説明

埋め込み型組織虚血センサ

【課題】組織虚血の局所測定を提供するための埋め込み型装置及び方法を提供する。
【解決手段】白色LED(105)が、ターゲット部位(125)を照射する連続可視広帯域光を生成する埋め込み型虚血検知システム。ターゲットによって後方散乱された光は、センサ(155)によって収集され、虚血の指標を判断して引き続き送信ユニット(167)によって送信することを可能にする。電力は、内部電源(179)によって供給される。埋め込み型装置全体は、生体適合性シェル(102)によって封入され、埋め込みに関する長期安全性が付加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織虚血の局所測定を提供するための埋め込み型装置及び方法に関し、より詳細には、局所組織虚血に敏感なインビボ組織潅流のリアルタイム分光分析を達成するための可視光源、センサ、電源、及び送信機の長期埋め込み型シェル内への組込に関する。
【背景技術】
【0002】
組織の代謝要求を満たす酸素の不十分な供給である虚血の臨床的検知は、信頼性に乏しい。虚血が心臓発作又は脳卒中の間のような血流の局所中断による時、虚血を検知することは特に困難である。血清中エンザイム漏れ試験(例えば、心臓発作の後での心臓アイソザイムの試験に関する)又はEKG電気試験のような虚血のための既存の実験室試験は、特に初期段階の間では、こうした局所組織虚血の指標としては鈍感である。同様に、虚血が局所組織での低酸素化度の結果であり、それは局所毛細血管の酸素化度に反映されるが、中心大動脈及び静脈内で測定される時の動脈血又は静脈血の酸素化度には反映されないために、血液試験も局所虚血に対しては鈍感である。虚血の非侵襲的撮像は、早期の処置又はペースメーカーのような他の装置へのリアルタイムのフィードバックを可能にする即時性に欠けている。
【0003】
非埋め込み型虚血センサは公知である。例えば、米国特許第6、532、381号は、体外測定型電気的(EKG)モニタリング及びマクロプロセッサ制御を用いる虚血の検知を教示している。しかし、胸壁上に配置されたワイヤリードを使用して複数の外側部位をモニタするこのような装置は、埋め込み可能性を目的として設計されておらず、それは、寸法、電力消費、生体適合性、及び長期的な頑健性の問題を検知性能と平行して最適化することを必要とし、簡単ではない。
【0004】
埋め込み型センサも公知である。しかし、虚血を検知するために設計された埋め込み型センサは、当業技術では稀であり、それらには組織虚血を直接検知するものはない。例えば、米国特許第5、135、004号、米国特許出願第2004/0122478号、及びWO第00/64534号は、心臓の電気的(EKG)、血圧、局所pH、及び/又は物理的(収縮中の加速度)特性に基づいて虚血の存在を予測し、一方、米国特許第6、527、729号は、心拍の音の変化によって心不全に反応する埋め込み型音響センサを開示している。更に、米国特許第5、199、428号及び米国特許出願第2004/0220460号は、血液酸素化(それぞれ静脈血及び動脈血)をモニタする埋め込み型装置を教示し、後者の場合は、特に、封入による局所組織飽和を拒絶し、従って、直接組織モニタリングから離れた教示である。後でより詳細に概説する理由のために、こうした非組織血液酸素化(動脈又は静脈に関わらず)は、組織虚血に鈍感であり、高々組織虚血の間接的尺度に過ぎない。その結果、上述の装置の各々について、虚血は、心臓の電気的、機械的、及び音響的機能異常の指標によるなどの間接的で信頼性に欠ける虚血の指標によってのみ測定される。考慮すべき別の点は、心臓以外の臓器が頻繁な虚血の部位であることであり(腎臓、肝臓、又は腸管におけるなど)、従来技術は、これら他の臓器には全く向けられていない。従って、上述の装置のどれも局所組織虚血を直接に検知せず、それらは、部位を問わずあらゆる臓器に一般的に適用することもできない。
【0005】
上述の装置の全ては、非埋め込み型であることにより、高々局所組織虚血の間接的尺度に過ぎないことにより、又はそれらが使用する虚血の間接的尺度(音又は動きのような)のために心臓のような1つのみの臓器における使用に制約されることにより制限されている。
【0006】
従来の装置又は方法のどれも、局所虚血に感受性のある長期又は短期埋め込み型システムを使用する広範なターゲット部位の局所組織虚血の直接的検知を考慮していない。
【0007】
そのようなシステムは、過去に説明されたことはなく、商品化に成功してもいない。
【0008】
【特許文献1】米国特許第6、532、381号
【特許文献2】米国特許第5、135、004号
【特許文献3】米国特許出願第2004/0122478号
【特許文献4】WO第00/64534号
