説明

基体データ管理システム

【課題】各種カード、紙幣や有価証券等の財産的価値の高いプレート状またはシート状の対象物に記録された特定データをリアルタイムに把握でき、流通する紙幣等を管理し、追跡することができる基体データ管理システムを提供する。
【解決手段】基体データ管理システム100は、基体10に記録されている特定データを磁界結合を介して共振周波数を読み取る読取手段203と、読取手段によって読み取った特定周波数データと装置情報を送る送信手段205とを備えた基体データ読取装置201と、基体データ読取装置からネットワーク300を介して送られてくる特定周波数データと装置情報を受信するデータ受信手段102と、データ受信手段によって受信した特定データと装置情報を記憶する記憶手段103と、記憶手段によって記憶されたデータを加工したり他のデータと照合して出力する出力手段104とを備えたホストコンピュータ101とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基体データ管理システムに関し、特に、RFパウダーを有する基体が持つ特定データを読み取り、記憶し、管理し、さらに流通する紙幣等の基体を追跡するのに好適な基体データ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ICタグはユビキタス時代の入り口にある商品と考えられている。RF−ID(超小型無線認識)として名札やスイカカード、FeRAMカードなど、以前から開発が行われている。ICタグの市場は将来必ず大きいものに成長すると、多数の人が期待している。しかし、未だに期待しているほどには市場は育っていない。その理由として、価格とセキュリティー、機密の問題など、社会的に解決しなくてはならない課題があるからである。
【0003】
またRF−IDの技術は、紙幣や有価証券等の財産的価値を有する書面の識別への応用も考えられる。紙幣の偽造などが問題となっており、それらの問題を解決するための方法として、ICタグを紙幣等に埋め込むことが考えられる。しかしながら、ICタグの価格が高いことやサイズが大きいために上記のことが実現するには至っていない。
【0004】
ICタグの価格は、ICタグチップのサイズを小さくすることにより安くすることができる。それは、ICタグチップのサイズを小さくすれば、1枚のウェハから得られるICタグチップの数量を多くすることができるからである。現在までに、0.4mm角のICタグチップが開発されている。このICタグチップは、チップ内の128ビットのメモリデータを2.45GHzのマイクロ波で読み取ることができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
一方、偽造された紙幣の出所場所やその使用者を追跡するためのシステムとして、紙幣毎に区別して記録された特定データを読み取り、保存して、紙幣の出所データを追跡管理することができる紙葉類データ管理システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この紙葉類データ管理システムでは、紙幣に記録された特定データを読取装置で読み取り、記憶し、紙幣をその装置から回収するときに、記憶された特定データも紙幣の移送するところに移送するものであった。
【特許文献1】特開平11−328493号公報
【非特許文献1】宇佐美光雄、『超小型無線ICタグチップ「ミューチップ」』、応用物理、Vol.73、No.9、2004、p.1179−p.1183
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されるデータ管理システムでは、紙幣が読取装置から回収されるときに、特定データを、紙幣と共に、移送する形態を取っているため、回収先において初めて偽造紙幣を利用したことが把握することができるシステムであった。そのため、紙幣の特定データを読み取った時点で、その特定データをリアルタイムに把握、管理することができず、管理者は、偽造紙幣が使用されたことを迅速に把握することは困難であった。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題を鑑み、各種カード、紙幣や有価証券等の財産的価値の高いプレート状またはシート状の対象物に記録された特定データをリアルタイムに把握でき、流通する紙幣等を管理し、追跡することができる基体データ管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る基体データ管理システムは、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
【0009】
