説明

基材、中間膜及び微細凹凸構造膜を積層してなる積層体

【課題】表面に微細構造を付与することにより低反射率を発現させることができる積層体において、機械特性を向上させた積層体を提供すること。
【解決手段】少なくとも、基材、中間膜、微細凹凸構造膜をこの順に積層してなる積層体であって、該微細凹凸構造膜が、中間膜側とは反対側の表面に、平均高さ100nm以上1000nm以下の凸部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凹部を有し、その凸部又は凹部が、少なくともある一の方向に対し平均周期100nm以上400nm以下で存在する微細凹凸構造を有し、該表面で測定した鉛筆硬度がH以上であることを特徴とする積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも、基材、中間膜、微細凹凸構造膜をこの順に積層してなる積層体に関するものであり、詳細には、表面に特定の微細構造を有し、表面で測定した鉛筆硬度が特定の範囲内にある上記積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(以下、「FPD」と略記する)等は、その視認性確保のために、反射防止膜の装着は必須である。かかる反射防止膜としては、(1)一般にドライ法と言われているもの、すなわち、誘電体多層膜を気相プロセスで作製し、光学干渉効果で低反射率を実現したもの、(2)一般にウエット法と言われているもの、すなわち、低屈折率材料を基板フィルム上にコーティングしたもの等が使用されてきた。
【0003】
また、これらとは原理的に全く異なる技術として、(3)表面に微細構造を付与することにより、低反射率を発現させることができることが知られている(特許文献1〜特許文献12)。
【0004】
一般にかかる反射防止膜には、光の反射防止性能や光の透過性向上性能が必要であるのみならず、実用化の際には機械特性が必要である。一般に、反射防止膜は一般に空気と接する最表面に存在するため、上記(3)の方法においては、反射防止膜の機械特性が特に重要であり、また、機械特性に関する種々の特殊の性能が求められる。
【0005】
しかしながら、上記(3)に記載した表面微細構造を利用した反射防止膜については、良好な反射防止性能は得られるが、その一方で、一般に機械特性が十分ではないという問題点があった。すなわち、光学特性と機械特性との両立ができていないのが現状であった。
【0006】
一方、反射防止膜の機械特性を上げるために層を設けることが知られている。特許文献13には、上記(2)の方法において、特定の弾性率を有する層を設けることが記載されている。また、特許文献14には、上記(2)の方法において、反応性シリコーンを含有する材料を用いて形成した層が記載されている。しかしながら、上記(2)の方法と上記(3)の方法では、光の反射を防止する層自体の材質や表面構造が全く異なり、従って、向上が要求される機械特性の種類も全く異なり、上記(2)の方法におけるハードコート層の技術は上記(3)の方法には応用できないものであった。
【0007】
近年、FPDの視認性を更に向上させるために、優れた反射防止膜等の必要性が増しつつあるが、上記(3)に記載した表面微細構造を利用したものについては、その良好な反射防止性能を維持しつつ、機械特性を更に改良する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭50−070040号公報
【特許文献2】特開平9−193332号公報
【特許文献3】特開2003−162205号公報
【特許文献4】特開2003−215314号公報
【特許文献5】特開2003−222701号公報
【特許文献6】特開2003−240903号公報
【特許文献7】特開2004−004515号公報
【特許文献8】特開2004−059820号公報
【特許文献9】特開2004−059822号公報
【特許文献10】特開2005−010231号公報
【特許文献11】特開2005−092099号公報
【特許文献12】WO2007/040159号公報
【特許文献13】特開2001−194504号公報
【特許文献14】特開2006−240292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、表面に微細構造を付与することにより低反射率を発現させることができる積層体において、機械特性を向上させた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の物性を有する積層体が、上記課題を解決できることを見出し本発明に到達した。
【0011】
すなわち本発明は、少なくとも、基材、中間膜、微細凹凸構造膜をこの順に積層してなる積層体であって、該微細凹凸構造膜が、中間膜側とは反対側の表面に、平均高さ100nm以上1000nm以下の凸部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凹部を有し、その凸部又は凹部が、少なくともある一の方向に対し平均周期100nm以上400nm以下で存在する微細凹凸構造を有し、該表面で測定した鉛筆硬度がH以上であることを特徴とする積層体を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光の反射防止性能、光の透過改良性能、機械特性等に優れた積層体を提供することができる。機械特性には、耐傷性等を反映した「耐スチールウール性」、及びそれとは異質な「鉛筆硬度」があり、両物性は二律背反の関係にあるが、本発明によれば、両物性を共に実用範囲にまで引き上げることができる。それによって、具体的には、FPD等に対する反射防止、透過性改良、表面保護等の用途に向けて、優れた機械特性を有する積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の積層体の断面を模式的に示す図である。
【図2】本発明の積層体の製造方法の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の積層体の製造に用いる連続製造装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.微細凹凸構造膜
1−1.微細凹凸構造膜の表面形状
本発明の積層体は、図1に示したように、少なくとも、基材、中間膜、微細凹凸構造膜をこの順に積層してなる。そして、かかる微細凹凸構造膜は、中間膜側とは反対側の表面に、平均高さ100nm以上1000nm以下の凸部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凹部を有していることが必須である。ここで凸部とは、基準となる面より出っ張った部分をいい、凹部とは、基準となる面より凹んだ部分をいう。本発明の積層体は、その表面に凸部を有していても、凹部を有していてもよい。また、凸部と凹部の両方を有していてもよく、更に、それらが連結して波打った構造を有していてもよい。
