説明

基材の放熱フィン

【課題】基材における熱応力による変形を抑制するとともに、放熱性能の低下を抑制できる基材の放熱フィンの提供にある。
【解決手段】基材と接合される接合面を有する接合部と、接合部から延在され、基材の放熱を行う本体部と、を備えた基材の放熱フィンである。本体部は、接合面から離隔する方向へ延在され、接合面は、本体部と対応する高伝熱域Hおよび高伝熱域Hから外れる低伝熱域Lを有し、接合部における接合面の低伝熱域Lに貫通域を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基材に取り付けられ、基材からの熱を放熱する基材の放熱フィンに関する。
【背景技術】
【0002】
基材の放熱フィンに係る従来技術としては、例えば、特許文献1に開示された放熱器付混成集積回路装置を挙げることができる。
この放熱器付混成集積回路装置では、片面に機能部品の搭載および配線を形成してなる混成集積回路基板が備えられ、この基板裏面に導熱体からなる放熱器が取り付けられている。
放熱器は波形に加工されており、この波形放熱器の離散的な上底部分が混成集積回路基板に接着されている。
基板裏面に接合される波型の放熱器の接合面は方形状であって、方形状の接合面にわたって接着剤により基板裏面に接合される。
【0003】
別の従来技術としては、例えば、特許文献2に開示された混成集積回路が存在する。
この混成集積回路は、アルミナ基板に放熱フィンを取り付けた混成集積回路であり、放熱フィンは少なくともアルミナ基板との接着面に複数本のスリットを有している。
そして、放熱フィンにおいてスリットが接着面以外にも形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭57−2664号公報
【特許文献2】特開昭60−175499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、基材と放熱フィンとの線膨張係数の差がある場合、放熱フィンと基材との接合面積が大きくなったり、接合距離が長くなるにつれて両者の熱膨張差により基材に生じる熱応力は大きくなる。
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術では、接合面積が大きいため、基材に生じる熱応力が大きくなりやすいという問題がある。
特に、基材がセラミック基板などの脆性材料の場合では、基材に生じる熱応力によって基材表面にクラックが発生した場合、クラックが全体に拡がって基材全体の破断のおそれがある。
【0006】
特許文献2に開示された従来技術では、放熱フィンにおいてスリットが接着面以外にも形成されており、接着面以外にスリットが形成されることで放熱フィンの放熱性能が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、基材における熱応力による変形を抑制するとともに、放熱性能の低下を抑制できる基材の放熱フィンの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、基材と接合される接合面を有する接合部と、前記接合部から延在され、前記基材の放熱を行う本体部と、を備えた基材の放熱フィンであって、前記本体部は、前記接合面から離隔する方向へ延在され、前記接合面は、前記本体部と対応する高伝熱域および前記高伝熱域から外れる低伝熱域を有し、前記接合部における前記接合面の低伝熱域に貫通域を形成したことを特徴とする。
本体部と対応する高伝熱域とは、接合面において基材から本体部への伝熱性能が高い領域であり、本体部が基材から離隔する位置を「離隔位置」とし、接合部における接合面と反対側の面上で離隔位置に対応する位置(接合部における接合面と反対側の面から本体部が立ち上がる位置が離隔位置よりも内側に位置する場合には、本体部が立ち上がる位置)から基材表面に向かって本体部から離れる方向に引いた45度(一般的に熱が伝わる角度)の直線と接合面が交わる位置を「伝熱位置」とした場合に、離隔位置から伝熱位置までの領域のことを指すこととする。高伝熱域と外れる低伝熱域とは、接合面において高伝熱域以外の領域であって基材から本体部への伝熱性能が高伝熱域よりも低くなる領域である。
【0009】
本発明では、放熱フィンの接合面における貫通域の形成により低伝熱域の面積は低減されるため、基材と放熱フィンとの熱膨張差による基材における熱応力は、低伝熱域の面積低減に応じて低減される。
