説明

基材上の添加剤付着を可視化するためのフローセル装置使用の方法

フローセル装置の使用により、毛髪、皮膚模造品及び布地などの基材上に対する、パーソナルケア組成物由来の添加物の付着を可視化する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪、皮膚模造品又は布地などの基材表面上に対する添加剤の添加剤付着を可視化するための、フローセル装置を使用する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
基材上の粒子付着の測定及び可視化は、さまざまな産業分野で非常に重要である。肺組織上の異物粒子付着を評価するため、及び血管の閉塞リスクを評価するための、医療技法が開発されている。静電気引力を測定する目的のため、基材上に帯電粒子の付着率を測定するための方法が開発されている。エアフィルター効率を測定する手段としては、粒子付着を観察するためにコンピュータシミュレーションが使用されている。これらの技法は一般に、それぞれの結果を説明する定量的データを提供する。このデータを解釈するには、傾向と影響を伝達するために、典型的には、関連分野での専門的トレーニングか、あるいは何らかの二次的処理を必要とする。よって、これらの技法は、基材上の粒子付着に関する利益又は損害を伝達するための効果的な手段を提供しない。また、これらのいずれの技法も、さまざまな添加剤がシステムに導入された場合に、粒子付着が観察され得る場所の環境を提供するものとはならない。
【0003】
フローセル装置が既知であり(米国特許第4,974,952号参照)、しばしば、流体環境にさまざまな薬剤及び添加剤を導入してその影響を分析するのに使用される。一般に、フローセル装置は一連の生物学的研究用途に適用される。フローセルは、フローサイトメーター構成において広く使用されている。この種の装置は、毎秒数千個の粒子を分析するのに使用することができ、特定の特性を有する粒子をアクティブに分けて分離することができる。フローサイトメトリーは、蛍光標示式細胞分取などの細胞生物学的用途に最も広く関連している。一方この技術は、医学及び生物工学の実験分野にも同様に幅広く適用されている。
【0004】
フローセルを使用して基材上の粒子付着を可視化する試みが行われている。粒子−基材可視化にこの技術を適用するこれまでの試みには、コアセルベートの毛髪線維に対する相互作用を可視化するための、フローセルDIC顕微鏡の使用が挙げられる。J.Cosmet.Sci.,58,637〜650(November/December 2007)。コアセルベートの相は、毛髪線維に対するコンディショニング粒子の付着を助けるのに重要であり、フローセルDIC顕微鏡は、この毛髪基材上に対するさまざまなパーソナルケア組成物の付着効果を可視化するのに有用である。
【0005】
しかしながら、これまでのフローセル設計では、2枚のスライドの間に毛髪線維を置き、この間に液体溶液を流すようになっている。この構成は、効率の悪いシステムを結果としてもたらしている。すなわちこの構成においては、線維が2枚のフローセルスライドの間に挟まれて両方のスライドに接触するため、液体溶液は毛髪線維全体の周囲を流れることができない。よって液体溶液は、スライドと接触していない基材の側縁だけと相互作用することができる。したがって、分析の際は、見えている基材の側縁だけが液体溶液に曝露されており、可視化がうまくいかない。更に「サンドイッチ現象」によって、一部の粒子がシステムを通り抜けるのに十分なスペースがないため、しばしばスライド表面に添加剤が付着してしまう。よって、基材上の付着は、介在する他の添加剤と区別するのが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,974,952号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.Cosmet.Sci.,58,637〜650(November/December 