側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第3の光学異方素子として負の1軸性を有する前記フィルム1を貼着し、楕円偏光板6(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/粘着剤層/ネマチック配向液晶層/接着剤層3/粘着剤層/フィルム1)を得た。
【0179】
<実施例7>
(楕円偏光板7の作製)
前記積層体3(接着剤層2/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム)の接着剤層2側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板7(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層2/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム)を得た。
【0180】
<実施例8>
(楕円偏光板8の作製)
前記楕円偏光板7のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第3の光学異方素子として負の1軸性を有するTACフィルム(富士フィルム(株)製)を貼着し、楕円偏光板8(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層2/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/TACフィルム)を得た。
【0181】
<実施例9>
(フィルム2の作製)
面内に位相差を有する位相差フィルム(ピュアエースWR、帝人(株)製)を230℃で縦一軸延伸し、負の2軸性を有するフィルム2を得た。面内の位相差は140nmであった。
(楕円偏光板9の作製)
前記楕円偏光板1(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2)の接着剤層2側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第一の光学異方素子として前記フィルム2を貼着し、楕円偏光板9(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層2/粘着剤層/フィルム2)を得た。楕円偏光板9の層膜厚は150μmであった。
(垂直配向型液晶表示装置の作製)
バックライト、バックライト側偏光板、VA型液晶セル、視認側偏光板の順で配置された市販のVA型の液晶テレビに対し、図3に示すように、視認側偏光板の替わりに本発明の楕円偏光板9を配置した。図4に等コントラスト図を示す。本楕円偏光板9を用いない場合に比べ、視野角が拡大し、斜めから見ても良好な画像が得られることが分かった。
【0182】
<比較例2>
実施例9の垂直配向型液晶表示装置の作製に使用したものと同型の市販VA型の液晶テレビに対し、楕円偏光板9の替わりに後記の参考例14で得られた楕円偏光板24を配置した。図14に等コントラスト図を示す。本発明の楕円偏光板9を用いた場合に比べ、視野角拡大効果は少なく、斜めから見ても良好な画像が得られなかった。
【0183】
<実施例10>
(積層体10の作製)
前記積層体1の接着剤層1側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第1の光学異方素子として前記フィルム2を貼着した後、TACフィルムを剥離して積層体10(接着剤層2/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/フィルム2)を得た。
(楕円偏光板10の作製)
前記積層体10の接着剤層2側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板10(直線偏光板/粘着剤層/接着剤層2/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/フィルム2)を得た。
【0184】
<参考例1>
(積層体11の作製)
面内位相差105nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)にコロナ処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して前記積層体8(PETフィルム/接着剤層3/ネマチック配向液晶層)のネマチック配向液晶層側を貼着した後、PETフィルムを剥離して積層体11(接着剤層3/ネマチック配向液晶層/粘着剤層/ゼオノアフィルム)を作製した。
(楕円偏光板11の作製)
前記積層体11のゼオノアフィルム側にコロナ処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板11(接着剤層3/ネマチック配向液晶層/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を作製した。
【0185】
<参考例2>
(楕円偏光板12の作製)
前記楕円偏光板11の接着剤層3側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第3の光学異方素子として負の1軸性を有するTACフィルム(富士フィルム(株)製)を貼着し、楕円偏光板12(TACフィルム/粘着剤層/接着剤層3/ネマチック配向液晶層/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を作製した。
【0186】
<参考例3>
(楕円偏光板13の作製)
面内位相差105nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板13(ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を作製した。
【0187】
<参考例4>
(楕円偏光板14の作製)
前記楕円偏光板13のゼオノアフィルム側にコロナ処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して前記積層体9(接着剤層3/ネマチック配向液晶層/接着剤層4/TACフィルム)の接着剤層3側と貼着し、楕円偏光板14(TACフィルム/接着剤層4/ネマチック配向液晶層/接着剤層3/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を得た。
