説明

型内被覆組成物及びそれを用いた型内被覆成形品

【課題】本発明は、樹脂成形品の表面に生じる巣穴、波打ち及びひけ等を効果的に埋め、平滑な塗膜が得られる被覆組成物を提供することが可能となり、さらに、この型内被覆組成物を使用することによって、容易かつ実用的に優れた被覆成形品を提供する。
【解決手段】本発明は、(A)少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー、または不飽和ポリエステル樹脂、(B)前記(A)成分と共重合可能なエチレン性不飽和モノマー、(C)セルロース系樹脂化合物、ポリ乳酸系樹脂化合物の少なくとも一種、(D)有機過酸化物開始剤を必須成分とし(A)/(B)=90/10〜5/95(質量部)であり、(A)+(B)100質量部に対し、(C)成分を10〜100質量部、(D)成分を0.2〜10質量部であることを特徴とする、型内被覆組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型内被覆組成物及びそれを使用した型内被覆成形品に関する。特に、本発明は、例えば、SMCやBMCと云った熱硬化性樹脂の圧縮成形、射出成形、ジシクロペンタジエンを主成分とする反応射出成形(RIM成形)並びに、ABS樹脂及びポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂の射出成形、射出圧縮成形、射出プレス成形に使用される型内被覆成形用組成物及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車、弱電、建材関係などには熱硬化性樹脂成形品あるいは熱可塑性樹脂成形品が数多く使用されるようになった。圧縮成形された繊維強化熱硬化性樹脂成形品の大きな欠点は、塗装を必要とする場合、パテ埋めやサンディング仕上げと云った前処理を必要とする巣穴、表面の波打ち、及びひけのような表面の欠陥であり、多大の工数と経費がかかっている。
【0003】
このような欠点を解決するために、低収縮金型内被覆組成物が知られている(特許文献1、2)。
【0004】
しかしながら、特許文献1、2の金型内被覆組成物では、ガラス繊維による表面の波打ちやひけの改善にはある程度効果がみられるものの、200〜300μm程度以上の深さの巣穴があった場合、金型内被覆組成物自身の硬化収縮や高温での硬化から冷却に至る熱収縮により、わずかなくぼみや塗膜にシワが残るという欠点があった。
【0005】
ジシクロペンタジエンを主成分とする反応射出成形品の場合は、成形材料そのものの硬化収縮が大きく、リブやボスと云った成形品の肉厚部はひけも大きく、特許文献3の金型内被覆組成物ではひけを覆い隠すことが出来ないばかりか、場合によってはリブやボスの上の金型内被覆組成物硬化塗膜にしわの発生するという欠点があった。
【0006】
ABS樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂の射出成形、射出圧縮成形、射出プレス成形の場合は、成形材料を200℃〜240℃程度に射出シリンダー内で可塑化した後60℃〜80℃程度に調整された金型内に射出して成形されるもので、樹脂冷却による収縮が大きく、リブやボスと云った成形品の肉厚部はひけも大きく、特許文献4〜8の金型内被覆組成物ではひけを覆い隠すことが出来ないばかりか、時として塗膜にシワの発生すると云う欠点があった。
【特許文献1】特公昭59−19583号公報
【特許文献2】特開平6−107750号公報
【特許文献3】特開平11−300776号公報
【特許文献4】特開平8−258080号公報
【特許文献5】特開平11−300776号公報
【特許文献6】特開2002−249680号公報
【特許文献7】特開2003−137943号公報
【特許文献8】特開2003−138165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、例えば、SMCやBMCと云った熱硬化性樹脂の圧縮成形、射出成形、ジシクロペンタジエンを主成分とする反応射出成形(RIM成形)並びに、ABS樹脂及びポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂の射出成形、射出圧縮成形、射出プレス成形に使用される低収縮型内被覆成形用組成物及びその成形品に関して、前述の欠点を改良することである。即ち、樹脂成形品の表面に生じる巣穴、波打ち及びひけ等を効果的に埋め、平滑な塗膜が得られる被覆組成物を提供することが可能となり、さらに、この型内被覆組成物を使用することによって、容易かつ実用的に優れた被覆成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を達成するため、鋭意検討した結果、上記課題が、以下の構成によって達成できることを見出し、本発明に到達したものである。即ち、本発明は、以下の発明に関するものである。
【0009】
1.(A)少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー、または不飽和ポリエステル樹脂、(B)前記(A)成分と共重合可能なエチレン性不飽和モノマー、(C)セルロース系樹脂化合物、ポリ乳酸系樹脂化合物の少なくとも一種、(D)有機過酸化物開始剤を必須成分とし(A)/(B)=90/10〜5/95(質量部)であり、(A)+(B)100質量部に対し、(C)成分を10〜100質量部、(D)成分を0.2〜10質量部であることを特徴とする、型内被覆組成物。
【0010】
