型締装置
【課題】電磁石を用いて型締力を発生させる型締装置において、当該型締力を発生させる際に吸着面における吸着力の均一性を向上させることのできる型締装置を提供する。
【解決手段】電磁石49によって型締力を発生する型締装置10は、前記電磁石49の端面に対向して設けられた吸着板22を備え、前記吸着板22を吸着する前記電磁石49の吸着力は、前記電磁石49を配設するリヤプラテン13の略中心側に集中して形成されることを特徴とする。
【解決手段】電磁石49によって型締力を発生する型締装置10は、前記電磁石49の端面に対向して設けられた吸着板22を備え、前記吸着板22を吸着する前記電磁石49の吸着力は、前記電磁石49を配設するリヤプラテン13の略中心側に集中して形成されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締装置に関し、より具体的には、電磁石によって型締力を発生する型締装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形機、例えば、射出成形機は、射出装置、金型装置及び型締装置を備え、樹脂を射出装置の射出ノズルから射出して金型装置のキャビティ空間に充填し、固化させることによって成形品を得るようになっている。そして、前記金型装置は、固定金型及び可動金型を備え、前記型締装置を作動させ、固定金型に対して可動金型を進退させることによって、型閉じ、型締め及び型開きを行うことができる。
【0003】
前記型締装置は、前記固定金型が取り付けられた固定プラテン、前記可動金型が取り付けられた可動プラテン、電動式のモータ、該モータの出力軸に連結されたボールねじ軸、及び該ボールねじ軸と螺合させられるボールナットから成るボールねじ、前記ボールナットと連結されたクロスヘッド、該クロスヘッドと可動プラテンとの間に配設されたトグル機構等を備え、前記モータを駆動することによってクロスヘッドを前進させ、前記トグル機構を伸展させることによって型閉じ及び型締めを行うことができる。
【0004】
ところが、前記構成の型締装置においては、型締力を発生させるためにトグル機構を使用するようになっているので、可動プラテンに曲げモーメントが作用し、可動プラテンにおける金型取付面に歪みが発生してしまう。
【0005】
また、トグル機構を伸展させることによって型締めが行われるので、型締力を制御するのが困難になってしまう。
【0006】
そこで、電動式のモータ及び電磁石を備え、型閉じ及び型開きの動作にモータのトルクを、型締めの動作に電磁石の吸引力を利用した型締装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図1に、このような型締めの動作に電磁石の吸引力を利用した型締装置の一例を示す。
【0008】
図1を参照するに、510は型締装置、519は金型装置を示す。
【0009】
型締装置510は、リヤプラテン513及び吸着板522の他、固定プラテン511、可動プラテン512、及び可動プラテン512と吸着板522とを連結する型締力伝達部材としてのロッド539等を有する。
【0010】
また、金型装置519は、固定プラテン511に固定された固定金型515と、可動プラテン512に固定された可動金型516とより構成される。図1では、型閉状態、即ち、固定金型515と可動金型516とが閉じた状態が示されている。
【0011】
型締め装置510においては、コイル548を含む電磁石549によって吸着板522に働く吸着力がロッド539によって可動プラテン512に伝達され、型締めが行われる。
【0012】
図2は、図1に示すリヤプラテン513及び吸着板522の配置関係を示した図であり、図3は、図2において矢印Aで示す方向に見たときのリヤプランテン513の後端面を示す図である。
【0013】
かかる構造の下、コイル548に電流を供給すると、図2において点線の矢印で示す方向に磁束が発生する。ここで、内極の面積S1と外極の面積S2とは互いに略等しいため、磁束密度も略一定となり、電磁石が吸着板522を吸着する吸着力も略均一に発生する。
【特許文献1】国際公開WO/2005/090053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、型締装置510の組み付け精度が悪い場合や、型締装置510を構成する部材の変形等によってリヤプラテン513と吸着板522との間のギャップ(間隔)の平行度が崩れる場合がある。
【0015】
図4は、リヤプラテン513と吸着板522との間のギャップの平行度が崩れた状態におけるリヤプラテン513と吸着板522を示した図である。より具体的には、図4(a)は、リヤプラテン513と吸着板522との間のギャップの平行度が崩れた状態における磁束密度の強さを示す図であり、図4(b)は、リヤプラテン513と吸着板522との間のギャップの平行度が崩れた状態において、吸着板522に発生するモーメントを示す図である。
【0016】
図4(a)を参照するに、吸着板522が左側に傾斜すると、リヤプラテン513と吸着板522との平行度が崩れ、リヤプラテン513と吸着板522との間のギャップは、上方の方が下方よりも大きくなる。
【0017】
リヤプラテン513と吸着板522との間のギャップが大きくなればなるほど、磁束密度は小さくなるため、リヤプラテン513と吸着板522との間のギャップが大きい上方では磁束密度は小さく、下方になればなるほど、磁束密度は大きくなる。
【0018】
よって、上方では吸着力は小さくなり、下方では吸着力は大きくなる。即ち、電磁石が吸着板522を吸着する吸着力は、吸着板522に対して略垂直に作用せず、不均一な状態となる。
【0019】
その結果、図4(b)に示すように、吸着板522の縁部において大きな不要なモーメントが発生し、吸着板522は更に傾いてしまい、図5に示す問題が発生する。
【0020】
ここで、図5は、吸着板522が傾くことによる問題点を説明するための図である。図5中、図1と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0021】
図5を参照するに、吸着板522が傾いたままの状態で型締工程が行われると、ロッド539にモーメントが生じ、可動プラテン512は、破線で示されるように変形する。その結果、当該可動プラテン512に設けられた可動金型16も、破線で示されるように撓んでしまい、成形品の形状に影響を与える可能性がある。
【0022】
そこで、本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、電磁石を用いて型締力を発生させる型締装置において、当該型締力を発生させる際に吸着面における吸着力の均一性を向上させることのできる型締装置を提供することを、本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一観点によれば、電磁石によって型締力を発生する型締装置であって、前記電磁石の端面に対向して設けられた吸着板を備え、前記吸着板を吸着する前記電磁石の吸着力は、前記電磁石を配設するリヤプラテンの略中心側に集中して形成されることを特徴とする型締装置が提供される。
【0024】
前記電磁石の略中心に、前記吸着板に連結されたロッドが設けられていてもよい。
【0025】
また、前記電磁石において、コイルの内側に設けられた内極の面積は、前記コイルの外側に設けられた外極の面積よりも大きいこととしてもよい
更に、前記電磁石においてコイルの外側に設けられた外極の端面と前記吸着面との間の長さは、前記電磁石において前記コイルの内側に設けられた内極の端面と前記吸着面との間の長さよりも長いこととしてもよい。この場合、前記内極の端面は、前記外極の端面よりも前記吸着板側に位置し、前記内極の端面と前記外極の端面とが略凸形状を形成していることとしてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電磁石を用いて型締力を発生させる型締装置において、当該型締力を発生させる際に吸着面における吸着力の均一性を向上させることのできる型締装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
なお、以下では、型締装置については、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方とし、射出装置については、射出を行う際のスクリューの移動方向を前方とし、計量を行う際のスクリューの移動方向を後方として説明する。
【0029】