【特許文献5】米国特許第6、527、729号
【特許文献6】米国特許第5、199、428号
【特許文献7】米国特許出願第2004/0220460号
【特許文献8】米国特許第5、987、346号
【発明の開示】
【0009】
本発明者は、組織虚血が発生する部位が常に局所的であり、局所組織の生理機能が殆ど全ての場合にこの局所虚血を補償しようと試み、毛細血管ヘモグロビン飽和度に対して直接的な低下、次に部分的な補償を生じることになることを発見した。この局所効果は、多くの場合に、標準の血液モニタリングを用いて測定できず、この局所毛細血管効果を利用することは、高度に局所化された完全埋め込み型虚血検知器の設計を可能にする。
【0010】
本発明の顕著な特徴は、虚血の検知及び治療が、埋め込み型虚血センサの使用によって助けられることである。
【0011】
従って、本発明の目的は、完全埋め込み型虚血検知器を提供することである。
【0012】
1つの態様において、本発明は、局所組織虚血の直接的で定量的な尺度又は指標を提供する。
【0013】
別の態様において、本発明は、バイパス手術後の心筋内の光ファイバ、又は移植後の短期モニタリングのための肺臓組織内のインプラント、又は更に消化管系を通過する時に腸管内の虚血を検知する嚥下可能装置のような短期埋め込みを提供する。
【0014】
上述の改良された虚血検知システムは、1つ又はそれよりも多くを以下に説明する多くの利点を有する。いくつかの利点が説明目的のみのために示されるが、これらの利点は、特許請求の範囲を限定することを何ら意図したものではない。
【0015】
1つの利点は、内科医又は外科医が、ハイリスク患者の局所組織虚血に関するリアルタイムのフィードバックを取得することができ、あらゆる損傷を改善可能としたままで相応に対応することができることである。
【0016】
別の利点は、このシステムを生体内に安全に配備することができることである。
【0017】
別の利点は、このシステムが、ペースメーカーのような治療装置に能動的に連結されてペース調整機能へのフィードバックを提供し、又は長期にわたるステント性能をモニタするためにステントに適用されるなどの治療装置に受動的に連結させることができることである。
【0018】
別の利点は、このシステムを光を用いて虚血を検知するように構成することができることであり、それは、必要に応じて、測定するフォトンの簡単で安全な非電気的伝達を可能にする。
【0019】
別の利点は、検知が、虚血の部位から取り出されるのではなく組織それ自体において可能であることである。局所組織信号の供給源としては、以下に限定されるものではないが、毛細血管ヘモグロビン(動脈又は静脈循環内のものではなく組織中の毛細血管内の局所的なもの)、ミオグロビン(これは、血管外にあり、組織自体の筋肉細胞内に存在する)、及びチトクロム(これは、細胞内にあり、組織自体の細胞のミトコンドリア内に存在する)が挙げられる。
【0020】
別の利点は、広帯域光の使用が、分光法及び特に差分分光法を用いる組織虚血の判断を可能にすることができることであり、これは、組織による光散乱の補正を可能にする。
【0021】
最後の利点は、虚血検出を使用して、その多くが疾病の一面として虚血を生じさせる組織拒否反応、組織感染症、血管漏出、及び血管閉塞などのような多くの種類の疾病の検知を可能にすることができることである。
【0022】
光を発生させて、この光を分光法虚血検知を可能にするためにサンプルに送出するための広帯域光源を有する埋め込み型装置又はシステムが提供される。一部の実施形態では、システムは、燐光体被覆白色LEDを使用して400nmから700nmの連続広帯域光を生成し、これは、直接にターゲット部位に伝達される。ターゲットから戻る散乱光は、波長感受性検出器によって検知され、分光解析を通じて、この波長感受性情報を用いて虚血に関連する信号が生成される。最後に、この信号は、高周波(RF)送信を用いて装置から送信される。この虚血検知システムを組み込む埋め込み型システム及び医学的使用方法を説明する。
【0023】
本発明の使用範囲及び利点は、例示的に、かつ現在動物に実施されて試験されている構成された機器の機能の詳細説明によって最も良く理解される。本発明のこれら及び他の利点は、添付図面、実施例、及び詳細説明に鑑みて考察されると明白になるであろう。
図面が添付のように提供されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
定義
本発明の目的のために、以下の定義が提供される。これらの定義は、解説的かつ例示的であることを意図されている。それらは、制約的に限定されることを意図されず、特定の具体例のない場合はこの用語の当業者に対する常識的な範囲を意味する。これらの定義は以下の通りである。
【0025】