また、放熱フィンにおける接合面の高伝熱域では、基材から放熱フィンへの伝熱性は高く、低伝熱域の面積低減による影響は小さい。
本発明によれば、基材と放熱フィンとの接合面積の低減化により、基材における熱応力を抑制することができるとともに、接合面における高伝熱域からの基材への伝熱により放熱フィンの放熱性能の低下を抑制できる。
特に、基材が脆性材料の場合には、基材表面のクラックにかかる熱応力による基材全体の破損を防止することができる。
【0010】
また、本発明は、上記の基材の放熱フィンにおいて、前記貫通域の縁部に前記接合面から離隔する方向へ延在する折り返し部を形成してもよい。
【0011】
この場合、貫通域の縁部に形成された折り返し部は、本体部と同様に放熱を行うことができ、放熱フィンの放熱性能向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明は、上記の基材の放熱フィンにおいて、前記貫通域は、前記接合部の形状に対応する形状を有してもよい。
【0013】
この場合、放熱フィンの形成材料の打ち抜きや切り抜きによる貫通域の形成のほかに、放熱フィンの形成材料の折り曲げによっても貫通域を形成することも可能である。
【0014】
また、本発明は、上記の基材の放熱フィンにおいて、前記貫通域は、円孔又は方形孔としてもよい。
【0015】
この場合、放熱フィンの形成材料の打ち抜きや切り抜きにより貫通域を形成し易くなる。
【0016】
また、本発明は、上記の基材の放熱フィンにおいて、放熱フィン本体は金属板により形成され、前記折り返し部と前記放熱フィン本体とは一体化されてもよい。
【0017】
この場合、放熱フィンにおいて部品点数を増やすことなく折り返し部を設けることができ、放熱フィン本体を金属板とすることにより放熱フィン本体の折り返し部の一体化が容易となる。
【0018】
また、本発明は、上記の基材の放熱フィンにおいて、前記接合部は列状に配設されるとともに、互いに列幅方向にオフセットされている複数のオフセット接合部を有してもよい。
【0019】
この場合、接合部が列状に配設されるとともに、互いに列幅方向にオフセットされている複数のオフセット接合部を有するから、基材に接合する放熱フィンを単一とすることができ、放熱フィンを接合する接合作業が容易となる。
【0020】
また、本発明は、上記の基材の放熱フィンにおいて、全ての前記オフセット接合部に前記貫通域が形成されてもよい。
【0021】
この場合、全てのオフセット接合部に貫通域が形成されているため、放熱フィンの軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基材における熱応力による変形を抑制するとともに、放熱性能の低下を抑制できる基材の放熱フィンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る基材の放熱フィンを備えたペルチェ素子の断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る基材の放熱フィンの全体斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る基材の放熱フィンの要部斜視図である。
【図4】第1の実施形態に係る基材の放熱フィンの要部平面図である。
【図5】図3におけるA−A線矢視図(要部拡大図を含む)である。
【図6】(a)、(b)は第1の実施形態の変形例に係る要部断面図である。
【図7】(a)〜(c)は第1の実施形態の変形例に係る要部断面図である。
【図8】第2の実施形態に係る基材の放熱フィンの要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る基材の放熱フィン(以下、単に「放熱フィン」と表記する)を図面に基づいて説明する。
図1に示すペルチェ素子10は、対向するように配置された第1基板11Aおよび基材としての第2基板11Bを備える。
第1基板11Aおよび第2基板11Bは、熱伝導率の大きい電気絶縁性の優れる窒化アルミニウム(AlN)等のセラミック系材料から形成されている。
第1基板11Aと第2基板11Bとの間には、複数のP型半導体素子12およびN型半導体素子13が交互に配置されている。
