説明

埋設パイプラインの漏洩検査ガス混合装置、埋設パイプラインの漏洩検査方法

【課題】所望の成分割合を有する検査ガスを埋設パイプラインの漏洩検査を行う現場で即座に混合することができる。
【解決手段】埋設パイプラインの漏洩検査を行うために、埋設パイプラインに注入する検査ガスを混合する装置であって、第1成分ガスの供給源に接続される入口端10Aを有する第1流路10と、第2成分ガスの供給源に接続される入口端20Aを有する第2流路20と、第1流路10と第2流路20に連通して第1成分ガスと第2成分ガスの混合ガスが流通すると共に埋設パイプラインの注入口に接続される出口端30Aを備える混合流路30を備え、第1流路10は第1成分ガスの成分割合を設定する第1減圧弁11を備え、第2流路は第2成分ガスの成分割合を設定する第2減圧弁21を備え、第1減圧弁11と第2減圧弁21は互いの圧力制御室11a,21aが連通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設パイプラインの漏洩検査ガス混合装置、及びこれを用いた埋設パイプラインの漏洩検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震等の災害発生時には、ガス供給を行う埋設パイプラインは災害発生箇所の上流側でガスの流通を遮断する。その後災害発生箇所へのガス供給を再開するためには、ガス供給停止エリアの全体で埋設パイプラインの健全性を確認することが必要であり、広いエリアに亘ってガス供給を停止した場合には、速やかに埋設パイプラインの健全性を確認してガス供給停止から復旧に至るまでの時間をできる限り短縮することが求められている。
【0003】
これに対しては、ガス供給を停止した広いエリアを複数の比較的狭いエリアにブロック化し、埋設パイプラインの健全性が確認できた上流側のブロックから順次ガス供給を再開することで早期の復旧が可能になる。下記特許文献1に記載された災害時のガス供給工法によると、埋設パイプラインの漏洩・損傷箇所を探査し、特定された漏洩・損傷箇所の上流側に当たる全ての埋設パイプラインの選択箇所にガス遮断部材を充填することで、特定された漏洩・損傷箇所の上流側をブロック化することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−139039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の従来技術のように、広いガス供給停止エリアをブロック化した後には、ガス供給の上流側から順次各ブロック単位で埋設パイプラインの漏洩検査を行い、埋設パイプラインの健全性が確認されたブロック毎にガス供給を再開させる。ここでの漏洩検査は、各ブロック内の埋設パイプラインに検査ガスを注入し、検査ガスが注入された埋設パイプラインに対して地上でガス検知を行い、ガスが検知されないことで埋設パイプラインの健全性を確認する。
【0006】
この際に埋設パイプラインに注入される検査ガスは、二次的な被害を防ぐために非可燃性のガスを用いることが求められる。また一方で、既存のガス検知器で漏洩した検査ガスを容易に検知できるように、所定の割合で可燃ガスを含んでいることが求められる。このため、検査ガスは、可燃ガス(メタン)の割合が12%であり、窒素の割合が88%となる混合ガスが用いられ、その混合ガスの成分割合を高い精度で管理することが必要になる。
【0007】
しかしながらこれまでは、このような高精度の成分割合を有する検査ガスを埋設パイプラインの漏洩検査を行う現場で即座に得ることができず、求められる割合でメタンと窒素を容器内に混入し、その成分が容器内全体で安定するまで養生させることが行われていた。これによると、成分が安定するまでに時間がかかり、ブロック内での埋設パイプラインの漏洩検査を迅速に行うことができない問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、所望の成分割合を有する検査ガスを埋設パイプラインの漏洩検査を行う現場で即座に混合することができること、ブロック内での埋設パイプラインの漏洩検査を迅速に行い、ガス供給停止の早期復旧を実現可能にすること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0010】
埋設パイプラインの漏洩検査を行うために、埋設パイプラインに注入する検査ガスを混合する装置であって、第1成分ガスの供給源に接続される入口端を有する第1流路と、第2成分ガスの供給源に接続される入口端を有する第2流路と、前記第1流路と前記第2流路に連通して前記第1成分ガスと前記第2成分ガスの混合ガスが流通すると共に前記埋設パイプラインの注入口に接続される出口端を有する混合流路を備え、前記第1流路は前記第1成分ガスの成分割合を設定する第1減圧弁を備え、前記第2流路は前記第2成分ガスの成分割合を設定する第2減圧弁を備えており、前記第1減圧弁と前記第2減圧弁は互いの圧力制御室が連通していることを特徴とする埋設パイプラインの漏洩検査ガス混合装置。
