説明

基本ストランドが現場ゴム引き二重層コードであるマルチストランドコード

本発明は、特に産業車両用のタイヤを補強するためのJ+K構造の2つの層(Ci,Ce)を有するマルチストランド金属コード(C‐1)であって、マルチストランド金属コードは、内側層(Ci)を形成するJ(Jは、1〜4)本のストランドを含むコアから成り、内側層(Ci)の周りに外側層(Ce)を形成するK本の外側ストランドが20mm〜70mmの螺旋ピッチPKで螺旋状にコアに巻き付けられ、各外側ストランドは、現場でゴム引きされたL+M構造の2つの層(C1,C2)を有するコードから成り、これら層は、直径d1のL(Lは、1〜4)本のワイヤから成る内側層(C1)及び内側層(C1)にピッチP2で螺旋状に一緒に巻き付けられた直径d2のM(Mは、5以上)本のワイヤの外側層(C2)を含み、これら層は、次の特徴(d1、d2及びP2は、mmで表される)、即ち、‐0.10<d1<0.50、‐0.18<d2<0.50、‐6<p2<30を有し、内側層(C1)は、「充填ゴム」と呼ばれるゴムコンパウンドで外装され、PKに等しい外側ストランドの長さ全体にわたり、充填ゴムは、内側層(C1)のL本のワイヤ及び外側層(C2)のM本のワイヤにより画定された毛管の各々の中に存在すると共に更に、Lが3又は4である場合、内側層(C1)のL本のワイヤにより画定された中央チャネルの中に存在し、外側ストランド中の充填ゴムの量は、ストランド1g当たり5〜40mgであることを特徴とするマルチストランド金属コードに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、大型産業車両、例えば採鉱型の土木工学車両用の空気タイヤの補強に用いることができる超高強度マルチストランドコード(マルチストランドロープとも呼ばれている)に関する。
【0002】
本発明は又、「現場ゴム引き」型のコード、即ち、内側が製造中、未架橋(生)状態のゴム又はゴムコンパウンド(配合物)で被覆され、その後、補強しようとするゴム製品、例えばタイヤ中に組み込まれるコードに関する。
【0003】
本発明は又、タイヤ並びにこれらタイヤの補強材及びこれらタイヤのクラウン補強材(「ベルト」とも呼ばれている)、特に、大型産業車両用のタイヤベルトの補強材に関する。
【背景技術】
【0004】
公知のようにラジアルタイヤは、トレッドと、2つの非伸長性ビードと、ビードをトレッドに接合する2つのサイドウォールと、カーカス補強材とトレッドとの間に周方向に配置されたベルトとを有する。このベルトは、種々のゴムプライ(又は「層」)で形成され、これらプライは、金属又はテキスタイルタイプの補強要素(「補強材」)、例えばコード又はモノフィラメントで補強される場合もあればそうでない場合もある。
【0005】
タイヤベルトは一般に、「実働」プライ又は「クロス掛け」プライと呼ばれる場合が多い数枚の重ね合わされたベルトプライで形成され、ベルトの一般に金属製の補強コードは、実際にプライ内に互いに平行に、しかしながら、或る1つのプライと別のプライに関してクロス掛けされ、即ち、対称であるにせよそうでないにせよ、いずれにせよ、中間周方向平面に対し傾斜して配置されている。これらクロス掛けプライは、一般に、種々の他の補助ゴムプライ又は層を伴う場合があり、これら他の補助ゴムプライ又は層の幅は、場合に応じて様々であり、金属補強材を有している場合もあればそうでない場合もある。特に、ベルトの残部を外部からの攻撃や穴あけから保護する所謂「保護」プライと呼ばれているもの又はクロス掛けプライに対して半径方向外方に位置しているか半径方向内方に位置しているかとは無関係に、実質的に周方向に差し向けられた金属又は非金属補強材を有する「フープ(hoop)」プライと呼ばれている(所謂「ゼロ度プライ」と呼ばれている)ものが挙げられる。
【0006】
タイヤベルトは、公知のように、特に次のしばしば矛盾した種々の要件を満たさなければならない。
‐タイヤは、変形を少なくした状態でできるだけ剛性であければならないということ。
‐タイヤは、一方においては走行中におけるクラウンの内側領域の発熱を最小限に抑えるため及び他方において燃料の節約にほかならないタイヤの転がり抵抗の減少のために、できるだけ小さいヒステリシスを呈さなければならないということ。
‐最後に、タイヤは、比較的腐食性の大気中に存在している間、特に分離現象、即ち「割裂(cleavage)」と呼ばれているタイヤのショルダ領域中のクロス掛けプライの端部の亀裂に関して高い耐久性を備えなければならないということ。
【0007】
第3の要求は、産業車両、特に重車両又は土木機械用タイヤの場合に特に重要であり、これら産業車両両用タイヤは、特に、これのトレッドが長時間にわたる走行又は使用後に摩耗限度に達すると1回又は2回以上更生(retreading)が可能であるように設計されている。
【0008】
上述のこのようなタイヤのベルトの実働クラウンプライを補強するため、例えば米国特許第5461850号明細書、同第5768874号明細書、同第6247514号明細書、同第6817395号明細書、同第6863103号明細書、同第7426821号明細書、米国特許出願公開第2007/0144648号明細書及び国際公開第2008/026271号パンフレットに記載されているように、内側層(Ci)の周りに外側層(Ce)を形成するK本の外側ストランドが螺旋ピッチPKで螺旋状に巻き付けられた内側層(Ci)を形成するJ(Jは、典型的には、1〜4である)本のストランドを有するコアを含む2層マルチストランドスチールコードを用いることが通例である。
【0009】
当業者には周知であるように、これらマルチストランドコードには、これらコードが補強するタイヤベルト中のゴムがストランドを構成するワイヤ相互間の空間中にできるだけ入り込む又は侵入するようゴムをできるだけ含浸させなければならない。この入り込みが不十分であると、ストランドに沿って空のチャネルが形成され、例えばタイヤに切れ目が入り又は違ったやり方でタイヤが攻撃された結果としてタイヤに侵入しやすい腐食物質、例えば水がこれらチャネルに沿ってベルト中に移動する。この水分の存在は、重要な役割を果たし、乾燥状態の雰囲気での使用と比較して、腐食を生じさせると共に疲労プロセス(「腐食‐疲労」現象)を促進させる。
【0010】
これら疲労現象の全ては、一般に「疲労‐フレッチング腐食」という包括的な用語でまとめてグループ化されており、このような現象は、コード及びストランドの機械的性質に累進的な劣化の原因であり、最も過酷な走行条件下においてコード及びストランドの寿命に悪影響を及ぼす場合がある。
【0011】
さらに、コードへのゴムの良好な入り込みにより、コード中に取り込まれる空気の量が少なくなるので、タイヤ硬化時間(短く言って「インプレスタイム(in-press time )」)を短縮することができる。
【0012】
しかしながら、これらマルチストランドコードの構成要素としての要素ストランドには、少なくとも或る特定の場合、ゴムをコアまで真っ直ぐに入り込ませることができないという欠点がある。
【0013】
これは、3+M又は4+M構造の要素ストランドの場合であり、というのは、ゴムによる外部からの含浸後に空のままであり、従って一種の「吸い上げ効果(wicking effect)」により腐食性媒体、例えば水の伝搬にとって都合の良いチャネル又は毛管が3本のコアワイヤの中央のところに存在するからである。3+M構造のストランドのこの欠点は、周知であり、例えば特許文献である国際公開第01/00922号パンフレット、同第01/49926号パンフレット、同第2005/071157号パンフレット及び同第2006/013077号パンフレットに記載されている。
【0014】
3+M構造のコードのこのコアへの真っ直ぐの入り込み問題を解決するため、米国特許出願公開第2002/160213号明細書は、確かに、現場ゴム引き型式のストランドの製造を提案している。この特許文献において提案された手法は、3本のワイヤのうちのちょうど1本又は好ましくは各々を3本のワイヤの組み立て箇所(又はツイスティング又は撚り箇所)の上流側において未硬化ゴムで個々に(即ち、個別に、つまり「ワイヤ毎に」)外装してゴム外装内側層を得て、その後に、外側層のM本のワイヤを次に、このように外装された内側層に巻き付けることにより定位置に配置する。
【0015】
上述の米国特許出願公開第2002/160213号明細書は、3+Mストランドの構造に関する情報を何ら提供せず、特に、組み立てピッチに関する情報も用いられるべき充填ゴムの量に関する情報も提供していない。さらに、提案されているプロセスには多くの問題がある。
【0016】
第1に、3本のうちの1本だけのワイヤの外装(例えばこの米国特許出願公開第2002/160213号明細書の図11及び図12に示されている)によっては、最終のストランドにゴムを十分に充填するようにはならず、したがって、満足のゆく耐食性を得ることができない。第2に、3本のワイヤの各々のワイヤ毎の外装(例えばこの米国特許出願公開明細書の図2及び図5に示されている)によりストランドが効果的に充填されるが、過度に多量のゴムが用いられる。この場合、ゴムが最終ストランドの周囲のところでにじみ出ることは、工業的ケーブリング及びゴム被覆条件下では許容できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5461850号明細書
【特許文献2】米国特許第5768874号明細書
【特許文献3】米国特許第6247514号明細書
【特許文献4】米国特許第6817395号明細書
【特許文献5】米国特許第6863103号明細書
【特許文献6】米国特許第7426821号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0144648号明細書
【特許文献8】国際公開第2008/026271号パンフレット
【特許文献9】国際公開第01/00922号パンフレット
【特許文献10】国際公開第01/49926号パンフレット
【特許文献11】国際公開第2005/071157号パンフレット
【特許文献12】国際公開第2006/013077号パンフレット
【特許文献13】国際公開第2002/160213号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
このようにしてゴム引きされたストランドは、生(未硬化)の状態でのゴムの粘着性が非常に高いので、望ましくないことには製造用ツール又はストランドが巻き取りリールに巻き付けられているときストランドターン相互間にくっつくので、使用できないようになり、この場合、最終的にコードを正確に圧延することができないということは言うまでもない。この場合、圧延が生状態の2つのゴム層相互間への組み込みによりコードを次の製造のため、例えばタイヤを製造するために半完成品としての役目を果たすゴム引き金属ファブリックの状態に変換することから成ることは思い起こされよう。
【0019】