第1基板11Aの基板面には、導体層としての複数の電極14Aが銅メッキのエッチングにより形成され、第2基板11Bの基板面には銅メッキのエッチングによる導体層としての複数の電極14Bが形成されている。
複数のP型半導体素子12および複数のN型半導体素子13は、複数の電極14A、14Bにより直列に接続されている。
【0025】
P型半導体素子12およびN型半導体素子13の一方の接合面は電極14Aを介して第1基板11Aに接合されている。
また、P型半導体素子12およびN型半導体素子13の他方の接合面は電極14Bを介して第2基板11Bに接合されている。
第1基板11Aの外側には、吸熱側となる被吸熱体15が接合され、第2基板11Bの外側にはおよび放熱側となる放熱フィン17が接合されている。
【0026】
P型半導体素子12の両面は半田16によってそれぞれ電極14A、14Bに接合されており、同様に、N型半導体素子13の両面は半田16によってそれぞれ電極14A、14Bに接合されている。
また、電極14Aと被吸熱体15は第1基板11Aにより電気的に絶縁され、電極14Bと放熱フィン17は第2基板11Bによって電気的に絶縁されている。
このようなペルチェ素子10に通電すると、P型半導体素子12およびN型半導体素子13に熱の移動が起こり、第1基板11Aと第2基板11Bとの間に温度差が発生し、第1基板11Aおよび第2基板11Bの一方が吸熱側となり、一方が放熱側となる。
本実施形態の場合は、第1基板11A側が吸熱側、第2基板11B側が放熱側となるようにペルチェ素子10に対して通電する。
そのため、被吸熱体15は冷却され、放熱側である放熱フィン17は加熱される。
【0027】
ペルチェ素子の第2基板11Bに接合されている放熱フィン17について説明する。
図2に示すように、本実施形態の放熱フィン17はオフセットフィンであり、放熱フィン本体18は多数の凸部19を備えている。
図3に示すように、凸部19は、金属板の折り曲げにより底壁20から立ち上がる一対の脚壁21と、一対の脚壁21の間において底壁20と平行となる頂壁22と、を備えている。
放熱フィン17の幅方向(図2、図3におけるy軸方向)において凸部19は間隔を置いて形成されており、放熱フィン17の幅方向において、底壁20〜脚壁21〜頂壁22〜脚壁21〜底壁20が連続する矩形波が形成される。
【0028】
幅方向と直角方向となる長さ方向(図2、図3におけるx軸方向)においては、互いに隣り合う凸部19が形成されているが、凸部19は互いに幅方向に位置ずれして配設されている。
図4に示すように、放熱フィン17の長さ方向において配設された凸部19は、クランク状の長さ方向の凸部列を形成しており、放熱フィン17の幅方向に複数の凸部列が形成されている。
つまり、凸部列における接合部は、列状に配設されるとともに互いに列幅方向にオフセットされている複数のオフセット接合部としての凸部19を有する。
【0029】
凸部19の頂壁22は第2基板11Bと接合するオフセット接合部に相当し、頂壁22の表面は第2基板11Bとの接合面として機能する。
図3に示すように、各凸部19の頂壁22は貫通域としての貫通孔23を備えており、貫通孔23は頂壁22の形状に対応する形状である方形孔である。
頂壁22に貫通孔23を設けることにより、頂壁22と第2基板11Bとの接合面積は貫通孔23を設けない場合と比較して低減される。
この実施形態では、最も好ましい例として、全ての頂壁22に貫通孔23を形成したが、必ずしも全て頂壁22に貫通孔23を設けなくてもよく、一部の頂壁22に貫通孔23を設けるようにしてもよい。
また、この実施形態では、頂壁22が貫通域としての貫通孔23を備えるようにしたが、貫通域は、貫通孔23でなくてもよく、例えば、切り込み(切れ目)であってもよい。
脚壁21付近を含む頂壁22の外縁寄りの部位のみが、オフセット接合部として第2基板11Bと接合する。
【0030】
貫通孔23は頂壁22における中心部の切り抜きと折り返しにより形成されており、切り抜き前の頂壁22の中心部は3辺を持つように切り抜かれ、中心部の折り返しにより脚壁21間に位置する折り返し壁24を形成する。
この実施形態では、図5に示すように、折り返し壁24は貫通孔23の穿孔と同時に折り返しにより形成されており、折り返し部に相当する。
