説明

基材成形装置

【課題】加熱装置によって加熱した板状体を成形装置へ円滑に移送することのできる基材成形装置を提供する。
【解決手段】基材成形装置10は、植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体Wを加熱する加熱装置40と、加熱した板状体Wを所定形状に成形する予備成形型10と、を備えている。加熱装置40は、加熱炉42と、加熱炉42の内部において板状体Wを吊り下げた状態で搬送する搬送装置50と、を備えている。搬送装置50と予備成形型10との間には、搬送装置50から予備成形型10へ板状体Wを移送する板状体移送機構60を備えている。板状体移送機構60は、板状体Wを吊り下げた状態で保持するハンガー30を載置することのできるスライドレール62と、スライドレール62に載置されたハンガー30を水平方向に移動させる水平方向移動機構90によって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材を成形する基材成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体を加熱した後に、加熱した板状体を冷間プレス型によって所定形状に成形する基材成形装置が知られている。このような基材成形装置に関する技術としては、例えば、下記特許文献1〜3に記載された技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、植物性繊維と熱可塑性樹脂からなる加工原体を加熱する加熱装置が記載されている。
特許文献2には、加熱処理した木質系繊維板を冷間プレスして所定形状に成形する自動車内装用芯材の成形装置が記載されている。
特許文献3には、植物性繊維と熱可塑性樹脂からなる板状体をヒータ装置によって加熱した後に、その加熱した板状体を冷間プレス型によって所定形状に成形する内装用基材の成形装置が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−8306公報
【特許文献2】特開平11−48221号公報
【特許文献3】特開2001−179716公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の基材成形装置は、板状体を加熱装置によって加熱した後、板状体をベルトコンベヤによって冷間プレス型へ移動させている。このため、板状体のバインダーである熱可塑性樹脂が加熱されて溶融し、この溶融した熱可塑性樹脂により板状体がベルトコンベヤのベルト面にくっついてしまい、板状体を冷間プレス型へ移送することが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであって、加熱装置によって加熱した板状体を成形装置へ円滑に移送することのできる基材成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体を加熱する加熱装置と、加熱した前記板状体を所定形状に成形する成形装置と、を備える基材成形装置であって、前記加熱装置は、加熱炉と、前記加熱炉の内部において前記板状体を吊り下げた状態で搬送する搬送装置と、を備えており、前記搬送装置と前記成形装置との間には、前記搬送装置から前記成形装置へ前記板状体を移送する板状体移送機構を備えており、前記板状体移送機構は、前記板状体を吊り下げた状態で保持するハンガーを載置することのできるスライドレールと、前記スライドレールに載置された前記ハンガーを水平方向に移動させる水平方向移動機構からなることを特徴とする基材成形装置である。
【0008】
本発明の基材成形装置によれば、板状体移送機構によって板状体を吊り下げた状態で移送することが可能である。このため、加熱装置によって加熱した板状体が溶融した熱可塑性樹脂によりベルトコンベヤのベルト面にくっついてしまうなどの問題が生じることがなく、搬送装置から成形装置へ板状体を円滑に移送することができる。
【0009】
本発明の基材成形装置において、前記搬送装置に載置されている前記ハンガーを上方に持ち上げた後に、前記ハンガーを移動させて前記スライドレール上に載置するハンガー受け渡し機構を備える構成とすることが好ましい。
このような構成によれば、搬送装置からスライドレールへハンガーを円滑に受け渡すことが可能である。
【0010】
本発明の基材成形装置において、前記成形装置は、前記板状体を予備成形する予備成形装置と、予備成形した前記板状体を本成形する本成形装置からなる構成とすることが好ましい。