3本のワイヤの各々を個別外装することにより生じるもう1つの問題は、3つの押し出しヘッドの使用により必要となるスペースの量が多いということにある。このようなスペース上の要件に鑑みて、円筒形層(即ち、或る1つの層と別の層とでは異なるピッチp1,p2を備えた層又はピッチp1,p2が互いに同一であるが、撚り方向が1つの層と別の層とでは異なる層)を有するコードの製造は、必然的に、2種類のバッチ作業により、即ち、(i)第1ステップでは、ワイヤを個々に外装し、次に内側層をケーブリングすると共に巻回し、(ii)第2ステップでは、外側層を内側層にケーブリングすることによって実施されなければならない。この場合も又、生状態のゴムの高い粘着性に鑑みて、内側層の巻回及び中間貯蔵では、コイル状層相互間又は所与の層のターン相互間の望ましくないくっつきを回避するために、中間リールへの巻き付けの際にスペーサ及び多くのセパレータの使用が必要である。
【0020】
上述の問題の全ては、工業的見地からは非常に不利であり、高い製造速度の達成に反することになる。
【0021】
本出願人は、研究を続行中、K本のストランドが特定の一製造方法により得られる特定の構造により、上述の欠点を軽減することができるJ+K構造の新規な2層マルチストランドコードを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0022】
したがって、本発明の第1の要旨は、特に産業車両用のタイヤを補強するために使用可能なJ+K構造の2つの層(Ci,Ce)を有するマルチストランド金属コード(C‐1)であって、マルチストランド金属コードは、内側層(Ci)を形成するJ(Jは、1〜4)本のストランドを含むコアから成り、内側層(Ci)の周りに外側層(Ce)を形成するK本の外側ストランドが20mm〜70mmの螺旋ピッチPKで螺旋状にコアに巻き付けられ、各外側ストランドは、
・現場でゴム引きされたL+M構造の2つの層(C1,C2)を有するコードから成り、層は、直径d1のL(Lは、1〜4)本のワイヤから成る内側層(C1)及び内側層(C1)にピッチP2で螺旋状に一緒に巻き付けられた直径d2のM(Mは、5以上)本のワイヤの外側層(C2)を含み、
・次の特徴(d1、d2及びP2は、mmで表される)を有し、即ち、
‐0.10<d1<0.50
‐0.18<d2<0.50
‐6<p2<30
‐内側層(C1)は、「充填ゴム」と呼ばれるゴムコンパウンドで外装され、
‐PKに等しい外側ストランドの任意の長さ分にわたり、充填ゴムは、内側層(C1)のL本のワイヤ及び外側層(C2)のM本のワイヤにより画定された毛管の各々の中に存在すると共に更に、Lが3又は4である場合、内側層(C1)のL本のワイヤにより画定された中央チャネルの中に存在し、
‐外側ストランド中の充填ゴムの量は、ストランド1g当たり5〜40mgであることを特徴とするマルチストランド金属コードにある。
【0023】
本発明は又、ゴム製品又は半完成品、例えば、プライ、ホース、ベルト、コンベヤベルト及びタイヤを補強するためのこのようなマルチストランドコードの使用に関する。
【0024】
本発明のマルチストランドコードは、大抵の場合、特に産業車両、例えば「重」車両、即ち、地下鉄、バス、道路輸送車両(ローリ、トラクタ、トレーラ)、オフロード車、農業機械又は土木機械及び他の輸送又は取扱い車両用のタイヤのベルトのための補強要素として用いられるようになっている。
【0025】
本発明は又、本発明のマルチストランドコードで補強された場合のゴム製品又は半完成品自体、特に産業用車両用の特にタイヤに関する。
【0026】
本発明及びその利点は、以下の説明及び実施形態並びにこれら実施形態に関連した図1〜図8を参照すると容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のマルチストランドコードに用いることができる円筒形の層を有する形式の3+9構造のストランドの断面図である。
【図2】図1のストランドを組み込んだ(1+6)×(3+9)構造の本発明のマルチストランドコードの一例の断面図である。
【図3】図1のストランドを組み込んだ(1+6)×(3+9)構造の本発明のマルチストランドコードの別の例の断面図である。
【図4】本発明のマルチストランドコードに用いることができるコンパクト型の3+9構造のストランドの別の例の断面図である。
【図5】図4のストランドを組み込んだ(1+6)×(3+9)構造の本発明のマルチストランドコードの別の例の断面図である。
【図6】図4のストランドを組み込んだ(1+6)×(3+9)構造の本発明のマルチストランドコードの別の例の断面図である。
【図7】本発明のマルチストランドコードの製造に用いられるようになったストランドを製造するために使用できるツイスティング及び現場ゴム引き設備の一例を示す図である。
【図8】この全体的記載において本発明によるものであれそうでないにせよいずれにせよ、半径方向カーカス補強材を備えた産業車両用のタイヤケーシングの半径方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
I.測定及び試験
I‐1.引張試験測定
金属ワイヤ及び金属コードに関し、Fmで表される破断力(単位がN(ニュートン)の最大荷重)、Rm(単位はMPa)により表される引張強度及びAtにより表される破断点伸び率(%で表した全伸び率)の測定は、ISO6892(1984)規格に従って張力下で行われる。
【0029】
ジエンゴムコンパウンドに関し、弾性率(モジュラス)の測定は、別段の指定がなければ、1998年のASTM・D・412規格(試験片“C”)に従って張力下で実施され、「真の」割線モジュラス(即ち、試験片の実際の断面に関する)は、10%伸び率における第2の伸びで(即ち、適合サイクル後)測定され、割線モジュラスは、E10で示されると共にMPaで表される(ASTM・D・1349(1999)規格に従って通常の温度及び相対湿度条件下)。
【0030】
I‐2.通気度試験
この試験では、所与の時間にわたり一定の圧力下で試験片中を通る空気の量を測定することにより試験対象の要素コードの長手方向通気度を求めることができる。当業者には周知であるこのような試験の原理は、コードが空気に対して不透過性であるようにするためにコードの処理の有効性を立証することにある。試験は、例えば、規格ASTM‐D2692‐98に記載されている。
【0031】
試験は、この場合、次の被覆及び硬化を受ける製造されたばかりのマルチストランドコードから抽出されたストランドかタイヤから取り出され又はこれらマルチストランドコードが補強するゴムプライから抽出されたコード、従って硬化ゴムで既に被覆されたコードかのいずれかに対して実施される。
【0032】
第1の場合(製造されたままのマルチストランドコード)、抽出されたコードは、試験の実施前に、外部から被覆ゴムコンパウンドで被覆されなければならない。これを行うため、互いに平行に(20mmのストランド間距離で)位置するよう配列された一連の10本のストランドを硬化ゴムコンパウンドの2つのスキム(測定長さが80×200mmの2つの長方形)相互間に配置し、各スキムの厚さは、3.5mmである。次に、組立体全体をモールド内にクランプし、ストランドの各々は、これがクランプモジュールを用いてモールド内に配置されているときに真っ直ぐなままであるようにするために十分な張力(例えば2daN)下に維持される。加硫(硬化)プロセスは、140℃の温度で且つ15バールの圧力(測定長さが80×200mmの長方形ピストンによって及ぼされる)下において40分にわたり行われる。この後、組立体を脱型し、そして特徴付けのために測定の長さが7×7×Ltの平行六面体の形態をした、上記のように被覆されたストランドの10個の試験片の状態に切断する。
【0033】
従来型タイヤ用ゴムコンパウンドは、被覆ゴムコンパウンドとして用いられ、このコンパウンドは、天然(解凝固)ゴム及びN330カーボンブラック(65phr)を主成分とし、更に、次の標準の添加物、即ち、硫黄(7phr)、スルフェンアミド促進剤(1phr)、ZnO(8phr)、ステアリン酸(0.7phr)、酸化防止剤(1.5phr)及びコバルトナフテネート(1.5phr)を更に含む。被覆ゴムコンパウンドの弾性率E10は、約10MPaである。
【0034】
試験は、以下のように、周囲ゴムコンパウンド(又は被覆ゴコンパウンドム)で被覆されたストランドの所定の長さLt(例えばPK、3cm又は2cmに等しい)分について実施され、即ち、空気を1バールの圧力下でストランドの入口に注入し、これから出る空気の量を流量計(例えば0〜500cm3/分に較正されている)の使用により測定する。測定中、ストランド試験片を、ストランドの一端からその他端までその長手方向軸線に沿って通過した空気の量だけを測定するように圧縮シール(例えば、ゴム又は高密度フォームシール)に収納して動かないようにする。前もって、固体ゴム試験片を用いて即ち、ストランドの入っていないゴム試験片を用いてシールの密封性をチェックする。
【0035】
測定平均空気流量(10個の試験片に関する平均値)は、ストランドの長手方向不透過性が高ければ高いほど、それだけ一層低い。測定値の精度は±0.2cm3/分なので、0.2cm3/分以下の測定値は、ゼロであるとみなされ、これら測定値は、ストランド軸線(即ち、その長手方向)に沿って気密(完全に気密)であるということができるストランドに相当する。
【0036】
I‐3.充填ゴムの量
当初のストランド(したがって、現場ゴム引きストランド)の重量と適当な電解処理により充填ゴムを除去したストランド(したがってそのワイヤのストランド)の重量の差を測定することにより充填ゴムの量を測定する。
【0037】
スペース上の要件を緩和するためにそれ自体巻かれたストランド試験片(長さ1m)は、電解装置のカソード(発電機の負の端子に接続される)を構成し、アノード(正の端子に接続される)は、白金線から成る。電解液は、1リットル当たり1モルの炭酸ナトリウムを含む水溶液(脱イオン水)から成る。
【0038】
電解液中に完全に浸漬された試験片には、300mAの電流で電圧を15分間印加する。次に、ストランドを浴から取り出し、水で十分過ぎるほど濯ぎ洗いする。この処理により、ゴムをストランドから容易に取り外すことができる(もしこのようにしなければ、電解が数分間続く)。例えばワイヤを1本ずつその撚りをほどいてストランドから取り外しながら吸収性の布を用いてゴムを拭うだけでゴムを注意深く除去する。ワイヤを再び水で濯ぎ洗いし、次に脱イオン水(50%)/エタノール(50%)混合液を収容したビーカ内に浸漬させる。ビーカを10分間超音波浴中に浸漬させる。このようにしてゴムを残さず剥ぎ取ったワイヤをビーカから取り出し、窒素又は空気の流れ中で乾燥させ、最終的に秤量する。
【0039】
このことから、計算により、10個の測定値(即ち、全部でストランド10m分)について平均された初期ストランドの1g(グラム)当たりのストランド中における充填ゴムのmg(ミリグラム)で表された充填ゴム量が導き出される。
【0040】
II.発明の詳細な説明
本明細書において、別段の指定がなければ、指示された割合(%)の全ては、重量パーセントである。
【0041】