2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に基づき、粒子−基材相互作用の視覚的分析の手段を提供し、これにより基材のより広い表面積が分析対象となるような、フローセルのニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は添加剤付着を可視化するための方法に関連するものであり、(a)添加剤を含んだパーソナルケア組成物及び水を含む希釈剤を調製することと、(b)フローセルチャンバ及びフローパスを含むフローセル内に基材を配置することであって、このフローセルチャンバは、流体容積容量及び4つ以上のフローセルチャンバ壁を含み、基材は、2つを超えるフローセルチャンバ壁に接触しないと共にフローパス内にあるように浮遊されることと、(c)そのフローセル内に希釈剤を注入することと、(d)そのフローセルチャンバの視覚的画像を記録することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付の図面は、本発明の実施形態を例示し、上記に与えられた本発明の概要、及び以下に示される「発明を実施するための形態」と共に、本発明を説明するために役立つ。
【図1】フローセル装置の分解図。
【図2】図1の矢印2−2に沿った、マイクロ水路の断面図。
【図3A】シャンプー組成物の存在下で、本明細書のフローセル装置操作中に撮影された画像。
【図3B】図3Aのシャンプー組成物を本明細書のフローセル装置から洗い流した後の、フローセル装置操作中に撮影された画像。
【図4A】粒子及び付着助剤を含むシャンプー組成物の存在下における、本明細書のフローセル装置操作中に撮影された画像。
【図4B】図4Aの粒子及び付着助剤を含むシャンプー組成物を本明細書のフローセル装置から洗い流した後の、フローセル装置操作中に撮影された画像。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、添加剤を含む希釈剤を調製することと、フローセルチャンバ及びフローパスを含むフローセル内に基材を配置することと、フローセル内に希釈剤を注入することと、フローセルチャンバの視覚的画像を記録することとを含む、粒子付着を可視化する方法に関連する。
【0012】
フローセルチャンバ内への希釈剤の流量比を注意深く調節することと、フローセルチャンバの流体容積容量の選択により、添加剤が基材上に付着する視覚的画像の環境が生成される。
【0013】
希釈剤
パーソナルケア組成物はしばしば、消費者が使用中に更に希釈する形態で消費者に販売される。例えば、シャンプー及びコンディショナー組成物はしばしばユーザーの手に分配されてから、毛髪に適用される。使用中、しばしばこの毛髪に水が加えられ、シャンプー及びコンディショナー組成物と混合し希釈される。これはしばしば「使用中」状態と呼ばれる。よって、希釈比は、そのパーソナルケア組成物が本発明の方法で使用するための希釈剤を形成するのに使用される場合、実際の消費者の状態を反映して選択されるべきである。
【0014】
パーソナルケア組成物の希釈比は、対象となるパーソナルケア組成物の粘性及びレオロジーに依存するが、フローセルパスをその希釈剤が通過するのを妨げないよう十分に希釈されるべきである。
【0015】
更に、この希釈比は、その希釈剤がフローセルチャンバ内で「見える」ように選択されなければならない(後述)。「見える」ものの例を、図4Aに見ることができる。本明細書において「見える」とは、希釈剤内及びその希釈剤中の添加剤が、拡大手段によって可視であることを意味し、裸眼で見えることを必ずしも意味しない。
【0016】
液体組成物の水に対する希釈比は、約1:1〜約1:150、より好ましくは1:2〜約1:50、及び最も好ましくは約1:2〜約1:9であるべきである。1つの実施形態では、シャンプー組成物は、組成物:水の比が約1:2〜約1:10(例えば1:9)で、希釈剤内に組成物を混合することによって形成される。1つの実施形態では、コンディショナー組成物は、組成物:水の比が約1:70〜約1:150(例えば1:100)で、希釈剤内に組成物を混合することによって形成される。1つの実施形態では、ボディ洗浄剤などのスキンケア組成物は、組成物:水の比が約1:1〜約1:10(例えば1:2〜1:9)で、希釈剤内に組成物を混合することによって形成される。1つの実施形態では、柔軟仕上げ剤などの布地ケア組成物は、組成物:水の比が約1:1〜約1:100で、希釈剤内に組成物を混合することによって形成される。
【0017】
添加剤
本明細書で使用される用語「添加剤」は、フローセルパス内を通される流体内に存在し、顕微鏡又は他の拡大装置を介して見たときに周囲の流体から視覚的に区別可能な、任意の要素を意味する。この添加剤は、パーソナルケア組成物の使用により特定の利益(例えばコンディショニング、柔軟性、保湿、ボリューム化)が誘導されるような材料として最もよく特徴付けられる。
【0018】
