説明

基板の電気化学的処理

【課題】 電気化学的手段を用いて高い分解能を有する基板を修飾する方法を提供する。
【解決手段】 基板を電気化学的に処理する方法を提供し、該方法は、
(a)基板と接触する電解質を提供する工程、
(b)基板に向かい合い、電解質と接触しているデバイスが提供され、該デバイスは、
(i)その中にセルを限定するように配置された共通第一電極、および
(ii)個別にアドレス指定できる複数の第二電極
を有し、複数のセルが個別にアドレス指定できる第二電極を含む工程、並びに、
(c)第二電極の少なくとも1個の、共通第一電極に対する電位を変え、その結果、(i)共通第一電極は、第一酸化還元生成物を生成し、かつ、(ii)第二電極の少なくとも一個が、基板の該第二電極に向かい合う領域を修飾することができる第二酸化還元生成物を作り出す工程
を含み、該方法の電解質は、第二酸化還元生成物が第一酸化還元生成物によってクエンチできるような電解質である。
【解決手段】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに引用したすべての文書は、その全体を参照として取り入れる。
本発明は、基板(substrate)の電気化学的パターン形成の分野である。より詳細には、本発明は、基板を電気化学的に修飾する方法、およびそのような方法に用いることのできるデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上の材料にパターンを提供する必要がある場合は多い。そのようなパターン形成された基板の例には、半導体チップおよびプリント回路基板のデバイスが含まれる。ごく最近では、固体表面に結合させたオリゴヌクレオチドのパターンが製作され、DNAチップが作られるようになった。DNAチップは、特異的部位で基板に結合した様々なDNA配列のアレー(array)を含む。
【0003】
パターン形成基板を作り出すための多種多様な方法が存在する。写真製版は、そのような方法の例である。写真製版では、基板表面の特定領域を写真製版マスクで覆い、露出領域を紫外線(UV)光にさらすことによって修飾する。写真製版は、半導体デバイスの製作に広く用いられてきた。
【0004】
また、写真製版は、DNAチップの製造にも、用いられてきた。この方法では、光不安定保護基を有するオリゴヌクレオチドを固体表面に結合させる。表面領域を写真製版マスクで覆い、表面の露出領域にUV光を照射し、それによって、表面の露出領域から光不安定保護基を除去する(Ramsay,1998、Nature,Biotechnology,16;40−44)。
【0005】
WO93/22480および米国特許5,667,667号は、電気化学的方法を用いて表面を処理する方法を記載している。この方法では、表面および表面に隣接する電極アレーを電解質で覆う装置がある。アレー内の一つ以上の電極の電位を変化させて、一つ以上の電極に隣接する表面を修飾することができる。この方法は、表面に結合したポリマーの特定領域の保護基を除去することにより、ポリマー合成に用いることができる。次に、表面をモノマーに曝露する。モノマーと保護されていないポリマーの反応は、表面に結合したポリマーのさらなる成長を可能にする。この方法は、多様なポリペプチドまたはその他のポリマーの大きなアレーの生成に用いることができる。WO93/22480で用いられた電解質は、アセトニトリル中のトリエチルアミンおよび硫酸の溶液である。
【0006】
米国特許第6,093,302号はまた、基板上でオリゴヌクレオチドアレーを成長させる電気化学的方法について記載している。特定の電極で作られた種(species)は電極近くの基板と反応する。緩衝液または洗浄液(scavenging solution)を用いることについても記載されている。緩衝液または洗浄液は、電極のすぐ近くから遠くに移動する試薬と反応することによって、処理される基板の分解能を向上させることを目的としている。しかしながら、緩衝物質または洗浄物質を含むバルク溶液は、特定の電極から拡散したそれらの試薬のみならず、特定の電極に隣接する基板において反応することが望まれている試薬をもクエンチ(quench)するという欠点を持つ。
【0007】
Schusterら、(2000)Science,289;98−101は、表面を処理する電気化学的方法の分解能を改善するもう一つの方法について記載している。Schusterは、拡散時間を制限するために、複雑なシークエンスの電流パルスを用いている。
【0008】
WO03/20415は、表面を処理する電気化学的方法の分解能を改善するさらなる方法について、述べている。この方法は、第一電極によって生成した第一酸化還元生成物を、第二電極によって生成した第二酸化還元生成物によってクエンチすることができるような電解質を選択することによって実施される。第二電極の近くに隣接して第一電極を配置することによって、第二酸化還元生成物の拡散を抑制している。