【0188】
<参考例5>
(楕円偏光板15の作製)
前記楕円偏光板14のTACフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第3の光学異方素子として負の1軸性を有するTACフィルム(富士フィルム(株)製)を貼着し、楕円偏光板15(TACフィルム/粘着剤層/TACフィルム/接着剤層4/ネマチック配向液晶層/接着剤層3/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を得た。
【0189】
<参考例6>
(楕円偏光板16の作製)
積層体7(ポリイミドフィルム/ゼオノアフィルム)のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して楕円偏光板13(ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)のゼオノアフィルム側と貼着し、楕円偏光板16(ポリイミドフィルム/ゼオノアフィルム/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を得た。
【0190】
<参考例7>
(フィルム3の作製)
まず以下の方法でフィルム膜厚方向に負の1軸異方性を有するフィルム3を作製した。
TACフィルムの表面をケン化後、このフィルム上にポリビニルアルコール10質量部、水371質量部、メタノール119質量部、グルタルアルデヒド0.5質量部で構成される配向膜塗布液をスピンコーターで塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥して膜を形成した。次に、形成した膜にフィルムの遅相軸方向と平行の方向にラビング処理を施し、配向膜とした。
次に、配向膜上に、下記式(13)で示されるディスコティック液晶性化合物1.8g、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)0.2g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)0.06g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02g、を3.9gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を、スピンコーターで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、125℃の恒温槽中で3分間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、100℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、30秒間UV照射しディスコティック液晶化合物を架橋した。その後、室温まで放冷した。このようにして、フィルム3(ディスコティック液晶層/配向膜/TACフィルム)を作製した。
【0191】
【化19】
【0192】
(積層体12の作製)
前記フィルム3のTACフィルム側に粘着剤を介して第1の光学異方素子として面内位相差140nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)を貼着し、積層体12(ディスコティック液晶層/配向膜/TACフィルム/粘着剤層/ゼオノアフィルム)を得た。
(積層体13の作製)
面内位相差105nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)にコロナ処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して、前記積層体12のゼオノアフィルム側と貼着し、積層体13(ディスコティック液晶層/配向膜/TACフィルム/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/ゼオノアフィルム)を得た。
(楕円偏光板17の作製)
前記積層体13のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して、直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板17(ディスコティック液晶層/配向膜/TACフィルム/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を作製した。
【0193】
<参考例8>
(積層体14の作製)
面内位相差140nmの位相差フィルム(ゼオノア、日本ゼオン(株)製)にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して面内位相差105nmの位相差フィルム(ピュアエース、帝人(株)製)を貼着し、積層体14(ゼオノアフィルム/粘着剤層/ピュアエースフィルム)を得た。
(フィルム4の作製)
まず以下の方法でフィルム膜厚方向に負の1軸異方性を有するフィルム4を作製した。
光重合性メソゲン化合物(BASF社製LC242)90.5重量部、重合性カイラル剤(BASF社製LC756)9.5重量部および溶媒(シクロヘキサノン)を選択反射中心波長が300nmとなるよう調整配合した溶液に、その固形分に対し、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製,イルガキュア907)を3重量%添加した塗工液(固形分含有量30重量%)を調製した。当該塗工液を、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(配向基材)上にスピンコータを用いて乾燥後の厚みで6μmとなるように塗設し、溶媒を100℃で2分間乾燥させた。得られた膜に、配向基材側から35℃の空気雰囲気下で第1紫外線照射を50mW/cm2で、1秒間行った。その後、紫外線照射なしの状態で、80℃で1分間加熱した。次に、第2紫外線照射を80℃の空気雰囲気下で、5mW/cm2で、60秒間行った。次いで、50℃の窒素雰囲気下で配向基材側から第3紫外線照射を80mW/cm2で、30秒間行い、選択波長が250〜350nmの広帯域コレステリック液晶層を形成した。次いで、コレステリック液晶層側にトリアセチルセルロースフィルムをアクリル系粘着剤で貼り合せ、80℃で5分間乾燥した。次いで、配向基材を静かに剥離しフィルム4(コレステリック液晶層/粘着剤層/TACフィルム)を得た。