さらに、「aとbとの間」という表現により示された値の間は、aよりも大きく且つbよりも小さい値の範囲を示しており(即ち、極値a,bは除かれる)、これに対し、「aからbまで」という表現により示された値の間は、aからまでの値の範囲(即ち、極値a,bが含まれる)を意味している。
【0042】
II‐1.本発明のマルチストランドコード
したがって、本発明のマルチストランド金属コードは、内側層(Ci)を形成するJ(Jは、1〜4)本のストランドを含むコア(即ち、思い出されるべきこととして、外側層の支持部材)から成り、内側層(Ci)の周りに外側層(Ce)を形成するK本の外側ストランドが20mm〜70mmの螺旋ピッチPKで螺旋状にコアに巻き付けられる。
【0043】
K本の外側ストランドは各々、それ自体、現場でゴム引きされたL+M構造の2つの層(C1,C2)を有するコードから成り、層は、直径d1のL(Lは、1〜4)本のワイヤから成る内側層(C1)及び内側層(C1)にピッチP2で螺旋状に一緒に巻き付けられた直径d2のM(Mは、5以上)本のワイヤの外側層(C2)を含む。
【0044】
これらK本の外側ストランドは各々、次の特徴(d1、d2及びP2は、mmで表される)を有し、即ち、
‐0.10<d1<0.50
‐0.18<d2<0.50
‐6<p2<30
‐内側層(C1)は、「充填ゴム」と呼ばれるゴムコンパウンドで外装され、
‐PKに等しい外側ストランドの任意の長さ分にわたり、充填ゴムは、内側層(C1)のL本のワイヤ及び外側層(C2)のM本のワイヤにより画定された毛管の各々の中に存在すると共に更に、Lが3又は4である場合、内側層(C1)のL本のワイヤにより画定された中央チャネルの中に存在し、
‐外側ストランド中の充填ゴムの量は、外側ストランド1g当たり5〜40mgである。
【0045】
各外側ストランドは、現場ゴム引きコードと呼ばれる場合があり、即ち、内部がその製造中、(従って、製造されたばかりの状態では)充填ゴムでゴム引きされる。換言すると、内側層(C1)のワイヤと外側層(C2)のワイヤとの間に位置すると共にこれらによって画定される毛管又は隙間(これら2つの用語は、区別なく使用でき、充填ゴムが存在していない空所又は自由空間を意味している)の各々は、ストランドの軸線に沿って連続的であるにせよそうでないにせよいずれにせよ、充填ゴムで少なくとも部分的に充填されている。さらに、内側層(C1)の3本又は4本のワイヤ(Lは、3又は4に等しい)により形成される中央チャネル又は毛管にも、幾分かの充填ゴムが入り込んでいる。
【0046】
好ましい実施形態によれば、PK(より好ましくは、3cmに等しく、更により好ましくは2cmに等しい)に等しい任意の外側ストランド部分にわたり、中央チャネル(Lは、3又は4に等しい)及び各毛管又は隙間は、上述したように、少なくとも1つのゴム栓を有する。換言すると、好ましくは、PKごとに(より好ましくは、外側ストランドの3cmごとに、更により好ましくは2cmごとに)少なくとも1つのゴム線が存在し、このようなゴム線は、通気度試験(セクションI‐2による)において、本発明のマルチストランドコアの各外側ストランドが2cm3/分未満、より好ましくは0.2cm3/分未満又はせいぜいこれに等しい平均空気流量を有するよう中央チャネル及び外側ストランドの各毛管又は隙間を塞ぐ。
【0047】
各外側ストランドは、その充填ゴム含有量がストランド1g当たり5〜40mgのゴムコンパウンドであるという別の本質的な特徴を有する。
【0048】
指定した最小値未満においては、充填ゴムは、PKに等しい(より好ましくは3cmに等しく、さらにより好ましくは2cmに等しい)外側ストランドの任意の長さ分にわたり、ストランドの隙間又は毛管の各々の中に少なくとも部分的に事実存在するようにすることが可能ではなく、これに対し、指定した最大値を超える場合、充填ゴムがストランドの周囲の表面のところでにじみ出るので上述の種々の問題が生じる場合がある。これらの理由の全てにより、充填ゴム含有量は、ストランド1g当たり5〜35mg、例えば10〜30mgであることが好ましい。
【0049】
このような充填ゴムの量は(この量が上述の限度内で制御される)、L+M構造の各外側ストランドの幾何学的形状に適合した特定のツイスティング‐ゴム引きプロセスの使用によってのみ可能になり、これについては後で詳細に説明する。
【0050】
この特定のプロセスの実施により、充填ゴムの量が制限されたストランドを得ることができるが、Lが3又は4に等しい場合、各外側ストランド中、特にその中央チャネル中に内側仕切り(ストランドの軸線に沿って連続しているにせよ不連続であるにせよいずれにせよ)又はゴム栓が十分な数存在するようになる。各外側ストランドは、ストランドに沿う腐食性流体、例えば水又は空気からの酸素に対して不透過性であり又はその伝搬を止めるようになり、本明細書の背景技術の項に記載された吸い上げ効果が阻止される。
【0051】
本発明の特に好ましい一実施形態によれば、特定の特徴が検証され、即ち、PKに等しい(より好ましくは3cmに等しく、さらにより好ましくは2cmに等しい)外側ストランドの任意の長さ分にわたり、各外側ストランドは、長手方向に沿って気密であり又はほぼ気密である。
【0052】
項目I‐2で説明した通気度試験では、「気密」のL+M構造ストランドは、平均空気流量が0.2cm3/分未満であり又はせいぜいこれに等しいことを特徴とし、これに対し、「ほぼ気密」のL+M構造ストランドは、平均空気流量が2cm3/分未満、より好ましくは1cm3/分未満であるという特徴を有する。
【0053】
コードの強度と実現可能性と剛性とコードの圧縮の際の耐久性との間の最適化された妥協点を見出すため、一方の層と他方の層とでは同一であっても良く又は同一でなくても良い層C1,C2のワイヤの直径が0.15〜0.35mmであることが好ましい。
【0054】
層C1,C2のワイヤは、一方の層と他方の層とで同一の直径を有しても良く、或いは異なる直径を有しても良い。一方の層と他方の層とで同一の直径(即ち、d1=d2)のワイヤを用いることが可能であり、それにより特にストランドの製造が単純化されると共にこれらのコストが減少する。
【0055】
好ましい実施形態によれば、各外側ストランドにおいて、p2は、12mmから25mmまでの範囲にある。
【0056】
別の好ましい実施形態によれば、PKは、25mm〜60mm、好ましくは30mmから50mmまでの範囲にある。
【0057】
公知であるように、ピッチ“p”は、外側ストランド又はマルチストランドコードの軸線に平行に測定した長さを表し、マルチストランドコードの端部のところでは、それぞれこのピッチを有するワイヤ又は外側ストランドは、この軸線回りに1回転していることがここで思い起こされよう。
【0058】
さらに、次の関係式、即ち
1.5≦PK/p2≦3.0
が満たされる。
【0059】
さらにより好ましくは、次の関係式、即ち
2.0≦PK/p2≦2.5
が満たされる。
【0060】
好ましい実施形態によれば、各外側ストランドにおいて、Lは、1に等しく、即ち、単一ワイヤは、各外側ストランドの内側層(C1)を構成している。
【0061】
考えられる別の実施形態によれば、Lは、1とは異なり、このような場合、直径d1のL本のワイヤは、好ましくは次の関係式、
20<p1/d1<100
より好ましくは次の関係式、
25<p1/d1<75
を満たすピッチp1で螺旋状に巻回される。
【0062】
別の好ましい実施形態によれば、Lは、1とは異なり、このような場合、好ましくは、次の関係式、
0.5<p1/p2<1
が満たされる。
【0063】
より好ましくは、このような場合、各外側ストランドにおいて、p1は、6mmから30mmまでの範囲、好ましくは6mmから25mmまでの範囲にある。別のより好ましい実施形態によれば、各外側ストランドにおいて、p1は、p2に等しい。
【0064】
別の好ましい実施形態によれば、各外側ストランドは、次の関係式、即ち、
0.7≦d1/d2≦1.3
より好ましくは次の関係式、即ち、
0.8≦d1/d2≦1.2
を満たす。
【0065】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、Lが1とは異なる場合、各外側ストランドにおいて、外側層(C2)のM本のワイヤは、内側層(C1)のワイヤと比較して、異なるピッチか又は異なる撚り方向かのいずれかで或いは異なるピッチと異なる撚り方向の両方で螺旋状に巻回される。
【0066】
特に、2つの層C1,C2が同一撚り方向(S/S又はZ/Z)であるが、異なるピッチ(即ち、p1≠p2)で巻回されているのは、例えば図1に記載されているように円筒形の層を有するストランドの場合である。このような円筒形層状ストランドでは、コンパクトさは、各外側ストランドの断面が円形の輪郭を有し、多角形の輪郭を有していないようなものである。
【0067】
しかしながら、本発明の別の考えられる実施形態によれば、Lが1とは異なる場合、コンパクト型の(即ち、多角形の輪郭を備えている)外側ストランドが得られるように、各外側ストランドにおいて、外側層(C2)のワイヤは、内側層(C1)のワイヤと同一ピッチ且つ同一撚り方向で螺旋状に巻回される。
【0068】
K本の外側ストランドの各々の外側層C2は、好ましくは飽和層であり、即ち、定義上、この層の中には直径d2の少なくとも1本の(Mmax+1)番目のワイヤを追加するのに十分な空間が無く、Mmaxは、内側層C1に1つの層として巻き付けることができるワイヤの最大本数を表している。この構成は、充填ゴムがその周囲のところでにじみ出る恐れを制限すると共に外側ストランド直径が所与の場合、高い強度を提供するという利点を有する。
【0069】
ワイヤの本数Mは、本発明の特定の実施形態に応じて、非常に広いばらつきがあって良く、例えば5〜14本のワイヤであり、理解されるべきこととして、Lは、1〜4であるのが良く、ワイヤの最大本数Mmaxは、L本のコアワイヤの直径d1と比較して直径d2を減少させると増大し、それにより好ましくは外側層が飽和状態に保たれるようになる。
【0070】
1つの考えられる好ましい実施形態によれば、K本の外側ストランドの各々では、Lは、1に等しく、Mは、より好ましくは5、6又は7に等しい。換言すると、各外側ストランドは、1+5構造、1+6構造及び1+7構造を有するコードの群から選択される。この場合、Mは、より好ましくは6に等しい。
【0071】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、K本の外側ストランドの各々では、Lは、2に等しく、Mは、より好ましくは7、8又は9に等しい。換言すると、各外側ストランドは、2+7構造、2+8構造及び2+9構造を有するコードの群から選択される。この場合、Mは、より好ましくは8に等しい。
【0072】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、K本の外側ストランドの各々では、Lは、3に等しく、Mは、より好ましくは8、9又は10に等しい。換言すると、各外側ストランドは、3+8構造、3+9構造及び3+10構造を有するコードの群から選択される。この場合、Mは、より好ましくは9に等しい。