【発明の効果】
【0011】
このような特徴を有する本発明は、所望の成分割合を有する検査ガスを埋設パイプラインの漏洩検査を行う現場で即座に得ることができ、ブロック内での埋設パイプラインの漏洩検査を迅速に行い、ガス供給停止の早期復旧を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る埋設パイプラインの漏洩検査ガス混合装置を示した説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る漏洩検査ガス混合装置の形態例を示した説明図である。図2(a)が正面図、図2(b),(c)が左右側面図、図2(d)が平面図を示している。
【図3】本発明の実施形態に係る漏洩検査ガス混合装置を用いた埋設パイプラインの漏洩検査方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る埋設パイプラインの漏洩検査ガス混合装置を示した説明図である。漏洩検査ガス混合装置1は、埋設パイプラインの漏洩検査を行うために、埋設パイプラインに注入する検査ガスを複数の成分ガスを混合することで製造する装置であって、第1流路10、第2流路20、混合流路30を備えている。
【0014】
第1流路10は、図示省略した第1成分ガスの供給源に接続される入口端10Aを有しており、第2流路20は、図示省略した第2成分ガスの供給源に接続される入口端20Aを有している。混合流路30は、第1流路10と第2流路20に連通しており、第1流路10を流れる第1成分ガスと第2流路20を流れる第2成分ガスの混合ガスが流通する流路である。混合流路30は、図示省略の埋設パイプラインにおける注入口に直接又は供給ホースなどを介して接続される出口端30Aを有している。
【0015】
第1流路10は第1成分ガスの成分割合を設定する第1減圧弁11を備えている。また、第2流路20は第2成分ガスの成分割合を設定する第2減圧弁21を備えている。そして、第1減圧弁11と第2減圧弁21は互いの圧力制御室11a,21aが連通路12によって連通している。
【0016】
図示の例では、第1流路10における第1減圧弁11の下流側と第2流路20における第2減圧弁21の下流側の両方に、流量調整手段13,22が備えられている。流量調整手段13,22は、図示のように第1流路10と第2流路20の両方に設けても、いずれか一方に設けてもよい。
【0017】
流量調整手段13は、切替弁13Aを介して2つの流路13B,13Cが設けられ、この2つの流路13B,13Cは下流側で合流して混合流路30に連通している。2つの流路13B,13Cのそれぞれには流量計13B1,13C1とニードル弁13B2,13C2が設けられている。流量調整手段22も同様であって、切替弁22Aを介して2つの流路22B,22Cが設けられ、2つの流路22B,22Cは下流側で合流して混合流路30に連通している。2つの流路22B,22Cのそれぞれには流量計22B1,22C1とニードル弁22B2,22C2が設けられている。
【0018】
図示の例では、第1流路10は第1減圧弁11を跨ぐバイパス流路14を備えている。バイパス流路14には第1減圧弁11と異なる設定圧の補助減圧弁15が設けられている。バイパス流路14は、連通路12に連通することで第1減圧弁11と第2減圧弁21の圧力制御室11a,21aに連通している。バイパス流路14には、連通路12との連通箇所の下流側に圧抜き弁16が設けられている。
【0019】
図示の例では、第1流路10と第2流路20の入口端10A,20Aの下流側には、圧力計元弁10B,20Bを介して圧力計10C,20Cが接続されており、更にブロー弁10D,20Dを介してベント流路10E,20Eが接続されている。また、第1流路10と第2流路20の圧力計元弁10B,20Bの下流側にはそれぞれ入口弁10F,20Fが設けられている。
【0020】
図示の例では、混合流路30にはミキサ(気体混合手段)31が設けられている。更には、混合流路30におけるミキサ31の下流側には、安全弁元弁32Aを介して安全弁32が接続されており、さらに下流には、ブロー弁33を介してベント流路34が接続されている。混合流路30におけるベント流路34の接続箇所の下流には減圧弁35が設けられ、その下流には、圧力計元弁36Aを介して圧力計36が接続され、更に下流には、リリーフ弁元弁37Aを介してリリーフ弁37が接続されている。更に、混合流路30におけるリリーフ弁37の下流側には出口弁38が設けられている。
【0021】