【0194】
(積層体15の作製)
前記積層体14のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介してフィルム4のTACフィルム側を貼着し、積層体15(コレステリック液晶層/粘着剤層/TACフィルム/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/ピュアエースフィルム)を得た。
(楕円偏光板18の作製)
前記積層体15のピュアエースフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板18(コレステリック液晶層/粘着剤層/TACフィルム/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/ピュアエースフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を作製した。
【0195】
<参考例9>
(フィルム5の作製)
まず以下の方法でフィルム面内方向に正の1軸異方性を有するフィルム5を作製した。
光重合性メソゲン化合物(BASF社製LC242)100重量部および溶媒(シクロヘキサノン)を混合した溶液に、その固形分に対し、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製,イルガキュア907)を3重量%添加した塗工液(固形分含有量30重量%)を調製した。当該塗工液を、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(配向基材)上にスピンコーターを用いて乾燥後の厚みで6μmとなるように塗設し、溶媒を100℃で2分間乾燥させた。得られた膜に、配向基材側から35℃の空気雰囲気下で第1紫外線照射を50mW/cm2で、1秒間行った。その後、紫外線照射なしの状態で、80℃で1分間加熱した。次に、第2紫外線照射を80℃の空気雰囲気下で、5mW/cm2で、60秒間行い、フィルム面内に正の1軸異方性を有するネマチック液晶層を形成した。次いで、ネマチック液晶層側にトリアセチルセルロースフィルムをアクリル系粘着剤で貼り合せ、80℃で5分間乾燥した。次いで、配向基材を静かに剥離しフィルム5(ネマチック液晶配向層/粘着剤層/TACフィルム)を得た。
【0196】
(フィルム6の作製)
面内に位相差を有する位相差フィルム(アートン、JSR(株)製)を230℃で縦一軸延伸し、負の2軸性を有するフィルム6を得た。面内位相差は140nmであった。
(積層体16の作製)
前記フィルム6にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第4の光学異方素子として面内に正の1軸性を有するフィルム5のTACフィルム側を貼着し、積層体16(フィルム6/粘着剤層/ネマチック液晶配向層/粘着剤層/TACフィルム)を得た。
(楕円偏光板19の作製)
前記積層体16のTACフィルム側にコロナ処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板19(フィルム6/粘着剤層/ネマチック液晶配向層/粘着剤層/TACフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を作製した。
【0197】
<参考例10>
(楕円偏光板20の作製)
前記楕円偏光板13(ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第4の光学異方素子として負の2軸性を有する前記フィルム6を貼着し、楕円偏光板20(フィルム6/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を得た。
【0198】
<参考例11>
(楕円偏光板21の作製)
前記積層体5(ポリエーテルケトンフィルム/ゼオノアフィルム)のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板21(ポリエーテルケトンフィルム/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を得た。
【0199】
<参考例12>
(楕円偏光板22の作製)
面内位相差140nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板22(ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を得た。
【0200】
<参考例13>
(楕円偏光板23の作製)
前記楕円偏光板22(ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して前記第3の光学異方素子として負の1軸性を有する前記フィルム1を貼着し、楕円偏光板23(フィルム1/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/直線偏光板)を得た。
【0201】
<参考例14>
(楕円偏光板24の作製)
第1の光学異方素子として負の2軸性を有する前記フィルム6にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)を貼着し、楕円偏光板24(フィルム6/粘着剤層/直線偏光板)を得た。
【0202】
<実施例11〜13>
実施例2で使用したものと同型のVA型の液晶テレビを用いて図5に示すように前記の実施例1〜10および参考例1〜14で得た楕円偏光板および光学異方素子と垂直配向型液晶表示セルとを配置し、垂直配向型液晶表示装置を作製した(使用した楕円偏光板番号等は表1参照)。
その結果、本発明の楕円偏光板を用いない場合に比べ、視野角が拡大し、斜めから見ても良好な画像が得られることが分かった。
なお、実施例13の等コントラスト図を図6に示す。
【0203】
<比較例3>
バックライト側偏光板、VA型液晶セル、視認側偏光板の順で配置された市販のVA型の液晶テレビに対し、図15に示すように、視認側偏光板の替わりに前記楕円偏光板25を、バックライト側偏光板の代わりに前記楕円偏光板12を配置した。その結果、本発明の楕円偏光板を用いた場合に比べ、視野角拡大効果は少なく、斜めから見ても良好な画像が得られなかった。