そして、折り返し壁24は頂壁22の壁面に対して45度の傾斜角度を持つように設定されており、折り返し壁24は貫通域の縁部としての貫通孔23の孔縁において頂壁22の表面から隔離する方向へ延在する。
【0031】
放熱フィン17における脚壁21、底壁20および折り返し壁24は放熱機能を果す本体部に相当する。
貫通孔23が形成されることにより放熱機能を果す脚壁21は、貫通孔23の周囲に形成されていることになる。
脚壁21は基材である第2基板11Bの表面から離隔する方向へ延在されており、頂壁22の表面を通じて第2基板11Bの熱を最も受け易い。
【0032】
ところで、図5に示すように、放熱フィン17が第2基板11Bにロウ付け等により固定される状態では、頂壁22が第2基板11Bの放熱側の面と当接する。
第2基板11Bと当接する頂壁22の表面の殆どは高伝熱域Hを形成し、頂壁22の表面において貫通孔23側の僅かな領域が低伝熱域Lを形成している。
高伝熱域Hは、第2基板11Bからの熱伝導が低伝熱域Lにおける熱伝導と比較して高い領域である。
【0033】
この実施形態では、貫通孔23の形成前の頂壁22においては、高伝熱域Hから外れる内側の領域が低伝熱域Lであり、貫通孔23は頂壁22の表面における低伝熱域Lの面積を低減するように形成されている。
また、貫通孔23は、第2基板11Bと接合される頂壁22の連続直線部分の面積を少なくするように形成されている。
高伝熱域Hは、幅方向において接合面が離間する脚壁21の外壁面から脚壁21の内壁面を貫通孔23側に越えた範囲において設定されている。
この越えた範囲から脚壁21の内壁面の基点を結ぶ線Sは、接合方向に対して45度傾斜しており、線Sよりも外側は高伝熱域Hを通じて脚壁21へ熱伝導される部位である。
また、線Sよりも内側は低伝熱域Lを通じて頂壁22へ熱伝導される部位である。
このように高い熱伝導を行う高伝熱域Hを残し、高伝熱域Hよりも低い熱伝導を行う低伝熱域Lの面積を低減することで、放熱フィン17の放熱性能の維持が図られる。
また、第2基板11Bと接合される頂壁22の連続直線部分の面積を少なくすることで熱応力が抑制される。
【0034】
次に、放熱フィン17が固定されたペルチェ素子10における放熱について説明する。
ペルチェ素子10に対する通電が行われると、P型半導体素子12およびN型半導体素子13に熱の移動が起こり、第1基板11Aと第2基板11Bとの間に温度差が発生する。
このため、吸熱側である第1基板11Aは冷却されるとともに、放熱側である第2基板11Bは加熱される。
放熱側の第2基板11Bの熱移動についてみると、放熱側の第2基板11Bの熱は、第2基板11Bとの接合面である放熱フィン17における頂壁22の面を通じて脚壁21へ移動し、放熱フィン17に熱が供給される。
放熱フィン17では脚壁21および底壁20において、放熱フィン17を通る熱媒体(気体又は流体)に放熱が行われるほか、折り返し壁24による放熱が行われる。
【0035】
ところで、第2基板11Bと放熱フィン17との線膨張係数の差があり、放熱フィン17と第2基板11Bとの接合面積が大きくなったり、接合距離が長くなったりするにつれて第2基板11Bに生じる熱応力は大きくなる。
本実施形態では、凸部19における頂壁22に貫通孔23を形成しており、第2基板11Bとの接合面積や接合距離を可能な限り低減している。
従って、第2基板11Bと放熱フィン17との線膨張係数の差があっても、第2基板11Bにおける熱応力は、接合面積や接合距離の低減化により従来よりも抑制される。
また、貫通孔23は、放熱機能を損なう影響が少ない頂壁22の中心部において形成されており、放熱フィン17としての放熱機能は貫通孔23がない放熱フィンと比較しても実質的に変わらない。
【0036】
本実施形態によれば以下の作用効果を奏する。
(1)放熱フィン17の頂壁22における貫通孔23の形成により低伝熱域Lの面積や距離は低減されるため、第2基板11Bと放熱フィン17との熱膨張差による第2基板11Bにおける熱応力は、低伝熱域Lの面積や距離の低減に応じて低減される。また、放熱フィン17における頂壁22の接合面の高伝熱域Hでは、第2基板11Bから放熱フィン17への熱伝導性は高く、一方、低伝熱域Lの面積や距離の低減による影響は小さい。第2基板11Bと放熱フィン17との接合面積や接合距離の低減化により、第2基板11Bにおける熱応力を抑制することができるとともに、頂壁22の接合面における高伝熱域Hからの第2基板11Bへの熱伝導により放熱フィン17の放熱性能の低下を抑制できる。特に、第2基板11Bが脆性材料であるセラミックス材料から形成されており、第2基板11Bの表面のクラックに起因する第2基板11B全体の割れ等の破損を防止することができる。