2.上記に記載の型内被覆組成物で被覆されてなる、熱硬化性樹脂成形品または熱可塑性樹脂成形品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂成形品の表面に生じる巣穴、波打ち及びひけ等を効果的に埋め、平滑な塗膜が得られる被覆組成物を提供することが可能となり、さらに、この型内被覆組成物を使用することによって、容易かつ実用的に優れた被覆成形品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0013】
本発明で使用する型内被覆組成物は、上記した(A)少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー、または不飽和ポリエステル樹脂、(B)前記(A)成分と共重合可能なエチレン性不飽和モノマー、(C)セルロース系樹脂化合物またはポリ乳酸系樹脂化合物の少なくともいずれか一種(D)有機過酸化物開始剤を必須成分とし、さらに必要に応じて、内部離型剤、着色顔料、体質顔料や導電性顔料等の顔料、粒子径が0.1μm以下のシリカやアルミナ等の酸化物、改質樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、各種分散剤、消泡剤等の任意成分を含むものである。
【0014】
[(1)(A)成分]
本発明の型内被覆組成物に使用される成分(A)は、少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーであるか、または、不飽和ポリエステル樹脂である。
【0015】
[(1−1)少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー]
少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、及びシリコン(メタ)アクリレートのオリゴマーなどを挙げることができる。
【0016】
これらのオリゴマーの質量平均分子量は、それぞれの種類により変動し得るが、一般に、約300〜10,000、好ましくは、500〜5,000とするのが適当である。上記(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーは、(メタ)アクリレート基を、1分子中に、少なくとも2個、好ましくは、2〜6個有することが適当である。
【0017】
[(1−1−1)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー]
本発明で使用されるオリゴマーとしてのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、(i)有機ジイソシアネート化合物と、(ii)有機ポリオール化合物と、(iii)ヒドロシキアルキル(メタ)アクリレートとを、NCO/OH比が、例えば、0.8〜1.0、このましくは、0.9〜1.0となるような存在比で混合し、通常の方法により製造することができる。水酸基が過剰に存在する場合や、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを多量に使用することにより、水酸基を多く有するオリゴマーが得られる。
【0018】
具体的には、(i)有機ジイソシアネート化合物と、(ii)有機ポリオール化合物等とを例えば、ジブチル錫ラウレートなどのウレタン化触媒の存在下で反応させて、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを得る。次いで、ほとんど遊離イソシアネート基が反応するまで、(iii)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを反応させることにより、上記ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーを製造することが出来る。なお、(ii)有機ポリオール化合物と、(iii)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの割合は、後者1モルに対し、例えば、前者0.1〜0.5モル程度が適当である。
【0019】
上記反応に使用される(i)有機ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,2−ジイソシアナトエタン、1,2−ジイソシアナトプロパン、1,3−ジイソシアナトプロパン、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン等を使用することができる。これら有機ジイソシアネート化合物は、単独で用いても、また、それらの2種以上の混合物として使用することもできる。
【0020】
上記反応で使用される(ii)有機ポリオール化合物は、好ましくは、有機ジオール化合物として、例えば、アルキルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール等を挙げることができる。アルキルジオールとしては、例えば、エチレングリコールや、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−エチルブタン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、4,8−ジヒドロキシトリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等を代表的なものとして挙げることができる。
【0021】