このような構成によれば、板状体を予備成形した後、予備成形した板状体を本成形することができる。つまり、板状体を2段階で成形することができる。したがって、加熱により柔らかくなった板状体にプレス型からの無理な力がかかることを防止することが可能であり、板状体が破れてしまう、あるいは、板状体が局所的に引き延ばされて裏側が透けてしまうなどの問題が生じることを防止することが可能となる。
【0011】
本発明の基材成形装置において、前記予備成形装置は、前記加熱炉の内部に設置されている構成とすることが好ましい。
このような構成によれば、予備成形装置が加熱炉の内部に設置されているために、予備成形装置を構成するプレス型の型面が加熱炉の内部で十分に加熱される。このため、予備成形した板状体に局所的に歪が発生することを抑制するとともに、予備成形装置を構成するプレス型の型面によって板状体が冷却されてしまうことを防止することが可能となり、板状体を本成形する前に再加熱する必要がなくなる。
【0012】
本発明の基材成形装置において、前記搬送装置と前記予備成形装置がオフセット位置に配置されている構成とすることが好ましい。
このような構成によれば、搬送装置と予備成形装置を直列につなげるようにして配置した場合よりも、装置全体の設置スペースを小さくすることが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加熱装置によって加熱した板状体を成形装置へ円滑に移送することのできる基材成形装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、基材の成形工程を示すフローチャートである。図1に示すように、基材を成形するためには、植物性繊維と熱可塑性樹脂を混合した材料からなる板状体を加熱した後に(加熱工程)、加熱した板状体を予備成形し(予備成形工程)、予備成形した板状体を本成形する(本成形工程)。これにより、所定形状に成形された基材を得ることができる。
【0015】
板状体に含まれる植物性繊維とは、植物由来の繊維材料のことである。このような繊維材料は、例えば、綿、麻、サイザル、ジュート、ケナフなどから採取することが可能である。この中では、特にケナフが好ましい。ケナフは、成長が早くしかもCO2を多く吸収することから、地球環境保全にとって有効だからである。また、ケナフの靭皮からは比較的長くて丈夫な繊維を採取することが可能だからである。
【0016】
板状体に含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等を用いることができる。この中では、特にポリプロピレンが好ましい。
【0017】
板状体を製造するためには、植物性繊維と熱可塑性樹脂を混合した材料を混綿させることでマット体とした後に、得られたマット体を熱圧プレスによって板状に成形する。これにより、所定の厚みを有する板状体を製造することができる。このような板状体の製造方法は、例えば、特開2001−179716公報、特開2002−371455公報等に開示されている。なお、板状体は、「熱成形用繊維板」、「プレボード」などの別の名称で呼ばれる場合もある。
【0018】
板状体を加熱することによって、当該板状体に含まれる熱可塑性樹脂を溶融させることができる。例えば、板状体に含まれる熱可塑性樹脂がポリプロピレンである場合には、ポリプロピレンの融点は160℃〜170℃であるため、板状体をこれ以上の温度(例えば200℃)に加熱することで当該板状体に含まれる熱可塑性樹脂を溶融させることができる。
【0019】
図2、図3は、板状体Wを予備成形するための予備成形型10の断面図である。図2、図3に示すように、予備成形型10は、一対の金型12、14を有している。このうち一方の金型12は、中央部分が突出した形状を有しており、他方の金型14は、中央部分が凹んだ形状を有している。一対の金型12、14は、型面同士が互いに対向するようにして左右に配置されている。予備成形型10を構成するこれら一対の金型12、14は、上下方向に吊り下げられた状態の板状体Wを表裏両面からプレスすることが可能となっている。予備成形型10が、本発明の「成形装置」ないし「予備成形装置」に対応している。
【0020】