【0073】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、K本の外側ストランドの各々では、Lは、4に等しく、Mは、より好ましくは8、9、10又は11に等しい。換言すると、各外側ストランドは、4+8構造、4+9構造、4+10構造及び4+11構造を有するコードの群から選択される。この場合、Mは、より好ましくは9又は10に等しい。
【0074】
上述の好ましい外側ストランドの全てに関し、2つの層(C1,C2)のワイヤは、一方の層(C1)と他方の層(C2)とで異なる直径(即ち、d1=d2)を有しても良く、異なる直径(即ち、d1≠d2)を有しても良い。
【0075】
本発明のマルチストランドコードの外側ストランドは、全ての多層コードと同様、2つの形式、即ち、コンパクト型又は円筒形層状型のもであって良い。
【0076】
好ましくは、Lが1とは異なる場合、層C1,C2のワイヤは全て、同一の撚り方向に、即ち、S方向(S/S構造)かZ方向(Z/Z構造)かのいずれかに巻回される。層C1,C2を同一方向に巻回すると、有利には、これら2つの層相互間の擦れ合いを最小限に抑えることができ、従って、これら層を構成するワイヤの摩耗を最小限に抑えることができる。さらにより好ましくは、2つの層C1,C2は、例えば図1に示されているように円筒形層状型の外側ストランドを得るために同一方向(S/S又はZ/Z)に異なるピッチ(p1<p2)で巻回する。
【0077】
図1は、本発明のマルチストランドコードで使用することができる3+9構造の好ましいストランドの一例をストランド(真っ直ぐであると共に休止状態であると仮定されている)の軸線に垂直な断面で概略的に示している。
【0078】
このストランド(10)は、円筒形層状型のものであり、即ち、その内側及び外側層(C1,C2)のワイヤ(11,12)は、同一ピッチ(p1=p2)であるが異なる方向(S/Z又はZ/S)に巻回され又は撚り方向がどのようなものであれ(S/S又はZ/Z又はS/Z又はZ/S)異なるピッチ(p1≠p2)で巻回される。公知のように、この種の構造は、ワイヤが同心且つ管状である2つの隣り合う層(C1,C2)として配置され、ストランド(及びその2つの層)に円筒形であるが多角形ではない外側輪郭E(点線で示されている)を与えるという結果を有する。
【0079】
この図1は、充填ゴム(14)がワイヤを極めて僅かに扇形に広げた状態で、内側層(C1)の3本のワイヤ(11)により構成された中央チャネル(13)及び更に一方において内側層(C1)の3本のワイヤ(11)と外側層(C2)の9本のワイヤ(12)との間に位置した毛管又は隙間(15)(一例として、これらのうちの数個が三角形の記号で示されている)の各々を少なくとも部分的に充填している(この例では、完全に充填している)状態を示している。
【0080】
好ましい実施形態によれば、L+M構造の各外側ストランドでは、充填ゴムは、これが覆っている内側層(C1)の周りに連続的に延びる。
【0081】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、本発明のマルチストランドコードでは、コアのJ(Jは、1〜4である)本のストランドの各々はそれ自体、L+M構造の2層コードから成っており、この2層コードは、更に、好ましくは上述したK本の外側ストランドの特徴を満足する。
【0082】
本発明の別のより好ましい実施形態によれば、コアのJ(Jは、1〜4である)本のストランドの各々は、K本の外側ストランドの構造と同一の構造を有する。しかしながら、本発明は、J本のストランドの各々がK本の外側ストランドの構造とは異なる構造を有する場合にも当てはまる。
【0083】
1つの特定の好ましい実施形態によれば、本発明のマルチストランドコードは、全部で6本のストランド、即ち、コア又は内側層(Ci)を形成する中央ストランド及び外側層(Ce)を形成する5本の外側ストランドを含み、コードは、好ましくは、1×(1+6)+5×(3+9)構造を有する。
【0084】
別の特定の且つ好ましい実施形態によれば、マルチストランド金属コードは、全部で7本のストランド、即ち、コア又は内側層(Ci)を形成する中央ストランド及び外側層(Ce)を形成する6本の外側ストランドを含み、コードは、好ましくは、(1+6)×(1+6)又は(1+6)×(3+9)構造を有する。
【0085】
図2は、(1+6)×(3+9)構造を有し、同様な命名法によれば、1×(3+9)+6×(3+9)構造を有する本発明のこのようなマルチストランドコード(C‐1で示されている)の好ましい例をコード(この場合も又、真っ直ぐであると共に休止状態であると仮定される)の軸線に垂直な断面で概略的に示している。この例では、7本の外側ストランドの各々、即ち、6本の外側ストランド(K=6)が中央ストランドを包囲しているような中央ストランド(J=1)は、図1を参照して上述した要素ストランド(10)に対応した同一の(3+9)構造を有する。本発明のこのマルチストランドコードには、現場でゴム引きされているその個々のストランドにより、理解できるように、充填ゴム(14)が非常に入り込んでおり、それにより、マルチストランドコードに向上した耐疲労腐食性を与えている。
【0086】
別の特定の且つ好ましい実施形態によれば、マルチストランド金属コードは、全部で8本のストランド、即ち、コア又は内側層(Ci)を形成する中央ストランド及び外側層(Ce)を形成する7本の外側ストランドを含み、コードは、好ましくは、1×(3+9)+7×(1+6)構造を有する。
【0087】
別の特定の好ましい実施形態によれば、本発明のマルチストランドコードは、全部で9本のストランド、即ち、コア又は内側層(Ci)を形成する中央ストランド及び外側層(Ce)を形成する8本の外側ストランドを有し、このコードは、例えば、特に1×(3+9)+8×(1+6)又は1×(4+10)+8×(1+6)構造を有する。
【0088】
別の特定の好ましい実施形態によれば、本発明のマルチストランドコードは、全部で10本のストランド、即ち、コア又は内側層(Ci)を形成する中央ストランド及び外側層(Ce)を形成する9本の外側ストランドを有し、このコードは、例えば、特に1×(3+9)+9×(1+6)又は1×(4+10)+9×(1+6)構造を有する。
【0089】
別の特定の好ましい実施形態によれば、本発明のマルチストランドコードは、全部で11本のストランド、即ち、コア又は内側層(Ci)を形成する3本の中央ストランド及び外側層(Ce)を形成する8本の外側ストランドを有し、このコードは、例えば、特に3×(1+6)+8×(1+6)又は3×(3+9)+8×(3+9)構造を有する。
【0090】
別の特定の好ましい実施形態によれば、本発明のマルチストランドコードは、全部で12本のストランド、即ち、コア又は内側層(Ci)を形成する3本の中央ストランド及び外側層(Ce)を形成する9本の外側ストランドを有し、このコードは、例えば、特に(3+9)+(1+6)又は(3+9)+(3+9)構造を有する。
【0091】
別の特定の好ましい実施形態によれば、本発明のマルチストランドコードは、全部で13本のストランド、即ち、コア又は内側層(Ci)を形成する4本の中央ストランド及び外側層(Ce)を形成する9本の外側ストランドを有し、このコードは、例えば、特に4×(1+6)+9×(1+6)又は4×(3+9)+9×(3+9)構造を有する。
【0092】
別の特定の好ましい実施形態によれば、本発明のマルチストランドコードは、全部で14本のストランド、即ち、コア又は内側層(Ci)を形成する4本の中央ストランド及び外側層(Ce)を形成する11本の外側ストランドを有し、このコードは、例えば、特に3×(3+9)+11×(1+6)構造を有する。
【0093】
別の特定の好ましい実施形態によれば、本発明のマルチストランドコードは、全部で15本のストランド、即ち、コア又は内側層(Ci)を形成する4本の中央ストランド及び外側層(Ce)を形成する12本の外側ストランドを有し、このコードは、例えば、特に3×(3+9)+12×(1+6)構造を有する。
【0094】
本発明のマルチストランドコードは、本発明の特に好ましい一実施形態によれば、それ自体未加硫状態の充填ゴムで外装されたコア(思い起こされるべきこととして、J(Jは、1〜4である)本のストランドから成る)を有し、この充填ゴムは、外側ストランドの現場ゴム引きに使用された配合と同一の又はこれとは異なる配合を有する。これを行うため、本発明のコードの構成要素としての外側ストランドについて図7に概略的に示されているように、マルチストランドコードのコア又は内側層(Ci)を適当な寸法の押し出しヘッドに通し、その後、K本の外側ストランドの外側層(Ce)がケーブリングによって定位置に配置されるだけで十分である。
【0095】
図3は、(1+6)×(3+9)構造を有する本発明のマルチストランドコード(C‐2で示されている)の一例をマルチストランドコード(真っ直ぐであると共に休止状態であると仮定されている)の軸線に垂直な断面で概略的に示しており、この場合、その内側層Ciを形成する(3+9)構造の単一の中央ストランドはそれ自体、前もって充填ゴム(16)で外装されており、その後、円筒形外側層Ceを形成するため(3+9)構造の6本の外側ストランドが中央ストランド周りにケーブリングされ、外装される。注目されるべきこととして、このコードC‐2を構成する7本の外側ストランド(10)は、これら自体、充填ゴム(14)で現場ゴム引きされる。
【0096】
本発明のこのマルチストランドコードは、言わば「デュアル」現場ゴム引きにより、即ち、先の製造中における個々のストランド及びそのケーブリング中におけるそれ自体の現場ゴム引きにより、理解できるように、充填ゴム(14,16)による更に良好な入り込み状態を示しており、これは、当業者には認識されるように、優れた耐疲労腐食性の指標である。
【0097】
本発明のマルチストランドコードのコア(J(Jは、1〜4である)本の中央ストランドから成る)を外装するために用いられる充填ゴム(16)は、K本の外側ストランドの現場ゴム引きに用いられる充填ゴム(14)の配合と同一の配合を有しても良く、或いはこれとは異なる配合を有しても良い。
【0098】
本発明のマルチストランドコードは、上述のコードを構成する上述のストランドと同様、2つの形式、即ち、コンパクト型又はより好ましくは円筒形層状型のものであって良い。これらのマルチストランドコードは、K本の外側ストランドに外側ストランドの方向と同一の方向(S又はZ)又はこれとは逆の方向に螺旋に巻き付けられた単一の細いワイヤから成る外側ラップを備えても良く又は備えなくても良い。
【0099】
図4は、(3+9)構造を有する本発明のマルチストランドコードに使用できる好ましいストランドの別の例をストランド(真っ直ぐであると共に休止状態であると仮定されている)の軸線に垂直な断面で概略的に示している。
【0100】
