説明

型焼き中空焼菓子

【課題】焼型を用いて焼成する中空焼菓子において、側面の焼痩せや底面の焼き上がりがなく、離型性が良好で、フィリングを大量に注入可能な中空構造を有し、保型性が良好で安定した形状の焼菓子を提供すること。
【解決手段】外包材として、クッキー生地、ガレット生地、練パイ生地、タルト生地などのショートペーストを使用し、内包材としてシュー生地を使用した包餡生地を型展板や紙カップ型などの焼型に入れて焼成した、型焼き中空焼菓子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼型を用いて焼成する中空焼菓子に関し、詳しくは、側面の焼痩せや底面の焼き上がりがなく、離型性が良好で、フィリングを大量に注入可能な中空構造を有し、保型性が良好で安定した形状の焼菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
焼菓子生地において、クッキー生地、ガレット生地、練パイ生地、タルト生地などのショートペーストは水分含量が少なく、常温で流動性がなく、膨張性がほとんどないため、成形した形状そのままの形で焼きあがるので、焼型を使用せずとも、平展板で焼成することができ、また、焼型を使用する場合でも、焼成後の型ハガレ(離型性)も良好であり、焼き落ちもなく、極めて容易に焼菓子を得られる。反面、焼成品は、組織が密で硬い内相となるため、フィリングを注入することは不可能である。
【0003】
一方、焼菓子生地において、スポンジケーキ生地やバターケーキ生地、マフィン生地等の、常温で流動性を有するケーキ生地を焼成する場合は、当然、焼成時にカップ状の型展板やパウンドケーキ型、スポンジケーキ型などの金属製焼型や、カップケーキ型、マフィン型等の紙製の焼型を使用する。そして焼成品はソフトな食感と内相を持ち、各種フィリングを注入して風味バリエーションを得ることが可能であるなど応用範囲が極めて広い。
【0004】
しかし、ケーキ生地は水分を多く含有するため、焼型に離型油を塗布して焼成したとしても離型性が極めて悪いものである。また、水分を多く含有するこれらのケーキ生地を焼成すると、側面の焼痩せが発生したり、食するときにべたつくなどの弊害を生じる。
【0005】
ここで、これらのケーキ生地に比べさらにフィリングを大量に注入可能とするために中空構造を有し、ソフトな食感であって、ある程度の離型性を有する焼菓子を得るための生地として、シュー生地がある。しかし、このシュー生地は水分含量が極めて高く、膨張性が高いため、焼型で焼成しようとした場合は、焼成中の水蒸気発生量が極めて多いことから、側面の焼痩せが激しい上に、底面の焼き上がり現象もあり、安定した形状を持たせた焼菓子を求めることは不可能である。また、焼型で焼成することで、火抜けが悪くなるため保型性が悪く、焼成後つぶれてしまう(焼き落ち)問題、さらには、型からはみ出して茸状のいびつな形態となってしまう問題が多く発生する。また、金属製の平展板や焼型では離型油を塗布することで一定の離型性を有するものの、紙製の焼型では離型性は極めて悪いという問題もあった。
【0006】
このため、シュー生地を焼型で焼成することや、一定の形状となるように焼成する試みはほとんど行なわれておらず、また、クッキー生地やパイ生地を外包材、シュー生地を内包材として自動包餡機を使用して包餡成形した包餡生地を焼成した複合菓子についても各種提案されているが、(例えば特許文献1〜3参照)先に述べたように、ショートペーストもシュー生地も共に平展板で焼成するものであって、焼型で焼成するものではないことから、焼型で焼成することについての記載はみられない。シュー生地を用いた複合菓子では、わずかに、シート状のパイ生地の中央にシュー生地を絞り、これを折りたたんでシュー生地を被覆した複合生地を焼型に入れて焼成した例が見られるのみである(例えば特許文献4参照)が、この菓子は、一つ一つの焼型に一つ一つシート状のパイ生地を押し込む手間が必要であり、極めて製造効率が悪いものである。また、シート状のパイ皮は焼成時の伸展性が悪く、またシュー生地の下部のみを覆うものであるため、安定した形状が得られず、形状が不均一となる問題があり、さらにはシュー皮とパイ皮の比率によっては、型にシュー生地が張り付いて離型性が悪化する問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平02−255037号公報
【特許文献2】実案登録3086215号公報
【特許文献3】実案登録3086216号公報
【特許文献4】特開2000−157150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、焼型を用いて焼成する中空焼菓子において、側面の焼痩せや底面の焼き上がりがなく、離型性が良好で、フィリングを大量に注入可能な中空構造を有し、保型性が良好で安定した形状の焼菓子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、外包材として特定の生地を使用し、内包材としてシュー生地を使用した包餡生地を型焼きすることで、上記目的を達成可能なことを知見した。