【0009】
WO03/20415に開示された方法を用いると、第一電極は第二電極と同時にスイッチをオンオフされる。この方法は、第二電極および少なくとも一つの第一電極からなる電気化学的「パターン形成ユニット」を提供する。電極(即ちアノードとカソード)の総数が小さい場合、すべての第一および第二電極をスイッチングするのが適切である。なぜなら、個々の電極を、交流スイッチングを抑制するために設計されたオフチップ回路に直接接続することができるからである。しかしながら、デバイス上の電極数が増加するにつれて、個々の電極を独立的に接続することは、より困難になり、費用もかさむ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
電気化学的手段を用いて基板を修飾する方法の改善が必要である。特に、分解能が改善された基板の修飾方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に従って、基板を電気化学的に処理する方法が提供され、該方法は、
(a)基板と接触する電解質を提供する工程、
(b)基板に向かい合い、電解質と接触しているデバイスを提供し、ここで該デバイスは、
(i)その中に複数のセルを画定するように配置された共通第一電極、および
(ii)個別にアドレス指定できる(individually addressable)複数の第二電極
を有し、複数のセルが個別にアドレス指定できる第二電極を収容する、前記工程、並びに、
(c)第二電極のうちの少なくとも一個の、共通第一電極に対する電位を変化させ、その結果、(i)共通第一電極は、第一酸化還元生成物を生成し、かつ、(ii)第二電極の少なくとも1個が、基板の該第二電極に向かい合う領域を修飾することができる第二酸化還元生成物を生成する工程
を含み、該方法の電解質は、第二酸化還元生成物が第一酸化還元生成物によってクエンチ(quench)できるような電解質である。
【0012】
本発明の方法によって、電気化学的パターン形成が高い分解能で成し遂げられる。セルを画定するように配置された共通第一電極を有することによって、該方法は、クエンチングプロセスによる第二酸化還元生成物の拡散を抑制するため、第二電極に隣接した多数の異なる第一電極を個別にアドレス指定するという要件を不要にする。第二電極との関係で共通第一電極を配置することによって、電気的接続および非常に高い分解能で基板をパターン形成することを要求されるエレクトロニクスは単純化される。さらに、先行技術のデバイスと比較すると、共通第一電極に必要とされる電気的接続が減少するため、第二電極をより高い密度で提供することができ、それによって、非常に高い分解能での基板のパターン形成が可能になる。また、この電極の配置は、共通第一電極を有することによって、デバイスを運転するために必要とされるトランジスタの数を有意に減少させ、それによってデバイス製造コストを低く抑えることができるという、長所を有する。その理由は、デバイスのコストは、一般的に、トランジスタの数に依存するからである。共通第一電極を有するさらなる利点は、電力消費を減少させることができ、低電力エレクトロニクスのより頻繁な使用を可能にすること、および、デバイスがアノードカソード間のスイッチングの同期化を必要としないこと、である。
【0013】
また、本発明は、基板を電気化学的に修飾するデバイスを提供し、該デバイスは、
(i)その中に複数のセルを画定するように配置された共通第一電極、および
(ii)複数の個別にアドレス指定できる第二電極
を有し、複数のセルは、個別にアドレス指定できる第二電極を収容し、
共通第一電極および複数の第二電極は電解質と接触していて、さらに、
電解質は、共通第一電極が第一酸化還元生成物を作り出すことができ、第二電極が第二酸化還元生成物を作り出すことができ、第二酸化還元生成物が第一酸化還元生成物によってクエンチできるような電解質である。
【0014】
デバイス
本発明の方法およびデバイスでは、第一電極は、第一電極のすべてのエレメントが電気的に接続されているという意味で共通である。この点で、第一電極全体を単一の電位に保つことができる。共通第一電極は、単一の接続を行うことによって第一電極の電位を変化させることができるように、単一のアドレス指定が可能であり得る。代わりに、共通第一電極は、スイッチングもアドレス指定もできないバスラインであっても良い。
【0015】
好ましくは、共通第一電極は、カソードである。