埋め込み型:内部組織内に又はその間のような生体内の埋め込みを意図されたものである。埋め込み型装置は、通常、生体適合性(すなわち、生体適合性外装を有する)でなければならず、そうでなければホスト被検体の免疫システムが埋め込まれた物体を攻撃し、又はこの装置がホストに対して毒作用を有することになる。
【0026】
埋め込み型は、いかなる固定した持続時間も求めない。本明細書で使用される時の「埋め込み型」は、心臓又は肺臓に挿入された可撤式ファイバ又は胃腸虚血モニタのような嚥下可能装置のような短期間埋め込みを意味することができる。本明細書で使用される時の「埋め込み型」は、心臓又は筋肉をモニタするペースメーカーフィードバックシステム又は拒否反応をモニタする肝臓ベースのMEMS装置のような長期間埋め込み型とすることができる。
【0027】
完全埋め込み型:外部物体への物理的接続のない生体内への完全な埋め込みである。完全埋め込み型装置は、内蔵電源を含むことができ、別の埋め込まれた装置(ペースメーカーのような)から電力を受け取ることができ、又は経皮誘導結合によるなどで外部電源から電力を受け取ることができる。更に、完全埋め込み型装置は、RFIDチップからの電磁波のような非物理的手段を通じて体外の受信機と通信することができる。埋め込み型システムは、臓器拒否反応又は心臓虚血をモニタするために身体内部に深く埋めるなどして長期間埋め込むことができる。埋め込み型システムは、食道、胃、小腸、及び大腸内の虚血性潰瘍又はポリープをモニタし、数時間から数日で走査が完了すると直腸を通じて通過する嚥下可能ピルなどのように短期間だけに使用することができる。
【0028】
組織:哺乳動物、特にヒトに重点をおいた、生きている動物、植物、ウイルス、又はバクテリア被検体からの物質である。
【0029】
潅流:低流量が虚血を保証しないなどの理由で組織虚血と異なっている組織又は領域への血液の流れである。
【0030】
血液酸素化:組織虚血と異なる動脈及び静脈血内のヘモグロビンの飽和である。動脈血は、100%酸素化することができるが、冠状動脈内の血栓は、100%の動脈飽和度にも関わらず重度の虚血を生じさせることになる。同様に、局所閉塞は、致死的な局所虚血を生じさせる場合があるが、平均の静脈酸素化度は、全体の静脈血に対するその局所組織の寄与が小さいことにより、検知される程には低下しない。
【0031】
虚血:組織への酸素の供給が組織の代謝要求を満たすのには局所的に不十分な組織の局所的状態である。こうした状態は組織の間で異なる。例えば、脳は高い代謝率を有し、深い思考及び洞察のような基本的な課題の間であっても、その代謝している皮質組織へのベースラインの血流及び酸素供給での局所的かつ迅速な増大がなければ、脳は容易に虚血状態になる。対照的に、成長している胎児は、比較的冬眠状態であり、殆どの組織での酸素要求は非常に低く、虚血状態にはよりなりにくい。早期かつ軽度の虚血は、組織の低酸素化度を生じさせる、毛細血管床に供給されている血液から抽出された酸素の量の増加によって多くの場合に立証される。後期の虚血は、組織の基本的な補償機構(酸素抽出の増大、血流の増大)が虚血の発生から組織を保護するのにもはや不十分である時に発生する乳酸生成及び細胞代謝障害によって立証される。従って、虚血は、低血流量が虚血を保証せず(組織冷却の間又は胎児におけるような)、同じく高流量も虚血を除外しない(敗血症、発熱、又は激しい労働)などの理由で、潅流(すなわち、血流)から区別される。虚血は、敗血症、組織拒絶反応、心臓発作、脳卒中、臓器不全、糖尿病、及び他の疾患を含む多くの異なる種類の疾病に共存する疾患である。
【0032】
ターゲット:検知され、撮像され、調査されるべき物質である。付随する実施例において、1つのターゲット部位は腸である。
【0033】
ターゲット信号:ターゲットに特異的な検出信号である。この信号は、造影剤の使用によって強調することができる。この信号は、散乱、吸収、燐光、蛍光、ラマン効果、又は他の公知の分光技術によって生成することができる。
【0034】
可視光:青色から黄色、すなわち、400nmから625ミクロンの波長の電磁放射線であるが、但し、特に緑色から橙色の毛細血管ヘモグロビン(動脈又は静脈循環内ではなく、組織内の毛細血管内に局所的な)、ミオグロビン(これは、血管外にあり、組織自体の筋肉細胞内部に存在する)、及びチトクロム(これは、細胞内にあり、組織自体の細胞のミトコンドリア内部に存在する)の吸光度が最大である475から600nmの波長の電磁放射線である。
【0035】
広帯域光:複数の同時処理分光課題の解決を達成するのに十分な波長範囲にわたって生成された光である。組織に関しては少なくとも40nmの広さが恐らく必要とされるが、好ましい実施形態では、広帯域白色LEDは、400nmから700nmを超える光を生成する。