有機ジオール化合物としてのポリエーテルジオールは、例えば、既知の方法により、アルデヒドや、アルキレンオキサイド、グリコール等の重合により合成することができる。例えば、ホルムアルデヒドや、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド、エピクロルヒドリンなどを適当な条件下でアルキルジオールに付加重合させることによって、ポリエーテルジオールが得られる。有機ジオール化合物としてのポリエステルジオールとしては、例えば、飽和又は不飽和のジカルボン酸及び/又はそれらの酸無水物と、過剰のアルキルジオールとを反応させて得られるエステル化反応生成物、及びアルキルジオールにヒドロキシカルボン酸及び/又はその分子内エステルであるラクトン及び/又は分子間エステルであるラクチドを重合させて得られるエステル化反応生成物を用いることができる。以上に挙げた有機ジオール化合物は単独で用いても、それらの2種以上を併用しても良い。
【0022】
上記(iii)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。その他、本発明で使用されるオリゴマーとしてのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、1分子中に(メタ)アクリレート基及び水酸基を有する化合物と、有機ジイソシアネートとを、NCO/OHの比が、例えば、0.9〜1.0の割合で、例えば、ジブチル錫ジラウリレートなどのウレタン化触媒の存在下で反応しても製造することができる。
【0023】
[(1−1−2)ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー]
本発明で使用されるオリゴマーとしてのポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば、水酸基を末端に有するポリエステルポリオールと、不飽和カルボン酸との反応によって製造することができる。このようなポリエステルポリオールは、代表的には飽和又は不飽和のジカルボン酸又はその酸無水物と、過剰量のアルキレンジオールとをエステル化反応することによって製造することができる。使用されるジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸や、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、マレイン酸等が代表的なものとして挙げられる。また、使用されるアルキレンジオールとしては、例えば、エチレングリコールや、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール等が代表的なものとして挙げることができる。ここで、不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸や、メタクリル酸等を代表的なものとして挙げることができる。
【0024】
[(1−1−3)エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー]
本発明で使用されるオリゴマーとしてのエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、エポキシ化合物と、上記のような不飽和カルボン酸とを、エポキシ基1当量当たり、カルボキシル基当量、例えば、0.5〜1.5となるような割合で用い、通常のエポキシ基への酸の開環付加反応によって製造させたものである。ここで使用されるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ、フェノール性ノボラック型エポキシ等を好適に挙げることができる。
【0025】
本発明で使用されるオリゴマーとしてのポリエーテル(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエチレングリコールや、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールと、前述の不飽和カルボン酸との反応によって製造することができる。
【0026】
[(1−1−4)シリコン(メタ)アクリレートオリゴマー]
本発明で使用されるオリゴマーとしてのシリコン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、アルコール性シロキサン化合物のヒドロキシル基と(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって製造させたものである。シリコン(メタ)アクリレートオリゴマーは、特に光安定性又は耐光性に優れており、長期間屋外で使用される場合に有効である。
【0027】
[(1−2)不飽和ポリエステル樹脂]
一方、本発明において、(A)成分として使用される不飽和ポリエステル樹脂は、例えば、有機ポリオールと、不飽和カルボン酸とを、公知の方法により反応させ、さらに必要に応じて、飽和ポリカルボン酸を反応させて製造することができる。使用される有機ポリオールとしては、例えば、エチレングリコールや、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ビスフェノールA等が代表的なものとして挙げることができる。また、使用される不飽和ポリカルボン酸としては、例えば、(無水)マレイン酸や、(無水)フマル酸、(無水)イタコン酸等を代表的なものとして挙げることができる。(A)成分としては、上記(メタ)アクリレート基含有オリゴマーと、不飽和ポリエステル樹脂とを併用しても良い。
【0028】
[(2)(B)成分]