共通第一電極は、セルを画定するために適当な任意の方法で配置し得る。例えば、共通第一電極は、実質的に規則的なパターンまたは実質的に不規則なパターンの幾何学的形状を有して良い。共通第一電極は、混合パターンを有しても良い。共通第一電極がとりうる規則的パターンの例は、例えば、図1から5に示したような、格子、網目、ハチの巣状、交差する連続円、またはその他のモザイク形状である。格子は、直線で囲まれた格子であって良い。共通第一電極がとりうる規則的または不規則パターンによって構成される部分の内部空間は、セルを画定する。同じ形状または異なる形状であるのみならず、セルは、均一又は一定範囲内のサイズであって良い。
【0016】
さらに、共通第一電極は、セルを画定するように配置された誘電体を含んでも良い。例えば、誘電体は、実質的に規則的なパターンまたは実質的に不規則なパターンの幾何学的形状を有して良い。誘電体は、混合パターンを有して良い。絶縁体がとりうる規則的パターンの例は、例えば、正方形または円、特に正方形の外形を有するアレーである。絶縁体がとりうる規則的または不規則パターンの構成部分はセルを画定する。同じ形状または異なる形状であるのみならず、セルは、均一又は一定範囲内のサイズであって良い。本実施態様における電極は、例えば図9および10に示すように、セルを画定するように配置された形状(例えば正方形)のアレーの形で、伝導体層または半導体層を含んで良く、さらに、伝導体層または半導体層の上に誘電体層を含んでいて良い。所望により、例えば、図9および10に示すように、第二電極を誘電体の上にマウントしても良い。
【0017】
セルが共通第一電極によって互いから完全に隔離されていることは重要ではない。実施態様では、第二電極を取り囲む共通第一電極の配置パターン内に隙間が存在することが想定されている。しかしながら、これらの隙間は十分に小さいため、実質上、第二酸化還元生成物は、特定の第二電極が位置するセルに閉じ込められることになる。しかしながら、一般に、セルは、共通第一電極によって互いに分離されているであろう。
【0018】
共通第一電極は、その中に第二電極が位置するパンチ穴を有するシートの形であって良い。本実施態様では、パンチ穴は、セルを画定する。あるいは、共通第一電極は、例えば、格子または網目様構造を形成するワイヤ線を実質的に含み得る。
【0019】
好ましくは、共通第一電極の配置は、結果として、少なくともn×106のセル(式中、nは、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0またはそれ以上である)を生じる。
【0020】
好ましくは、共通第一電極の配置は、セルの中心と該セルに隣接した少なくとも一つのセルの中心との間の距離が、0.5mmより小さくなるような配置、例えば、0.1−300μm;0.1−200μm;1−100μm;10−60μmとなるような配置である。典型的な中心から中心の距離は、0.297mm、0.294mm、0.2805mm、0.270mm、0.264mm、0.260mm、0.255mm、0.248mm、0.099mm、0.098mm、0.0935mm、0.090mm、0.088mm、0.0867mm、0.085mm、0.0827mm等、である。
【0021】
複数のセルは、第二電極を含む。任意の個別のセルは、一つまたはそれより多く(例えば、1、2、3、4またはそれ以上)の第二電極を含んでいても良い。セル当たり単一の第二電極が好ましい。いくつかのセルは、第二電極を含まないという点で空であっても良い。
【0022】
第二電極は、個別にアドレス指定できる。この方法では、特定の電位を、デバイス内の任意の特定の第二電極にかけることができる。任意の特定の第二電極のアドレス指定できることは、第二電極が位置するセルに面する基板の領域を絶縁して電気化学的にモディファイすることを可能にする。
【0023】
好ましくは、第二電極はアノードである。
第二電極を、任意の適当な回路構成を用いて、例えば、電極からデバイスの周囲上のボンドパッド(a bond pad)への直接接続によって、CMOSスイッチング回路によって、またはトランジスターベース回路(例えば、TFT回路)によって、アドレス指定できる。好ましくは、第二電極を、液晶ディスプレーパネルに用いられているような、TFT回路を用いてアドレス指定できる。
【0024】
第二電極は、共通第一電極によって限定されるセル内に位置するような、任意の適当なサイズであって良い。好ましくは、デバイス内のすべての第二電極は、実質上、同一サイズである。
【0025】
好ましくは、デバイス内の第二電極は、アレー内に配置されている。アレーは、任意の規則的または不規則な形状であってよい。第二電極の典型的な規則的アレーの幾何学的形状は、セルの幾何学的形状に依存するであろうが、正方形、方形、六角形格子、および同心円を含む。好ましくは、第二電極のアレーは、少なくとも10×10マトリックス、好ましくは100×100マトリックス、好ましくは少なくとも640×350マトリックス、好ましくは少なくとも800×600マトリックス、好ましくは少なくとも1024×768マトリックス、好ましくは少なくとも1280×768マトリックス、好ましくな少なくとも1280×1024マトリックス、好ましくは少なくとも1600×1200マトリックス、好ましくは少なくとも1920×350マトリックス、好ましくは少なくとも2400×600マトリックス、好ましくは少なくとも3072×768マトリックス、好ましくは少なくとも3840×768マトリックス、好ましくは3840×1024マトリックスである。
