説明

基地局、移動局、通信制御方法、およびプログラム

【課題】異なる帯域の周波数でセルの配置パターンが異なる場合において、セル間の移動においてハンドオーバの回数を減らす基地局を提供する。
【解決手段】基地局は、複数の周波数の各々について、当該周波数毎に予め定められたセル配置パターンで、複数のセルを構成する。基地局は、第1のセルの通信品質よりも第2のセルの通信品質の方が優れていることを示した測定報告を移動局より受信する。基地局は、移動局の速度が閾値以上であるか否かを判定する。基地局は、第1のセルの通信品質よりも第2のセルの通信品質の方が優れている場合、移動局の速度が閾値未満であるときには、第1のセルから第2のセルへのハンドオーバを要求する信号を移動局に送信する一方、移動局の速度が閾値以上であるときには第1のセルから第2のセルへのハンドオーバを要求する信号を移動局に送信しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局、移動局、通信制御方法、およびプログラムに関する。本発明は、特に、キャリアアグリゲーションに適用した基地局および移動局、基地局および移動局における通信制御方法、および基地局および移動局を制御するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、現在、LTE−A(Long Term Evolution-Advanced)の仕様検討が行われている。LTE−Aでは、LTEよりも高速の通信を実現することが要求されている。このため、LTE−Aでは、LTEよりも広帯域(LTEの20MHzの帯域を越える100MHzまでの帯域)をサポートすることが求められている。しかしながら、世界的に連続した広帯域の周波数領域をLTE−A用として確保することは難しい。
【0003】
それゆえ、LTE−Aでは、LTEとの互換性を可能な限り維持する目的から、キャリアアグリゲーション(CA:Career Aggregation)技術が検討されている。キャリアアグリゲーション技術は、コンポーネントキャリア(CC:Component Career)と呼ばれる帯域幅が20MHzまでの周波数帯域を複数まとめて通信を行うことにより最大100MHzの帯域幅を確保し、これにより高速かつ大容量の通信を実現させる技術である。
【0004】
キャリアアグリゲーション技術を用いた通信で使用されるコンポーネントキャリアは、キャリアアグリゲーション通信の開始時や再設定時に基地局から端末固有(UE specific)で割り当てられる。通信を行なうサービングセル(Serving Cell)は、1つのプライマリ・サービング・セル(Primary Serving Cell(以下、「Pセル」と称する))と、1つ以上のセカンダリ・サービング・セル(Secondary Serving Cell(以下、「Sセル」と称する))との組み合わせにより構成される。
【0005】
非特許文献1の7.5節に示すように、Pセルは、制御情報(C-Plane: Control Plane)とデータ情報(U-Plane: User Plane)との通信を行なう。また、Pセルに対応するコンポーネントキャリアを、PCC(Primary Component Carrier)と呼ぶ。Sセルは、データ情報(U-Plane)のみの通信を行なう。また、Sセルに対応するコンポーネントキャリアを、SCC(Secondary Component Carrier)と呼ぶ。
【0006】
SCCには、コンフィギュア(configure)状態と、非コンフィギュア状態とがある。また、コンフィギュア状態には、アクティベート(activate)状態と、非アクティベート(deactivate)状態とがある。キャリアアグリゲーションを行なっていない場合、Pセル以外の全てのセルは、非コンフィギュア状態である。キャリアアグリゲーションを行なう場合、Sセルの追加が行なわれるが、このとき追加されたSCCは、非アクティベートなコンフィギュア状態となる。
【0007】
非アクティベート状態では、CQI(Channel Quality Indicator)等の直ぐに通信ができるような品質測定が行われるが、データ通信自体は発生しない。基地局は、移動局から報告される非アクティベートなSセルのCQIがよくなるなどの理由によりSセルでも通信を行ったほうが良いと判断すると、アクティベート状態に変更し、当該移動局と通信を開始する。
【0008】
移動局は、ランダムアクセス手順を用いたハンドオーバによりPセルの変更を行なう。この場合、基地局および移動局は、一度SCCを非アクティベート状態にしてSCCとの通信を終え、基地局は必要であれば新しいPセルで再度SCCをアクティベート状態にすることが、3GPP RAN2#70bis会合で合意されている。
【0009】
非特許文献1におけるAnnexのJ.1節に示すとおり、3GPPでは、基地局の配置について基本的な5つのパターンが提案されている。図20は、基地局の配置について基本的な5つのパターンのうちの3つ目のパターンを示した図である。図20を参照して、同じ基地局(eNB(evolutional Node B))のセルC1とセルC2とは、一部の領域が重なるように位置している。周波数F2用のアンテナは、セルの端のスループットが増加するように、セルC1の境界に向いて配置される。なお、セルC1は、周波数F1の電波により形成され、セルC2は、周波数F2の電波による。周波数F1と周波数F2とは、異なる帯域の周波数である。たとえば、周波数F1は800MHzまたは2GHzであり、周波数F2は3.5GHzである。
【0010】
特許文献1には、移動通信システムに関するハンドオーバの技術が開示されている。具体的には、移動通信システムは、(i)複数の基地局の各セルを、通信エリアの広いマクロセルと、このマクロセル内を細分化する通信エリアの狭いマイクロセルとで構成し、(ii)移動局の移動速度に応じて、マクロセルとマイクロセルとを逐次選択する。詳しくは、特許文献1の移動通信システムは、移動局が高速で移動しているときにはマクロセルを選択し、移動局が低速で移動しているときにはマイクロセルを選択する。移動通信システムでは、当該構成により、ハンドオーバの回数を減らそうとしている。
【0011】
特許文献2には、特許文献1と同様に、移動通信システムに関するハンドオーバの技術が開示されている。具体的には、移動通信システムの基地局は、移動局の移動の遅速に応じてハンドオーバ先の候補を指定する。詳しくは、基地局は、エリアの連続性の高い周波数帯域を、移動速度の速い移動局のハンドオーバ先の候補として優先的に選択する、エリアの連続性の低い周波数帯域を、移動速度の遅い移動局のハンドオーバ先の候補として優先的に選択する。移動通信システムでは、基地局の当該構成により、ハンドオーバの成功率を向上しようとしている。
【0012】
ハンドオーバは、基地局での判定に基づき実施される。非特許文献2における5.5.4節に示すように、当該判定のトリガは、通常、移動局からの測定報告メッセージ(Measurement Report Message)による通知によるものとなる。EventA3は、Pセルよりも周辺セルの方が、通信品質がよいことを表す通知である。基地局は周期的にリファレンスシグナルを送信している。移動局は基地局からのリファレンスシグナルを受信し、受信レベル(RSRP:Reference Signal Received Power)や受信品質(RSRQ:Reference Signal Received Quality)を測定する。上述した通信品質の判定にはRSRPもしくはRSRQを用いるが、EventA3のトリガとしてどちらの値を用いるかはあらかじめ基地局が移動局に通知する。また、このイベント発生条件には、周波数毎やセル毎によるオフセットの差が規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−130018号公報
【特許文献2】特開2006−303739号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】3GPP TS 36.300 V10.0.0 (2010-06), Technical Specification, 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA) and Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network (E-UTRAN); Overall description; Stage 2 (Release 10)
【非特許文献2】3GPP TS 36.331 V10.0.0 (2010-12), Technical Specification, 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Radio Resource Control (RRC); Protocol specification (Release 10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、図20に示したような複数の周波数で配置が異なる基地局を用いる場合には、場所によって通信品質の良い周波数と悪い周波数とが変わる。このため、移動局の移動時に、ハンドオーバの回数が増えてしまう。
【0016】
また、引用文献1では、移動局の移動速度に応じて、マクロセルおよびマイクロセルといった大きさのかなり異なるセル間のいずれかを選択する構成であるため、図20に示したように同じような大きさのセル間の移動においてハンドオーバを減らすことまでは考慮されていない。
【0017】
また、引用文献2は、ハンドオーバの成功率を上げることを目的としており、ハンドオーバの回数を低減することまでは考慮されていない。
【0018】
本願発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、異なる帯域の周波数でセルの配置パターンが異なる場合において、セル間の移動においてハンドオーバの回数を減らすことが可能な基地局、移動局、通信制御方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のある局面に従うと、基地局は、複数の周波数を同時に用いる第1の通信方式および前記複数の周波数のうちの1つの周波数を用いる第2の通信方式の少なくともいずれかで、移動局と通信する。基地局は、前記複数の周波数の各々について、当該周波数毎に予め定められたセル配置パターンで、複数のセルを構成するセル構成手段と、前記移動局が前記複数のセルの1つである第1のセルに在圏している場合に、前記第1のセルの通信品質よりも前記第1のセルの周波数とは異なる周波数の第2のセルの通信品質の方が優れているか否かを第1の信号を、前記移動局から受信する受信手段と、前記第1のセルから前記第2のセルへのハンドオーバを要求する第2の信号を、前記移動局に送信する送信手段と、前記移動局の移動速度が予め定められた値以上であるか否かを判定する第1の判定手段と、前記第1の信号が前記第1のセルの通信品質よりも前記第2のセルの通信品質の方が優れていることを示している場合、前記第1の判定手段の判定結果が前記予め定められた値未満であるときには、前記第2の信号を前記送信手段に送信させ、前記予め定められた値以上であるときには、前記第2の信号を前記送信手段に送信させない送信制御手段とを備える。
【0020】
好ましくは、前記第1の通信方式は、互いに周波数帯域が異なる複数のコンポーネントキャリアを用いたキャリアアグリゲーションによる通信方式である。前記セル構成手段は、前記複数のコンポーネントキャリアの各々について、当該コンポーネントキャリア毎に予め定められたセル配置パターンで、前記複数のセルを構成する。前記第1のセルは、プライマリ・サービング・セルである。前記第2のセルは、セカンダリ・サービング・セルである。前記セカンダリ・サービング・セルは、前記基地局により構成されるセルである。
【0021】
好ましくは、前記第1の通信方式は、互いに周波数帯域が異なる複数のコンポーネントキャリアを用いたキャリアアグリゲーションによる通信方式である。前記セル構成手段は、前記複数のコンポーネントキャリアの各々について、当該コンポーネントキャリア毎に予め定められたセル配置パターンで、前記複数のセルを構成する。前記第1のセルは、プライマリ・サービング・セルである。前記第2のセルは、セカンダリ・サービング・セルである。前記セカンダリ・サービング・セルは、前記基地局に隣接する基地局により構成されるセルである。
【0022】
好ましくは、前記基地局は、前記セカンダリ・サービング・セルに対応する前記コンポーネントキャリアがアクティベートなコンフィギュア状態である場合に、前記第1の信号が受信されたことに基づき、前記プライマリ・サービング・セルと前記セカンダリ・サービング・セルとが互いに異なるセル配置パターンに属するか否かを判定する第2の判定手段をさら備える。前記第1の判定手段は、前記第2の判定手段によって前記異なるセル配置パターンに属すると判定されたことに基づき、前記移動局の移動速度が予め定められた値以上であるか否かを判定する。
【0023】
好ましくは、前記送信制御手段は、前記プライマリ・サービング・セルと前記セカンダリ・サービング・セルとが互いに異なるセル配置パターンに属しないと判定された場合、前記第2の信号を前記送信手段に送信させる。
【0024】
好ましくは、前記第2の判定手段は、前記セカンダリ・サービング・セルに対応する前記コンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクがアクティベートなコンフィギュア状態である場合に、前記第1の信号が受信されるたことに基づき、前記プライマリ・サービング・セルと前記セカンダリ・サービング・セルとが互いに異なるセル配置パターンに属するか否かを判定する。
【0025】
好ましくは、前記セカンダリ・サービング・セルに対応する前記コンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクのうちダウンリンクのみがアクティベートなコンフィギュア状態である場合に、前記移動局からアップリンクのデータ要求があるか否かを判定する第3の判定手段をさらに備える。前記第2の判定手段は、前記第3の判定手段によって前記アップリンクのデータ要求がないと判定された場合に、前記第1の信号が受信されたことに基づき、前記プライマリ・サービング・セルと前記セカンダリ・サービング・セルとが互いに異なるセル配置パターンに属するか否かを判定する。
【0026】
