説明

基地局電源装置

【課題】小型化とコストダウンを実現した瞬時停電対応の基地局電源装置を提供する。
【解決手段】絶縁電力トランス1の二次側の電圧を監視し、電圧が所定電圧以上の時は、第1の整流平滑回路16は、基地局装置のRF部に例えば27Vの電力を供給し、DC−DC降圧レギュレータ23は、第1の整流平滑回路16からの電圧を降圧してデジタル電源電圧(例えば3.3V)の電力を出力する。また、第2の整流平滑回路17は、電圧が所定電圧以上の時は、コンデンサ14に電気エネルギーを蓄積する。瞬時停電等が発生し、絶縁電力トランス1の二次側の電圧が所定電圧未満になった時は、DC−DC降圧レギュレータ23は、第2の整流平滑回路17からの電圧を降圧してデジタル電源電圧(例えば3.3V)の電力を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瞬時停電に対応した移動通信基地局の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動通信基地局の電源装置は、商用電源に瞬時停電等が発生した場合でも基地局としての機能が維持できるようにバッテリを備えている。
図5に従来の基地局電源装置の回路構成を示す。従来の基地局電源装置は、絶縁電力トランス41の一次側に、外部から入力される交流電圧(AC)を全波整流するブリッジダイオード42と、整流出力を平滑する平滑コンデンサ43と、力率改善機能を有するPFC(Power Factor Correction)ブーストコンバータ44と、48Vバッテリ54(鉛蓄電池)と、PFCブーストコンバータ44からの直流電圧(300V〜400V)と48Vバッテリ54からの直流電圧とを切り替える切替スイッチ52,53と、PFCブーストコンバータ44または48Vバッテリ54からの直流電圧をスイッチングするスイッチング素子45と、スイッチング素子45を制御するPWM(Pulse Wide Modulation)制御部46とを備えており、絶縁電力トランス41の二次側に、2つの整流ダイオード(シリコンダイオード)47,48とチョークコイル49とコンデンサ50からなる整流平滑回路と、整流平滑回路からの電圧を降圧するDC−DC降圧レギュレータ51とを備えている。そして、整流平滑回路の出力(27V)は、基地局装置のRF部に供給されると共に、DC−DC降圧レギュレータ51でデジタル電源電圧(3.3V)に降圧されて、基地局装置のベースバンド部等に供給される。
【0003】
上述した従来の基地局電源装置は、バックアップ用の電源として鉛蓄電池を使用しているが、鉛蓄電池は劣化するため、定期的に鉛蓄電池交換のメンテナンスが必要となる。そのため、メンテナンスの必要がなく、寿命の長い電解コンデンサを使用して、瞬時停電時に十分なバックアップ時間を確保できる電源装置が考えられている(特許文献1参照)。
【0004】
図6に電解コンデンサを用いた従来のバックアップ電源装置の回路構成を示す。図6に示すバックアップ電源装置は、負荷に直流電源を供給する電源装置と並列に接続し、電源装置が正常な時に、電源装置から充電電流を取り込んで充電する昇圧充電回路56と、昇圧充電回路56によって昇圧された電気エネルギーを蓄積する電解コンデンサ58と、電解コンデンサ58に蓄積した電気エネルギーを放電する降圧放電回路57とを備え、電源装置に瞬時停電が発生した時に、電気エネルギーを放電して、負荷への電源供給をバックアップするように構成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−073339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した電解コンデンサを用いた従来の電源装置では、複雑な昇圧充電回路が必要となる。
また、移動通信基地局等の装置では、設置場所やコストの面から小型化が進み、回路規模の削減および軽量化が求められ、移動通信基地局等の電源装置も部品点数の削減が望まれている。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、小型化とコストダウンを実現した瞬時停電対応の基地局電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の電源装置は、第1の設定電圧の電力を出力する第1の電力出力部と、電源電圧が所定電圧以上の時に蓄電する蓄電部と、を絶縁電力トランスの二次側に設け、前記蓄電部からの電圧を降圧して前記第1の設定電圧よりも低い第2の設定電圧の電力を出力する第2の電力出力部と、前記第1の電力出力部からの電圧を降圧して前記第2の設定電圧の電力を出力する第3の電力出力部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
