説明

基地局装置および共通制御信号送信方法

【課題】呼量(トラフィック)の多い方向に共通制御信号が送信される比率を上げること。
【解決手段】複数のアンテナ素子で構成されるアダプティブアレイアンテナ20を備える基地局12において、方向を特定する方向特定情報と、該方向に所在する移動局と通信した量と、の関係を示す呼量分布を生成する呼量分布生成部32と、呼量の多い方向に共通制御信号を送信する比率が上がるよう、呼量分布生成部32により生成される呼量分布に基づいて、共通制御信号の送信に用いる各アンテナ素子のウエイトを制御する送信ウエイト制御部34と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局装置および共通制御信号送信方法に関し、特に、複数のアンテナ素子で構成されるアダプティブアレイアンテナを用いて、複数の指向性パターンを切り替えながら共通制御信号を送信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動通信システムでは、全方向に均等に電波が届くように共通制御信号が送信される。たとえば、アダプティブアレイアンテナを備える基地局は、互いにヌル点を補完し合う複数の指向性パターンを順次切り替えながら、共通制御信号をカバーエリア内にむらなく送信している。
【0003】
なお、特許文献1には、間欠的に全方向にアンテナの主ビームを走査し、最も強い電界強度が受信された方向に、それ以後の通信に用いる主ビームの方向を固定する無線通信システムが開示されている。
【特許文献1】特開平7−87011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、カバーエリア内の呼量分布(トラフィック分布)には偏りがある。すなわち、同一のカバーエリア内であっても、呼量の多いエリアと少ないエリアが存在する。しかしながら、上記従来の移動通信システムでは、呼量分布の偏りによらず無線カバーエリア内に均等に電波が届くように共通制御信号が送信される。このため、呼量の多いエリアに位置する移動局でも、呼量の少ないエリアに位置する移動局と同じ頻度でしか共通制御信号を受信することができず、移動通信システム内でユーザ許容量が最適化されていないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、共通制御信号が呼量の多い方向に送信される比率を上げることができる基地局装置および共通制御信号送信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る基地局装置は、複数のアンテナ素子で構成されるアダプティブアレイアンテナを備え、該アダプティブアレイアンテナにより形成される複数の指向性パターンを切り替えながら共通制御信号を送信する基地局装置であって、方向を特定する方向特定情報と、該方向に所在する移動局装置と通信した量と、の関係を示す呼量分布を生成する呼量分布生成手段と、呼量の多い方向に前記共通制御信号を送信する比率が上がるよう、前記呼量分布生成手段により生成される呼量分布に基づいて、該共通制御信号の送信に用いる前記各アンテナ素子のウエイトを制御する送信ウエイト制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明では、移動局装置との過去の通信実績に基づいて、方向を特定する方向特定情報と該方向に所在する移動局装置と実際に通信した量との関係を示す呼量分布(トラフィック分布)が生成される。生成された呼量分布は、基地局装置から見て呼量の多い方向および少ない方向を示すものである。本発明によれば、かかる呼量分布に基づいて推定される呼量の多い方向に共通制御信号を送信する比率が上がるよう、共通制御信号の送信に用いる各アンテナ素子のウエイトが制御される。このため、移動通信システムのユーザ許容量を拡大することができる。
【0008】
また、本発明の一態様では、時間に対応づけて、該時間に通信した移動局装置の所在方向を特定する前記方向特定情報を記憶する移動局方向記憶手段をさらに含み、前記呼量分布生成手段は、前記移動局方向記憶手段に記憶される時間と方向特定情報とに基づいて、時間別の前記呼量分布を生成し、前記送信ウエイト制御手段は、前記呼量分布と現在時刻とに基づいて、前記共通制御信号の送信に用いる前記各アンテナ素子のウエイトを制御する。この態様によれば、呼量分布の時間変化に応じて共通制御信号の各方向への送信比率が好適に制御されるため、移動通信システムのユーザ許容量を常に高い状態に維持することができる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記方向特定情報は、前記移動局装置からの応答があった共通制御信号の送信に用いた指向性パターンを識別する指向性パターン識別情報である。