説明

埋設管推進機のピンチ弁装置

【課題】帯水砂層を含む地盤を掘り込んだときに湧水が噴出してきても水および土砂を確実に止めることができ、しかもピンチ弁チューブの摩耗による消耗を最小限に抑え、長期間の耐用性を確保できるようにする。
【解決手段】先導管および埋設すべき管内にスクリューを挿通したケーシングを設け、前記スクリューの先端に取り付けられた掘削ヘッドにより地盤を掘削しながら地中に埋設管を推進するための推進機に組み込まれるピンチ弁装置において、ケーシング12内に形成される加圧エア室35に導入されたエアにより膨張しケーシング12とスクリュー14の間の通路を閉じるピンチ弁チューブ30を、ケーシング12に対して回転自在に取り付け、ピンチ弁チューブ30を開状態にするときにピンチ弁チューブ30を回転しないように固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設管推進機のピンチ弁装置に係り、特に、帯水砂層や砂礫層など湧水噴出の可能性のある地盤を施工する場合に、先導管の内部で緊急止水を施すためのピンチ弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地表を開削する替わりに、推進機で上・下水道管やガス管、電線管等の管を地中に埋設する推進工法が普及している。この種の推進機は、地表から掘り下げた立坑内に設置される。推進機からはスクリューが延び、このスクリューの先端に設けられた掘削ヘッドにより水平方向に地盤を掘削し、掘削した土砂はスクリューで立坑に排出される。かくして先導管に順次管を継ぎ足しながら、管を地中に推進することができる。
【0003】
管を推進していく地盤によっては、多量の湧水が存在している帯水砂層や砂礫層などからなる地盤を施工しなければならないことがある。このような地盤では、掘削ヘッドが帯水砂層に突き当たると、地盤から水が噴出し、先導管の内部に水と土砂を大量に取り込んでしまうという事態が発生することがある。
【0004】
水の噴出を放置していると、推進機を設置してある発進立坑が水没してしまうばかりでなく、地盤から必要以上の土砂が排出され、最悪の事態の場合、地盤沈下を引き起こしてしまうという事態に至る。
【0005】
そこで、帯水砂層を含む地盤に埋設管を推進していく施工工事では、水や土砂の止水対策が必要不可欠となる。
【0006】
従来から、止水対策として、カッタヘッドの後方にピンチ弁と呼ばれる止水弁を設けることが行われている。この種のピンチ弁は、カッタヘッドの後方位置で、スクリューのロッド部の周囲に当接するまで膨張可能なゴムなどを材質とする特殊なチューブを設けたものである。通常の掘削では、ピンチ弁は開いた状態になっており、土砂を搬送する通路が確保されている。他方、ピンチ弁に圧縮空気が送り込まれると、ピンチ弁チューブは膨張して土砂の搬送通路を閉じるので、噴出してきた水を止水したり、ピンチ弁チューブの開度を調整して土砂の搬送量を制限することができるようになっている。
【0007】
このようなピンチ弁に関する先行技術としては、例えば、特許文献1、特許文献2を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−208079号公報
【特許文献2】特開平9−78985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
閉じている状態では、ピンチ弁チューブは、スクリューのロッドに接触している状態にあるため、元来、ゴムなどの摩耗に弱い材料からなるピンチ弁チューブは、スクリューとの摩擦によって早期に消耗してしまい、放置しておくとピンチ弁が作動しなくなるという問題があった。
【0010】
また、ピンチ弁が配置された位置では、スクリューのロッドに羽根をつけることができないため、ピンチ弁の範囲に亘って羽根が欠如している。このため、相当互層を推進していく過程で搬送する土砂に粘性土が混じってくると、羽根のない部分で粘性土の塊が大きくなってゆき、やがて土砂の搬送通路を閉塞させてしまうという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、帯水砂層を含む地盤を掘り込んだときに湧水が噴出してきても水および土砂を確実に止めることができ、しかもピンチ弁チューブの摩耗による消耗を最小限に抑え、長期間の耐用性を確保できるようにした埋設管推進機のピンチ弁装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、ピンチ弁を配置した位置でも、スクリューに羽根を取り付けることが可能な構造にすることで、粘土が入り込んでも搬送通路の詰まりを防止できるようにした埋設管推進機のピンチ弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、本発明は、先導管および埋設すべき管内にスクリューを挿通したケーシングを設け、前記スクリューの先端に取り付けられた掘削ヘッドにより地盤を掘削しながら地中に埋設管を推進するための推進機に組み込まれるピンチ弁装置において、前記ケーシング内に形成される加圧エア室に導入されたエアにより膨張し前記ケーシングとスクリューの間の通路を閉じるピンチ弁チューブを、前記ケーシングに対して回転自在に取り付け、前記ピンチ弁チューブを開状態にするときに前記ピンチ弁チューブを回転しないように固定するようにしたことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明は、先導管および埋設すべき管内にスクリューを挿通したケーシングを設け、前記スクリューの先端に取り付けられた掘削ヘッドにより地盤を掘削しながら地中に埋設管を推進するための推進機に組み込まれるピンチ弁装置において、前記ケーシング内に形成される加圧エア室に導入されたエアにより膨張し、前記ケーシングとスクリューの間の通路を閉じるピンチ弁チューブと、前記ケーシングの内側で回転自在に支持され、前記ピンチ弁チューブを保持するとともに該ピンチ弁チューブの外周面との間に前記加圧エア室を形成する内筒部と、前記ピンチ弁チューブを開状態にするときに前記内筒部を回転しないように該内筒部を固定する回転ロック手段と、を具備したことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明は、先導管および埋設すべき管内にスクリューを挿通したケーシングを設け、前記スクリューの先端に取り付けられた掘削ヘッドにより地盤を掘削しながら地中に埋設管を推進するための推進機に組み込まれるピンチ弁装置において、前記ケーシングの内側で回転自在に支持され、前記ケーシングの内側に形成された加圧エア室に導入されたエアにより膨張し前記ケーシングとスクリューの間の通路を閉じるピンチ弁チューブを有し、前記ピンチ弁チューブの外周面に周方向に形成された複数の凸部を形成するとともに、前記ケーシングの内周面に前記凸部が係合可能な凹部を形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、帯水砂層を含む地盤を掘り込んだときに湧水が噴出してきても水および土砂を確実に止めることができ、しかもピンチ弁チューブの摩耗による消耗を最小限に抑え、長期間の耐用性を確保することができる。
【0017】
また、本発明によれば、ピンチ弁を配置した位置でも、スクリューに羽根を途切れなく取り付けることが可能になるので、粘土が入り込んでも搬送通路の詰まりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態によるピンチ弁装置が組み込まれた先導管を示す縦断面図である。
【図2】同ピンチ弁装置の縦断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるピンチ弁装置が閉じた状態にある先導管を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態によるピンチ弁装置を示す縦断面図である。
【図5】図5のV−V断面を示す横断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態によるピンチ弁装置が閉じた状態にある先導管を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明による埋設管推進機のピンチ弁装置の一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
第1実施形態
図1は、ピンチ弁装置が組み込まれた埋設管推進機の先導管を示す縦断面図である。図2は、本発明の第1実施形態によるピンチ弁装置の構成を示す縦断面図である。
【0020】
図1において、参照番号10は、先導管を示す。この先導管10は、地中に推進していく管の先端部に接続される。この先導管10の内側には、ケーシング12が挿通されている。そして、ケーシング12の内部には、掘削した土砂を排出するためにスクリュー14が挿通されている。スクリュー14には、羽根15が途中で欠如することなく螺旋状に連続している。スクリュー14の先端には、掘削ヘッド16が設けられており、この掘削ヘッド16は、軸受17によって回転自在に支承されている。掘削ヘッド16には複数のカッタービット18が取り付けられている。掘削ヘッド16はスクリュー14とともに回転しながら地盤を掘削し、土砂は刃口19からケーシング12内に取り込まれ、スクリュー14の羽根15によって後方に搬送されるようになっている。
【0021】
