説明

基材を保護し、当該基材から汚染物質を取り除くための方法

本発明は、汚染物質(例えば落書き)を基材から取り除くための方法に関する。この方法は、被覆用組成物を基材に塗布するステップであって、被覆用組成物は水、水溶性フィルム形成用重合体、濡れ剤、および揺変性添加剤を含むステップ;水系組成物を脱水させ、および/または重合体を架橋させて犠牲バリアー被覆物を形成させるステップ;汚染物質をバリアー被覆物上に堆積させるステップ;および基材からバリアー被覆物の少なくとも一部と汚染物質とを取り除くステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法(35 U.S.C.)第119条の(e)にもとづく2007年6月19日出願の米国特許仮出願第60/944,810号の優先権を主張する。この先出願は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、基材を保護し、汚染物質を当該基材から取り除くための被覆用組成物に関する。より詳しくは、本発明は、落書き、ならびに放射性汚染物質(例えばヨウ素131、テクネチウム99m等)、ほこりまたは土、毒素および類似物を含む非常に多様な汚染物質から非常に多様な基材を保護するために用いられてよい犠牲バリアー被覆物に関する。
【背景技術】
【0003】
落書きは、一般大衆と接触する分野において当面させられる共通の問題である。さらに、一般に、ほとんどいたるところで諸表面の上の望ましくないしるし付け(markings)が発生し得る。例えば、偶発的にまたは子供たちによって家庭内の壁にしるしが付くことがあり、仕事場では、不注意によってまたはいくつかの理由のいずれかによって避けようがなく壁や他の表面にしるしが付くことがある。多くの場合、落書きは、スプレー塗料などの塗料の形であるが、落書きおよび他のしるし付けは、マーカー、チョーク、クレヨン、および他の書き込み用流体によって行われることがある。本明細書中で用いられる用語「落書き」は、塗料、他の望ましくないしるし付け、すり傷および類似物からなるかどうかに関りなく、望ましくないしるし付けを広く指すために用いられる。
【0004】
これらのしるし付けは、多くの場合に、塗布された表面から取り除くのが難しいので、特に厄介である。従って、多くの場合、しるし付けを覆い隠すために塗装表面が塗り直されなければならず、時には剥がされてから塗り直されなければならない。例えば、多くの場合、落書きは、表面上の塗料と同様な塗料で塗布されている。従って、摩滅によるかまたは有毒もしくは可燃性の溶媒による落書き塗料の除去は、通常、下にある塗料の少なくとも一部が除去されることになるので、非現実的になることがある。落書きしるし付けを取り除くために、塗装されていない表面は時にはサンドブラストされなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
落書きなどの汚染物質を防止するためにバリアー被覆物が用いられることがある。これらの被覆物は、犠牲形および非犠牲形の2つの範疇に分けられることがある。両方の種類のバリアー被覆物によって、被覆物は、汚染物質が基材に達するのを防ぎ、汚染物質を取り除きやすくする。名称が暗に示すように、犠牲バリアー被覆物の場合、清掃時にバリアー被覆物の少なくとも一部が「犠牲にされる」。清掃は、例えば、洗浄法、拭き取り法、こすり洗い法、スプレー法および/またはすすぎ法を含んでよい。清掃後、犠牲被覆物の別の被覆物が塗布されてよい。対照的に、非犠牲バリアー被覆物は、被覆物の除去を含まず、汚染物質が除去された後の再被覆を必要としない。一般に、非犠牲バリアー被覆物は、脂肪族ウレタン化合物、ゴムシリコーン系化合物、または水性ポリウレタンを利用する被覆物の使用を含む。
【0006】
本発明は、さまざまな汚染物質による損傷から基材を保護するための犠牲バリアー被覆物を使用する方法に関する。本発明の方法は、被覆用組成物を基材に塗布するステップであって、被覆用組成物は、水、水溶性フィルム形成用重合体、濡れ剤、および揺変性添加剤を含むステップ;被覆用組成物を脱水させ、および/または重合体を架橋させて犠牲バリアー被覆物を形成させるステップ;汚染物質をバリアー被覆物上に堆積させるステップ;およびバリアー被覆物および汚染物質を基材から取り除くステップを含む。バリアー被覆物および汚染物質は、洗浄法、拭き取り法、こすり洗い法、スプレー法および/またはすすぎ法を含む任意の数の従来の方法によって取り除かれてよい。汚染物質は、落書き、ならびに放射性汚染物質(例えばヨウ素131、テクネチウム99m等)、ほこりまたは土、毒素および類似物を含む任意の望ましくない汚染物質を含んでよい。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書および請求項中で開示されているすべての範囲および比の限界値は、どのように組み合わされてもよい。特に断らない限り、「1つの(a、an)」および/または「前記(the)」への参照は、1、または1を超えるものを含んでよく、単数での品目への参照も複数の品目を含むと理解されるべきである。請求項中で指定されているすべての組み合わせは、どのように組み合わされてもよい。
【0008】
用語「水溶性」は、20℃の温度で1リットルの水あたり少なくとも約5グラムの材料の程度まで水に可溶性である材料を指す。用語「水溶性」は、水中で乳濁液を形成する材料も指してよい。
【0009】
用語「犠牲バリアー被覆物」は、基材に塗布されて基材を汚染から保護し、汚染物質を取り除く清掃時に少なくとも部分的に除去される、一実施態様では完全に除去される被覆物を指す。
【0010】
用語「脱水させる」および「乾燥させる」は、区別なく用いられることがある。
【0011】
被覆用組成物は、水、少なくとも1つの水溶性フィルム形成用重合体、少なくとも1つの濡れ剤、および少なくとも1つの揺変性添加剤を含んでよい。重合体は、ビニルアルコールおよび/またはメタ(アクリル)酸から誘導される繰り返し単位を含んでよい。重合体は、ビニルアルコール、ビニルアルコールの共重合体、またはそれらの混合物を含んでよい。本明細書中で用語「共重合体」は、共重合体、三元重合体および類似物を含む、2つ以上の異なる繰り返し単位を有する重合体を指すために用いられてよい。
【0012】
重合体は、アタクチックポリビニルアルコールを含むことがある。これらの重合体は、半結晶性の性格と、分子間水素結合および分子内水素結合の両方を示す強い傾向とを有することがある。
【0013】