【0015】
微細凹凸構造膜の凸部又は凹部は、中間膜側とは反対側の表面に存在することが必須であるが、中でも、空気と接している最表面に有していることが好ましい。一般に空気は固体物質とは屈折率が大きく異なり、互いに屈折率の大きく異なる物質の界面が、本発明の特定の構造になっていることによって、反射防止性能や透過改良性能が良好に発揮されるからである。
【0016】
凸部又は凹部は、微細凹凸構造膜の表面全体に均一に存在していることが、上記効果を奏するために好ましい。凸部の場合には、基準となる面からのその平均高さが、100nm以上1000nm以下であること必須であり、凹部の場合にも、基準となる面からのその平均深さが、100nm以上1000nm以下であることが必須である。高さ又は深さは一定でなくてもよく、その平均値が上記範囲に入っていればよいが、実質的に一定の高さ又は一定の深さを有していることが好ましい。
【0017】
凸部の場合でも、凹部の場合でも、その平均高さ又は平均深さは、150nm以上であることが好ましく、200nm以上であることが特に好ましい。また、600nm以下であることが好ましく、500nm以下であることが特に好ましい。平均高さ又は平均深さが、小さ過ぎると、良好な光学特性が発現されない場合があり、大き過ぎると、製造が困難になる等の場合がある。凸部と凹部が連結して波打った構造を有している場合では、最高部(凸部の上)と最深部(凹部の下)の平均長さは、100nm以上1000nm以下であることが同様の理由から特に好ましい。
【0018】
本発明の積層体における微細凹凸構造膜は、その表面に、上記凸部又は凹部が、少なくともある一の方向の平均周期が、100nm以上400nm以下となるように配置されていることが必須である。凸部又は凹部は、ランダムに配置されていてもよいし、規則性を持って配置されていてもよい。また、何れの場合でも、上記凸部又は凹部は、積層体の表面全体に実質的に均一に配置されていることが反射防止性や透過改良性の点で好ましい。また、少なくとも、ある一の方向について、平均周期が、100nm以上400nm以下となるように配置されていればよく、全ての方向に、その平均周期が100nm以上400nm以下となっている必要はない。
【0019】
凸部又は凹部が、規則性を持って配置されている場合、上記のように、少なくともある一の方向の平均周期が、100nm以上400nm以下となるように配置されていればよいが、最も周期が短い方向(以下「x軸方向」という)への周期が、100nm以上400nm以下となるように配置されていることが好ましい。すなわち、ある一の方向として、最も周期が短い方向をとったときに、周期が上記範囲内になっていることが好ましい。更にその際、x軸方向に垂直なy軸方向についても、その周期が100nm以上400nm以下となるように配置されていることが特に好ましい。
【0020】
上記平均周期(凸部又は凹部の配置場所に規則性がある場合は周期)は、120nm以上が好ましく、150nm以上が特に好ましい。また、250nm以下が好ましく、200nm以下が特に好ましい。平均周期が短過ぎても長過ぎても、反射防止効果が充分でない場合がある。
【0021】
平均高さ又は平均深さを平均周期で割った値は、特に限定はないが、0.5以上が光学特性の点で好ましく、1以上が特に好ましい。また、5以下が製造プロセス上好ましく、3以下がより好ましく、2以下が特に好ましい。凸部又は凹部の形状は特に限定はないが、円錐形、紡錘形等が、優れた光学特性や製造の容易さの点で好ましい。
【0022】
本発明の積層体における微細凹凸構造膜は、表面に上記構造を有することが必須であるが、更に一般に「モスアイ(moth−eye)構造(蛾の眼構造)」と呼ばれる構造を有していることが、良好な反射防止性能を有している点で好ましい。また、特許文献1ないし特許文献12の何れかの文献に記載の表面構造を有していることが、同じく良好な反射防止性能の点で好ましい。
【0023】
本発明の積層体は、上記構造を有する微細凹凸構造膜が存在することによって、光の反射率を低減させたり、光の透過性を向上させたりする。この場合の「光」は、少なくとも可視光領域の波長の光を含む光である。
【0024】
1−2.微細凹凸構造膜の組成
本発明の積層体における微細凹凸構造膜の材質は、硬化性組成物が硬化してなるものであっても、熱可塑性組成物であってもよい。硬化性組成物とは、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって硬化する組成物である。中でも、光照射又は電子線照射により硬化する硬化性組成物が好ましい。
【0025】
1−2−1.光照射又は電子線照射により硬化する組成物
「光照射又は電子線照射により硬化する組成物」(以下、「光硬化性組成物」と略記する)としては特に限定はなく、アクリル系重合性組成物又はメタクリル系重合性組成物(以下、「(メタ)アクリル系重合性組成物」と略記する)、光酸触媒で架橋し得る組成物等、何れも使用できるが、(メタ)アクリル系重合性組成物が、本発明における微細構造に適した機械特性を与える点、化合物群が豊富なため種々の物性の微細凹凸構造膜を調製できる点、型の転写で凹凸を形成させる場合には、型を忠実に転写する点、型からの剥離性に優れる点、等から好ましい。
【0026】
1−2−2.加熱により硬化する組成物
加熱により硬化する組成物(以下、「熱硬化性組成物」と略記する)としては、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化して元に戻らなくなる組成物であれば特に制限はないが、例えば、フェノール系重合性組成物、キシレン系重合性組成物、エポキシ系重合性組成物、メラミン系重合性組成物、グアナミン系重合性組成物、ジアリルフタレート系重合性組成物、尿素系重合性組成物(ユリア系重合性組成物)、不飽和ポリエステル系重合性組成物、アルキド系重合性組成物、ポリウレタン系重合性組成物、ポリイミド系重合性組成物、フラン系重合性組成物、ポリオキシベンゾイル系重合性組成物、マレイン酸系重合性組成物、メラミン系重合性組成物、(メタ)アクリル系重合性組成物等が挙げられる。中でも、熱硬化性組成物としては、上記と同様の理由から(メタ)アクリル系重合組成物が好ましい。
【0027】
1−2−3.(メタ)アクリル系重合性組成物(A)
上記したように、本発明の積層体における微細凹凸構造膜は、(メタ)アクリル系重合性組成物が、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって硬化したものであることが、上記した点から特に好ましい。微細凹凸構造の形成に用いられる(メタ)アクリル系重合性組成物を「(メタ)アクリル系重合性組成物(A)」とする。
【0028】