例えば、ヘアケア組成物(シャンプー組成物など)、スキンケア組成物(ボディ洗浄剤など)及び布地ケア組成物において、コンディショニング効果、保湿効果又は柔軟化効果をもたらす活性のためのビヒクルを提供するために、コアセルベートがしばしば利用される。シャンプー組成物中のコアセルベートは、希釈によって形成され、アニオン性界面活性剤が決定的な結合定数でカチオン性ポリマーと相互作用したときに生じる結合相分離である。更なる情報については、Polymer−Surfactant Interaction,edited by Jan C.T.Kwak,Surfactant Science Series Vol.77,Marcel Dekker,Inc.New York(1998)を参照されたい。次に、シリコーンなどの添加剤を伴うコアセルベートが、毛髪の表面上に付着する。ここにおいて、1つの実施形態では、この添加剤はシリコーン材料を伴うか又は伴わないコアセルベートと見なされ得る。
【0019】
スキンケア組成物は、ペトロラタム材料を伴うコアセルベートを利用する。布地ケア組成物も、シリコーン材料を利用する。
【0020】
コンディショナー組成物では、脂肪族アルコール及び界面活性剤ゲルのネットワークをシリコーン材料と組み合わせて利用する。米国特許第2006/0078528(A1)号を参照のこと。
【0021】
添加剤の好適な材料には、米国特許第2007/0207109(A1)号、同第2005/01582661(A1)号、同第2006/0024381(A1)号、同第2007/0010408(A1)号、同第7528099(B2)号に記述されているものが挙げられる。
【0022】
しかしながら添加剤は、濾過として知られるメカニズムによって表面上に付着させることもできる。この濾過では、基材の表面上での希釈剤の機械的な動き又は流れにより、添加剤が基材の表面に接触し、基材の表面に残る。
【0023】
基材
本明細書の方法に使用するのに好適な基材には、毛髪ストランド、皮膚模造品及び布地サンプルが挙げられる。基材は、フローパスに接触するような向きで、フローセルチャンバ内に入れられる。基材によっては、フローセルチャンバ内の基材の向き(後述)は、基材表面上に添加剤がどのように付着するかに影響する。1つの実施形態では、1本の毛髪又は複数本の毛髪が基材として利用される。この毛髪又は複数本の毛髪は、希釈剤のフローパスの方向に沿って、フローセルチャンバの一方の端から他方の端まで延在するよう軸方向に向けられる。別の実施形態では、毛髪表面上に対する希釈剤の濾過効果が見えるよう、複数本の毛髪が、希釈剤のフローパスに対して垂直の軸方向に向けられる。
【0024】
毛髪ストランド、又は複数の毛髪ストランドを基材として利用することもできる。望ましい可視化のタイプ(すなわち、バージンヘア及び/又はダメージヘアに対する添加剤の付着)に応じて、バージンヘアサンプル(化学的に改変されていない毛髪)及びダメージヘアサンプルを使用することができる。毛髪見本(Hair switches)は市販されており、例えばHugo Royer International Limited(10 Lakeside Business Park,Sandhurst,Berkshire,GU47 9DN,England)から入手できるものがある。
【0025】
ボディ洗浄剤などのスキンケア組成物を利用する場合は特に、基材として皮膚模造品を利用することができる。皮膚模造品に関する更に詳しい情報は、PCT国際特許WO08/084442(A1)号に見出すことができる。
【0026】
布地(天然繊維、合成繊維、又は天然/合成繊維の混紡)を使用することができ、例えば絹、羊毛、綿、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ライクラ、及びスパンデックスなどが使用できる。
【0027】
フローセル
フローセルは、米国特許第4,974,952号に記述されている装置などが既知であり、Bioptechs販売のFochtフローセルなどとして市販されている。好適なフローセル(10)が図1の分解図に示されている。フローセル(10)は、チャンバフレーム(12)、上部ガスケット(14)、マイクロ水路スライド(16)、第1スペーサー(18)、基材(20)、第2スペーサー(22)、ガラススライド(24)、下部ガスケット(26)及び支持プレート(28)を含む。このフローセル(10)は、フローセルチャンバ(32)内に基材を保持できるよう選択され、フローパス(30)が提供され、フローセル(10)及びフローセルチャンバ(32)を光が通り抜けるよう配列する必要がある。ここで、チャンバフレーム(12)、上部ガスケット(14)、マイクロ水路スライド(16)、第1スペーサー(18)、第2スペーサー(22)、ガラススライド(24)、下部ガスケット(26)及び支持プレート(28)は、これらの構成要素の少なくとも一部分が中央開口部を含むか又は透明領域を含むよう選択される。更に、これら構成要素の中央開口部又は透明領域は、フローセル(10)を通る同様の垂直軸に沿って揃えられ、これにより光がフローセル(10)を通り抜けることができる。1つの実施形態では、第1ガスケット(18)及び第2ガスケット(22)には中央開口部が含まれ、これにより第1ガスケット(18)及び第2ガスケット(22)が内部エッジ及び外部エッジを有し、内部エッジは外部エッジと同心である。