前記電源電圧が所定電圧以上の時は、前記第3の電力出力部は、前記第1の電力出力部からの電圧を降圧して前記第2の設定電圧の電力を出力し、前記電源電圧が所定電圧未満の時は、前記第2の電力出力部は、前記蓄電部からの電圧を降圧して前記第2の設定電圧の電力を出力することが好ましい。
【0010】
また、本発明の電源装置は、第1の設定電圧の電力を出力する第1の電力出力部と、電源電圧が所定電圧以上の時に蓄電する蓄電部と、を絶縁電力トランスの二次側に設け、前記蓄電部からの電圧を降圧して前記第1の設定電圧よりも低い第2の設定電圧の電力を出力するとともに、前記第1の電力出力部からの電圧を降圧して前記第2の設定電圧の電力を出力する第2の電力出力部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
前記第2の電力出力部は、前記電源電圧が所定電圧以上の時は、前記第1の電力出力部からの電圧を降圧して前記第2の設定電圧の電力を出力し、前記電源電圧が所定電圧未満の時は、前記蓄電部からの電圧を降圧して前記第2の設定電圧の電力を出力することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、高周波電源の高電圧を利用して、昇圧充電回路の削減を行い、また、さらに降圧放電回路を従来の出力コンバータ回路と共用することで、小型化とコストダウンを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施例に係る基地局電源装置の回路図である。
【図2】図1に示すDC−DC降圧レギュレータの一例を示す回路図である。
【図3】本発明の第2実施例に係る基地局電源装置の回路図である。
【図4】図3に示すDC−DC降圧レギュレータの一例を示す回路図である。
【図5】従来の基地局電源装置の回路図である。
【図6】電解コンデンサを用いた従来のバックアップ電源装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明の基地局電源装置は、商用電源に瞬時停電等が発生した場合に、通信用の大電力高周波(RF)信号を送信するユニット(RF部)のバックアップは行わず、安全のために信号の終端処理を行うユニット(ベースバンド部等)のバックアップを行うことを前提としている。
【0015】
図1は、本発明の第1実施例に係る基地局電源装置の回路図である。図1に示す基地局電源装置は、電圧変換用の絶縁電力トランス1の一次側に、外部から入力される交流電圧(AC)を全波整流するブリッジダイオード2と、整流出力を平滑する平滑コンデンサ3と、力率改善機能を有するPFC(Power Factor Correction)ブーストコンバータ4と、PFCブーストコンバータ4からの直流電圧をスイッチングするスイッチング素子(例えばMOS−FET:Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)5と、スイッチング素子5を制御するPWM(Pulse Wide Modulation)制御部6とを備えている。
【0016】
また、基地局電源装置は、絶縁電力トランス1の二次側に、2つの整流ダイオード(シリコンダイオード)7,8とチョークコイル9とコンデンサ10からなる第1の整流平滑回路16(第1の電力出力部)と、第1の整流平滑回路16からの電圧を降圧するDC−DC降圧レギュレータ11(第3の電力出力部)と、整流ダイオード(シリコンダイオード)12と電流制限抵抗13とコンデンサ14(エネルギー蓄積コンデンサ)からなる第2の整流平滑回路17(蓄電部)と、第2の整流平滑回路17からの電圧を降圧するDC−DC降圧レギュレータ15(第2の電力出力部)とを備えている。
【0017】
第1の整流平滑回路16と第2の整流平滑回路17は、絶縁電力トランス1に対して並列に接続されている。第1の整流平滑回路16の出力(例えば27V)は、基地局装置のRF部に供給されると共に、DC−DC降圧レギュレータ11でデジタル電源電圧(例えば3.3V)に降圧されて、基地局装置のベースバンド部等に供給される。第2の整流平滑回路17の出力は、DC−DC降圧レギュレータ15でデジタル電源電圧に降圧されて、基地局装置のベースバンド部等に供給される。