【0036】
LED:発光ダイオードである。
【0037】
白色LED:多くの場合に、青色LED、及び広範囲の可視波長にわたって放射する青色光を吸収して広域で放射する燐光体から成る広帯域可視光LED。他の燐光体で代用することもできる。本明細書の実施例で使用される時、全(白色)スペクトルにわたり放射しなくても、いずれかの広帯域LEDを使用することができる。例えば、100nmのFWHM範囲にわたって放射する緑色LEDは、広帯域であると見なされるであろう。
【0038】
光源:照射フォトンの供給源である。光源は、単一電球、レーザ、フラッシュランプ、LED、白色LED、又は別の光源、又は光源の組合せで構成することができ、又は電球又は発光ダイオードのような発光体、1つ又はそれよりも多くのフィルタ要素、集積化光ファイバのような伝送要素、反射プリズム又は内部レンズのような誘導要素、及び考察中の組織又はサンプルへの光源からの光の光学的結合を強化することを意図した他の要素を非限定的に含む複合形態とすることができる。光は、電気的入力(例えば、LEDの場合のような)、光学的入力(例えば、光に応答するファイバ内蛍光色素のような)、又は光源に対する内部又は外部のいずれかのエネルギの他の供給源を用いて発生させることができる。光源は、連続作動とすることができ、パルス状とすることができ、又は更に時間的、周波数的、又は空間的に分解して解析することができる。発光体は、単一発光要素又は光のスペクトルを生成する異なる発光ダイオードの組合せのような複数の発光要素を含むことができる。
【0039】
光検出器又は光センサ:検出器に入射する光に応答して測定可能な信号を発生させる検出器である。
【0040】
光学的結合:第1の要素から出た光が少なくとも部分的に第2の要素に作用するように構成された2つの要素の配置。これは、空気又は空間を通過する自由空間(無支援)伝達とすることができ、又はレンズ、フィルタ、溶融ファイバエキスパンダ、コリメータ、集線装置、コレクタ、光ファイバ、プリズム、及びミラー又は鏡面などのような介在光学要素の使用を要する場合がある。
【0041】
ここで、装置及びシステムの実施形態を以下に説明する。
【0042】
図1は、患者98の胸壁内に埋め込まれた装置101を示している。注意すべきは、患者98は説明目的のためにのみ示され、本発明の一部とは見なされないことである。埋め込み型装置101の内部を示している装置101の切断概略図が、図1の上側に示されている。装置101は、生体適合性外装102によって囲まれる。一般的に、外装102は、米国FDA又は他の医療装置監督官庁によって承認された認可「等級VI」材料の例えばポリエチレン又は外科のためのスチールから構成される。センサ、電源部、光源、又は送信器は、必要に応じてこのシェルから突出することができ、突出部分それら自体が生体適合性である条件で本発明の精神の範囲内である。
【0043】
装置101の内部に、光源103がその構成部分内に示されている。一部の実施形態では、広帯域白色光が、高変換効率白色LED105(この場合には、LEDライト、モデルT1−3/4−20W−a、Fallon、ネバダ州)によって放射される。例示的な実施形態では、ダイオード光源105は、光学透明エポキシ111を用いるプラスチックビーム成形マウント内に埋め込まれ、LED105内で発生した光を平行化することができ、従って、装置101から出るための光学窓115の通過の後にほぼ一定な直径のままである。次に、光は、光路ベクトル119で示すように前方に通過することができ、この光の少なくとも一部は、ターゲット領域125に光学的に結合される。ここで注意すべきは、ターゲット領域125は、ある場合は生体組織とすることができるが、この組織それ自体は、本発明の請求部分であるとは見なされないことである。
【0044】
ターゲット125に到達する光の一部分は、組織内の虚血によって吸収され、他の部分が後方散乱され、光路ベクトル128で示すように装置101に関して光収集窓141に戻る。この実施形態では、収集窓141は、ガラス、プラスチック、又は石英窓であるが、代替的に単なる開口とすることができ、必要に応じて更にレンズとすることができる。光は、次に、センサ155につき当たり、そこで光は、感知されて検出される。
【0045】
センサ155は、波長感受性であるように構成されたいくつかの個別の検出器を含むことができ、又は回折格子、フィルタ、又は波長特異性光ファイバによって制御された波長の光が入る連続CCD分光器とすることができる。いずれにしても、センサ155は、ターゲット125から後方散乱された検知光に関連する虚血信号を伝達し、送信機チップのような送信ユニット167にワイヤ161及び163を通じて送られる電気信号を生成する。送信ユニット167によって送信された信号は、受信機183によって受信され、そこでこの信号は、表示を提供するために更に処理することができる。
