説明

型枠パネル、型枠パネルの組立て方法、型枠パネルの曲率調整治具

【課題】本発明は、構造物が大きい場合でも小さい場合でも、構造物の表面を滑らかな湾曲面に近づけることができる型枠パネルを提供する。
【解決手段】この型枠パネル1Bは、湾曲可能な矩形のベース板2と、ベース板2の互いに平行な第1及び第2の辺2a,2bに対して直交する第3及び第4の辺2c,2dに沿って延在する一対の平行な端リブ6,7、とを備え、ベース板2は、第1及び第2の辺が湾曲変形する材料で形成され、第1及び第2の辺には、第1及び第2の辺に沿って端リブが延在しない構成である。このように、第1及び第2の辺には、端リブが存在しないので、第1及び第2の辺を内側及び外側に容易に且つ任意に曲げることができ、しかも、第1及び第2の辺を滑らかな曲面に容易に近づけることができる。従って、構造物の大きさに拘わらず、構造物の表面を滑らかな湾曲面に近づけることができ、型枠パネルの汎用性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面を有する橋脚など構造物の構築に利用される型枠パネル、この型枠パネルの組立て方法、この型枠パネルの曲率を調整する治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2006−342659号公報がある。この公報に記載された型枠パネルは、矩形平板状に形成された金属製の堰板部を有し、堰板部には、上下方向に延在する補強用のリブが形成されている。さらに、この堰板部の上縁部をL字状に折り曲げることで上フランジ部が形成され、堰板部の下縁部をL字状に折り曲げることで下フランジ部が形成され、上フランジ部及び下フランジ部は、台形片を一列に並べることによって形成されている。隣接する台形片間には二等辺三角形の切欠部が設けられ、この切欠き部の頂点で堰板部が曲がるようになっている。よって、施工時に、切欠き部の頂点で上フランジ部及び下フランジ部を折り曲げながら、予定された構造物の曲面に合わせるように型枠パネルが設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−342659号公報
【特許文献2】特開平10−219998号公報
【特許文献3】実開平5−54750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の型枠パネルで構築した構造物の表面は、遠視眼的には、曲面と言えるが、近視眼的には、多角形に近い形状になっており、滑らかな曲面とは言えない。構造物が大きい場合には、多角形であっても、大局的に曲面とみなして良い場合もあるが、構造物が小さくなればなる程、多角形の輪郭が顕著になり、曲面とみなされ難くなるといった問題点があった。
【0005】
本発明は、構造物が大きい場合でも小さい場合でも、構造物の表面を滑らかな湾曲面に近づけることができる型枠パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、湾曲可能な矩形のベース板と、ベース板の互いに平行な第1及び第2の辺に沿って延在する一対の平行な第1の端リブと、ベース板の第1及び第2の辺に対して直交する第3及び第4の辺に沿って延在する一対の平行な第2の端リブ、とを備え、
ベース板は、第1及び第2の辺が湾曲変形する材料で形成され、各第1の端リブは、連続することなく離間して配置された断片で形成されていることを特徴とする。
【0007】
この型枠パネルに適用されるベース板は、第1及び第2の辺が湾曲変形する材料で形成され、湾曲変形可能なベース板に設けられた各第1の端リブは、連続することなく離間して配置された断片で形成されているので、第1の端リブに邪魔されることなく、第1及び第2の辺を容易に且つ任意に曲げることができ、しかも、第1及び第2の辺を滑らかな曲面に容易に近づけることができる。従って、構造物が大きい場合でも小さい場合でも、構造物の大きさに拘わらず、構造物の表面を滑らかな湾曲面に近づけることができ、型枠パネルの汎用性を高めることができる。