この態様によれば、たとえば呼出(着呼通知)を含む共通制御信号の送信に用いた指向性パターンとその呼出への応答回数との関係が呼量分布として生成される。このため、呼量分布に基づいて、移動局装置からの応答確率が高い指向性パターン、すなわち呼量の多い方向をカバーする指向性パターンを推定できるようになる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記方向特定情報は、前記移動局装置からの通信信号の受信に用いた前記各アンテナ素子のウエイトから算出される指向性パターンの主ビーム方向を示す主ビーム方向情報である。この態様によれば、主ビーム方向が移動局装置の所在方法であると推定され、移動局装置の所在位置を指し示す主ビーム方向と通信量との関係を示す詳細な呼量分布が生成される。このため、呼量の多い方向を精度良く推定できるようになる。
【0011】
なお、この態様では、前記各アンテナ素子における受信信号電力のばらつきを検出する受信信号電力ばらつき検出手段をさらに含み、前記方向特定情報は、前記受信信号電力ばらつき検出手段により検出される受信信号電力のばらつきの大きさが所定値以下であった場合における前記主ビーム方向情報であってもよい。こうすれば、マルチパスなどの影響により主ビーム方向が該移動局装置の所在方向と一致しない場合の通信が呼量分布から除外されるため、より正確な呼量分布を生成することができる。このため、呼量の多い方向をより精度良く推定できるようになる。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記送信ウエイト制御手段は、呼量の多い方向に指向性を有する指向性パターンをさらに用いて前記共通制御信号を送信するよう、前記呼量分布に基づいて、該共通制御信号の送信に用いる前記各アンテナ素子のウエイトを制御する。この態様によれば、呼量の多い方向に共通制御信号が送信される比率を上げることができる。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記送信ウエイト制御手段は、前記呼量分布に基づいて前記共通制御信号の送信に用いる指向性パターンの適用頻度を決定し、該決定に従って該共通制御信号の送信に用いる前記各アンテナ素子のウエイトを制御する。この態様によれば、呼量の多い方向をカバーする指向性パターンを用いて共通制御信号が送信される頻度を増やすことができる。
【0014】
また、本発明に係る共通制御信号送信方法は、複数のアンテナ素子で構成されるアダプティブアレイアンテナを用いて、複数の指向性パターンを切り替えながら共通制御信号を送信する共通制御信号送信方法であって、方向を特定する方向特定情報と、該方向に所在する移動局装置と通信した量と、の関係を示す呼量分布を生成する呼量分布生成ステップと、呼量の多い方向に前記共通制御信号を送信する比率が上がるよう、前記呼量分布生成ステップで生成される呼量分布に基づいて、該共通制御信号の送信に用いる前記各アンテナ素子のウエイトを制御する送信ウエイト制御ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る移動通信システム10の全体構成図である。同図に示すように、移動通信システム10は、基地局12と複数の移動局14A〜G(ここでは7つとする。)を含んで構成されている。一般に、基地局12のカバーエリア16には、移動局14が密集しやすく呼量(トラフィック)が比較的多いエリア(ここでは14A〜Dが位置するエリア付近)と、少ないエリアとが存在する。すなわち、カバーエリア16内の呼量分布には偏りがある場合が多い。
【0017】
基地局12は、後述するように複数のアンテナ素子で構成されるアダプティブアレイアンテナを備えており、このアダプティブアレイアンテナにより形成される指向性パターンを切り替えながら、呼出(着呼通知)用その他の共通制御信号をカバーエリア16内にくまなく送信する。特に、本実施形態に係る移動通信システム10では、基地局12が過去の各移動局14との通信履歴からカバーエリア内の呼量分布を生成し、基地局12から見て呼量の多い方向に共通制御信号を送信する比率が上がるように、各アンテナ素子のウエイトを制御する。こうして、移動通信システム10のユーザ許容量を拡大するようにしている。
【0018】
以下では、上記処理を実現するために基地局12が備える構成についてより詳細に説明する。
【0019】