【0010】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、外包材としてショートペーストを使用し、内包材としてシュー生地を使用した包餡生地を焼型に入れて焼成した、型焼き中空焼菓子を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、側面の焼痩せや底面の焼き上がりがなく、離型性が良好で、フィリングを大量に注入可能な中空構造を有し、保型性が良好で安定した形状の型焼き中空焼菓子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の型焼き中空焼菓子について詳述する。
【0013】
本発明の型焼き中空焼菓子は、外包材としてショートペーストを、内包材としてシュー生地を使用した包餡生地を使用する。内包材として、例えばスポンジケーキ生地やバターケーキ生地、マフィン生地などの各種ケーキ生地を使用すると、中空形状が得られないのはもちろん、水分を飛ばすためには長時間の焼成が必要であり、また膨張性が低いため大きなボリュームの焼菓子が得られない。
【0014】
なお、外包材として使用するショートペーストとは、製菓用の生地分類の一種であり、さくさくした食感(ショートネス)をもつ焼菓子を得るための生地のことであり、小麦粉類と油脂類と水性原料を必須成分とし、水分含量が上記ケーキ生地よりも少なく、常温で流動性がない生地である点で明確に異なる。このようなショートペーストとしは、例えば、クッキー生地、ガレット生地、練パイ生地、タルト生地などが挙げられる。
【0015】
上記ショートペーストで使用する小麦粉類の例としては、強力粉、薄力粉、フランス粉、全粒粉等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができ、上記ショートペーストで使用する油脂類としては、バター、マーガリン、ショートニング等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができ、上記ショートペーストで使用する水性原料としては、水、あるいは、牛乳、全卵、卵白、部分脱脂乳、脱脂乳、発酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料、加工乳、果汁、コーヒー、紅茶等の、水を多く含む食品や食品素材等が挙げられ, これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0016】
本発明の型焼き中空焼菓子においては、上記ショートペーストの油分含量が20〜35質量%、且つ、水分含量が10〜40質量%であることが、側面の焼痩せや底面の焼き上がりがなく、離型性が良好な型焼き中空焼菓子が得られる点で好ましい。
【0017】
ここで上記ショートペーストの油分含量が20質量%未満、及び/又は、水分含量が40質量%を超えると離型性が極端に悪化するおそれがあり、また、油分含量が35質量%を超えると、底面の焼き上がりが発生したり、焼型の底部に油分が溜まり、底面がてんぷら状となってしまったり、油っぽい食感となってしまうおそれがある。また、水分含量が20質量%未満であると、外生地が糊化しにくいため、側面の焼痩せが大きくなり、また硬い食感にならないため、保型性も劣るものとなってしまうおそれがある。
【0018】
上記ショートペーストの製造方法はとくに限定されず、公知の方法によって得ることができる。
【0019】
例えば、クッキー生地の場合は、シュガーバッター法、フラワーバッター法、オールインミックス法など公知の方法で得ることが可能であり、練りパイ生地やタルト生地の場合はロールイン用油脂を含む全原料を混合するオールインミックス法でも、ロールイン油脂以外の成分でいったん生地を製造後、小片状のロールイン油脂を生地中に分散させる方法でももちろん可能である。
【0020】
本発明に用いられるシュー生地は、特に限定されず、小麦粉類、油脂類、卵類及び水を主体とし、澱粉の糊化作用を利用して得られるものである。
上記シュー生地で使用する小麦粉類の例としては、強力粉、薄力粉、フランス粉、全粒粉等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0021】
また、上記シュー生地で使用する油脂類としては、バター、マーガリン、ショートニング等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0022】