【0037】
(2)貫通孔23の孔縁に接合面から離隔する方向へ延在する折り返し壁24を形成しているから、貫通孔23の孔縁に形成された折り返し壁24は、本体部である脚壁21や底壁20と同様に放熱を行うことができ、放熱フィン17の放熱性能向上を図ることができる。
(3)貫通孔23は、凸部19における頂壁22の形状に対応する形状を有しているから、放熱フィン17の形成材料の打ち抜きや切り抜きによる貫通孔23の形成のほかに、放熱フィン17の形成材料の折り曲げによっても貫通孔23を形成することも可能である。
(4)貫通孔23は方形孔としているから、放熱フィン17の形成材料の打ち抜きや切り抜きにより貫通孔23を形成し易くなる。
【0038】
(5)放熱フィン本体18は金属板により形成され、折り返し壁24は貫通孔23の形成時に形成される。折り返し壁24と放熱フィン本体18とは一体化されているから、放熱フィン17において部品点数を増やすことなく折り返し壁24を設けることができ、放熱フィン本体18を金属板とすることにより放熱フィン本体18の折り返し壁24の一体化が容易となる。
(6)放熱フィン17は、列状に配設されるとともに、互いに列幅方向にオフセットされている複数のオフセット接合部としての凸部19を有するオフセットフィンであるから、第2基板11Bに接合する放熱フィン17を単一とすることができ、放熱フィン17を接合する接合作業が容易となる。また、オフセットフィンである放熱フィン17は、直線フィンよりも伝熱効率に優れる。因みに、放熱フィン17が直線フィンであると、接合部と基材との接合面には連続する直線距離の部分が長くなってしまうが、放熱フィン17がオフセットフィンである場合は、接合部と基材との接合面が蛇行するため、直線フィンよりも連続する直線距離の部分を短くするのに好適である。
(7)全ての凸部19に貫通孔23が形成されているため、放熱フィン17の軽量化を図ることができるほか、第2基板11Bにおける熱応力の発生を最大限抑制することができる。
(8)基材である第2基板11Bの熱応力による変形を抑制することは、ペルチェ素子10および半田16の層(半田付け層)に加わる熱応力を低減することに繋がる。そのため、ペルチェ素子10の長寿命化が可能となる。
【0039】
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。
図6(a)は、貫通孔23を円孔とし、折り返し壁24を設けない変形例である。貫通域としての貫通孔23を円孔とすることで方形孔を設けた場合と同等の効果を奏する。
この変形例では折り返し壁24が設けられないため、折り返し壁24による放熱は不可能であるが、折り返し壁24が省略されている分、放熱フィン17の軽量化を図ることができる。
折り返し壁24がないため、折り返し壁24による冷媒の圧力損失を低減することが可能である。
【0040】
図6(b)は、放熱フィン17の折り目を断面円弧状に形成した変形例である。
この変形例に係る高伝熱域Hは、第1の実施形態よりも脚壁21の貫通孔23の近い側(凸部19の内側)に形成される。
高伝熱域Hが、幅方向において接合面が離間する脚壁21の外壁面から脚壁21の内壁面を貫通孔23側に越えた範囲において設定される点は第1の実施形態と同じである。
また、この越えた範囲から脚壁21の内壁面の基点を結ぶ線Sは、接合方向に対して45度傾斜しており、線Sよりも外側は高伝熱域Hを通じて脚壁21へ熱伝導される部位であり、線Sよりも内側は低伝熱域Lを通じて頂壁22へ熱伝導される部位である。
このように、放熱フィン17の折り目における円弧のRを大きく設定することにより、放熱フィン17と第2基板11Bの接合部に生じる線膨張差による応力集中を緩和することができる。
【0041】