重合体は、式−CH−CH(OH)−によって表される繰り返し単位と、式−CH−CH(OCOR)−、式中、Rはアルキル基である、によって表される繰り返し単位とを含んでよい。アルキル基は、1から約6の炭素原子、一実施態様では1から約2の炭素原子を含んでよい。式−CH−CH(OCOR)−によって表される繰り返し単位の数は、重合体中の繰り返し単位の約0.5%から約25%、一実施態様では繰り返し単位の約2から約15%の範囲内であってよい。エステル基は、アセトアルデヒドまたはブチルアルデヒドのアセタールによって置換されていてよい。
【0014】
重合体は、ポリ(ビニルアルコール/酢酸ビニル)構造を含んでよい。重合体は、ビニルアルコール共重合体の形であってよく、ビニルアルコール共重合体は、1,2−ジヒドロキシエチレンから誘導される共重合体単位などの1,2−グリコールの形のヒドロキシル基も含む。共重合体は、最大約20モル%のそのような単位、一実施態様では最大約10モル%のそのような単位を含んでよい。
【0015】
重合体は、ビニルアルコールおよび/または(メタ)アクリル酸から誘導される繰り返し単位と、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメタクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ビニルピロリドン、アクリル酸ヒドロキシエチル、アリルアルコールおよび類似物の1つ以上から誘導される繰り返し単位とを含む共重合体を含んでよい。共重合体は、最大約50モル%のビニルアルコール繰り返し単位以外の繰り返し単位、一実施態様では約1から約20モル%のビニルアルコール以外のそのような繰り返し単位を含んでよい。
【0016】
用いられてよいポリビニルアルコールは、セラニーズ(Celanese)からのセルボール(Celvol)523(MW=85,000から124,000、87〜89%加水分解)、セラニーズからのセルボール508(MW=50,000から85,000、87〜89%加水分解)、セラニーズからのセルボール325(MW=85,000から130,000、98〜98.8%加水分解)、エアー・プロダクツ(Air Products)からのVinol(登録商標)107(MW=22,000から31,000、98〜98.8%加水分解)、ポリサイエンセズ(Polysciences)4397(MW=25,000、98.5%加水分解)、チャン・チュン(Chan Chun)からのBF 14、デュポン(DuPont)からのエルバノール(Elvanol)(登録商標)90−50、およびユニチカからのUF−120の商標名で入手可能なものを含む。用いられてよい重合体の他の製造業者は、日本合成(ゴーセノール(登録商標))、モンサント(Monsanto)(Gelvatol(登録商標))、ワッカー(Wacker)(Polyviol(登録商標))または日本の製造業者クラレ、Derikiおよび信越を含んでよい。
【0017】
重合体は、約70%から約100%の範囲内、一実施態様では約70%から約99.3%、一実施態様では70%から約95%の範囲内、一実施態様では約70%から約90%、一実施態様では約75%から約90%、一実施態様では約87%から約89%の加水分解レベルを有してよい。
【0018】
重合体は、1つ以上のポリ(メタ)アクリル酸(すなわちポリアクリル酸および/またはポリメタクリル酸)を含んでよい。これらは、重合体の直線形、架橋された形、軽く架橋された形、中和された形および/または部分的に中和された形を含んでよい。これらは、ハンプトン・リサーチ(Hampton Research)からのポリアクリリック・アシド(Polyacrylic Acid)5100;シグマ・オルドリッチ(Sigma Aldrich)から入手可能な部分ナトリウム塩であり、軽く架橋された重合体であるポリ(アクリリック・アシド)(Poly(acylic acid));ポリサイエンセズ社(Polysciences,Inc)からのポリ(アクリリック・アシド)(Poly(acrylic acid))(MW約90000g/モル);およびポリサイエンセズ社からのポリ(アクリリック・アシド)(Poly(Acrylic acid))(MW:約100000g/モル)の名称で入手可能なことがある。用いられてよいポリメタクリル酸は、シグマ・オルドリッチからのポリ(メタクリリック・アシド・ソルーション・ソルト)(Poly(methacrylic acid solution salt))(MW:約429,000から549,000g/モル)、およびポリサイエンセズ社からのポリ・メタクリリック・アシド(Poly Methacrylic Acid)(25087−26−7)(MW:約100,000g/モル)の商標名で入手可能なものを含んでよい。
【0019】
重合体は、約5,000から約2,000,000g/モルの範囲内、一実施態様では約10,000から約1,000,000g/モル、一実施態様では約10,000から約600,000g/モル、一実施態様では約10,000g/モルから約250,000g/モル、一実施態様では約30,000g/モルから約190,000g/モル、一実施態様では約50,000から約150,000g/モルの範囲内、一実施態様では約85,000から約125,000g/モルの範囲内の平均分子量を有してよい。
【0020】
被覆用組成物中の重合体の濃度(脱水する前)は、約0.1から約50重量%の範囲内、一実施態様では約1から約25重量%、一実施態様では約2から約15重量%の範囲内、一実施態様では約2から約6重量%の範囲内であってよい。被覆用組成物は、約40から約99.9重量%、一実施態様では約75から約99重量%、一実施態様では約90から約99重量%の範囲内の水の濃度(脱水する前)を有してよい。水は、いかなる供給源から導かれてもよい。水は、脱イオン水または蒸留水を含んでよい。水は、水道水を含んでよい。水は、無菌ナノ純水を含んでよい。
【0021】
濡れ剤は、被覆用組成物の表面張力を低下させて被覆用組成物が基材の表面上に広がるかまたは浸透しやすくする1つ以上の化合物を含んでよい。濡れ剤は、シリコーン界面活性剤を含んでよい。濡れ剤は、1つ以上のポリシロキサン、例えば1つ以上のポリ(ジメチルシロキサン)を含んでよい。濡れ剤は、1つ以上のポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル修飾ジメチルポリシロキサン、ポリエステル修飾ジメチルポリシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン、アラルキル修飾ポリメチルアルキルシロキサン、アルコールアルコキシレート、ポリアクリレート、重合体フッ素界面活性剤、フルオロ修飾ポリアクリレート、またはそれらの2つ以上の混合物を含んでよい。用いられてよい濡れ剤は、ポリエーテル修飾シロキサンと特定されるヘミー(Chemie)の製品であるByk−345である。一実施態様では、濡れ剤は、平滑剤として機能してよい。被覆用組成物中の濡れ剤の濃度(脱水する前)は、被覆用組成物の約0.05から約10重量%の範囲内、一実施態様では約0.1から約5重量%の範囲内、一実施態様では約0.1から約2重量%、一実施態様では約0.2から約1重量%の範囲内であってよい。