基体データ管理システムは、基体に固定された粒子の特定データを読み取る読取手段、読取手段によって読み取った特定データおよび読取装置情報を送る送信手段を備えた基体データ読取装置と、基体データ読取装置からネットワークを介して送られてくる特定データと装置情報を受信するデータ受信手段、データ受信手段によって受信された特定データと装置情報を記憶する記憶手段、記憶手段によって記憶されたデータを目的に応じて加工して出力する出力手段を備えたコンピュータとを備えるように構成される。
【0010】
上記の構成において、基体はRFパウダーを有しており、RFパウダーに含まれるRFパウダー粒子は、外部から与えられる高周波電磁界に感応するアンテナ回路素子を有している。
【0011】
上記の構成において、好ましくは、基体は紙またはプラスチックからなる。さらに基体は紙幣である。
【0012】
上記の構成において、好ましくは、特定データは、RFパウダー粒子内のアンテナ回路素子によって与えられる周波数データある。
【0013】
上記の構成において、好ましくは、装置情報は、基体データ読取装置のIDと設置場所情報と読み取り日時情報を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基体から与えられる特定のデータを読み取り、その特定データと装置情報を送信する基体データ読取装置と、基体データ読取装置からネットワークを介して送られてくる特定データと装置情報を受信し、記憶し、必要に応じて出力するコンピュータとを備えたため、各種カード、紙幣や有価証券等の財産的価値の高いプレート状またはシート状の対象物から与えられる特定データをリアルタイムに把握でき、管理することができる。それにより、管理者は、流通する紙幣等をリアルタイムで追跡でき、偽造紙幣等が使用された場合には、これを迅速に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る基体データ管理システムの全体的構成を説明するための図である。図1に示すように、基体データ管理システム100は、例えばホストコンピュータ101(一般的にはコンピュータ101)と、例えば2台の基体データ読取装置201,202とがネットワーク300で接続された構成を有している。図1の例では、基体データ読取装置の個数が2台であるが、実際には所要の箇所に多数の基体データ読取装置が設けられ、ネットワーク300に接続されている。ネットワーク300は代表的にはインターネットである。
【0017】
基体データ読取装置201,202は、それぞれ、紙幣等のシート状基体に記録されている特定データを読み取る読取部203,204と、読取部203,204によって読み取った特定データと装置情報を送る送信部205,206とを備えている。ここで、特定データとは、後述のようにRFパウダーを形成する多数のRFパウダー粒子の各々によって与えられる情報(周波数データ等の特定データ)、RFパウダー粒子の基体における配置に関するデータである。また装置情報とは、基体データ読取装置203,204のIDと設置場所情報と読み取り日時情報である。
【0018】
上記の基体データ読取装置201,202は、基体データ管理システム100の単なる端末装置として構成することもできるし、端末機能を有しかつネットワークと接続して通信機能を有する独立したコンピュータ(PC)として構成することもできる。
【0019】
ホストコンピュータ101は、基体データ読取装置201,202からネットワーク300を介して送られてくる特定データと装置情報を受信するデータ受信部102と、データ受信部102によって受信された特定データと装置情報を記憶する記憶部103と、記憶部103によって記憶されたデータを出力する出力部104とを備えている。出力部104は、例えば表示画面やプリンタ等である。また、ホストコンピュータ101は、記憶部103に記憶された情報を検索し、出力部104からその検索結果をそのまま、あるいは加工して出力するための命令を入力するための入力部105を備えている。
【0020】
この基体データ管理システム100では、例えば、基体データ読取装置201で紙幣を読み取らせる。それにより、読取部203により、紙幣等の基体に記録された特定データが読み取られ、送信部205からネットワーク300を介して、特定データと共に、IDと設置場所情報と読み取り日時情報を含む装置情報がホストコンピュータ101に送られる。ホストコンピュータ101は、送られた特定データと装置情報をデータ受信部102により受信し、記憶部103に記憶する。記憶された特定データと装置情報は、表示が必要な場合は出力部104により、表示画面に表示され、またはプリンタから出力される。それにより、紙幣等の基体がどの装置により、いつ、どこで、読み取られたかがリアルタイムに把握でき、また、特定データにより、その紙幣が偽紙幣かどうかも把握することができる。また、特定の紙幣等の基体の特定データを指定することにより、ホストコンピュータ101の記憶部103に記憶される特定データと装置情報を検索すると共に、必要な他のデータと照合することにより、どのルートでその紙幣が流通しているかを追跡することができ、紙幣等の基体を中央管理局で容易にかつ正確に管理することができる。