【0008】
また、ベース板上で第2の端リブの間には、第3及び第4の辺に対して平行に延在する補強リブが設けられ、第1の端リブの断片は、第2の端リブの端部に接合された端片と、補強リブの端部に接合された補強片とからなると好適である。
補強リブを設けると、型枠パネルの強度アップが可能であり、型枠パネルを大型化させることができる。そして、第1の端リブの断片をこのような配置にすることで、型枠パネル同士を第1の端リブで連結させた状態であっても、第1の端リブの存在に邪魔されることなく、第1及び第2の辺を滑らかな曲面に容易に近づけることができる。
【0009】
また、ベース板には、第3及び第4の辺に対して平行に配置される直線状のバタ材を支持する保持片が設けられていると好適である。
このような構成を採用すると、バタ材による型枠パネルの補強を容易に行うことができる。
【0010】
また、ベース板の第1及び第2の辺の長さは、471mmと314mmとの2種類であると好適である。
このような構成を採用すると、2種類の型枠パネルの任意の組み合わせだけで、10cm刻みの直径をもった円周又は半円周の全長に渡って、型枠パネルを隙間無く配列させることができる。例えば、このような型枠パネルは、円柱状の構造物や半円柱をもった構造物の構築に最適である。
【0011】
本発明は、隣接した請求項1記載の型枠パネルの第2の端リブ同士を接合してなる型枠パネル組を所定の曲率にするための型枠パネルの曲率調整治具であって、
型枠パネル組の第1及び第2の辺に平行に延在させる架け渡し部と、
架け渡し部の両端部に固定されると共に、遊端がベース板に当接される脚部と、
架け渡し部の中央を貫通する雄ネジ部が設けられると共に、型枠パネル組の中央の第2の端リブに引っ掛けられるフック部を有する棒部と、
棒部の雄ネジ部に螺着されるナット部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この型枠パネルの曲率調整治具においては、第2の端リブにフック部を引っ掛けた状態で、ナット部を回すことで、脚部によって型枠パネル組を押さえ込みながら、棒部のフック部によって型枠パネル組の中央の第2の端リブを引張り上げることができる。従って、ナット部の回転量の調節によって、型枠パネル組の曲率を任意に且つ容易に調整することができ、構造物の表面の様々な曲率に対応することができる。
【0013】
本発明は、請求項2記載の型枠パネルを所定の曲率にするための型枠パネルの曲率調整治具であって、
第1及び第2の辺に平行に延在させる架け渡し部と、
架け渡し部の両端部に固定されると共に、遊端がベース板に当接される脚部と、
架け渡し部の中央を貫通する雄ネジ部が設けられると共に、補強リブに引っ掛けられるフック部を有する棒部と、
棒部の雄ネジ部に螺着されるナット部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
この型枠パネルの曲率調整治具においては、補強リブにフック部を引っ掛けた状態で、ナット部を回すことで、脚部によって型枠パネルを押さえ込みながら、棒部のフック部によって型枠パネルの中央の第2の端リブが引張り上げることができる。従って、ナット部の回転量の調節によって、型枠パネルの曲率を任意に且つ容易に調整することができ、構造物の表面の様々な曲率に対応することができる。
【0015】
本発明は、請求項1記載の型枠パネルの組立て方法であって、
複数枚の型枠パネルの第2の端リブ同士を連結してなる型枠パネル体を形成する工程と、
第3及び第4の辺に対して平行に延在するように直線状のバタ材を型枠パネルに固定する工程と、
請求項5記載の曲率調整治具によって、複数の型枠パネル組を所定の曲率にした後、曲率固定パイプを第1及び第2の辺に対して平行に配置して、曲率固定パイプを型枠パネル体に固定する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