【0022】
揺変性添加剤は、被覆用組成物が静止状態に置かれると比較的短い時間内に増粘するかまたは硬くなるが、動かされるかまたは操作される(例えばブラシ塗布、ローラー塗布、スプレー塗布)と自由に流動することを可能にする1つ以上の化合物を含んでよい。揺変性添加剤は、ヒュームドシリカ、処理されたヒュームドシリカ、粘土、ヘクトライト粘土、有機修飾ヘクトライト粘土、揺変性重合体、偽可塑性重合体、ポリウレタン、ポリヒドロキシカルボン酸アミド、修飾尿素、尿素修飾ポリウレタン、またはそれらの2つ以上の混合物を含んでよい。用いられてよい揺変性添加剤は、修飾尿素と特定されるヘミーの製品であるByk−420である。被覆用組成物中の揺変性添加剤の濃度(脱水する前)は、被覆用組成物の約0.01から約10重量%の範囲内、一実施態様では約0.05から約5重量%の範囲内、一実施態様では約0.1から約4重量%、一実施態様では約0.5から約3.5重量%の範囲内であってよい。
【0023】
被覆用組成物は、1つ以上の偽可塑性添加剤、流動性調節剤、垂れ防止剤、固着防止剤、平滑剤、pH調節剤、消泡剤、顔料、染料、有機溶媒、可塑剤、粘度安定剤、殺生物剤、殺ウイルス剤、殺菌剤、湿潤剤、架橋剤、界面活性剤、着色剤、紫外線安定剤、またはそれらの2つ以上の混合物をさらに含んでよい。
【0024】
単一の添加剤が前述の機能の2つ以上を提供してよい。例えば、Byk−420が揺変性添加剤および垂れ防止添加剤の両方として機能してよい。
【0025】
消泡剤は、ポリシロキサン消泡剤を含んでよい。消泡剤は、オクチルアルコール、ステアリン酸アルミニウム、スルホン化炭化水素、シリコーン、またはそれらの2つ以上の混合物を含んでよい。用いられてよい消泡剤は、ポリグリコール中の泡破壊用ポリシロキサンと疎水性固体との混合物と特定されるヘミーの製品であるByk−028である。
【0026】
pH調節剤は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を含んでよい。pH調節剤は、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、またはそれらの2つ以上の混合物を含んでよい。
【0027】
有機溶媒は、1つ以上のアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、1つ以上のケトン、例えばアセトン、1つ以上の酢酸エステル、例えば酢酸メチル、またはそれらの2つ以上の混合物を含んでよい。
【0028】
可塑剤は、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ポリブチレングリコール、グリセリン、またはそれらの2つ以上の混合物を含んでよい。
【0029】
粘度安定剤は、単官能または多官能ヒドロキシル化合物を含んでよい。これらは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ポリブチレングリコール、グリセロール、またはそれらの2つ以上の混合物を含んでよい。
【0030】
殺生物剤、殺ウイルス剤、または殺菌剤は、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、pH調節次亜塩素酸ナトリウム、第四アンモニウムクロリド、pH調節漂白剤(Clorox(登録商標))、CASCAD(商標)表面汚染除去泡剤(アレン・バンガード(AllenVanguard))、ディーコングリーン(DeconGreen)(エッジウッド・ケミカル・バイオロジカル・センター(Edgewood Chemical Biological Center))、ジオキシガード(DioxiGuard)(フロンティア・ファーマスーティカル(Frontier Pharmaceutical))、イージーディーコン(EasyDecon)200(エンバイロフォーム・テクノロジーズ(Envirofoam Technologies))、エクスターム−6(Exterm−6)(クロルジシス・ソルーションズ(ClorDiSys Solutions))、ハイ−クリーン(HI−Clean)605(ハワード・インダストリーズ(Howard Industries))、HM−4100(バイオセーフ(Biosafe))、クリアウォーター(KlearWater)(ディスインフェクション・テクノロジー(Disinfection Technology))、ペリドックス(Peridox)(クリーン・アース・テクノロジーズ(Clean Earth Technologies))、セレクトロサイド(Selectrocide)(バイオプロセス・アソシエーツ(BioProcess Associates))、EasyDECON(商標)200汚染除去溶液、またはそれらの2つ以上の混合物を含んでよい。殺生物剤は、ケーソン(Kathon)LX(5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含むローム・アンド・ハース社(Rohm and Hass Company)の製品)、またはダワシル(Dowacil)75(1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタンクロリドであると特定され、抗菌保護用の防腐剤として有用であると記載されているダウ・ケミカル(Dow Chemical)の製品)を含んでよい。
【0031】
架橋剤は、四ホウ酸ナトリウム、グリオキサール、サンレズ(Sunrez)700(環状尿素/グリオキサール/ポリオール縮合物と特定されるセクア・ケミカルズ(Sequa Chemicals)の製品)、ベイコート−20(Bacote−20)(安定化炭酸アンモニウムジルコニウムと特定されるホプトン・テクノロジー(Hopton Technology)の製品)、ポリカップ−172(Polycup−172)(ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂と特定されるハーキュリーズ社(Hercules,Inc.)の製品)、またはそれらの2つ以上の混合物を含んでよい。
【0032】
湿潤剤は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、アクリル酸共重合体、ポリアクリル酸塩共重合体、またはそれらの2つ以上の混合物を含んでよい。
【0033】