図2は、基地局12の機能ブロック図である。同図に示すように、基地局12は、アダプティブアレイアンテナ20、受信部22、復調部24、受信信号電力ばらつき検出部26、移動局方向推定部28、移動局方向特定情報記憶部30、呼量分布生成部32、送信ウエイト制御部34、変調部36、送信部38を含んで構成されている。
【0020】
アダプティブアレイアンテナ20は、複数のアンテナ素子の配列であり、送信部38から供給される信号を各アンテナ素子から放射し、また各移動局14から送信される信号を各アンテナ素子で受信して、その信号を受信部22に出力するものである。この送信および受信は、時分割で切り替えられる。
【0021】
受信部22は、アダプティブアレイアンテナ20の各アンテナ素子で受信される移動局14からの無線信号をベースバンド信号にダウンコンバートし、復調部24に出力するものである。
【0022】
復調部24は、受信部22から入力されるベースバンド信号から、移動局14からの受信データを復号するものである。復調部24で復号された受信データは、上位装置(図示せず)に出力される。
【0023】
受信信号電力ばらつき検出部26は、受信部22から入力されるベースバンド信号に基づいて、該各アンテナ素子における受信信号電力のばらつきを検出するものである。具体的には、各アンテナ素子間の受信信号電力差が所定値を超えていればばらつきが大きいと判定し、所定値以下であればばらつきが小さいと判定する。
【0024】
移動局方向推定部28は、受信部22から入力されるベースバンド信号と既知の参照信号とに基づいて、各移動局14との通信に用いる各アンテナ素子のウエイトを計算する。具体的には、各移動局14に対応する参照信号の到来方向に主ビームを形成するとともに、該参照信号と相関の低い信号(干渉信号)の到来方向にヌルを向けるよう、アダプティブアレイアンテナ20を構成する各アンテナ素子のウエイトを収束させる。
【0025】
そして、移動局方向推定部28は、こうして得られた各アンテナ素子のウエイトに基づいて、該ウエイトにより形成されるアダプティブアレイアンテナ20の指向性パターンの主ビーム方向を算出し、この主ビーム方向が各移動局14の所在方向(各移動局14から送信される信号の到来方向)であると推定する。なお、所望波のキャリア(搬送波)周波数をf、伝搬速度(光速)をc、基準点(いずれのアンテナ素子の位置とも異なる任意の固定点)より測ったk番目のアンテナ素子の位置をd、該アンテナ素子のウエイトwをw=Aexp(jδ)で表すと(A、δはそれぞれk番目のアンテナ素子に掛けられる振幅と移相量)、アダプティブアレイアンテナ20の主ビーム方向(アダプティブアレイアンテナ20に対する角度θ)は、次式(1)で与えられる。
【0026】
【数1】

【0027】
さらに、移動局方向推定部28は、信号を受信するたびに、または所定時間ごとに(たとえば5分ごとに)、式(1)により算出される主ビーム方向(角度θ)を移動局方向特定情報記憶部30に記憶する。ただし、受信信号電力ばらつき検出部26により各アンテナ素子間の受信信号電力差が所定値を超えると判断された場合を除く。
【0028】
図3は、(a)主ビーム方向と移動局14の所在方向とが一致する場合および(b)一致しない場合を示す図である。同図(a)に示すように、移動局14からの送信波が角度広がりなく基地局12に到来する場合、基地局12は移動局14の所在方向(=到来波方向)に主ビームを向ける。一方、同図(b)に示すように、マルチパスなどの影響により移動局14からの送信波が角度広がりを持つ場合、基地局12は、移動局14の所在方向とは異なる方向に主ビームを向ける。この場合には、式(1)により算出される主ビーム方向(角度θ)は移動局14の所在方向を示さない。
【0029】
一般に、移動局14からの到来波が角度広がりを持つ場合、基地局12における各アンテナ素子間の受信信号電力のばらつきは大きくなる傾向がある。これは、移動局14から送信された信号が異なる2以上の経路をたどって基地局12に到来すると、アンテナ素子の位置に応じて到来波の位相ずれの度合いが異なってくるからである。すなわち、あるアンテナ素子では同位相(ほぼ同位相)で受信された信号が互いに強調し合い、あるアンテナ素子では逆位相(ほぼ逆位相)で受信された信号が互いに相殺し合うことにより、各アンテナ素子における受信信号電力がばらつきやすくなる。
【0030】