また、以下の説明では、型締とは、可動金型のパーティング面が固定金型のパーティング面と接触している状態から、可動金型に更に力が作用して、固定金型が可動金型によって押し付けられることをいう。
【0030】
[第1の実施の形態]
図6は本発明の第1の実施の形態における金型装置及び型締装置の概略構成図である。
【0031】
図6において、10は型締装置であり、Frは射出成形機のフレームである、Gdは、該フレームFr上に敷設されてレールを構成し、型締装置10を支持するとともに、案内する第1の案内部材としての2本のガイドである。図においては、2本のガイドGdのうち1本だけを示している。
【0032】
11は、前記ガイドGd上に載置され、前記フレームFr及びガイドGdに対して固定された第1の固定部材としての固定プラテンである。固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と対向させて第2の固定部材としてのリヤプラテン13が配設されている。前記固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本の連結部材としてのタイバー14(図においては、4本のタイバーのうちの2本だけを示す。)が架設される。なお、前記リヤプラテン13は、タイバー14が伸縮するのに伴って、ガイドGdに対して僅かに移動することができるように前記ガイドGd上に載置される。
【0033】
該タイバー14に沿って固定プラテン11と対向させて第1の可動部材としての可動プラテン12が型開閉方向に進退(図において左右方向に移動)自在に配設される。そのために、前記可動プラテン12のタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させる図示されないガイド穴が形成される。
【0034】
前記タイバー14の前端部(図において右端部)には、図示されない第1のねじ部が形成され、前記タイバー14は、前記第1のねじ部とナットn1とを螺合させることによって固定プラテン11に固定される。また、前記各タイバー14の後方(図において左方)の所定の部分には、タイバー14より外径が小さい第2の案内部材としてのガイドポスト21が、リヤプラテン13の後端面(図において左端面)から後方に向けて突出させて、かつ、タイバー14と一体に形成されている。
【0035】
各ガイドポスト21の、リヤプラテン13の後端面の近傍に、図示されない第2のねじ部が形成され、前記固定プラテン11とリヤプラテン13とは、前記第2のねじ部とナットn2とを螺合させることによって連結される。本実施の形態においては、ガイドポスト21がタイバー14と一体に形成されるようになっているが、ガイドポスト21をタイバー14とを別体に形成することもできる。
【0036】
また、前記固定プラテン11には第1の金型としての固定金型15が、前記可動プラテン12には第2の金型としての可動金型16がそれぞれ固定され、前記可動プラテン12の進退に伴って固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。
【0037】
なお、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に複数の図示されないキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された成形材料としての図示されない樹脂が前記各キャビティ空間に充填される。
【0038】
固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。
【0039】
そして、前記可動プラテン12と平行に配設された第2の可動部材としての吸着板22が、リヤプラテン13より後方において前記各ガイドポスト21に沿って進退自在に配設され、ガイドポスト21によって案内される。なお、前記吸着板22には、各ガイドポスト21と対応する箇所に、ガイドポスト21を貫通させるガイド穴23が形成される。
【0040】
該ガイド穴23は、前端面(図において右端面)に開口させられ、ボールナットn2を収容する大径部24、及び吸着板22の後端面に開口させられ、ガイドポスト21と摺動させられる摺動面を備えた小径部25を備える。本実施の形態において、吸着板22は、ガイドポスト21によって案内されるようになっているが、吸着板22を、ガイドポスト21だけでなく、ガイドGdによって案内することもできる。
【0041】
ところで、前記可動プラテン12を進退させるために、第1の駆動部としての、かつ、型開閉用の駆動部としてのリニアモータ28が、可動プラテン12とフレームFrとの間に配設される。前記リニアモータ28は、前記フレームFr上に、前記ガイドGdと平行に、かつ、可動プラテン12の移動範囲に対応させて形成された第1の駆動要素としての固定子29、及び前記可動プラテン12の下端において、前記固定子29と対向させて、かつ、所定の範囲にわたって形成された第2の駆動要素としての可動子31を備える。
【0042】
前記可動子31は、固定子29に向けて突出させて、かつ、所定のピッチで複数の磁極歯33が形成されたコア34、及び各磁極歯33に巻装されたコイル35を備える。なお、前記磁極歯33は可動プラテン12の移動方向に対して直角の方向に、互いに平行に形成される。前記固定子29は、図示されないコア、及び該コア上に延在させて形成された図示されない永久磁石を備え、該永久磁石は、N極及びS極の各磁極を交互に、かつ、前記磁極歯33と同じピッチで着磁させることによって形成される。
【0043】
従って、前記コイル35に所定の電流を供給することによってリニアモータ28を駆動すると、可動子31が進退し、それに伴って、可動プラテン12が進退させられ、型閉じ及び型開きを行うことができる。
【0044】
なお、本実施の形態においては、固定子29に永久磁石を、可動子31にコイル35を配設するようになっているが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ28が駆動されるのに伴って、コイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
【0045】
ところで、前記可動プラテン12が前進(図において右方向に移動)させられて可動金型16が固定金型15に当接すると、型閉じが終了し、続いて、型締めを行われる。型締めを行うために、リヤプラテン13と吸着板22との間に、第2の駆動部としての、かつ、型締用駆動部としての電磁石ユニット37が配設される。
【0046】
また、型閉じ時及び型開き時に、可動プラテン12の進退に連動させて吸着板22を進退させ、型締め時に、電磁石ユニット37によって発生させられた型締力を可動プラテン12に伝達するために、リヤプラテン13及び吸着板22を貫通して延び、可動プラテン12と吸着板22とを連結する型締力伝達部材としてのロッド39が、進退自在に配設される。
【0047】
固定プラテン11、可動プラテン12、リヤプラテン13、吸着板22、リニアモータ28、電磁石ユニット37、ロッド39等によって型締装置10が構成される。
【0048】
前記電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に配設された第1の駆動部材としての電磁石49、及び吸着板22側に配設された第2の駆動部材としての吸着部51から成る。
【0049】
吸着部は、前記吸着板22の前端面の所定の部分、本実施の形態においては、吸着板22において前記ロッド39を包囲し、電磁石49と対向する部分に形成される。また、リヤプラテン13の後端面の所定の部分、本実施の形態においては、前記ロッド39よりわずかに上方及び下方に、水平方向に延在させて二つの溝45が互いに平行に形成され、各溝45間に矩形の形状を有するコア46、及び他の部分にヨーク47が形成される。そして、前記コア46に励磁コイル48が巻装される。
【0050】
なお、前記リヤプラテン13のコア46及びヨーク47、並びに吸着板22は、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成され、電磁積層鋼板を構成する。また、本実施の形態においては、リヤプラテン13とは別に電磁石49が、吸着板22とは別に吸着部51が配設されるが、リヤプラテン13の一部として電磁石を吸着板22の一部として吸着部を形成することもできる。
【0051】
従って、電磁石ユニット37において、前記溝45に設けられた励磁コイル48に電流を供給すると、電磁石49が駆動され、吸着部51を吸着し、前記型締力を発生させることができる。