【0026】
好ましくは、第二電極の中心と該電極に隣接する少なくとも一つの第二電極の中心の間の距離は、0.5mmより小さい。例えば、0.1−300μm;0.1−200μm:1−100μm;10−60μmである。典型的には、中心から中心までの距離は、0.297mm、0.294mm、0.2805mm、0.270mm、0.264mm、0.260mm、0.255mm、0.248mm、0.099mm、0.098mm、0.0935mm、0.090mm、0.088mm、0.0867mm、0.085mm、0.0827mm等である。
【0027】
好ましくは、少なくともn×106 の第二電極があり、式中、nは0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0またはそれ以上である。
【0028】
第二電極数に対するセル数の割合は、<1(例えば、いくつかのセルは空である)、1(例えば、すべてのセルが一つの第二電極を含んでいる)、または>1(例えば、全セルが少なくとも一つの電極を含み、いくつかのセルは2つの電極を含んでいる)であって良い。
【0029】
第二電極は任意の適当な形状をとり得る。典型的には、第二電極は、円形、正方形または方形である。好ましくは、デバイス内の第二電極はすべて、同一の形状を持つ。
好ましくは、デバイスは、共通第一電極の位置を定める支持体および第二電極の位置を定める支持体を含む。好ましくは、共通第一電極は、第二電極と同じ支持体の上にマウントされている。典型的には、支持体は絶縁表面である。支持体は、不溶性ポリマー、セラミック酸化物(例えばアルミナ)又は酸化シリコンウェハなどの任意の適当な材料または混合材料であって良い。好ましくは、支持体は酸化シリコンウェハである。
【0030】
個々の第二電極および共通第一電極は、第二酸化還元生成物を生成する特定の第二電極が置かれているセルに第二酸化還元生成物を実質上閉じ込めるように、支持体上に配置されている。支持体上の第一および第二電極の典型的配置は、独立的に支持体の表面と同一平面にある、支持体表面の上に突き出している、または、下に突き出している、第一および第二電極を含む。好ましくは、デバイス内の第一および第二電極は、すべて、支持体上に突き出している。
【0031】
共通第一電極および第二電極は、任意の適当な伝導体または半導体材料から構成されて良い。典型的には、共通第一電極および第二電極は、独立的に、インジウムスズ酸化物(ITO)、イリジウム、白金、パラジウム、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、チタニウム、タングステン、アルミニウムおよびこれら金属の合金から選択される。好ましくは、共通第一電極および第二電極は、ITOおよび/またはイリジウムを含む。イリジウムを使うことの長所は、イリジウムが高伝導であり、かつ化学的不活性であることである。イリジウムは、本発明の方法で使用され得る高電位によって劣化を受けない。イリジウムは、電解中に劣化を受けない傾向にあり、酸化シリコンウェハのような材料に良く接着する。
【0032】
一つの好ましい配置では、共通第一電極および第二電極は、ITOのような、別の材料上へのイリジウムコーティングを含む。典型的には、少なくとも第二電極は、現在の液晶ディスプレーデバイスから誘導されても良い。この場合、DNA合成用での使用に対するデバイスの適合性をより高めるために、第二電極をイリジウムでコーティングして良い。
【0033】
好ましくは、デバイスは、第二電極のアレーを含み、該アレーは電気絶縁材の表面上のアレー内に一定の間隔をおいて堆積された伝導体材料の堆積物(deposits)から形成され、個々の堆積物はその電位を変化させるための電気的接続手段と共に提供される。典型的方法では、ポジティブ有機フォトレジストをシリコンウェハ上の二酸化ケイ素層に適用する。適当なフォトマスクを通して、フォトレジストをUV光に曝露し、二酸化ケイ素の領域を露出させる。電子ビーム銃を用いて、材料表面上にイリジウム金属を堆積させる。次に、フォトレジスト層を除去して、第二電極のアレーを露出させる。導体材料がイリジウムである場合、次に、イリジウム電極を空気中で焼きなまし、ウェハ表面への接着を補強する。好ましくは、堆積後、イリジウムを、空気中、200−500℃の範囲内の温度で焼きなます。典型的には、イリジウムを約350℃で15分から3時間の間、好ましくは約1時間、焼きなます。焼きなまし工程は、二酸化ケイ素へのイリジウムの接着を向上させる。