この型枠パネルの組立て方法においては、型枠パネル体に複数個の曲率調整治具を横一列に並べた状態で、各曲率調整治具のナット部を回すことで、脚部によって型枠パネル組を押さえ込みながら、棒部のフック部によって型枠パネル組の中央の第2の端リブを引張り上げる。そして、型枠パネル体が所望の湾曲形状になるまで、各ナット部を回し続け、型枠パネル体の湾曲調整後、型枠パネル体を正確な曲率で維持するために、曲率固定パイプを型枠パネル体に固定させる。このような組立て方法にあっては、狭い作業現場で型枠パネル体を組み立てるのに適しており、しかも、曲率調整治具によって、型枠パネル組毎に目視しながら確実に湾曲面を調整することができる。
【0017】
本発明は、請求項1記載の型枠パネルの組立て方法であって、
複数枚の型枠パネルの第2の端リブ同士を連結してなる型枠パネル体を形成する工程と、
第3及び第4の辺に対して平行に延在するように直線状のバタ材を型枠パネルに固定する工程と、
平坦な状態で型枠パネル体を吊り上げて第1及び第2の辺を所定の曲率にした後、曲率固定パイプを第1及び第2の辺に対して平行に配置して、曲率固定パイプを型枠パネル体に固定する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この型枠パネルの組立て方法においては、型枠パネル体をクレーン等で吊り上げて、型枠パネル体を所定の曲率にした後、型枠パネル体を吊り上げた状態で、曲率固定パイプを型枠パネル体に固定させ、型枠パネル体を正確な曲率で維持させる。このような組立て方法にあっては、型枠パネル体をクレーン等で吊り上げるだけで良いので、型枠パネルの組立てが極めて簡単で、しかも組立て作業をスピーディに行うことができる。
【0019】
本発明は、湾曲可能な矩形のベース板と、ベース板の互いに平行な第1及び第2の辺に対して直交する第3及び第4の辺に沿って延在する一対の平行な端リブ、とを備え、
ベース板は、第1及び第2の辺が湾曲変形する材料で形成され、第1及び第2の辺には、第1及び第2の辺に沿って端リブが延在しないことを特徴とする。
【0020】
この型枠パネルに適用されるベース板は、第1及び第2の辺が湾曲変形する材料で形成され、第1及び第2の辺には、端リブが存在しないので、第1及び第2の辺を内側及び外側に容易に且つ任意に曲げることができ、しかも、第1及び第2の辺を滑らかな曲面に容易に近づけることができる。従って、構造物が大きい場合でも小さい場合でも、構造物の大きさに拘わらず、構造物の表面を滑らかな湾曲面に近づけることができ、型枠パネルの汎用性を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、構造物が大きい場合でも小さい場合でも、構造物の表面を滑らかな湾曲面に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る型枠パネルの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】型枠パネルにバタ材を固定した状態を示す斜視図である。
【図3】型枠パネルを縦方向で連結してなる長尺パネルを示す斜視図である。
【図4】型枠パネルを横方向で連結してなる型枠パネル組を示す斜視図である。
【図5】曲率調整治具を示す斜視図である。
【図6】他の曲率調整治具を長尺パネルに装着した状態を示す斜視図である。
【図7】図6に示された曲率調整治具の拡大斜視図である。
【図8】枠体の分解斜視図である。
【図9】枠体の斜視図である。
【図10】型枠パネル体に曲率調整治具を装着した状態を示す斜視図である。
【図11】半円枠体を示す斜視図である。
【図12】曲率固定パイプ及びフォームタイを示す斜視図である。
【図13】円形固定板及びクランプ治具を示す斜視図である。
【図14】締め付けバンドを示す斜視図である。
【図15】型枠パネルの他の組立て方法を示す斜視図である。
【図16】本発明に係る型枠パネルの他の実施形態を示す斜視図である。