【0028】
組み立てた状態のフローセル(10)は、希釈剤がフローセルチャンバ(32)内に注入され、フローセルチャンバ(32)内を通り抜け、次にフローセルチャンバ(32)から出て行くためのフローパス(30)を確保する。フローパス(30)及びフローセルチャンバ(32)が図2に示されている。フローパスには、チャンバフレーム(12)から少なくとも部分的に外に伸びチャンバフレーム内に少なくとも部分的に収容されている流入チューブ(34)が含まれる。この流入チューブ(34)は、チャンバフレーム(12)内に少なくとも部分的に収容されており、チャンバフレームから少なくとも部分的に外に伸びている垂直流入チューブ(36)を含む。この垂直流入チューブ(36)はフローセルチャンバ(32)と流体連通している。このフローセルチャンバ(32)は、チャンバフレーム(12)から少なくとも部分的に外に伸び、チャンバフレーム内に少なくとも部分的に収容されている垂直流出チューブ(38)と流体連通している。この垂直流出チューブ(38)には、チャンバフレーム(12)から少なくとも部分的に外に伸び、チャンバフレーム内に少なくとも部分的に収容されている流出チューブ(40)が接続されている。
【0029】
フローセルチャンバ(32)内に希釈剤の層流を達成することが重要である。1つの実施形態では、これはマイクロ水路スライド(16)の使用によって達成される。これは、マイクロ水路スライド(16)の表面上にエッチングその他の方法で形成された一組の相対する浅い流体溝を含む。1つの実施形態では、この浅い流体溝は、互いに間隔をあけて配置されたT字形であり、このT字形流体溝の茎部分が互いに軸方向に揃い、T字形の浅い流体溝の頭部分が互いに平行関係にあるように配置される。
【0030】
マイクロ水路スライド(16)の浅い流体溝は更に、希釈剤のためのフローパス(30)の構造の一部を提供する。希釈剤は、シリンジポンプなどの注入手段によって、流入チューブ(34)の一端に注入され、流入チューブ(34)を通って垂直流入チューブ(36)に達し、ここで垂直流入チューブ(36)を通り抜ける。垂直流入チューブ(36)は、チャンバフレーム(12)の下側から伸び、上部ガスケット(14)内の流体開口部を通り、マイクロ水路スライド(16)内の流体開口部を通って延在する。マイクロ水路スライド(16)内の流体開口部は、T字形の浅い流体溝の茎部分の末端部分に位置する。
【0031】
フローセルチャンバ(32)は、マイクロ水路スライド(16)、第1スペーサー(18)、第2スペーサー(22)及びガラススライド(24)によって形成されたスペースである。フローセルチャンバ(32)には4つ以上の壁がある。1つの実施形態では、マイクロ水路スライド(16)の底面、第1スペーサー(18)及び第2スペーサー(22)の開口部の内側縁、並びにガラススライド(24)の上面からなる、4つの壁がある。
【0032】
基材(20)はフローセルチャンバ(32)内にあるよう意図されるが、その基材(20)がフローセルチャンバ(32)の壁の全てに触れることのないように浮遊される。1つの実施形態では、この基材は、第1スペーサー(18)と第2スペーサー(22)の間に挟まれ、第1スペーサー(18)と第2スペーサー(22)の内側縁上の異なる2ヶ所で保持されることによって、開口部を横切り、マイクロ水路スライド(16)の底面又はガラススライド(24)の上面に触れないよう、浮遊される。
【0033】
垂直流入チューブ(36)からフローセルチャンバ(32)への、マイクロ水路スライド(16)の浅い流体溝を経由したフローパス(30)に、希釈剤が連通する。希釈剤は次に基材(20)を通り、マイクロ水路スライド(16)の流体開口部(反対側にあるT字形の浅い流体溝の茎部分の末端部分に位置する)を含むマイクロ水路スライド(16)の、反対側に位置する浅い流体溝を経由して、フローセルチャンバ(32)から外へ出る。このフローパス(30)は、マイクロ水路スライド(16)の流体開口部から垂直流出チューブ(38)の末端部分へと連通し、この垂直流出チューブは、チャンバフレーム(12)の底側からマイクロ水路スライド(16)の流体開口部を通り、上部ガスケット(14)の流体開口部を通って延在する。希釈剤は、垂直流出チューブ(38)を通って流出チューブ(40)へと流れ、次に流出チューブ(40)を通って、フローセル(10)から外へ出る。