本発明で使用される成分(B)は、上記(A)成分と共重合することができるエチレン性不飽和モノマーである。
【0029】
このようなエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、スチレンや、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート等が代表的なものとしてあげられる。
【0030】
(B)成分としては、エチレン性不飽和モノマーを単独で使用してもよく、又はこれらの混合物として使用することができる。また、エチレン性不飽和モノマーとしては、上記のように、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を含有するエチレン性不飽和モノマーが含まれる。
【0031】
上記(A)成分対(B)成分の質量比は、(A)成分及び(B)成分として使用される化合物等の種類にもよるが、通常、(A)成分:(B)成分=90:10〜5:95、好ましくは、80:20〜20:80、より好ましくは70:30〜30:70が適当である。この範囲であれば、適度な硬化特性と粘性を有する被覆組成物が得られる。
【0032】
特に(A)成分及び又は(B)成分の一部は、3個ないし8個の(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。3個の(メタ)アクリレート化合物の成分量としては、(A)+(B)100質量部中10〜80、好ましくは15〜60、より好ましくは20〜50質量部で使用するのが適当である。3個の(メタ)アクリレート化合物の量が10質量部以上であれば被覆組成物の硬化塗膜は収縮が小さく、平滑性に優れ各種プラスチック基材に対し優れた付着性が得られるので好ましい。一方、80質量部以下であれば、被覆組成物の硬化塗膜が硬くなりすぎたり、各種プラスチックとの付着性を阻害することがないので好ましい。
【0033】
4個ないし8個の(メタ)アクリレート化合物の成分量としては、(A)+(B)100質量部中5〜50、好ましくは10〜45、より好ましくは15〜40質量部で使用するのが適当である。4個ないし8個の(メタ)アクリレート化合物の量が5質量部以上であれば被覆組成物の硬化塗膜は収縮が小さく、平滑性に優れ各種プラスチック基材に対し優れた付着性が得られるので好ましい。一方、50質量部以下であれば、被覆組成物の硬化塗膜が硬くなりすぎたり、各種プラスチックとの付着性を阻害することがないので好ましい。
【0034】
[(3)(C)成分]
本発明で使用される(C)成分は、セルロース誘導体であるニトロセルロースや、アセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等の樹脂、及び又はポリ乳酸系樹脂を使用することができる。特に好ましくは、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、D−乳酸濃度を20モル%程度まで上げた重量平均分子量が15,000〜80,000程度の非晶性ポリ乳酸樹脂があげられる。
【0035】
(C)成分の配合量は、前記(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して、10〜100質量部、好ましくは、20〜80質量部であることが適当である。(C)成分の配合量が、10質量部以上であれば、被覆組成物の硬化収縮を小さくすることができ、平滑性に優れ各種プラスチックとの付着性を阻害することがないので好ましい。一方、100質量部以下であれば、被覆組成物の硬化収縮を無くし、平滑性に優れ各種プラスチック基材に対し優れた付着性が得られるので好ましい。
【0036】
[(4)(D)成分]
本発明で使用される(D)成分は、フリーラジカルを発生し、前記(A)成分及び(B)成分を重合させるために使用する。重合開始剤としては、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート、ターシャリーブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ターシャリーアミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ラウロイルパーオキサイド、ターシャリーブチルオキシラウレート、1,1−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が代表的なものとして挙げられる。
【0037】
重合開始剤の配合量は、前記(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して、0.2〜10質量部、好ましくは、0.5〜5質量部であることが適当である。この範囲内において、硬化反応が好適に発揮される。
【0038】
[(5)内部離型剤]
本発明では、硬化塗膜を金型からスムーズに離型させるために、離型剤を使用する。離型剤としては、例えば、ステアリン酸や、ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸塩、大豆油レシチン、シリコーン油、脂肪酸エステル、脂肪酸アルコール二塩基酸エステル類などを挙げることができる。離型剤の配合量は、前記(A)成分、(B)成分の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは、0.2〜5質量部であることが適当である。この範囲内において、離型効果が好適に発揮される。
【0039】
[(6)顔料]