(メタ)アクリル系重合性組成物(A)は、(メタ)アクリル基の炭素−炭素間二重結合が、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって反応してなるものであることが好ましい。また、「光照射、電子線照射及び/又は加熱によって」とは、光照射、電子線照射及び加熱からなる群のうち、何れか1つの処理によってでもよく、そこから選ばれた2つの処理の併用によってでもよく、3つの処理全ての併用によってでもよい。
【0029】
(メタ)アクリル基の炭素−炭素間二重結合の反応率は特に限定はないが、85モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。ここで「反応率」とは、露光前後の(メタ)アクリル系重合性組成物を赤外線分光法(IR)、具体的にはフーリエ変換赤外分光光度計Spectrum One D(perkin Elmer社製)全反射法(ATR法)で測定されるエステル結合の炭素−酸素結合に帰属される1720cm−1の吸光度と、炭素−炭素結合に帰属される811cm−1の吸光度の比率から求めたものである。反応率が低過ぎると、機械特性の低下や耐薬品性の低下をまねく場合がある。
【0030】
(メタ)アクリル系重合性組成物(A)としては、上記微細構造が形成でき、後記する鉛筆硬度がH以上にできるものであれば特に限定はないが、ウレタン(メタ)アクリレート及び/又はエステル(メタ)アクリレート及び/又はエステル(メタ)アクリレートを含有するものであることが好ましい。
【0031】
「ウレタン(メタ)アクリレート」とは、分子中にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物をいい、「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ基に(メタ)アクリル酸が反応して得られる構造を有する(メタ)アクリレート化合物をいう。また、「エステル(メタ)アクリレート」とは、分子中に、酸基(酸無水物や酸クロライドを含む)と水酸基との反応で得られたエステル結合を有し、ウレタン(メタ)アクリレートでも、エポキシ(メタ)アクリレートでもないものをいう。
【0032】
[1]ウレタン(メタ)アクリレートについて
本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートは特に限定はなく、例えば、ウレタン結合の位置や個数、(メタ)アクリル基の位置や個数は特に限定はない。
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレートの好ましい化学構造としては、(a)分子中に(好ましくは複数個の)イソシアネート基を有する化合物に対して、分子中に水酸基と(好ましくは複数個の)(メタ)アクリル基を有する化合物を反応させて得られるような構造をもつもの、(b)複数個の水酸基を有する化合物にジイソシアネート化合物やトリイソシアネート化合物を反応させ、得られた化合物の未反応イソシアネート基に、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のように分子中に水酸基と(メタ)アクリル基を有する化合物を反応させて得られるような構造をもつもの等が挙げられる。
【0034】
上記(メタ)アクリル系重合性組成物(A)が、ウレタン(メタ)アクリレートを含有することによって、得られた微細凹凸構造膜の硬化性や反応率が上がり、鉛筆硬度がH以上にできるようになり、機械特性が良好になると共に柔軟性が優れたものになる。
【0035】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、4官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを含有するものであることが特に好ましい。すなわち、分子中に(メタ)アクリル基を4個以上有する化合物を含有することが好ましい。この場合のウレタン結合の位置や個数、(メタ)アクリル基が分子末端にあるか否か等は特に限定はない。分子中に(メタ)アクリル基を6個以上有する化合物が特に好ましく、10個以上有する化合物が更に好ましい。また、分子中の(メタ)アクリル基の個数の上限は特に限定はないが、15個以下が特に好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート分子中の(メタ)アクリル基の数が少な過ぎると、得られた構造体の硬化性、反応率が低下し、鉛筆硬度がH以上にできなくなり、耐傷性等の機械特性が悪くなる場合がある。一方、ウレタン(メタ)アクリレート分子中の(メタ)アクリル基の数が多過ぎると、重合による(メタ)アクリル基の炭素間二重結合消費率、すなわち反応率が十分に上がらず、鉛筆硬度がH以上にできなくなる場合がある。
【0036】
[2]エステル(メタ)アクリレートについて
エステル(メタ)アクリレートとしては特に限定はなく、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物が好ましいものとして挙げられる。2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、3価以上のアルコールの部分(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノール系ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。2官能エステル(メタ)アクリレートを含有すると、硬化性が上がり、鉛筆硬度がH以上にし易くなり、機械特性向上等の点で好ましい。2官能(メタ)アクリレートの中でも、アルキレングリコール鎖を有し、分子の両末端にそれぞれ1個ずつの(メタ)アクリル基を有する2官能エステル(メタ)アクリレートを含有することが、更に硬化性を上げるために好ましい。
【0037】
3官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリセリンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ε−カプロラクトン変性トリ(メタ)アクリレート、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリプロピオネート等が挙げられる。
【0038】
4官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートモノプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、オリゴエステルテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