【0046】
一実施形態では、光源103は、電源179に光源103を接続する2つの電気接続部175及び176も有する。一実施形態では、電源179は、必要に応じて装置101のために電力を発生させるための身体の外側に置かれた外部給電コイル及びRFID受信機183(図2)からの誘導場を受け取ることができる誘導電源である。ここで注意すべきは、外部給電コイル183は、例示的及び説明の目的のために示され、本発明の必要部分とは見なされないことである。代替的に、電源179は、単に長寿命の埋め込み型バッテリとすることができ、その場合には、外部給電コイルは、全く不要とすることができる。
【0047】
ここで、装置の作動を以下に説明することができる。
【0048】
装置101は、患者、例えば、心疾患のため冠状動脈手術中の患者の胸壁内に埋め込まれる。装置は、筋肉を直接測定することができ、又はある一定の距離をとって置くことができる。後者の場合、ベクトル119は、装置101から延びて、光学的結合に十分なほどターゲット心筋への密接近傍部内に延びる光ファイバである。次に、患者は、手術後の治癒に委ねられ、埋め込み型装置は、外界への直接の物理的接続なしに患者の身体の内部に残される。
【0049】
この実施例では、装置101は、通常は給電されずに休止(オフ)状態にある。ある時点で、虚血の存在に関してターゲット心筋を試験することが要求される。図2に示すように、外部モニタに接続した外部誘導コイル183が、装置101の埋め込み部位の上の胸壁への密接近傍部にもたらされる。図1に戻れば、誘導結合によって外部コイル183は、装置101内部に配置された誘導電源179内に電流を誘起させ、装置101が給電されて作動するのに十分な電力が生成される。光源103は、この場合は心筋であるターゲット125の照明を開始する。一部の実施形態では、埋め込み分光光度計であるセンサ155は、後方散乱光を受光し、入射光を虚血のマーカである波長によって分解する。この測定の結果は、送信ユニット167に送られ、例示的な実施形態におけるこのユニットは、感知信号を外部RFID受信機184に送信するRF送信機である。そこで、受信機184によって受信された信号は、外部モニタ313によって、虚血のマーカである末端毛細血管床内のヘモグロビンの酸素化度に関して処理することができ、これは、以下の実施例の節で収集されてプロットされたデータに示されている如くである。酸素化度を示すためのシステムの例は、米国特許第5、987、346号に説明されており、この特許は、本明細書において引用により組み込まれている。
【0050】
測定が完了した状態で、外部コイル183は、装置101から離すことができ、装置101は、給電が止められて休止状態に戻る。
【0051】
代替的な実施形態では、電源179は、外部コイルへ近接中に充電され、又は内部バッテリ電源を有することができ、外部コイル179が存在しない時に装置101が作動することを可能にする。その結果、送信ユニット167は、虚血の危険なレベルに応答するなどして直接に照会されることなく送信することができる。
【0052】
波長によって入射光を分解して送信ユニットに信号を送る光センサについて言及したが、ここで図3Aから図3Eを参照してより完全に以下に説明する。図3Aである1つの形態において、センサ155は、ただ単一フォトダイオード411及び処理電子装置413のみである。フォトダイオード411は、異なる時間又はフォトダイオード411及び処理ユニット電子装置413によって照射波長の復号化が可能とされる変調周波数で各々が発光する異なる波長のLEDのクラスターとしてLED105を設計することによって波長感受性とされる。代替的に、センサ155は、図3Bでの1組の異なるフォトダイオード421Aから421Nを含むことができ、各々は、フィルタ425Aから425Nを有して各フォトダイオードが1つの波長範囲にのみ感受性であることを可能にし、これも処理ユニット電子装置427を用いた波長による感知光の復号化が可能である。ここでもまた、代替的に、センサ155は、図3Cでの電子的可変フィルタ433を有する単一フォトダイオード431とすることができ、伝送される波長は、処理ユニット電子装置435によって選択されて処理することができる。
【0053】