【0018】
第1実施例では、絶縁電力トランス1の二次側の電圧を監視し、電圧が所定電圧以上である正常時には、第1の整流平滑回路16は、基地局装置のRF部に例えば27Vの電力を供給し、DC−DC降圧レギュレータ11は、第1の整流平滑回路16からの電圧を降圧してデジタル電源電圧(例えば3.3V)の電力を基地局装置のベースバンド部等に供給する。また、第2の整流平滑回路17は、電圧が所定電圧以上である正常時には、コンデンサ14に電気エネルギーを蓄積する。瞬時停電等が発生し、絶縁電力トランス1の二次側の電圧が所定電圧未満になった時は、DC−DC降圧レギュレータ15は、第2の整流平滑回路17からの電圧を降圧してデジタル電源電圧(例えば3.3V)の電力を基地局装置のベースバンド部等に供給する。
【0019】
図2は、図1に示すDC−DC降圧レギュレータの一例を示す回路図である。DC−DC降圧レギュレータ11は、降圧制御信号に基づいて第1の整流平滑回路16からの電圧をスイッチングするスイッチング素子18(例えばMOS−FET)と、チョークコイル19と、2つの整流ダイオード(シリコンダイオード)20,21と、コンデンサ22からなる。
【0020】
スイッチング素子18のソースは、第1の整流平滑回路16の出力に接続され、スイッチング素子18のドレインは、チョークコイル19の一端に接続されている。チョークコイル19の他端は、整流ダイオード20,21の一端に接続されている。整流ダイオード20の他端は接地され、整流ダイオード21の他端はコンデンサ22の一端に接続されている。また、コンデンサ22の他端は接地されている。
DC−DC降圧レギュレータ15もDC−DC降圧レギュレータ11と同様の構成である。
【0021】
図3は、本発明の第2実施例に係る基地局電源装置の回路図である。本発明の第2実施例では、本発明の第1実施例と同じ部材には同じ符号を付している。図3に示す基地局電源装置は、絶縁電力トランス1の一次側に、外部から入力される交流電圧(AC)を全波整流するブリッジダイオード2と、整流出力を平滑する平滑コンデンサ3と、力率改善機能を有するPFCブーストコンバータ4と、PFCブーストコンバータ4からの直流電圧をスイッチングするスイッチング素子5(例えばMOS−FET)と、スイッチング素子5を制御するPWM制御部6とを備えている。
【0022】
また、基地局電源装置は、絶縁電力トランス1の二次側に、2つの整流ダイオード(シリコンダイオード)7,8とチョークコイル9とコンデンサ10からなる第1の整流平滑回路16(第1の電力出力部)と、整流ダイオード(シリコンダイオード)12と電流制限抵抗13とコンデンサ14(エネルギー蓄積コンデンサ)からなる第2の整流平滑回路17(蓄電部)と、第1の整流平滑回路16と第2の整流平滑回路17からの電圧を降圧するDC−DC降圧レギュレータ23(第2の電力出力部)とを備えている。
【0023】
第1の整流平滑回路16と第2の整流平滑回路17は、絶縁電力トランス1に対して並列に接続されている。第1の整流平滑回路16の出力(例えば27V)は、基地局装置のRF部に供給されると共に、DC−DC降圧レギュレータ23でデジタル電源電圧(例えば3.3V)に降圧されて、基地局装置のベースバンド部等に供給される。第2の整流平滑回路17の出力は、DC−DC降圧レギュレータ23でデジタル電源電圧に降圧されて、基地局装置のベースバンド部等に供給される。
【0024】
第2実施例では、絶縁電力トランス1の二次側の電圧を監視し、電圧が所定電圧以上である正常時には、第1の整流平滑回路16は、基地局装置のRF部に例えば27Vの電力を供給し、DC−DC降圧レギュレータ23は、第1の整流平滑回路16からの電圧を降圧してデジタル電源電圧(例えば3.3V)の電力を基地局装置のベースバンド部等に供給する。また、第2の整流平滑回路17は、電圧が所定電圧以上である正常時には、コンデンサ14に電気エネルギーを蓄積する。瞬時停電等が発生し、絶縁電力トランス1の二次側の電圧が所定電圧未満になった時は、DC−DC降圧レギュレータ23は、第2の整流平滑回路17からの電圧を降圧してデジタル電源電圧(例えば3.3V)の電力を基地局装置のベースバンド部等に供給する。
【0025】