このような構成を備えた漏洩検査ガス混合装置1は、第1成分ガスの供給源を直接又はホースなどを介して第1流路10の入口端10Aに接続し、第2成分ガスの供給源を直接又はホースなどを介して第2流路20の入口端20Aに接続することで、第1成分ガスと第2成分ガスを設定された成分割合で混合した検査ガスを混合流路30の出口端30Aから得ることができる。
【0022】
ここでの第1成分ガスと第2成分ガスの成分割合は、第1減圧弁11と第2減圧弁21の設定圧で設定することができ、更に微細な成分割合の調整を流量調整手段13,22によって行うことができる。そして、漏洩検査ガス混合装置1は、第1減圧弁11の圧力制御室11aと第2減圧弁21の圧力制御室21aが連通路12によって連通していることで、第1減圧弁11と第2減圧弁21の減圧が連動して行われ、所望の成分割合を精度良く維持した状態で第1減圧弁11及び第2減圧弁21の下流側圧力を調整することができる。また、第1減圧弁11と第2減圧弁21の連動を電気的な制御に頼らないので、可燃ガスを扱う状況下において安全な装置を実現することができる。
【0023】
また、第1流路10はバイパス流路14を備えており、バイパス流路14には補助減圧弁15を設けており、第1減圧弁11の圧力制御室11aと第2減圧弁21の圧力制御室21aがバイパス流路14に連通しているので、第1成分ガス供給源や第2成分ガス供給源の供給圧が低下した場合にも、補助減圧弁15の設定圧によって第1成分ガスと第2成分ガスの成分割合を一定に維持することができる。更には、混合流路30には、第1成分ガスと第2成分ガスを混合するミキサ(気体混合手段)31を設けているので、混合流路30の出口端30Aでは所望の成分割合で均一な検査ガスを得ることができる。
【0024】
図2は、本発明の実施形態に係る漏洩検査ガス混合装置の形態例を示した説明図である。図2(a)が正面図、図2(b),(c)が左右側面図、図2(d)が平面図を示している。
【0025】
図示の例では、漏洩検査ガス混合装置1は、キャスター40付きの枠体41を備えている。枠体41は、箱形の空間を内部に備え、その空間内に第1流路10,第2流路20,混合流路30が配備されている。第1流路10の入口端10Aと第2流路20の入口端20Aは枠体41における一方の側面(右側面)に配置されている。また、混合流路30の出口端30Aは枠体41における他方の側面(左側面)に配置されている。図1と共通する部位には同一符号を付して重複説明を省略する。このようなキャスター40付きの枠体41内に第1流路10,第2流路20,混合流路30を配備することで、漏洩検査を行う作業現場への搬送が容易になる。
【0026】
漏洩検査ガス混合装置1によって得られる検査ガスの一例としては、第1成分ガスが窒素(N2)であり、第2成分ガスがメタン(CH4)である。また、第2成分ガスとしては圧縮天然ガスを用いることができる。そして、可燃性が無く、しかも既存のガス検知器で検知できるようにするために、検査ガスは、メタンの成分割合を12%(窒素の成分割合を88%)にしている。メタンの成分割合が13%以上になると可燃性ガスに分類されることになり、メタンの割合が11%未満になると一般的なガス検知器で検知し難くなる。したがって、検査ガスのメタン成分割合は12%に対して−1%以上,+0.5%未満の範囲で高精度且つ安定した状態に維持する必要がある。漏洩検査ガス混合装置1によると、窒素供給源とメタン供給源を漏洩検査の作業現場に配備し、これらを漏洩検査ガス混合装置1の入口端10A,20Aに接続するだけで、即座にメタン成分12%の検査ガスを高精度且つ安定的に得ることができる。
【0027】
以下に、図3に基づいて、本発明の実施形態に係る漏洩検査ガス混合装置1を用いた埋設パイプラインの漏洩検査方法について説明する。広いエリアでガス供給が遮断された後の復旧作業においては、まず、早期復旧が可能なエリアを選択してエリア内の埋設パイプラインに対してブロック化のための遮断処置を施す(S1)。そして、遮断された一つのブロック内において、埋設パイプラインに漏洩検査ガス混合装置1を用いて検査ガスを注入する(S2)。
【0028】
検査ガスを注入した埋設パイプラインに対して地上でガス漏洩検知を行う(S3)。この際には、ガス検知器を地表面に置いて、埋設パイプラインに沿って移動させることで埋設パイプラインから漏洩した検査ガスを捕捉する。埋設パイプラインの敷設距離が長い場合には、自転車等の移動手段にガス検知器を取り付けて移動しながら検査ガスの捕捉を行うことで迅速に作業を進めることができる。
【0029】
そして、ガス検知器で検査ガスが捕捉された場合(漏洩有りS4:YES)には、漏洩箇所を特定して掘削による修復工事を行い、再び、埋設パイプラインに検査ガスを注入して(S2)、地上でのガス漏洩検知を行う(S3)。ガス検知器で検査ガスが捕捉されなかった場合(漏洩有りS4:NO)には、ブロック内の上流側で埋設パイプラインのガス遮断を開放し、ブロック内のガス供給を再開する(S6)。その後は、次のブロックへの作業に移行する(S7)。