【0034】
好ましくは、上記のように、共通第一電極は、導体材料、好ましくはイリジウムをアレー内の第二電極同士の間に適当なパターンで堆積させることによって形成される。代わりの実施態様では、共通第一電極は、第二電極同士の間の絶縁材料領域を取り除き、導体材料の下にあるシート領域をあらわにすることによって形成される。
【0035】
有利なことに、第二電極、第二電極が位置する支持体および第二電極を接続する回路構成は、液晶ディスプレーデバイス、特に、テレビ、コンピューターモニターおよびラップトップコンピューターのようなカラーディスプレー用に使用されているものに見出されるようなものである。第二電極は、そのようなデバイス内のスイッチアノードに相当する。典型的には、そのようなアレーの回路構成は、TFTエレクトロニクスに基づいている。TFTエレクトロニクスに基づく回路を用いることは、現存する製造技術およびプロセスの利用を見込めるので、有利である。
【0036】
デバイスを、例えば、ピストンおよびシリンダー反応室を含む、フローセル配置内に取り込むこともできる。基板をピストンの末端に取り付け、デバイスを基板に向かい合うシリンダーの末端表面に置く。DNA合成試薬および電解質溶液は、シリンダーの側面の出入り口(ports)を通して導入したり除去したりすることができる。この方法では、電解質とDNA合成試薬を入れ替える場合、デバイスも基板も動かす必要がない。基板をピストン上にマウントさせておくことは、デバイスと基板の位置関係の調整を可能にする。
【0037】
電解質
電解質は、電解中に2つの異なる酸化還元生成物を生成する能力を持ち、これらは、互いをクエンチする(即ち互いに反応する)ことができる。第一酸化還元生成物は第二酸化還元生成物と反応して、その反応性を変化させ、その結果、第二酸化還元生成物は、その元来の形で反応するのと同じ様式で反応することはない。第一酸化還元生成物と第二酸化還元生成物の間の反応は、第二酸化還元生成物が基板を修飾することを妨げるであろう。例えば、第二酸化還元生成物が酸である場合、第一酸化還元生成物は、塩基であって良い。酸と塩基の間の反応では、酸がクエンチされ、酸が基板をクエンチすることを妨げる。
【0038】
好ましくは、電解質は、一つより多くの物質を含む混合物または溶液であり、第一および第二酸化還元生成物は電解質内で分離した物質から生成される。
好ましい実施態様では、クエンチング反応は、一つ以上の最初に存在した物質を電解質中に再生成するであろう。好ましくは、クエンチング反応は、結果として、電解質を実質的にすべて再生成する。この方法では、電気分解とこれに続くクエンチングの工程の後、電解質の組成には実質的に正味の変化はなかった。例えば、電解質は、成分ABおよびCDを溶媒E中に含み得る。電解質の電気分解は、結果として、酸化還元生成物AB’およびCD’を溶媒E内に生成し得る。CD’によるAB’のクエンチングは、結果としてABおよびCDを溶媒E内に再生成する。
【0039】
好ましくは、電解質の電気分解もクエンチング反応も、ガス状生成物を生成することはない。
本発明で用いられる電解質は、水、THF(テトラヒドロフラン)、メタノール、エタノール、DMF(ジメチルホルムアミド)、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、DMSO(ジメチルスルホキシド)またはアセトニトリルのような、任意の適当な溶媒を含んで良い。当業者は、溶媒の選択が、電極での酸化還元反応および/またはクエンチング反応の反応速度論または平衡に影響を及ぼしうることを、十分に理解するであろう。溶媒は、例えば、錯体形成、水素結合、双極子−双極子相互作用または電荷の非局在化によって、溶液内の種の反応性に影響を与え得る。好ましくは、溶媒は、ラジカルアニオンを安定化することのできる非プロトン性溶媒である。非プロトン性溶媒の例は、ジクロロメタン、DMF、DMSO、アセトニトリルおよびTHFである。より好ましくは、溶媒はアセトニトリルである。
【0040】
電解質が溶媒を含む場合、第一および第二酸化還元生成物は、溶媒の電気分解から誘導されないことが好ましい。
第二酸化還元生成物は、基板を修飾する能力を持つ任意の酸化または還元生成物である。第二酸化還元生成物は、電解質内の物質の酸化または還元によって直接生成され得る。代わりの方法として、第二酸化還元生成物は、電解質内の物質を酸化または還元し、さらに、これに続く電解質内のその他の物質との1つ以上の反応を行わせることによって、間接的に生成させてもよい。
【0041】