図4は、図3に示すDC−DC降圧レギュレータの一例を示す回路図である。DC−DC降圧レギュレータ23は、第1の整流平滑回路16からの電圧をスイッチングするスイッチング素子24(例えばMOS−FET)と、第2の整流平滑回路17からの電圧をスイッチングするスイッチング素子25(例えばMOS−FET)と、切替制御信号に基づいて、スイッチング素子24,25への降圧制御信号を切り替える切替スイッチ26と、チョークコイル27と、2つの整流ダイオード(シリコンダイオード)28,29と、コンデンサ30からなる。
【0026】
スイッチング素子24のソースは、第1の整流平滑回路16の出力に接続され、スイッチング素子25のソースは、第2の整流平滑回路17の出力に接続されている。また、スイッチング素子24,25のゲートは、切替スイッチ26に接続され、スイッチング素子24,25のドレインは、チョークコイル19の一端に接続されている。チョークコイル19の他端は、整流ダイオード20,21の一端に接続されている。整流ダイオード20の他端は接地され、整流ダイオード21の他端はコンデンサ22の一端に接続されている。また、コンデンサ22の他端は接地されている。
【0027】
切替スイッチ26は、絶縁電力トランス1の二次側の電圧が所定電圧以上である正常時には、例えば切替制御信号がOFFになり、切替制御信号のOFFに応じて降圧制御信号をスイッチング素子24へ切り替え、また瞬時停電等が発生して、絶縁電力トランス1の二次側の電圧が所定電圧未満になった時には、例えば切替制御信号がONになり、切替制御信号のONに応じて降圧制御信号をスイッチング素子25へ切り替える。
【0028】
上述したように、本発明は、高周波電源の高電圧を利用することにより、従来必要であった昇圧充電回路の削減を行い、さらに降圧放電回路を従来のDC−DC高圧レギュレータと共用することで、小型化とコストダウンを実現することができる。
【符号の説明】
【0029】
1,41 絶縁電力トランス
2,7,8,12,20,21,28,29,42,47,48 ダイオード
3,10,14,22,30,43,50,58 コンデンサ
4,44 PFCブーストコンバータ
5,18,24,25,45,52,53 スイッチング素子
6,46 PWM制御部
9,19,27,49 チョークコイル
11,15,23,51 DC−DC降圧レギュレータ
13 電流制限抵抗
26 切り替えスイッチ
54 バッテリ
56 昇圧充電回路
57 降圧放電回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の設定電圧の電力を出力する第1の電力出力部と、
電源電圧が所定電圧以上の時に蓄電する蓄電部と、
を絶縁電力トランスの二次側に設け、
前記蓄電部からの電圧を降圧して前記第1の設定電圧よりも低い第2の設定電圧の電力を出力する第2の電力出力部と、
前記第1の電力出力部からの電圧を降圧して前記第2の設定電圧の電力を出力する第3の電力出力部と、
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記電源電圧が所定電圧以上の時は、前記第3の電力出力部は、前記第1の電力出力部からの電圧を降圧して前記第2の設定電圧の電力を出力し、前記電源電圧が所定電圧未満の時は、前記第2の電力出力部は、前記蓄電部からの電圧を降圧して前記第2の設定電圧の電力を出力することを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
第1の設定電圧の電力を出力する第1の電力出力部と、
電源電圧が所定電圧以上の時に蓄電する蓄電部と、
を絶縁電力トランスの二次側に設け、
前記蓄電部からの電圧を降圧して前記第1の設定電圧よりも低い第2の設定電圧の電力を出力するとともに、前記第1の電力出力部からの電圧を降圧して前記第2の設定電圧の電力を出力する第2の電力出力部と、
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
前記第2の電力出力部は、前記電源電圧が所定電圧以上の時は、前記第1の電力出力部からの電圧を降圧して前記第2の設定電圧の電力を出力し、前記電源電圧が所定電圧未満の時は、前記蓄電部からの電圧を降圧して前記第2の設定電圧の電力を出力することを特徴とする請求項3に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−70486(P2012−70486A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211021(P2010−211021)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】