次に、図1において、参照番号20は、ピンチ弁装置の全体を示す。このピンチ弁装置20は、先導管10の内部において、ケーシング10の途中に組み込まれている。参照番号30は、ピンチ弁装置20の主要な構成要素であるピンチ弁チューブを示す。このピンチ弁チューブ30は、ゴム、合成ゴム、合成樹脂などの可撓性材料からなる膨張・収縮可能な円筒状の部材である。本発明の第1実施形態では、図2に示すように、先導管10のケーシング12の内側には、金属製の内筒部32が回転自在に取り付けられており、ピンチ弁チューブ30の両端部は、この内筒部32に対して押さえ部材33、33によって固定されている。
【0022】
内筒部32の前後両端側にはスラストブッシュ34、34が配置されている。このスラストブッシュ34、34はスラスト軸受として機能し、内筒部32とピンチ弁チューブ30とは一体的に回転自在に支持されるとともに、軸方向の位置が規制されている。
【0023】
図1に示されるように、ピンチ弁チューブ30の内側にあっても、スクリュー14の羽根15は途切れずに連続して形成されている。図1では、開いている状態のピンチ弁チューブ30が表されている。スクリュー14の羽根15の外径よりも、ピンチ弁チューブ30の内径の方が大きくなっており、これによって、ピンチ弁チューブ30とスクリュー14の間には土砂を搬送する通路が確保されている。
【0024】
他方、ケーシング10の内周面と内筒部32の外周面との間には、円環状に加圧エア室35が形成されている。この加圧エア室35には、エア管36を通じて高圧のエアが供給される。また、内筒部32には複数の貫通穴37が周方向に形成されており、加圧エア室35から貫通穴37を流れた高圧エアはピンチ弁チューブ30を半径方向内側に膨張させるようになっている。
【0025】
ピンチ弁装置20では、高圧エアによってピンチ弁チューブ30が膨張して、その一部がスクリュー14に押し付けられた状態が閉で、加圧エア室35に高圧エアが供給されておらず、ピンチ弁チューブ30は円筒状の初期形状を保持している状態が開である。なお、参照番号38、39は、高圧エアが漏出しないようにするシール部材をしている。
【0026】
次に、図2において、参照番号40は、内筒部32が回転しないように固定する回転ロック手段を構成する単動式のエアシリンダを示している。このエアシリンダ40では、ロッド側にシリンダ室41が形成されており、エア管36から分岐したエア通路42から高圧のエアがシリンダ室41に供給されるようになっている。また、エアシリンダ40には、スプリング43が収容されており、このスプリング43は、ピストン44を弾性力で常時前進させる方向に付勢している。シリンダ室41に高圧エアが供給されると、高圧エアはスプリング43の弾性力に抗してピストン44を後退させ、シリンダ室41が開放されると、スプリング43の弾性力によってピストン44が押され、ピストンロッド45の先端部は内筒部32の外周面に強く押し付けられるようになっている。
【0027】
ピンチ弁チューブ30が開状態になっているときは、シリンダ室41に高圧エアは供給されていないので、スプリング43の弾性力で付勢されたピストンロッド45が内筒部32をロックした状態になっている。
【0028】
次に、以上のように構成されるピンチ弁装置の作用について説明する。
【0029】
通常の掘削時には、図1に示すようにピンチ弁装置20は開いた状態にある。このとき、加圧エア室35には高圧のエアは供給されておらず、ピンチ弁チューブ30は膨張していないので、ケーシング12とスクリュー14の間では土砂の搬送路が連続している。
【0030】
また、回転ロック手段を構成しているエアシリンダ40では、スプリング43の弾性力によってピストンロッド45はピンチ弁チューブ30を保持する内筒部32に対して押し付けられており、内筒部32と一体のピンチ弁チューブ30は回転を阻止されたロック状態にある。したがって、掘削が進行している間、ピンチ弁チューブ30はケーシング12に固定されている状態になっている。
【0031】
掘削を続けて粘性土質の地層と砂礫層の互層を推進していく場合、掘削ヘッド16により掘削された粘性土がケーシング12内に取り込まれる。この場合、ピンチ弁チューブ30の配置部位でもスクリュー14の羽根15は途切れることなく連続しているので、羽根15の土砂搬送作用はピンチ弁チューブ30の内側にある土砂にも及ぶことになる。これにより、粘性土を含む土砂が塊になって土砂搬送路を閉塞させてしまうような事態を確実に防止し、土砂をスクリュー14によって後方に円滑に搬送することができる。
【0032】
回転ロック手段を構成しているエアシリンダ40では、ピンチ弁装置20による閉止と同時に、シリンダ室41に高圧のエアが供給され、スプリング43の弾性力に抗してピストン44が後退するので、それまで回転しないようにロックされていたピンチ弁チューブ30は、ロックを解除されてフリーに回転できる状態になる。
【0033】