【0052】
前記ロッド39は、後端部(図において左端部)において吸着板22と連結させて、前端部において可動プラテン12と連結させて配設される。従って、ロッド39は、型閉じ時に可動プラテン12が前進するのに伴って前進させられて吸着板22を前進させ、型開き時に可動プラテン12が後退(図において左方向に移動)するのに伴って後退させられて吸着板22を後退させる。
【0053】
そのため、前記リヤプラテン13の中央部分に、ロッド39を貫通させるための穴41、及び前記吸着板22の中央部分にロッド39を貫通させるための穴42が形成され、前記穴41の前端部の開口に臨ませて、ロッド39を摺動自在に支持するブッシュ等の軸受部材Br1が配設される。また、前記ロッド39の後端部にねじ43が形成され、該ねじ43と、吸着板22に対して回転自在に支持されたナット44とが螺合させられる。
【0054】
次に、前記構成の型締装置10の動作について説明する。
【0055】
前記金型装置19の交換に伴い、新しい金型装置19が取り付けられると、まず、金型装置19の厚さに対応させて吸着板22と可動プラテン12との間の距離が変更され、型厚調整が行われる。
【0056】
続いて、距離調整工程で、リニアモータ28を駆動し、固定金型15に可動金型16を当接させて型タッチを行う。なお、このとき、型締力は発生させない。この状態で、型厚調整用モータを駆動してナット44を回転させ、リヤプラテン13と吸着板22との間隔、即ち、ギャップを調整し、あらかじめ設定された値にする。
【0057】
その後、非図示の制御部は、型開閉処理を行い、型閉じ時にコイル35に電流を供給する。続いて、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が前進させられ、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22との間、すなわち、電磁石49と吸着部51との間には、最適なギャップが形成される。なお、型閉じに必要とされる力は、型締力と比較されて十分に小さくされる。
【0058】
続いて、制御部は、型締め時に、コイル48に電流を供給し、吸着部51を電磁石49の吸着力によって吸着する。それに伴って、吸着板22及びロッド39を介して型締力が可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。
【0059】
そして、キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、制御部は、型開き時に、コイル48に電流を供給するのを停止する。それに伴って、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が後退させられ、可動金型16が後退限位置に置かれ、型開きが行われる。
【0060】
本実施の形態では更に、電磁石49の吸着力を中心側(ロッド39側)に集中させる構造を採用し、吸着板22が傾斜してリヤプラテン13と吸着板22との間のギャップ(間隔)の平行度が崩れた場合であっても、電磁石の端部側(外極側)に与える影響を小さくして、吸着板22に発生するモーメントを小さくしている。これについて、図7及び図8を参照して説明する。
【0061】
ここで、図7は、図6に示すリヤプラテン及び吸着板の配置関係を示した図であり、図8は、図7において矢印Aで示す方向に見たときのリヤプランテンの後端面を示す図である。
【0062】
図7及び図8を参照するに、本実施の形態では、リヤプラテン13において、コイル48の内側に設けられた内極の面積S1は、コイル48の外側に設けられた外極の面積S2よりも大きく設定されている。即ち、内極の面積S1と外極の面積S2の面積比である内極の面積S1/外極の面積S2は1よりも大きくとなっている。従って、電磁石による吸着力は、外極側よりも内極側で大きく発生し、内極側に吸着力がより集中する構造となっている。
【0063】
従って、型締装置10の組み付け精度が悪い場合や、型締装置10を構成する部材の変形等によってリヤプラテン13と吸着板22との間のギャップ(間隔)の平行度が崩れたとしても、外極部に与える影響は小さく、吸着板22に発生するモーメントを小さくすることができる。これについて、図9も参照して説明する。
【0064】
ここで、図9は、図6に示すリヤプラテンと吸着板との間のギャップの平行度が崩れた状態における、当該リヤプラテンと吸着板を示した図である。
【0065】
より具体的には、図9(a)は、リヤプラテン13と吸着板22との間のギャップの平行度が崩れた状態における磁束密度の強さを示す図であり、図9(b)は、リヤプラテン13と吸着板22との間のギャップの平行度が崩れた状態において、吸着板22に発生するモーメントを示す図である。
【0066】
図9(a)を参照するに、吸着板22が左側に傾斜すると、リヤプラテン13と吸着板22との平行度が崩れ、リヤプラテン13と吸着板22との間のギャップは、上方の方が下方よりも大きくなり、当該上方では磁束密度は小さく、下方になればなるほど、磁束密度は大きくなる。
【0067】
しかしながら、図7及び図8を参照して説明したように、コイル48の内側に設けられた内極の面積S1は、コイル48の外側に設けられた外極の面積S2よりも大きく設定されているため、電磁石による吸着力は、外極側よりも内極側で大きく発生し、内極側に吸着力がより集中する。その結果、図9(b)に示すように、吸着板22の縁部(外極側)において発生するモーメントは小さくすることができる。
【0068】
図10は、内極の面積S1と外極の面積S2の面積比と、吸着板22の縁部(外極側)において発生するモーメントMとの関係を示したグラフである。
【0069】
図10において、内極の面積S1と外極の面積S2の面積比、即ち、リヤプラテン13の中心側の面積S1と外周縁側の面積S2の面積比であるS1/S2が1である場合は、図2及び図3に示す構造の場合であり、この場合は、ロッド39にモーメントが大きく発生し、可動プラテン12や当該可動プラテン12に設けられた可動金型16が大きく変形して、成形品の形状に大きな影響を与えるモーメントが吸着板22の縁部(外極側)において発生する。
【0070】
これに対し、本実施の形態のように、S1/S2が1よりも大きな値となる場合は、電磁石による吸着力は、外極側よりも内極側で大きく発生し、内極側に吸着力がより集中するため、吸着板22の縁部(外極側)において発生するモーメントは小さい。
【0071】
このような本実施の形態の構造の下、仮に吸着板22が傾斜して取り付けられていても、ロッド39に発生する不要なモーメントは小さく、可動プラテン12や当該可動プラテン12に設けられた可動金型16の変形を抑制できる。従って、本実施の形態によれば、仮に、吸着板22が傾いて取り付けられていても、成形品の形状に与える影響を抑制することができる。
【0072】
また、図8に記載のように、ロッド39を囲うように巻設されたコイル48を、ロッド39を中心にして上下対称に分けて、2つのコイルを備えるようにしてもよい。この場合であっても、リヤプランテン13の中心側の面積S1をリヤプラテン13の外周縁側の面積S2より大きくすることによって、モーメントの発生を小さくすることができる。
【0073】
[第2の実施の形態]
上述の本発明の第1の実施の形態では、リヤプラテン(電磁石)において、コイルの内側に設けられた内極の面積をコイルの外側に設けられた外極の面積よりも大きくして、電磁石の吸着力を中心側(ロッド側)に集中させ、吸着板が傾斜してリヤプラテンと吸着板との間のギャップ(間隔)の平行度が崩れた場合であっても、電磁石の端部側(外極側)に与える影響を小さくして、吸着板に発生するモーメントを小さくしている。しかしながら、本発明はかかる例に限定されず、以下の態様であってもよい。
【0074】
なお、以下の、本発明の第2の実施の形態の説明においては、リヤプラテンの形状(構造)のみ第1の実施の形態と相違するため、型締装置の他の構成部分及び金型装置については、その図示を省略する。また、図11乃至図13において、第1の実施の形態で説明した箇所と同じ箇所には同じ符号を付す。
【0075】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る型締装置のリヤプラテン及び吸着板の配置関係を示した図である。また、図12は、図11において矢印Aで示す方向に見たときのリヤプランテンの後端面を示す図である。
【0076】