このため、移動局方向推定部28は、受信信号電力ばらつき検出部26により各アンテナ素子間の受信信号電力差が所定値を超えると判断される場合には、主ビーム方向が移動局14の所在方向と一致しない可能性が高いため、式(1)で求めた主ビーム方向(角度θ)を移動局方向特定情報記憶部30に記憶することなく破棄する。こうして、移動局方向推定部28は、移動局14の所在方向を正しく推定できた場合に限り、式(1)で求めた主ビーム方向(角度θ)を移動局方向特定情報記憶部30に記憶するようにしている。
【0031】
なお、移動局方向推定部28は、所定周期で(たとえば10分周期で)角度θの平均値を求め、その平均値を代表主ビーム方向として記憶するようにしてもよい。
【0032】
移動局方向特定情報記憶部30は、メモリを含んで構成されており、所定時間ごとに、時間に対応づけて、その時間に通信した移動局14の所在方向を特定する方向特定情報を記憶するものである。
【0033】
図4は、移動局方向特定情報記憶部30の一例を示す図である。同図に示すように、移動局方向特定情報記憶部30には、ここでは1分ごとに、移動局方向推定部28が式(1)により算出した主ビーム方向(角度θ)が記憶されている。
【0034】
呼量分布生成部32は、方向特定情報と、該方向特定情報により特定される方向に所在する移動局14と通信した量と、の関係を示す呼量分布を生成するものである。具体的には、移動局方向特定情報記憶部30に記憶される時刻と主ビーム方向とに基づいて、時間別および方向別に呼量を集計することにより呼量分布を生成する。
【0035】
図5は、呼量分布生成部32により生成される呼量分布の一例を示す図である。同図に示すように、本実施形態では、基地局12から見た方向とその方向における呼量との関係が30分ごとに集計されているので、どの時間帯にどの方向の呼量が多いかといった呼量分布の時間変化をより詳細に把握することができる。なお、時刻が新しい主ビーム方向には大きな重みを付け、時刻が古い主ビーム方向には小さな重みを付けて、呼量を集計してもよい。こうすれば、呼量分布生成部32により生成される呼量分布が、時期的な再現性をより考慮したものとなる。
【0036】
送信ウエイト制御部34は、従来から共通制御信号の送信に用いている複数の指向性パターン(以下「基本指向性パターン」という。)を形成する複数の基本ウエイトセットを記憶しており、現時点で呼量の多いと推定される方向に共通制御信号を送信する比率が上がるよう、呼量分布生成部32により生成される呼量分布と現在時刻とに基づいて、共通制御信号の送信に用いる各アンテナ素子のウエイトを制御するものである。具体的には、従来の基本指向性パターンに加え、現時点で呼量が多いと推定される方向に指向性を有する指向性パターンをさらに用いて共通制御信号を送信するよう、各アンテナ素子のウエイトを制御する。また、従来の基本指向性パターンのうち、現時点で呼量が多いと推定される方向をカバーする指向性パターンの適用頻度が増えるよう、各アンテナ素子のウエイトを制御してもよい。これにより、呼量分布の時間変化に応じて共通制御信号の各方向への送信比率が適宜変更されるため、移動通信システム10のユーザ許容量を常に高い状態に維持することができるようになる。
【0037】
変調部36は、上位装置(図示せず)から入力される各移動局14への送信データをベースバンド信号に変換し、送信部38に入力するものである。
【0038】
送信部38は、送信ウエイト制御部34の指示に従って、アダプティブアレイアンテナ20を構成する各アンテナ素子のウエイトを設定する。そして、変調部36から入力されるベースバンド信号を無線信号にアップコンバートし、送信出力レベルにまで増幅して、各アンテナ素子に供給する。
【0039】
ここで、基地局12の動作を図6および7に基づいて説明する。
【0040】
図6は、移動局14の所在方向を特定する方向特定情報の記憶処理を示すフロー図である。本処理は、各移動局14から送信される信号を受信するたびに、あるいは所定時間ごと(たとえば5分ごと)に実行されるものである。
【0041】
同図に示すように、アダプティブアレイアンテナ20で移動局14から送信される信号が受信されると、移動局方向推定部28は、受信部22から入力されるベースバンド信号と既知の参照信号とに基づいて、各移動局14との通信に用いる各アンテナ素子のウエイトを計算する(S100)。そして、S100で得られた各アンテナ素子のウエイトに基づいて、該ウエイトにより形成される指向性パターンの主ビーム方向を算出する(S102)。また、受信信号電力ばらつき検出部26は、受信部22から入力されるベースバンド信号に基づいて、該各アンテナ素子における受信信号電力のばらつきを検出する(S104)。そして、検出した受信信号電力のばらつきの大きさが所定値以下であるか否かを判断する(S106)。
【0042】