本発明の他の局面に従うと、移動局は、複数の周波数を同時に用いる第1の通信方式および前記複数の周波数のうちの1つの周波数を用いる第2の通信方式の少なくともいずれかで、1つ以上の基地局と通信する。前記複数の周波数の各々について、当該周波数毎に予め定められたセル配置パターンで、複数のセルが前記1つ以上基地局によって構成されている。移動局は、前記移動局が前記複数のセルの1つである第1のセルに在圏している場合に、前記第1のセルの通信品質と、前記第1のセルの周波数とは異なる周波数の第2のセルの通信品質とを測定する測定手段と、前記移動局に関する速度の閾値と、第1のオフセット値と、前記第1のオフセット値よりも大きな第2のオフセット値とを、前記移動局が在圏している基地局から受信する受信手段と、前記移動局の移動速度が前記閾値以上であるかを判定する第1の判定手段と、前記閾値以上であると判定されたことに基づき、前記第1のセルの通信品質を示す第1の品質値に前記第2のオフセット値を加えることにより得られた第1の加算値よりも、前記第2のセルの通信品質を示す第2の品質値が大きいか否かを判定する第2の判定手段と、前記第1のセルの通信品質よりも前記第2の通信品質の方が優れていることを示した信号を前記移動局が在圏している基地局へ送信する送信手段と、前記第2の品質値が前記第1の加算値よりも大きいと判定された場合には、前記信号を前記送信手段に送信させ、前記第2の品質値が前記第1の加算値よりも大きくないと判定された場合には、前記信号を前記送信手段に送信させない送信制御手段とを備える。
【0027】
好ましくは、前記第1の通信方式は、互いに周波数帯域が異なる複数のコンポーネントキャリアを用いたキャリアアグリゲーションによる通信方式である。前記複数のセルは、前記複数のコンポーネントキャリアの各々について、当該コンポーネントキャリア毎に予め定められたセル配置パターンで構成されている。前記第1のセルは、プライマリ・サービング・セルである。前記第2のセルは、セカンダリ・サービング・セルである。前記セカンダリ・サービング・セルは、前記移動局が在圏している基地局により構成されるセルである。
【0028】
好ましくは、前記第1の通信方式は、互いに周波数帯域が異なる複数のコンポーネントキャリアを用いたキャリアアグリゲーションによる通信方式である。前記複数のセルは、前記複数のコンポーネントキャリアの各々について、当該コンポーネントキャリア毎に予め定められたセル配置パターンで構成されている。前記第1のセルは、プライマリ・サービング・セルである。前記第2のセルは、セカンダリ・サービング・セルである。前記セカンダリ・サービング・セルは、前記移動局が在圏している基地局に隣接する基地局により構成されるセルである。
【0029】
好ましくは、前記移動局は、前記閾値以上であると判定されたことに基づき、前記第1のセルと前記第2のセルとが互いに異なるセル配置パターンに属するか否かを判定する第3の判定手段をさらに備える。前記第2の判定手段は、前記セカンダリ・サービング・セルに対応する前記コンポーネントキャリアがアクティベートなコンフィギュア状態である場合に、前記第3の判定手段によって前記異なるセル配置パターンに属すると判定されたことに基づき、前記プライマリ・サービング・セルの通信品質を示す第1の品質値に前記第2のオフセット値を加えることにより得られた第1の加算値よりも、前記セカンダリ・サービング・セルの通信品質を示す第2の品質値が大きいか否かを判定する。
【0030】
好ましくは、前記第2の判定手段は、前記セカンダリ・サービング・セルに対応する前記コンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクがアクティベートなコンフィギュア状態である場合に、前記第1の加算値よりも前記第2の品質値が大きいか否かを判定する。
【0031】
好ましくは、前記第2の判定手段は、前記セカンダリ・サービング・セルに対応する前記コンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクの少なくとも一方が非アクティベートなコンフィギュア状態である場合には、前記第1の品質値に前記第1のオフセット値を加えることにより得られる第2の加算値よりも前記第2の品質値が大きいか否かを、さらに判定する。前記送信制御手段は、前記第2の品質値が前記第2の加算値よりも大きいと判定された場合にも、前記信号を前記送信手段に送信させる。
【0032】
好ましくは、前記測定手段は、前記プライマリ・サービング・セルに隣接する複数の前記セカンダリ・サービング・セルの通信品質を測定する。前記送信制御手段は、前記複数のセカンダリ・サービング・セルのうち少なくとも1つのセカンダリ・サービング・セルについて、前記第2の品質値が前記第1の加算値よりも大きいと判定された場合、または前記第2の品質値が前記第2の加算値よりも大きいと判定された場合には、前記信号を前記送信手段に送信させる。
【0033】
好ましくは、前記受信手段は、前記基地局が前記キャリアアグリゲーションを開始したことに基づき、前記閾値と前記第2のオフセット値とを前記基地局から受信する。
【0034】
好ましくは、前記送信手段は、送信バッファを含む。前記移動局は、前記送信バッファにおけるアップリンクのデータ量が予め定められた量未満であるか否かを判定する第4の判定手段をさらに備える。前記第2の判定手段は、前記セカンダリ・サービング・セルに対応する前記コンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクのうちダウンリンクのみがアクティベートなコンフィギュア状態である場合に、前記データ量が予め定められた量未満であると判定されると、前記第1の加算値よりも前記第2の品質値が大きいか否かを判定する。
【0035】
好ましくは、前記第2の判定手段は、前記セカンダリ・サービング・セルに対応する前記コンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクのうちダウンリンクのみがアクティベートなコンフィギュア状態である場合に、前記データ量が予め定められた量以上であると判定されると、前記第1の品質値に前記第1のオフセット値を加えることにより得られる第2の加算値よりも前記第2の品質値が大きいか否かを判定する。前記送信制御手段は、前記第2の品質値が前記第2の加算値よりも大きいと判定された場合にも、前記信号を前記送信手段に送信させる。
【0036】
本発明のさらに他の局面に従うと、通信制御方法は、複数の周波数を同時に用いる第1の通信方式および前記複数の周波数のうちの1つの周波数を用いる第2の通信方式の少なくともいずれかで移動局と通信する基地局における通信制御方法である。通信制御方法は、前記基地局が、前記複数の周波数の各々について、当該周波数毎に予め定められたセル配置パターンで、複数のセルを構成するステップと、前記基地局が、前記移動局が前記複数のセルの1つである第1のセルに在圏している場合に、前記第1のセルの通信品質よりも前記第1のセルの周波数とは異なる周波数の第2のセルの通信品質の方が優れているか否かを第1の信号を、前記移動局から受信するステップと、前記基地局が、前記第1のセルから前記第2のセルへのハンドオーバを要求する第2の信号を、前記移動局に送信するステップと、前記基地局が、前記移動局の移動速度が予め定められた値以上であるか否かを判定するステップと、前記基地局が、前記第1の信号が前記第1のセルの通信品質よりも前記第2のセルの通信品質の方が優れていることを示している場合、前記判定結果が前記予め定められた値未満であるときには前記第2の信号を送信し、前記予め定められた値以上であるときには前記第2の信号を送信しないステップとを備える。
【0037】
本発明のさらに他の局面に従うと、通信制御方法は、複数の周波数を同時に用いる第1の通信方式および前記複数の周波数のうちの1つの周波数を用いる第2の通信方式の少なくともいずれかで1つ以上の基地局と通信する移動局における通信制御方法である。前記複数の周波数の各々について、当該周波数毎に予め定められたセル配置パターンで、複数のセルが前記1つ以上基地局によって構成されている。前記通信制御方法は、前記移動局が、前記移動局が前記複数のセルの1つである第1のセルに在圏している場合に、前記第1のセルの通信品質と、前記第1のセルの周波数とは異なる周波数の第2のセルの通信品質とを測定するステップと、前記移動局が、前記移動局に関する速度の閾値と、第1のオフセット値と、前記第1のオフセット値よりも大きな第2のオフセット値とを、前記移動局が在圏している基地局から受信するステップと、前記移動局が、前記移動局の移動速度が前記閾値以上であるかを判定するステップと、前記移動局が、前記閾値以上であると判定されたことに基づき、前記第1のセルの通信品質を示す第1の品質値に前記第2のオフセット値を加えることにより得られた第1の加算値よりも、前記第2のセルの通信品質を示す第2の品質値が大きいか否かを判定するステップと、前記移動局が、前記第2の品質値が前記第1の加算値よりも大きいと判定された場合には、前記第1のセルの通信品質よりも前記第2の通信品質の方が優れていることを示した信号を前記移動局が在圏している基地局へ送信するステップと、前記移動局が、前記第2の品質値が前記第1の加算値よりも大きくないと判定された場合には、前記信号を送信しないステップとを備える。
【0038】
本発明のさらに他の局面に従うと、プログラムは、複数の周波数を同時に用いる第1の通信方式および前記複数の周波数のうちの1つの周波数を用いる第2の通信方式の少なくともいずれかで移動局と通信する基地局を制御するためのプログラムである。プログラムは、前記複数の周波数の各々について、当該周波数毎に予め定められたセル配置パターンで、複数のセルを構成するステップと、前記移動局が前記複数のセルの1つである第1のセルに在圏している場合に、前記第1のセルの通信品質よりも前記第1のセルの周波数とは異なる周波数の第2のセルの通信品質の方が優れているか否かを第1の信号を、前記移動局から受信するステップと、前記第1のセルから前記第2のセルへのハンドオーバを要求する第2の信号を、前記移動局に送信するステップと、前記移動局の移動速度が予め定められた値以上であるか否かを判定するステップと、前記第1の信号が前記第1のセルの通信品質よりも前記第2のセルの通信品質の方が優れていることを示している場合、前記判定結果が前記予め定められた値未満であるときには前記第2の信号を送信し、前記予め定められた値以上であるときには前記第2の信号を送信しないステップとを、前記基地局に実行させる。
【0039】
本発明のさらに他の局面に従うと、プログラムは、複数の周波数を同時に用いる第1の通信方式および前記複数の周波数のうちの1つの周波数を用いる第2の通信方式の少なくともいずれかで1つ以上の基地局と通信する移動局を制御するためのプログラムである。前記複数の周波数の各々について、当該周波数毎に予め定められたセル配置パターンで、複数のセルが前記1つ以上基地局によって構成されており、前記プログラムは、前記移動局が前記複数のセルの1つである第1のセルに在圏している場合に、前記第1のセルの通信品質と、前記第1のセルの周波数とは異なる周波数の第2のセルの通信品質とを測定するステップと、前記移動局に関する速度の閾値と、第1のオフセット値と、前記第1のオフセット値よりも大きな第2のオフセット値とを、前記移動局が在圏している基地局から受信するステップと、前記移動局の移動速度が前記閾値以上であるかを判定するステップと、前記閾値以上であると判定されたことに基づき、前記第1のセルの通信品質を示す第1の品質値に前記第2のオフセット値を加えることにより得られた第1の加算値よりも、前記第2のセルの通信品質を示す第2の品質値が大きいか否かを判定するステップと、前記第2の品質値が前記第1の加算値よりも大きいと判定された場合には、前記第1のセルの通信品質よりも前記第2の通信品質の方が優れていることを示した信号を前記移動局が在圏している基地局へ送信するステップと、前記第2の品質値が前記第1の加算値よりも大きくないと判定された場合には、前記信号を送信しないステップとを、前記移動局に実行させる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、異なる帯域の周波数でセルの配置パターンが異なる場合において、セル間の移動においてハンドオーバの回数を減らすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】基地局により構成される複数のセルを説明するための図である。
【図2】複数の基地局が配備されたエリアを移動局が通過する状態を示した図である。
【図3】移動局が受信する電波の受信レベルを表した図である。
【図4】Sセルのダウンリンクのみアクティベートな状態でキャリアアグリゲーションを行なっていることを示した模式図である。
【図5】基地局および基地局と通信を行なう移動局のブロック図である。
【図6】基地局の通信処理部における制御部の機能ブロック図である。
【図7】比較例であって、従来の基地局を有する通信システムにおけるハンドオーバの処理流れを説明するための図である。
【図8】基地局を有する通信システムにおけるハンドオーバの処理の流れを説明するための図である。
【図9】図8のステップS24に示した処理Aの詳細を示したフローチャートである。
【図10】セル配置パターンを説明するための図である。
【図11】セル配置パターンの異同を説明するための図である。
【図12】基地局の典型的なハードウェア構成を示した図である。
【図13】データ要求判定部を用いる場合における、図8のステップS24に示した処理Aの詳細を示したフローチャートである。
【図14】基地局および基地局と通信を行なう移動局のブロック図である。
【図15】移動局の制御部の機能ブロック図である。
【図16】基地局および移動局を有する通信システムにおけるハンドオーバの処理の流れを説明するための図である。
【図17】図16におけるステップS308の処理の詳細を示したフローチャートである。
【図18】移動局のハードウェア構成を表した図である。
【図19】データ量判定部を用いる場合における、図16に示したステップS308の処理の詳細を示したフローチャートである。
【図20】基地局の配置について基本的な5つのパターンのうちの3つ目のパターンを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施の形態に係る電子機器について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0043】
[実施の形態1]
(A.概要)
図1は、基地局10により構成される複数のセルを説明するための図である。図1(a)は、基地局10が送信する周波数f1の電波により構成される3つのセル10a,10b,10cを表した図である。図1(b)は、基地局10が送信する周波数f2の電波により構成される3つのセル10d,10e,10fを表した図である。図1(c)は、図1(a)のセルと図1(b)のセルとを重ね合わせた図である。