さらに、上記シュー生地で使用する卵類としては、全卵、卵黄、卵白、加塩全卵、加塩卵黄、加塩卵白、加糖全卵、加糖卵黄、加糖卵白、乾燥全卵、乾燥卵黄、凍結全卵、凍結卵黄、凍結卵白、凍結加糖全卵、凍結加糖卵黄、凍結加糖卵白、酵素処理全卵、酵素処理卵黄などを用いることができ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0023】
なお、上記シュー生地中の水の一部または全部を、例えば、牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、発酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料、加工乳、果汁、コーヒー、紅茶等の、水を多く含む食品や食品素材で置換しても良い。
【0024】
また、本発明の型焼き中空焼菓子では、上記シュー生地が水溶性糖類を3〜20質量%、好ましくは5〜10質量%含有することにより、外包材と内包材の結着性が高まり、より安定して空洞を形成することができ、焼成後の外包材の剥れなどの損壊防止効果を飛躍的に向上させることができる。
【0025】
上記水溶性糖類としては、特に限定されないが、例えば上白糖、グラニュー糖、粉糖、液糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ステビア、アスパルテーム等の糖類が挙げられる。これらの糖類は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、フラワーペースト類や、カスタード類などの上記水溶性糖類を含有する製菓材料を添加することももちろん可能である。
【0026】
また、上記シュー生地には、本発明の目的の範囲内で所要により上記成分以外の食品や添加物を配合することが出来る。
【0027】
上記のシュー生地に使用できる上記成分以外の食品や添加物としては、例えば、コーンスターチ、小麦澱粉等の澱粉類、澱粉に対し糊化、リン酸架橋等の処理を施した加工澱粉類、クリーム、チーズ、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳等の乳製品、岩塩、精製塩、天塩等の食塩、デキストリン類、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等の乳蛋白、アミラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、アミログルコシダーゼ、プルラナーゼ、ペントサナーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、ホスフォリパーゼ、カタラーゼ、リポキシゲナーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、スルフィドリルオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等の酵素、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム等の乳化剤、重炭酸アンモニウム、重曹、バーキングパウダー、イスパタ等の膨張剤、アスコルビン酸、シスチン等の酸化剤や還元剤、トコフェロール、茶抽出物、アスコルビン酸脂肪酸エステル等の酸化防止剤、β―カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料類、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、塩化カリウム等の呈味剤、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、酒類、魚介類等の食品素材、着香料等が挙げられる。
【0028】
次に、本発明に使用するシュー生地の製造方法について述べる。
【0029】
本発明で使用するシュー生地の製造方法は、通常のシューの製造方法でよく特に限定されない。例えば、水、油脂類、食塩等を大きめの鍋、ボール等の容器に入れ煮沸させ、薄力粉等の小麦粉類を加え練り上げて十分糊化させ、これに卵類を数回に分けて加え、均一に混合することによって得ることができる。なお、水溶性糖類については、糊化前に添加すると糊化抑制作用により型焼き中空焼菓子のボリュームが低下するため、小麦粉類の糊化後の添加混合が好ましい。
【0030】
本発明の型焼き中空焼菓子は、上記ショートペーストを外包材とし、上記シュー生地を内包材として、包餡成形した包餡生地を使用する。
包餡方法は特に限定されず、手包み成形や、各種の自動包餡機を使用した方法などを適宜選択使用することができるが、本発明においては、外包材厚さを均一に製造可能であるため、より側面の側面の焼痩せや底面の焼き上がりが抑制され、保型性が良好な型焼き中空焼菓子が得られる点で自動包餡機を使用することが、より好ましい。
【0031】
このような自動包餡機としては、例えばレオン自動機製のCN200、CN208、CN500等が挙げられる。
【0032】
