説明

型内被覆用金型

【課題】 インモールドコート法を実施するための被覆材を流す空間を必要な箇所に確保することができる型内被覆用金型を提供する。
【解決手段】 縁部2およびその周辺の裏面4にも被覆材5をコーティングする樹脂製品1を成形する型内被覆用金型において、樹脂製品1の縁部2近傍の裏面4にアンダーカットリブ9を成形するためのアンダーカット形状の溝部11をコア7に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールドコート法を実施するための型内被覆用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数個取りを行う金型であって、ランナが、複数のキャビティのそれぞれに接続されるとともに、ランナを形成する面のうち被覆材が流れる面を除く面に、凹部が形成されている金型が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような凹部を形成することにより、凹部における溶融樹脂の固化が遅れて、キャビティで成形される樹脂成形品に対する引っ張り力を抑制することができる。また、キャビティで成形される樹脂成形品に対する引っ張り力が抑制されるため、成形に伴う凝縮によってキャビティの立ち面部で成形された樹脂成形品立ち面部が変形しないとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−289794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術においては、長手方向の収縮に対する作用はあると考えられるが、立ち面部自体の収縮(縦方向)には対応することができず、結果として樹脂成形品のコーナ部がキャビティ側へ密着し、被覆材の充填不良が発生するという問題がある。
【0005】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インモールドコート法を実施するための被覆材を流す空間を必要な箇所に確保することができる型内被覆用金型を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本発明は、縁部およびその周辺の裏面にも被覆材をコーティングする製品を成形する型内被覆用金型において、前記製品の縁部近傍の裏面にアンダーカットリブを成形するためのアンダーカット形状の溝部を設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、樹脂製品の収縮を所望な方向に向かわせ、樹脂製品とキャビティの間に被覆材が流れる隙間を必要な箇所に確保することができる。被覆材が流れる隙間の確保により、被覆材の充填ができ、樹脂製品の表面に十分な膜厚を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】樹脂製品の説明図で、(a)は被覆前の裏側の斜視図、(b)は被覆材を施した状態の要部拡大断面図
【図2】インモールドコート法の概要説明図
【図3】樹脂製品にアンダーカットリブを形成した被覆前の裏側の斜視図
【図4】作用説明図で、(a)は隙間確保、(b)はシール効果
【図5】本発明に係る型内被覆用金型の断面図
【図6】本発明に係る型内被覆用金型で成形された製品の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。インモールドコート法を施す樹脂製品1は、図1(a)に示すように、矩形の板形状で縁部2が弧状形状に形成されている。そして、図1(b)に示すように、樹脂製品1の表面3と縁部2と裏面4の一部が被覆材5でコーティングされる。
【0010】
このような樹脂製品1を対象にしてインモールドコート法を実施するためには、図2に示すように、射出成形された樹脂製品1の表面3・縁部2・裏面4の一部と、キャビティ6及びコア7との間に被覆材5が流れる隙間8を形成する必要がある。そこで、図3に示すように、コア7に接する樹脂製品1の縁部2近傍の裏面4にアンダーカットリブ9を矩形状に成形する。
【0011】
アンダーカットリブ9を樹脂製品1の縁部2近傍の裏面4に設けることにより、図4(a)に示すように、矢印A方向の収縮に対して樹脂10を拘束することができると共に、矢印B方向の収縮による樹脂10の変形に対しても拘束力を得ることができる。また、アンダーカットリブ9は、図4(b)に示すように、不必要な箇所に被覆材5が流れるのを妨げるシールとしての役割を果たす。
【0012】
更に、アンダーカットリブ9をアンダーカット形状にしたことにより、樹脂10の収縮が起こった場合のキャビティ6向きへの樹脂10の挙動を抑制できるため、被覆材5を流す隙間8を確保することができる。また、2軸方向の収縮がある部位でも傾斜面9aにより、キャビティ6向きへの樹脂10の挙動を抑制することができ、隙間8が確保される。
【0013】
このようなアンダーカットリブ9を成形するために、本発明に係る型内被覆用金型は、図5に示すように、樹脂製品1のアンダーカットリブ9を成形するためのアンダーカット形状の溝部11をコア7に設けた。
【0014】
そして、アンダーカット形状の溝部11によりアンダーカットリブ9が成形される。上述したアンダーカットリブ9の作用により、射出成形された樹脂製品1の表面3・縁部2・裏面4の一部と、キャビティ6及びコア7との間に被覆材5が流れる隙間8が形成される。更に、隙間8に被覆材5が供給されて樹脂製品1の表面3・縁部2・アンダーカットリブ9に至る裏面4に被覆材5がコーティングされる。
【0015】
表面3・縁部2・アンダーカットリブ9に至る裏面4に被覆材5がコーティングされた樹脂製品1の金型からの取り出しは、アンダーカットリブ9が樹脂製品1の一部として成形されても、傾斜面9aのなす角度を適切な値に設定することにより、円滑に行われる。そして、図6に示すように、樹脂製品1の表面3・縁部2・アンダーカットリブ9に至る裏面4に被覆材5をコーティングした製品が作製される。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明によれば、樹脂製品とキャビティ及びコアとの間に被覆材が流れる隙間を確保することにより、必要な箇所に被覆材を充填することができ、樹脂製品の表面・縁部・裏面の一部に十分な膜厚が得られる型内被覆用金型を提供することができる。
【符号の説明】
【0017】
1…樹脂製品、2…縁部、3…表面、4…裏面、5…被覆材、6…キャビティ、7…コア、8…隙間、9…アンダーカットリブ、9a…傾斜面、10…樹脂、11…溝部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縁部およびその周辺の裏面にも被覆材をコーティングする樹脂製品を成形する型内被覆用金型において、前記製品の縁部近傍の裏面にアンダーカットリブを成形するためのアンダーカット形状の溝部を設けたことを特徴とする型内被覆用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−35430(P2012−35430A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175151(P2010−175151)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】