図4、図5は、板状体Wを本成形するための本成形型20の断面図である。図4、図5に示すように、本成形型20は、一対の金型22、24を有している。このうち一方の金型22は、中央部分が突出した形状を有しており、他方の金型24は、中央部分が凹んだ形状を有している。一対の金型22、24は、型面同士が互いに向かい合うようにして左右に配置されている。本成形型20を構成するこれら一対の金型22、24は、上下方向に吊り下げられた状態の板状体Wを表裏両面からプレスすることが可能となっている。本成形型20が、本発明の「成形装置」ないし「本成形装置」に対応している。
【0021】
板状体Wを本成形するための本成形型20は、冷間プレス用の成形型が用いられる。ここでいう「冷間プレス」とは、本成形型20の型面を積極的に加熱しないで行うプレス成形のことを意味するが、加工熱や摩擦熱等によって本成形型20の型面がある程度加熱される場合も含まれる。加熱した板状体Wを本成形型20(冷間プレス型)でプレスすることによって、板状体Wに含まれている熱可塑性樹脂が冷却されて固化する。これにより、所定形状に成形された基材Kを得ることができる(図5参照)。
【0022】
このようにして得られた基材Kは、軽量でかつ強度が高いことから、車両用内装材の基材に用いることができる。例えば、ドアトリム、インストルメントパネル、シートバックボード、パーティションボード、コンソールボックス、ピラーガーニッシュ、クォータトリム等の基材に用いることができる。
【0023】
図2と図4を比較すればわかるように、予備成形型10を構成する一対の金型12、14のクリアランスCL1は、本成形型20を構成する一対の金型22、24のクリアランスCL2よりも大きく設定されている。例えば、クリアランスCL2が5mmである場合には、クリアランスCL1がそれよりも大きい10mmに設定されている。したがって、板状体Wを一気にプレスするのではなく、板状体Wを段階的に(2段階で)プレスすることが可能となっている。
【0024】
図6は、板状体Wを吊り下げた状態で保持するためのハンガー30の正面図である。図7は、ハンガー30の正面拡大図である。図8は、ハンガー30の側面図である。
【0025】
図6〜図8に示すように、ハンガー30は、鉄やアルミニウムなどの金属製のパイプ状部材からなるシャフト32を備えている。シャフト32の長さは、板状体Wの横幅よりも大きく形成されている。シャフト32の下部には、板状体Wの上縁部を挟むための2つのクランプ34が取り付けられている。シャフト32の上部には、後述するスライドレール62に載置される2つのローラー36が取り付けられている。2つのローラー36は、側面視において略L字型に形成された取付部材38を介してシャフト32の上部に取り付けられている。クランプ34及びローラー36は、シャフト32を上下方向に貫通する2本の共通のボルト31によって取り付けられている(図7参照)。
【0026】
図8に示すように、クランプ34は、鉄やアルミニウムなどの金属製の板状部材からなる一対の挟持部材33a,33bを備えている。一対の挟持部材33a,33bは、ヒンジ35によって連結されている。一対の挟持部材33a,33bは、ヒンジ35を支点としてその下端部を開閉させることで板状体Wの上縁部を挟むことができるように構成されている。一対の挟持部材33a,33bの間には、バネ部材37が取り付けられており、このバネ部材37によって一対の挟持部材33a,33bの上端部が拡開する方向に付勢されており、一対の挟持部材33a,33bの下端部がヒンジ35を支点として閉じる方向に付勢されている。一対の挟持部材33a,33bの下端部の内面側には、板状体Wが下方に落ちることを防止するための滑り止め用の溝部39が形成されている。
【0027】
図9は、基材Kを成形するための基材成形装置100の全体斜視図であり、図10は、基材成形装置100の平面図である。図9、図10に示すように、基材成形装置100は、板状体Wを加熱する加熱装置40を備えている。加熱装置40は、板状体Wをその内部に通過させることで均一に加熱することのできる熱風循環式の加熱炉42と、その加熱炉42の内部において板状体Wを搬送することのできる搬送装置50を備えている。加熱炉42の内部温度は例えば200℃に設定されており、板状体Wを加熱して当該板状体Wに含まれる熱可塑性樹脂を溶融させることが可能となっている。
【0028】
搬送装置50は、並列に配置された2台のチェーンコンベヤ52a、52bによって構成されており、この2台のチェーンコンベヤ52a、52bは同期して駆動されている。この2台のチェーンコンベヤ52a、52bの上面には、前述したハンガー30を構成するシャフト32の両端部が載置される。これにより、搬送装置50は、ハンガー30によって吊り下げられた状態で保持される板状体Wを加熱炉42の内部で搬送することができるようになっている。尚、搬送装置50におけるハンガー30の搬送方向を「前方」と表記することとする。