なお、等コントラスト図を図16に示す。
【0204】
<比較例4>
実施例13の第3の光学異方素子の厚さ方向のリタデーションRth2を10nmとした以外は実施例13と同様にして図5に示す垂直配向型液晶表示装置を作製した。その結果、本発明の楕円偏光板を用いた場合に比べ、視野角拡大効果は少なく、斜めから見ても良好な画像が得られなかった。
なお、等コントラスト図を図17に示す。
【0205】
<実施例14〜16>
実施例2で使用したものと同型のVA型の液晶テレビを用いて図5の配置において、第4の光学異方素子を配置しなかった以外は実施例11と同様に行い、垂直配向型液晶表示装置を作製した(使用した楕円偏光板番号等は表1参照)。
その結果、本発明の楕円偏光板を用いない場合に比べ、視野角が拡大し、斜めから見ても良好な画像が得られることが分かった。
【0206】
<実施例17〜19>
実施例2で使用したものと同型のVA型の液晶テレビを用いて図7の配置において、第3の光学異方素子を配置しなかった以外は実施例11と同様に行い、垂直配向型液晶表示装置を作製した(使用した楕円偏光板番号等は表1参照)。
その結果、本発明の楕円偏光板を用いない場合に比べ、視野角が拡大し、斜めから見ても良好な画像が得られることが分かった。
なお、実施例19の等コントラスト図を図8に示す。
【0207】
<実施例20〜22>
実施例2で使用したものと同型のVA型の液晶テレビを用いて図9に示すように前記の実施例1〜10および参考例1〜14で得た楕円偏光板および光学異方素子と垂直配向型液晶表示セルとを配置し、垂直配向型液晶表示装置を作製した(使用した楕円偏光板番号等は表1参照)。
その結果、本発明の楕円偏光板を用いない場合に比べ、視野角が拡大し、斜めから見ても良好な画像が得られることが分かった。
なお、実施例22の等コントラスト図を図10に示す。
【0208】
<実施例23>
(積層体17の作製)
前記中間積層体(PETフィルム/接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層)に市販のUV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)にシリコーン系表面改質剤(ペインタッド32、東レ・ダウコーニング(株)製)を4重量部添加したものを接着剤層5として5μm厚となるように塗布し、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムでラミネートして、TACフィルム側から紫外線を照射して接着剤層5を硬化させた後、PETフィルムを剥離して、積層体17(接着剤層1/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層5/TACフィルム)を得た。
【0209】
(積層体18の作製)
積層体17の接着剤層1側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第1の光学異方素子として面内位相差140nmの位相差フィルム(ゼオノアフィルム、日本ゼオン(株)製)を貼着した後、TACフィルムを接着剤層5が貼着した状態で剥がして積層体18(ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム)を得た。
(積層体19の作製)
積層体18のゼオノアフィルム側にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して第3の光学異方素子として負の1軸性を有するTACフィルム(富士フィルム(株)製)を貼着し、積層体19(ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/TACフィルム)を得た。
【0210】
(楕円偏光板26の作製)
直線偏光板(厚み約105μm、住友化学(株)製SQW−062)にコロナ放電処理(250W・min/m2)を施し、粘着剤を介して積層体19のホメオトロピック配向液晶層面と貼着し、楕円偏光板26(直線偏光板/粘着剤層/ホメオトロピック配向液晶層/接着剤層1/粘着剤層/ゼオノアフィルム/粘着剤層/TACフィルム)を得た。
【0211】
<比較例5>
ポリスチレンをフィルム面内方向に2軸延伸させ、厚さ方向の位相差が−195nmの光学的に正の1軸性を有するフィルム7を作製した。実施例2のホメオトロピック配向液晶層を、フィルム7に置き換えた以外は実施例2と同様にして図5に示す垂直配向型液晶表示装置を作製した。その結果、本発明の楕円偏光板に比べ、大幅に厚みが増し総膜厚が450μmとなった。
【0212】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】実施例2で用いた垂直配向型液晶表示装置の断面模式図である。
【図2】実施例2における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【図3】実施例9で用いた垂直配向型液晶表示装置の断面模式図である。
【図4】実施例9における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【図5】実施例13で用いた垂直配向型液晶表示装置の断面模式図である。
【図6】実施例13における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【図7】実施例19で用いた垂直配向型液晶表示装置の断面模式図である。
【図8】実施例19における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【図9】実施例22で用いた垂直配向型液晶表示装置の断面模式図である。
【図10】実施例22における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【図11】比較例1で用いた垂直配向型液晶表示装置の断面模式図である。
【図12】比較例1における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【図13】比較例2で用いた垂直配向型液晶表示装置の断面模式図である。
【図14】比較例2における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【図15】比較例3で用いた垂直配向型液晶表示装置の断面模式図である。