【0044】
基地局10は、互いに周波数帯域が異なる複数のコンポーネントキャリアを用いたキャリアアグリゲーションによって、移動局と通信する。基地局10は、複数のコンポーネントキャリアの各々について、当該コンポーネントキャリア毎に予め定められたセル配置パターンで、複数のセルを構成する。図1を参照して説明すると、以下の通りである。
【0045】
基地局10は、第1の周波数帯域のコンポーネントキャリアを用いて、移動局と通信を行なう。具体的には、基地局10は、第1の周波数帯域の周波数f1の電波を用いて移動局と通信を行なう。基地局10は、周波数f1の電波によって、第1のセル配置パターンで3つのセル10a,10b,10cを構成する。
【0046】
図1(b)を参照して、基地局10は、第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域のコンポーネントキャリアを用いて、移動局と通信を行なう。具体的には、基地局10は、第2の周波数帯域の周波数f2の電波で移動局と通信を行なう。基地局10は、周波数f2の電波によって、第2のセル配置パターンで3つのセル10d,10e,10fを構成する。第2のセル配置パターンは、第1のセル配置パターンを、基地局10を中心にして時計方向または半時計方向に60度回転させたパターンである。
【0047】
図1(c)を参照して、基地局10は、周波数f1と周波数f2との電波を送信することにより、6つのセル10a,10b,10c,10d,10e,10fを構成する。各セルは、周波数が異なる2つのセルと領域の一部が重複する。たとえば、周波数f1の電波により構成されるセル10aは、周波数f2の電波により構成されるセル10d,10fと領域の一部が重複する。このように、基地局10は、上述した、非特許文献1におけるAnnexのJ.1節の3つ目のパターンを構成する。
【0048】
なお、以下で述べる他の基地局についても、図1に示した参照符号と同様の手法で参照符号を付す。つまり、基地局の参照符号がK(K:自然数)の場合、周波数f1の電波によって、第1のセル配置パターンで時計回りに3つのセルKa,Kb,Kcが構成され(図1(a)参照)、周波数f2の電波によって、第2のセル配置パターンで時計回りに3つのセルKd,Ke,Kfが構成される(図1(b)参照)。
【0049】
図2は、基地局10と同じ構成を有する複数の基地局11〜15が配備されたエリアを移動局が通過する状態を示した図である。図2を参照して、移動局が矢印の始点から終点の方向に移動すると、移動局は、少なくとも、セル11a,セル11d,セル12c,セル12a,セル12d,セル13c,セル13aを通る。
【0050】
図3は、移動局が受信する電波の受信レベルを表した図である。図3を参照して、従来の通信システムにおいては、移動局は、移動局の移動速度(以下、「速度V」と称する)にかかわらず、常に最も受信レベル(RSRP:Reference Signal Received Power)の優れたセルへのハンドオーバを行なう。このため、移動局は、白抜きの矢印の位置でハンドオーバを行なう。つまり、図3の場合には、移動局は、8回のハンドオーバを行なう。
【0051】
一方、基地局10を備える通信システムにおいては、移動局の速度が予め定められた閾値よりも速い場合(以下、「高速移動時」とも称する)に、ハンドオーバのトリガを変更することにより、不要なハンドオーバを行なわないようにする。具体的には、基地局10は、移動局から“Pセルの受信レベルよりもSセルの受信レベルの方が優れている”との通知(具体的には、Event A3の通知)を受けても、移動局にハンドオーバを実行させない。
【0052】
このような構成により、移動局は、高速移動時には、ハッチングが施された矢印の位置でしかハンドオーバを行なわない。つまり、移動局は、同じ周波数のセルを構成する基地局にしかハンドオーバしない。つまり、図3の場合には、4回しかハンドオーバが実施されない。このため、ハンドオーバの回数を減らすことができる。
【0053】
ここで、高速移動時にハンドオーバのトリガを変更する理由は、以下の通りである。制御チャネルはPセルでのみ通信を行なうため、Pセルの通信品質がSセルの通信品質を下回るような状況は好ましくない。それゆえ、基地局10は、高速移動時のみハンドオーバのトリガを変更し、低速移動時および静止時にはトリガを変更せずに、移動局に通常通りのハンドオーバを実行させる。
【0054】
ところで、従来のキャリアアグリゲーションを行なわないLTEでは、通常、常に最も受信レベルのよいセルにハンドオーバしなければ、スループットは低下してしまう。しかしながら、基地局10は、キャリアアグリゲーションを行なうことにより、ハンドオーバを行なわなくても、通信品質のよい周波数を用いることにより、ユーザデータのスループットの低下は発生しない。つまり、基地局10は、キャリアアグリゲーションによって周波数f1を用いた通信と周波数f2を用いた通信とができるため、基地局10と移動局との間のスループットは低下しない。
【0055】
上記では、移動局が高速移動している場合にハンドオーバのトリガを変更する構成を例に挙げたが、後述するように、移動局が高速移動をしており、かつ上りのデータ量が少ない場合に、ハンドオーバのトリガを変更するように、基地局10を構成することが好ましい。
【0056】
図4は、Sセルのダウンリンクのみアクティベートな状態でキャリアアグリゲーションを行なっていることを示した模式図である。なお、矢印の線幅が広いほど、通信品質が優れていることを表している。図4(a)は、左側のPセルの周波数帯域における通信品質の方が、右側のSセルの周波数帯域における通信品質よりも優れた状態を表した図である。
【0057】
図4(b),(c)は、図4(a)の状態(つまり、左側のPセルの周波数帯域における通信品質の方が右側のSセルの周波数帯域における通信品質よりもよい状態)から、右側のSセルの周波数帯域における通信品質の方が右側のPセルの周波数帯域における通信品質よりも優れた状態に遷移した場合を表した図である。
【0058】
詳しくは、図4(b)は、低速移動時や上りのデータ量が多い場合における状態を表した図である。図4(b)を参照して、低速移動時や上りのデータ量が多い場合には、ハンドオーバが行なわれ、その結果、左側がSセルとなり、右側がPセルとなっている。また、図4(c)は、移動局が高速移動しており、かつ上りのデータ量が少ない状態を表した図である。図4(c)を参照して、移動局が高速移動しており、かつ上りのデータ量が少ない場合には、上述したように、ハンドオーバは行なわれない。このため、左側はPセルのままで、右側はSセルのままとなっている。
【0059】
以下では、上記のような処理を行なう基地局10の具体的な構成と、基地局10と通信を行なう移動局の具体的な構成とについて説明する。具体的には、Sセルのダウンリンクおよびアップリンクがアクティベートであって、Sセルの方がPセルよりも通信品質がよい旨の通知を基地局10が移動局より受信した場合に、基地局10でハンドオーバを移動局に実行させるか否かを判定させる構成について説明する。
【0060】
(B.ブロック図)
図5は、基地局10および基地局10と通信を行なう移動局20のブロック図である。図5を参照して、基地局10は、通信処理部100aと、送信用アンテナ101aと、受信用アンテナ102aと、通信処理部100bと、送信用アンテナ101bと、受信用アンテナ102bとを備える。通信処理部100aは、送信部111aと、受信部112aと、制御部110aとを備える。通信処理部100bは、送信部111bと、受信部112bと、制御部110bとを備える。
【0061】
送信部111aは、送信用アンテナ101aと、制御部110aとに接続される。送信部111aは、制御部110aからの指令に基づいて、送信用アンテナ101aを用いて移動局20に周波数f1の電波を送信する。一方、送信部111bは、送信用アンテナ101bと、制御部110bとに接続される。送信部111bは、制御部110bからの指令に基づいて、送信用アンテナ101bを用いて、移動局20に周波数f2電波を送信する。
【0062】
移動局20は、制御部201と、受信部202と、受信部203と、送信部204と、送信部205と、受信用アンテナ206と、受信用アンテナ207と、送信用アンテナ208と、送信用アンテナ209とを備える。
【0063】
受信部202は、受信用アンテナ206と、制御部201とに接続される。受信部202は、受信用アンテナ206を用いて、基地局10の通信処理部100aから送信された周波数f1の電波を受信する。一方、受信部203は、受信用アンテナ207と、制御部201とに接続される。受信部203は、受信用アンテナ207を用いて、基地局10の通信処理部100bにより送信された周波数f2の電波を受信する。
【0064】
送信部204は、送信用アンテナ208と、制御部201とに接続される。送信部204は、制御部201からの指令に基づいて、送信用アンテナ208を用いて、基地局10の通信処理部100aに周波数f1′の電波を送信する。一方、送信部205は、送信用アンテナ208と、制御部201とに接続される。送信部205は、制御部201からの指令に基づいて、送信用アンテナ209を用いて、基地局10の通信処理部100bに周波数f2′の電波を送信する。
【0065】
また、移動局20は、基地局10の送信部111aおよび送信部111bからのリファレンス信号を受信し、受信レベルを測定する。移動局20は、たとえば送信部111bからのリファレンス信号のRSRP値が、送信部111aからのリファレンス信号のRSRP値に対して予め基地局から通知されているオフセット値を加えた値を上回った場合、基地局10に対して、測定結果メッセージにてその旨(つまり、Event A3)を通知する。
【0066】
基地局10の受信部112aは、受信用アンテナ102aと、制御部110aとに接続される。受信部112aは、受信用アンテナ102aを用いて、移動局20の送信部204から送信された周波数f1′の電波を受信する。一方、基地局10の受信部112bは、受信用アンテナ102bと、制御部110bとに接続される。受信部112bは、受信用アンテナ102bを用いて、移動局20の送信部205から送信された周波数f2′の電波を受信する。
【0067】
また、図5の状態では、キャリアアグリゲーションが行なわれているものとする。さらに、通信処理部100aおよび通信処理部100bの何れか一方がPセルを構成し、他方がSセルを構成するものとして説明する。特に以下では、説明の便宜上、通信処理部100aがPセルを構成し、通信処理部100bがSセルを構成する場合を例に挙げて説明する。この場合、図5は、PセルおよびSセルの各々がダウンリンクおよびアップリンクのコンポーネントキャリアを有し、全てのコンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクがアクティベートなコンフィギュア状態である場合を示していることになる。
【0068】
なお、図5においては、2つの通信処理部100a,100bしか示していないが、通信処理部の数は複数であればよい。また、図5では、説明の便宜上、異なる周波数を用いる場合に、移動局が複数の送信部および受信部と当該送信部および受信部に付随するアンテナを有する構成を示したが、異なる周波数であっても隣り合う連続した周波数帯域であれば、物理的には複数の送信部、受信部、およびアンテナを有していなくてもよい。
【0069】
図6は、基地局10の通信処理部100aにおける制御部110aの機能ブロック図である。図6を参照して、制御部110aは、通信制御部1001と、セル構成部1002と、パターン判定部1003と、速度判定部1004と、データ要求判定部1005とを備える。通信制御部1001は、キャリアアグリゲーション判定部1011を含む。速度判定部1004は、速度測定部1041を含む。
【0070】
セル構成部1002は、通信制御部1001とデータの遣り取りを行なう。セル構成部1002は、1つのコンポーネントキャリアについて、当該コンポーネントキャリアに予め定められたセル配置パターンで、複数のセルを構成する。なお、通信処理部100bに関しても、通信処理部100b内のセル構成部が、1つのコンポーネントキャリアについて、当該コンポーネントキャリアに予め定められたセル配置パターンで、複数のセルを構成する。つまり、基地局10は、複数のコンポーネントキャリアの各々について、当該コンポーネントキャリア毎に予め定められたセル配置パターンで、複数のセルを構成する。
【0071】
通信制御部1001は、送信部111aにデータ送信を実行させ、受信部112aにデータ受信を実行させる。通信制御部1001は、ハンドオーバの処理を行なう。具体的には、通信制御部1001は、予め定められた条件が成立すると、移動局20にハンドオーバを要求する信号を送信部111aに送信させる。
【0072】
また、通信制御部1001は、受信部112aが、Pセルの受信レベルよりもSセルの受信レベルの方が優れていることを示した信号(つまり、「Event A3」)を移動局20から受信すると、当該信号を受信した旨を、キャリアアグリゲーション判定部1006に通知する。なお、当該Sセルが、ハンドオーバ候補のセルとなる。
【0073】
キャリアアグリゲーション判定部1011は、Event A3を受信した旨を受け付けると、ハンドオーバ候補のセル(Sセル)のコンポーネントキャリアにおけるアップリンクおよびダウンリンクがアクティベートなコンフィギュア状態(以下、単に、「アクティベートなコンフィギュア状態」とも称する)であるか否かを調査する。ハンドオーバ候補のセルとしては、基地局10の通信処理部100bにより構成されるSセル、他の基地局の1つの制御部(図示せず)により構成されるセルが挙げられる。また、キャリアアグリゲーション判定部1011は、アクティベートなコンフィギュア状態であると判断すると、当該状態であることをパターン判定部1003に知らせる。
【0074】
パターン判定部1003は、ハンドオーバ先のセルがアクティベートなコンフィギュア状態であることを示す通知をキャリアアグリゲーション判定部1011から受け付けると、Pセルとハンドオーバ候補のSセルとが互いに異なるセル配置パターンに属するか否かを判定する。また、パターン判定部1003は、判定結果を速度判定部1004に通知する。
【0075】