このストランド(20)は、コンパクト型のものであり、即ち、その内側及び外側層(C1,C2)のワイヤ(21,22)は、同一ピッチ(p1=p2)であり且つ同一方向(S/S又はZ/Z)に巻回される。この種の構造は、ワイヤが2つの同心の且つ隣り合う層(C1,C2)として配置され、ストランド(及びその2つの層)に多角形であるが円筒形ではない外側輪郭E(点線で示されている)を与えるという結果を有する。
【0101】
図4は、充填ゴム(24)がワイヤを極めて僅かに扇形に広げた状態で、内側層(C1)の3本のワイヤ(21)により構成された中央チャネル(23)及び更に一方において内側層(C1)の3本のワイヤ(21)と外側層(C2)の9本のワイヤ(22)との間に位置した毛管又は隙間(25)(一例として、これらのうちの数個が三角形の記号で示されている)の各々を少なくとも部分的に充填している(この例では、完全に充填している)状態を示し、これらワイヤは、3本ずつ取られている。全部で12個の毛管(25)がこのストランド中に存在しており、中央チャネルがこれら毛管に追加されている。
【0102】
図5は、1×(1+6)+6×(3+9)構造を有する本発明のマルチストランドコード(C‐3で示されている)の別の好ましい例をコード(この場合も又、真っ直ぐであると共に休止状態であると仮定されている)の軸線に垂直な断面で概略的に示している。この例では、6本の外側ストランドの各々は、図4を参照して上述したストランド(20)の場合に対応した同一の(3+9)構造を有する。本発明のマルチストランドコードのコアを形成する中央ストランドは、異なる構造、即ち(1+6)構造を有する。本発明のこのマルチストランドコードには、現場でゴム引きされているその個々のストランドにより、理解できるように、充填ゴム(24)が非常に入り込んでおり、それにより、マルチストランドコードに向上した耐疲労腐食性を与えている。
【0103】
図6は、上述のコードC‐3の構造と同一の1×(1+6)+6×(3+9)構造を有する本発明のマルチストランドコード(C‐4で示されている)の別の例を概略的に示しているが、その内側層Ciを形成する(1+6)構造の単一の中央ストランドはそれ自体、前もって充填ゴム(26)で外装されており、その後、円筒形外側層Ceを形成するため(3+9)構造の6本の外側ストランドが中央ストランド周りにケーブリングされ、外装される。このコードC‐4を構成する6本の外側ストランド(10)は、これら自体、充填ゴム(14)で現場ゴム引きされる。
【0104】
Jが1とは異なる場合、内側層Ciのストランドは、好ましくは、同一の撚り方向に、即ち、S方向(S/S構造)かZ方向(Z/Z構造)かのいずれかに巻回される(螺旋ピッチPJで)。層Ci,Ceを同一方向に巻回すると、有利には、これら2つの層相互間の擦れ合いを最小限に抑えることができ、従って、これら層を構成するワイヤの摩耗を最小限に抑えることができる。
【0105】
さらにより好ましくは、2つの層は、例えば図2及び図3に示されているように円筒形層状型のマルチストランドコードを得るため、同一方向(S/S又はZ/Z)に且つ異なるピッチ(好ましくは、PJ<PK)で巻回される。
【0106】
好ましくは、本発明のマルチストランドコードでは、Jが1とは異なる場合、ピッチPJは、15〜45mm、より好ましくは20〜40mmである。
【0107】
別の好ましい実施形態によれば、Jが1とは異なる場合、次の関係式、即ち、
0.5≦PJ/PK≦1
が満たされる。
【0108】
本発明は、当然のことながら、未硬化状態(充填ゴムが加硫されていない)及び硬化状態(充填ゴムが加硫されている)の両方における上述のマルチストランドコードに関する。しかしながら、未硬化状態の充填ゴムを備えた本発明のマルチストランドコードを使用し、次に、充填ゴム最終加硫中、充填ゴムと周囲のゴムマトリックス(例えば、圧延ゴム)との結合を促進するようマルチストランドコードの設計対象の半完成品又は完成品、例えばタイヤに組み込まれることが好ましい。
【0109】
「金属コード又はストランド」という表現は、本願においては、定義によりワイヤで作られたコード又はストランドを意味するものと理解され、これらワイヤは、大部分(即ち、本数で言ってこれらワイヤの50%以上)又は全体(ワイヤの100%)が金属材料で作られている。ワイヤは、好ましくは、スチール、より好ましくは炭素鋼である。しかしながら、当然のことながら、他のスチール、例えばステンレス鋼又は合金を用いることが可能である。
【0110】
炭素鋼を用いる場合、その炭素含有量(スチールの重量を基準とした%)は、好ましくは、0.4%〜1.2%、特に0.5%〜1.1%である。このような含有量は、タイヤに必要な機械的性質とワイヤの実現性との良好な妥協点を表している。注目されるべきこととして、0.5%〜0.6%の炭素含有量がこのようなスチールを最終的にコスト安にすることができる。というのは、このようなスチールは、延伸が容易だからである。また、本発明の別の有利な実施形態は、意図した用途に応じて、コスト安及び高いワイヤ延伸性に鑑みて、低炭素含有量、例えば0.2%〜0.5%の炭素含有量を有するスチールの使用にある。
【0111】
用いられる金属又はスチールは、特にこれが炭素鋼であるにせよステンレス鋼であるにせよ、いずれにせよ、それ自体、金属層で被覆されるのがよく、この金属層は、例えば、金属コード及び(又は)その構成要素の処理特性又はコード及び(又は)タイヤそれ自体の使用特性、例えば、付着性、耐腐食性又は耐老化性を向上させる。好ましい実施形態によれば、用いられるスチールは、真鍮(Zn−Cu合金)又は亜鉛の層で覆われる。思い起こされることとして、ワイヤの製造方法中、真鍮又は亜鉛被膜は、ワイヤの絞り成形並びにゴムへのワイヤの付着性を容易にする。しかしながら、ワイヤは、例えばこれらワイヤの耐腐食性及び(又は)ゴムへのワイヤの付着性を向上させる機能を持つ真鍮又は亜鉛以外の薄い金属層、例えば、Co、Ni、Al又は元素Cu、Zn、Al、Ni、Co、Snのうち2つ以上の合金の薄い層で覆われても良い。
【0112】
本発明のマルチストランドコードで用いられるストランドは、好ましくは、炭素鋼で作られ、好ましくは2,500MPa以上、より好ましくは3,000MPa以上の引張強さ(Rm)を有する。本発明のコードの各構成要素としてのストランドの破断点全伸び率(Atで表される)、即ち、その構造伸び率、弾性伸び率及び塑性伸び率の合計は、好ましくは、2.0%以上であり、より好ましくは少なくとも2.5%に等しい。
【0113】
充填ゴムのエラストマー(又はこれと区別なく用いられる用語として、「ゴム」、これら2つの用語は、類義語であると考えられる)は、好ましくは、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のブタジエンコポリマー、種々のイソプレンコポリマー、及びこれらエラストマーの混合物から成る群から選択される。このようなコポリマーは、より好ましくは、スチレン−ブタジエン(SBR)コポリマー(これらが、乳化重合(ESBR)によって調製されるにせよ溶液重合(SSBR)によって調製されるにせよ、いずれにせよ)、ブタジエン−イソプレン(BIR)コポリマー、スチレン−イソプレン(SIR)コポリマー及びスチレン−ブタジエン−イソプレン(SBIR)コポリマーから成る群から選択される。
【0114】
好ましい実施形態は、イソプレンエラストマー、即ち、イソプレンホモポリマー又はコポリマー、換言すると、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のイソプレンコポリマー及びこれらエラストマーの混合物から成る群から選択されたジエンエラストマーを用いることから成る。イソプレンエラストマーは、好ましくは、天然ゴム又はシス−1,4形の合成ポリイソプレンである。これら合成ポリイソプレンのうち、好ましくは、シス−1,4結合の含有量(モル%)が90%以上、より好ましくは98%以上のポリイソプレンが用いられる。他の好ましい実施形態によれば、ジエンエラストマーは、その全体又は一部が、別のジエンエラストマー、例えばBR形の別のエラストマーと結合されず又は結合されたSBRエラストマーから成るのが良い。
【0115】
充填ゴムは、1種類又は2種類以上の特にジエンエラストマーを含むのがよく、この又はこれらジエンエラストマーは、場合によっては、ジエンエラストマー以外の任意の種類の合成エラストマーと組み合わせて又はエラストマー以外のポリマー組み合わせて使用できる。
【0116】
充填ゴムは、好ましくは架橋可能であり、即ち、充填ゴムは、一般に、配合物の硬化中(即ち、溶融ではなく、ハードニング中)、配合物を架橋することができるのに適した架橋系から成る。このような場合、このゴムコンパウンドは、どのような温度に加熱してもこれを溶融させることができないので、「溶融不能」と呼ばれる場合がある。好ましくは、ジエンゴムコンパウンドの場合、このゴムシースの架橋系は、加硫系であり、即ち、硫黄(又は硫黄ドナー)及び少なくとも1種類の加硫促進剤を主成分としている。種々の公知の加硫活性剤をこの基本加硫系に添加するのがよい。硫黄は、0.5〜10phr、より好ましくは1〜8phrの好ましい量で用いられ、加硫促進剤、例えば、スルフェンアミド(sulphenamide)は、好ましくは0.5〜10phr、より好ましくは0.5〜5.0phrの量で用いられる。
【0117】
しかしながら、本発明は又、充填ゴムが硫黄又は任意他の架橋系を含んでいない場合にも当てはまり、ただし、これを架橋するため、本発明のコードが補強すると共に周囲母材との接触により充填ゴム中に移動することができるゴム母材中の架橋又は加硫系で十分であることを条件とする。
【0118】
充填ゴムは、上述の架橋系とは別に、タイヤの製造向きのゴム母材中に通常用いられる添加剤、例えば、補強充填剤、例えばカーボンブラック又は無機充填剤、例えばシリカ、結合剤、老化防止剤、酸化防止剤、可塑化剤、又はエキステンダ油(後者は、性質上芳香性であるにせよ非芳香性であるにせよ、いずれにせよ)(特に、ほんの僅かに芳香性であり或いは全く芳香性ではない油、例えば、粘度の高い又は好ましくは低いナフテン系の油又はパラフィン系の油、MES又はTDAE油))、30℃よりも高いTgの可塑化樹脂、非硬化状態の組成物の処理(処理性)を容易にする作用剤、粘着性樹脂、加硫戻り防止剤、メチレン受容体及び供与体、例えばHMT(ヘキサメチレンテトラミン)又はH3M(ヘキサメトキシメチルメラミン)、補強樹脂(例えばレソルチノール又はビスマレイミド)、金属塩、特にコバルト又はニッケル塩タイプの公知の密着性促進(定着)系、例えば国際公開第2005/113666号パンフレットに記載されているもののうち全て又は幾つかを更に含むのが良い。
【0119】
補強充填材、例えば、カーボンブラック又は補強無機充填材、例えばシリカの量は、好ましくは、50phr以上、例えば、60〜140phrである。この量は、より好ましくは、70phr以上、例えば70〜120phrである。カーボンブラックに関し、例えば、特にタイヤに従来用いられていたタイプHAF、ISAF及びSAFのあらゆるカーボンブラック(タイヤ用ブラックと呼ばれている)が適している。これらのうちで、ASTM300、600又は700等級のカーボンブラック(例えば、N326、N330、N347、N375、N683、N772)が特に挙げられる。適当な無機補強充填材は、特に、シリカ(SiO2)系の鉱物充填材であり、特に、BET表面積が450m2/g以下、好ましくは30〜400m2/gの沈降又は熱分解法シリカである。