【0034】
フローセルチャンバ(32)は、約0.05mL〜約100mL、好ましくは約0.1mL〜約50mL、最も好ましくは0.1mL〜約10mLの流体容積容量を有するべきである。これらの範囲は、層流を促進し、粒子付着を観察するための安定した環境(層流)を提供するよう見出されたものである。フローセルチャンバ(32)の容積は、第1スペーサー(18)及び第2スペーサー(22)の厚さ、並びにスペーサー(18、22)の中央開口部の大きさによって影響を受ける。
【0035】
ガスケット/スペーサーの厚さ
基材(20)と、マイクロ水路スライド(16)及びガラススライド(24)の表面との間の間隔が、基材(20)がフローセルチャンバ(32)の2つ以上の壁に接触しないように、フローセルチャンバ(32)の流体容積容量は、調節可能でありかつ選択され得る。第1スペーサー(18)及び第2スペーサー(22)はそれぞれ、少なくとも約0.1mm、より好ましくは少なくとも約0.25mm、最も好ましくは少なくとも約0.50mmの厚さを有するべきである。更に、第1スペーサー(18)及び第2スペーサー(22)はそれぞれ、約01.5mm未満、より好ましくは約1.0mm未満、最も好ましくは約0.50mm未満の厚さを有するべきである。フローセルチャンバ(32)はまた、後述する層流を促進するために、フローセルチャンバ(32)内に流入する希釈剤の体積に全体として近い、又は同じ体積の、流体容積容量を有するべきである。
【0036】
流量
フローセル(10)への、及び好ましくはフローセルチャンバ(32)への、希釈剤の流量は、約0.1mL/分〜約0.5mL/分、より好ましくは約0.2mL/分〜約0.4mL/分、最も好ましくは約0.2mL/分〜約0.3mL/分で維持されるべきである。
【0037】
この流量は、流入チューブ(34)、垂直流入チューブ(36)、垂直流出チューブ(38)及び流出チューブ(40)の内径及び長さによって影響される。デッドボリューム(前述のチューブ内で折れ曲がった方向によって生じるものなど)もすべて、考慮に入れるべきである。
【0038】
流入チューブ(34)及び流出チューブ(40)は、1つの実施形態では、同じ長さと内径を有する。流入チューブ(34)及び流出チューブ(40)のチューブ長さは、約20mm〜約40mm、より好ましくは約25mm〜約35mm、最も好ましくは約29mmであり得る。流入チューブ(34)及び流出チューブ(40)の内径は、約0.5mm〜約2mm、より好ましくは約1mm〜約1.6mm、最も好ましくは約1.57mmであり得る。
【0039】
垂直流入チューブ(36)及び垂直流出チューブ(38)は、1つの実施形態では、同じ長さと内径を有する。垂直流入チューブ(36)及び垂直流出チューブ(38)のチューブ長さは、約5mm〜約20mm、好ましくは約7mm〜約15mm、好ましくは約10mmであり得る。垂直流入チューブ(36)及び垂直流出チューブ(38)の内径は、約0.5mm〜約1mm、好ましくは約0.6mm〜約0.9mm、好ましくは約0.88mmであり得る。
【0040】
光学的工程
本明細書の方法は更に、希釈剤をフローセル(10)内に注入するのと同じ方法で、フローセル(10)内に水を注入する工程を含んでもよい。この水を注入する工程は、消費者の「使用中」条件を更に模して再現するものであり、基材からパーソナルケア組成物をすすぎ流すのと同等となり得る。フローセル(10)への水の流量は、約0.1mL/分〜約0.5mL/分、より好ましくは約0.2mL/分〜約0.4mL/分、最も好ましくは約0.2mL/分〜約0.3mL/分で維持されるべきである。
【0041】
記録工程
フローセルチャンバの視覚的画像の記録は、基材の少なくとも一部分の視覚的画像を含むべきである。この記録は、デジタルカメラ又はビデオカメラなどの静止画又は動画の視覚的記録を行うための任意の手段によって達成され得る。視覚的画像の撮影を助けるため、光源を利用して光がフローセル(10)を通り抜けるようにすべきであり、好ましくは、この光はこの光源から、フローセル(10)の支持プレート(28)からフローセル(10)へと導かれ、記録装置はフローセル(10)のチャンバフレーム(12)内に配置される。よって、この方法は更に、光源からフローセルを通って、記録装置(フローセルを挟んで光源とは反対側に位置する)へと、フローセルを照明する工程を含んでもよい。記述された方法で撮影された視覚的画像の例を、図3A〜4Bに見ることができる。