より具体的には、基地局10は、各コンポーネントキャリアのセル配置パターンを示す情報を予め格納している。また、基地局10は、近隣の基地局に関しても、各コンポーネントキャリアのセル配置パターンを示す情報を予め格納している。パターン判定部1003は、これらの情報に基づいて、Pセルとハンドオーバ候補のSセルとが互いに異なるセル配置パターンに属するか否かを判断する。セル配置パターンの異同の詳細については、後述する(図10,11)。
【0076】
速度判定部1004の速度測定部1041は、通信制御部1001からの情報に基づき移動局20の速度Vを測定する。速度判定部1004は、Pセルとハンドオーバ候補のSセルとが互いに異なるセル配置パターンに属する場合、測定された移動局20の速度Vが予め定められた値(以下、「閾値Vo」とも称する)以上であるか否かを判定する。速度判定部1004は、判定結果を通信制御部1001に通知する。
【0077】
通信制御部1001は、移動局20の速度Vが閾値Vo以上である場合、ハンドオーバを指示する信号を送信部111aに送信させない。一方、通信制御部1001は、移動局20の速度Vが閾値Vo未満である場合、ハンドオーバを指示する信号を送信部111aに送信させる。具体的には、通信制御部1001は、Pセルからハンドオーバ候補のSセルへのハンドオーバを要求する信号を、移動局20対して送信部111aから送信させる処理を行なう。
【0078】
以上のように、基地局10は、Event A3を表す測定報告メッセージを移動局20から受信した場合に、Pセルとハンドオーバ先のSセルとが互いに異なるセル配置パターンであれば、移動局20の速度Vが閾値Vo未満であることを条件に、ハンドオーバを移動局20に実施させる。一方、移動局の速度Vが閾値Vo以上であれば、移動局20にハンドオーバを許可しない。
【0079】
また、基地局10は、基地局10は、Event A3を表す測定報告メッセージを移動局20から受信した場合に、Pセルとハンドオーバ先のSセルとが同じセル配置パターンであれば、移動局20の速度Vにかかわらず、ハンドオーバを移動局20に実施させる。
【0080】
なお、ハンドオーバ候補のSセルに対応するコンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクがアクティベートなコンフィギュア状態であることが、上記のようにハンドオーバを許可しないための条件となる。つまり、基地局10は、ハンドオーバ候補のSセルに対応するコンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクがアクティベートなコンフィギュア状態でない場合には、ハンドオーバ処理を行なう。
【0081】
なお、基地局10は、移動局20から周期的に送信するリファレンス信号を用いることによって移動局20の速度Vを測定することができる。しかしながら、基地局10が移動局20の速度Vを知る方法は、これに限定されるものではない。たとえば、以下のような構成としてもよい。
【0082】
基地局10が速度測定部1041を有しない場合であっても、移動局20が速度を測定し、移動局20が当該測定した速度をたとえば測定報告メッセージに含めて基地局10に送信すればよい。これにより、基地局10は、移動局20の速度Vを知ることができる。
【0083】
また、受信レベルの代わりに受信品質を用いることもできる。この場合、予め基地局10から移動局20へ受信品質を用いることを伝えておくことにより実現できる。このように、基地局10を備える通信システムでは、受信レベル、受信品質のような受信に関する通信品質を表す信号を利用すればよい。
【0084】
上記においては、データ要求判定部1005を用いない構成について説明した。データ要求判定部1005を用いる構成については、後述する。
【0085】
(C.制御構造)
図7は、比較例であって、従来の基地局を有する通信システムにおけるハンドオーバの処理流れを説明するための図である。図7を参照して、第1の通信処理部がセルAを構成し、第2の通信処理部がセルBを構成する。ハンドオーバ開始前においては、セルAがPセルで、セルBが周辺セルとして機能している。
【0086】
基地局の第1の通信処理部と第2の通信処理部は、それぞれリファレンス信号Aとリファレンス信号Bを定期的に送信し続けている。ステップS902において、移動局と基地局の第1の通信処理部は通信を開始する。このときに、基地局はイベントA3のトリガとして何を用いるかを通知する。ここでは、RSRP(受信レベル)を用いることとする。ステップS904において、移動局はリファレンス信号Aを受信する。ステップS906において、移動局はリファレンス信号Bを受信する。
【0087】
ステップS908において、移動局は、リファレンス信号Bの受信レベルがリファレンス信号Aの受信レベルよりも高いか否かを判断する。より正確には、移動局は、リファレンス信号Bの受信レベルが、リファレンス信号Aの受信レベルに対して予め基地局より通知されたオフセット値を加えたることにより得られるレベルよりも高いか否かを判断する。
【0088】
移動局は、高いと判断した場合(ステップS908においてYES)、ステップS910において、セルA(Pセル)の受信レベルよりもセルB(周辺セル)の受信レベルの方が優れていることを示した測定報告メッセージ(つまり、Event A3)を、第1の通信処理部に通知する。移動局は、高くないと判断した場合(ステップS908においてNO)、再度、第1の通信処理部および第2の通信処理部からリファレンス信号A,Bを受信する。
【0089】
ステップS912において、第1の通信処理部は、第2の通信処理部に対して、移動局のハンドオーバを要求する。ステップS914において、第2の通信処理部は、ハンドオーバの要求に対して、第1の通信処理部に応答信号を送信する。ステップS916において、第1の通信処理部は、移動局に対して、第2の通信処理部にハンドオーバすることを求める信号を送信する。
【0090】
ステップS918において、移動局は、第2の通信処理部に対して、ランダムアクセス要求信号を送信する。ステップS920において、移動局は、ランダムアクセス要求信号に対する応答信号を受信する。ステップS922において、セルBがPセルとなり、新たに通信を開始する。
【0091】
図8は、基地局10を有する通信システムにおけるハンドオーバの処理の流れを説明するための図である。図8を参照して、基地局10の通信処理部100aがセルAを構成し、基地局10の通信処理部100bがセルBを構成する。ハンドオーバ開始前においては、セルAがPセルで、セルBがSセルとして機能しており、セルBはアクティベート状態になっている。
【0092】
基地局10の通信処理部100aと通信処理部100bとは、それぞれリファレンス信号Aとリファレンス信号Bを定期的に送信し続けている。ステップS1において、移動局20と基地局10の通信処理部100aとは通信を開始する。このときに、基地局10はイベントA3のトリガとして何を用いるかを通知する。ここでは、RSRP(受信レベル)を用いることとする。ステップS2において、通信処理部100aと移動局20とは、通信処理部100bをコンフィギュア状態としてキャリアアグリゲーションを開始する。ステップS3において、通信処理部100aと移動局20とは、通信処理部100bをアクティベート状態として、キャリアアグリゲーションによる複数コンポーネントキャリアを用いた通信を開始する。ステップS4において、移動局20はリファレンス信号Aを受信する。ステップS6において、移動局20はリファレンス信号Bを受信する。
【0093】
ステップS8において、移動局20は、リファレンス信号Bの受信レベルがリファレンス信号Aの受信レベルよりも高いか否かを判断する。より正確には、移動局20は、リファレンス信号Bの受信レベルが、リファレンス信号Aの受信レベルに対して予め基地局より通知されたオフセット値を加えたることにより得られるレベルよりも高いか否かを判断する。
【0094】
移動局20は、高いと判断した場合(ステップS8においてYES)、ステップS10において、セルA(Pセル)の受信レベルよりもセルB(Sセル)の受信レベルの方が優れていることを示した測定報告メッセージ(つまり、Event A3)を、通信処理部100aに通知する。移動局20は、高くないと判断した場合(ステップS8においてNO)、再度、通信処理部100aおよび通信処理部100bからリファレンス信号A,Bを受信する。
【0095】
ステップS24において、通信処理部100aは、ハンドオーバを実行するか否かを判断するための処理Aを実行する。通信処理部100aは、処理Aの実行の結果、ハンドオーバを行なうと判断した場合、ステップS12に処理を進める。通信処理部100aは、処理Aの実行の結果、ハンドオーバを行なわないと判断した場合、ステップS26において、セルAをPセルとして通信を継続する。
【0096】
ステップS12において、通信処理部100aは、通信処理部100bに対して、移動局20のハンドオーバを要求する。ステップS14において、通信処理部100bは、ハンドオーバの要求に対して、通信処理部100aに応答信号を送信する。ステップS16において、通信処理部100aは、移動局20に対して、通信処理部100bにハンドオーバすることを求める信号を送信する。
【0097】
ステップS18において、移動局20は、通信処理部100bに対して、ランダムアクセス要求信号を送信する。ステップS20において、移動局20は、ランダムアクセス要求信号に対する応答信号を受信する。ステップS22において、セルBがPセルとなり、新たに通信を開始する。
【0098】
図9は、図8のステップS24に示した処理Aの詳細を示したフローチャートである。図9を参照して、ステップS2402において、通信処理部100aは、キャリアアグリゲーション中であるか否かを判断する。通信処理部100aは、キャリアアグリゲーション中であると判断した場合(ステップS2402においてYES)、ステップS2404において、セルAと、通知されたセル(つまり、ハンドオーバ候補のセル)とが互いに異なるセル配置パターンに属するか否かを判断する。図8の場合においては、通信処理部100aは、セルAとセルBとが異なるセル配置パターンに属するか否かを判断する。
【0099】
通信処理部100aは、キャリアアグリゲーション中でないと判断した場合(ステップS2402においてNO)、ステップS2410において、通知されたセルへのハンドオーバ処理を行なうとの判断を行なう。つまり、通信処理部100aは、ステップS12(図8参照)に処理を進める。
【0100】
通信処理部100aは、セルAとセルBとが異なるセル配置パターンに属すると判断した場合(ステップS2404においてYES)、ステップS2406において、移動局20の速度Vが閾値Vo以上であるか否かを判断する。通信処理部100aは、セルAとセルBとが同じセル配置パターンに属すると判断した場合(ステップS2404においてNO)、処理をステップS2410に進める。
【0101】
通信処理部100aは、移動局20の速度Vが閾値Vo以上であると判断した場合(ステップS2406においてYES)、ステップS2408において、通知されたセルへのハンドオーバ処理を行なわないとの判断を行なう。つまり、通信処理部100aは、ステップS26(図8参照)に処理を進める。
【0102】
(D.セル配置パターン)
図10は、セル配置パターンを説明するための図である。また、図10は、基地局10と同じ構成を有する複数の基地局11〜15が配備されたエリアを示した図でもある。
【0103】
図10(a)は、周波数f1の電波により構成されるセルの配置パターンを表した図である。図10(b)は、周波数f2の電波により構成されるセルの配置パターンを表した図である。図10(c)は、周波数f3の電波により構成されるセルの配置パターンを表した図である。
【0104】
図10(a)を参照して、基地局11は、周波数f1の電波にて、セル11a,11b,11cを構成する。基地局12は、周波数f1の電波にて、セル12a,12b,12cを構成する。基地局13は、周波数f1の電波にて、セル13a,13b,13cを構成する。基地局14は、周波数f1の電波にて、セル14a,14b,14cを構成する。基地局15は、周波数f1の電波にて、セル15a,15b,15cを構成する。なお、各基地局11〜15は、120°の指向性のあるアンテナを用いて、それぞれ3つのセルを構成する。
【0105】
以下では、各基地局に関し、図10(a)に示すような3つのセルの配置パターンを、「第1のセル配置パターン」と称する。つまり、図10(a)では、基地局11〜15の各々が、周波数f1の電波を用いて、第1のセル配置パターンで3つのセルを構成する。
【0106】
図10(b)を参照して、基地局11は、周波数f2の電波にて、セル11e,11f,11gを構成する。基地局12は、周波数f2の電波にて、セル12e,12f,12gを構成する。基地局13は、周波数f2の電波にて、セル13e,13f,13gを構成する。基地局14は、周波数f2の電波にて、セル14e,14f,14gを構成する。基地局15は、周波数f2の電波にて、セル15e,15f,15gを構成する。なお、各基地局11〜15は、120°の指向性のあるアンテナを用いて、それぞれ3つのセルを構成する。
【0107】
以下では、各基地局に関し、図10(b)に示すような3つのセルの配置パターンを、「第2のセル配置パターン」と称する。つまり、図10(b)では、基地局11〜15の各々が、周波数f2の電波を用いて、第2のセル配置パターンで3つのセルを構成する。
【0108】
図10(c)を参照して、基地局11は、周波数f3の電波にて、セル11h,11i,11jを構成する。基地局12は、周波数f3の電波にて、セル12h,12i,12jを構成する。基地局13は、周波数f3の電波にて、セル13h,13i,13jを構成する。基地局14は、周波数f3の電波にて、セル14h,14i,14jを構成する。基地局15は、周波数f3の電波にて、セル15h,15i,15jを構成する。なお、各基地局11〜15は、120°の指向性のあるアンテナを用いて、それぞれ3つのセルを構成する。
【0109】
図11は、セル配置パターンの異同を説明するための図である。図11(a)は、周波数f1の電波で構成される複数のセルに、周波数f3の電波で構成される1つのセル14iを重ね合わせた図である。図11(b)は、周波数f2の電波で構成される複数のセルに、周波数f1の電波で構成される1つのセル14aを重ね合わせた図である。
【0110】
図11(a)を参照して、周波数f1の電波により構成されるセル14bと、周波数f3により構成されるセル14iとは、同じ場所に構成される。また、図示していないが、周波数f1の電波により構成されるセルKa(Kは11以上15以下の自然数)と、周波数f3の電波により構成されるセルKhとは、同じ場所に構成される。周波数f1の電波により構成されるセルKbと、周波数f3の電波により構成されるセルKiとは、同じ場所に構成される。周波数f1の電波により構成されるセルKcと、周波数f3の電波により構成されるセルKjとは、同じ場所に構成される。つまり、各基地局は、周波数f3に関し、図10(a)と同様に、第1のセル配置パターンで3つのセルを構成する。