エステル(メタ)アクリレートを含有させることによって、微細凹凸構造膜が軟らかくなり、本発明における特殊な構造を有する表面の機械特性が良好になる。また、硬化性等を向上させるために使用したウレタン(メタ)アクリレートにより柔軟性が悪化するのを防ぐことが可能となる。このエステル(メタ)アクリレートを含有せず、ウレタン(メタ)アクリレートの含有のみでは、軟らかくなり過ぎて、鉛筆硬度がH以上にできなくなり、機械特性に劣る場合がある。
【0040】
[3]エポキシ(メタ)アクリレートについて
エポキシ(メタ)アクリレートとしては特に限定はないが、具体的には例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコ−ルのジグリシジルエーテル類;グリセリンジグリシジルエーテル等のグリセリングリシジルエーテル類;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのPO変性ジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリジルエーテル等のビスフェノール系化合物のジグリシジルエーテル類等に、(メタ)アクリル酸を付加させた構造を有するもの等が挙げられる。また、縮重合されたエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加させた構造を有するものが挙げられる。更に、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の縮重合物に、例えばエピクロロヒドリン等を反応させて得られた構造を有するエポキシ樹脂に対して、(メタ)アクリル酸を付加させた構造を有するもの等が挙げられる。
【0041】
エポキシ(メタ)アクリレートを含有させることによって、更に強靭になり、鉛筆硬度がH以上にし易くなり、本発明における特殊な構造を有する表面の耐傷性等の機械特性が更に良好になる。
【0042】
1−2−4.微細凹凸構造膜における変性シリコーンオイル
更に、本発明の積層体における微細凹凸構造膜は、変性シリコーンオイルを含有することも好ましい。「変性シリコーンオイル」とは、分子中にシロキサン結合を有し、ケイ素原子(Si)にメチル基以外の有機基も結合している化合物をいう。「変性シリコーンオイル」には、シリコーン(メタ)アクリレートが含まれる。「シリコーン(メタ)アクリレート」とは、分子中にシロキサン結合を有する(メタ)アクリレート化合物をいう。従って、本発明における(メタ)アクリル系重合性組成物(A)は、シリコーン(メタ)アクリレートを含有することも好ましい。
【0043】
1−2−5.(メタ)アクリル系重合性組成物(A)における組成比
ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及び変性シリコーンオイルの含有比率は特に限定はなく、鉛筆硬度がH以上になるように、また種々の物性が最適になるように調整される。ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、エステル(メタ)アクリレート10重量部以上が好ましく、20重量部以上が特に好ましい。また、上限は、400重量部以下が好ましく、300重量部以下がより好ましく、200重量部以下が特に好ましく、100重量部以下が更に好ましい。
【0044】
また、ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、エポキシ(メタ)アクリレート0〜50重量部が好ましく、1〜20重量部が特に好ましく、2〜10重量部が更に好ましい。
【0045】
また、ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、変性シリコーンオイル0〜10重量部が好ましく、0.02〜5重量部が特に好ましく、0.05〜2重量部が更に好ましい。変性シリコーンオイルが多過ぎると、微細凹凸構造膜中で分離し不透明な膜を形成する場合があり、一方、少な過ぎると、表面の耐傷性等の機械特性が劣る場合がある。
【0046】
1−2−6.(メタ)アクリル系重合性組成物(A)におけるその他の化合物
本発明における(メタ)アクリル系重合性組成物(A)には、上記したもの以外に、その他の(メタ)アクリレート、重合開始剤、添加剤等を含有させることができる。
【0047】
本発明における微細凹凸構造膜が、(メタ)アクリル系重合性組成物(A)の光照射又は電子線照射によって形成される場合に、光重合開始剤の有無は特に限定はないが、特に光照射によって形成される場合には、光重合開始剤が含有されることが好ましい。光重合開始剤としては特に限定はないが、ラジカル重合に対して従来用いられている公知のもの、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルアセタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキシムエステル類等のアリールケトン系光重合開始剤;スルフィド類、チオキサントン類等の含硫黄系光重合開始剤;アシルジアリールホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド類;アントラキノン類等が挙げられる。また、更に光増感剤を併用させることもできる。
【0048】
上記光重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合性組成物(A)100重量部に対して、通常0〜10重量部、好ましくは0.2〜8重量部、特に好ましくは0.5〜6重量部の範囲から選ばれる。光重合開始剤の配合量は、鉛筆硬度がH以上になるように、また種々の物性が最適になるように調整される。
【0049】
本発明における微細凹凸構造膜が、(メタ)アクリル系重合性組成物(A)の熱重合によって形成される場合には、熱重合開始剤が含有されることが好ましい。熱重合開始剤としては、ラジカル重合に対して従来用いられている公知のものが使用可能であるが、例えば、過酸化物、ジアゾ化合物等が挙げられる。
【0050】
1−2−7.熱可塑性組成物
本発明の積層体における微細凹凸構造膜は熱可塑性組成物からなっていてもよい。熱可塑性組成物とは、ガラス転移温度又は融点まで加熱することによって軟らかくなるものをいう。具体的には特に限定はないが、例えば、アクリロニトリル−スチレン系重合体組成物、アクリロニトリル−スチレン系重合体組成物、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン系重合体組成物、スチレン−(メタ)アクリレート系重合体組成物、ブダジエン−スチレン系重合体組成物等のスチレン系重合体組成物;塩化ビニル系重合体組成物、エチレン−塩化ビニル系重合体組成物、エチレン−酢酸ビニル系重合体組成物、プロピレン系重合体組成物、プロピレン−塩化ビニル系重合体組成物、プロピレン−酢酸ビニル系重合体組成物、塩素化ポリエチレン系組成物、塩素化ポリプロピレン系組成物等のポリオレフィン系組成物;ケトン系重合体組成物;ポリアセタール系組成物;ポリエステル系組成物;ポリカーボネート系組成物;ポリ酢酸ビニル系組成物、ポリビニル系組成物、ポリブタジエン系組成物、ポリ(メタ)アクリレート系組成物等が挙げられる。