図3に示すように、膨張しているピンチ弁チューブ30では、土砂搬送通路を塞ぐために膨張部の先端はスクリュー14に圧接している状態にある。したがって、スクリュー14の回転といっしょにピンチ弁チューブ30と内筒部32とが一体で回転するので、ピンチ弁チューブ30とスクリュー14の間には摺動摩擦が生じることはない。このため、ピンチ弁チューブ30の摩耗、消耗を最小限に抑制することができる。これによって、スクリュー14が摺動する従来のピン弁チューブのように早期に損傷してしまうような不都合をなくし、長期間に亘る耐用性を確保することができる。なお、閉じたピンチ弁チューブ30はスクリュー14と一体に回転することになるので、スクリュー14の羽根15との相対的な位置関係は変わらない。本実施形態のようにスクリュー14の全体に途切れることなく羽根15が形成されていても、ピンチ弁チューブ30の回転を阻害することはなく、ピンチ弁チューブ30と羽根15との間に相対的な摺動が生じることもない。
【0034】
地盤からの湧水が止まれば、加圧エア室35は開放されて、ピンチ弁チューブ30は収縮して図1に示す形状に復元し、ケーシング12とスクリュー14の間の土砂搬送路は開通することになる。また、回転ロック手段を構成しているエアシリンダ40では、スプリング43の弾性力でピストンロッド45が内筒部32に押し付けられるので、内筒部32の一体のピンチ弁チューブ30はその回転がロックされる。以後、通常の掘削が再開される。
【0035】
第2実施形態
次に、本発明に係るピンチ弁装置の第2の実施形態について、図4乃至図6を参照しながら説明する。
この第2実施形態によるピンチ弁装置48は、第1実施形態のピンチ弁装置20の構成要素である内筒部32と、エアシリンダ40を設ける替わりに、ピンチ弁チューブ30の形状を利用して、ピンチ弁チューブ30の回転をロックするようにした実施形態である。
【0036】
図4において、ピンチ弁チューブ30の両端部は保持部材50、51に固定されている。保持部材50、51の端面はスラストブッシュ52、53に当接するようになっている。このスラストブッシュ52、53はピンチ弁チューブ30を支承するスラスト軸受として機能し、ピンチ弁チューブ30を回転自在に支持するとともに、軸方向の位置を規制している。
【0037】
図4に示されるように、ピンチ弁チューブ30の内側にあっても、スクリュー14の羽根15は途切れずに連続して形成されている。図4では、開いている状態のピンチ弁チューブ30が表されている。スクリュー14の羽根15の外径よりも、ピンチ弁チューブ30の内径の方が大きくなっており、これによって、ピンチ弁チューブ30とスクリュー14の間には土砂を搬送する通路が確保されている。
【0038】
他方、ケーシング12の内周面とピンチ弁チューブ30の外周面との間には、円環状の加圧エア室54が形成されている。この加圧エア室54には、エア供給口55に接続されるエア管56を通じて高圧のエアが供給される。
【0039】
この実施形態では、図5に示されるように、ケーシング10において加圧エア室54を形成している内周面には、複数の凹部58が一定の間隔で周方向に形成されている。そして、ピンチ弁チューブ30の外周面には、図4に示されるように、複数の凸部60が一定の間隔で周方向に形成されており、この第2実施形態では、これらケーシング10に形成された凹部58と、ピンチ弁チューブ30に形成された凸部60の組み合わせによって、ピンチ弁チューブ30の回転をロックするロック手段を構成している。
【0040】
ピンチ弁チューブ30を閉にするために、加圧エア室54に高圧エアが供給されると、その高圧エアはピンチ弁チューブ30を半径方向内側に向けて膨張させるので、このときピンチ弁チューブ30の凸部60がケーシング10側の凹部58から外れてロックが解除され、ピンチ弁チューブ30は回転できる状態になる。
【0041】
通常の掘削時には、ピンチ弁チューブ30は開状態になっている。加圧エア室54には高圧エアは供給されていないため、ピンチ弁チューブ30は膨張していない。このとき、ピンチ弁チューブ30の凸部60は、ケーシング10側の凹部58に係合しているため、ピンチ弁チューブ30の回転はロックされた状態になっている。したがって、掘削が進行している間、ピンチ弁チューブ30はケーシング12に対して固定されている状態になっている。
【0042】
掘削する地盤によっては、粘性土質の地層と砂礫層の互層を推進していくことがある。この場合、掘削ヘッド16により掘削された粘性土がケーシング12内に取り込まれることになる。ピンチ弁チューブ30の配置部位でもスクリュー14の羽根15は連続しているので、羽根15の土砂搬送作用はピンチ弁チューブ30の内側にある土砂にも及ぶことになる。これにより、粘性土を含む土砂が塊になって土砂搬送路が詰まって閉塞されてしまうような事態を確実に防止し、土砂をスクリュー14によって後方に円滑に搬送することができる。
【0043】
一方、掘削する地盤が帯水砂層や砂礫層で湧水の可能性が高い地盤である場合、掘削中に大量の湧水がケーシング12内に流入するという事態が発生することがある。