【0111】
このように、周波数f1の電波により構成されるセルは、周波数f1の電波により構成される他のセル、および周波数f3の電波により構成されるセルと同じ配置パターンに属するセルとなる。たとえば、セル14bがPセルである場合、周波数f1の電波で構成されるセル14c,11a,12c,12a,15c、および周波数f3の電波で構成されるセル14i,14j,11h,12j,12h,15jは、セル14bと同じセル配置パターン(第1のセル配置パターン)に属する。
【0112】
図11(b)を参照して、周波数f1,f3の電波により構成されるセル14a,14hと、周波数f2により構成される各セルとは、同じ場所に構成されない。また、図示していないが、周波数f1,f3の電波により構成されるセルKa,Khと、周波数f2の電波により構成されるセルKdとは、同じ場所に構成されない。周波数f1,f3の電波により構成されるセルKb,Kiと、周波数f2の電波により構成されるセルKeとは、同じ場所に構成されない。周波数f1,f3の電波により構成されるセルKc,Kjと、周波数f2の電波により構成されるセルKgとは、同じ場所に構成されない。
【0113】
このように、周波数f1の電波により構成されるセルは、周波数f2の電波により構成されるセルと同じ配置パターンに属するセルとならない。たとえば、セル14bがPセルである場合、周波数f2の電波により構成される、セル14bの近隣のセル14d,14f,14e,11d,12f,15eは、セル14bは、セル14bとは異なるセル配置パターン(第2のセル配置パターン)に属する。
【0114】
さらに、補足的に説明すると、たとえば或るセル(以下、「セルZ」と称する)に着目した場合、セルZと同じ配置パターンに属するセルとは、セルZを構成する指向性アンテナと同じ方向を向いている指向性アンテナにより構成されるセルと同じ周波数の電波により構成されるセルをいう。また、セルZと異なる配置パターンに属するセルとは、セルZを構成する指向性アンテナと違う方向を向いている指向性アンテナにより構成されるセルと同じ周波数の電波により構成されるセルをいう。
【0115】
なお、基地局10は、上述したように、セル毎に定義されている。基地局10は、上述したように、セル毎に隣接セルが同じセル配置パターンに属するか、異なるセル配置パターンに属するか把握している。本実施の形態においては、各周波数帯がエリアを網羅できている場合にのみ有効であるため、エリアを網羅できないような境界のセルでは適応をしない。
【0116】
(E.ハードウェア構成)
図12は、基地局10の典型的なハードウェア構成を示した図である。図12を参照して、基地局10は、複数のアンテナ101a,101b,101c,102a,102b,102cと、複数の無線処理部150a,150b,150cと、制御・ベースバンド部180とを備える。
【0117】
各無線処理部150a,150b,150cは、デュプレクサ1501,1502と、パワーアンプ1503,1504と、ローノイズアンプ1505,1506と、送信回路1507,1508と、受信回路1509,1510と、直交変復調部1510とを備える。制御・ベースバンド部180は、ベースバンド回路181と、制御装置182と、電源部185と、タイミング制御部183と、通信インターフェイス184とを備える。制御装置182は、CPU1821と、ROM1822と、RAM1823と、不揮発性メモリ1824と、HDD(Hard Disk Drive)1825とを備える。
【0118】
直交変復調部1511は、ベースバンド回路181で処理されるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を直交変復調し、アナログ信号(RF(Radio Frequency)信号)と変換する。送信回路1507,1508は、直交変復調部1511で生成されたRF信号を、電波として送出する周波数に変換する。受信回路1509,1510は、受信した電波を直交変復調部1511で処理する周波数に変換する。
【0119】
パワーアンプ1503,1504は、送信回路1507,1508で生成したRF信号を、アンテナ101a〜101c,102a〜102cから送信するために電力増幅する。ローノイズアンプは、アンテナで受信した微弱電波を増幅し、受信回路1509,1510に渡す。
【0120】
制御装置182は、基地局10全体の制御、および呼制御のプロトコルや制御監視を行なう。タイミング制御部183は、伝送路またはGPS(Global Positioning System)から抽出した基準クロックを基に、基地局10内部で使用する各種クロックを生成する。
【0121】
通信インターフェイス184は、イーサネット(登録商標)などの伝送路を接続し、IPsec(Security Architecture for Internet Protocol)、IPv6(Internet Protocol Version 6)等のプロトコルを処理してIPパケットの授受を行なう。
【0122】
ベースバンド回路181は、通信インターフェイス184を用いて授受するIPパケットと、無線上に乗せるOFDM信号(ベースバンド信号)の変換(変復調)を行なう。また、ベースバンド信号は無線処理部150a,150b,150cとの間で授受される。電源部185は、基地局10に供給される電圧を、基地局10内部で使用する電圧に変換する。
【0123】
基地局10における処理は、各ハードウェアおよびCPU1821により実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアは、HDD1825等に予め記憶されている場合がある。また、ソフトウェアは、メモリカード(図示せず)その他の記憶媒体に格納されて、プログラムプロダクトとして流通している場合もある。あるいは、ソフトウェアは、いわゆるインターネットに接続されている情報提供事業者によってダウンロード可能なプログラムプロダクトとして提供される場合もある。このようなソフトウェアは、ICカードリーダライタその他の読取装置によりその記憶媒体から読み取られて、あるいは、通信インターフェイス184を介してダウンロードされた後、HDD1825に一旦格納される。そのソフトウェアは、CPU1821によってHDD1825から読み出され、さらに不揮発性メモリ1824に実行可能なプログラムの形式で格納される。CPU1821は、そのプログラムを実行する。
【0124】
同図に示される基地局10を構成する各構成要素は、一般的なものである。したがって、本発明の本質的な部分は、HDD1825、不揮発性メモリ1824、メモリカードその他の記憶媒体に格納されたソフトウェア、あるいはネットワークを介してダウンロード可能なソフトウェアであるともいえる。なお、基地局10の各ハードウェアの動作は周知であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0125】
なお、記録媒体としては、DVD-ROM、CD−ROM、FD(Flexible Disk)、ハードディスクに限られず、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、光カード、マスクROM、EPROM(Electronically Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュROMなどの半導体メモリ等の固定的にプログラムを担持する媒体でもよい。また、記録媒体は、コンピュータが読取可能な一時的でない媒体である。
【0126】
ここでいうプログラムとは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム形式のプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0127】
上述したように、基地局10を用いることにより、異なる帯域の周波数でセルの配置パターンが異なる場合において、同じような大きさのセル間の移動においてハンドオーバの回数を減らすことが可能となる。
【0128】
より詳しくは、移動局20が基地局10にSセルのほうが通信品質が優れていることを通知した場合に、移動局20の速度Vが高速、Sセルがダウンリンクとアップリンクとがともにアクティベート、かつSセルがPセルとは異なる配置グループであるときには、Sセルへハンドオーバを行なわなくてもSセルで通信を継続することにより、データ通信速度を維持しつつ、ハンドオーバ回数の減少を実現できる。
【0129】
また、ハンドオーバの回数を減らせるため、スループットの低下と無線リソースの負荷とを低減することが可能となる。また、移動局20側において特別な処理を必要とせず、基地局10側における処理で対応できる。
【0130】
(F.変形例)
ところで、Sセルは常にダウンリンクとアップリンクとが共にアクティブなコンフィギュア状態になるとは限らず、ダウンリンクだけアクティブなコンフィギュア状態となる場合も考えられる。
【0131】
たとえば、移動局の上りデータが少ない時や、キャリアアグリゲーションを行なう周波数の関係上、Sセルがダウンリンクのみコンフィギュアされ、アクティベート状態になることがある。この際にSセルの通信品質がPセルの通信品位質を上回って、その結果移動局から測定報告(Event A3)が通知された場合、一般的には上りデータ通信速度の減少が発生してしまう。このため、このような場合には、ハンドオーバを行ったほうが良いと考えられる。しかしながら、上りデータ量がない場合であれば、ハンドオーバを行なわないほうがよいと考えられる。
【0132】
以下に、Sセルのダウンリンクのみがアクティブなコンフィギュア状態である場合の処理について説明する。具体的には、基地局10が、データ要求判定部1005(図6参照)を用いた処理を行なう場合について説明する。
【0133】
データ要求判定部1005は、Sセルに対応するコンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクのうちダウンリンクのみがアクティベートなコンフィギュア状態である場合に、移動局20からアップリンクのデータ要求がないかを判定する。
【0134】
図13は、データ要求判定部1005を用いる場合における、図8のステップS24に示した処理Aの詳細を示したフローチャートである。図13を参照して、ステップS2452において、通信処理部100aは、キャリアアグリゲーション中であるか否かを判定する。通信処理部100aは、キャリアアグリゲーション中であると判定した場合(ステップS2452においてYES)、ステップS2454において、コンポーネントキャリアにおけるダウンリンクがアクティベートなコンフィギュア状態であるか否かを判定する。通信処理部100aは、キャリアアグリゲーション中でないと判定した場合(ステップS2452においてNO)、ステップS2466において、通知されたセル(つまり、ハンドオーバ候補のセル)へのハンドオーバ処理を行なうとの判定を行なう。つまり、通信処理部100aは、ステップS12(図8参照)に処理を進める。
【0135】
通信処理部100aは、コンポーネントキャリアにおけるダウンリンクがアクティベートなコンフィギュア状態であると判定した場合(ステップS2454においてYES)、ステップS2456において、当該コンポーネントキャリアにおけるアップリンクがアクティベートな状態であるか否かを判定する。通信処理部100aは、コンポーネントキャリアにおけるダウンリンクがアクティベートなコンフィギュア状態でないと判定した場合(ステップS2454においてNO)、処理をステップS2466に進める。
【0136】
通信処理部100aは、コンポーネントキャリアにおけるアップリンクがアクティベートな状態であると判定した場合(ステップS2456においてYES)、処理をステップS2460に進める。通信処理部100aは、コンポーネントキャリアにおけるアップリンクがアクティベートな状態でないと判定した場合、ステップS2458において、移動局20からアップリンク(上り)のデータ要求があるか否かを判定する。当該判定は、データ要求判定部1005により実行される。
【0137】
通信処理部100aは、アップリンクのデータ要求があると判定した場合(ステップS2458においてYES)、処理をステップS2466に進める。通信処理部100aは、アップリンクのデータ要求がないと判定した場合(ステップS2458においてNO)、ステップS2460において、セルAと、通知されたセル(つまり、ハンドオーバ候補のセル)とが互いに異なるセル配置パターンに属するか否かを判定する。図8の場合においては、通信処理部100aは、セルAとセルBとが異なるセル配置パターンに属するか否かを判定する。
【0138】
通信処理部100aは、セルAとセルBとが異なるセル配置パターンに属すると判定した場合(ステップS2460においてYES)、ステップS2462において、移動局20の速度Vが閾値Vo以上であるか否かを判定する。通信処理部100aは、セルAとセルBとが同じセル配置パターンに属すると判定した場合(ステップS2460においてNO)、処理をステップS2466に進める。
【0139】
通信処理部100aは、移動局20の速度Vが閾値Vo以上であると判定した場合(ステップS2462においてYES)、ステップS2464において、通知されたセルへのハンドオーバ処理を行なわないとの判断を行なう。つまり、通信処理部100aは、ステップS26(図8参照)に処理を進める。
【0140】
以上のように、基地局10は、Sセルに対応するコンポーネントキャリアにおけるアップリンクがアクティベート状態でない場合には、上りデータ要求があるかどうかを調査し、上りデータ要求がない場合にはハンドオーバは行なわない。なお、完全にデータ要求がない場合ではなく、過去一定時間のデータ要求回数が閾値未満であればというように、多少の上りデータが発生することは許容できる。一方、基地局10は、移動局20とハンドオーバせずに通信を継続していたとしても、上りデータ要求量が一定以上になった場合はハンドオーバする。
【0141】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、移動局20からPセルの受信レベルよりもSセルの受信レベルの方が優れていることを示したメッセージ(Event A3)を基地局10が受信しても、移動局20の速度Vが閾値Vo以上等の予め定められた条件を具備した場合には、基地局10が移動局20に対してハンドオーバの要求を行なわない構成を説明した。つまり、基地局10におけるデータ処理が特徴点の1つであった。