【0051】
1−2−8.微細凹凸構造膜におけるその他の化合物
本発明の積層体における微細凹凸構造膜には、更に、シリコーンオイル、前記した変性シリコーンオイル、バインダーポリマー、微粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、離型剤、滑剤、レベリング剤等を配合することもできる。これらは、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
【0052】
このうち、変性シリコーンオイルを含有することによって、前記した特殊な表面形状に対し、耐傷性等の機械特性が特に優れたものになる。また、硬化させた微細凹凸構造膜を型から剥離する工程を有する場合には賦型性が重要になるが、本発明においては、該変性シリコーンオイルの使用は、この賦型性の改良よりはむしろ鉛筆硬度と関係して表面耐傷性等の機械特性の改良に効果的である。
【0053】
変性シリコーンオイルの数平均分子量としては、400〜20000が好ましく、1000〜15000が特に好ましい。数平均分子量が大き過ぎるときには、他成分との相溶性が悪化する場合があり、一方、数平均分子量が小さ過ぎるときには、表面耐傷性等の機械特性が劣る場合がある。
【0054】
1−3.微細凹凸構造膜の膜厚
微細凹凸構造膜の膜厚は、積層体の鉛筆硬度をH以上に調整でき、積層体を問題なく形成でき、問題なく使用できれば特に限定はないが、0.1μm〜10μmが好ましく、0.3μm〜7μmがより好ましく、0.5μm〜5μmが特に好ましい。微細凹凸構造膜の膜厚が小さ過ぎると、微細凹凸構造を転写しにくくなる場合がある。
【0055】
2.中間膜
2−1.中間膜の組成
本発明の積層体は、図1に示したように、少なくとも、基材、中間膜、微細凹凸構造膜をこの順に積層してなる。該中間膜は、硬化性組成物が硬化してなるものであっても、熱可塑性組成物であってもよいが、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって、(メタ)アクリル系重合性組成物が重合したものであることが、鉛筆硬度をH以上にし易い点、それによって、優れた機械特性を与える点等から好ましい。中間膜の形成に用いられる(メタ)アクリル系重合性組成物を「(メタ)アクリル系重合性組成物(B)」とする。また、「光照射、電子線照射及び/又は加熱によって」とは、光照射、電子線照射及び加熱からなる群のうち、何れか1つの処理によってでもよく、そこから選ばれた2つの処理の併用によってでもよく、3つの処理全ての併用によってでもよい。
【0056】
(メタ)アクリル系重合性組成物(B)は、ウレタン(メタ)アクリレート及び/又はエステル(メタ)アクリレート及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートを含有するものであることが上記点で特に好ましい。
【0057】
ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートの種類としては、微細凹凸構造膜の部分で記載したものと同様のものが用いられる。
【0058】
2−1−1.(メタ)アクリル系重合性組成物(B)
該(メタ)アクリル系重合性組成物(B)の(メタ)アクリル基の重合後の反応率は特に限定はないが、85モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。かかる反応率が低過ぎると、積層体の表面の鉛筆硬度をH以上にできず、機械特性の低下をまねく場合がある。反応率は、微細凹凸構造膜を形成する(メタ)アクリル系重合性組成物(A)の箇所に記載された方法と同様の方法で測定され、その測定値として定義される。
【0059】
[1]ウレタン(メタ)アクリレートについて
本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートは特に限定はなく、例えば、ウレタン結合の位置や個数、(メタ)アクリル基の位置や個数は特に限定はない。(メタ)アクリル系重合性組成物(B)が、ウレタン(メタ)アクリレートを含有することによって、得られた積層体の鉛筆硬度をH以上にできるようになり、機械特性が良好になると共に柔軟性が優れたものになる。
【0060】
ウレタン(メタ)アクリレート中の炭素間二重結合の数(官能基数)としては、特に限定はないが、4〜20個が好ましく、10〜15個が特に好ましい。官能基数が少な過ぎると、得られた中間膜の硬化性、反応率が低下し、積層体の鉛筆硬度をH以上に調整し難くなり、鉛筆硬度等の機械特性が劣るようになる場合がある。一方、官能基数が多過ぎると、重合による(メタ)アクリル基の炭素間二重結合消費率、すなわち反応率が十分に上がらなくなり、積層体の鉛筆硬度をH以上に調整できなくなる場合がある。
【0061】
[2]エステル(メタ)アクリレートについて
エステル(メタ)アクリレートとしては特に限定はなく、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物が好ましいものとして挙げられる。具体的には、微細凹凸構造膜の箇所で記載したもの等が挙げられる。
【0062】
エステル(メタ)アクリレートを用いることによって、本発明における特殊な構造を有する表面の機械特性が良好になる。また、上記ウレタン(メタ)アクリレートの使用による柔軟性の悪化を抑制することが可能となる。2官能エステル(メタ)アクリレートを含有させると、中間膜の硬化性が上がり、積層体の鉛筆硬度をH以上に調整でき、機械特性を向上させる点で好ましい。
【0063】
[3]エポキシ(メタ)アクリレートについて
エポキシ(メタ)アクリレートとしては特に限定はないが、具体的には、微細凹凸構造膜の箇所で記載したもの等が挙げられる。エポキシ(メタ)アクリレートを含有させることによって、更に強靭になり、積層体の鉛筆硬度をH以上に調整でき、本発明における特殊な構造を有する表面の鉛筆硬度等の機械特性が更に良好になる。
【0064】
2−1−2.中間膜における(メタ)アクリル系重合性組成物(B)の組成比
ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートの含有比率は特に限定はないが、積層体の鉛筆硬度をH以上に調整するために、ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、エステル(メタ)アクリレート10〜400重量部が好ましく、20〜300重量部がより好ましく、30〜200重量部が特に好ましく、40〜100重量部が更に好ましい。また、ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、エポキシ(メタ)アクリレート0〜50重量部が好ましく、1〜20重量部が特に好ましく、2〜10重量部が更に好ましい。