図11及び図12を参照するに、本発明の第2の実施の形態では、リヤプラテン313において、コイル48の外側、即ち、リヤプラテン13の外周縁側に設けられた外極の面積S2と、コイル48の内側、即ち、リヤプラテン13の中心側に設けられた内極の面積S1とは、略等しく設定されているものの、吸着板22と外極の端面との間の長さΔ2は、吸着板22と内極の端面との間の長さΔ1よりも長く設定されている(Δ2>Δ1)。即ち、吸着板22と外極の端面との間の長さΔ2と、吸着板22と内極の端面との間の長さΔ1との比(Δ2/Δ1)は1よりも大きくなっている。より具体的には、内極の端面は外極の端面よりも吸着板22側に位置し、内極の端面と外極の端面とが略凸形状を形成している。
【0077】
従って、かかる構造の下、電磁石による吸着力は、内極側の方が外極側より大きく発生し、内極側に吸着力がより集中する。
【0078】
よって、型締装置10の組み付け精度が悪い場合や、型締装置10を構成する部材の変形等によって、吸着板22が傾斜して取り付けられたとしても、外極部に与える影響は小さく、吸着板22に発生するモーメントを小さくすることができる。これについて、図13も参照して説明する。
【0079】
ここで、図13は、図11に示すリヤプラテンと吸着板との間のギャップの平行度が崩れた状態における、当該リヤプラテンと吸着板を示した図である。
【0080】
より具体的には、図13(a)は、吸着板22が傾斜した状態における磁束密度の強さを示す図であり、図13(b)は、吸着板22が傾斜した状態において、吸着板22に発生するモーメントを示す図である。
【0081】
図13(a)を参照するに、吸着板22が左側に傾斜すると、リヤプラテン313と吸着板22との平行度が崩れ、リヤプラテン313と吸着板22との間のギャップは、本来の状態に比し、上方の方が下方よりも大きくなり、当該上方では磁束密度は小さいが、下方になればなるほど、磁束密度は大きくなる。
【0082】
しかしながら、図11及び図12を参照して説明したように、吸着板22と外極の端面との間の長さΔ2は、吸着板22と内極の端面との間の長さΔ1よりも長く設定されている(Δ2>Δ1)ため、電磁石による吸着力は、外極側よりも内極側で大きく発生し、内極側に吸着力がより集中する。その結果、図13(b)に示すように、吸着板22の縁部(外極側)において発生するモーメントは小さくすることができる。
【0083】
図14は、吸着板22と外極の端面との間の長さΔ2と、吸着板22と内極の端面との間の長さΔ1との比(Δ2/Δ1)と、吸着板22の縁部(外極側)において発生するモーメントMとの関係を示したグラフである。
【0084】
図14において、吸着板22と外極の端面との間の長さΔ2と、吸着板22と内極の端面との間の長さΔ1との比(Δ2/Δ1)が1である場合は、図2及び図3に示す構造の場合であり、この場合は、ロッド39にモーメントが大きく発生し、可動プラテン12や当該可動プラテン12に設けられた可動金型16が大きく変形して、成形品の形状に大きな影響を与えるモーメントが吸着板22の縁部(外極側)において発生する。
【0085】
これに対し、本実施の形態のように、Δ2/Δ1が1よりも大きな値となる場合は、電磁石による吸着力は、外極側よりも内極側で大きく発生し、内極側に吸着力がより集中するため、吸着板22の縁部(外極側)において発生するモーメントは小さい。
【0086】
このような本実施の形態の構造の下、仮に吸着板22が傾斜して取り付けられていても、ロッド39に発生する不要なモーメントは小さく、可動プラテン12や当該可動プラテン12に設けられた可動金型16の変形を抑制できる。従って、本実施の形態によれば、仮に、吸着板22が傾いて取り付けられていても、成形品の形状に与える影響を抑制することができる。
【0087】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、リヤプラテン(電磁石)の構造を電磁石の吸着力を中心側(ロッド側)に集中させる構造としているため、吸着板が傾斜してリヤプラテンと吸着板との間のギャップ(間隔)の平行度が崩れた場合であっても、電磁石の端部側(外極側)に与える影響を小さくして、吸着板に発生するモーメントを小さくすることができる。よって、仮に、吸着板が傾いて取り付けられていても、成形品の形状に与える影響を抑制することができる。
【0088】
また、図12に示すように、ロッド39を囲うように巻設されたコイル48を、ロッド39を中心にして上下対称に分けて、2つのコイルを備えるようにしてもよい。この場合であっても、リヤプランテン13の中心側における吸着板22との距離Δ1(図11参照)を、リヤプラテン13の外周縁側における吸着板22との距離Δ2(図11参照)より小さくすることによって、モーメントの発生を小さくすることができる。
【0089】
更に、図11では、図12における縦方向の断面での吸着板22との距離関係のみを示しているが、図12における水平方向の断面においても同様に、リヤプラテン13の中心側における吸着板22との距離Δ1を、リヤプラテン13の外周縁側における吸着板22との距離Δ2より小さくしてもよい。この場合、型締力伝達部材であるロッド39の近傍、即ち、リヤプラテン313の中心近傍において吸着板22間の距離が短くなるので、モーメントの発生を更に抑制することができる。
【0090】
なお、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】型締めの動作に電磁石の吸引力を利用した型締装置の一例を示す図である。
【図2】図1に示すリヤプラテン及び吸着板の配置関係を示した図である。
【図3】図2において矢印Aで示す方向に見たときのリヤプランテンの後端面を示す図である。
【図4】図1に示すリヤプラテンと吸着板との間のギャップの平行度が崩れた状態における、当該リヤプラテンと吸着板を示した図である。
【図5】図1に示す吸着板が傾くことによる問題点を説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における金型装置及び型締装置の概略構成図である。
【図7】図6に示すリヤプラテン及び吸着板の配置関係を示した図である。
【図8】図7において矢印Aで示す方向に見たときのリヤプランテンの後端面を示す図である。
【図9】図6に示すリヤプラテンと吸着板との間のギャップの平行度が崩れた状態における、当該リヤプラテンと吸着板を示した図である。
【図10】内極の面積S1と外極の面積S2の面積比と、吸着板の縁部(外極側)において発生するモーメントMとの関係を示したグラフである。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る型締装置のリヤプラテン及び吸着板の配置関係を示した図である。
【図12】図11において矢印Aで示す方向に見たときのリヤプランテンの後端面を示す図である。
【図13】図11に示すリヤプラテンと吸着板との間のギャップの平行度が崩れた状態における、当該リヤプラテンと吸着板を示した図である。
【図14】と、吸着板の縁部(外極側)において発生するモーメントMとの関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0092】
10 型締装置
12 可動プラテン
13、313 リヤプラテン
22 吸着板
39 ロッド
48 コイル
49 電磁石
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締装置に関し、より具体的には、電磁石によって型締力を発生する型締装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形機、例えば、射出成形機は、射出装置、金型装置及び型締装置を備え、樹脂を射出装置の射出ノズルから射出して金型装置のキャビティ空間に充填し、固化させることによって成形品を得るようになっている。そして、前記金型装置は、固定金型及び可動金型を備え、前記型締装置を作動させ、固定金型に対して可動金型を進退させることによって、型閉じ、型締め及び型開きを行うことができる。
【0003】
前記型締装置は、前記固定金型が取り付けられた固定プラテン、前記可動金型が取り付けられた可動プラテン、電動式のモータ、該モータの出力軸に連結されたボールねじ軸、及び該ボールねじ軸と螺合させられるボールナットから成るボールねじ、前記ボールナットと連結されたクロスヘッド、該クロスヘッドと可動プラテンとの間に配設されたトグル機構等を備え、前記モータを駆動することによってクロスヘッドを前進させ、前記トグル機構を伸展させることによって型閉じ及び型締めを行うことができる。