【図17】型枠パネルの更に他の変形例を示す斜視図である。
【図18】図17の型枠パネル同士の組み付け前の状態を示す斜視図である。
【図19】図17の型枠パネル同士の組み付け後の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る型枠パネル、型枠パネルの曲率調整治具、型枠パネルの組立て方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、型枠パネル1は、湾曲可能な矩形のベース板2を有し、このベース板2は、湾曲変形し易い材料(例えば、鉄板、ステンレス板、アルミニウム合金板など)によって形成されている。矩形のベース板2の互いに平行な第1及び第2の辺(以下、「短辺」という)2a,2bには、短辺2a,2bに沿って延在する一対の平行な第1の端リブ3,4が設けられている。
【0025】
ベース板2の短辺2a,2bに対して直交する第3及び第4の辺(以下、「長辺」という)2c,2dには、この長辺2c,2dに沿って延在する一対の平行な第2の端リブ6,7が設けられている。また、一対の第2の端リブ6,7の間における略中央で、ベース板2には、長辺2c,2dに対して平行に延在する補強リブ8が設けられている。
【0026】
さらに、それぞれの第1の端リブ3,4は、連続することなく離間して配置された断片で形成されている。つまり、第1の端リブ3の断片は、第2の端リブ6,7の一端部に接合された略正方形状の端片3a,3bと、補強リブ8の一端部に接合された略長方形状の補強片3cとからなり、同様に、第1の端リブ4の断片は、第2の端リブ6,7の他端部に接合された略正方形状の端片4a,4bと、補強リブ8の他端部に接合された略長方形状の補強片4cとからなっている。
【0027】
そして、端片3aと第2の端リブ6とは直交して接合され、端片3bと第2の端リブ7とは直交して接合され、補強片3cと補強リブ8とはT字状で接合されている。同様に、端片4aと第2の端リブ6とは直交して接合され、端片4bと第2の端リブ7とは直交して接合され、補強片4cと補強リブ8とはT字状で接合されている。
【0028】
さらに、端片3a,3b,4a,4bと、補強片3c,4cと、第2の端リブ6,7と、補強リブ8とには、任意の個数の治具取付け孔9が形成されている。例えば、端片3a,3b,4a,4bには、それぞれ1個、補強片3c,4cには、それぞれ3個、第2の端リブ6,7及び補強リブ8には、等間隔にそれぞれ20個の治具取付け孔9が形成されている。なお、第2の端リブ6,7及び補強リブ8の治具取付け孔9の個数は、型枠パネル1の長さによって適宜変更される。
【0029】
前述した構成の型枠パネル1は、第1の端リブ3,4の存在に邪魔されることなく、型枠パネル1同士を第1の端リブ3,4で連結させた状態であっても、第1及び第2の辺(短辺)2a,2bを容易に且つ任意に曲げることができ、しかも、第1及び第2の辺(短辺)2a,2bを滑らかな曲面に容易に近づけることができる。従って、構造物が大きい場合でも小さい場合でも、構造物の大きさに拘わらず、構造物の表面を滑らかな湾曲面に近づけることができ、型枠パネル1の汎用性を高めることができる。また、補強リブ8を設けると、型枠パネル1の強度アップが可能であり、型枠パネル1を大型化させることができる。
【0030】
さらに、図1及び図2に示すように、ベース板2には、長辺2c,2dに対して平行に配置される直線状のバタ材10を支持するための保持片5が設けられている。保持片5は、第2の端リブ6と補強リブ8との間及び第2の端リブ7と補強リブ8との間で短辺2a,2b側にそれぞれ位置して、ベース板2に接合されている。そして、略正方形状の保持片5は、角材パイプからなるバタ材10の側面に当接させるために、長辺2c,2dに対して平行に延在し、1個の治具取付け孔9が形成されている。
【0031】
バタ材10の両端部は、保持片5の治具取付け孔9及びバタ材10の貫通孔11内に挿入されるボルト12とナット13によって固定されている。このような構成を採用すると、バタ材10による型枠パネル1の補強を容易に行うことができる。