【0029】
加熱炉42の内部には、板状体Wを予備成形するための予備成形型10が設置されている。搬送装置50と予備成形型10は、加熱炉42の内部においてオフセット位置に設置されている。ここでいう「オフセット位置」とは、「互いの中心軸が離れた位置」という意味であり、具体的には、搬送装置50の中心軸P1と、予備成形型10の中心軸P2が水平方向に離れた位置という意味である。
【0030】
予備成形型10の下方には、本成形型20が設置されている。予備成形型10と本成形型20は、オフセット位置に配置されている。ここでいう「オフセット位置」とは、「互いの中心軸が離れた位置」という意味であり、具体的には、予備成形型10の中心軸P2と、本成形型20の中心軸P3が上下方向に離れた位置という意味である。
【0031】
なお、加熱炉42は、平面視において略L字型(図10参照)に形成されており、オフセット位置に配置された搬送装置50と予備成形型10をともに収容できるようになっている。本成形型20は、予備成形型10の下方であって、かつ、加熱炉42の外部に設置されている。
【0032】
図10に示すように、基材成形装置100は、板状体Wを搬送装置50から予備成形型10へ移送するための板状体移送機構60を備えている。板状体移送機構60は、搬送装置50の前方に搬送装置50と平面視略垂直かつ略水平に配置されたスライドレール62と、そのスライドレール62に載置されたハンガー30を搬送方向とは略垂直かつ水平方向に移動させることのできる水平方向移動機構70によって構成されている。
【0033】
図11は、図10中の矢印Aの方向から見たときの板状体移送機構60の側面図である。図12は、図10中の矢印Bの方向から見たときの板状体移送機構60の正面図である。図13は、図10中の矢印Cの方向から見たときの板状体移送機構60の正面図である。図14は、図10中の矢印Cの方向から見たときの板状体移送機構60の正面図であり、板状体Wを搬送装置50から予備成形型10へ移送した後の状態を示している。
【0034】
図11に示すように、スライドレール62は、鉄やアルミニウム等の金属材料からなる断面略正方形の長尺状部材によって構成されている。スライドレール62は、加熱炉42の外壁42aから延びる支持部材61によって略水平に支持されており、図11の紙面を垂直に貫く方向に延びるようにして取り付けられている。スライドレール62の上部には、ハンガー30を構成するローラー36が載置されている。
【0035】
図11、図12に示すように、水平方向移動機構70は、加熱炉42の外側に略水平に取り付けられたロッドレスシリンダ63と、このロッドレスシリンダ63によって駆動される外側チェーン64と、この外側チェーン64が掛け回されている外側スプロケット65を備えている。ロッドレスシリンダ63によって外側チェーン64を駆動することによって、外側スプロケット65を図12において左回りあるいは右回りに回転させることが可能となっている。ロッドレスシリンダ63、外側チェーン64、及び外側スプロケット65は、加熱炉42の外部に配置されている。
【0036】
図11、図13に示すように、水平方向移動機構70は、加熱炉42の内側に取り付けられた内側スプロケット66と、この内側スプロケット66に掛け回されている内側チェーン67と、この内側チェーン67に取り付けられた作動部材68を備えている。内側スプロケット66は、外側スプロケット65に対して連結軸69を介して連結されている。したがって、外側チェーン64と内側チェーン67は同期して回転することが可能となっている。内側スプロケット66、内側チェーン67、及び作動部材68は、加熱炉42の内部に配置されている。連結軸69は、加熱炉42の外壁42aを内外方向に貫通している。
【0037】
図11、図13、図14に示すように、水平方向移動機構70は、作動部材68によってシャフト32の端部を押圧することが可能であり、スライドレール62に載置されているハンガー30を水平方向に移動させることが可能である。したがって、スライドレール62及び水平方向移動機構70によって構成される板状体移送機構60は、スライドレール62に載置されているハンガー30を水平方向に移動させることによって、ハンガー30によって保持されている板状体Wを搬送装置50から予備成形型10へ移送することが可能となっている。