【0021】
なおここでは、基体データ読取装置は、2台設けた例を示したが、それに限らず、基体データ読取装置が2台以上でも同様のシステムを構築することが可能であることは言うまでもない。
【0022】
次に、図2を参照して、この基体データ管理システムにおいて用いられる紙幣等の基体について説明する。図2は、本発明の基体データ管理システムで用いられるRFパウダー含有基体を示す斜視図である。図2は、拡大して示しており、紙からなる基体10に一例として1種類の多数のRFパウダー粒子11が表面に印刷手法等で配置されている様子を示している。ここでは、基体10の例として紙幣を用いる。RFパウダー粒子11は、色のついた印刷インクと共に表面に配置され、配置は文字や数字を表現するようにしており、図2では、一例として「P」の文字が描かれている。RFパウダー粒子11は、1種類の周波数の高周波電磁界に感応する特性を有している。
【0023】
上記RFパウダー粒子11は、実際には、多数のRFパウダー粒子により粉状体の使用態様にて集合的にて取り扱われ、RFパウダーを構成する。RFパウダー粒子11はシート状の形状を有する基体10の表面に「P」の文字を描くように分散的に広がって存在している。上記のごとく、表面または内部等に存在する多数のRFパウダー粒子を配置等して成る基体10を「RFパウダー含有基体10」と呼ぶことにする。
【0024】
また上記の「RFパウダー」とは、パウダー(粉状体)を形成する多数(大量)の粒子の各々が無線(高周波電磁界)を介して外部のリーダ(読取部203,204)との間で信号の送受を行う電気回路要素を有し、通常の使用態様が集合的形態であるパウダーとして使用されるものを意味する。
【0025】
次に、図3〜図5を参照して、多数のRFパウダー粒子(11)のうちの1つ分の具体的構造をRFパウダー粒子21として説明する。
【0026】
図3はRFパウダー粒子の外観斜視図を示し、図4はRFパウダー粒子の平面図を示し、図5は図4におけるA−A線断面図を示している。図5の縦断面図においてRFパウダー粒子はその厚みを誇張して示している。
【0027】
図3において、RFパウダー粒子21は、好ましくは、立方体またはこれに類似した板状の直方体の形状を有し、外側表面での複数の矩形平面に関して、最長辺を含む矩形平面が好ましくは0.30mm角以下の大きさを有し、より好ましくは0.15mm角以下の大きさを有する3次元的な形状を有している。この実施形態のRFパウダー粒子21は、図4に示すように、その平面形状が正方形になるように形成されている。RFパウダー粒子21では、正方形の平面形状において、例えば図4中の一辺Lが0.15mm(150μm)となっている。
【0028】
RFパウダー粒子21では、シリコン(Si)等の基板22上に絶縁層23(SiO等)を形成し、この絶縁層23の上に複数巻きのコイル24(インダクタンス要素)とコンデンサ(またはキャパシタ)25(キャパシタンス要素)とが成膜技術によって形成される。絶縁層23の厚みは例えば10μm程度である。コンデンサ25は、2つの部分25a,25bから構成されている。
【0029】
絶縁層23上に形成されたコイル24とコンデンサ25は、特定の周波数(例えば2.45GHz)の高周波磁界に結合して共振する機能を有している。コイル24は、図3または図4に示されるように、RFパウダー粒子21の正方形の平面形状の各辺に沿って、1本の導体配線を例えば三重巻きにすることにより形成されている。コイル24を形成する導体配線の材質は例えば銅(Cu)である。コイル24の両端部は所要の面積を有する正方形のパッド24a,24bとなっている。2つのパッド24a,24bは、それぞれ、コイル24の交差部分を間において内周側と外周側に配置されている。2つのパッド24a,24bを結ぶ方向は、コイル24の交差部分に対して直交する方向となっている。パッド24a,24bのそれぞれは、コンデンサ25の2つの部分25a,25bの上側電極として機能する。
【0030】
上記において、コイル24の巻数と長さは目的の共振周波数を得るために任意に設計することができる。またコイル24の形状も任意に変更することができる。同様にコンデンサのパッド電極、パッド電極にはさまれる誘電体とその厚みも目的の周波数に合わせて設計できる。
【0031】