ここで外包材と内包材の生地質量比は、好ましくは30:70〜70:30、より好ましくは40:60〜50:50である。
【0033】
内包材の比率が30質量%より少ないと、焼成時に内包材のシュー生地の膨張が抑制され、十分なボリュームの型焼き中空焼菓子が得られない。また、内包材の比率が70質量%より多いと表面の外包材が均質な層となって焼き残らず、離型性が悪く、また側面の焼痩せや底面の焼き上がりの激しい好ましくない型焼き中空焼菓子となってしまう。
【0034】
ここで包餡生地の好ましい重量は、30g〜200g、より好ましくは50g〜100gである。包餡生地重量が30g未満であると、安定した包餡生地を製造するためには、外包材質量比を上げる必要があり、そのため、十分な体積の型焼き中空焼菓子が得られない恐れがある。また、200gを超えると、外包材と内包材の比率をどのように設定しても側面の焼痩せや底面の焼き上がり現象が発生しやすくなる。
【0035】
なお、上記包餡生地は冷凍保存することができる。
【0036】
一般的にシュー生地を冷凍することは困難とされているが、これは、冷凍時の生地損傷、保管時の水分の昇華、解凍時の吸水などにより、ボリュームがでない、表面にナシ肌が出て、伸びの勢いのないものとなってしまうためである。
【0037】
しかし、上記包餡生地は、外生地に上記ショートペーストを使用することで冷凍時のシュー生地の損傷を抑えることができ、また、冷凍保管時の冷凍生地表面からの水分昇華を抑えることができ、また更に解凍時の水分蒸発を防ぐこともできることから、これらの一般的な冷凍シュー生地の弊害を防止可能なものである。
【0038】
また、冷凍生地とすることで、各種の外生地や内生地を用いた包餡生地を、必要分だけ解凍して使用することができ、計画生産が可能となるメリットも併せ持つ。
【0039】
本発明の型焼き中空焼菓子は、上記の包餡生地を焼型に入れて焼成することにより得られるものであり、焼成時に焼型により包餡生地を縦方向に効率的に膨化させることが可能であるため、体積が大きく、空洞も大きい型焼き中空焼菓子が得られる。また、焼成後の形態も均一で、側面の焼痩せや底面の焼き上がりがなく、均質な形状を示し、また離型性も大変良好なものである。
【0040】
ここで、使用する焼型としては、金属製のものであっても、紙製のものであっても、また、プラスティック製やゴム製、シリコン製、陶器製、木製など、焼菓子に使用される焼型であれば問題なく使用可能であり、金属製のものの例としては、六取り展板や八取り展板にわん型、カステラカップ型、ホール型、フォーマル型、小判型、マフィン型、フラワー型、カップケーキ型、玉子型などの複数の窪みを設けたいわゆる型展板や、単体のカップケーキ型、プリン型、パウンド型、デコ型などが挙げられ、紙製のものとしては、マフィン型やカップケーキ型などが挙げられるが、より安定した形状の焼菓子が得られることから、円柱状の焼型であることが好ましい。すなわち、型展板であれば、直径20〜80mm、深さ20〜100mm程度のマフィン型、カステラカップ型などであり、紙型であれば、直径20〜80mm、深さ20〜100mm程度のマフィン型を使用することが好ましく、開口部直径よりも深さの方が長い焼型であることがより好ましい。
【0041】
また、好ましい焼型の容積は、使用する包餡生地の3倍以上10倍以下、好ましくは5倍以上8倍以下であることが好ましい。3倍未満であると、焼成時に生地が飛び出し、茸状になってしまい、均質な型焼き中空焼菓子が得られないことがある。容積が10倍を超えると型焼き中空焼菓子の側面の焼痩せが発生するおそれがある。
【0042】
なお、焼成後の型抜きが容易なように、焼型は、1〜10°のテーパーを設けたものであることが好ましく、また、必要であれば離型油を塗布してもよい。
また、焼型に蓋をするなどの方法で焼型内の蒸気圧を高めた状態で焼成することで、さらに容積の大きな型焼き中空焼菓子とすることも可能である。
【0043】
焼成温度は、通常のべーカリー製品同様、好ましくは160℃〜250℃、より好ましくは170℃〜220℃である。160℃未満であると火どおりが悪く、焼成時間が延びてしまうことに加え、側面の焼痩せが発生するおそれがある。また250℃を超えると内包材のシュー生地が膨張する前に外包材が焦げを生じ、食味が悪く、またボリュームも劣ったものとなってしまう。
【0044】
以上のようにして得られた本発明の型焼き中空焼菓子は、安定して大きな空洞を有しているため、生クリーム、カスタードクリーム、フラワーペースト、バタークリーム、ジャム、ゼリーなどのフィリングクリームを大量に充填することが可能である。
【実施例】
【0045】
次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0046】
〔実施例1〕