【0038】
図10に示すように、基材成形装置100は、搬送装置50からスライドレール62にハンガー30を受け渡すためのハンガー受け渡し機構80を備えている。ハンガー受け渡し機構80は、2つのアーム81を備えており、この2つのアーム81によってハンガー30を構成するシャフト32の両端部を下方から持ち上げることが可能となっている。
【0039】
図15〜図18は、ハンガー受け渡し機構80の側面図である。図15〜図18に示すように、ハンガー受け渡し機構80は、略L字型のアーム81を備えている。アーム81の先端部には、シャフト32を受けるための半円形状の凹部81aが形成されている(図18参照)。
【0040】
ハンガー受け渡し機構80は、金属製の長尺部材からなる略長方形のフレーム82を備えている。このフレーム82には、4つのスプロケット83が取り付けられている。この4つのスプロケット83には、駆動チェーン84が掛け回されている。この駆動チェーン84は、図示しない電動モータによって左回りあるいは右回り(図15〜図18を見たときの左回りあるいは右回り)に回転させることが可能となっている。
【0041】
駆動チェーン84には、スライダ85が取り付けられている。このスライダ85は、フレーム82の下辺部に取り付けられたガイドシャフト86に沿って前後方向に移動可能となっている。したがって、ハンガー受け渡し機構80は、図示しない電動モータによって駆動チェーン84を左回りあるいは右回りに回転させることによって、スライダ85をガイドシャフト86に沿って前後方向に移動させることが可能であり、スライダ85に取り付けられたアーム81を前後方向に移動させることが可能となっている。
【0042】
ハンガー受け渡し機構80は、地面に対して固定されたベース87を備えており、このベース87の上面には、フレーム82を上下方向に移動させることのできるシリンダ88が取り付けられている。このシリンダ88によってフレーム82を上下方向に移動させることによって、フレーム82に取り付けられたアーム81を上下方向に移動させることが可能となっている。なお、フレーム82を上下方向に移動させるためのシリンダ88としては、例えば、油圧シリンダあるいは空気圧シリンダを用いることが可能である。
【0043】
ハンガー受け渡し機構80の動作について、図15〜図18を参照しながら説明する。まず、図15に示すように、搬送装置50に載置されているシャフト32の下方にアーム81を移動させる。次に、図16に示すように、シリンダ88によってフレーム82を上方に移動させることによって、アーム81を上方に移動させる。また、駆動チェーン84を右回りに回転させることによって、アーム81を搬送装置50の前方側に移動させる。次に、図17に示すように、ローラー36がスライドレール62の真上に移動したタイミングでアーム81を停止させる。次に、図18に示すように、アーム81を下方に移動させた後に、アーム81を搬送装置50の後方側に移動させる。これら一連の動作によって、搬送装置50に載置されているハンガー30をアーム81によって上方に持ち上げた後に前方側に移動させることが可能であり、ハンガー30を構成するローラー36をスライドレール62上に載置することが可能である。
【0044】
図9、図10に示すように、基材成形装置100は、板状体Wを上下方向に移送することのできる上下方向移送機構90を備えている。この上下方向移送機構90によって、板状体Wを予備成形型10から本成形型20へ移送することが可能である。
【0045】
上下方向移送機構90は、略L字型の2つの支持アーム92と、この2つの支持アーム92を上下方向に駆動するラック・ピニオン機構94によって構成されている。2つの支持アーム92は、ハンガー30を構成するシャフト32の両端部を下方から支持することが可能であり、この2つの支持アーム92によってハンガー30を上下方向に移送することが可能となっている。
【0046】
板状体Wは、搬送装置50によって搬送されながら加熱炉42の内部で加熱される(加熱工程)。加熱された板状体Wは、板状体移送機構60によって搬送装置50から予備成形型10へ移送される。予備成形型10に移送された板状体Wは、予備成形型10を構成する一対の金型12、14によって表裏両面からプレスされる(予備成形工程)。
【0047】