一般的に、第二酸化還元生成物は、第二電極の表面で生成される。次に、第二酸化還元生成物は、電極に向かい合う基板のような、第二電極の表面付近の基板を修飾することができる。酸は、第二酸化還元生成物の好適な例である。酸は、基板上の多くの型の反応、例えば、脱離、置換、転位および化学エッチング、に関与し得る。好ましくは、第二酸化還元生成物が酸である場合、その酸は、基板から酸不安定保護基を除去するために、用いられる。適当な酸は、ルイス酸およびブレーンステッド酸、例えば、金属カチオン、Hの源およびH自身、を含む。
【0042】
酸不安定性保護基は、当業者に周知であり、例えば、アセタール(例えば、メトキシメチル、メチルチオメチル、(2-メトキシエトキシ)メチル、ベンゾイルオキシメチル、β-(トリメチルシリル)エトキシメチル、テトラヒドロピラニル、ベンジリデン、イソプロピリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンチリデン)、エステル(例えば、ベンゾイル、ベンゾイルオキシカルボニル、第三ブトキシカルボニル)、エーテル(例えば、トリチル、ジメトキシトリチル、第三ブチル)およびシリルエーテル(例えば、第三ブチルジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル)を含む。好ましくは、酸不安定保護基は、トリチルまたはジメトキシトリチル(DMT)エーテルであり、これらはオリゴヌクレオチドの合成で一般に用いられている保護基である。
【0043】
好ましくは、本発明の方法では、処理される基板は、酸不安定性保護基を有する物質を含む。この好ましい実施態様では、処理は、アノードとしての少なくとも1つの第二電極を、電解質内で酸を生成する電位で、接続することによって実施される。生成した酸は、次に、アノード隣接領域内の表面に結合した物質から酸不安定性保護基を除去することができる。
【0044】
代わりに、酸は、酸によって促進される任意の有機または無機の反応に関与し得る。当業者は、本発明での使用に適合可能な非常に多くの反応に気づくであろう。有機反応の例には、エポキシドの開環、多重結合の付加、転位、置換(例えば、第三アルコールのS1置換)、脱離、エノールの形成とそれに続くエノールの反応、および有機酸塩の単一プロトン化が含まれる。
【0045】
第二酸化還元生成物は塩基であっても良い。塩基は、基板上の多くの型の反応に関与し得る。例えば、塩基を用いると、塩基不安定保護基を除去することができる。適当な塩基には、ルイス塩基が含まれる。
【0046】
塩基不安定性保護基は、当業者に周知であり、例えば、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc) およびシアノエチル基が含まれる。
ラジカルは、第二酸化還元生成物のもう一つの例である。ラジカルを用いて、基板上のラジカル反応を開始することができる。ラジカルを生成する電気化学的方法は、当業者に周知であろう。ラジカルを電気化学的に生成するための一般的に用いられる方法の一つは、カルボキシレートアニオンの酸化である。適当なラジカルには、中性、正荷電、および負荷電を有する種が含まれる。
【0047】
ハロゲンは、第二酸化還元生成物のもう一つの例である。ハロゲンは、例えば、基板上での酸化反応または付加反応に用いられてよい。相当するハロゲン化物イオンを酸化することによって、ハロゲンを電気化学的に生成することもできる。
【0048】
第二酸化還元生成物がハロゲンである場合、ハロゲンは、穏やかな酸化、基板の漂白、またはハロゲン化に関与し得る。また、第二酸化還元生成物は、ハロゲン化物イオンであっても良く、これを置換反応に用いることもできる。
【0049】
第二酸化還元生成物は、求電子性であって良い。第二酸化還元生成物は、求核性であっても良い。
第二酸化還元生成物は、それが反応する基板の基または原子より、より正の電荷を帯びたもので良い。第二酸化還元生成物は、それが反応する基板の基または原子より、より負の電荷を帯びたもので良い。
【0050】
第二酸化還元生成物は、カチオンであって良い。第二酸化還元生成物はアニオンであっても良い。第二酸化還元生成物は中性であっても良い。
第二酸化還元生成物のこれらのおよびその他の例は、当業者には容易に理解されるであろう。
【0051】
本発明の方法では、WO93/22480に記載の方法に類似している。しかしながら、本発明の方法では、第一および第二電極の配置が異なる。さらに、本発明の方法では、電解質の選択が異なる。WO93/22480は、アセトニトリル中のトリエチルアミンおよび硫酸である電解質を用いている。本発明では、第二酸化還元生成物が第一酸化還元生成物によってクエンチされうる電解質を用いている。この電解質の利点は、第二酸化還元生成物が生成した電極のすぐ周辺の領域に該第二酸化還元生成物を閉じ込め、それによって高い分解能を有する基板のパターン形成を導くことが可能になることである。
【0052】