本発明の型内被覆組成物は、更に必要に応じ顔料として従来から通常プラスチックス用、塗料用として使用されている各種着色顔料や、体質顔料、導電性顔料、粒子径が0.1μm以下のシリカやアルミナ等の酸化物等を併用することができる。着色顔料としては、例えば、白色系では、二酸化チタン、黄系では、ベンジジンエローや、チタンエロー、ハンザエロー、橙系では、モリブデートオレンジや、ハンザジンオレンジ、赤系では、キナクリドン、緑系では、クロムグリーンや、フタロシアニングリーン、青系では、フタロシアニンブルーや、コバルトブルー、群青、黒系では、カーボンブラックや、酸化鉄等の顔料を使用することができる。体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウムや、タルク、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、クレー等を好適に挙げることができる。導電性顔料としては、例えば、カーボンブラックや、グラファイト、酸化亜鉛、二酸化チタン等の表面を、酸化アンチモンのような導電性金属酸化物でコーティングしたもの、カーボン繊維等が使用できる。
【0040】
顔料は、成形物を着色し、美観を持たせたり、成形品表面の外観を改良したり、硬化塗膜に導電性を持たせ帯電防止の目的で配合したり、表面の傷つきを防止する。
【0041】
[(7)その他]
本発明の型内被覆組成物には、更に必要に応じて、ポリイソシアネート等の各種改質樹脂や、粒子径が0.1〜30μmの樹脂粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、顔料分散剤、消泡剤等の各種添加剤等を配合してもよい。
【0042】
本発明の型内被覆組成物は、実質的に溶剤は含まない。溶剤を実質的に含まない方が、型内流動時に型内被覆組成物中に溶剤蒸気がとりこまれてピンホールが発生することもなく、これによって塗膜が脆弱となることもないので好ましいからである。なお、「実質的に含まない」とは、例えば、含まれるとしても、せいぜい被覆組成物の質量の1%未満、実質上は、0%であることを意味する。例えば、ポリイソシアネート化合物を使用する場合において、実質的に溶剤を含有しないものを使用することが重要である。
【0043】
[(8)樹脂成形品]
本発明の型内被覆組成物が適用される合成樹脂成形品としては、従来より公知の各種熱硬化性成形材料、各種熱可塑性合成樹脂成形材料を使用することができる。熱硬化性成形材料としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、フェノール樹脂をマトリックスとするSMC、BMCと呼ばれる繊維強化プラスチック成形材料、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、エポキシ樹脂をマトリックスとするRTM成形材料、ジシクロペンタジエン、ポリウレタン等を用いたRIM成形材料等が挙げられる。また、熱可塑性合成樹脂成形材料としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ乳酸樹脂、ASA樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂またはこれら樹脂の各種アロイ材が挙げられる。
【0044】
アロイ材とは、上記のような熱可塑性合成樹脂と、他の1種以上のポリマーが物理的に混合された複合材料であって、総合的な実用性能に相乗効果を有する材料と一般に理解されている。このような熱可塑性合成樹脂は、用途に応じた特性を満足するように、例えば、紫外線吸収剤や、酸化防止剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤、可塑剤、ガラス繊維等の繊維強化剤、無機充填材等を含有することができる。
【0045】
[(9)型内被覆成形品の製造方法]
以下、本発明の型内被覆成形品の製造方法を実施するための成形機の構成、成形型及び被覆組成物注入装置を、図面を参照しながら、具体的に説明するが、本発明の範囲は、このような具体的な成形機、成形型及び被覆組成物注入装置によって何ら限定されるものではない。
【0046】
図1は、例えばSMC(シートモールディングコンパウンド)と呼ばれるガラス繊維強化熱硬化性成形材料を用いた圧縮成形法を実施する装置を示す。その成形方法としては金型内で成形する従来の方法が特に制限なく利用できるが、好適には特公昭55−9291号公報、特開昭61−273921号公報等に記載の方法を用いることができる。
【0047】
図1に示す装置において、割型の上型1及び下型2はそれぞれ互いに対向する成形用型部材である。上型1及び下型2はそれぞれ型締め装置の可動盤3及び固定盤4に固定されており、可動盤3は型締めシリンダ5によって進退動作する構成になっている。上型1及び下型2により所要形状の割型キャビティ6を形成できるようになっており、上型1の移動で型内成形品の型内被覆する表面方向へのキャビティの拡張が可能である。この型内被覆する表面が1面であっても、2面以上であってもよく、従って、この型内被覆する表面方向へのキャビティの拡張は1方向であっても、2方向以上であってもよい。上型1と下型2との間に上記のガラス繊維強化プラスチック成形材料を入れ、型締めシリンダ5を動作させ、上型1と下型2とを接近させて該成形材料をキャビティの形状に成形し、型締め圧を付加して硬化させる。
【0048】
また、図1に示す装置においては、型内被覆用組成物の注入手段であるシャットオフピン7Aを備えたインジェクタ7、インジェクタ7に所定量の型内被覆用組成物を供給する計量シリンダ8及び型内被覆用組成物をその貯蔵部10から計量シリンダ8に供給するための供給ポンプ9が整備されている。なお、計量シリンダ8には型内被覆用組成物注入用のプランジャーレギュレータ8Aが備えられている。