【0120】
当業者であれば、本明細書の説明に照らして、充填ゴムの処方を調整することができ、その目的は、所望レベルの特性(特に、弾性モジュラス)を達成すると共に処方を特定の意図した用途に適合させることにある。
【0121】
本発明の第1の実施形態によれば、充填ゴムの調合は、本発明のコードが補強しようとしているゴム母材の処方と同一であるように選択される。充填ゴムの材料と上述のゴム母材の材料との間には適合性に関する問題はない。
【0122】
本発明の第2の実施形態によれば、充填ゴムの調合は、本発明のコードが補強するようになったゴム母材の調合とは異なるよう選択されるのが良い。充填ゴムの調合は、特に、比較的多量の定着剤、代表的には例えば5〜15phrの金属塩、例えばコバルト塩、ニッケル塩又はネオジミウム塩を用いることにより、そして、有利には、周りのゴム母材中の上述の定着剤の量を減少させる(或いは、それどころかこれを完全に無くす)ことにより調整されるのが良い。
【0123】
好ましくは、充填ゴムは、架橋状態では、E10(10%伸び率における)割線引張モジュラスが、5〜25MPa、より好ましくは5〜20MPa、特に7〜15MPaである。
【0124】
当業者であれば理解されるように、上述の本発明のマルチストランドコードで用いられるストランドは、オプションとして、ジエン以外のエラストマー、特に熱可塑性エラストマー(TPE)、例えばポリウレタン(TPU)エラストマーを主成分とする充填ゴムで現場ゴム引きされる場合があり、このようなエラストマーは、知られているように、架橋され又は加硫されることが必要ではなく、常用温度では、加硫後のジエンエラストマーの特性とほぼ同じ特性を有する。
【0125】
しかしながら、特に好ましくは、本発明は、このようなエラストマーに特に適した特定の製造プロセスを特に用いて上述のジエンエラストマーを主成分とする充填ゴムについて実施され、この製造プロセスについて以下に詳細に説明する。
【0126】
II‐2.本発明のマルチストランドコードの製造
A)要素ストランドの製造
好ましくはジエンエラストマーで現場ゴム引きされた上述の(L+M)構造の要素ストランドを好ましくはインラインで連続して実施される次のステップを有する特定のプロセスの利用により製造することができ、即ち、
‐まず最初に、Lが1とは異なる場合、組み立てステップ、このステップでは、L本のコアワイヤを互いに撚り合わせて組み立て箇所に内側層(C1)を形成し、
‐次に、L(Lは1とは異なる)本のコアワイヤを組み立てる上述の箇所の上流側で実施される外装ステップ、このステップでは、内側層(C1)を未硬化(即ち、未架橋)充填ゴムで外装し、
‐次の組み立てステップ、このステップでは、外側層(C2)のM本のワイヤを上述のように外装された内側層(C1)周りに撚り、
‐次に最終の撚り釣り合わせステップ。
【0127】
ここで思い起こされるように、金属ワイヤを組み立てる技術としては、次のように2つの方法が考えられる。
‐ケーブリング(cabling )による。このような場合、ワイヤは、組み立て箇所の前後での同期回転に鑑みてこれら自体の軸線回りに撚りを生じない。
‐又は、ツイスティング(twisting)による。このような場合、ワイヤは、これら自体の軸線回りにひとまとまりの撚りと個々の撚りの両方を生じ、それによりワイヤの各々に加わる非撚りトルクが生じる。
【0128】
上述のプロセスの1つの必須の特徴は、内側層C1と外側層C2の両方を組み立てる場合におけるツイスティングステップの使用である。
【0129】
Lが1に等しい場合、即ち、未硬化状態の充填ゴムで外装されるステップが施されるのは、単一コアワイヤであり、その後、外側層(C2)のM本のワイヤがこのようにして外装されたコアワイヤ周りにツイスティングされることにより組み立てられる。
【0130】
第1のステップの際、それ自体知られている仕方で内側層C1を形成するためにL本のコアワイヤを互いに撚り合わせる(S又はZ方向に)。コアワイヤを共通の撚り箇所(又は組み立て箇所)に集束させるようになった組み立てガイドに結合されているにせよそうでないにせよ、いずれにせよ、ワイヤを供給手段、例えばスプール、別個のグリッドにより送る。
【0131】
次に、このようにして形成された内側層C1を適当な温度で押し出しスクリューにより供給された充填ゴムで外装する。充填ゴムを先行技術において説明したように内側層の形成前にワイヤを組み立て作業の上流側で個々に外装する必要なく、単一の押し出しヘッドによって単一の固定された小さな箇所に送ることができる。
【0132】
このプロセスは、従来の組み立てプロセスを減速させないという顕著な利点を有する。このプロセスにより、作業全体−初期撚り、ゴム被覆及び最終撚り−を製造されるストランドの型式がどうなるようなものであれ(コンパクト型コード又は円筒形層状ストランド)インラインで且つ単一ステップで全て高速で実施することができる。上述のプロセスを70m/分を超え、好ましくは100m/分を超える速度(撚り及びゴム被覆ラインに沿ってストランド走行速度)で実施することができる。
【0133】
押し出しヘッドの上流側では、L本のワイヤに及ぼされる張力(この張力は、或る1本のワイヤと別のワイヤとでは実質的に同一である)は、好ましくは、ワイヤの破断力の10〜25%である。
【0134】
押し出しヘッドは、1つ又は2つ以上のダイ、例えば上流側案内ダイ及び下流側サイジングダイを有するのが良い。ストランドの直径を連続的に測定して制御する手段を加えるのが良く、これらは、押出機に連結される。好ましくは、充填ゴムの押し出し温度は、60℃〜120℃、より好ましくは、70℃〜120℃である。押し出しヘッドは、回転筒体の形状をした被覆ゾーンを構成し、その直径は、好ましくは0.4mm〜1.2mm、より好ましくは0.5mm〜1.0mmであり、その長さは、好ましくは4〜10mmである。
【0135】
押し出しヘッドにより送り出される充填ゴムの量は、最終のL+Mストランドでは、この量がストランド1g当たり5〜40mg、好ましくは、5〜35mg、特に10〜30mgであるように容易に調節できる。
【0136】
代表的には、押し出しヘッドを出ると、内側層C1の周囲上のあらゆる箇所を好ましくは5μmを超え、より好ましくは10μmを超え、例えば10〜50μmの最小厚さの充填ゴムで被覆する。
【0137】
上述の外装ステップを出ると、新たなステップ中、再び外側層C2のM本のワイヤを上述のように外装された内側層C1の周りにツイスティングする(S又はZ方向に)ことによって最終の組み立てを実施する。ツイスティング作業中、M本のワイヤは、充填ゴムに当たり、このような充填ゴムで覆われるようになる。この場合、これら外側ワイヤによって及ぼされた力により動いた充填ゴムは、当然のことながら、内側層(C1)と外側層(C2)との間にワイヤにより空になったままの隙間又はキャビティの各々を少なくとも部分的に充填する傾向がある。
【0138】
しかしながら、この段階では、本発明のL+Mストランドは、完成されず、特に、Lが1又は2とは異なる場合、3又は4本のコアワイヤによって境界付けられたその中央チャネルは、充填ゴムでまだ充填されておらず、或いは、いずれの場合においても、許容可能な通気度を得るには不十分な状態に充填される。
【0139】
次の重要なステップでは、未硬化状態の充填ゴムを備えたストランドが「撚り釣り合わせ」コードと呼ばれるコード(即ち、残留撚りが事実上存在しないコード)を得るために撚り釣り合わせ手段を通過するようにする。「撚り釣り合わせ」という用語は、当業者には周知であるように、内側層と外側層の両方のストランドの各ワイヤに及ぼされる残留トルク(又は解撚スプリングバック)を打ち消し合うことを意味するものと理解されたい。
【0140】
撚り釣り合わせツールは、ツイスティング技術における当業者には周知である。撚り釣り合わせツールは、例えば、「ストレートナ」、「ツイスタ」又は「ツイスタ‐ストレートナ」から成り、ツイスタ‐ストレートナは、ツイスタの場合にはプーリから成り又はストレートナの場合には小径ローラから成り、ストランドは、単行く平面又は好ましくは少なくとも2つの互いに異なる平面内でこれらプーリ及び/又はローラを通って走行する。
【0141】
これら釣り合わせツールの通過時、L本のコアワイヤに及ぼされる解撚(その結果、これらワイヤのこれらの軸線回りの少なくとも部分的な逆回転が生じる)は、依然として高温であり且つストランドの外側からコアに向かって比較的流動状態にある充填ゴムを生の状態(即ち、未架橋又は未硬化充填ゴム)でL本のワイヤにより形成された中央チャネルのちょうど内側に押し込み又は駆動するのに十分であり、最後に、本発明のストランドにこれを特徴付ける優れた空気不透過性を与えることが経験的に仮定される。さらに、矯正ツールを用いることにより適用される矯正機能は、ストレートナのローラと外側層のワイヤとの接触により追加の圧力は充填ゴムに及ぼされ、L本のコアワイヤにより形成された中央毛管部中への充填ゴムの侵入が一段と促進されるという利点を有すると考えられる。
【0142】
換言すると、上述のプロセスは、ストランドの最終製造段階においてL本のコアワイヤの回転を利用して充填ゴムを内側層(C1)の内部に且つその周りに自然に且つ一様に分布する一方で、供給される充填ゴムの量を完全に制御する。当業者は、特に、種々のワイヤに及ぼされる半径方向圧力の強度を変えるために撚り釣り合わせ手段のプーリ及び/又はローラの配置及び直径の調節の仕方を知っているであろう。
【0143】
予期せぬこととして、先行技術において説明したようにL本のワイヤが組み立てられる箇所の上流側ではなく、その下流側にゴムを付着させることにより本発明のマルチストランドコードの各ストランドのまさにコア内に侵入させる一方で、単一の押し出しヘッドの使用により送り出された充填ゴムの量を依然として制御すると共に最適化することが可能であることが判明した。
【0144】
この最終の撚り釣り合わせステップ後、未硬化状態の充填ゴムで現場ゴム引きされた外側ストランドの製造が完了する。このストランドを貯蔵のために1つ又は2つ以上の巻き取りスプールに巻き付けるのが良く、次いで、本発明のマルチストランドコードを得るために要素ストランドをケーブリングする次の作業を行う。
【0145】
当然のことながら、この製造プロセスは、コンパクト型外側ストランド(思い起こされるべきこととして、定義上、層C1,C2のストランドは、同一ピッチ及び同一方向に巻回される)並びに円筒形層状型のコード(思い起こされるべきこととして、定義上、層C1,C2のストランドが異なるピッチか互いに逆方向かのいずれか或いは異なるピッチで且つ互いに逆方向に巻回される)の製造に利用できる。
【0146】