【0032】
次に、型枠パネル1の曲率調整治具30について説明する。
【0033】
図3に示すように、長い型枠パネル1と短い型枠パネル1aとは、長い型枠パネル1の下端に設けられた端片4a,4b及び補強片4cと、短い型枠パネル1aの上端に設けられた端片3a,3b及び補強片3cとを上下で突き合わせ、治具取付け孔9内に挿入されるボルト21とナット22によって連結され、これによって長尺パネルAを作り出している。なお、複数の長い型枠パネル1同士を接続することも可能である。
【0034】
図4に示すように、横同士で隣接した一方の長尺パネルAと他方の長尺パネルAとの連結にあたって、一方の長尺パネルAの第2の端リブ7と他方の長尺パネルAの第2の端リブ6とを左右で突き合わせ、Uクリップ23のピン部23aを治具取付け孔9内に挿入した状態で、Uクランプ部23bを回転させることで、このUクランプ部23bで端リブ7と第2の端リブ6とを挟み込み、これによって型枠パネル組Bを作り出している。
【0035】
このような型枠パネル組Bの曲率を調整するために曲率調整治具30が利用される。
【0036】
図4及び図5に示すように、曲率調整治具30は、型枠パネル組Bの略全幅に渡って短辺2a,2bに平行に延在させる角パイプ状の架け渡し部31と、架け渡し部31の両端部に固定されると共に、遊端が第2の端リブ6,7に近接された状態でベース板2に当接される脚部32と、架け渡し部31の中央の貫通孔31aを貫通する雄ネジ部33aが設けられると共に、型枠パネル組Bの中央の第2の端リブ6,7の治具取付け孔9に引っ掛けられるフック部33bを有するL字状の棒部33と、棒部33の雄ネジ部33aに螺着されるナット部34と、を備えている。
【0037】
この型枠パネルの曲率調整治具30においては、第2の端リブ6,7の治具取付け孔9にフック部33bを引っ掛けた状態で、ナット部34を回すことで、脚部32によって型枠パネル組Bを押さえ込みながら、棒部33のフック部33bによって型枠パネル組Bの中央の第2の端リブ6,7を引張り上げることができる。従って、ナット部34の回転量の調節によって、二点鎖線で示すように、型枠パネル組Bの曲率を任意に且つ容易に調整することができ、構造物の表面の様々な曲率に対応することができる。
【0038】
長尺パネルAの曲率を調整するために曲率調整治具40について説明する。
【0039】
図6及び図7に示すように、曲率調整治具40は、長尺パネルAの略全幅に渡って短辺2a,2bに平行に延在させる角パイプ状の架け渡し部41と、架け渡し部41の両端部に固定されると共に、遊端が第2の端リブ6,7に近接された状態でベース板2に当接される脚部42と、架け渡し部41の中央の貫通孔41aを貫通する雄ネジ部43aが設けられると共に、長尺パネルAの補強リブ8の治具取付け孔9に引っ掛けられるフック部43bを有するL字状の棒部43と、棒部43の雄ネジ部43aに螺着されるナット部44と、を備えている。
【0040】
この型枠パネルの曲率調整治具40においては、補強リブ8の治具取付け孔9にフック部43bを引っ掛けた状態で、ナット部44を回すことで、脚部42によって長尺パネルAを押さえ込みながら、棒部43のフック部43bによって長尺パネルAの中央の補強リブ8を引張り上げることができる。従って、ナット部44の回転量の調節によって、二点鎖線で示すように、長尺パネルAの曲率を任意に且つ容易に調整することができ、構造物の表面の様々な曲率に対応することができる。
【0041】
次に、型枠パネル1の組立て方法について説明する。
【0042】
図8及び図9に示される枠体50は、コンクリート製の橋脚に利用する例であり、平行な一対の平面枠体51と、半円筒形状をなす一対の半円枠体52との組み合わせにより小判型に構成されている。
【0043】