【0030】
本発明の実施形態に係る漏洩検査ガス混合装置1を用いた埋設パイプラインの漏洩検査方法によると、可燃性を有さないでしかも既存のガス検知器での検知が可能な12%メタンの検査ガスを作業現場で即座に得ることができる。これによって、安全且つ低コストの漏洩検査を迅速に行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0031】
1:漏洩検査ガス混合装置,
10:第1流路,10A,20A:入口端,10B,20B:圧力計元弁,
10C,20C:圧力計,10D,20D:ブロー弁,
10E,20E:ベント流路,10F,20F:入口弁,
11:第1減圧弁,11a:圧力制御室,
12:連通路,13,22:流量調整手段,14:バイパス流路,
15:補助減圧弁,16:圧抜き弁,
20:第2流路,
21:第2減圧弁,21a圧力制御室,
30:混合流路,30A:出口端,31:ミキサ(気体混合手段),
32:安全弁,33:ブロー弁,34:ベント流路,
35:減圧弁,36:圧力計,37:リリーフ弁,38:出口弁,
40:キャスター,41:枠体,

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋設パイプラインの漏洩検査を行うために、埋設パイプラインに注入する検査ガスを混合する装置であって、
第1成分ガスの供給源に接続される入口端を有する第1流路と、
第2成分ガスの供給源に接続される入口端を有する第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路に連通して前記第1成分ガスと前記第2成分ガスの混合ガスが流通すると共に前記埋設パイプラインの注入口に接続される出口端を有する混合流路を備え、
前記第1流路は前記第1成分ガスの成分割合を設定する第1減圧弁を備え、前記第2流路は前記第2成分ガスの成分割合を設定する第2減圧弁を備えており、前記第1減圧弁と前記第2減圧弁は互いの圧力制御室が連通していることを特徴とする埋設パイプラインの漏洩検査ガス混合装置。
【請求項2】
前記第1流路における前記第1減圧弁の下流側と前記第2流路における前記第2減圧弁の下流側の一方又は両方には、流量調整手段が備えられることを特徴とする請求項1に記載された埋設パイプラインの漏洩検査ガス混合装置。
【請求項3】
前記第1流路は前記第1減圧弁を跨ぐバイパス流路を備え、該バイパス流路には前記第1減圧弁と異なる設定圧の補助減圧弁が設けられ、
前記バイパス流路は前記第1減圧弁と前記第2減圧弁の圧力制御室に連通していることを特徴とする請求項1又は2に記載された埋設パイプラインの漏洩検査ガス混合装置。
【請求項4】
前記混合流路は、前記第1成分ガスと前記第2成分ガスを混合する気体混合手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された埋設パイプラインの漏洩検査ガス混合装置。
【請求項5】
前記第1成分ガスは窒素であり、前記第2ガスはメタンであり、前記混合流路の出口では、12%のメタンと88%の窒素が混合した検査ガスが得られることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された埋設パイプラインの漏洩検査ガス混合装置。
【請求項6】
前記第2成分ガスは、圧縮天然ガスを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された埋設パイプラインの漏洩検査ガス混合装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載された埋設パイプラインの漏洩検査ガス混合装置を用いた埋設パイプラインの漏洩検査方法であって、
前記混合流路の出口端をブロック化された埋設パイプラインの注入口に接続し、前記埋設パイプライン内に前記漏洩検査ガス混合装置で混合された検査ガスを注入する工程と、
前記検査ガスを注入した後に、ガス検知器を用いて前記埋設パイプラインに対して地上でガス漏洩を検知する工程とを有することを特徴とする埋設パイプラインの漏洩検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−75277(P2013−75277A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217925(P2011−217925)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(511237933)東京ガスケミカル販売株式会社 (1)
【Fターム(参考)】