更に図3Aから3Eを参照すると、他の構成においては、センサ155は、図3Dのその長さにわたって変化するフィルタ窓443を有するCCDチップ411とすることができ、ある一定の波長のみがCCD441の各部分に到達するようにされ、処理ユニット電子装置447による照明波長の復号化が可能である。最後に、図3Eである好ましい実施形態では、センサ155は、線形アレイの状態のCCD451に取り付けた光ファイバ453を有するCCDチップ451を含む。ファイバ453は、各ファイバが異なる干渉コーティングを端部454に有するようにして製造され、各ファイバが異なる狭い波長範囲を伝送するようにされ、処理ユニット電子装置457による照明波長の復号化が可能である。ファイバ453は、生体適合性であって装置ケース102の外側に延びることができ、装置101がモニタされるターゲットから離れて置かれ、かつファイバ453の自由端をターゲット125の近くに置くことができる。
【実施例1】
【0054】
実施例
本発明の用途の範囲は、実施例によって最も良く理解される。この実施例は、この装置の全ての用途及び応用の包括を全く意図せず、単に、当業者がこの装置の利用方法及び範囲をより良好に理解することができるケーススタディとして役立つことを意図している。
【0055】
この実施例では、装置101と基本的な作動が類似している光センサが、大腸手術を受けている罹患動物の腹部に埋め込まれる。この場合には、この動物には、心臓−肺臓バイパスが施され、それによって血流及び血液の酸素含量が動物自身の心臓及び肺臓によるのではなくバイパス専門家によって正確に制御され、任意に虚血を生成させて消失させる機能が提供される。組織への血液の供給を測定する大動脈ドップラープローブが設けられる。この場合には、ポンプの速度がゼロ流量にまで低減された時に、モニタされている組織に虚血が存在するはずである。
【0056】
組織虚血の解析が、広帯域可視差分分光法によって行われる。この技術においては、送信ユニットから送られた波長対強度曲線の1次差分(例えば)が処理されて局所組織による光散乱によって生じた影響の多くが除去され、得られた信号は、組織の既知の成分(ミオグロビン、毛細血管ヘモグロビン、又はチトクロム類のような)に対して当て嵌め誤差の最小二乗最小化を用いて解析される。
【0057】
測定される信号は、虚血の存在、非存在、又は危険性、又は強度の関数である。これは、多くの様々な医療分野で臨床上の意義及び応用を有し、それらには、例えば、組織死の切迫した危険性(上述の大腸の考察で見られるような)、臓器拒否反応の切迫した危険性(炎症が全体の血液含量を増加させ一方で潜在的な酸素化度の低下を生じさせるので)、心臓機能(改善された心臓機能は、組織虚血の全身的な改善並びに心筋虚血の有望な改善に関連するので)、動脈血管又は静脈血管の疾病に対する治療効果(組織酸化度効果へのこの処置のリアルタイムの影響が化学処置及び物理処置を導くための治療信号として使用することができるので)、腎障害の危険性(腎不全が、頻繁に急性又は慢性の酸素供給低下の結果であるので)、脳損傷の危険性(脳卒中が、頻繁に急性又は慢性の酸素供給低下の結果であるので)、大腸死の危険性(ベースラインを超えるストレスの時に、大腸は血液及び酸素供給を増加させるための大きい容量を持たないので)、手足切断の危険性(良好な毛細血管飽和度を有する手足は、治癒して切断を要しない可能性がより高いので)、潰瘍治癒の危険性(G.I.及び糖尿性潰瘍が、虚血だけが現在進行中の問題ではない時に、治癒する可能性がより高いので)、及び重篤な手足虚血(手足の救済は、可能ならば常により良いことであるが、虚血の解決を遅らせて、切断が要求される時に遅れた場合に患者に危険性を与えるので)がある。
【0058】
図4に示すように、段階的な虚血の生成が本発明によって検知される。グラフ601において、ドップラープローブによって検知された流量が横軸603にプロットされ、これに対して光学分光法を用いて本発明によって検知された虚血の存在が縦軸613にプロットされている。データは、標準誤差バーを有する平均値613としてプロットされる。グラフ601に見られるように、腸管への血流がゼロに低減された時、虚血の存在の検知は100%に上昇し、これは、データポイント617に示されている。
【0059】
流量/潅流の測定のみ又は血液酸素化度(組織酸素化度ではなくて動脈血の酸素化度)の測定のみでは、虚血の状態を検知するのに不十分であることを注意することが重要である。虚血は、血液酸素化度又は流量ではなく、局所組織酸素化度によって診断される。ある場合には、動脈血は、高度に酸素化する可能性があるが、この動脈血の組織への供給は不十分であり(血栓によるなど)、この場合には、組織は、実際には虚血であるが動脈血酸素化度は正常である。血流量も虚血の直接の尺度と異なっている。心臓−肺臓バイパスで冷却された患者においては、血流量は極めて低い場合があるが、しかし、低温によってその酸素要求が低下しているこの冷却した組織は虚血ではない。同様に、慢性的虚血心臓は、それ自体の酸素要求を低減するために「冬眠」し、低下した流量で虚血とならない場合がある。上述の動物試験の例においては、虚血に整合する低流量又はゼロ流量を可能にするように流量が十分に制御されたが、生体の非実験的対象においては、こうした結論は、常にはそれほど明確にすることはできない。