界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、またはそれらの2つ以上の混合物を含んでよい。
【0034】
着色剤は、1つ以上の染料、顔料および類似物を含んでよい。これらは、マコーミック・アンド・カンパニー社(McCormick and Company Inc.)からの青色食品着色料および/またはスペクトラ・カラーズ社(Spectra Colors Corp.)からのスペクトラズリン・ブルー(Spectrazurine Blue)FND−C LIQを含んでよい。着色剤は、乾燥すると、またはpHの変化に応答して蛍光性になる1つ以上の染料を含んでよい。
【0035】
紫外線安定剤は、パラアミノ安息香酸(および誘導体)、ケイ皮酸オクチルおよびその誘導体、ベンゾフェノンおよびその誘導体、超微細二酸化チタン粉体、およびCiba(登録商標)CHIMASSORB(登録商標)944、Ciba(登録商標)チヌビン(TINUVIN)(登録商標)123、Ciba(登録商標)チヌビン(登録商標)622、Ciba(登録商標)チヌビン(登録商標)765、Ciba(登録商標)チヌビン(登録商標)770、Ciba(登録商標)チヌビン(登録商標)P、Ciba(登録商標)チヌビン(登録商標)213、Ciba(登録商標)チヌビン(登録商標)234、Ciba(登録商標)チヌビン(登録商標)326、Ciba(登録商標)チヌビン(登録商標)327、Ciba(登録商標)チヌビン(登録商標)328、Ciba(登録商標)チヌビン(登録商標)571、Ciba(登録商標)チヌビン(登録商標)B 75、および/またはCiba(登録商標)チヌビン(登録商標)B 88などの立体障害アミン/アミド光安定剤の1つ以上を含んでよい。
【0036】
被覆用組成物中の上記各添加剤の濃度(脱水する前)は、最大約25重量%、一実施態様では最大約10重量%、一実施態様では最大約5重量%、一実施態様では最大約2重量%、一実施態様では最大約1重量%であってよい。
【0037】
被覆用組成物は、被覆用組成物が基材の表面上に広がることを可能にし、ブラシ、ローラー、スプレー装置および類似物による塗布を含むさまざまな塗布方法を可能にし得る広い範囲の粘度および流動特性を有してよい。被覆用組成物のブルックフィールド(Brookfield)粘度(脱水する前)は、25℃において0.3〜200rpmおよびスピンドル1〜4の範囲内の試料に適したrpmおよびスピンドルで測定されたとき、約5から約100,000センチポアズの範囲内、一実施態様では約10から約25,000センチポアズの範囲内であってよい。被覆用組成物は、脱水すると固体マトリックスまたはフィルムを形成する湿ったフィルムを水平および/または水平でない基材上に形成することを可能にするのに十分な粘度を有してよい。被覆用組成物は、約4から約10の範囲内、一実施態様では約4から約8の範囲内のpHを有してよい。
【0038】
本発明の方法は、被覆用組成物を基材に塗布し、次に、被覆用組成物を脱水させるかまたは乾燥させ、および/または重合体を架橋させて犠牲バリアー被覆物を形成させることを含んでよい。被覆用組成物は、通常の被覆用技法、例えばブラシ塗布、ローラー塗布、スプレー塗布、塗り広げ塗布、塗り付け塗布および類似法を用いて基材に塗布されてよい。脱水または乾燥は、ファン、除湿装置、発熱源、またはそれらの組み合わせを用いて促進されてよい。バリアー被覆物は、汚染物質(例えば落書き)が蓄積し、除去が望ましい時点に達するまで基材に塗布されたままであってよい。その時点で、汚染物質は、バリアー被覆物の少なくとも一部、一実施態様ではバリアー被覆物のすべてとともに基材から取り除かれてよい。汚染物質およびバリアー被覆物は、通常の方法、例えば剥離法、洗浄法、拭き取り法、こすり洗い法、スプレー法および/またはすすぎ法を用いて取り除かれてよい。これは、水を含む組成物(例えば石鹸または洗剤および水を含む洗浄用溶液)を汚染物質およびバリアー被覆物に塗布し、次に、汚染物質およびバリアー被覆物の少なくとも一部を基材から取り除くことを含んでよい。汚染物質およびバリアー被覆物は、約10℃から約100℃、一実施態様では約50℃から約90℃の範囲内の温度、および平方インチあたり(psi)約250から約5000ポンド(17.2〜345バール)、一実施態様では約500から約2500psi(34.4〜241.3バール)の範囲内の圧力で、水圧洗浄法によって取り除かれてよい。
【0039】
被覆用組成物が脱水されるかまたは乾操されるとき、結果として得られる基材表面上のバリアー被覆物は、透明であっても着色していてもよく、好ましくは透明であってよい。被覆用組成物は、1つ以上の顔料、染料、透明染料、および/またはpHの変化に応答して色を変える染料で着色されていてよい。バリアー被覆物は、最大約25重量%、一実施態様では最大約15重量%の範囲内の水の濃度を有してよい。バリアー被覆物は、約0.25から約50ミル(mil、ミリインチ)、一実施態様では約0.2から約10ミルの範囲内の厚さを有してよい。
【0040】
被覆用組成物は、減少した濃度の水を含む濃縮物の形で、または使用時点で再水和されてよい粉体などの再水和可能な形で、使用地点に供給されてよい。
【0041】
基材を適切に被覆するために必要な被覆用組成物の量は、基材の表面の性質によって決まり、しっくい、レンガ、セメントおよび類似物などの多孔度の大きな表面上ほど適切な被覆を提供するために大きな量が必要であり、金属表示板などの滑らかな表面上では少量が必要となる。被覆密度は、しっくい、レンガまたは類似の多孔質表面の場合には1ガロンあたり約100から約500平方フィート、滑らかな表面の場合には1ガロンあたり約100から約1000平方フィートの範囲内であってよい。1層以上の被覆物が塗布されてよい。
【0042】
塗布後、バリアー被覆物は、脱水されるかまたは乾燥されると、直ちに保護バリアーとして使用可能となり得る。脱水または乾燥の時点は、環境条件に依存して約5から約180分の範囲内であってよい。被覆物は、下にある表面の上に透明または着色した遮蔽層またはバリアー層を形成してよい。バリアー被覆物の上に堆積した落書きしるし付けなどのいかなる汚染物質も下にある表面と接触し、しるしを付けることがないようにされる。
【0043】
落書きなどの汚染物質がバリアー被覆物上に堆積するかまたは被覆物がひどく汚れたら、汚染物質は、上記に記載されているように、バリアー被覆物の少なくとも一部とともに取り除かれてよい。次に、新しい保護バリアー被覆物が塗布されてよい。
【0044】
本発明の方法に従って基材に塗布された犠牲バリアー被覆物は、水溶性であってもよく、またはバリアー被覆物の水溶性を増加させる添加剤を含む水系の溶液と接触したときに水溶性であってもよい。あるいは、または同じく、基材へのバリアー被覆物の接着強さは、基材への被覆物の接着強さを低下させる添加剤を含む水または水系溶液と接触したときに減少してよい。