予備成形型10によって予備成形された板状体Wは、上下方向移送機構90によって予備成形型10から本成形型20へ移送された後に、本成形型20を構成する一対の金型22、24によって表裏両面からプレスされる(本成形工程)。これにより、板状体Wを本成形型20の型面に対応した形状に成形することが可能であり、所定形状に成形された基材Kを得ることができる。
【0048】
本実施形態の基材成形装置100によれば、板状体移送機構60によって搬送装置50から予備成形型10へ板状体Wを吊り下げた状態で移送することが可能である。このため、従来の基材成形装置のように、加熱された板状体Wが溶融した熱可塑性樹脂によりベルトコンベヤのベルト面にくっついてしまうなどの問題が生じることがなく、搬送装置50から予備成形型10へ板状体Wを円滑に移送することが可能である。
【0049】
本実施形態の基材成形装置100によれば、ハンガー受け渡し機構80によって搬送装置50からスライドレール62へハンガー30を円滑に受け渡すことが可能である。
【0050】
本実施形態の基材成形装置100によれば、加熱装置40によって加熱した板状体Wを予備成形型10によって予備成形した後、本成形型20によって本成形することができる。つまり、加熱した板状体Wを2段階で成形することができる。これにより、加熱により柔らかくなった板状体Wに無理な力がかかることを防止することが可能であり、板状体Wが破れてしまう、あるいは、板状体Wが局所的に引き延ばされて裏側が透けてしまうなどの問題が生じることを防止することが可能となる。
【0051】
本実施形態の基材成形装置100によれば、予備成形型10が加熱炉42の内部に設置されているために、予備成形型10を構成する一対の金型12、14の型面が加熱炉42の内部で十分に加熱される。このため、予備成形した板状体Wに局所的に歪が発生することを抑制するとともに、予備成形型10を構成する一対の金型12、14の型面によって板状体Wが冷却されてしまうことを防止することが可能となり、板状体Wを本成形する前に再加熱する必要がなくなる。その結果、板状体Wの再加熱のために工程数が増えてしまうことがなくなる。また、板状体Wの再加熱のために多くのエネルギーを消費することがなくなる。
【0052】
本実施形態の基材成形装置100によれば、搬送装置50と予備成形型10がオフセット位置に配置されるために、搬送装置50と予備成形型10を直列につなげるようにして配置した場合よりも、搬送装置50と予備成形型10を合わせた全長が短くなる。したがって、基材成形装置100の設置スペースを小さくすることが可能である。
【0053】
本実施形態の基材成形装置100によれば、予備成形型10と本成形型20がオフセット位置に配置されるために、予備成形型10と本成形型20を直列につなげるようにして配置した場合よりも、予備成形型10と本成形型20を合わせた全長が短くなる。したがって、基材成形装置100の設置スペースを小さくすることが可能である。
【0054】
本実施形態の基材成形装置100によれば、本成形型20が予備成形型10の下方に配置されるために、予備成形型10と本成形型20を上下方向に積み重ねた状態で配置することが可能であり、基材成形装置100の設置スペースをさらに小さくすることが可能である。
【0055】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では、搬送装置50が2台のチェーンコンベヤ52a、52によって構成される例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、搬送装置50は、2台のベルトコンベヤによって構成されてもよい。
(2)上記実施形態では、熱風循環式の加熱炉42によって板状体Wを加熱する例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、熱風を循環させることなくそのまま排気する方式の加熱炉によって板状体Wを加熱してもよい。
(3)上記実施形態では、本成形型20が予備成形型10の下方に設置されている例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、本成形型20は、予備成形型10の側方に並列に設置されてもよい。