このような事態が生じた時は、加圧エア室54に高圧のエアを供給すると、図6に示すように、ピンチ弁チューブ30は膨張して、ケーシング12とスクリュー14の間の搬送通路を閉じ、湧水および土砂の流入を確実に阻止することになる。
【0044】
そしてピンチ弁チューブ30が膨張している状態では、凸部60がケーシング12の凹部58から離脱しているのでロックは解除されており、ピンチ弁チューブ30はフリーに回転することができる。
【0045】
したがって、スクリュー14の回転といっしょにピンチ弁チューブ30は一体で回転するので、ピンチ弁チューブ30とスクリュー14の間には摺動摩擦が生じることがない。このため、ピンチ弁チューブ30の摩耗、消耗を最小限に抑制することができ、長期間に亘る耐用性を確保できる。
【0046】
地盤からの湧水が止まれば、加圧エア室54は開放されて、ピンチ弁チューブ30は収縮して図4に示す形状に復元し、土砂搬送路は開通することになる。また、ピンチ弁チューブの凸部60はケーシング12の凹部58に係合するので、ピンチ弁チューブ30はその回転がロックされる。以後、通常の掘削が再開される。
【符号の説明】
【0047】
10…先導管、12…ケーシング、14…スクリュー、15…羽根、16…掘削ヘッド、20…ピンチ弁装置、30…ピンチ弁チューブ、32…内筒部、34…スラストブッシュ、35…加圧エア室、40…エアシリンダ、41…シリンダ室、43…スプリング、45…ピストンロッド、54…加圧エア室、58…凹部、60…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先導管および埋設すべき管内にスクリューを挿通したケーシングを設け、前記スクリューの先端に取り付けられた掘削ヘッドにより地盤を掘削しながら地中に埋設管を推進するための推進機に組み込まれるピンチ弁装置において、
前記ケーシング内に形成される加圧エア室に導入されたエアにより膨張し前記ケーシングとスクリューの間の通路を閉じるピンチ弁チューブを、前記ケーシングに対して回転自在に取り付け、前記ピンチ弁チューブを開状態にするときに前記ピンチ弁チューブを回転しないように固定するようにしたことを特徴とする埋設管推進機のピンチ弁装置。
【請求項2】
先導管および埋設すべき管内にスクリューを挿通したケーシングを設け、前記スクリューの先端に取り付けられた掘削ヘッドにより地盤を掘削しながら地中に埋設管を推進するための推進機に組み込まれるピンチ弁装置において、
前記ケーシング内に形成される加圧エア室に導入されたエアにより膨張し、前記ケーシングとスクリューの間の通路を閉じるピンチ弁チューブと、
前記ケーシングの内側で回転自在に支持され、前記ピンチ弁チューブを保持するとともに該ピンチ弁チューブの外周面との間に前記加圧エア室を形成する内筒部と、
前記ピンチ弁チューブを開状態にするときに前記内筒部を回転しないように該内筒部を固定する回転ロック手段と、
を具備したことを特徴とする埋設管推進機のピンチ弁装置。
【請求項3】
前記回転ロック手段は、前記内筒部を押圧可能なピストンロッドを回転ロック位置に保持するスプリングが収容されているエアシリンダからなることを特徴とする請求項2に記載の埋設管推進機のピンチ弁装置。
【請求項4】
前記エアシリンダには、前記加圧エア室に供給されるエアが分配され、ピンチ弁チューブを閉状態にすると同時にピストンロッドをロック解除位置に戻すようにしたことを特徴とする請求項3に記載の埋設管推進機のピンチ弁装置。
【請求項5】
前記内筒部は、該内筒部の軸方向の位置決めをするスラスト軸受部により回転自在に支持されたことを特徴とする請求項2に記載の埋設管推進機のピンチ弁装置。
【請求項6】
先導管および埋設すべき管内にスクリューを挿通したケーシングを設け、前記スクリューの先端に取り付けられた掘削ヘッドにより地盤を掘削しながら地中に埋設管を推進するための推進機に組み込まれるピンチ弁装置において、
前記ケーシングの内側で回転自在に支持され、前記ケーシングの内側に形成された加圧エア室に導入されたエアにより膨張し前記ケーシングとスクリューの間の通路を閉じるピンチ弁チューブを有し、前記ピンチ弁チューブの外周面に周方向に形成された複数の凸部を形成するとともに、前記ケーシングの内周面に前記凸部が係合可能な凹部を形成したことを特徴とする埋設管推進機のピンチ弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−246887(P2011−246887A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118376(P2010−118376)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【Fターム(参考)】