【0065】
2−1−3.(メタ)アクリル系重合性組成物(B)中のその他の化合物
本発明における中間膜が、(メタ)アクリル系重合性組成物(B)の光照射又は電子線照射によって形成される場合に、光重合開始剤の有無は特に限定はないが、特に光照射によって形成される場合には、光重合開始剤が含有されることが好ましい。光重合開始剤としては特に限定はないが、具体的には、微細凹凸構造膜の箇所で記載したもの等が挙げられる。また、光増感剤を併用させることもできる。
【0066】
上記光重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合性組成物(B)100重量部に対して、通常0〜10重量部、好ましくは0.2〜8重量部、特に好ましくは0.5〜6重量部の範囲から選ばれる。
【0067】
本発明における中間膜が、(メタ)アクリル系重合性組成物(B)の熱重合によって形成される場合には、熱重合開始剤が含有されることが好ましい。熱重合開始剤としては、微細凹凸構造膜の箇所で記載したもの等が挙げられる。
【0068】
2−1−4.中間膜における熱可塑性組成物
本発明の積層体における中間膜は熱可塑性組成物からなっていてもよい。熱可塑性組成物は、具体的には微細凹凸構造膜の箇所で記載したもの等が挙げられる。中でも、中間膜としては、ポリ(メタ)アクリレート系組成物、ポリカーボネート系組成物等が好ましい。これらを用いると、得られた積層体の耐スチールウール性と鉛筆硬度の両立が達成でき、機械特性を特に向上させることができる。
【0069】
2−1−5.中間膜におけるその他の組成
更に、本発明の積層体における中間膜は、シリコーンオイル、前記した変性シリコーンオイル、バインダーポリマー、微粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、離型剤、潤滑剤、レベリング剤等を配合することもできる。これらは、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
【0070】
2−2.中間膜の膜厚
中間膜の膜厚は、積層体の鉛筆硬度をH以上に調整でき、積層体として問題なく使用できれば特に限定はないが、0.1μm〜100μmが好ましく、0.5μm〜50μmがより好ましく、0.8μm〜30μmが特に好ましい。中間膜の膜厚が大き過ぎると、反射防止積層体の全光線透過率が低下する場合があり、一方、小さ過ぎると、十分な鉛筆硬度や機械特性が得られない場合がある。
【0071】
2−3.中間膜の物性
中間膜の膜厚と物性は、積層体の表面の鉛筆硬度がH以上にするように調整される。中間膜自体の鉛筆硬度は特に限定はないが、H〜5Hが好ましく、2H〜4Hが特に好ましい。中間膜の硬度が低過ぎると、積層体の鉛筆硬度が低くなり、積層体表面の機械特性が悪化する場合がある。
【0072】
3.基材
本発明の積層体は、図1に示したように、少なくとも、基材、中間膜、微細凹凸構造膜をこの順に積層してなる。該基材としては、硬化性若しくは熱可塑性であり、可視光を透過する樹脂、又は無機物が挙げられる。樹脂としては、具体的には、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記する)等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース誘導体;エポキシ系樹脂;シリコーン系樹脂等が挙げられる。
【0073】
4.鉛筆硬度
本発明の積層体は、中間膜側とは反対側の表面、すなわち微細凹凸構造を有する表面で測定した鉛筆硬度がH以上であることが必須である。鉛筆硬度は、JIS K5400に基づいた鉛筆硬度試験機に荷重500gを載せ測定したものとして定義される。「H以上」とは、H又はHより鉛筆硬度が硬いことをいう。好ましくは2H以上である。
【0074】
5.製造方法
5−1.微細凹凸構造の形成方法
本発明においては、微細凹凸構造の形成方法は限定されず、微細凹凸構造を有する型の転写、微粒子の吹き付け若しくは付着、溶媒の留去に伴う凹凸形成等何れも可能である。均一な微細凹凸構造が形成できる点、本発明によって機械特性が良好になる効果が大きい点等により、微細凹凸構造を有する型の転写による形成方法が好ましい。
【0075】
上記のように、型の転写によって微細凹凸構造を形成する方法としては特に限定はないが、アルミニウム材料の表面を陽極酸化し、要すれば陽極酸化被膜のエッチングとの組み合わせによりテーパー形状の細孔を有する型を作製し、この型を微細凹凸構造膜形成材料に転写させることによって得られることが、良好な視認性を得るために好ましい。
【0076】
5−2.積層体の製造方法
本発明の積層体の製造方法は、例えば下記の方法が好ましい。すなわち、上記中間膜形成材料を基材上に採取、バーコーター若しくはアプリケーター等の塗工機又はスペーサーを用いて、均一膜厚になるように塗布する。その後、要すれば、塗布溶剤を留去した後、要すれば、紫外線等の光照射及び/又は電子線照射及び/又は加熱により硬化させて、基材上に中間膜を得る。
【0077】
次いで、上記中間膜の上に、微細凹凸構造膜形成材料を採取、バーコーター若しくはアプリケーター等の塗工機又はスペーサーを用いて、均一膜厚になるように塗布し、その後、前記表面構造を有する型を貼り合わせる。貼り合わせた後、硬化性組成物の場合には、基材側から光照射、電子線照射及び/又は加熱により硬化させ、得られた積層体を該型から剥離させて本発明の積層体を得る。
【0078】
あるいは、前記表面構造を有する型の上に、直接、微細凹凸構造膜形成材料を採取、要すれば塗工機やスペーサー等で均一膜厚の塗布膜を作製し、その後、中間膜が設けられた基材を、中間膜側を下にして貼り合わせた後、硬化性組成物の場合には、基材側から光照射、電子線照射及び/又は加熱により硬化させ、得られた積層体を該型から剥離させて本発明の積層体を得る。
【0079】
この製造方法を、更に図1を用いて具体的に説明するが、本発明は図1の具体的態様に限定されるものではない。すなわち、型(2)に微細凹凸構造膜形成材料(1)を適量供給又は塗布し(図1(a))、ローラー部側を支点に、中間膜(4)が設けられた基材(3)を斜めから貼り合せる(図1(b))。型(2)、微細凹凸構造膜形成材料(1)、中間膜(4)及び基材(3)が一体となった貼合体を、ローラー(5)へと移動し(図1(c))、ローラー圧着させることにより、型(2)が有する特定の構造を微細凹凸構造膜形成材料(1)に転写、賦型させる(図1(d))。これを硬化させた後、型(2)から剥離することにより(図1(e))、本発明の目的とする微細凹凸構造膜(6)等を有する積層体(7)を得る。
【0080】