【0049】
成形に際しては、まず型締めシリンダ5を動作させて上型1を下型2から離し、下型2の上に上記のガラス繊維強化プラスチック成形材料を乗せ、その後、型締めシリンダ5を動作させ、上型1と下型2とを接近させて該成形材料をキャビティの形状に成形し、型締め圧を付加する。この型締め圧は通常2〜15MPa(20〜150Kgf/cm)である。成形温度は、成形時間、成形材料の種類等に応じて任意に決定されるが、通常120〜180℃が適当であり、成形材料を入れる前に金型を予め上記の温度にセットし、後記する硬化被膜が得られるまで該温度を維持するようにしておくのが望ましい。
【0050】
次いで、上記のキャビティ内の成形品が型内被覆用組成物の注入圧力、流動圧力に耐え得る程度に硬化した段階で、上記の型締め圧をそのまま維持しながら、又は上記の型締め圧を減圧した後、又は下記の所望の硬化被膜厚よりも大きいが、上型1と下型2との嵌合を離脱させることがない距離だけ、好ましくは0.2〜5mmだけ上型1を成形品の表面から離した後、所望の膜厚、好ましくは20〜1,000μmの硬化被膜が得られるだけの量の型内被覆用組成物をインジェクタ7から上型1の内壁と成形品の型内被覆する表面との間に注入する。
【0051】
型内被覆用組成物を注入した後、シャットオフピン7Aで注入口を閉じ、必要に応じて型締めシリンダ5を動作させ、型締め操作を行い、キャビティ6内の成形品の表面上で型内被覆用組成物を硬化させる。型内被覆用組成物が成形品表面を均一に覆うように、通常約1〜10MPa(10〜100Kgf/cm)に(再)加圧し、その圧力を硬化被膜が形成されるまで、通常約30〜300秒程度保持する。このようにして成形品表面に硬化被膜が形成された後、型締めシリンダ5を動作させ、上型1及び下型2を離間して、硬化被膜を有する成形品を金型から取り出す。
【0052】
図2は熱可塑性樹脂成形材料の射出成形法の場合の態様を示すものである。図2において、符号11は射出成形機の型締め装置の固定盤、12は可動盤であり、それぞれ互いに対向する成形型部材である固定金型部13および可動金型部14を備えている。可動盤12が型締めシリンダ15によって進退動作される構成になっている。そして、固定金型部13および可動金型部14の嵌合個所には、所要形状のキャビティ16が形成されていて、このキャビティ16中に溶融もしくは軟化状態の熱可塑性樹脂成形材料を射出、充填し、固化させるのである。溶融樹脂成形材料を射出、充填する場合、上記キャビティ16には、スクリューを有する射出シリンダ17から、ノズル18およびスプルー19を介して、樹脂成形材料が射出できるようになっている。なお、図2中、符号20はリブ部(ボス部)21は離型時のエジェクタピンである。
【0053】
また、図2において型内被覆用組成物の注入手段としては、シャットオフピン22Aを備えたインジェクタ22,上記インジェクタ22に所定量の型内被覆用組成物を供給する計量シリンダ23および型内被覆用組成物をその貯蔵部24から上記計量シリンダ23に供給するための供給ポンプ25が装備されている。なお、上記計量シリンダ23には型内被覆用組成物注入用のプランジャーレギュレータ23Aが備えられている。
【0054】
成形に際しては、先ず、型締めシリンダ15を動作して、金型(固定金型部13と可動金型部14)を閉じ、型締め圧を付加する。この型締め圧は、樹脂成形材料の射出圧力に対抗できる必要がある。通常この射出圧力は、ノズル18の部分で40〜250MPa(400〜2,500Kgf/cm)の高圧である。この過程で、供給ポンプ25が作動し、計量シリンダ23に必要な量の被覆剤を供給しておく。
【0055】
次いで、溶融もしくは軟化状態の樹脂成形材料を射出シリンダ17からノズル18及びスプルー19を介してキャビティ16内に射出する。上記樹脂成形材料が金型内で適正に(型内被覆用組成物の注入圧力、流動圧力に耐える程度に)固化した段階で、上記型締め圧を減圧するか、または下記の所望の硬化被膜厚よりも大きいが、固定金型部13と可動金型部14との嵌合を離脱させることがない距離だけ、好ましくは0.2〜5mmだけ可動金型部14を後退させる。次いで、シャットオフピン22Aを動作させてインジェクタ22の注入口を開放する。次いで、計量シリンダ23の型内被覆用組成物注入用のプランジャーレギュレータ23Aを動作させ、キャビティ16、すなわち固定金型部13の内壁と樹脂成形品の型内被覆する表面との間に所望の膜厚、好ましくは20〜1,000μmの硬化被覆が得られるだけの量の型内被覆用組成物を注入する。
【0056】
型内被覆用組成物を注入した後、再びシャットオフピン22Aで注入口を閉じ、必要に応じて型締めシリンダ15を動作させ、型締め操作を行い、型内で型内被覆用組成物を拡散させ成形品表面への被覆を行い、キャビティ16の成形品の表面上で型内被覆用組成物を硬化させる。次いで、型締めシリンダ15を動作させ、固定金型部13と可動金型部14を離間して、硬化被膜を有する成形品を金型から取り出す。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明について更に詳細に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
【0058】
[実施例1〜11、比較例1〜5]