【0142】
実施の形態2では、移動局において、Pセルの受信レベルよりもSセルの受信レベルの方が優れていることを示したメッセージを通知しにくくする。これにより、実施の形態1と同様にハンドオーバの回数を減らす。
【0143】
詳しくは、移動局は、速度Vが閾値Vo以上であること等の予め定められた条件を満たした場合、Sセルの受信レベルがPセルの受信レベルを上回ったときのオフセット値を変更する。これより、移動局の速度Vが速い場合は、異なるセル配置パターンへのハンドオーバが発生しにくくなる。基地局は、移動局に対して、周波数毎、もしくはセル毎に同じセル配置グループか異なる配置グループかを通知する。
【0144】
なお、実施の形態1と同様、受信レベル(RSRP)の代わりに受信品質(RSRQ)を測定するように、移動局を構成してもよい。以下、さらに詳しく説明する。
【0145】
(G.ブロック図)
図14は、基地局10Aおよび基地局10Aと通信を行なう移動局20Aのブロック図である。図14を参照して、基地局10Aは、通信処理部190aと、送信用アンテナ101aと、受信用アンテナ102aと、通信処理部190bと、送信用アンテナ101bと、受信用アンテナ102bとを備える。通信処理部190aは、送信部111aと、受信部112aと、制御部191aとを備える。通信処理部190bは、送信部111bと、受信部112bと、制御部191bとを備える。
【0146】
移動局20Aは、制御部201Aと、受信部202と、受信部203と、送信部204と、送信部205と、受信用アンテナ206と、受信用アンテナ207と、送信用アンテナ208と、送信用アンテナ209とを備える。
【0147】
基地局10Aの制御部191a、191bは、通信制御部1001と、セル構成部1002とを備える。このように、基地局10Aは、実施の形態1の基地局10とは異なり、キャリアアグリゲーションの判定、パターンの判定、および速度の判定を行なわない。
【0148】
基地局10Aは、キャリアアグリゲーションを開始よりも前に、オフセット値SL(第1のオフセット値)を移動局20Aに送信する。また、基地局10Aは、キャリアアグリゲーションを開始時に、移動局20Aに対して、上述した閾値Voと、オフセット値SLよりも大きなオフセット値SH(第2のオフセット値)とを、移動局20Aに送信する。なお、基地局10Aは、閾値Voとオフセット値SLとオフセット値SHとを通信開始時に移動局20Aに通知してもよい。
【0149】
図15は、移動局20Aの制御部201Aの機能ブロック図である。図15を参照して、制御部201Aは、通信制御部2001と、通信品質測定部2002と、速度判定部2003と、パターン判定部2004と、通信品質判定部2005と、キャリアアグリゲーション判定部2006とを備える。通信制御部2001は、データ量判定部2011を備える。速度判定部2003は、速度測定部2031を備える。
【0150】
通信制御部2001は、送信部204,205にデータ送信を実行させ、受信部202,203にデータ受信を実行させる。通信制御部2001は、たとえば、受信部202,203を介して、基地局からハンドオーバを要求する信号を取得する。また、通信制御部2001は、受信部202,203を介して、基地局10Aから、上述した閾値Voと、オフセット値SL(第1のオフセット値)と、オフセット値SLよりも大きなオフセット値SH(第2のオフセット値)とを取得する。
【0151】
通信制御部2001は、閾値Voを速度判定部2003に通知し、オフセット値SL,SHを通信品質判定部2005に通知する。さらに、通信制御部2001は、送信部204,205を介して、Pセルの受信レベルよりもSセルの受信レベルの方が優れていることを示した信号(つまり、「Event A3」)を基地局10Aに送信する。
【0152】
キャリアアグリゲーション判定部2006は、ハンドオーバ候補のセル(Sセル)のコンポーネントキャリアにおけるアップリンクおよびダウンリンクがアクティベートなコンフィギュア状態であるか否かを調査する。
【0153】
通信品質測定部2002は、Pセルの受信レベルと、周辺セルの受信レベルとを測定する。通信品質測定部2002は、測定結果を、通信品質判定部2005に通知する。
【0154】
速度判定部2003の速度測定部2031は、通信制御部2001からの情報に基づき移動局20の速度Vを測定する。速度判定部2003は、測定された移動局20の速度Vが閾値Vo以上であるか否かを判定する。速度判定部20003は、判定結果をパターン判定部2004に通知する。
【0155】
パターン判定部2004は、測定された移動局20の速度Vが閾値Vo以上である場合、Pセルに隣接する各Sセルに関し、PセルとSセルとが互いに異なるセル配置パターンに属するか否かを判定する。パターン判定部2004は、判定結果を通信品質判定部2005に通知する。
【0156】
通信品質判定部2005は、PセルとSセルとが互いに異なるセル配置パターンに属すると判定された場合、Pセルの受信レベルLP(第1の品質値)にオフセット値SHを加えることにより得られた加算値AH(第1の加算値)よりも、Sセルの受信レベルLSが大きいか否かを判定する。より詳しくは、PセルとSセルとが互いに異なるセル配置パターンに属すると判定され、かつ当該Sセルに対応するコンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクがアクティベートなコンフィギュア状態である場合に、加算値AHよりも受信レベルLSが大きいか否かを判定する。
【0157】
一方で、通信品質判定部2005は、PセルとSセルとが同じセル配置パターンに属すると判定された場合には、受信レベルLPにオフセット値SLを加えることにより得られた加算値AL(第2の加算値)よりも、Sセルの受信レベルLS(第2の品質値)が大きいか否かを判定する。また、通信品質判定部2005は、PセルとSセルとが異なるセル配置パターンに属すると判定された場合であっても、Sセルに対応するコンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクの少なくとも一方が非アクティベートなコンフィギュア状態であるときには、加算値ALよりも受信レベルLSが大きいか否かを判定する。
【0158】
通信制御部2001は、受信レベルLSが加算値AHよりも大きいと判定された場合には、Pセルの受信レベルよりもSセルの受信レベルの方が優れていることを示した信号(つまり、Event A3)を一方の送信部に送信させ、受信レベルLSが加算値AHよりも大きくないと判定された場合には、当該信号を送信部に送信させない。また、通信制御部2001は、受信レベルLSが加算値ALよりも大きいと判定された場合には、Pセルの受信レベルよりもSセルの受信レベルの方が優れていることを示した信号を一方の送信部に送信させ、受信レベルLSが加算値ALよりも大きくないと判定された場合には、当該信号を送信部に送信させない。
【0159】
つまり、通信制御部2001は、Pセルに隣接する1つ以上のSセルのうち1つのSセルについて、受信レベルLSが加算値AHよりも大きいと判定された場合、または受信レベルLSが加算値ALよりも大きいと判定された場合には、Pセルの受信レベルよりもSセルの受信レベルの方が優れていることを示した信号を送信部に送信させる。
【0160】
以上のように、移動局20Aは、PセルとSセルとが互いに異なるセル配置パターンに属し、かつ当該Sセルに対応するコンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクがアクティベートなコンフィギュア状態である場合において、通常用いるオフセット値SLよりも大きなオフセット値SHを用いる。これにより、移動局20Aは、PセルとSセルとが互いに異なるセル配置パターンに属し、かつ当該Sセルに対応するコンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクがアクティベートなコンフィギュア状態である場合には、Pセルの受信レベルよりもSセルの受信レベルの方が優れていることを示したメッセージ(Event A3)を通知しにくくする。
【0161】
上記においては、データ量判定部2011を用いない構成について説明した。データ量判定部2011を用いる構成については、後述する。
【0162】
図16は、基地局10Aおよび移動局20Aを有する通信システムにおけるハンドオーバの処理の流れを説明するための図である。図16を参照して、基地局10Aの通信処理部190aがセルAを構成し、基地局10Aの通信処理部190bがセルBを構成する。通信開始前においては、セルAがPセルで、セルBが周辺セルとして機能している。通信処理部190aと通信処理部190bは、それぞれリファレンス信号Aとリファレンス信号Bを定期的に送信し続けている。ステップS301において基地局10Aと移動局20Aとで通信が開始される。
【0163】
ステップS302において、基地局10Aと移動局20Aとでキャリアアグリゲーションの開始手順を行なう。開始手順のなかで、基地局10Aの通信処理部190aは、キャリアアグリゲーション開始の指示を移動局20Aに送信する。その際、基地局10Aは、上述したように、閾値Voとオフセット値SHとを移動局20A送信する。なお、オフセット値SLは、既に移動局20Aに通知されている。詳しくは、ステップS302において、通信処理部190aと移動局20Aとは、通信処理部190bをコンフィギュア状態としてキャリアアグリゲーションを開始する。ステップS303において、通信処理部190aと移動局20Aとは、通信処理部190bをアクティベート状態として、キャリアアグリゲーションによる複数コンポーネントキャリアを用いた通信を開始する。キャリアアグリゲーションが開始されると、ステップS304において、移動局20Aは、リファレンス信号Aを受信する。ステップS306において、移動局20Aは、リファレンス信号Bを受信する。
【0164】
ステップS308において、移動局20Aは、測定報告を通知する否かを判定する。より詳しくは、移動局20Aは、Event A3を通知するか否かを判定する。ステップS308の処理の詳細については、後述する(図17)。
【0165】
移動局は、通知すると判定した場合(ステップS308においてYES)、ステップS310において、セルA(Pセル)の受信レベルよりもセルB(Sセル)の受信レベルの方が優れていることを示した測定報告メッセージ(Event A3)を、通信処理部190aに通知する。移動局20Aは、通知ないと判定した場合(ステップS308においてNO)、再度、通信処理部190aおよび通信処理部190bからリファレンス信号A,Bを受信する。
【0166】
ステップS312において、通信処理部190aは、通信処理部190bに対して、移動局のハンドオーバを要求する。ステップS314において、通信処理部190bは、ハンドオーバの要求に対して、通信処理部190aに応答信号を送信する。ステップS316において、通信処理部190aは、移動局20Aに対して、通信処理部190bにハンドオーバすることを求める信号を送信する。
【0167】
ステップS318において、移動局20Aは、通信処理部190bに対して、ランダムアクセス要求信号を送信する。ステップS320において、移動局20Aは、ランダムアクセス要求信号に対する応答信号を受信する。ステップS322において、セルBがPセルとなり、新たに通信を開始する。
【0168】
図17は、図16におけるステップS308の処理の詳細を示したフローチャートである。図17を参照して、ステップS202において、移動局20Aは、受信レベルを測定する。なお、以下では、移動局20Aは、複数のSセルの受信レベルを測定するものとして説明する。また、当該複数のSセルにおけるアクティベートなコンフィギュア状態であるSセルの1つの品質値を“QS1”とし、複数のSセルにおける非アクティベートなコンフィギュア状態であるSセルの1つの品質値を“QS2”とする。
【0169】
ステップS204において、移動局20Aは、オフセット値を示す変数を初期化する。具体的には、移動局20Aは、オフセット値を示す変数offsetにオフセット値SLを代入する。ステップS206において、移動局20Aは、速度Vが閾値Vo以上であるか否かを判定する。移動局20Aは、閾値Vo以上であると判定した場合(ステップS206においてYES)、ステップS208において、Pセルとはセル配置パターンが異なり、かつアクティベートなコンフィギュア状態であるSセルについては、変数offsetの値をオフセット値SLからオフセット値SHに変更する。移動局20Aは、閾値Vo未満であると判定した場合(ステップS206においてNO)、処理をステップS210に進める。
【0170】
ステップS210において、移動局20Aは、各Sセルについて、「QSn>Qp+offset」が成立するか否かを判定する。たとえば、移動局20Aの速度Vが閾値Vo以上である場合、アクティベートなコンフィギュア状態であるSセルについては、移動局20Aは、「QS1>Qp+オフセット値SH」が成立するか否かを判定する。また、非アクティベートなコンフィギュア状態であるSセルについては、移動局20Aは、「QS1>Qp+オフセット値SL」が成立するか否かを判定する。
【0171】
移動局20Aは、ステップS210において少なくとも1つのSセルについて上記の条件式が成立すれば、処理をステップS212に進める。移動局20Aは、ステップS210において全てのSセルについて、上記の条件式が成立しなければ、処理をステップS202に進める。
【0172】
ステップS210において、移動局20Aは、測定報告(Event A3)を送信する。より詳しくは、移動局20Aは、ステップS210の条件を満たしたSセルの識別情報を含めて測定報告メッセージを送信する。
【0173】
(H.ハードウェア構成)
図18は、移動局20Aのハードウェア構成を表した図である。図18を参照して、移動局20Aは、アンテナ206,207,208,209と、RF回路2101,2102と、ベースバンド回路2103と、GPS受信機2104と、プログラムを実行するアプリケーションプロセッサ2105と、ROM(Read Only Memory)2106と、RAM(Random Access Memory)2107と、NAND型のフラッシュメモリ108と、ディスプレイ2109と、カメラ2110と、マイク2111と、スピーカ2112と、ユーザによる指示の入力を受ける操作キー2113と、通信IF(Interface)2114と、IC(Integrated Circuit)カードリーダライタ2115と、電源ユニット2116とを備える。