【図16】比較例3における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【図17】比較例4における垂直配向型液晶表示装置を全方位から見たときのコントラスト比を示す図である。
【符号の説明】
【0214】
1 直線偏光板
2 ホメオトロピック配向液晶フィルム
3 第1の光学異方素子
4 第1の光学異方素子(負の2軸性)
5 第3の光学異方素子
6 第4の光学異方素子
7 垂直配向型液晶セル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも正の一軸性を示す液晶材料を液晶状態においてホメオトロピック配向させた後、該配向を固定化したホメオトロピック配向液晶フィルムと直線偏光板とからなる垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板。
【請求項2】
前記ホメオトロピック配向液晶フィルムが以下の[1]および[2]を満たすことを特徴とする請求項1記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板。
[1]0nm≦Re1≦20nm
[2]−500nm≦Rth1≦−30nm
(ここで、Re1は前記ホメオトロピック配向液晶フィルムの面内のリターデーション値を意味し、Rth1は前記ホメオトロピック配向液晶フィルムの厚さ方向のリターデーション値を意味する。前記Re1及びRth1は、それぞれRe1=(Nx1−Ny1)×d1[nm]、Rth1=(Nx1−Nz1)×d1[nm]である。また、d1は前記ホメオトロピック配向液晶フィルムの厚さ、Nx1およびNy1は前記ホメオトロピック配向液晶フィルム面内の主屈折率、Nz1は厚さ方向の主屈折率であり、Nz1>Nx1≧Ny1である。)
【請求項3】
前記ホメオトロピック配向液晶層が、オキセタニル基を有する液晶性高分子化合物を少なくとも含有してなる液晶性組成物を、液晶状態でホメオトロピック配向させた後、前記オキセタニル基を反応せしめて前記ホメオトロピック配向を固定化したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の楕円偏光板。
【請求項4】
前記の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板が、面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板。
【請求項5】
前記の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板が、面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子と厚さ方向に負の1軸光学異方性を示す以下の[3]および[4]を満たすことを特徴とする第3の光学異方素子とを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板。
[3]0nm≦Re2≦20nm
[4]30nm≦Rth2≦500nm
(ここで、Re2は前記第3の光学異方素子の面内のリターデーション値を意味し、Rth2は前記第3の光学異方素子の厚さ方向のリターデーション値を意味する。前記Re2及びRth2は、それぞれRe2=(Nx2−Ny2)×d2[nm]、Rth2=(Nx2−Nz2)×d2[nm]である。また、d2は前記第3の光学異方素子の厚さ、Nx2およびNy2は前記第3の光学異方素子の面内の主屈折率、Nz2は厚さ方向の主屈折率であり、Nx2≧Ny2>Nz2である。)
【請求項6】
前記第3の光学異方素子が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択される少なくとも一種のポリマー材料であることを特徴とする請求項5に記載の楕円偏光板。
【請求項7】
前記第1の光学異方素子が、面内で1/4波長の位相差を示しかつ負の2軸性光学異方性を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板。
【請求項8】
総膜厚が400μm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板。
【請求項9】
電極を備えた1対の基板間に、電圧無印加時に基板表面に対して垂直配向する液晶分子を含む垂直配向型液晶セルと、前記垂直配向型液晶セル基板の少なくとも片側に垂直配向型液晶セル基板側に請求項1〜7のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板のホメオトロピック配向液晶フィルム側が向かうよう配置し、前記垂直配向型液晶セル基板と前記楕円偏光板との間に、面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子を少なくとも1枚配置したことを特徴とする垂直配向型液晶表示装置。
【請求項10】
請求項9に記載の垂直配向型液晶表示装置において、垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板を配置した基板と反対側の基板上に、基板側から面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子を少なくとも1枚および直線偏光板を配置したことを特徴とする請求項9に記載の垂直配向型液晶表示装置。
【請求項11】
前記第1の光学異方素子と前記垂直配向型液晶セルとの間に、少なくとも1枚の厚さ方向に負の1軸光学異方性を示す第3の光学異方素子を有することを特徴とする請求項9または10に記載の垂直配向型液晶表示装置。
【請求項12】
前記垂直配向型液晶セルと直線偏光板の間に、面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子を有することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置。
【請求項13】
前記第1の光学異方素子が面内で1/4波長の位相差を示し、かつ負の2軸性光学異方性を有することを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置。
【請求項14】