コンデンサ25は、本実施形態の場合には、例えば2つのコンデンサ要素25a,25bから構成されている。コンデンサ要素25aは、上側電極24aと下側電極26a(アルミニウム(Al)等)とそれらの間に位置する絶縁膜27(SiO等)とから構成されている。下側電極26aは上側電極24aとほぼ同形の電極形状を有している。絶縁膜27によって上側電極24aと下側電極26aは電気的に絶縁されている。またコンデンサ要素25bは、上側電極24bと下側電極26bとそれらの間に位置する絶縁膜27とから構成されている。この場合にも、同様に、下側電極26bは上側電極24bとほぼ同形の電極形状を有して、絶縁膜27によって上側電極24bと下側電極26bは電気的に絶縁されている。
【0032】
コンデンサ要素25a,25bの各々の下側電極26a,26bは導体配線26cで接続されている。実際には、2つの下側電極26a,26bと導体配線26cは一体物として形成されている。またコンデンサ要素25a,25bの各々の絶縁膜27は共通の一層の絶縁膜となっている。絶縁膜27の厚みは例えば30nmである。絶縁膜27は、2つのコンデンサ要素25a,25bの間の領域において、下側電極26a,26bの間を接続する導体配線26cと、コイル24とを電気的に絶縁している。
【0033】
上記の構成によって、コイル24の両端部の間には、電気的に直列に接続された2つのコンデンサ要素25a,25bで作られるコンデンサ25が接続されることになる。ループを形成するように接続されたコイル24とコンデンサ25とによってタンク回路(LC共振回路)が形成される。タンク回路は、その共振周波数に一致する周波数を有する高周波電磁界に感応する。
【0034】
なお図5から明らかなように、RFパウダー粒子21の表面の全体はP−SiN膜28により被覆されている。P−SiN膜28は、RFパウダー粒子21におけるタンク回路が形成されている側の表面を保護している。
【0035】
上記において、コンデンサ25は2つのコンデンサ要素25a,25bで構成したが、これに限定されず、いずれか一方による1つのコンデンサ要素で作ることもできる。コンデンサ25の容量値は、電極の面積と誘電体、その厚みを調整することにより目的の周波数に合わせて適宜に設計することができる。複数のコンデンサを並列に配置することにより適宜に設計することもできる。
【0036】
以上の構造を有するRFパウダー粒子21は、基板22の表面における絶縁面上にループ状に接続された複数巻のコイル24とコンデンサ25とから成るタンク回路を有するので、目的の周波数を得るため、一定の与えられた大きさに対して任意に設計できる。当該タンク回路の共振周波数で決まる高周波電磁界のみに感応する作用を有することになる。このようにして、RFパウダー粒子21は設計された周波数の磁界に結合して共振する「パウダー回路要素」として機能する。
【0037】
また絶縁層23の上に形成されたコイル24とコンデンサ25は、基板22の表面部分との間では、電気的配線で接続される関係を有していない。すなわち、基板22の上に堆積された絶縁層23にはコンタクトホールが形成されず、コンタクト配線が形成されてない。コイル24とコンデンサ25から成るタンク回路は、シリコン基板22から電気的に絶縁された状態で作られている。コイル24とコンデンサ25から成るタンク回路は、基板22から分離された状態で、その回路自身だけで共振回路として構成される。
【0038】
上記のRFパウダー粒子21で、土台の基板22はシリコン基板であり、その表面に絶縁層23が形成されているが、基板についてはシリコン基板の代わりに例えばガラス、樹脂、プラスチックス等の誘電体(絶縁体)を利用した基板を用いることができる。ガラス基板等を用いる場合には、本来的に材質は絶縁体(誘電体)であるので、絶縁層23を特別に設ける必要はない。
【0039】
なお図3に示されたRFパウダー粒子21の形状および構造は図示されたものに限定されず、任意に変更することができる。
【0040】
次に、図6〜図8を参照して本発明の実施形態に係るRFパウダー含有基体10の実際の使い方、およびその作用を説明する。基体10への適用では、前述した例えば基体データ読取装置201での特定データの読み取りが実行される。なお基体データ読取装置202は基体データ読取装置201と同じ構成・作用を有する装置であるため、その説明を省略する。
【0041】
図2で説明したように、紙幣等のシート状の基体10は、相当な数のRFパウダー粒子(11)をその表面に配置している。図6では、基体10の厚みを誇張し拡大して示している。基体10にRFパウダー粒子11を付加するときには、RFパウダーを含んだ接着固定剤入りの水溶液(インキやペンキ等)を、基体10の表面に文字を描くように描き込む。それにより、多数のRFパウダー粒子11を基体10の例えば表面に付着させる。紙の製造時にその内部に固定させることも可能である。