WO93/22480に記載された方法では、特定領域での酸の閉じ込め(confinement)は、様々な電極電位によって制御することができる。出願人は、長い電気分解の後、電解質がアセトニトリル中のトリエチルアミンおよび硫酸である場合には、長い電気分解の後、酸が閉じ込められないということを見出した。酸の閉じ込めが不十分であると、処理された基板の分解能が低下する。例えば、アノードのすぐ近くから拡散したプロトンは、電極の間のゾーン内の基板と反応することができる。この点で、拡散したプロトンの付随的な的反応は、高分解能でパターン形成された基板を得る観点から、望ましくない。
【0053】
WO03/20415に記載された方法では、電極によって生成された最初の酸化還元生成物は、包囲電極(surrounding electrode)のスイッチングが最初の酸化還元生成物をクエンチできるさらなる酸化還元生成物を作り出すような特定の型の電解質を用いることによって、特定領域に局限される。しかしながら、包囲電極のおのおのを個別にアドレス指定しなくてはならないという必要性は、非常に多数の電極を方法内で用いる場合、非常に複雑なエレクトロニクスを必要とすることを意味する。WO03/20415での電気化学的パターン形成法の分解能は、アレーの単位領域当たり個別にアドレス指定できる電極の数によって、制限される。
【0054】
本発明に従って、電解質ならびに共通第一電極および第二電極の配置を選択することによって、先行技術の問題を避けることができる。
当業者は、第一酸化還元生成物によってクエンチすることのできる第二酸化還元生成物を生成する電解質の多数の例に気づくであろう。
【0055】
そのような電解質の例は、I-およびS462-の組み合わせである。アノードでのヨウ化物の酸化は、(第二電極がアノードである場合、第二酸化還元生成物である)ヨウ素を生成するが、これに対して、カソードでのS462-の還元は、S232-を生成し、該化合物は、アノードで生成したヨウ素をクエンチすることができる。電解質中の反応は、以下のように表すことができる。
【0056】
アノード: 2I- − 2e- → I2
カソード: S62− + 2e- → 2S232−
ヨウ素は、次の反応によってクエンチングされる;
2S232− + I2 → S462− + 2I-
好ましくは、共通第一電極はカソードであり、個別にアドレス指定できる第二電極はアノードである。好ましくは、第二酸化還元生成物は酸であり、第一酸化還元生成物(クエンチする方の種)はアニオン、好ましくは有機ラジカルアニオンである。通常、酸は、アノードでのアルコールの酸化によって、生成され、該アルコールは、任意の脂肪族または芳香族アルコールであって良い。そのような電解質では、通常、クエンチングアニオンは、適当な物質の還元によって、カソードで生成される。多くの物質がカソードで還元されて、アニオンを生成することができ、該生成アニオンはアノードで形成された酸をクエンチすることができる。例えば、溶解した酸素分子をカソードで還元することができ、それによって、O2および/またはO22−が生成する。
【0057】
適当な第一および第二酸化還元生成物を生成する電解質の例は、ケトンとこれに相当するアルコールの組み合わせである。アノードでのアルコールの酸化は、プロトン(活性酸化還元生成物)を生成し、これに対して、カソードでのケトンの還元は、アノードで生成したプロトンをクエンチすることのできるラジカルアニオンを生成する。電解質中の反応は、以下のように表すことができる:
アノード; R1CH(OH)R2 → R1C(O)R2 + 2H + 2e-
カソード: R1C(O)R2 + e- → [R1C(O)R2]-
式中:R1およびR2は、所望により置換されたC1からC15までのヒドロカルボニルから独立的に選択され、その中で最大で3個のC原子が、所望により、N、O、および/またはS原子によって置き換えられていても良い;または、R1およびR2は一緒に、所望により置換されたC1からC15までのシクロヒドロカルビレンを形成し、その中で最大で3個のC原子が、所望により、N、O、および/またはS原子によって置き換えられていても良い。
【0058】
好ましくは、R1およびR2は、所望により置換されたC1−8アルキル、C3−8シクロアルキルまたはフェニル基から、独立的に選択される。
用語「ヒドロカルビル」は、本明細書中では、炭素および水素からなる一価の基を指す用語として用いている。このように、ヒドロカルビル基は、アルキル、アルケニルおよびアルキニル基(直鎖および枝分れ鎖の両方の型)、シクロアルキル(ポリシクロアルキルを含む)、シクロアルケニルおよびアリール基、ならびに、アルキルシクロアルキル、アルキルポリシクロアルキル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、シクロアルキルアリールおよびシクロアルケニルアリール基のような、前述の基の組み合わせを含む。