図7(a)〜図7(c)は、折り返し壁の変形例であり、図7(a)は、折り返し壁24Aを頂壁22に対して直角となるように設けた例である。図7(b)は、折り返し壁24Bが貫通孔23の孔縁において互いに対向するように形成されている例であり、各折り返し壁24Bはそれぞれの側となる脚壁21の内壁面に対して45度の傾斜を持つ。図7(c)は折り返し壁24Cの本体が逆向きL字状になるように直角に屈曲されている例である。図7(a)〜図7(c)における各折り返し壁24A〜24Cは、第1の実施形態の折り返し壁24と同じ機能を果す。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る放熱フィンについて説明する。
図8に示す第2の実施形態に係る放熱フィン37は、凸部39がオフセットされない直線状となる直線フィンであり、放熱フィン本体38は直線状の凸部39を備えている。
凸部39は、金属板の折り曲げにより底壁40から立ち上がる一対の脚壁41と、一対の脚壁41の間において底壁40と平行となる頂壁42と、を備えている。
放熱フィン37の幅方向において凸部39は間隔を置いて形成されており、放熱フィン37の幅方向において、底壁40〜脚壁41〜頂壁42〜脚壁41〜底壁40が連続する矩形波が形成される。
幅方向と直角方向となる長さ方向においては、各凸部39が直線状に延設されている。
【0043】
凸部39の頂壁42は第2基板11Bと接合する接合部に相当し、頂壁42の表面は第2基板11Bとの接合面として機能する。
各凸部39の頂壁42は連設される複数の貫通域としての貫通孔43を備えており、貫通孔43の形状は方形孔である。
頂壁42に複数の貫通孔43を設けることにより、頂壁42と第2基板11Bとの接合面積は貫通孔43を設けない場合と比較して低減される。
【0044】
この実施形態では、脚壁41付近を含む頂壁42の外縁寄りの部位が、主に接合部として第2基板11Bと接合する。
【0045】
貫通孔43は頂壁42における中心部の切り抜きと折り返しにより形成されており、切り抜き前の頂壁42の中心部は3辺を持つように切り抜かれ、中心部の折り返しにより脚壁41間に位置する折り返し部としての折り返し壁44を形成する。
この実施形態の折り返し壁44は、第1の実施形態と同様に、貫通孔43の穿孔と同時に折り返しにより形成されており、折り返し部に相当する。そして、折り返し壁44は貫通孔43の孔縁において頂壁42の表面から隔離する方向へ延在する。
【0046】
放熱フィン37における脚壁41、底壁40および折り返し壁44は本体部に相当するが、放熱機能を果す脚壁41は、貫通孔43の周囲に形成されている。
脚壁41は第2基板11Bの表面から離隔する方向へ延在されており、頂壁42の表面を通じて第2基板11Bの熱を最も受け易い。
【0047】
第2基板11Bと当接する頂壁42の表面の殆どは、第1の実施形態と同様に、高伝熱域H(図示せず)を形成する。
頂壁22の表面において、放熱フィン37の幅方向における貫通孔43側の僅かな領域と放熱フィン37の長さ方向における貫通孔43と貫通孔43の間の部位が低伝熱域L(図示せず)に相当する。
【0048】
この実施形態では、貫通孔43の形成前の頂壁42においては、第1の実施形態と同様に、高伝熱域Hから外れる内側の領域が低伝熱域Lであり、貫通孔43は頂壁42の表面における低伝熱域Lの面積を低減するように形成されている。
また、貫通孔43は、第2基板11Bと接合されるる頂壁42の連続直線部分の面積を少なくするように形成されている。
この実施形態では、最も好ましい例として、低伝熱域Lの面積ができるだけ少なくなるように、凸部39毎の頂壁42において貫通孔43を連続して形成しているが、頂壁42に貫通孔43を連続して形成しなくてもよい。
例えば、所定の頂壁42には複数の貫通孔43を設け、別の頂壁42には貫通孔43を設けないようにしてもよい。
【0049】
第2の実施形態では、放熱フィン37が直線フィンであるから、放熱フィンがオフセットフィンである第1の実施形態よりも接合部と基材との接合面には連続する直線距離の部分が長くなり、第1の実施形態と比較すると熱応力の抑制の効果は小さいが、同様の作用効果を奏する。
また、オフセットフィンと比較すると製作が容易であり、製作コストを抑制することができる。
【0050】
なお、上記の各実施形態に係る放熱フィンは、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
○ 上記の実施形態(変形例を含む)では、単一の放熱フィンにより基材の放熱面を覆うようにしたが、例えば、複数の放熱フィンにより基材の放熱面を覆うようにしてもよい。