【0004】
ところが、前記構成の型締装置においては、型締力を発生させるためにトグル機構を使用するようになっているので、可動プラテンに曲げモーメントが作用し、可動プラテンにおける金型取付面に歪みが発生してしまう。
【0005】
また、トグル機構を伸展させることによって型締めが行われるので、型締力を制御するのが困難になってしまう。
【0006】
そこで、電動式のモータ及び電磁石を備え、型閉じ及び型開きの動作にモータのトルクを、型締めの動作に電磁石の吸引力を利用した型締装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図1に、このような型締めの動作に電磁石の吸引力を利用した型締装置の一例を示す。
【0008】
図1を参照するに、510は型締装置、519は金型装置を示す。
【0009】
型締装置510は、リヤプラテン513及び吸着板522の他、固定プラテン511、可動プラテン512、及び可動プラテン512と吸着板522とを連結する型締力伝達部材としてのロッド539等を有する。
【0010】
また、金型装置519は、固定プラテン511に固定された固定金型515と、可動プラテン512に固定された可動金型516とより構成される。図1では、型閉状態、即ち、固定金型515と可動金型516とが閉じた状態が示されている。
【0011】
型締め装置510においては、コイル548を含む電磁石549によって吸着板522に働く吸着力がロッド539によって可動プラテン512に伝達され、型締めが行われる。
【0012】
図2は、図1に示すリヤプラテン513及び吸着板522の配置関係を示した図であり、図3は、図2において矢印Aで示す方向に見たときのリヤプランテン513の後端面を示す図である。
【0013】
かかる構造の下、コイル548に電流を供給すると、図2において点線の矢印で示す方向に磁束が発生する。ここで、内極の面積S1と外極の面積S2とは互いに略等しいため、磁束密度も略一定となり、電磁石が吸着板522を吸着する吸着力も略均一に発生する。
【特許文献1】国際公開WO/2005/090053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、型締装置510の組み付け精度が悪い場合や、型締装置510を構成する部材の変形等によってリヤプラテン513と吸着板522との間のギャップ(間隔)の平行度が崩れる場合がある。
【0015】
図4は、リヤプラテン513と吸着板522との間のギャップの平行度が崩れた状態におけるリヤプラテン513と吸着板522を示した図である。より具体的には、図4(a)は、リヤプラテン513と吸着板522との間のギャップの平行度が崩れた状態における磁束密度の強さを示す図であり、図4(b)は、リヤプラテン513と吸着板522との間のギャップの平行度が崩れた状態において、吸着板522に発生するモーメントを示す図である。
【0016】
図4(a)を参照するに、吸着板522が左側に傾斜すると、リヤプラテン513と吸着板522との平行度が崩れ、リヤプラテン513と吸着板522との間のギャップは、上方の方が下方よりも大きくなる。
【0017】
リヤプラテン513と吸着板522との間のギャップが大きくなればなるほど、磁束密度は小さくなるため、リヤプラテン513と吸着板522との間のギャップが大きい上方では磁束密度は小さく、下方になればなるほど、磁束密度は大きくなる。
【0018】
よって、上方では吸着力は小さくなり、下方では吸着力は大きくなる。即ち、電磁石が吸着板522を吸着する吸着力は、吸着板522に対して略垂直に作用せず、不均一な状態となる。
【0019】
その結果、図4(b)に示すように、吸着板522の縁部において大きな不要なモーメントが発生し、吸着板522は更に傾いてしまい、図5に示す問題が発生する。
【0020】
ここで、図5は、吸着板522が傾くことによる問題点を説明するための図である。図5中、図1と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0021】
図5を参照するに、吸着板522が傾いたままの状態で型締工程が行われると、ロッド539にモーメントが生じ、可動プラテン512は、破線で示されるように変形する。その結果、当該可動プラテン512に設けられた可動金型16も、破線で示されるように撓んでしまい、成形品の形状に影響を与える可能性がある。
【0022】
そこで、本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、電磁石を用いて型締力を発生させる型締装置において、当該型締力を発生させる際に吸着面における吸着力の均一性を向上させることのできる型締装置を提供することを、本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一観点によれば、電磁石によって型締力を発生する型締装置であって、前記電磁石の端面に対向して設けられた吸着板を備え、前記吸着板を吸着する前記電磁石の吸着力は、前記電磁石を配設するリヤプラテンの略中心側に集中して形成されることを特徴とする型締装置が提供される。
【0024】
前記電磁石の略中心に、前記吸着板に連結されたロッドが設けられていてもよい。
【0025】
また、前記電磁石において、コイルの内側に設けられた内極の面積は、前記コイルの外側に設けられた外極の面積よりも大きいこととしてもよい
更に、前記電磁石においてコイルの外側に設けられた外極の端面と前記吸着面との間の長さは、前記電磁石において前記コイルの内側に設けられた内極の端面と前記吸着面との間の長さよりも長いこととしてもよい。この場合、前記内極の端面は、前記外極の端面よりも前記吸着板側に位置し、前記内極の端面と前記外極の端面とが略凸形状を形成していることとしてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電磁石を用いて型締力を発生させる型締装置において、当該型締力を発生させる際に吸着面における吸着力の均一性を向上させることのできる型締装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
なお、以下では、型締装置については、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方とし、射出装置については、射出を行う際のスクリューの移動方向を前方とし、計量を行う際のスクリューの移動方向を後方として説明する。
【0029】
また、以下の説明では、型締とは、可動金型のパーティング面が固定金型のパーティング面と接触している状態から、可動金型に更に力が作用して、固定金型が可動金型によって押し付けられることをいう。
【0030】
[第1の実施の形態]
図6は本発明の第1の実施の形態における金型装置及び型締装置の概略構成図である。
【0031】
図6において、10は型締装置であり、Frは射出成形機のフレームである、Gdは、該フレームFr上に敷設されてレールを構成し、型締装置10を支持するとともに、案内する第1の案内部材としての2本のガイドである。図においては、2本のガイドGdのうち1本だけを示している。
【0032】
11は、前記ガイドGd上に載置され、前記フレームFr及びガイドGdに対して固定された第1の固定部材としての固定プラテンである。固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と対向させて第2の固定部材としてのリヤプラテン13が配設されている。前記固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本の連結部材としてのタイバー14(図においては、4本のタイバーのうちの2本だけを示す。)が架設される。なお、前記リヤプラテン13は、タイバー14が伸縮するのに伴って、ガイドGdに対して僅かに移動することができるように前記ガイドGd上に載置される。
【0033】
該タイバー14に沿って固定プラテン11と対向させて第1の可動部材としての可動プラテン12が型開閉方向に進退(図において左右方向に移動)自在に配設される。そのために、前記可動プラテン12のタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させる図示されないガイド穴が形成される。
【0034】