図2は、連続的に積層体(7)を製造する装置の一例の模式図であるが、本発明はこの模式図に限定されるものではない。すなわち、型(2)に微細凹凸構造膜形成材料(1)を付着させ、ローラー(5)により力を加え、中間膜(4)が設けられた基材(3)を型(2)に対して斜めの方向から貼り合せて、型(2)が有する特定の構造を微細凹凸構造膜形成材料(1)に転写させる。これを、硬化装置(8)を用いて硬化させた後、型(2)から剥離することにより、本発明の目的とする積層体(7)を得る。なお、支持ローラー(9)は、積層体(7)を上部に引き上げるために使用するものである。
【0081】
ローラー(5)を用いて、斜めから貼り合わせることによって、気泡が入らず欠陥のない微細凹凸構造膜(6)が得られる。また、ローラー(5)を用いれば線圧を加えることになるため圧力を大きくでき、そのため大面積の積層体(7)の製造が可能になり、また、圧の調節も容易になる。また、基材(3)、中間膜(4)と一体となった均一な膜厚と、所定の光学特性と機械特性を有する積層体(7)の製造が可能になり、更に、連続的に製造できるため生産性に優れたものになる。
【0082】
本発明における微細凹凸構造膜は、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって重合したものであることが好ましいが、光照射の場合の光の波長については特に限定はない。可視光線及び/又は紫外線を含有する光であることが、要すれば光重合開始剤の存在下で良好に(メタ)アクリル基の炭素間二重結合を重合させる点で好ましい。特に好ましくは紫外線を含有する光である。光源は特に限定はなく、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、ハロゲンランプ、各種レーザー等公知のものが用いられる。電子線の照射の場合、電子線の強度や波長には特に限定はなく、公知の方法が用いられる。
【0083】
熱によって重合させる場合は、その温度は特に限定はないが、80℃以上が好ましく、100℃以上が特に好ましい。また、200℃以下が好ましく、180℃以下が特に好ましい。重合温度が低過ぎる場合は重合が充分に進行しない場合があり、高過ぎる場合は重合が不均一になったり、基材の劣化が起こったりする場合がある。加熱時間も特に限定はないが、5秒以上が好ましく、10秒以上が特に好ましい。また、10分以下が好ましく、2分以下が特に好ましく、30秒以下が更に好ましい。
【0084】
6.積層体の用途
本発明の積層体は、視認性改良用、光の反射防止用、光の透過改良用、表面保護用等に好適に用いられる。具体的には、FPD等の反射防止膜、透過性改良膜、表面保護膜等として好適に用いられる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらに限定されるものではない。
【0086】
実施例1
<中間膜の製造>
厚さ80μmのPETフィルムを基材として用い、その上に、下記式(1)で示されるウレタン(メタ)アクリレート32.7g、下記式(2)で示されるウレタン(メタ)アクリレート65.3g、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.0gを混合して得た塗布液を塗布、乾燥させた。次いで、フュージョン製UV照射装置を用いて光硬化させ、基材上に5μmの中間膜を形成させた。
【0087】
<微細凹凸構造膜形成材料の調製>
下記式(1)で示される化合物(1)11.8重量部、下記化合物(2)23.0重量部、テトラエチレングリコールジアクリレート45.2重量部、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート20.0重量部及び光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.0重量部を混合して光硬化性組成物(a)を得た。
【0088】
化合物(1)は、下記の式(1)で示される化合物である。
【化1】

[式(1)中、Xは、ジペンタエリスリトール(6個の水酸基を有する)残基を示す。]
【0089】
化合物(2)は、
2HEA−−IPDI−−(アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールとの重量平均分子量3500の末端水酸基のポリエステル)−−IPDI−−2HEA
で示される化合物である。ここで、「2HEA」は、2−ヒドロキシエチルアクリレートを示し、「IPDI」は、イソホロンジイソシアネートを示し、「−−」は、イソシアネート基と水酸基の通常の下記の反応による結合を示す。
−NCO + HO− → −NHCOO−
【0090】
<積層体の製造>
アルミニウムの陽極酸化とエッチング(孔径拡大)処理を交互に5回繰り返すことで、周期200nm、細孔径開口部160nm、底部50nm、細孔深さ300nmのテーパー形状の細孔を有する陽極酸化被膜表面を得た。以下、これを型として用いた。
【0091】
微細凹凸構造膜形成材料である上記光硬化性組成物(a)を、上記中間膜が形成されたPETフィルムの中間膜側に採取、バーコーターNO28にて、均一な膜厚になるよう塗布した。その後、上記で得られた型を貼り合わせ、細孔内に光硬化性組成物(a)が充填されたことを確認して、フュージョン製UV照射装置によって、3.6J/cmの紫外線照射によって硬化させた。硬化後、膜を型から剥離することで、表面に、平均高さ300nmの凸部が平均周期200nmで存在する積層体を得た。
【0092】
実施例2
実施例1において、中間膜の厚さを5μmから10μmに代えた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0093】
実施例3
実施例1において、中間膜の厚さを5μmから15μmに代えた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0094】
実施例4
実施例1において、中間膜の製造を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
<中間膜の製造>
厚さ80μmのPETフィルムを基材として用い、その上に、ビスフェノールA系エポキシアクリレート65.4g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート32.6g、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.0gを混合して得た塗布液を塗布、乾燥させた。次いで、フュージョン製UV照射装置を用いて光硬化させ、基材上に15μmの中間膜を形成させた。
【0095】
実施例5
実施例1において、中間膜の製造を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
<中間膜の製造>