【0060】
また、上述の実施例においては、電力は、外部から装置に供給された。しかし、上述のように、一体化したバッテリ又はバッテリセットが装置内部から電力を供給することができ、接続チップのコストを低減することができる。このバッテリに基づく手法の付加的な利点は、付加的な安全機能として、それが光源への電気接続の必要性を排除することである。
【0061】
この実施例においては、組織から検知された信号は、毛細血管床に由来するヘモグロビン吸光度の信号である。吸光度は、ヘモグロビン解析のためには最適なものであるが、好ましい実施形態で説明したように、他の測定のためには他の相互作用が好ましい場合がある。コントラストを提供する照明光との相互作用としては、吸光度、偏光、旋光度、散乱、蛍光、ラマン効果、燐光、又は蛍光減衰を含むことができ、コントラスト効果の尺度は、1つ又はそれよりも多くのこれらの効果を合理的に含むことができる。他の組織成分も測定することができ、それらには、NADH、NADPH、それらの酸化型及び還元型でのチトクロム類、又は更に虚血又は酸素感受性色素も含まれる。次に、心臓のような筋肉をモニタする時、ミオグロビンは、その飽和度が虚血の存在又は非存在に関連する別の蛋白質である。そのような場合には、毛細血管内のヘモグロビン並びに心臓内のミオグロビンの組合せで又は心臓筋細胞内のミグロビンのみで、それを虚血のマーカとして役立たせることができる。最後に、局所虚血に感受性の注射可能色素は、ミトコンドリア膜の荷電に応答し、又は細胞内pHに応答する色の変化によるなどして、虚血の存在に直接関連する光学的信号を生成させるために使用することができる。インビボで細胞をラベル付けする色素のこのような使用は、いくつかの群によってインビボで明らかにされており、虚血(及び虚血の作用である疾患)を検知するために虚血感受性色素を本発明の使用に結合させることは、本発明の精神の範囲内と考えられる。
【0062】
本発明者は、広範囲のターゲット部位で定量的かつ有効な方式で局所組織虚血を検知するための埋め込み型虚血検出器を見出した。一部の実施形態においては、装置は、燐光体被覆白色LEDと、400nmから700nmの連続広帯域光を平行ビームの状態で生成し、次に、これがターゲット部位に直接伝送されるように構成された一体化平行化光学器械とを含んで提供される。ターゲット部位によって後方散乱された光は、センサによって収集されて、虚血の直接の尺度が判断され、引き続き送信ユニットによって送信することができる。電力は、内部電源によって供給され、この電源は、必要に応じてエネルギを供給するために埋め込まれた装置の近くにもたらされた外部誘導コイルによって、そのもの自体が給電される。埋め込み型装置全体は、埋め込まれている間の長期安全性を付加するために生体適合性のシェルによって封入される。単独に使用するか又は動脈血酸素化度、静脈血酸化度、又は更に血流の評価値とも組み合わせて、この装置は、初期埋め込み以外の付加的な侵襲なしに虚血の指標を判断することを可能にする。本発明の装置は、誘導技術及びRF結合を用いて問い合わせすることができる。この虚血システムを組込んだ埋め込み型装置及び使用医療的方法を説明した。この装置は、医療及び産業上の両方でいくつかの重要な問題に対する即時の適用性を有し、従って、当業技術における重要な進歩を構成するものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】白色LEDを組込み、本発明の実施形態に従って構成された埋め込み型組織虚血検出器の概略図である。
【図2】埋め込み型装置に電力を供給し、かつ組織虚血の存在又は程度に関する信号を受信するために外側モニタリングシステムに取り付けられた外部コイルの概略図である。
【図3A】光センサユニットの5つの例示的な概略図のうちの1つを示す図である。
【図3B】光センサユニットの5つの例示的な概略図のうちの1つを示す図である。
【図3C】光センサユニットの5つの例示的な概略図のうちの1つを示す図である。
【図3D】光センサユニットの5つの例示的な概略図のうちの1つを示す図である。
【図3E】光センサユニットの5つの例示的な概略図のうちの1つを示す図である。
【図4】本発明の実施形態に従って構成された医療モニタによってリアルタイムで収集されて解析された時の局所虚血をもたらす全身性低血流の期間中の生体被検体の大腸からのデータを示す図である。
【符号の説明】
【0064】
102 生体適合性シェル
105 白色LED
125 ターゲット部位
155 センサ
167 送信ユニット