半円枠体52を製作するにあたって、先ず、図10に示すように、Uクリップ23で長尺パネルAを横に連結して型枠パネル体Cを組み立てる。その後、バタ材10を、長辺2c,2dに対して平行に延在するように、長い型枠パネル1と短い型枠パネル1aとに渡ってそれぞれの長尺パネルAに固定する。
【0044】
そして、第2の端リブ6,7の治具取付け孔9に曲率調整治具30のフック部33bを引っ掛け、曲率調整治具30を横一列に並べながら、順次、曲率調整治具30を型枠パネル体Cに装着していく。
【0045】
その後、ナット部34を回すことで、脚部32によって型枠パネル組Bを押さえ込みながら、棒部33のフック部33bによって第2の端リブ6,7を引張り上げ、型枠パネル組Bを湾曲させる。このような作業を曲率調整治具30毎で行いながら、図11に示すように、型枠パネル体Cを所望の半円筒形状にする。曲率調整治具30の利用は、狭い作業現場で型枠パネル体Cを組み立てるのに適しており、しかも、型枠パネル組B毎に目視しながら確実に湾曲面の曲率を調整することができる。
【0046】
この状態を維持したまま、半円枠体52の予定された曲率を有する曲率固定パイプ55を短辺2a,2bに対して平行に配置して、曲率固定パイプ55を型枠パネル体Cに固定する。このとき、図12に示すように、フォームタイ56によって曲率固定パイプ55が型枠パネル体Cに固定される。このフォームタイ56は、曲率固定パイプ55を抑え込むためのホルダー部57と、ホルダー部57の貫通孔57aを貫通する雄ネジ部58aが設けられると共に、治具取付け孔9に引っ掛けられるフック部58bを有するL字状の棒部58と、棒部58の雄ネジ部58aに螺着されるナット部59とからなっている。
【0047】
さらに、図13に示すように、型枠パネル体Cの端部で曲率を調整するために、型枠パネル体Cの端片3a,3b及び補強片3cに円弧状の円形固定板60を当接させ、各円形固定板60を一列に並べた状態で、クランプ治具61で円形固定板60を型枠パネル体Cに固定させる。このクランプ治具61は、雌ネジ62を回転させることでクランク板63,64が互いに近づいたり離れたりするものであり、円形固定板60を端片3a,3b及び補強片3cに当接させた状態で、端片3a,3bをクランク板63,64で挟み込むことで、円形固定板60が型枠パネル体Cの端部に固定される。
【0048】
そして、コンクリートの圧力に枠体50が耐えるように、枠体50の全周に渡って、締め付けバンド66が巻回されている。図14に示すように、この締め付けバンド66は、隣接するバンド部66aの端部同士をボルト67及びナット68によって連結することで枠体50の全周に巻回される。
【0049】
半円枠体52の曲率は、様々なものがあるが、図1に示すように、型枠パネル1のベース板2の短辺2a,2bの長さLが、471mmと314mmの2種類あれば十分である。この2種類の型枠パネル1の任意の組み合わせだけで、10cm刻みの直径をもった円周又は半円周の全長に渡って、型枠パネル1を隙間無く配列させることができる。例えば、このような型枠パネル1は、円柱体をなす構造物や半円柱体をもった構造物の構築に最適である。
【0050】
以下の表からも明らかなように、10cm刻みの直径に対して、471mmの型枠パネルと314mmの型枠パネルとを任意に組み合わせることで、様々な直径の円又は半円を作り出すことができる。例えば、直径が2mの円柱の構造体の場合、471mmの型枠パネルを12枚と314mmの型枠パネルを2枚用意すればよい。直径が2mの半円柱の構造体の場合、上記枚数の半分でよい。
【表1】

【0051】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0052】
例えば、図15に示すように、地面にフラットな状態で置かれた型枠パネル体Cの治具取付け孔9に4本のワイヤ70の下端を引っ掛け、ワイヤ70をピラミッド状にした状態で、ワイヤ70の頂点をクレーンで吊り上げることで、型枠パネル体Cを湾曲させる。その後、型枠パネル体Cに曲率固定パイプ55や円形固定板60を固定する。この組立て方法にあっては、曲率調整治具30を利用せず、型枠パネル体Cをクレーンで吊り上げるだけで良いので、型枠パネル1の組立てが極めて簡単で、しかも組立て作業をスピーディに行うことができる。