厚さ80μmのPETフィルムを基材として用い、その上に、テトラエチレングリコールジアクリレート65.4g、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート32.6g、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.0gを混合して得た塗布液を塗布、乾燥させた。次いで、フュージョン製UV照射装置を用いて光硬化させ、基材上に15μmの中間膜を形成させた。
【0096】
比較例1
実施例1において、中間膜を形成させずに、基材の上に直接微細凹凸構造膜を形成させた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0097】
比較例2
実施例1において、中間膜の製造を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
<中間膜の製造>
厚さ80μmのPETフィルムを基材として用い、その上に、下記化合物(3)を72g、トリプロピレングリコールジアクリレート26g、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.0gを混合して得た塗布液を塗布、乾燥させた。次いで、フュージョン製UV照射装置を用いて光硬化させ、基材上に10μmの中間膜を形成させた。
【0098】
化合物(3)は、
2HEA−−IPDI−−(アジピン酸と1,4−ブタンジオールとの重量平均分子量25000の末端水酸基のポリエステル)−−IPDI−−2HEA
で示される化合物である。ここで、「2HEA」は、2−ヒドロキシエチルアクリレートを示し、「IPDI」は、イソホロンジイソシアネートを示し、「−−」は、イソシアネート基と水酸基の通常の下記の反応による結合を示す。
−NCO + HO− → −NHCOO−
【0099】
<光学特性>
[反射率の測定方法]
島津製作所製、自記分光光度計「UV−3150」を用い、積層体の裏面(PETフィルム側)に黒色テープを貼り付け、裏面から波長380nm〜750nmの光をスキャンさせて、正5°反射率スペクトルを測定した。波長380nm〜750nmの範囲で最も正5°反射率の大きかった波長での正5°反射率(%)を表1に示す。
【0100】
<機械特性>
[耐スチールウール性の測定方法]
積層体の表面上を、新東科学(株)社製の表面試験機ドライボギアTYPE−14DRを用い、25mm円柱の平滑な断面にスチールウール#0000を均一に貼り付け、荷重400gをかけながら、速度10cm/秒で10往復させたときの傷の付き具合を観察した。以下の基準で判定した。結果を表1に示す。
【0101】
(判定基準)
5:25mm円柱内に引掻き傷なし
4:25mm円柱の一部に数本程度の引掻き傷あり
3:25mm円柱の一部に無数の引掻き傷あり
2:25mm円柱の全面に無数の引掻き傷あり
1:25mm円柱の全面に無数の激しい引掻き傷あり
【0102】
[鉛筆硬度の測定方法]
JIS K5400に基づいた鉛筆硬度試験機に荷重500gを載せ測定を行った。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
表1の結果から判るように、実施例1〜5の積層体は、耐スチールウール性と鉛筆硬度が何れも良好であり、優れた機械特性を有するものであった。一方、比較例1〜2の積層体は、耐スチールウール性と鉛筆硬度の何れも劣り、優れた機械特性が得られないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の積層体は、光の反射防止性能、光の透過改良性能等に優れており、良好な視認性を付与するのみならず、優れた機械特性を有するので、液晶表示ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機EL(OEL)、CRT、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)等の表面に機械的外力が加わりやすい用途に特に広く好適に利用されるものである。また、より一般に、反射防止膜、透過性改良膜、表面保護膜等としても、広く好適に利用されるものである。
【符号の説明】
【0106】
1 微細凹凸構造膜形成材料
2 型
3 基材
4 中間膜
5 ローラー
6 微細凹凸構造膜
7 積層体
8 硬化装置
9 支持ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材、中間膜、微細凹凸構造膜をこの順に積層してなる積層体であって、該微細凹凸構造膜が、中間膜側とは反対側の表面に、平均高さ100nm以上1000nm以下の凸部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凹部を有し、その凸部又は凹部が、少なくともある一の方向に対し平均周期100nm以上400nm以下で存在する微細凹凸構造を有し、該表面で測定した鉛筆硬度がH以上であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
該微細凹凸構造膜が、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって(メタ)アクリル系重合性組成物(A)が重合したものである請求項1記載の積層体。
【請求項3】
該(メタ)アクリル系重合性組成物(A)が、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートを含有するものである請求項2記載の積層体。
【請求項4】
該中間膜が、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって、(メタ)アクリル系重合性組成物(B)が重合したものである請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載の積層体。
【請求項5】
該(メタ)アクリル系重合性組成物(B)の重合後の(メタ)アクリル基の反応率が85モル%以上である請求項4記載の積層体。
【請求項6】
該(メタ)アクリル系重合性組成物(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートを含有するものである請求項4又は請求項5記載の積層体。
【請求項7】
光の反射防止用及び/又は光の透過改良用である請求項1ないし請求項6の何れかの請求項記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−856(P2011−856A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147631(P2009−147631)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】