【0045】
犠牲バリアー被覆物は、従来からのハンドポンプスプレービンまたはその他のスプレー装置からスプレーされてよい。被覆物は、落書きなどの汚染物質の標的となることが知られている小便器より高いところにある壁面またはトイレの個室の壁面を含むほとんどすべての表面にスプレーされてよい。被覆物は、乾燥すると、基材を汚染物質との接触から保護するバリアー被覆物として働くことができる。水または水系溶液で洗浄されると、被覆物は、溶解し、取り除かれてよく、従って汚染物質も取り除く。汚染物質の一例は、油性マジックからのインクである。塗装表面に塗布されると、このインクは、取り除くのが難しく、塗装表面を痛めることがある過酷なこすり洗いまたは溶媒を必要とする。しかし、犠牲バリアー被覆物が使用されたときには、このインクは塗料に触れることは皆無なので、塗装表面は、比較的容易に清掃されることができ、清掃プロセス時に痛まなくてよい。
【0046】
バリアー被覆物および汚染物質は、バリアー被覆物および汚染物質を、水、水溶性フィルム形成用重合体、上記に記載されている濡れ剤および揺変性添加剤を含む処理用組成物と接触させることによって取り除かれ得る。処理用組成物は、被覆用組成物と同じ処方を有してよい。処理用組成物は、脱水されて処理用フィルムを形成してよく、この方法は、バリアー被覆物、汚染物質、および処理用フィルムを基材から分離することをさらに含んでよい。バリアー被覆物、汚染物質、および処理用フィルムは、基材から剥離されてよい。この剥離ステップは、一段階で実現されてよい。
【0047】
被覆用組成物は、清掃用組成物として用いられてよい。例えば、犠牲バリアーと、バリアー被覆物の上に書かれた落書きとを上に有する基材に被覆用組成物を塗布するためにハンドポンプスプレービンが用いられてよい。落書きは、従来の方法(例えば従来からの浴室清掃剤)で拭き取ることによって取り除かれてよい。清掃後、清掃用組成物の薄い層が残されることがあり、この層は乾燥するかまたは脱水して犠牲バリアー被覆物の層を形成する。これは、将来において、落書きなどの汚染物質の除去しやすさを高めることがある。清掃後、表面は、被覆用組成物をもう一回スプレーされ、厚さを増したバリアー被覆物を残し、犠牲バリアー被覆物の効力をさらに改善してもよい。
【0048】
上記に示されたように、被覆用組成物は、1つ以上の架橋剤を含んでよい。ビニルアルコール繰り返し単位を含む重合体を架橋させるために四ホウ酸ナトリウムならびに上記に示されている他の化合物が用いられてよい。アクリル酸および/またはメタクリル酸から誘導される繰り返し単位を含む重合体を架橋させるために2価または3価の陽イオン、例えば水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムが用いられてよい。被覆用組成物は、約6.8より低いpHで基材に塗布されてよく、被覆物としての塗布後、pHは、環境(または大気)と接触すると上昇することがある。これは、被覆物が脱水するかまたは乾操するにつれて架橋密度を増加させることがある。架橋密度を増加させると、室外環境(屋外)中などの、湿気の存在下の被覆物の安定性を増加させることがある。被覆物は、洗浄法、こすり洗い法、スプレー法および類似法などの通常の方法を用いて取り除かれてよい。
【0049】
架橋されたバリアー被覆物の除去は、被覆物の架橋を破壊する添加剤を有する水溶液を用いることによって促進されることがある。例えば、約6.8より低い、一実施態様では約6.0より低いpHを有する酸性溶液が用いられてよい。酸性溶液は、例えば、都市水道の蛇口につながれた圧力洗浄装置を用いてすすぎ水と混合されてよい。圧力洗浄装置は、石鹸溶液入り口を介して約0.0と約6.0との間のpHを有する塩酸などの高濃度の酸のための入り口と接続されてよい。酸溶液は、圧力洗浄装置が使用されるとき水と混合され、所望のpHを有する水溶液を形成し得る。酸性環境中では、例えば四ホウ酸塩陰イオンとポリビニルアルコールとの間に形成された架橋は減少し、従ってバリアー被覆物の水溶性または感水性を増加させ、それによってより容易な除去を可能にする。アクリル酸および/またはメタクリル酸から誘導された繰り返し単位を含む中和されていない、または部分的に中和された重合体の水溶性を増加させるため、ならびに二価または三価の陽イオンで架橋された重合体の架橋密度を減少させるために、一価陽イオン、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが用いられてよい。屋外環境中のバリアー被覆物感湿性を減少させるために架橋剤が用いられてよく、清掃プロセス時のバリアー被覆物感湿性を増加させるために1つ以上の添加剤を使用する水溶液が用いられてよい。屋内および屋外用途に架橋剤が使用されてよい。
【0050】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために提供される。これらの実施例において、ならびに本文全体にわたって、特に明記しない限り、すべての部および百分率は、重量を基準とする。
【実施例1】
【0051】
熱電対、コンデンサー、および撹拌モーターを備えたジャケット付きの1リットル反応器に667.2gの蒸留水、4.2gのByk−028、および4.6gの46重量%NaOHが入れられる。得られた水系組成物は、塩が溶解するまで攪拌された後、169.6gのセルボール523が加えられる。混合物は、85℃に加熱され、30分間維持された後、65℃に冷却される。48.3gの95%エタノールが加えられ、続いて25.4gのBYK−420が滴下によって加えられる。次に、この調合物は、65℃で1時間攪拌される。1.7gのダワシル(Dowicil)75と121.1gの蒸留水とを予め混合した物が強い攪拌とともにゆっくり加えられる。次に、この混合物はろ過されて調合物Aが得られる。調合物Aは、59,250cPのブルックフィールド粘度(3rpm、25℃、L4スピンドル)およびpH=7.74を有する。
【0052】
1回分200.0gの調合物Aが800.0gの脱イオン(DI)水に中程度の攪拌下で加えられ、20分間撹拌されて調合物Bが得られる。
【実施例2】
【0053】
熱電対、コンデンサー、および撹拌モーターを備えたジャケット付きの1リットル反応器に667.2gの蒸留水、4.2gのByk−028、および4.6gの46重量%NaOHが入れられる。得られた水系組成物は、塩が溶解するまで攪拌された後、169.6gの水溶性重合体セルボール508が加えられる。混合物は、85℃に加熱され、30分間維持された後、65℃に冷却される。48.3gの95%エタノールが滴下によって加えられ、続いて25.4gのBYK−420が滴下によって加えられる。この調合物は、65℃で1時間攪拌される。1.7gのダワシル75と121.1gの蒸留水とを予め混合したものが強い攪拌とともにゆっくり加えられる。この混合物は、ろ過されて調合物Cが得られる。調合物Cは、23740cPのブルックフィールド粘度(3rpm、25℃、L4スピンドル)およびpH=7.28を有する。