長さ1000mm、幅500mm、高さ30mm、板厚3mmの箱形状で、外径15mm、内径5mm、高さ13mmの大きさのボスを備えた樹脂成形品を得るためのキャビティを有する金型を用い、図1に示す態様に従って、成形品に対する型内被覆を実施した。この場合、金型温度を上型150℃、下型140℃に設定し、まずSMC成形材料を下型の上に置き、500トンの型締め圧力で型締めし、90秒間保持し、得られたSMC成形品の表面が型内被覆用組成物の注入、流動圧力に耐え得る程度に硬化させた。次いで、上型を約2mm離間した後、表1及び表2に記載した組成の各々の型内被覆用組成物70cm3を金型表面と成形品の表面との間に約5秒間かけて注入した。注入完了後、型締め圧力を1秒かけて300トンまで加圧し、2秒間保持した。次いで型締め圧力を200トンに減圧し2秒間保持し、次いで型締め圧力を150トンに減圧し、86秒間保持して型内被覆用組成物を硬化させた。得られた成形品の外観及びボス部上の塗膜シワの有無、型内被覆用組成物の付着性を下記の評価方法に従って評価した。それらの結果を表3及び表4に示す。
【0059】
<成形品の外観>
成形品表面を被覆している塗膜の硬化状態、気泡の巻き込み、塗膜フクレ、塗膜剥がれ等を目視にて観察し、下記の基準で評価した。
【0060】
○:全てに良好なもの
△:一部不具合のあるもの
×:不具合の著しいもの
【0061】
<ボス部上の塗膜シワの有無>
目視にて観察し、下記の基準で評価した。
【0062】
○:全くシワの認められないもの
△:わずかにシワの認められるもの
×:著しくシワの認められるもの
【0063】
<付着性>
JIS K 5600−5−6:付着性(クロスカット法)に従って初期の塗膜付着性試験を実施した。塗膜の付着性はJIS K 5600−5−6に記載の試験結果の分類に基づき下記の0〜5の6段階で評価した。
【0064】
<6段階評価>
0…カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
【0065】
1…カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
【0066】
2…塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
【0067】
3…塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
【0068】
4…塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は数カ所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
【0069】
5…はがれの程度が分類4を超える場合。
【0070】
<耐温水テスト後の付着性>
JIS K 5600−6−2:耐液体性(水浸せき法)に従って、試験片を40±1℃の温水中に240時間浸せきした。規定の試験期間終了後、試験片を取り出し、室温で24時間置き、塗膜の付着性をJIS K 5600−5−6に記載の試験結果の分類に基づき下記の0〜5の6段階で評価した。
【0071】
<6段階評価>
0…カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
【0072】
1…カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
【0073】
2…塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
【0074】
3…塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
【0075】
4…塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は数カ所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
【0076】
5…はがれの程度が分類4を超える場合。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
[表1、表2において、]
・UAC−1((A)成分に対応): イソホロンジイソシアネート1モルと、プラクセルFM−3(ダイセル化学社製)〔ポリカプロラクトンオリゴマーにメタクリロイル基1個と、第一級水酸基1個持った数平均分子量472の化合物〕1.8モルとの反応生成物(水酸基含有ウレタンオリゴマー)(メタクリロイル基は、分子中に2個)。
【0080】
・EAC−1((A)成分に対応): エポキシ化合物(「エピコート828」(油化シェルエポキシ社製))とメタクリル酸とのオリゴマー(メタクリロイル基は、分子中に2個)
・スチレン((B)成分に対応)
・トリメチロールプロパントリアクリレート((B)成分に対応): アクリロイル基は、分子中に3個。
【0081】
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート((B)成分に対応): アクリロイル基は、分子中に6個。
【0082】
・工業用硝化綿HIG1/2秒((C)成分に対応): ニトロセルロース(旭化成工業社製)
・CAB321−0.1((C)成分に対応): セルロースアセテートブチレート、数平均分子量12,000(イーストマンコダック社製)
・CAB551−0.01((C)成分に対応): セルロースアセテートブチレート、数平均分子量16,000(イーストマンコダック社製)
・CAP−504−0.2((C)成分に対応): セルロースアセテートプロピオネート、数平均分子量15,000(イーストマンコダック社製)
・バイロエコールBE−400((C)成分に対応): 非晶性ポリ乳酸樹脂(東洋紡績社製)