【0042】
基体10はコンピュータ31に接続されたリーダ32によって走査される。コンピュータ31は複数のRFパウダー粒子11の応答の周波数依存データを読み込む。コンピュータ31はデータを処理する機能の本体31bの他に表示装置31a、操作のためにキーボード31cを備えている。このコンピュータ31は上記の基体データ読取装置201を構成する。
【0043】
上記リーダ32は読込みプローブ33(図7と8を参照)を有し、読込みプローブ33は高周波電磁界を近傍に生成し、磁界結合によりパウダー(RFパウダー粒子11〜13)と結合する。パウダー粒子の固有振動数が例えば2.45GHzのとき、高周波電磁界の周波数が同じ2.45GHzのときに共振して電磁界エネルギがRFパウダー粒子に伝達する。この伝達が効率よく起きるためには読込みプローブ33の生成する電磁界にRFパウダー粒子のコイルがよく結合するほどに、近傍にある必要がある。空間で結合が効率よく起きるためには、互いのコイルの大きさが略同じで、また互いの距離はコイルの大きさと同じ程度にあるのが望ましい。エネルギの伝達が起き伝達した先の回路にエネルギが伝達してそれが戻らないという損失があると反射率が小さくなるので、例えば反射率を測定すると共振を確認できる。RFパウダー粒子の固有の振動周波数2.45GHzを検出するには、読込みプローブ33は例えば1〜3GHzまで周波数を変化させる。リーダ32はパウダーの位置を特定するために基体10の表面上を磁界結合が起きるように一定の距離を保ちながら走査動作をする。
【0044】
図7はリーダ32の読込みプローブ33から所定のある周波数の高周波を生成したとき、固有の振動周波数が一致または近いRFパウダー粒子11のタンク回路のコイルに共振電流が流れて、RFパウダー粒子11の周りに電磁界Hが生成される様子を模式的に示したものである。これを「感応している」と、本実施形態の説明では表現するときがある。RFパウダ粒子は波長(例えば2GHz帯の場合は15cm)に比べて十分小さい(0.15mm)ので電磁波の放射の成分は無視できる。読込みプローブ33からの高周波エネルギの伝達と反射、損失は磁界結合を介して行われる。
【0045】
図8はRFパウダー粒子11が存在する場所で磁界結合してエネルギの伝達と反射が起きる様子を示す。リーダ32が走査移動して読込みプローブ33がRFパウダー粒子11の上方にある。読込みプローブ33は定められた範囲で周波数を変化させながら周りに高周波磁界を生成する。RFパウダー粒子11の固有振動周波数に近づきまたは一致したときには磁界結合を介してRFパウダー粒子11のコイルとコンデンサのタンク回路には同じ周波数で電流が流れ、エネルギの伝達(図8中、矢印34で示す。)が起きる。電流は伝達された(または受信した)エネルギの一部を回路内で熱として消費して損失エネルギ成分となる。損失エネルギ成分は読込みプローブ33から見ると反射成分(図8中、矢印35で示す。)の低下として測定できる。固有振動数に一致するときに最も大きな損失となり反射成分が低下する。この測定を行うことにより共振した周波数をパウダーの周波数データ情報として図6に示すリーダ32は読込みプローブ33の位置情報と共にコンピュータ31に送る。コンピュータ31は周波数情報を記憶して、基体データ読取装置201として、内蔵される前述の送信部205によってネットワーク300を経由してホストコンピュータ101に対して取得した上記周波数情報を送信する。
【0046】
図6で示した基体10の表面の全体に渡ってリーダ32が走査を行うことにより、基体10の走査領域の全域に存在するRFパウダー粒子11の位置情報および周波数情報が、コンピュータ31のメモリに記憶され、かつホストコンピュータ101へ送信される。また、必要ならば、RFパウダー粒子11が配置されて表現されている文字や数字も読み取られ、記憶される。
【0047】
上記のような方法で、例えば紙幣の表面に上記RFパウダー粒子11を配置して作ったり、公文書等の重要書類、免許証、保険証、その他の重要カード等にRFパウダー粒子11を含ませることにより、紙幣の偽造判別、重要書類の認証等にRFパウダー粒子11を利用することができる。またこのとき、1つの個別のICタグチップとして用いるのではなく、複数または多数のRFパウダー粒子を集合的に利用するパウダー(粉状体)として用いるため、取り扱いが容易である。
【0048】
またRFパウダー含有基体10が紙幣である場合、当該紙幣10は、ホストコンピュータ101に予め記憶されている情報と読取コンピュータ31の情報に基づいて偽造かどうかを判別することができ、さらには、ホストコンピュータ101でその流通を追跡すると共に、他のデータと照合することもできる。