【0054】
1回分100.0gの調合物Cが400.0gのDI水に中程度の撹拌下で加えられ、20分間撹拌されて調合物Dが得られる。
【0055】
調合物Dと対比した調合物Bのバリアー被覆物有効性を測定するために、試験が行なわれる。基材は、(a)白色ラストリウム(Rustoleum)フラットスプレー塗料、および(b)白色ラストリウム半光沢スプレー塗料で塗装された12インチ(30.5cm)平方の鏡面パネルを用いて調製される。調合物BおよびDは、以下、すなわち#20、#40、#80、および#200のワイヤーを巻き付けた流下棒(draw down bar)を用いて水平パネル上に伝わり落ち、再現性のある調合物の含水フィルム厚さを作り出す。24時間の乾燥時間の後、固定マーカー(シャーピー(Sharpie)ブランド)が用いられてパネルにしるしが付けられる。20分間の乾燥時間(マーカーのため)の後、パネルは水で湿され、ペーパータオルで振動を受け、乾燥した調合物のバリアー特性を測定する。#20ワイヤーの棒(2.0ミル(mil、ミリインチ)含水フィルム厚さ)は、眼に見える差異を調合物に生じさせる。調合物Dにはマーカーの滲み込み(bleed through)があり、固定マーカーの不完全な除去の結果となる。調合物Bは、固定マーカーの完全な除去を示す。
【実施例3】
【0056】
1回分96.0gの調合物Bが4.0gのBYK 333(ポリエーテル修飾ジメチルポリシロキサン共重合体と特定されるヘミーの製品)と中程度の攪拌下で10分間混合されて調合物Eを形成する。
【実施例4】
【0057】
1回分96.0gの調合物Bが4.0gのBYK 307(高スリップポリエーテル修飾ジメチルポリシロキサン共重合体と特定されるヘミーの製品)と中程度の攪拌下で10分間混合されて調合物Fを形成する。
【実施例5】
【0058】
1回分96.0gの調合物Bが4.0gのBYK 345と中程度の攪拌下で10分間混合されて調合物Gを形成する。
【0059】
調合物B、E、F、およびGが、水平パネル上に伝わり落ち(実施例2におけるように)、等しいフィルム厚さにおける各調合物の排水有効性を測定し、固定マーカー(シャーピーブランド)に対するバリアー被覆物として比較される。各調合物は、有効なバリアー被覆物を作り出し、全体的な排水品質と、マーカーの浸透(seep through)がないこととから、調合物GがB、E、またはFより有効であった。
【実施例6】
【0060】
20.0gの調合物Aが80.0gの蒸留水および0.1gのBYK 345と中程度の撹拌下で10〜15分間混合され、調合物Hが得られる。
【実施例7】
【0061】
80.0gの蒸留水および0.3gのBYK 345と中程度の撹拌下で10〜15分間混合されて調合物Iが得られる。
【実施例8】
【0062】
20.0gの調合物Hが中程度の撹拌下で80.0gの蒸留水および0.5gのBYK345と10〜15分間混合されて調合物Jが得られる。
【0063】
調合物B、H、I、およびJが2.0ミリインチ(mil)の含水フィルム厚さで塗装パネル上に伝わり落ち(実施例2におけるように)、それぞれの有効性を測定する。24時間後、乾燥したフィルムの上にシャーピーブランドマーカーが描かれ、20分間硬化させられる。塗装基材からフィルムを取り除くために、水およびペーパータオル振動が用いられる。各調合物は、有効なバリアー被覆物を生じさせ、調合物Iが排水に効果を発揮しながら、より良いバリアー保護を提供する。下記にこれが示される。
【表1】

【実施例9】
【0064】
中程度の撹拌下で10〜15分間混合することによって、1回分99.2gの調合物Bが0.8gのスタンファックス(Stanfax)1025(パラ・ケム(Para Chem),ケミデックス(Chemidex)LLCによって供給されるラウリル硫酸ナトリウム水溶液、本明細書中ではS125と略記される)に加えられ、調合物Kが得られる。
【実施例10】
【0065】
中程度の撹拌で10〜15分間混合することによって、1回分98.4gの調合物Bが1.6gのS125に加えられ、調合物Lが得られる。
【0066】
等しいフィルム厚さにおいて、半光沢基材および平坦水平基材の両方の上での固定マーカーに対するバリアー被覆物として、調合物KおよびLが調合物Bと対比して比較される。平滑化およびマーカー試験結果に関して各調合物が1〜5の尺度で評価される(1が最も良い)。結果は、以下の表に要約される。
【表2】

【実施例11】
【0067】
熱電対、コンデンサー、および撹拌モーターを備えたジャケット付きの1リットル反応器に656.1gの蒸留水、4.2gのByk−028、および4.6gの46重量%NaOHが入れられる。得られた水系組成物は、塩が溶解するまで攪拌された後、166.7gのセルボール523が加えられる。混合物は、85℃に加熱され、30分間維持された後、65℃に冷却される。次に、調合物は、65℃で1時間攪拌される。1.7gのダワシル75と119.2gの蒸留水とを予め混合したものが強い攪拌とともにゆっくり加えられ、調合物Mが得られる。調合物Mは、ブルックフィールド粘度=18520cP(3rpm、25℃、L4スピンドル)およびpH=7.38を有する。
【0068】
1回分20.0gの調合物Mが79.4gの水と中程度の撹拌下で10分間混合される。撹拌が強められ、0.6gのキャブ−オー−スパーズ(Cab−O−Sperse)2020K(キャボット社(Cabot Corporation)からの分散ヒュームドシリカ流動性添加剤)が5分間にわたってゆっくり加えられる。撹拌が10分間続けられ、調合物Mが得られる。
【実施例12】
【0069】
1回分20.0gの調合物Mが78.4gの水と中程度の攪拌下で10分間混合される。撹拌が強められ、1.6gのキャブ−オー−スパーズ2020Kが5分間にわたってゆっくり加えられ、同時に撹拌が強められる。撹拌が10分間続けられ、調合物Oが得られる。
【実施例13】
【0070】
1回分20.0gの調合物Mが78.0gの水と中程度の攪拌下で10分間混合される。撹拌が強められ、2.0gのキャブ−オー−スパーズ2020Kが5分間にわたってゆっくり加えられ、同時に撹拌が強められる。撹拌が10分間続けられ、調合物Pが得られる。
【実施例14】
【0071】