S106において、受信信号電力のばらつきの大きさが所定値以下であると判断されると、移動局方向推定部28は、S102で算出した主ビーム方向を移動局14の所在方向を特定する情報として、その算出時刻とともに移動局方向特定情報記憶部30に記憶する(S108)。一方、S106において、受信信号電力のばらつきの大きさが所定値以下であると判断されると、S102で算出した主ビーム方向は移動局方向特定情報記憶部30に記憶されることなく破棄される。
【0043】
次に、図7は、基地局12による共通制御信号の送信処理を示すフロー図である。本処理は、基地局12が共通制御信号をカバーエリアに送信する場合に実行されるものである。
【0044】
同図に示すように、まず、呼量分布生成部32は、移動局方向特定情報記憶部30に記憶される時刻と主ビーム方向とに基づいて、時間別(たとえば30分ごと)および方向別に呼量を集計することにより時間別の呼量分布を生成する(S200)。次に、送信ウエイト制御部34は、S200で生成された時間別の呼量分布と現在時刻とに基づいて、現時点で呼量の多い方向を推定する(S202)。そして、指向性パターンがS202で推定した方向に指向性を有するよう各アンテナ素子のウエイトを制御して、共通制御信号を送信する(S204)。その後、従来の基本指向性パターンを切り替えながら、カバーエリア16内にくまなく共通制御信号を送信する(S206)。なお、S204とS206の順序は逆でもよいし、S206において基本指向性パターンを切り替える途中に、S204の処理を1回以上実行してもよい。
【0045】
以上説明した基地局12によれば、方向を特定する方向特定情報とその方向に所在する移動局14と通信した量との関係を示す呼量分布に基づいて、共通制御信号の送信に用いられる各アンテナ素子のウエイトが制御される。このため、呼量の多い方向に共通制御信号が送信される比率を上げることができ、移動通信システム10のユーザ許容量を拡大することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。たとえば、上記実施形態では、移動局14の所在方向を特定する方向特定情報として、各アンテナ素子のウエイトに基づいて算出される指向性パターンの主ビーム方向を用いたが、主ビーム方向の代わりに、各アンテナ素子のウエイトそのものを用いてもよいし、共通制御信号の基本指向性パターンを識別する基本指向性パターンIDを用いてもよい。
【0047】
以下、移動局14の所在方向を特定する方向特定情報として基本指向性パターンIDを用いる実施形態を説明する。本実施形態では、移動局方向推定部28は、移動局14からの応答があった共通制御信号(たとえば着呼通知)の送信に用いた基本指向性パターンのID、を該移動局14の所在方向と推定する。また、基地局12がその応答を受信した時刻とともに、この基本指向性パターンIDを移動局方向特定情報記憶部30に記憶する(図8参照)。この場合、呼量分布生成部32は、移動局方向特定情報記憶部30に記憶される時刻と基本指向性パターンIDとに基づいて、共通制御信号の送信に用いた基本指向性パターンIDと当該共通制御信号に対する移動局14からの応答回数との関係を示す呼量分布を生成する。こうして得られた呼量分布によれば、共通制御信号を送信したときに、移動局14からの応答が得られる確率が高い基本指向性パターンおよび少ない基本指向性パターンを把握することができる。送信ウエイト制御部34は、かかる呼量分布に基づいて、移動局14からの応答が得られる確率が高い基本指向性パターンをより多く用いて共通制御信号を送信する。このため、呼量の多い方向に共通制御信号が送信される比率を上げることができ、移動通信システム10のユーザ許容量を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係る移動通信システムの全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る基地局の機能ブロック図である。
【図3】主ビーム方向と移動局所在方向とが一致する場合および一致しない場合を示す図である。
【図4】移動局方向特定情報記憶部の一例を示す図である。
【図5】呼量分布生成部により生成される呼量分布の一例を示す図である。
【図6】移動局の所在方向を特定する方向特定情報の記憶処理を示すフロー図である。
【図7】共通制御信号の送信処理を示すフロー図である。