強力粉70質量部、薄力粉30質量部、食塩1.5質量部、脱脂粉乳3質量部、水50質量部、小片状のロールイン油脂100質量部をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにて低速3分、中速7分ミキシングし、ショートペーストの一種であるタルト生地を得た。このタルト生地は油分含量は33質量%、水分含量は32質量%であった。
【0047】
一方、水140質量部、シューマーガリン140質量部をミキサーボウルに投入し軽く混合後、加熱し沸騰させたところに、薄力粉100質量部を加え、木へらで1分練りながら、十分に糊化させた。竪型ミキサーにこのミキサーボウルをセットし、ビーターを使用し、高速2分ミキシングした。さらに全卵(正味)210質量部を3回に分けて投入し、投入毎に中速1分ミキシングし、シュー生地を得た。なお、重炭安1質量部を、3回目の全卵投入の際に、該全卵に溶解して加えた。
【0048】
上記タルト生地を外包材、5℃の冷蔵庫で一晩冷却した上記シュー生地を内包材とし、自動包餡機(レオン自動機製CN500、スクリュー回転数10回転/分、アジテーター回転数30回転/分、外包材ノズル口径35mm、内包材ノズル口径27mm)を用いて、外生地:内生地=50:50、合計重量が40gの包餡生地を得た。
この包餡生地を直径50mm、深さ80mmの紙製のマフィンカップ型に入れ、200℃の固定窯で25分焼成した。窯だし後ただちに型抜きを行なった。型には生地の付着はなく、離型性は良好であった。
【0049】
得られた型焼き中空焼菓子は、焼成時の油脂漏れもなく、側面の焼痩せや底面の焼き上がりもなく、形状の揃ったものであり、室温放冷2時間後でも保型性は良好であった。また断面をみると部屋わかれのない大きな単一の空洞を有していた。
【0050】
〔実施例2〕
バター70質量部、上白糖40質量部をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにてビーターを用いて低速3分、中速7分クリーミングした後、食塩0.2質量部、全卵(正味)18質量部を投入して、中速2分ミキシングし、さらに強力粉30質量部、薄力粉70質量部、ベーキングパウダー0.5質量部を混合し、低速1分、中速2分ミキシングし、ショートペーストの一種であるクッキー生地を得た。このクッキー生地は油分含量は27質量%、水分含量は17質量%であった。
【0051】
外包材として、実施例1で使用したタルト生地に代えて、上記クッキー生地を使用した以外は、実施例1の配合、製法で実施例2の型焼き中空焼菓子を得た。
窯だし後ただちに型抜きを行なったところ、型には生地の付着はなく、離型性は良好であった。
【0052】
得られた型焼き中空焼菓子は、焼成時の油脂漏れもなく、側面の焼痩せや底面の焼き上がりもなく、形状の揃ったものであり、室温放冷2時間後でも保型性は良好であった。また断面をみると部屋わかれのない大きな単一の空洞を有していた。
【0053】
〔実施例3〕
水140質量部、シューマーガリン140質量部をミキサーボウルに投入し軽く混合後、加熱し沸騰させたところに、薄力粉100質量部を加え、木へらで1分練りながら、十分に糊化させた。竪型ミキサーにこのミキサーボウルをセットし、ビーターを使用し、高速2分ミキシングした。さらに全卵(正味)70質量部を添加後、中速1分ミキシングし、上白糖40質量部を全卵(正味)70質量部に溶解して添加後、中速1分ミキシングし、重炭安1質量部を全卵(正味)70質量部に溶解して添加後、中速1分ミキシングし、加糖シュー生地を得た。
【0054】
なお、このシュー生地の水溶性糖類含量は8質量%であった。
内包材として、実施例2で使用したシュー生地に代えて、上記の加糖シュー生地を使用した以外は、実施例2の配合、製法で実施例3の型焼き中空焼菓子を得た。
窯だし後ただちに型抜きを行なったところ、型には生地の付着はなく、離型性は良好であった。
【0055】
得られた型焼き中空焼菓子は、焼成時の油脂漏れもなく、側面の焼痩せや底面の焼き上がりもなく、実施例2で得られた型焼き中空焼菓子に比べ、さらに形状の揃ったものであった。また、室温放冷2時間後でも焼痩せもなく、実施例2で得られた型焼き中空焼菓子に比べ、クッキー生地の剥れも極めて少なく損壊しにくいものであり、保型性もさらに良好であった。また断面をみると部屋わかれのない大きな単一の空洞を有していた。
【0056】
〔実施例4〕
バター100質量部、粉糖60質量部をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにてビーターを用いて低速3分、中速7分クリーミングした後、食塩1質量部、全卵(正味)12質量部を投入して、中速2分ミキシングし、さらに薄力粉100質量部、ベーキングパウダー1質量部、アーモンド粉15質量部を混合し、低速1分、中速2分ミキシングし、ショートペーストの一種であるガレット生地を得た。このガレット生地は油分含量は32質量%、水分含量は14質量%であった。
【0057】
外包材として、実施例3で使用したクッキー生地に代えて、上記のガレット生地を使用した以外は、実施例3の配合、製法で実施例4の型焼き中空焼菓子を得た。