1回分20.0gの調合物Mが77.1gの水と中程度の攪拌下で10分間混合される。撹拌が強められ、2.9gのキャブ−オー−スパーズ2020Kが5分間にわたってゆっくり加えられ、同時に撹拌が強められる。撹拌が10分間続けられ、調合物Qが得られる。
【実施例15】
【0072】
1回分20.0gの調合物Mが76.2gの水と中程度の攪拌下で10分間混合される。撹拌が強められ、3.8gのキャブ−オー−スパーズ2020Kが5分間にわたってゆっくり加えられ、同時に撹拌が強められる。撹拌が10分間続けられ、調合物Rが得られる。
【実施例16】
【0073】
1回分20.0gの調合物Mが72.6gの水と中程度の攪拌下で10分間混合される。撹拌が強められ、7.4gのキャブ−オー−スパーズ2020Kが5分間にわたってゆっくり加えられ、同時に撹拌が強められる。撹拌が10分間続けられ、調合物Sが得られる。
【0074】
調合物Sおよび調合物Bの粘度は、以下のとおりである(200rpm、L1スピンドル、25℃、サーモ・ハーキ6プラス(Thermo Haake Plus)粘度計)。
【表3】

【実施例17】
【0075】
1回分20.0gの調合物Mが72.6gの水と中程度の攪拌下で10分間混合される。撹拌が強められ、7.4gのキャブ−オー−スパーズ4012K(コボット社(Cobot Corporation)からの小型粒子シリカ乳濁液)が5分間にわたってゆっくり加えられ、同時に撹拌が強められる。撹拌が10分間続けられ、調合物Tが得られる。
【0076】
ヒュームドシリカのキャブ−オー−スパーズ(実施例11〜17からのキャブ−オー−スパーズ2020Kまたは4012Kを含む)を含有する調合物は、表面に塗布されるとマット形成(matting)効果を示し、従って、平坦表面または粗い表面へのバリアー被覆物として相補的な、平坦な外観を生じさせる。
【実施例18】
【0077】
1回分30.0gの調合物Aが0.3gのBYK 345、69.0gの蒸留水、0.05gのマコーミック青色食品着色料、および1.0gのグリセロール(99+%純度、アクロス・オーガニックス(Acros Organics)によって供給される合成品)と15分間混合され、調合物Uが得られる。
【実施例19】
【0078】
1回分30.0gの調合物Aが0.3gのBYK 345、68.0gの蒸留水、0.05gのマコーミック青色食品着色料、および2.0gのグリセロール(99+%純度、合成品)と15分間混合され、調合物Vが得られる。
【実施例20】
【0079】
1回分30.0gの調合物Aが0.3gのBYK 345、65.0gの蒸留水、0.05gのマコーミック青色食品着色料、および5.0gのグリセロール(99+%純度、合成品)と中程度の攪拌下15分間混合され、調合物Wが得られる。
【0080】
調合物U,V、およびWは、硬化したラストリウム半光沢スプレー塗装パネル上に2ミル(mil)含水フィルム厚さで伝わり落ち、24時間乾燥させられる。被覆されたパネル上にクリロン(Krylon)青色スプレー塗料がスプレーされる。調合物は、24時間および72時間後のスプレー塗料除去の容易さに関して試験される(推奨されているスプレー塗料硬化時間は24時間である)。次に、プローブを用いてフィルムを評点することによってフィルムが主観的に評価される。グリセロール濃度が増加すると引き裂き強度の減少が観測される。
【実施例21】
【0081】
塩酸を用いて調合物WのpHが6.0に調整される。この混合物に0.25gの四ホウ酸ナトリウムが強い攪拌下で5分間にわたって加えられ、調合物Xが得られる。調合物Xが2.0ミル(mil)含水フィルム厚さで12インチ(30.5cm)平方の鏡の上に伝わり落ち、プローブを用いて評点することによって、フィルム強度に関して試験される。
【実施例22】
【0082】
熱電対、コンデンサー、および撹拌モーターを備えたジャケット付きの1リットル反応器に450.0gの蒸留水が入れられる。強い攪拌下、50.0gのクラレエクセバール(Exceval)AQ4104(エチレンビニルアルコール)が加えられ、混合物は85℃に加熱される。混合物は、この温度に5時間維持された後、室温に冷却され、調合物Yが得られる。300mLの3つ口丸底フラスコがコンデンサーを装着され、水浴中に置かれる。このフラスコに41.8gの調合物Y、0.214gのBYK 028、0.094gの46%NaOHが入れられ、撹拌バーによる中程度の攪拌下で65℃に加熱される。0.321gのBYK 345が混合物にゆっくり加えられ、撹拌が強められる。1.142gの70%イソプロパノールが滴下によってこの混合物に加えられ、続いて0.600gのBYK 420が加えられる。混合物は、65℃で1時間撹拌される。0.0368gのダワシル75と50.5gの蒸留水とを予め混合したものが強い攪拌とともに加えられる。この調合物は冷却されて調合物Zが得られる。
【実施例23】
【0083】
垂直な塗装壁(ベール(Behr)ブランドの半光沢洗浄可能室内用)の上に調合物Iがスプレーされ(ゼップ(Zep)市販スプレービンを用いて)、12時間乾燥させられる。このバリアー(乾燥した調合物I)上にクリロン青色スプレー塗料がスプレーされ、72時間硬化される。スプレー塗料上にダクトテープの一片がしっかり貼り付けられ、剥がされ、乾燥したクリロンスプレー塗料の多くをともに取り去る。水に漬けた目の粗いスポンジが用いられて残っているスプレー塗料と犠牲被覆物とを塗装壁から取り除く。
【0084】
さまざまな実施態様に関連して本発明が説明されてきたが、本明細書を読んだ後、本発明のさまざまな変更形が当業者にさらに明らかになると理解されるべきである。従って、本発明は、添付の請求項の範囲内に属するすべての該当する変更形を含むと理解されるべきである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質を基材から取り除くための方法であって、
被覆用組成物を前記基材に塗布するステップであって、前記被覆用組成物は、水、水溶性フィルム形成用重合体、濡れ剤、および揺変性添加剤を含むステップ;
前記被覆用組成物を脱水し、および/または前記重合体を架橋させて犠牲バリアー被覆物を形成させるステップ;
前記汚染物質を前記バリアー被覆物の上に堆積させるステップ;および