前記タイバー14の前端部(図において右端部)には、図示されない第1のねじ部が形成され、前記タイバー14は、前記第1のねじ部とナットn1とを螺合させることによって固定プラテン11に固定される。また、前記各タイバー14の後方(図において左方)の所定の部分には、タイバー14より外径が小さい第2の案内部材としてのガイドポスト21が、リヤプラテン13の後端面(図において左端面)から後方に向けて突出させて、かつ、タイバー14と一体に形成されている。
【0035】
各ガイドポスト21の、リヤプラテン13の後端面の近傍に、図示されない第2のねじ部が形成され、前記固定プラテン11とリヤプラテン13とは、前記第2のねじ部とナットn2とを螺合させることによって連結される。本実施の形態においては、ガイドポスト21がタイバー14と一体に形成されるようになっているが、ガイドポスト21をタイバー14とを別体に形成することもできる。
【0036】
また、前記固定プラテン11には第1の金型としての固定金型15が、前記可動プラテン12には第2の金型としての可動金型16がそれぞれ固定され、前記可動プラテン12の進退に伴って固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。
【0037】
なお、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に複数の図示されないキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された成形材料としての図示されない樹脂が前記各キャビティ空間に充填される。
【0038】
固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。
【0039】
そして、前記可動プラテン12と平行に配設された第2の可動部材としての吸着板22が、リヤプラテン13より後方において前記各ガイドポスト21に沿って進退自在に配設され、ガイドポスト21によって案内される。なお、前記吸着板22には、各ガイドポスト21と対応する箇所に、ガイドポスト21を貫通させるガイド穴23が形成される。
【0040】
該ガイド穴23は、前端面(図において右端面)に開口させられ、ボールナットn2を収容する大径部24、及び吸着板22の後端面に開口させられ、ガイドポスト21と摺動させられる摺動面を備えた小径部25を備える。本実施の形態において、吸着板22は、ガイドポスト21によって案内されるようになっているが、吸着板22を、ガイドポスト21だけでなく、ガイドGdによって案内することもできる。
【0041】
ところで、前記可動プラテン12を進退させるために、第1の駆動部としての、かつ、型開閉用の駆動部としてのリニアモータ28が、可動プラテン12とフレームFrとの間に配設される。前記リニアモータ28は、前記フレームFr上に、前記ガイドGdと平行に、かつ、可動プラテン12の移動範囲に対応させて形成された第1の駆動要素としての固定子29、及び前記可動プラテン12の下端において、前記固定子29と対向させて、かつ、所定の範囲にわたって形成された第2の駆動要素としての可動子31を備える。
【0042】
前記可動子31は、固定子29に向けて突出させて、かつ、所定のピッチで複数の磁極歯33が形成されたコア34、及び各磁極歯33に巻装されたコイル35を備える。なお、前記磁極歯33は可動プラテン12の移動方向に対して直角の方向に、互いに平行に形成される。前記固定子29は、図示されないコア、及び該コア上に延在させて形成された図示されない永久磁石を備え、該永久磁石は、N極及びS極の各磁極を交互に、かつ、前記磁極歯33と同じピッチで着磁させることによって形成される。
【0043】
従って、前記コイル35に所定の電流を供給することによってリニアモータ28を駆動すると、可動子31が進退し、それに伴って、可動プラテン12が進退させられ、型閉じ及び型開きを行うことができる。
【0044】
なお、本実施の形態においては、固定子29に永久磁石を、可動子31にコイル35を配設するようになっているが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ28が駆動されるのに伴って、コイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
【0045】
ところで、前記可動プラテン12が前進(図において右方向に移動)させられて可動金型16が固定金型15に当接すると、型閉じが終了し、続いて、型締めを行われる。型締めを行うために、リヤプラテン13と吸着板22との間に、第2の駆動部としての、かつ、型締用駆動部としての電磁石ユニット37が配設される。
【0046】
また、型閉じ時及び型開き時に、可動プラテン12の進退に連動させて吸着板22を進退させ、型締め時に、電磁石ユニット37によって発生させられた型締力を可動プラテン12に伝達するために、リヤプラテン13及び吸着板22を貫通して延び、可動プラテン12と吸着板22とを連結する型締力伝達部材としてのロッド39が、進退自在に配設される。
【0047】
固定プラテン11、可動プラテン12、リヤプラテン13、吸着板22、リニアモータ28、電磁石ユニット37、ロッド39等によって型締装置10が構成される。
【0048】
前記電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に配設された第1の駆動部材としての電磁石49、及び吸着板22側に配設された第2の駆動部材としての吸着部51から成る。
【0049】
吸着部は、前記吸着板22の前端面の所定の部分、本実施の形態においては、吸着板22において前記ロッド39を包囲し、電磁石49と対向する部分に形成される。また、リヤプラテン13の後端面の所定の部分、本実施の形態においては、前記ロッド39よりわずかに上方及び下方に、水平方向に延在させて二つの溝45が互いに平行に形成され、各溝45間に矩形の形状を有するコア46、及び他の部分にヨーク47が形成される。そして、前記コア46に励磁コイル48が巻装される。
【0050】
なお、前記リヤプラテン13のコア46及びヨーク47、並びに吸着板22は、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成され、電磁積層鋼板を構成する。また、本実施の形態においては、リヤプラテン13とは別に電磁石49が、吸着板22とは別に吸着部51が配設されるが、リヤプラテン13の一部として電磁石を吸着板22の一部として吸着部を形成することもできる。
【0051】
従って、電磁石ユニット37において、前記溝45に設けられた励磁コイル48に電流を供給すると、電磁石49が駆動され、吸着部51を吸着し、前記型締力を発生させることができる。
【0052】
前記ロッド39は、後端部(図において左端部)において吸着板22と連結させて、前端部において可動プラテン12と連結させて配設される。従って、ロッド39は、型閉じ時に可動プラテン12が前進するのに伴って前進させられて吸着板22を前進させ、型開き時に可動プラテン12が後退(図において左方向に移動)するのに伴って後退させられて吸着板22を後退させる。
【0053】
そのため、前記リヤプラテン13の中央部分に、ロッド39を貫通させるための穴41、及び前記吸着板22の中央部分にロッド39を貫通させるための穴42が形成され、前記穴41の前端部の開口に臨ませて、ロッド39を摺動自在に支持するブッシュ等の軸受部材Br1が配設される。また、前記ロッド39の後端部にねじ43が形成され、該ねじ43と、吸着板22に対して回転自在に支持されたナット44とが螺合させられる。
【0054】
次に、前記構成の型締装置10の動作について説明する。
【0055】
前記金型装置19の交換に伴い、新しい金型装置19が取り付けられると、まず、金型装置19の厚さに対応させて吸着板22と可動プラテン12との間の距離が変更され、型厚調整が行われる。
【0056】
続いて、距離調整工程で、リニアモータ28を駆動し、固定金型15に可動金型16を当接させて型タッチを行う。なお、このとき、型締力は発生させない。この状態で、型厚調整用モータを駆動してナット44を回転させ、リヤプラテン13と吸着板22との間隔、即ち、ギャップを調整し、あらかじめ設定された値にする。
【0057】
その後、非図示の制御部は、型開閉処理を行い、型閉じ時にコイル35に電流を供給する。続いて、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が前進させられ、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22との間、すなわち、電磁石49と吸着部51との間には、最適なギャップが形成される。なお、型閉じに必要とされる力は、型締力と比較されて十分に小さくされる。