【0058】
窯だし後ただちに型抜きを行なったところ、型には生地の付着はなく、離型性は良好であった。
【0059】
得られた型焼き中空焼菓子は、焼成時の油脂漏れもなく、側面の焼痩せや底面の焼き上がりもなく、形状の揃ったものであり、ガレット生地の剥れも極めて少なく損壊しにくいものであり、室温放冷2時間後でも保型性は良好であった。また断面をみると部屋わかれのない大きな単一の空洞を有していた。
【0060】
〔比較例1〕
バター100質量部、上白糖100質量部をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにてビーターを用いて低速3分、中速7分クリーミングした後、食塩0.2質量部、全卵(正味)70質量部を投入して、中速2分ミキシングし、さらに強力粉30質量部、薄力粉70質量部、ベーキングパウダー0.5質量部を混合し、低速1分、中速2分ミキシングし、ケーキ生地の一種であるバターケーキ生地を得た。このバターケーキ生地は油分含量は25質量%、水分含量は23質量%であった。
【0061】
外包材として、実施例1で使用したタルト生地に代えて、上記のバターケーキ生地を使用した以外は、実施例1の配合、製法で比較例1の型焼き中空焼菓子を得た。
窯だし後ただちに型抜きを行なったところ、型に生地の付着が激しく、離型性は極めて悪かった。また得られた型焼き中空焼菓子は、断面をみると部屋わかれのない大きな単一の空洞を有していたが、外包材部分がべとつき、形状も不ぞろいであり、側面の焼痩せが若干見られ、焼成直後から保型性は悪かった。
【0062】
〔比較例2〕
バター90質量部、上白糖65質量部、食塩0.2質量部をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにてビーターを用いて低速3分、中速7分クリーミングした後、空焼きした薄力粉100質量部、アーモンド粉80質量部を混合し、低速1分、中速2分ミキシングし、ポルボローネ生地を得た。なお、このポルボローネとは食感が極度にもろい菓子であり、ショートペーストの必須成分である水性原料を使用しないことからもわかるとおりショートネスを有さないものである。このポルボローネ生地の油分含量は36質量%、水分含量は9質量%であった。
【0063】
外包材として、実施例1で使用したタルト生地に代えて、上記のポルボローネ生地を使用した以外は、実施例1の配合、製法で比較例2の型焼き中空焼菓子を得た。
窯だし後ただちに型抜きを行なったところ、型に生地の付着が激しく、離型性は極めて悪かった。また得られた型焼き中空焼菓子は、断面をみると部屋わかれのない大きな単一の空洞を有していたが、外包材部分のぽろつきが激しく、付着性に乏しく、形状も不ぞろいであり、激しい側面の焼痩せにより、焼成直後から極めて保型性は悪かった。
【0064】
〔比較例3〕
実施例1で使用したシュー生地をそのまま直径50mm、深さ80mmの紙製のマフィンカップ型に入れ、200℃の固定窯で23分焼成した。窯だし後ただちに型抜きを行なったところ、型に生地が付着し、離型性は悪かった。また得られた型焼き中空焼菓子は、断面をみると部屋わかれのない大きな単一の空洞を有していたが、形状も不ぞろいであり、激しい側面の焼痩せと、底面の焼き上がりにより、焼成直後から極めて保型性は悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外包材としてショートペーストを、内包材としてシュー生地を使用した包餡生地を焼型に入れて焼成したことを特徴とする型焼き中空焼菓子。
【請求項2】
上記ショートペーストの油分含量が20〜35質量%、且つ、水分含量が10〜40質量%であることを特徴とする請求項1記載の型焼き中空焼菓子。
【請求項3】
上記シュー生地が水溶性糖類を3〜20質量%含有することを特徴とする請求項1又は2記載の型焼き中空焼菓子。
【請求項4】
外包材と内包材の比率が30:70〜70:30であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の型焼き中空焼菓子。
【請求項5】
上記包餡生地が自動包餡機で製造されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の型焼き中空焼菓子。
【請求項6】
上記包餡生地が冷凍生地であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の型焼き中空焼菓子。


【公開番号】特開2006−115755(P2006−115755A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306638(P2004−306638)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】