上述のプロセスにより、本発明に従ってコードを製造することができ、有利には、このようなコードの周囲上には充填ゴムが存在しない(又は事実上存在しない)。このような表現は、裸眼ではコードの周囲上の充填ゴムの粒子を見ることはできず、即ち、当業者であっても、製造後においては、本発明のコードのスプールと現場でゴム引きされなかった従来型コードのスプールの差を裸眼では且つ3メートル以上の距離を置いたところでは識別することができないということを意味している。
【0147】
上述のプロセスを実施するために使用することができる組み立て/ゴム引き装置は、上流側端部から下流側端部に向かって、形成中のストランドの前進方向に沿って、
‐L本のコアワイヤを供給する手段と、
‐L本のコアワイヤをツイスティングすることによりL本のコアワイヤを組み立てて内側層(C1)を形成する手段と、
‐内側層(C1)を外装する手段と、
‐外装手段の出口のところに設けられていて、M本の外側ワイヤを上述のように外装された内側層の周りにツイスティングすることによりM本の外側ワイヤを組み立てて外側層(C2)を形成する手段と、
‐最後に、撚り釣り合わせ手段とを有する。
【0148】
添付の図7は、回転供給手段及びレシーバ(受け取り)型のツイスティング組み立て装置(100)を示しており、このような装置は、例えば図1に示されている(3+9)構造の円筒形層状型(層C1,C2の互いに異なるピッチp1,p2及び/又は互いに異なる撚り方向)のストランドの製造に使用できる。この装置では、供給手段(110)は、分配格子又はグリッド(111)(非対称ディストリビュータ)を通ってM(例えば3)本のコアワイヤ(11)を送り出し、このグリッドは、組み立てガイド(112)に結合されていても良く又は結合されていなくても良く、M本のコアワイヤ(11)は、内側層(C1)を形成するためにこの組み立てガイドを越えて組み立て箇所又はツイスティング箇所(113)に集束する。
【0149】
内側層C1は、いったん形成されると、外装ゾーンを通過し、この外装ゾーンは、例えば単一の押し出しヘッド(114)から成り、内側層は、この押し出しヘッドを通過するようになっている。集束箇所(113)と外装箇所(114)との間の距離は、例えば、50cm〜1mである。供給手段(120)により送り出された外側層(C2)のN本のワイヤ(12)、例えば9本のワイヤは、次に、矢印の方向に沿って進んでいる上述のように上述のようにゴム引きされた内側層C1周りにツイスティングされることにより組み立てられる。このようにして形成された最終のC1+C2ストランドは、例えばツイスタ‐ストレートナから成る撚り釣り合わせ手段(130)を通過した後、最終的に回転レシーバ(140)上に集められる。
【0150】
ここで思い起こされるように、当業者には周知であるが、コンパクト型の(3+9)ストランド(層C1,C2の同一ピッチp1,p2及び同一のツイスティング方向)を製造するために、この場合、例えば図4に示されているように2つの回転部材(フィーダ又はレシーバ)ではなく、単一の回転部材(フィーダ又はレシーバ)を有する装置(100)が用いられる。
【0151】
B)マルチストランドコードの製造
本発明のマルチストランドを製造するプロセスは、当業者には周知の仕方で、ストランドを組み立てるために設計されたケーブリング又はツイスティング機械を用いて先に得られた要素ストランドをケーブリングし又はツイスティングすることにより実施される。
【0152】
Jが1よりも大きい場合、本発明のコードのコアを構成するJ(Jは、2〜4である)本のストランドは、好ましくは、ケーブリングにより組み立てられる。上述したように、考えられる好ましい一実施形態によれば、本発明のマルチストランドコードは、それ自体、充填ゴムで外装されるのが良く、充填ゴムの配合は、K本の外側ストランドの現場ゴム引きに用いられる充填ゴムの配合と同一であっても良く又はこれとは異なっていても良い。
【0153】
II‐3.タイヤのクラウン補強材としてのマルチストランドコードの使用
本発明のマルチストランドコードは、タイヤ以外の物品、例えばホース、ベルト、コンベヤベルトを補強するために使用でき、有利には、このようなマルチストランドコードは、クラウン補強材以外のタイヤの部分を補強するために、特に産業車両用タイヤのカーカス補強材にも使用できる。
【0154】
しかしながら、本明細書の技術分野の項で説明したように、本発明のコードは、大型産業車両、例えば特に採鉱型の土木工学車両用のタイヤクラウン補強材として特に意図されている。
【0155】
一例を挙げると、図8は、金属クラウン補強材を備えたタイヤの半径方向断面を概略的に示しており、このような金属クラウン補強材は、この全体的略図では、本発明に従ったものであっても良く又はそうでなくても良い。
【0156】
このタイヤ1は、クラウン補強材又はベルト6によって補強されたクラウン2、2つのサイドウォール3及び2つのビード4を有し、これらビード4の各々は、ビードワイヤ5によって補強されている。クラウン2は、トレッド(この略図では示されていない)で覆われている。カーカス補強材7が各ビード4中の2本のビードワイヤ5に巻き付けられ、この補強材7の上曲がり部8は、例えばタイヤ1の外側に向かって層をなしており、タイヤ1は、この場合、そのリム9に取り付けられた状態で示されている。それ自体知られているように、カーカス補強材7は、「ラジアル(半径方向)」コードにより補強された少なくとも1枚のプライによって形成され、即ち、これらコードは、事実上互いに平行であり、中間円周方向平面(この平面は、2つのビード4相互間の途中に配置され、クラウン補強材6の中央を通過したタイヤの回転軸線に垂直である)と80°〜90°の角度をなすよう一方のビードから他方のビードまで延びている。
【0157】
本発明のタイヤは、そのベルト6が少なくともベルトプライのうちの少なくとも1つの補強材として、本発明のマルチストランドコードを有するということを特徴としている。図7に非常に簡単な仕方で概略的に示されたこのベルト6では、本発明のコードは、例えば、「実働」ベルトプライと呼ばれるもののうちの幾つか又は全てを補強することができるということは理解されよう。当然のことながら、このタイヤ1は、知られているように、タイヤの半径方向内側フェースを構成すると共にカーカスプライをタイヤ内部の空間から来る空気の拡散から保護するようになったゴムコンパウンド又はエラストマーの内側層(通常、「内側ライナ」と呼ばれている)を更に有する。
【0158】
III.本発明の実施形態
以下の試験は、マルチストランドコードの構成要素としてのストランドの優れた不透過性により、特にタイヤベルトとして用いられた場合に耐久性がかなり向上したマルチストランドコードを提供する本発明の特徴を示している。
【0159】
III‐1.用いたワイヤ及びコードの性状及び特性
以下の試験において、図1に示されていて、細い真鍮被覆炭素鋼ワイヤで作られた3+9構造の2層コードを要素ストランドとして用いた。
【0160】
例えばワイヤ素材(直径が5〜6mm)をまず最初に圧延及び/又は引抜きにより1mmに近い中間直径まで加工硬化させることにより炭素鋼ワイヤを知られている仕方で調製した。本発明のコードC‐1に用いたスチールは、SHT(超高引張)炭素鋼であり、その炭素含有量は、約0.92%であり、この炭素鋼は、約0.2%クロムを含み、残部は、鉄及び鋼製造プロセスに起因した通常の避けられない不純物により形成される。
【0161】
中間直径のワイヤに脱脂及び/又は酸洗い処理を施し、その後これらの転換を行った。真鍮被膜をこれらの中間ワイヤに被着させた後、これを例えば水性乳濁液又は分散液の形態の引抜き潤滑剤を用いて濡れた媒体中で冷間引抜きすることによりいわゆる「最終」加工硬化操作を各ワイヤについて実施した(即ち、最終パテンティング熱処理後に)。
【0162】
このようにして引き抜かれたスチールワイヤは、次の直径及び機械的性質を備えていた。
【0163】
〔表1〕
スチール φ(mm) Fm(N) Rm(MPa)
SHT 0.30 226 3200
【0164】
次に、これらのワイヤを3+9構造の2層コード(図1の符号10)の形態に組み立て、本発明のマルチストランドコード(図2に概略的に示されているように、40mmに等しいピッチPKの(1+6)+(3+9)構造のマルチストランドコード)から取り出したストランドについて測定されたこれらストランドの機械的性質は、表2に与えられている。
【0165】
〔表2〕
ストランド p12mm
(mm) (mm) (daN) (MPa)
3+9 7.5 15.0 256 3040
【0166】
図1に概略的に示されている(3+9)構造のこのストランド(10)は、全て直径が0.30mmの全部で12本のワイヤで形成され、これらワイヤは、円筒形層状型のストランドを得るために異なるピッチで且つ同一の撚り方向(S/S)で巻回したものである。セクションI‐3で上述した方法に従って測定した充填ゴムの量は、ストランド1g当たり22mgであった。
【0167】
このストランドを製造するため、上述すると共に図7に概略的に示された装置を用いた。充填ゴムは、タイヤクラウン補強材のための従来型ゴムコンパウンドであった。このゴムコンパウンドを0.700mmサイジングダイにより90℃の温度で押し出した。
【0168】
III−2.通気度試験
また、1分間にストランドを通過した空気の量(単位:cm3)を測定することにより(試験対象の各ストランドについて10個の測定値の平均値を取ることにより)、4cm(PKに等しい)ストランド長さについて実施したセクションI‐2において説明した通気度試験を上述したように製造された(3+9)構造のストランドにも実施した。
【0169】
試験対象の各ストランド(10)に関し、そして測定値の100%(即ち、10個のうち10個の試料)に関し、0.2cm3/分未満又はゼロの流量が測定された。換言すると、本発明のコードのストランドは、これらの軸線に沿って気密であるといえ、したがって、これらストランドは、ゴムによる最適入り込み量を呈する。
【0170】
上述のストランド(10)と同一構造の現場ゴム引きれれたコントロールストランドを、内側層C1の単一のワイヤ又は3本のワイヤの各々を個々に外装することにより調製した。この外装は、この時点においては、先行技術(上述の米国特許出願公開第2002/160213号明細書)において説明したように組み立て箇所(インライン外装及びツイスティング)の上流側に配置された可変直径(320〜410μm)の押し出しダイを用いて実施された。厳密な比較のため、充填ゴムの量を更に、最終のストランド中における充填ゴムの含有量(セクションI‐3の方法に従って測定してストランド1g当たり5〜30mg)が本発明のマルチストランドコードのストランドの充填ゴム含有量に近いように調整した。
【0171】
単一のワイヤを外装する場合、試験対象のストランドがどのようなものであれ、測定値の100%(即ち、10個のうちで10個の試料)が2cm3/分を超える空気流量を指示することが観察された。測定平均流量は、用いられた作動条件下において、特に試験された押し出しダイ直径では、16cm3/分から61cm3/分まで様々であった。換言すると、試験した上述のコントロールストランドの各々は、セクションI‐2の試験の意味の範囲内においてその長手方向軸線に沿って気密であるとは言えない。
【0172】