【0058】
続いて、制御部は、型締め時に、コイル48に電流を供給し、吸着部51を電磁石49の吸着力によって吸着する。それに伴って、吸着板22及びロッド39を介して型締力が可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。
【0059】
そして、キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、制御部は、型開き時に、コイル48に電流を供給するのを停止する。それに伴って、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が後退させられ、可動金型16が後退限位置に置かれ、型開きが行われる。
【0060】
本実施の形態では更に、電磁石49の吸着力を中心側(ロッド39側)に集中させる構造を採用し、吸着板22が傾斜してリヤプラテン13と吸着板22との間のギャップ(間隔)の平行度が崩れた場合であっても、電磁石の端部側(外極側)に与える影響を小さくして、吸着板22に発生するモーメントを小さくしている。これについて、図7及び図8を参照して説明する。
【0061】
ここで、図7は、図6に示すリヤプラテン及び吸着板の配置関係を示した図であり、図8は、図7において矢印Aで示す方向に見たときのリヤプランテンの後端面を示す図である。
【0062】
図7及び図8を参照するに、本実施の形態では、リヤプラテン13において、コイル48の内側に設けられた内極の面積S1は、コイル48の外側に設けられた外極の面積S2よりも大きく設定されている。即ち、内極の面積S1と外極の面積S2の面積比である内極の面積S1/外極の面積S2は1よりも大きくとなっている。従って、電磁石による吸着力は、外極側よりも内極側で大きく発生し、内極側に吸着力がより集中する構造となっている。
【0063】
従って、型締装置10の組み付け精度が悪い場合や、型締装置10を構成する部材の変形等によってリヤプラテン13と吸着板22との間のギャップ(間隔)の平行度が崩れたとしても、外極部に与える影響は小さく、吸着板22に発生するモーメントを小さくすることができる。これについて、図9も参照して説明する。
【0064】
ここで、図9は、図6に示すリヤプラテンと吸着板との間のギャップの平行度が崩れた状態における、当該リヤプラテンと吸着板を示した図である。
【0065】
より具体的には、図9(a)は、リヤプラテン13と吸着板22との間のギャップの平行度が崩れた状態における磁束密度の強さを示す図であり、図9(b)は、リヤプラテン13と吸着板22との間のギャップの平行度が崩れた状態において、吸着板22に発生するモーメントを示す図である。
【0066】
図9(a)を参照するに、吸着板22が左側に傾斜すると、リヤプラテン13と吸着板22との平行度が崩れ、リヤプラテン13と吸着板22との間のギャップは、上方の方が下方よりも大きくなり、当該上方では磁束密度は小さく、下方になればなるほど、磁束密度は大きくなる。
【0067】
しかしながら、図7及び図8を参照して説明したように、コイル48の内側に設けられた内極の面積S1は、コイル48の外側に設けられた外極の面積S2よりも大きく設定されているため、電磁石による吸着力は、外極側よりも内極側で大きく発生し、内極側に吸着力がより集中する。その結果、図9(b)に示すように、吸着板22の縁部(外極側)において発生するモーメントは小さくすることができる。
【0068】
図10は、内極の面積S1と外極の面積S2の面積比と、吸着板22の縁部(外極側)において発生するモーメントMとの関係を示したグラフである。
【0069】
図10において、内極の面積S1と外極の面積S2の面積比、即ち、リヤプラテン13の中心側の面積S1と外周縁側の面積S2の面積比であるS1/S2が1である場合は、図2及び図3に示す構造の場合であり、この場合は、ロッド39にモーメントが大きく発生し、可動プラテン12や当該可動プラテン12に設けられた可動金型16が大きく変形して、成形品の形状に大きな影響を与えるモーメントが吸着板22の縁部(外極側)において発生する。
【0070】
これに対し、本実施の形態のように、S1/S2が1よりも大きな値となる場合は、電磁石による吸着力は、外極側よりも内極側で大きく発生し、内極側に吸着力がより集中するため、吸着板22の縁部(外極側)において発生するモーメントは小さい。
【0071】
このような本実施の形態の構造の下、仮に吸着板22が傾斜して取り付けられていても、ロッド39に発生する不要なモーメントは小さく、可動プラテン12や当該可動プラテン12に設けられた可動金型16の変形を抑制できる。従って、本実施の形態によれば、仮に、吸着板22が傾いて取り付けられていても、成形品の形状に与える影響を抑制することができる。
【0072】
また、図8に記載のように、ロッド39を囲うように巻設されたコイル48を、ロッド39を中心にして上下対称に分けて、2つのコイルを備えるようにしてもよい。この場合であっても、リヤプランテン13の中心側の面積S1をリヤプラテン13の外周縁側の面積S2より大きくすることによって、モーメントの発生を小さくすることができる。
【0073】
[第2の実施の形態]
上述の本発明の第1の実施の形態では、リヤプラテン(電磁石)において、コイルの内側に設けられた内極の面積をコイルの外側に設けられた外極の面積よりも大きくして、電磁石の吸着力を中心側(ロッド側)に集中させ、吸着板が傾斜してリヤプラテンと吸着板との間のギャップ(間隔)の平行度が崩れた場合であっても、電磁石の端部側(外極側)に与える影響を小さくして、吸着板に発生するモーメントを小さくしている。しかしながら、本発明はかかる例に限定されず、以下の態様であってもよい。
【0074】
なお、以下の、本発明の第2の実施の形態の説明においては、リヤプラテンの形状(構造)のみ第1の実施の形態と相違するため、型締装置の他の構成部分及び金型装置については、その図示を省略する。また、図11乃至図13において、第1の実施の形態で説明した箇所と同じ箇所には同じ符号を付す。
【0075】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る型締装置のリヤプラテン及び吸着板の配置関係を示した図である。また、図12は、図11において矢印Aで示す方向に見たときのリヤプランテンの後端面を示す図である。
【0076】
図11及び図12を参照するに、本発明の第2の実施の形態では、リヤプラテン313において、コイル48の外側、即ち、リヤプラテン13の外周縁側に設けられた外極の面積S2と、コイル48の内側、即ち、リヤプラテン13の中心側に設けられた内極の面積S1とは、略等しく設定されているものの、吸着板22と外極の端面との間の長さΔ2は、吸着板22と内極の端面との間の長さΔ1よりも長く設定されている(Δ2>Δ1)。即ち、吸着板22と外極の端面との間の長さΔ2と、吸着板22と内極の端面との間の長さΔ1との比(Δ2/Δ1)は1よりも大きくなっている。より具体的には、内極の端面は外極の端面よりも吸着板22側に位置し、内極の端面と外極の端面とが略凸形状を形成している。
【0077】
従って、かかる構造の下、電磁石による吸着力は、内極側の方が外極側より大きく発生し、内極側に吸着力がより集中する。
【0078】
よって、型締装置10の組み付け精度が悪い場合や、型締装置10を構成する部材の変形等によって、吸着板22が傾斜して取り付けられたとしても、外極部に与える影響は小さく、吸着板22に発生するモーメントを小さくすることができる。これについて、図13も参照して説明する。
【0079】
ここで、図13は、図11に示すリヤプラテンと吸着板との間のギャップの平行度が崩れた状態における、当該リヤプラテンと吸着板を示した図である。
【0080】
より具体的には、図13(a)は、吸着板22が傾斜した状態における磁束密度の強さを示す図であり、図13(b)は、吸着板22が傾斜した状態において、吸着板22に発生するモーメントを示す図である。
【0081】
図13(a)を参照するに、吸着板22が左側に傾斜すると、リヤプラテン313と吸着板22との平行度が崩れ、リヤプラテン313と吸着板22との間のギャップは、本来の状態に比し、上方の方が下方よりも大きくなり、当該上方では磁束密度は小さいが、下方になればなるほど、磁束密度は大きくなる。
【0082】