179 内部電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットを光で照射するための光源と、
前記ターゲットからセンサ上に後方散乱された光を検知し、かつ虚血の存在又は程度の直接の関数である出力信号を提供するように構成されたセンサと、
前記出力信号を受信して該出力信号を送信するための送信ユニットと、
前記センサ、前記光源、及び前記送信ユニットにエネルギを供給するように構成された電源と、
埋め込みに関して生体適合性であるように構成された、前記電源、光源、センサ、及び送信ユニットを取り囲む外側シェルと、
を含むことを特徴とする埋め込み型装置。
【請求項2】
前記光源は、広帯域白色LEDであることを特徴とする請求項1に記載の埋め込み型装置。
【請求項3】
前記センサは、波長感受性であるように構成された線形CCDであることを特徴とする請求項1に記載の埋め込み型装置。
【請求項4】
前記出力信号は、組織毛細血管ヘモグロビン飽和度、細胞ミオグロビン飽和度、及び細胞内ミトコンドリアチトクロム飽和度を含む尺度のリスト内の少なくとも1つから選択された尺度の関数であることを特徴とする請求項3に記載の埋め込み型装置。
【請求項5】
前記出力信号は、差分分光法を用いて生成されることを特徴とする請求項3に記載の埋め込み型装置。
【請求項6】
前記電源は、電力を受け取るための誘導コイルであることを特徴とする請求項1に記載の埋め込み型装置。
【請求項7】
前記送信ユニットは、RF送信機、RFIDチップ、及び光ファイバのうちのいずれか1つ又はそれよりも多くから成ることを特徴とする請求項1に記載の埋め込み型装置。
【請求項8】
前記外側シェルは、臓器又は組織に埋め込むための完全密封された生体適合生シェルであることを特徴とする請求項1に記載の埋め込み型装置。
【請求項9】
前記外側シェルは、胃腸系を通過するための嚥下可能カプセルであることを特徴とする請求項1に記載の埋め込み型装置。
【請求項10】
組織虚血の前記尺度は、組織死の切迫した危険性、臓器拒否反応の切迫した危険性、心臓機能、動脈又は静脈血管の疾病に対する治療効果、腎障害の危険性、脳損傷の危険性、大腸死の危険性、手足切断の危険性、潰瘍治癒に対する危険性、又は重篤な手足虚血の危険性を含む機能のリストから選択された機能であることを特徴とする請求項4に記載の埋め込み型装置。
【請求項11】
生体組織の組織虚血をモニタするか又は検知する方法であって、
(a)ターゲット部位に発光及び検知装置を封入して埋め込む段階、
(b)前記発光装置からの可視光照射で前記部位を照射する段階、
(c)前記検知装置を用いて前記部位から戻る光を検知する段階、
(d)前記検知された光に基づいて組織虚血の関数である尺度を判断する段階、及び
(e)前記判断された尺度を送信する段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
(a)ターゲットを光で照射するための白色LED、
(b)前記ターゲットからCCD上に後方散乱された光を検知するように構成された波長分解型線形CCD、
(c)センサによって検知される前記光に基づいて、虚血の存在又は程度の関数である出力信号を判断するように構成されたセンサ、
(d)前記出力信号を受信して送信するためのRF送信機、
(e)前記LED、前記CCD、及び前記RF送信機にエネルギを供給するように構成された電力を受け取るための誘導コイル、及び
(f)前記LED、CCD、センサ、RF送信機、及び誘導コイルを収容し、埋め込みに関して生体適合性であるように構成された外側シェル、
を含むことを特徴とする埋め込み型装置。
【請求項13】
前記送信ユニットは、埋め込まれたペースメーカーにリアルタイムフィードバックの目的で直接に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の埋め込み型装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図3E】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−502360(P2009−502360A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524234(P2008−524234)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/029615
【国際公開番号】WO2007/016437
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(502453148)スペクトロス コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】