【0042】
図3Aは上述の方法で撮影された画像であり、パーソナルケア組成物は下記表1に示されるシャンプー組成物であり、シャンプー組成物対水が1:9の比で、水で希釈されている。希釈剤は流量0.2mL/分で注入される。
【0043】
図3Bは、図3Aに記述された方法で撮影された画像であり、ただしこの方法には脱イオン水注入の所望による工程が含まれ、水は流量0.3mL/分で注入される。
【0044】
図4Aは、下記表2に示されるシャンプー組成物の存在下で、本明細書のフローセル装置の操作中に撮影した画像であり、これには粒子及び付着助剤が含まれ、シャンプー組成物対水が1:9の比で、水で希釈されている。希釈剤は流量0.2mL/分で注入される。
【0045】
図4Bは、図4Aの粒子及び付着助剤を含むシャンプー組成物をフローセル装置から脱イオン水で洗い流した後の、本明細書のフローセル装置の操作中に撮影した画像であり、水は流量0.3mL/分で注入される。
【0046】
希釈剤がフローセルチャンバ(32)内に導入されると、添加剤は、周囲に集まるコアセルベート粒子として見ることができ、図4Aでは1本の毛髪線維の基材(20)上に付着しており、一方、図3Aではコアセルベート粒子はほとんど又は全く見られない。本明細書に記述されている方法は、パーソナルケア組成物の粒子付着効果の明瞭な視覚的表示を提供する。
【0047】
更に、脱イオン水がフローセルチャンバ(32)を通り抜ける際の「使用中」のすすぎ状態の再現において、図4Bはシャンプー希釈剤の粒子が毛髪線維基材上に付着して残っていることを示す。よって、本明細書の方法は、基材上の粒子付着効果を観察及び分析するのに有用である。また、本明細書におけるフローセルチャンバ(32)の容積選択は、基材の縁沿いだけでなく、毛髪線維のすべての可視表面における粒子付着の可視化を可能にし、粒子付着の明瞭な画像を提供することに注意することが重要である。
【0048】
付着の可視領域の拡大は、第1スペーサー(18)及び第2スペーサー(22)の使用によりフローセルチャンバ(32)容積を増大させ、これにより、基材(20)がマイクロ水路スライド(16)及びガラススライド(24)に接触せずに効果的に浮遊されることによって可能になる。フローセル(10)内の分析の後、基材(20)をその後の任意の分析(例えば電子顕微鏡)のためにフローセル(10)から取り出し、基材(20)上の添加剤の付着を定量的に確認することができる。
【0049】
【表1】

1.Poly LR−30M(Americol)
【0050】
【表2】

1.MIRAPOL(登録商標)AT−1(Rhodia)
【0051】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳しく制限されるものとして理解されるべきでない。それよりむしろ、特に指定されない限り、各こうした寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することを意図する。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0052】
いずれの文献の引用もこうした文献が本明細書中で開示又は特許請求の範囲に記載されるいずれかの発明に対する先行技術であることを容認するものではなく、また、こうした文献が、単独で、あるいは他のあらゆる参照文献との組み合わせにおいて、こうした発明のいずれかを参照、教示、示唆又は開示していることを容認するものでもない。いずれの文献の引用も、こうした文献が本明細書中で開示又は特許請求の範囲に記載されるいずれかの発明に対する先行技術であることを容認するものではなく、また、こうした文献が、単独で、あるいは他のあらゆる参照文献との組み合わせにおいて、こうした発明のいずれかを参照、教示、示唆又は開示していることを容認するものでもない。更に、本文書における用語のいずれかの意味又は定義が、援用文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいては、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義を優先するものとする。
【0053】