前記垂直配向型液晶セルの一方の基板が反射機能を有する領域と透過機能を有する領域とを有する基板であることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置。
【請求項1】
少なくとも正の一軸性を示す液晶材料を液晶状態においてホメオトロピック配向させた後、該配向を固定化したホメオトロピック配向液晶フィルムと直線偏光板とからなる垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板。
【請求項2】
前記ホメオトロピック配向液晶フィルムが以下の[1]および[2]を満たすことを特徴とする請求項1記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板。
[1]0nm≦Re1≦20nm
[2]−500nm≦Rth1≦−30nm
(ここで、Re1は前記ホメオトロピック配向液晶フィルムの面内のリターデーション値を意味し、Rth1は前記ホメオトロピック配向液晶フィルムの厚さ方向のリターデーション値を意味する。前記Re1及びRth1は、それぞれRe1=(Nx1−Ny1)×d1[nm]、Rth1=(Nx1−Nz1)×d1[nm]である。また、d1は前記ホメオトロピック配向液晶フィルムの厚さ、Nx1およびNy1は前記ホメオトロピック配向液晶フィルム面内の主屈折率、Nz1は厚さ方向の主屈折率であり、Nz1>Nx1≧Ny1である。)
【請求項3】
前記ホメオトロピック配向液晶層が、オキセタニル基を有する液晶性高分子化合物を少なくとも含有してなる液晶性組成物を、液晶状態でホメオトロピック配向させた後、前記オキセタニル基を反応せしめて前記ホメオトロピック配向を固定化したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の楕円偏光板。
【請求項4】
前記の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板が、面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板。
【請求項5】
前記の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板が、面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子と厚さ方向に負の1軸光学異方性を示す以下の[3]および[4]を満たすことを特徴とする第3の光学異方素子とを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板。
[3]0nm≦Re2≦20nm
[4]30nm≦Rth2≦500nm
(ここで、Re2は前記第3の光学異方素子の面内のリターデーション値を意味し、Rth2は前記第3の光学異方素子の厚さ方向のリターデーション値を意味する。前記Re2及びRth2は、それぞれRe2=(Nx2−Ny2)×d2[nm]、Rth2=(Nx2−Nz2)×d2[nm]である。また、d2は前記第3の光学異方素子の厚さ、Nx2およびNy2は前記第3の光学異方素子の面内の主屈折率、Nz2は厚さ方向の主屈折率であり、Nx2≧Ny2>Nz2である。)
【請求項6】
前記第3の光学異方素子が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択される少なくとも一種のポリマー材料であることを特徴とする請求項5に記載の楕円偏光板。
【請求項7】
前記第1の光学異方素子が、面内で1/4波長の位相差を示しかつ負の2軸性光学異方性を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板。
【請求項8】
総膜厚が400μm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板。
【請求項9】
電極を備えた1対の基板間に、電圧無印加時に基板表面に対して垂直配向する液晶分子を含む垂直配向型液晶セルと、前記垂直配向型液晶セル基板の少なくとも片側に垂直配向型液晶セル基板側に請求項1〜7のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板のホメオトロピック配向液晶フィルム側が向かうよう配置し、前記垂直配向型液晶セル基板と前記楕円偏光板との間に、面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子を少なくとも1枚配置したことを特徴とする垂直配向型液晶表示装置。
【請求項10】
請求項9に記載の垂直配向型液晶表示装置において、垂直配向型液晶表示装置用楕円偏光板を配置した基板と反対側の基板上に、基板側から面内で1/4波長の位相差を示す第1の光学異方素子を少なくとも1枚および直線偏光板を配置したことを特徴とする請求項9に記載の垂直配向型液晶表示装置。
【請求項11】
前記第1の光学異方素子と前記垂直配向型液晶セルとの間に、少なくとも1枚の厚さ方向に負の1軸光学異方性を示す第3の光学異方素子を有することを特徴とする請求項9または10に記載の垂直配向型液晶表示装置。
【請求項12】
前記垂直配向型液晶セルと直線偏光板の間に、面内方向に正の1軸光学異方性を有する第4の光学異方素子を有することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置。
【請求項13】
前記第1の光学異方素子が面内で1/4波長の位相差を示し、かつ負の2軸性光学異方性を有することを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置。
【請求項14】
前記垂直配向型液晶セルの一方の基板が反射機能を有する領域と透過機能を有する領域とを有する基板であることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の垂直配向型液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−209872(P2008−209872A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49080(P2007−49080)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】
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