・t−ブチルパーオキシベンゾアート((D)成分に対応)
・t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート((D)成分に対応)
・ステアリン酸亜鉛(内部離型剤)
・二酸化チタン(着色顔料)
・フタロシアニンブルー(着色顔料)
・カーボンブラック(着色顔料)
・タルク(体質顔料)
【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
[実施例12〜22、比較例6〜10]
長さ300mm、幅200mm、高さ30mm、板厚2mmの箱形状で外径7mm、内径4mm、高さ10mmの大きさのボスを備えた樹脂成形品を得るためのキャビティを有する金型を用い、図2に示す態様に従って成形品に対する型内被覆を実施した。金型温度を95℃に設定し、バレル温度を200℃に加熱し、まずABS樹脂を射出シリンダ内で加熱溶解させ、350トンの型締め圧力で型締めされた金型内に約1秒かけて射出し、30秒間冷却し、得られた成形品の表面が型内被覆用組成物の注入、流動圧力に耐え得る程度に固化させた。次いで、可動型を約1mm離間した後、表5、表6に記載した各被覆用組成物6cm3を金型表面と成形品の表面との間に約0.5秒間かけて注入した。注入完了後、型締め圧力を1秒かけて20トンまで加圧し60秒間保持し、型内被覆用組成物を硬化させた。得られた成形品の外観及びボス部上の塗膜シワの有無、型内被覆用組成物の付着性を実施例1と同様にして評価した。それらの結果を表7、表8に示す。
【0086】
【表5】

【0087】
【表6】

【0088】
[表5、表6において、]
・NKオリゴU−4H((A)成分に対応): ウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学社製)、アクリロイル基は、分子中に4個。
【0089】
・NKオリゴU−6H((A)成分に対応): ウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学社製)、アクリロイル基は、分子中に6個。
【0090】
・1,6ヘキサンジオールジアクリレート((B)成分に対応): アクリロイル基は、分子中に2個。
【0091】
・ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート((D)成分に対応)
・ZELEC−NE(内部離型剤)
【0092】
【表7】

【0093】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の型内被覆組成物を使用して被覆成形物を形成するのに好適な1つの圧縮成形装置の構成を示す断面図。
【図2】本発明の型内被覆組成物を使用して被覆成形物を形成するのに好適な別の1つの射出成形装置の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0095】
1 割り型の上型
2 割り型の下型
3 型締め装置の可動盤
4 型締め装置の固定盤
5 型締めシリンダ
6 割り型キャビティ
7 インジェクタ
7A シャットオフピン
8 計量シリンダ
8A プランジャーレギュレータ
9 供給ポンプ
10 貯蔵部
11 型締め装置の固定盤
12 型締め装置の可動盤
13 固定金型部
14 可動金型部
15 型締めシリンダ
16 キャビティ
17 射出シリンダ
18 ノズル
19 スプルー
20 リブ
21 離型時のエジェクタピン
22 インジェクタ
22A シャットオフピン
23 計量シリンダ
23A プランジャーレギュレータ
24 貯蔵部
25 供給ポンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー、または不飽和ポリエステル樹脂、(B)前記(A)成分と共重合可能なエチレン性不飽和モノマー、(C)セルロース系樹脂化合物、ポリ乳酸系樹脂化合物の少なくとも一種、(D)有機過酸化物開始剤を必須成分とし(A)/(B)=90/10〜5/95(質量部)であり、(A)+(B)100質量部に対し、(C)成分を10〜100質量部、(D)成分を0.2〜10質量部であることを特徴とする、型内被覆組成物。
【請求項2】
前記(C)成分のセルロース系樹脂化合物が、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートの少なくとも一種である、請求項1に記載の型内被覆組成物。
【請求項3】
前記(C)成分のポリ乳酸系樹脂化合物が、非晶性のポリ乳酸系樹脂化合物である、請求項1に記載の型内被覆組成物。
【請求項4】
前記(A)、(B)成分の少なくとも一つが、3個の(メタ)アクリレート基を有する、請求項1ないし3のいずれかに記載の型内被覆組成物。
【請求項5】
前記(A)、(B)成分の少なくとも一つが、4個ないし8個の(メタ)アクリレート基を有する、請求項1ないし3のいずれかに記載の型内被覆組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の型内被覆組成物で被覆されてなる、熱硬化性樹脂成形品または熱可塑性樹脂成形品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−24896(P2008−24896A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202104(P2006−202104)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】