単一ワイヤを外装する場合、測定した平均流量が多くの場合2cm3/分未満であることが判明したが、3本のワイヤの各々を個々に外装する場合、得られたコードは、これらの周囲に比較的多量の充填ゴムを有し、これらコードが産業条件下における圧延作業には不適当であったことが判明した。
【0173】
結論を言えば、本発明のマルチストランドコードは、その構成要素である外側ストランドの特定の構造及びこれらを特徴付ける優れた空気不透過性により、向上した耐疲労性及び耐疲労腐食性を備えることができ、他方、工業条件下における通常のケーブリング及びゴム引き要件を満たす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に産業車両用のタイヤを補強するために使用可能なJ+K構造の2つの層(Ci,Ce)を有するマルチストランド金属コード(C‐1)であって、前記マルチストランド金属コードは、内側層(Ci)を形成するJ(Jは、1〜4)本のストランドを含むコアから成り、前記内側層(Ci)の周りに外側層(Ce)を形成するK本の外側ストランドが20mm〜70mmの螺旋ピッチPKで螺旋状に前記コアに巻き付けられ、各外側ストランドは、
・現場でゴム引きされたL+M構造の2つの層(C1,C2)を有するコードから成り、前記層は、直径d1のL(Lは、1〜4)本のワイヤから成る内側層(C1)及び前記内側層(C1)にピッチP2で螺旋状に一緒に巻き付けられた直径d2のM(Mは、5以上)本のワイヤの外側層(C2)を含み、
・次の特徴(d1、d2及びP2は、mmで表される)を有し、即ち、
‐0.10<d1<0.50
‐0.18<d2<0.50
‐6<p2<30
‐前記内側層(C1)は、「充填ゴム」と呼ばれるゴムコンパウンドで外装され、
‐PKに等しい前記外側ストランドの任意の長さ分にわたり、前記充填ゴムは、前記内側層(C1)の前記L本のワイヤ及び前記外側層(C2)の前記M本のワイヤにより画定された毛管の各々の中に存在すると共に更に、Lが3又は4である場合、前記内側層(C1)の前記L本のワイヤにより画定された中央チャネルの中に存在し、
‐前記外側ストランド中の前記充填ゴムの量は、ストランド1g当たり5〜40mgである、
ことを特徴とするマルチストランド金属コード。
【請求項2】
各外側ストランドにおいて、次の特徴、即ち、
‐0.15<d1<0.35、
‐0.15<d2<0.35
が満たされる、
請求項1記載のマルチストランド金属コード。
【請求項3】
各外側ストランドにおいて、p2は、12mmから25mmまでの範囲にある、
請求項1又は2記載のマルチストランド金属コード。
【請求項4】
Kは、25mm〜から60mmまで、好ましくは30mmから50mmまでの範囲にある、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項5】
Kは、次の関係式、即ち
1.5≦PK/p2≦3.0
を満たす、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項6】
各外側ストランドにおいて、Lは、1に等しい、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の0ルチストランド金属コード。
【請求項7】
各外側ストランドにおいて、Lは、1に等しく、Mは、5、6又は7に等しい、
請求項6記載のマルチストランド金属コード。
【請求項8】
各外側ストランドにおいて、Lは、1とは異なり、直径d1の前記L本のワイヤは、次の関係式、
20<p1/d1<100
を満たすピッチp1で螺旋状に巻回されている、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項9】
各外側ストランドにおいて、Lは、1とは異なり、直径d1の前記L本のワイヤは、次の関係式、
0.5<p1/p2<1
を満たすピッチp1で螺旋状に巻回されている、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項10】
各外側ストランドにおいて、p1は、6mmから30mmまでの範囲、好ましくは6mmから25mmまでの範囲にある、
請求項9記載のマルチストランド金属コード。
【請求項11】
各外側ストランドにおいて、p1は、p2に等しい、
請求項8〜10のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項12】
各外側ストランドにおいて、Lは、2に等しく、Mは、7、8又は9に等しい、
請求項8〜11のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項13】
各外側ストランドにおいて、Lは、3に等しく、Mは、8、9又は10に等しい、
請求項8〜11のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項14】
各外側ストランドにおいて、Lは、4に等しく、Mは、8、9、10又は11に等しい、
請求項8〜11のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項15】
各外側ストランドにおいて、次の関係式、即ち、
0.7≦d1/d2≦1.3
が適用される、
請求項1〜14のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項16】
各外側ストランドにおいて、前記外側層(C2)の前記ワイヤは、前記内側層(C1)の前記ワイヤと同一ピッチ且つ同一撚り方向で螺旋状に巻回されている、
請求項1〜15のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項17】
各外側ストランドにおいて、前記外側層(C2)の前記ワイヤは、前記内側層(C1)の前記ワイヤと比較して、異なるピッチか異なる撚り方向かのいずれかで或いは異なるピッチと異なる撚り方向の両方で螺旋状に巻回されている、
請求項1〜15のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項18】
各外側ストランドにおいて、前記外側層は、飽和層である、
請求項1〜17のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項19】
Jは、1に等しく、Kは、5、6、7又は8に等しい、
請求項1〜18のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項20】
Jは、3に等しく、Kは、8、9、10、11又は12に等しい、
請求項1〜18のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項21】
各外側ストランドにおいて、前記充填ゴムのゴムは、ジエンゴムである、
請求項1〜20のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項22】
各外側ストランドにおいて、前記充填ゴムの前記ジエンエラストマーは、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらエラストマーの配合物から成る群から選択される、
請求項21記載のマルチストランド金属コード。
【請求項23】
各外側ストランドにおいて、前記ジエンエラストマーは、天然ゴムである、
請求項22記載のマルチストランド金属コード。
【請求項24】
各外側ストランドにおいて、前記充填ゴムコンパウンドの量は、ストランド1g当たり5〜35mgである、
請求項1〜23のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項25】
通気度試験(段落I‐2)において、各外側ストランドは、2cm3/分未満、好ましくは0.2cm3/分未満又はせいぜいこれに等しい平均空気流量を有する、
請求項1〜24のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項26】
前記コアの前記J(Jは、1〜4である)本のストランドの各々はそれ自体、請求項1〜25のいずれか1項に記載の前記K本の外側ストランドの前記特徴を満たすL+M構造の2層コードにより形成されている、
請求項1〜25のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項27】
前記コアの前記J(Jは、1〜4である)本のストランドの各々は、前記K本のストランドの構造と同一の構造を有する、
請求項26記載のマルチストランド金属コード。
【請求項28】
前記コアの前記J(Jは、1〜4である)本のストランドの各々は、前記K本の外側ストランドの構造とは異なる構造を有する、
請求項26記載のマルチストランド金属コード。
【請求項29】
前記マルチストランド金属コードは、全部で6本のストランド、即ち、前記コア又は内側層(Ci)を形成する中央ストランド及び前記外側層(Ce)を形成する5本の外側ストランドを含み、前記コードは、好ましくは、1×(1+6)+5×(3+9)構造を有する、
請求項26〜28のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項30】
前記マルチストランド金属コードは、全部で7本のストランド、即ち、前記コア又は内側層(Ci)を形成する中央ストランド及び前記外側層(Ce)を形成する6本の外側ストランドを含み、前記コードは、好ましくは、(1+6)×(1+6)又は(1+6)×(3+9)構造を有する、
請求項26〜28のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項31】
前記マルチストランド金属コードは、全部で8本のストランド、即ち、前記コア又は内側層(Ci)を形成する中央ストランド及び前記外側層(Ce)を形成する7本の外側ストランドを含み、前記コードは、好ましくは、1×(3+9)+7×(1+6)構造を有する、
請求項26〜28のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項32】
前記コードの前記コアは、前記J(Jは、1〜4である)本のストランドにより形成され、前記コアはそれ自体、前記ゴム充填コンパウンドで外装されている、
請求項1〜31のいずれか1項に記載のマルチストランド金属コード。
【請求項33】
請求項1〜32のいずれか1項に記載のコードを有するタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−531540(P2012−531540A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518933(P2012−518933)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059524
【国際公開番号】WO2011/000963
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】