【図8】移動局方向特定情報記憶部の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10 移動通信システム、12 基地局、14 移動局、16 カバーエリア、20 アダプティブアレイアンテナ、22 受信部、24 復調部、26 受信信号電力ばらつき検出部、28 移動局方向推定部、30 移動局方向特定情報記憶部、32 呼量分布生成部、34 送信ウエイト制御部、36 変調部、38 送信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子で構成されるアダプティブアレイアンテナを備え、該アダプティブアレイアンテナにより形成される複数の指向性パターンを切り替えながら共通制御信号を送信する基地局装置であって、
方向を特定する方向特定情報と、該方向に所在する移動局装置と通信した量と、の関係を示す呼量分布を生成する呼量分布生成手段と、
呼量の多い方向に前記共通制御信号を送信する比率が上がるよう、前記呼量分布生成手段により生成される呼量分布に基づいて、該共通制御信号の送信に用いる前記各アンテナ素子のウエイトを制御する送信ウエイト制御手段と、
を含むことを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基地局装置において、
時間に対応づけて、該時間に通信した移動局装置の所在方向を特定する前記方向特定情報を記憶する移動局方向特定情報記憶手段をさらに含み、
前記呼量分布生成手段は、前記移動局方向特定情報記憶手段に記憶される時間と方向特定情報とに基づいて、時間別の前記呼量分布を生成し、
前記送信ウエイト制御手段は、前記呼量分布と現在時刻とに基づいて、前記共通制御信号の送信に用いる前記各アンテナ素子のウエイトを制御する、
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基地局装置において、
前記方向特定情報は、前記移動局装置からの応答があった共通制御信号の送信に用いた指向性パターンを識別する指向性パターン識別情報である、
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の基地局装置において、
前記方向特定情報は、前記移動局装置からの通信信号の受信に用いた前記各アンテナ素子のウエイトから算出される指向性パターンの主ビーム方向を示す主ビーム方向情報である、
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基地局装置において、
前記各アンテナ素子における受信信号電力のばらつきを検出する受信信号電力ばらつき検出手段をさらに含み、
前記方向特定情報は、前記受信信号電力ばらつき検出手段により検出される受信信号電力のばらつきの大きさが所定値以下であった場合における前記主ビーム方向情報である、
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の基地局装置において、
前記送信ウエイト制御手段は、呼量の多い方向に指向性を有する指向性パターンをさらに用いて前記共通制御信号を送信するよう、前記呼量分布に基づいて、該共通制御信号の送信に用いる前記各アンテナ素子のウエイトを制御する、
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の基地局装置において、
前記送信ウエイト制御手段は、前記呼量分布に基づいて前記共通制御信号の送信に用いる指向性パターンの適用頻度を決定し、該決定に従って該共通制御信号の送信に用いる前記各アンテナ素子のウエイトを制御する、
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項8】
複数のアンテナ素子で構成されるアダプティブアレイアンテナを用いて、複数の指向性パターンを切り替えながら共通制御信号を送信する共通制御信号送信方法であって、
方向を特定する方向特定情報と、該方向に所在する移動局装置と通信した量と、の関係を示す呼量分布を生成する呼量分布生成ステップと、
呼量の多い方向に前記共通制御信号を送信する比率が上がるよう、前記呼量分布生成ステップで生成される呼量分布に基づいて、該共通制御信号の送信に用いる前記各アンテナ素子のウエイトを制御する送信ウエイト制御ステップと、
を含むことを特徴とする共通制御信号送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−270940(P2008−270940A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107884(P2007−107884)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】