本発明の特定の実施形態について説明し記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正が可能であることが当業者には自明である。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の書類名特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)添加剤を含むパーソナルケア組成物と水とを含む希釈剤を調製することと、
(b)フローセルチャンバ及びフローパスを含むフローセル内に基材を配置することであって、前記フローセルチャンバは、流体容積容量及び4つ以上のフローセルチャンバ壁、好ましくは4つのフローセルチャンバ壁を含み、前記基材は、2つを超える前記フローセルチャンバ壁に接触しないと共に前記フローパス内にあるように浮遊されることと、
(c)前記フローセル内に前記希釈剤を注入することと、
(d)前記フローセルチャンバの視覚的画像を記録することと、
(e)所望により、前記フローセル内に水を注入することと、
を含む、添加剤付着を可視化する方法。
【請求項2】
前記希釈剤が、パーソナルケア組成物対水の希釈比1:1〜1:150、より好ましくは1:2〜1:50、最も好ましくは1:2〜1:9を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フローパスが前記フローセルチャンバ内にあるときに、前記フローパスは層流となる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フローセルチャンバ内への前記希釈剤の流量が0.1mL/分〜0.5mL/分、より好ましくは0.2mL/分〜0.4mL/分、最も好ましくは0.2mL/分〜0.3mL/分に維持されるように、前記希釈剤の前記注入、好ましくは前記希釈剤の前記注入が維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記流体容積容量が、0.05mL〜100mL、好ましくは0.1mL〜50mL、最も好ましくは0.1mL〜10mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フローセルチャンバ内への前記希釈剤の流量が0.1mL/分〜0.5mL/分、より好ましくは0.2mL/分〜0.4mL/分、最も好ましくは0.2mL/分〜0.3mL/分となるように、前記水の前記注入が維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基材と、前記基材に接触していない前記フローセルチャンバ壁との間の間隔が少なくとも0.1mm、より好ましくは少なくとも0.25mm、最も好ましくは0.50mmであり、かつ1.5mm未満、好ましくは1.0mm未満、最も好ましくは0.50mm未満であるように、流体容積容量は調節可能でありかつ選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記基材が毛髪であり、
前記パーソナルケア組成物が、
(a)希釈比が1:2〜1:10、例えば1:9であり、流量が0.1〜0.5mL/分であるシャンプー組成物、又は
(b)希釈比が1:70〜1:150、流量が0.1〜0.5mL/分であるコンディショナー組成物
から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記基材が皮膚模造品であり、前記パーソナルケア組成物がスキンケア組成物であり、前記希釈比が1:1〜1:10、例えば1:2又は1:9であり、流量が0.1〜0.5mL/分である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記基材が布地であり、前記パーソナルケア組成物が布地ケア組成物であり、前記希釈比が1:1〜1:100であり、流量が0.1〜0.5mL/分である、請求項2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2011−527019(P2011−527019A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517677(P2011−517677)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/050823
【国際公開番号】WO2010/009301
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】