【0053】
前述した型枠パネル1は、縦長であり、第1及び第2の辺2a,2bが短辺になっており、この短辺2a,2bが断片になっているが、図16に示すように、横長の型枠パネル1Aにあっては、第1及び第2の辺2a,2bが長辺になっており、この長辺2a,2bが断片になっている。
【0054】
また、図17に示すように、他の型枠パネル1Bとして、第3及び第4の辺2c,2dには、これに沿って延在してベース板2から直角に立ち上がる一対の平行な端リブ6,7が設けられ、第1及び第2の辺2a,2bには、これに沿って延在してベース板2から直角に立ち上がる端リブが設けられておらず、第1及び第2の辺2a,2bは、開放されている。このような型枠パネル1Bは、二点鎖線で示すように、内側と外側との両方向に湾曲させることができ、極めて汎用性が高い。
【0055】
そして、構造物が大きい場合でも小さい場合でも、構造物の表面を滑らかな湾曲面に近づけることができる。しかも、第1及び第2の辺2a,2bに端リブが設けられていないことで、軽量化することができ、組立て作業負担を軽減することができる。さらには、製造コストの低減をも可能にしている。なお、この構成以外は、図1で示された型枠パネル1と同一であり、同一符号を付して、その説明は省略する。
【0056】
図18及び図19に示すように、上側の型枠パネル1Bと下側の型枠パネル1Bとを連結する場合、上側の端リブ6と下側の端リブ6とを連結板80で架け渡し、その後、ボルト81を端リブ6及び連結板80に貫通させ、ボルト81とナット82とにより端リブ6に連結板80と固定する。端リブ7についても同様である。
【0057】
また、中央の補強リブ8は中空であるので、上側の型枠パネル1Bの補強リブ8内に連結板83を挿入した状態で、ボルト84とナット85とにより上側の型枠パネル1Bに連結板83を固定する。その後、連結板83の下端を下側の型枠パネル1Bの補強リブ8の端から差し込む。
【0058】
連結板87を上側の型枠パネル1Bの保持片5の側面に当接させた状態でUクリップ23のピン部23aを保持片5及び連結板87に貫通させ、この連結板87を下側の型枠パネル1Bの保持片5の側面に当接させた状態で、Uクランプ部23bを回転させる。これによって、上側の保持片5と下側の保持片5とが、ボルトを利用することなく連結される。
【0059】
この型枠パネル1Bに関しては、第1及び第2の辺2a,2bに端リブが無い以外、型枠パネル1,1Aと同等の構成を有し、型枠パネル1,1Aと同様の曲率調整治具や型枠パネルの組立て方法を適用でき、その説明は省略する。
【符号の説明】
【0060】
A…長尺パネル、B…型枠パネル組、C…型枠パネル体、1,1A,1B…型枠パネル、2…ベース板、2a…第1の辺、2b…第2の辺、2c…第3の辺、2d…第4の辺、5…保持片、3,4…端リブ、3a,3b,4a,4b…端片、3c,4c…補強片、8…補強リブ、10…バタ材、30,40…曲率調整治具、31,41…架け渡し部、32,42…脚部、33a,43a…雄ネジ部、33b,43b…フック部、33,43…棒部、34,44…ナット部、55…曲率固定パイプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲可能な矩形のベース板と、
前記ベース板の互いに平行な第1及び第2の辺に沿って延在する一対の平行な第1の端リブと、
前記ベース板の前記第1及び第2の辺に対して直交する第3及び第4の辺に沿って延在する一対の平行な第2の端リブ、とを備え、
前記ベース板は、前記第1及び第2の辺が湾曲変形する材料で形成され、前記各第1の端リブは、連続することなく離間して配置された断片で形成されていることを特徴とする型枠パネル。
【請求項2】