【0049】
なお本実施形態では、RFパウダー含有基体として紙幣の例を説明したが、それ以外に、書類用の紙や有価証券、名刺、クレジットカードのようなプラスチック製カードを用いてもよい。例えば、RFパウダーを配置させた紙で、表面に何も描いてないものでも、その紙をリーダで読み取ることにより、コンピュータの表示画面に、各RFパウダー粒子の配置、各RFパウダー粒子の感応する高周波電磁界の周波数情報等に基づいて、画像を作成することが可能である。
【0050】
また本実施形態では、RFパウダー粒子11の1種類のRFパウダー粒子を配置させた基体10の例を説明したが、それに限定されず、基体に含ませるRFパウダー粒子の種類は1種類以上でもよい。
【0051】
複数種類のRFパウダーを用いるときは、RFパウダー粒子は、上記のRFパウダー粒子11とほぼ同一の構造をしているが、各RFパウダー粒子が有するタンク回路が、異なる周波数の高周波電磁界に対して感度を有するように設計すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る基体データ管理システムは、紙幣やクレジットカードや書類等の使用経路を追跡することができ、紙幣等のトレーサビリティーを保証し、偽札の防止等を防ぐシステムとして利用される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係る基体データ管理システムの全体構成を説明するためのシステム図である。
【図2】RFパウダー含有基体の実施例を示す斜視図である。
【図3】RFパウダー含有基体の表面上に配置される1つのRFパウダー粒子の示す斜視図である。
【図4】RFパウダー粒子の平面図である。
【図5】図4におけるA−A線断面図である。
【図6】基体データ読取装置でのRFパウダ−含有基体に付加されたRFパウダー粒子から信号を受信する構成を示した図である。
【図7】リーダとRFパウダー含有基体との信号のやり取りを示す模式図である。
【図8】1つのRFパウダー粒子の存在場所でのリーダとの高周波電磁界の送受関係を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
10 基体(紙幣)
11,21 RFパウダー粒子
22 基板
24 コイル
25 コンデンサ
31 コンピュータ
32 リーダ
100 基体データ管理システム
101 ホストコンピュータ
102 データ受信部
103 記憶部
104 出力部
201 基体データ読取装置
202 基体データ読取装置
300 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体に固定された粒子の特定データを磁界結合を介して読み取る読取手段と、前記読取手段によって読み取った前記特定データ、および読取装置情報を送る送信手段とを備えた基体データ読取装置と、
前記基体データ読取装置からネットワークを介して送られてくる前記特定データと前記装置情報を受信するデータ受信手段と、前記データ受信手段によって受信された前記特定データおよび前記装置情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段によって記憶されたデータを加工して出力する出力手段とを備えたコンピュータと、
から成ることを特徴とする基体データ管理システム。
【請求項2】
前記基体はRFパウダーを有し、
前記RFパウダーに含まれるRFパウダー粒子は、外部から与えられる高周波電磁界に感応するアンテナ回路素子を有する、
ことを特徴とする請求項1記載の基体データ管理システム。
【請求項3】
前記基体は紙またはプラスチックからなることを特徴とする請求項1または2記載の基体データ管理システム。
【請求項4】
前記基体は紙幣または有価証券であることを特徴とする請求項3記載の基体データ管理システム。
【請求項5】
前記特定データは、前記RFパウダー粒子の前記アンテナ回路素子によって与えられる周波数データであることを特徴とする請求項2記載の基体データ管理システム。
【請求項6】
前記装置情報は、前記基体データ読取装置のIDと設置場所情報と読取り日時情報を含むことを特徴とする請求項1記載の基体データ管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−134695(P2008−134695A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318532(P2006−318532)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(305054854)株式会社フィルテック (45)
【Fターム(参考)】