(4)上記実施形態では、板状体Wを予備成形型10及び本成形型20によって2段階で成形する例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、板状体Wを、本成形型20によって1段階で成形することも可能である。この場合、搬送装置50と本成形型20を同じ高さに配置することによって、搬送装置50から本成形型20へ板状体Wを板状体移送機構60によって移送することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】基材の成形工程を示すフローチャートである。
【図2】板状体を予備成形するための予備成形型の断面図であり、予備成形型が閉じる前の状態を示している。
【図3】板状体を予備成形するための予備成形型の断面図であり、予備成形型が閉じた後の状態を示している。
【図4】板状体を本成形するための本成形型の断面図であり、本成形型が閉じる前の状態を示している。
【図5】板状体を本成形するための本成形型の断面図であり、本成形型が閉じた後の状態を示している。
【図6】板状体Wを吊り下げた状態で保持するためのハンガーの正面図である。
【図7】ハンガーの正面拡大図である。
【図8】ハンガーの側面図である。
【図9】基材成形装置の全体斜視図である。
【図10】基材成形装置の平面図である。
【図11】図10中の矢印Aの方向から見たときの板状体移送機構の側面図である。
【図12】図10中の矢印Bの方向から見たときの板状体移送機構の正面図である。
【図13】図10中の矢印Cの方向から見たときの板状体移送機構の正面図である。
【図14】図10中の矢印Cの方向から見たときの板状体移送機構の正面図であり、板状体を搬送装置から予備成形型へ移送した後の状態を示している。
【図15】ハンガー受け渡し機構の側面図である。
【図16】ハンガー受け渡し機構の側面図である。
【図17】ハンガー受け渡し機構の側面図である。
【図18】ハンガー受け渡し機構の側面図である。
【符号の説明】
【0057】
10…予備成形型(予備成形装置、成形装置)
20…本成形型(本成形装置、成形装置)
30…ハンガー
40…加熱装置
42…加熱炉
50…搬送装置
60…板状体移送機構
62…スライドレール
70…水平方向移動機構
80…ハンガー受け渡し機構
90…上下方向移送機構
100…基材成形装置
K…基材
W…板状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体を加熱する加熱装置と、加熱した前記板状体を所定形状に成形する成形装置と、を備える基材成形装置であって、
前記加熱装置は、加熱炉と、前記加熱炉の内部において前記板状体を吊り下げた状態で搬送する搬送装置と、を備えており、
前記搬送装置と前記成形装置との間には、前記搬送装置から前記成形装置へ前記板状体を移送する板状体移送機構を備えており、
前記板状体移送機構は、前記板状体を吊り下げた状態で保持するハンガーを載置することのできるスライドレールと、前記スライドレールに載置された前記ハンガーを水平方向に移動させる水平方向移動機構からなることを特徴とする基材成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基材成形装置であって、
前記搬送装置に載置されている前記ハンガーを上方に持ち上げた後に、前記ハンガーを移動させて前記スライドレール上に載置するハンガー受け渡し機構を備えることを特徴とする基材成形装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基材成形装置であって、
前記成形装置は、前記板状体を予備成形する予備成形装置と、予備成形した前記板状体を本成形する本成形装置からなることを特徴とする基材成形装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基材成形装置であって、
前記予備成形装置は、前記加熱炉の内部に設置されていることを特徴とする基材成形装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の基材成形装置であって、
前記搬送装置と前記予備成形装置がオフセット位置に配置されていることを特徴とする基材成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−167669(P2010−167669A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12063(P2009−12063)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(599039175)株式会社野木製作所 (1)
【Fターム(参考)】