前記ベース板上で前記第2の端リブの間には、前記第3及び第4の辺に対して平行に延在する補強リブが設けられ、前記第1の端リブの前記断片は、前記第2の端リブの端部に接合された端片と、前記補強リブの端部に接合された補強片とからなることを特徴とする請求項1記載の型枠パネル。
【請求項3】
前記ベース板には、前記第3及び第4の辺に対して平行に配置される直線状のバタ材を支持する保持片が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の型枠パネル。
【請求項4】
前記ベース板の前記第1及び第2の辺の長さは、471mmと314mmとの2種類であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の型枠パネル。
【請求項5】
隣接した請求項1記載の型枠パネルの前記第2の端リブ同士を接合してなる型枠パネル組を所定の曲率にするための型枠パネルの曲率調整治具であって、
前記型枠パネル組の前記第1及び第2の辺に平行に延在させる架け渡し部と、
前記架け渡し部の両端部に固定されると共に、遊端が前記ベース板に当接される脚部と、
前記架け渡し部の中央を貫通する雄ネジ部が設けられると共に、前記型枠パネル組の中央の前記第2の端リブに引っ掛けられるフック部を有する棒部と、
前記棒部の前記雄ネジ部に螺着されるナット部と、を備えたことを特徴とする型枠パネルの曲率調整治具。
【請求項6】
請求項2記載の型枠パネルを所定の曲率にするための型枠パネルの曲率調整治具であって、
前記第1及び第2の辺に平行に延在させる架け渡し部と、
前記架け渡し部の両端部に固定されると共に、遊端が前記ベース板に当接される脚部と、
前記架け渡し部の中央を貫通する雄ネジ部が設けられると共に、前記補強リブに引っ掛けられるフック部を有する棒部と、
前記棒部の前記雄ネジ部に螺着されるナット部と、を備えたことを特徴とする型枠パネルの曲率調整治具。
【請求項7】
請求項1記載の型枠パネルの組立て方法であって、
複数枚の前記型枠パネルの前記第2の端リブ同士を連結してなる型枠パネル体を形成する工程と、
前記第3及び第4の辺に対して平行に延在するように直線状のバタ材を前記型枠パネルに固定する工程と、
請求項5記載の曲率調整治具によって、複数の前記型枠パネル組を所定の曲率にした後、曲率固定パイプを前記第1及び第2の辺に対して平行に配置して、前記曲率固定パイプを前記型枠パネル体に固定する工程と、を備えたことを特徴とする型枠パネルの組立て方法。
【請求項8】
請求項1記載の型枠パネルの組立て方法であって、
複数枚の前記型枠パネルの前記第2の端リブ同士を連結してなる型枠パネル体を形成する工程と、
前記第3及び第4の辺に対して平行に延在するように直線状のバタ材を前記型枠パネルに固定する工程と、
平坦な状態で前記型枠パネル体を吊り上げて前記第1及び第2の辺を所定の曲率にした後、曲率固定パイプを前記第1及び第2の辺に対して平行に配置して、前記曲率固定パイプを前記型枠パネル体に固定する工程と、を備えたことを特徴とする型枠パネルの組立て方法。
【請求項9】
湾曲可能な矩形のベース板と、
前記ベース板の互いに平行な第1及び第2の辺に対して直交する第3及び第4の辺に沿って延在する一対の平行な端リブ、とを備え、
前記ベース板は、前記第1及び第2の辺が湾曲変形する材料で形成され、前記第1及び第2の辺には、前記第1及び第2の辺に沿って端リブが延在しないことを特徴とする型枠パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−12532(P2011−12532A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212341(P2009−212341)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フォームタイ
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(509154718)藤井建設株式会社 (1)
【Fターム(参考)】