前記バリアー被覆物の少なくとも一部と前記汚染物質とを前記基材から取り除くステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記被覆用組成物は、前記被覆用組成物を前記基材にブラシ塗布、ローラー塗布またはスプレー塗布することによって前記基材上に塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バリアー被覆物および汚染物質は、剥離法、洗浄法、拭き取り法、こすり洗い法、スプレー法および/またはすすぎ法によって前記基材から取り除かれる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記バリアー被覆物および汚染物質は、水を含む組成物を用いて前記基材から取り除かれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記バリアー被覆物および汚染物質は、約10から100℃の範囲内の温度および約50から約400バールの範囲内の圧力下で水を含む組成物をスプレーすることによって、前記基材から取り除かれる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記バリアー被覆物および汚染物質は、前記バリアー被覆物および汚染物質を、水、水溶性フィルム形成用重合体、濡れ剤、および揺変性添加剤を含む処理用組成物と接触させることによって取り除かれる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記処理用組成物は、前記被覆用組成物と同じ処方を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記処理用組成物は脱水されて処理用フィルムを形成し、前記バリアー被覆物、汚染物質、および処理用フィルムを前記基材から分離することをさらに含む、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記バリアー被覆物、汚染物質、および処理用フィルムは、前記基材から剥離される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記バリアー被覆物、汚染物質、および処理用フィルムは、前記基材から単一ステップで剥離される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記重合体は、ビニルアルコールおよび/または(メタ)アクリル酸から誘導される繰り返し単位を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記重合体は、ポリビニルアルコール、ビニルアルコールの共重合体、またはそれらの混合物を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記重合体は、ビニルアルコール繰り返し単位から誘導される繰り返し単位と、次式−CH−CH(OCOR)−、式中、Rはアルキル基である、によって表される繰り返し単位とを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記重合体は、ビニルアルコールおよび酢酸ビニルから誘導される繰り返し単位を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記重合体は、ビニルアルコールおよび/または(メタ)アクリル酸から誘導される繰り返し単位と、エチレン、プロピレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメタクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ビニルピロリドン、アクリル酸ヒドロキシエチル、アリルアルコールの1つ以上、またはそれらの2つ以上の混合物から誘導される繰り返し単位とを含む共重合体を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記重合体はポリビニルアルコールを含み、前記重合体は約50,000から約150,000g/モルの範囲内の分子量、および約75%から約90%の範囲内の加水分解レベルを有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記濡れ剤は、1つ以上のシリコーン界面活性剤を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記濡れ剤は、1つ以上のポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル修飾ジメチルポリシロキサン、ポリエステル修飾ジメチルポリシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン、アラルキル修飾ポリメチルアルキルシロキサン、アルコールアルコキシレート、ポリアクリレート、重合体フッ素界面活性剤、フルオロ修飾ポリアクリレート、またはそれらの2つ以上の混合物を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記濡れ剤は、1つ以上のポリエーテル修飾シロキサンを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記揺変性添加剤は、ヒュームドシリカ、処理されたヒュームドシリカ、粘土、ヘクトライト粘土、有機物修飾ヘクトライト粘土、揺変性重合体、偽可塑性重合体、ポリウレタン、ポリヒドロキシカルボン酸アミド、修飾された尿素、尿素修飾ポリウレタン、またはそれらの2つ以上の混合物を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記重合体組成物は、1つ以上の偽可塑性添加剤、流動性調節剤、垂れ防止剤、固着防止剤、平滑剤、pH調節剤、消泡剤、顔料、染料、有機溶媒、可塑剤、粘度安定剤、殺生物剤、殺ウイルス剤、殺菌剤、湿潤剤、架橋剤、界面活性剤、着色剤、紫外線安定剤、またはそれらの2つ以上の混合物をさらに含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記重合体組成物は、水、ポリビニルアルコール、シリコーン界面活性剤、揺変添加剤、および殺生物剤を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。


【公表番号】特表2010−530806(P2010−530806A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513401(P2010−513401)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/067454
【国際公開番号】WO2008/157670
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(506121560)セルラー・バイオエンジニアリング・インコーポレイテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】CELLULAR BIOENGINEERING, INC.
【Fターム(参考)】