【0174】
GPS受信機2104は、アンテナ2141と、RF回路2142と、ベースバンド回路2143とを含む。GPS受信機2104は、アンテナ2141を用いてGPS衛星91〜94の信号を受信する。さらに、GPS受信機2104は、RF回路2142およびベースバンド回路2143における処理の結果(つまり、現在地情報)を、アプリケーションプロセッサ2105に出力する。
【0175】
アンテナ206〜209、RF回路2101,2102、およびベースバンド回路2103は、基地局を介した、他の移動体端末、固定電話、およびPC(Personal Computer)との間における無線通信に用いられる。詳しくは、アンテナ206〜209、RF回路2101,2102、およびベースバンド回路2103は、移動局20Aが携帯電話網を用いた通信を行なうために用いられる。
【0176】
フラッシュメモリ2108は、不揮発性の半導体メモリである。フラッシュメモリ2108は、移動局20Aを制御するための各種のプログラム、並びに、移動局20Aが生成したデータ、移動局20Aの外部装置から取得したデータ等の各種データを揮発的に格納する。
【0177】
各構成要素2103〜2116は、相互にデータバスによって接続されている。ICカードリーダライタ2115には、メモリカード2151が装着される。
【0178】
移動局20Aにおける処理は、各ハードウェアおよびアプリケーションプロセッサ2105により実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアは、フラッシュメモリ2108に予め記憶されている場合がある。また、ソフトウェアは、メモリカード2151その他の記憶媒体に格納されて、プログラムプロダクトとして流通している場合もある。あるいは、ソフトウェアは、いわゆるインターネットに接続されている情報提供事業者によってダウンロード可能なプログラムプロダクトとして提供される場合もある。このようなソフトウェアは、ICカードリーダライタ2115その他の読取装置によりその記憶媒体から読み取られて、あるいは、アンテナ206〜209、RF回路2101,2102、およびベースバンド回路2103、または通信IF2114を介してダウンロードされた後、フラッシュメモリ2108に一旦格納される。そのソフトウェアは、アプリケーションプロセッサ2105によってフラッシュメモリ2108から読み出され、さらにフラッシュメモリ2108に実行可能なプログラムの形式で格納される。アプリケーションプロセッサ2105は、そのプログラムを実行する。
【0179】
同図に示される移動局20Aを構成する各構成要素は、一般的なものである。したがって、本発明の本質的な部分は、フラッシュメモリ2108、メモリカード2151その他の記憶媒体に格納されたソフトウェア、あるいはネットワークを介してダウンロード可能なソフトウェアであるともいえる。なお、移動局20Aの各ハードウェアの動作は周知であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0180】
なお、記録媒体としては、DVD-ROM、CD−ROM、FD(Flexible Disk)、ハードディスクに限られず、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、光カード、マスクROM、EPROM(Electronically Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュROMなどの半導体メモリ等の固定的にプログラムを担持する媒体でもよい。また、記録媒体は、コンピュータが読取可能な一時的でない媒体である。
【0181】
ここでいうプログラムとは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム形式のプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0182】
上述したように、移動局20Aを用いることにより、異なる帯域の周波数でセルの配置パターンが異なる場合において、同じような大きさのセル間の移動においてハンドオーバの回数を減らすことが可能となる。また、ハンドオーバの回数を減らせるため、スループットの低下と無線リソースの負荷とを低減することが可能となる。また、移動局20Aを用いることにより、測定報告の通知がハンドオーバのトリガとなる点を変更しないで済む。
【0183】
(I.変形例)
実施の形態1の「(F.変形例)」で述べたように、Sセルは常にダウンリンクとアップリンクとが共にアクティブなコンフィギュア状態になるとは限らず、ダウンリンクだけアクティブなコンフィギュア状態となる場合も考えられる。以下に、Sセルのダウンリンクのみがアクティブなコンフィギュア状態である場合の処理について説明する。
【0184】
具体的には、移動局20Aが、データ量判定部2011(図15参照)を用いた処理を行なう場合について説明する。データ量判定部2011は、送信部204の送信バッファ2021(図15参照)における、アップリンクのデータ量が予め定められた量以上であるか否かを判定する。
【0185】
図19は、データ量判定部2011を用いる場合における、図16に示したステップS308の処理の詳細を示したフローチャートである。
【0186】
図19を参照して、ステップS402において、移動局20Aは、受信レベルを測定する。ステップS404において、移動局20Aは、オフセット値を示す変数を初期化する。具体的には、移動局20Aは、オフセット値を示す変数offsetにオフセット値SLを代入する。ステップS406において、移動局20Aは、速度Vが閾値Vo以上であるか否かを判定する。移動局20Aは、閾値Vo以上であると判定した場合(ステップS406においてYES)、ステップS408において、Pセルとはセル配置パターンが異なり、かつアクティベートなコンフィギュア状態であるSセルについては、変数offsetの値をオフセット値SLからオフセット値SHに変更する。移動局20Aは、閾値Vo未満であると判定した場合(ステップS406においてNO)、処理をステップS414に進める。
【0187】
ステップS410において、移動局20Aは、送信バッファ2021にアップリンクのデータが閾値TXDAT以上あるか否かを判定する。当該判定は、データ量判定部2011により実行される。移動局20Aは、閾値TXDAT以上であると判定した場合(ステップS410においてYES)、処理をステップS414に進める。
【0188】
移動局20Aは、閾値TXDAT未満であると判定した場合(ステップS410においてNO)、ステップS412において、Pセルとはセル配置パターンが異なり、かつダウンリンクのみアクティベートなコンフィギュア状態であるSセルについて、変数offsetの値をオフセット値SLからオフセット値SHに変更する。
【0189】
ステップS414において、移動局20Aは、各Sセルについて、「QSn>Qp+offset」が成立するか否かを判定する。なお、nはSセルの数を表す自然数である。移動局20Aは、ステップS414において少なくとも1つのSセルについて上記の条件式が成立すれば、処理をステップS416に進める。移動局20Aは、ステップS414において全てのSセルについて、上記の条件式が成立しなければ、処理をステップS402に進める。
【0190】
ステップS414において、移動局20Aは、測定報告(Event A3)を送信する。より詳しくは、移動局20Aは、ステップS210の条件を満たしたSセルの識別情報を含めて測定報告メッセージを送信する。
【0191】
以上のように、アップリンクの送信バッファ2021がある閾値TXDATA以上であれば、異なるセル配置パターンであっても速やかにハンドオーバを行なった方がよいため、移動局20Aは、オフセット値SLよりも大きなオフセット値SHを使用しない。送信バッファ2021が閾値TXDATA未満であれば、移動局20Aは、異なるセル配置パターンかつダウンリンクのみアクティベートなコンフィギュア状態であるSセルのオフセット値をオフセット値SHとする。これにより、移動局20Aは、高速移動時において送信データが少ない場合には、異なるセル配置パターンのSセルにハンドオーバしにくくなる。それゆえ、移動局20Aは、不要なハンドオーバ回数を減らすことができる。
【0192】
上記の実施の形態1および2では、上述したように、ハンドオーバを行なわないためには異なるセル配置パターンに属しているSセルがアクティベートなコンフィギュア状態であることが条件となる。Sセルを非アクティベートにする方法は基地局から非アクティベートにする通知を行なう方法と、基地局から移動局に対して非アクティベーションのための時間を通知し、最後のデータ通信後から当該通知された時間が経過するまでデータ通信が発生しない場合に非アクティベートにする方法が考えられる。たとえば、移動局が高速移動しているときには上記通知する時間を延ばすことにより、非アクティベーションすることを抑えることができる。通知する時間を延ばすことに関しては、無限大という値とすることにより非アクティベートさせないことも許容される。
【0193】
また、上記実施の形態1および2では、複数の周波数を利用する例として、移動局と基地局とがキャリアアグリゲーションを行なう場合について説明した。具体的には、複数の周波数で同時にデータ通信ができるキャリアアグリゲーションを行ないつつ、そのうちの1つのセル(Pセル)でのみ通信する制御チャネルをキャリアアグリゲーション中の他のセル(Sセル)にハンドオーバする際の処理を説明した。しかしながら、これに限定されるものではない。実施の形態1および2で説明した処理は、複数の周波数で同時に通信を行なう通信方式と、1つの周波数でしか通信を行なわない通信方式(制御チャネルだけでなくデータ通信も1つの周波数でしか通信しない方式)とを利用可能な場合に適用できる。なお、1つの周波数でしか通信を行なわない通信方式は、たとえば複数の周波数を用いることにより発生する遅延を減少させるためなどに利用される。
【0194】
また、上記の実施の形態1および2では、1つの基地局内におけるハンドオーバ(いわゆる論理的ハンドオーバ)に着目して説明したが、これに限定されるものではない。上記の実施の形態1および2で説明した処理を、2つの基地局間における物理的ハンドオーバにも適用可能である。つまり、実施の形態1および2で説明した処理を、Pセルが第1の基地局にありかつSセルが第2の基地局にある場合にも適用可能である。基地局同士は、有線で接続されている。それゆえ、物理的ハンドオーバへの適用は、両基地局間で必要なデータの送受信を行なうことにより実現できる。
【0195】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0196】
10,10A,11〜15 基地局、10a〜10f,11a〜11j,12a〜12j,13a〜13j,14a〜14j,15a〜15j セル、20,20A 移動局、100a,100b,190a,190b 通信処理部、101a,101b,208,209 送信用アンテナ、102a,102b,206,207 受信用アンテナ、110a,110b,191a,191b,201,201A 制御部、111a,111b,204,205 送信部、112a,112b,202,203 受信部、150a,150b,150c 無線処理部、180 ベースバンド部、181,2103,2143 ベースバンド回路、182 制御装置、183 タイミング制御部、184 通信インターフェイス、185 電源部、1001,2001 通信制御部、1002 セル構成部、1003,2004 パターン判定部、1004,2003,20003 速度判定部、1005 データ要求判定部、1006,1011 キャリアアグリゲーション判定部、1041,2031 速度測定部、2002 通信品質測定部、2005 通信品質判定部、2006 キャリアアグリゲーション判定部、2011 データ量判定部、2021 送信バッファ、2105 アプリケーションプロセッサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数を同時に用いる第1の通信方式および前記複数の周波数のうちの1つの周波数を用いる第2の通信方式の少なくともいずれかで、移動局と通信する基地局であって、
前記複数の周波数の各々について、当該周波数毎に予め定められたセル配置パターンで、複数のセルを構成するセル構成手段と、
前記移動局が前記複数のセルの1つである第1のセルに在圏している場合に、前記第1のセルの通信品質よりも前記第1のセルの周波数とは異なる周波数の第2のセルの通信品質の方が優れているか否かを第1の信号を、前記移動局から受信する受信手段と、
前記第1のセルから前記第2のセルへのハンドオーバを要求する第2の信号を、前記移動局に送信する送信手段と、
前記移動局の移動速度が予め定められた値以上であるか否かを判定する第1の判定手段と、
前記第1の信号が前記第1のセルの通信品質よりも前記第2のセルの通信品質の方が優れていることを示している場合、前記第1の判定手段の判定結果が前記予め定められた値未満であるときには、前記第2の信号を前記送信手段に送信させ、前記予め定められた値以上であるときには、前記第2の信号を前記送信手段に送信させない送信制御手段とを備える、基地局。
【請求項2】
前記第1の通信方式は、互いに周波数帯域が異なる複数のコンポーネントキャリアを用いたキャリアアグリゲーションによる通信方式であって、
前記セル構成手段は、前記複数のコンポーネントキャリアの各々について、当該コンポーネントキャリア毎に予め定められたセル配置パターンで、前記複数のセルを構成し、
前記第1のセルは、プライマリ・サービング・セルであり、
前記第2のセルは、セカンダリ・サービング・セルであり、
前記セカンダリ・サービング・セルは、前記基地局により構成されるセルである、請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記第1の通信方式は、互いに周波数帯域が異なる複数のコンポーネントキャリアを用いたキャリアアグリゲーションによる通信方式であって、
前記セル構成手段は、前記複数のコンポーネントキャリアの各々について、当該コンポーネントキャリア毎に予め定められたセル配置パターンで、前記複数のセルを構成し、
前記第1のセルは、プライマリ・サービング・セルであり、
前記第2のセルは、セカンダリ・サービング・セルであり、
前記セカンダリ・サービング・セルは、前記基地局に隣接する基地局により構成されるセルである、請求項1に記載の基地局。