しかしながら、図11及び図12を参照して説明したように、吸着板22と外極の端面との間の長さΔ2は、吸着板22と内極の端面との間の長さΔ1よりも長く設定されている(Δ2>Δ1)ため、電磁石による吸着力は、外極側よりも内極側で大きく発生し、内極側に吸着力がより集中する。その結果、図13(b)に示すように、吸着板22の縁部(外極側)において発生するモーメントは小さくすることができる。
【0083】
図14は、吸着板22と外極の端面との間の長さΔ2と、吸着板22と内極の端面との間の長さΔ1との比(Δ2/Δ1)と、吸着板22の縁部(外極側)において発生するモーメントMとの関係を示したグラフである。
【0084】
図14において、吸着板22と外極の端面との間の長さΔ2と、吸着板22と内極の端面との間の長さΔ1との比(Δ2/Δ1)が1である場合は、図2及び図3に示す構造の場合であり、この場合は、ロッド39にモーメントが大きく発生し、可動プラテン12や当該可動プラテン12に設けられた可動金型16が大きく変形して、成形品の形状に大きな影響を与えるモーメントが吸着板22の縁部(外極側)において発生する。
【0085】
これに対し、本実施の形態のように、Δ2/Δ1が1よりも大きな値となる場合は、電磁石による吸着力は、外極側よりも内極側で大きく発生し、内極側に吸着力がより集中するため、吸着板22の縁部(外極側)において発生するモーメントは小さい。
【0086】
このような本実施の形態の構造の下、仮に吸着板22が傾斜して取り付けられていても、ロッド39に発生する不要なモーメントは小さく、可動プラテン12や当該可動プラテン12に設けられた可動金型16の変形を抑制できる。従って、本実施の形態によれば、仮に、吸着板22が傾いて取り付けられていても、成形品の形状に与える影響を抑制することができる。
【0087】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、リヤプラテン(電磁石)の構造を電磁石の吸着力を中心側(ロッド側)に集中させる構造としているため、吸着板が傾斜してリヤプラテンと吸着板との間のギャップ(間隔)の平行度が崩れた場合であっても、電磁石の端部側(外極側)に与える影響を小さくして、吸着板に発生するモーメントを小さくすることができる。よって、仮に、吸着板が傾いて取り付けられていても、成形品の形状に与える影響を抑制することができる。
【0088】
また、図12に示すように、ロッド39を囲うように巻設されたコイル48を、ロッド39を中心にして上下対称に分けて、2つのコイルを備えるようにしてもよい。この場合であっても、リヤプランテン13の中心側における吸着板22との距離Δ1(図11参照)を、リヤプラテン13の外周縁側における吸着板22との距離Δ2(図11参照)より小さくすることによって、モーメントの発生を小さくすることができる。
【0089】
更に、図11では、図12における縦方向の断面での吸着板22との距離関係のみを示しているが、図12における水平方向の断面においても同様に、リヤプラテン13の中心側における吸着板22との距離Δ1を、リヤプラテン13の外周縁側における吸着板22との距離Δ2より小さくしてもよい。この場合、型締力伝達部材であるロッド39の近傍、即ち、リヤプラテン313の中心近傍において吸着板22間の距離が短くなるので、モーメントの発生を更に抑制することができる。
【0090】
なお、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】型締めの動作に電磁石の吸引力を利用した型締装置の一例を示す図である。
【図2】図1に示すリヤプラテン及び吸着板の配置関係を示した図である。
【図3】図2において矢印Aで示す方向に見たときのリヤプランテンの後端面を示す図である。
【図4】図1に示すリヤプラテンと吸着板との間のギャップの平行度が崩れた状態における、当該リヤプラテンと吸着板を示した図である。
【図5】図1に示す吸着板が傾くことによる問題点を説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における金型装置及び型締装置の概略構成図である。
【図7】図6に示すリヤプラテン及び吸着板の配置関係を示した図である。
【図8】図7において矢印Aで示す方向に見たときのリヤプランテンの後端面を示す図である。
【図9】図6に示すリヤプラテンと吸着板との間のギャップの平行度が崩れた状態における、当該リヤプラテンと吸着板を示した図である。
【図10】内極の面積S1と外極の面積S2の面積比と、吸着板の縁部(外極側)において発生するモーメントMとの関係を示したグラフである。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る型締装置のリヤプラテン及び吸着板の配置関係を示した図である。
【図12】図11において矢印Aで示す方向に見たときのリヤプランテンの後端面を示す図である。
【図13】図11に示すリヤプラテンと吸着板との間のギャップの平行度が崩れた状態における、当該リヤプラテンと吸着板を示した図である。
【図14】と、吸着板の縁部(外極側)において発生するモーメントMとの関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0092】
10 型締装置
12 可動プラテン
13、313 リヤプラテン
22 吸着板
39 ロッド
48 コイル
49 電磁石
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石によって型締力を発生する型締装置であって、
前記電磁石の端面に対向して設けられた吸着板を備え、
前記吸着板を吸着する前記電磁石の吸着力は、前記電磁石を配設するリヤプラテンの略中心側に集中して形成されることを特徴とする型締装置。
【請求項2】
請求項1に記載の型締装置であって、
前記電磁石の略中心に、前記吸着板に連結されたロッドが設けられていることを特徴とする型締装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の型締装置であって、
前記電磁石において、コイルの内側に設けられた内極の面積は、前記コイルの外側に設けられた外極の面積よりも大きいことを特徴とする型締装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の型締装置であって、
前記電磁石においてコイルの外側に設けられた外極の端面と前記吸着面との間の長さは、
前記電磁石において前記コイルの内側に設けられた内極の端面と前記吸着面との間の長さよりも長いことを特徴とする型締装置。
【請求項5】
請求項4記載の型締装置であって、前記内極の端面は、前記外極の端面よりも前記吸着板側に位置し、前記内極の端面と前記外極の端面とが略凸形状を形成していることを特徴とする型締装置。
【請求項1】
電磁石によって型締力を発生する型締装置であって、
前記電磁石の端面に対向して設けられた吸着板を備え、
前記吸着板を吸着する前記電磁石の吸着力は、前記電磁石を配設するリヤプラテンの略中心側に集中して形成されることを特徴とする型締装置。
【請求項2】
請求項1に記載の型締装置であって、
前記電磁石の略中心に、前記吸着板に連結されたロッドが設けられていることを特徴とする型締装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の型締装置であって、
前記電磁石において、コイルの内側に設けられた内極の面積は、前記コイルの外側に設けられた外極の面積よりも大きいことを特徴とする型締装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の型締装置であって、
前記電磁石においてコイルの外側に設けられた外極の端面と前記吸着面との間の長さは、
前記電磁石において前記コイルの内側に設けられた内極の端面と前記吸着面との間の長さよりも長いことを特徴とする型締装置。
【請求項5】
請求項4記載の型締装置であって、前記内極の端面は、前記外極の端面よりも前記吸着板側に位置し、前記内極の端面と前記外極の端面とが略凸形状を形成していることを特徴とする型締装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−6650(P2008−6650A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178471(P2006−178471)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
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