○ 上記の実施形態では、基材としてペルチェ素子に用いる基板としたが、基材はペルチェ素子に用いる基板に限定されるものではない。例えば、大電力制御用の電子部品等の放熱要素を搭載する基材でもよく、この場合、効果的に本発明を適用することができる。
○ 上記の実施形態では、基材は脆性材料としてのセラミック系材料により形成された基材としたが、他に材料により形成された基材であってもよい。例えば、鋳鉄等の金属材料又はガラス系材料により形成されている基材であってもよく、特に脆性材料により形成された基材の場合、本発明を効果的に適用できる。(ただし、基材の材料が電気的に絶縁性を持たない材料である場合には、例えば、表面処理による電気的絶縁性を持たせる処理が必要である。)
○ 上記の実施形態では、折り返し部として、放熱フィンの長さ方向に沿う面を持つ折り返し壁を設けたが、これは、放熱フィンの通過する冷媒の圧力損失を抑制するためである。例えば、折り返し壁の面を冷媒の流れ方向と直角となるようにしてもよく、この場合、冷媒の圧力損失は抑制されないが、折り返し壁による放熱効果は向上する。
○ 図面では、各貫通孔における頂壁と折り返し壁を繋ぐ部分は互いに同じ向きであるが、この頂壁と折り返し壁を繋ぐ部分を放熱フィンの長さ方向において互い違いの向きになるようにしてもよい。
○ 上記の第2の実施形態では、折り返し壁は頂壁の壁面に対して45度の傾斜角度を持つようにしたが、例えば、30度の傾斜角度の折り返し壁と、60度の傾斜角度の折り返し壁が交互に位置するなど、折り返し壁の傾斜角度をフィンの長さ方向に対して変化させてもよい。これにより、折り返し部の熱伝達率向上を図ることが可能である。
○ 上記の実施形態では、ペルチェ素子における放熱側に放熱フィンを設けたが、吸熱側における吸熱体が冷媒である場合には、吸熱側に放熱フィンと同構造のフィンを設けてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 ペルチェ素子
11A 第1基板
11B 第2基板(基材としての)
12 P型半導体素子
13 N型半導体素子
14A、14B 電極
15 吸熱体
16 半田
17、37 放熱フィン
18、38 放熱フィン本体
19、39 凸部
20、40 底壁
21、41 脚壁
22、42 頂壁
23、43 貫通孔
24、44 折り返し壁
24A、24B、24C 折り返し壁(変形例)
H 高伝熱域
L 低伝熱域
S 線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と接合される接合面を有する接合部と、前記接合部から延在され、前記基材の放熱を行う本体部と、を備えた基材の放熱フィンであって、
前記本体部は、前記接合面から離隔する方向へ延在され、
前記接合面は、前記本体部と対応する高伝熱域および前記高伝熱域から外れる低伝熱域を有し、
前記接合部における前記接合面の低伝熱域に貫通域を形成したことを特徴とする基材の放熱フィン。
【請求項2】
前記貫通域の縁部に前記基材から離隔する方向へ延在する折り返し部を形成することを特徴とする請求項1記載の基材の放熱フィン。
【請求項3】
前記貫通域は、前記接合部の形状に対応する形状を有することを特徴とする請求項1又は2記載の基材の放熱フィン。
【請求項4】
前記貫通域は、円孔又は方形孔とすることを特徴する請求項1〜3のいずれか一項記載の基材の放熱フィン。
【請求項5】
放熱フィン本体は金属板により形成され、前記折り返し部と前記放熱フィン本体とは一体化されていることを特徴とする請求項4記載の基材の放熱フィン。
【請求項6】
前記接合部は列状に配設されるとともに、互いに列幅方向にオフセットされている複数のオフセット接合部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の基材の放熱フィン。
【請求項7】
全ての前記オフセット接合部に前記貫通域が形成されていることを特徴とする請求項6記載の基材の放熱フィン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−79912(P2012−79912A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223473(P2010−223473)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】