【請求項4】
前記基地局は、前記セカンダリ・サービング・セルに対応する前記コンポーネントキャリアがアクティベートなコンフィギュア状態である場合に、前記第1の信号が受信されたことに基づき、前記プライマリ・サービング・セルと前記セカンダリ・サービング・セルとが互いに異なるセル配置パターンに属するか否かを判定する第2の判定手段をさら備え、
前記第1の判定手段は、前記第2の判定手段によって前記異なるセル配置パターンに属すると判定されたことに基づき、前記移動局の移動速度が予め定められた値以上であるか否かを判定する、請求項2または3に記載の基地局。
【請求項5】
前記送信制御手段は、前記プライマリ・サービング・セルと前記セカンダリ・サービング・セルとが互いに異なるセル配置パターンに属しないと判定された場合、前記第2の信号を前記送信手段に送信させる、請求項4に記載の基地局。
【請求項6】
前記第2の判定手段は、前記セカンダリ・サービング・セルに対応する前記コンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクがアクティベートなコンフィギュア状態である場合に、前記第1の信号が受信されるたことに基づき、前記プライマリ・サービング・セルと前記セカンダリ・サービング・セルとが互いに異なるセル配置パターンに属するか否かを判定する、請求項4または5に記載の基地局。
【請求項7】
前記セカンダリ・サービング・セルに対応する前記コンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクのうちダウンリンクのみがアクティベートなコンフィギュア状態である場合に、前記移動局からアップリンクのデータ要求があるか否かを判定する第3の判定手段をさらに備え、
前記第2の判定手段は、前記第3の判定手段によって前記アップリンクのデータ要求がないと判定された場合に、前記第1の信号が受信されたことに基づき、前記プライマリ・サービング・セルと前記セカンダリ・サービング・セルとが互いに異なるセル配置パターンに属するか否かを判定する、請求項4または5に記載の基地局。
【請求項8】
複数の周波数を同時に用いる第1の通信方式および前記複数の周波数のうちの1つの周波数を用いる第2の通信方式の少なくともいずれかで、1つ以上の基地局と通信する移動局であって、
前記複数の周波数の各々について、当該周波数毎に予め定められたセル配置パターンで、複数のセルが前記1つ以上基地局によって構成されており、
前記移動局は、
前記移動局が前記複数のセルの1つである第1のセルに在圏している場合に、前記第1のセルの通信品質と、前記第1のセルの周波数とは異なる周波数の第2のセルの通信品質とを測定する測定手段と、
前記移動局に関する速度の閾値と、第1のオフセット値と、前記第1のオフセット値よりも大きな第2のオフセット値とを、前記移動局が在圏している基地局から受信する受信手段と、
前記移動局の移動速度が前記閾値以上であるかを判定する第1の判定手段と、
前記閾値以上であると判定されたことに基づき、前記第1のセルの通信品質を示す第1の品質値に前記第2のオフセット値を加えることにより得られた第1の加算値よりも、前記第2のセルの通信品質を示す第2の品質値が大きいか否かを判定する第2の判定手段と、
前記第1のセルの通信品質よりも前記第2の通信品質の方が優れていることを示した信号を前記移動局が在圏している基地局へ送信する送信手段と、
前記第2の品質値が前記第1の加算値よりも大きいと判定された場合には、前記信号を前記送信手段に送信させ、前記第2の品質値が前記第1の加算値よりも大きくないと判定された場合には、前記信号を前記送信手段に送信させない送信制御手段とを備える、移動局。
【請求項9】
前記第1の通信方式は、互いに周波数帯域が異なる複数のコンポーネントキャリアを用いたキャリアアグリゲーションによる通信方式であって、
前記複数のセルは、前記複数のコンポーネントキャリアの各々について、当該コンポーネントキャリア毎に予め定められたセル配置パターンで構成されており、
前記第1のセルは、プライマリ・サービング・セルであり、
前記第2のセルは、セカンダリ・サービング・セルであり、
前記セカンダリ・サービング・セルは、前記移動局が在圏している基地局により構成されるセルである、請求項8に記載の移動局。
【請求項10】
前記第1の通信方式は、互いに周波数帯域が異なる複数のコンポーネントキャリアを用いたキャリアアグリゲーションによる通信方式であって、
前記複数のセルは、前記複数のコンポーネントキャリアの各々について、当該コンポーネントキャリア毎に予め定められたセル配置パターンで構成されており、
前記第1のセルは、プライマリ・サービング・セルであり、
前記第2のセルは、セカンダリ・サービング・セルであり、
前記セカンダリ・サービング・セルは、前記移動局が在圏している基地局に隣接する基地局により構成されるセルである、請求項8に記載の移動局。
【請求項11】
前記移動局は、前記閾値以上であると判定されたことに基づき、前記第1のセルと前記第2のセルとが互いに異なるセル配置パターンに属するか否かを判定する第3の判定手段をさらに備え、
前記第2の判定手段は、前記セカンダリ・サービング・セルに対応する前記コンポーネントキャリアがアクティベートなコンフィギュア状態である場合に、前記第3の判定手段によって前記異なるセル配置パターンに属すると判定されたことに基づき、前記プライマリ・サービング・セルの通信品質を示す第1の品質値に前記第2のオフセット値を加えることにより得られた第1の加算値よりも、前記セカンダリ・サービング・セルの通信品質を示す第2の品質値が大きいか否かを判定する、請求項9または10に記載の移動局。
【請求項12】
前記第2の判定手段は、前記セカンダリ・サービング・セルに対応する前記コンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクがアクティベートなコンフィギュア状態である場合に、前記第1の加算値よりも前記第2の品質値が大きいか否かを判定する、請求項11に記載の移動局。
【請求項13】
前記第2の判定手段は、前記セカンダリ・サービング・セルに対応する前記コンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクの少なくとも一方が非アクティベートなコンフィギュア状態である場合には、前記第1の品質値に前記第1のオフセット値を加えることにより得られる第2の加算値よりも前記第2の品質値が大きいか否かを、さらに判定し、
前記送信制御手段は、前記第2の品質値が前記第2の加算値よりも大きいと判定された場合にも、前記信号を前記送信手段に送信させる、請求項12に記載の移動局。
【請求項14】
前記測定手段は、前記プライマリ・サービング・セルに隣接する複数の前記セカンダリ・サービング・セルの通信品質を測定し、
前記送信制御手段は、前記複数のセカンダリ・サービング・セルのうち少なくとも1つのセカンダリ・サービング・セルについて、前記第2の品質値が前記第1の加算値よりも大きいと判定された場合、または前記第2の品質値が前記第2の加算値よりも大きいと判定された場合には、前記信号を前記送信手段に送信させる、請求項13に記載の移動局。
【請求項15】
前記受信手段は、前記基地局が前記キャリアアグリゲーションを開始したことに基づき、前記閾値と前記第2のオフセット値とを前記基地局から受信する、請求項9から14のいずれか1項に記載の移動局。
【請求項16】
前記送信手段は、送信バッファを含み、
前記移動局は、前記送信バッファにおけるアップリンクのデータ量が予め定められた量未満であるか否かを判定する第4の判定手段をさらに備え、
前記第2の判定手段は、前記セカンダリ・サービング・セルに対応する前記コンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクのうちダウンリンクのみがアクティベートなコンフィギュア状態である場合に、前記データ量が予め定められた量未満であると判定されると、前記第1の加算値よりも前記第2の品質値が大きいか否かを判定する、請求項11に記載の移動局。
【請求項17】
前記第2の判定手段は、前記セカンダリ・サービング・セルに対応する前記コンポーネントキャリアにおけるダウンリンクおよびアップリンクのうちダウンリンクのみがアクティベートなコンフィギュア状態である場合に、前記データ量が予め定められた量以上であると判定されると、前記第1の品質値に前記第1のオフセット値を加えることにより得られる第2の加算値よりも前記第2の品質値が大きいか否かを判定し、
前記送信制御手段は、前記第2の品質値が前記第2の加算値よりも大きいと判定された場合にも、前記信号を前記送信手段に送信させる、請求項16に記載の移動局。
【請求項18】
複数の周波数を同時に用いる第1の通信方式および前記複数の周波数のうちの1つの周波数を用いる第2の通信方式の少なくともいずれかで移動局と通信する基地局における通信制御方法であって、
前記基地局が、前記複数の周波数の各々について、当該周波数毎に予め定められたセル配置パターンで、複数のセルを構成するステップと、
前記基地局が、前記移動局が前記複数のセルの1つである第1のセルに在圏している場合に、前記第1のセルの通信品質よりも前記第1のセルの周波数とは異なる周波数の第2のセルの通信品質の方が優れているか否かを第1の信号を、前記移動局から受信するステップと、
前記基地局が、前記第1のセルから前記第2のセルへのハンドオーバを要求する第2の信号を、前記移動局に送信するステップと、
前記基地局が、前記移動局の移動速度が予め定められた値以上であるか否かを判定するステップと、
前記基地局が、前記第1の信号が前記第1のセルの通信品質よりも前記第2のセルの通信品質の方が優れていることを示している場合、前記判定結果が前記予め定められた値未満であるときには前記第2の信号を送信し、前記予め定められた値以上であるときには前記第2の信号を送信しないステップとを備える、通信制御方法。
【請求項19】
複数の周波数を同時に用いる第1の通信方式および前記複数の周波数のうちの1つの周波数を用いる第2の通信方式の少なくともいずれかで1つ以上の基地局と通信する移動局における通信制御方法であって、
前記複数の周波数の各々について、当該周波数毎に予め定められたセル配置パターンで、複数のセルが前記1つ以上基地局によって構成されており、
前記通信制御方法は、
前記移動局が、前記移動局が前記複数のセルの1つである第1のセルに在圏している場合に、前記第1のセルの通信品質と、前記第1のセルの周波数とは異なる周波数の第2のセルの通信品質とを測定するステップと、
前記移動局が、前記移動局に関する速度の閾値と、第1のオフセット値と、前記第1のオフセット値よりも大きな第2のオフセット値とを、前記移動局が在圏している基地局から受信するステップと、
前記移動局が、前記移動局の移動速度が前記閾値以上であるかを判定するステップと、
前記移動局が、前記閾値以上であると判定されたことに基づき、前記第1のセルの通信品質を示す第1の品質値に前記第2のオフセット値を加えることにより得られた第1の加算値よりも、前記第2のセルの通信品質を示す第2の品質値が大きいか否かを判定するステップと、
前記移動局が、前記第2の品質値が前記第1の加算値よりも大きいと判定された場合には、前記第1のセルの通信品質よりも前記第2の通信品質の方が優れていることを示した信号を前記移動局が在圏している基地局へ送信するステップと、
前記移動局が、前記第2の品質値が前記第1の加算値よりも大きくないと判定された場合には、前記信号を送信しないステップとを備える、通信制御方法。
【請求項20】
複数の周波数を同時に用いる第1の通信方式および前記複数の周波数のうちの1つの周波数を用いる第2の通信方式の少なくともいずれかで移動局と通信する基地局を制御するためのプログラムであって、
前記複数の周波数の各々について、当該周波数毎に予め定められたセル配置パターンで、複数のセルを構成するステップと、
前記移動局が前記複数のセルの1つである第1のセルに在圏している場合に、前記第1のセルの通信品質よりも前記第1のセルの周波数とは異なる周波数の第2のセルの通信品質の方が優れているか否かを第1の信号を、前記移動局から受信するステップと、
前記第1のセルから前記第2のセルへのハンドオーバを要求する第2の信号を、前記移動局に送信するステップと、
前記移動局の移動速度が予め定められた値以上であるか否かを判定するステップと、
前記第1の信号が前記第1のセルの通信品質よりも前記第2のセルの通信品質の方が優れていることを示している場合、前記判定結果が前記予め定められた値未満であるときには前記第2の信号を送信し、前記予め定められた値以上であるときには前記第2の信号を送信しないステップとを、前記基地局に実行させる、プログラム。
【請求項21】
複数の周波数を同時に用いる第1の通信方式および前記複数の周波数のうちの1つの周波数を用いる第2の通信方式の少なくともいずれかで1つ以上の基地局と通信する移動局を制御するためのプログラムであって、
前記複数の周波数の各々について、当該周波数毎に予め定められたセル配置パターンで、複数のセルが前記1つ以上基地局によって構成されており、
前記プログラムは、
前記移動局が前記複数のセルの1つである第1のセルに在圏している場合に、前記第1のセルの通信品質と、前記第1のセルの周波数とは異なる周波数の第2のセルの通信品質とを測定するステップと、
前記移動局に関する速度の閾値と、第1のオフセット値と、前記第1のオフセット値よりも大きな第2のオフセット値とを、前記移動局が在圏している基地局から受信するステップと、
前記移動局の移動速度が前記閾値以上であるかを判定するステップと、
前記閾値以上であると判定されたことに基づき、前記第1のセルの通信品質を示す第1の品質値に前記第2のオフセット値を加えることにより得られた第1の加算値よりも、前記第2のセルの通信品質を示す第2の品質値が大きいか否かを判定するステップと、
前記第2の品質値が前記第1の加算値よりも大きいと判定された場合には、前記第1のセルの通信品質よりも前記第2の通信品質の方が優れていることを示した信号を前記移動局が在圏している基地局へ送信するステップと、
前記第2の品質値が前記第1の加算値よりも大きくないと判定された場合には、前記信号を送信しないステップとを、前記移動局に実行させる、プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−70159(P2013−70159A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206094(P2011−206094)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】