【0059】
用語「ヒドロカルビレン」は、本明細書中では、炭素および水素からなる二価の基を指す用語として用いられている。このようなシクロヒドロカルビレン基は、シクロアルキレン、シクロアルケニレンおよびアリーレン基を含む。
【0060】
用語「アリール」は、本明細書中では、フェニル、ナフチル、またはアントラシルの様な芳香族の基を指す用語として用いられる。代わりに、アリール基が、O、Nおよび/またはSによって置き換えられた炭素分子を持つ場合、用語「アリール」は、ピリジル、ピロリル、チエニル、フラニル、イミダゾリル、トリアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリルまたはイソキサゾリルのような、ヘテロ芳香族基を指す。
【0061】
所望により置換された基に言及がある場合、置換基は、好ましくは、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、チオ、C1−C6アルキルチオ、カルボキシ、カルボキシ(C1−C6)アルキル、ホルミル、C1−C6アルキルカルボニル、C1−C6アルキルカルボニルアルコキシ、ニトロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、C1−C6アルキルヒドロキシ、ヒドロキシ(C1−C6)アルキル、アミノ、C1−C6アルキルアミノ、ジ(C1−C6アルキル)アミノ、アミノカルボキシ、C1−C6アルキルアミノカルボキシ、ジ(C1−C6アルキル)アミノカルボキシ、アミノカルボキシ(C1−C6)アルキル、C1−C6アルキルアミノカルボキシ(C1−C6)アルキル、ジ(C1−C6アルキル)アミノカルボキシ(C1−C6)アルキル、C1−C6アルキルカルボニルアミノ、C5-C8シクロアルキル、C5-C8シクロアルキル(C1−C6)アルキル、C1−C6アルキルカルボニル(C1−C6アルキル)アミノ、ハロ、C1−C6アルキルハロ、スルファモイル、テトラゾリルおよびシアノより選択される。
【0062】
本明細書中に用いられている、「ハロ」および「ハロゲン」は、ヨウ素、臭素、塩素またはフッ素を指す。
1およびR2の種類は、電解質の酸化還元特性を変化させるために、変更可能である。例えば、R1およびR2への置換基の導入によって、酸化および還元が起こる電位を変化させることができる。
【0063】
ケトン/アルコール電解質の好ましい例は、適当な有機溶媒中の、2-プロパノン/イソ-プロパノールおよびベンゾフェノン/ベンズヒドロールである。
適当な電解質のその他の例は、ベンゾキノン/ヒドロキノンおよびその誘導体である。
【0064】
そのような電解質は、以下の組み合わせ:
【0065】
【化1】

【0066】
式中、(a)R3、R4、R5およびR6は、独立的に;水素、ハロ、ニトロ、ヒドロキシル、チオ、ニトロ、アミノ、および所望により置換されたC1-C15ヒドロカルビル(式中、最大で3のC原子が、所望により、N、Oおよび/またはS原子によって置き換えられていても良い)より選択される;または(b)R3とR4および/またはR5とR6は一緒になって、所望により置換されたC1-C15シクロヒドロカルビレン(式中、最大で3つのC原子が、所望によりN、Oおよび/またはS原子によって置き換えられていても良い)を形成している)であって良い。
【0067】
好ましくは、R3、R4、R5およびR6は、独立的に、水素、所望により置換されたC1−8アルキルより選択される、またはR3/R4およびR5/R6は一緒になって、フェニレンのような、所望により置換されたC5−C12アリーレン基を形成している。
【0068】
3、R4、R5およびR6の種類は、電解質の酸化還元特性を変化させるために、例えば、酸化または還元が起こる精密電位を変化させるために、変更可能である。ベンゾキノン/ヒドロキノン誘導体をベースにした電解質の好ましい例は、適当な有機溶媒中の、アントラキノン/アントラキノールおよびジュロキノン/ジュロキノールである。
【0069】
好ましい実施態様では、電解質は、アセトニトリル中のベンゾキノンおよびヒドロキノンの混合物を含む。共通第一電極がカソードであり、第二電極がアノードである場合、この混合物は、水素イオンである第二酸化還元生成物を提供する。水素イオン(プロトン)は、ベンゾキノンラジカルアニオン(第一酸化還元生成物)によってクエンチされ得る。
【0070】
具体的には、ヒドロキノンは、アノードで酸化され、ベンゾキノンとプロトンを生成する。
【0071】
【化2】

【0072】
ヒドロキノンの酸化によって遊離したプロトンは、大部分がアノードに局在し、それに近い基板を修飾することができる。例えば、プロトンは酸不安定性保護基を持っている基板を脱保護することができる。
【0073】
ベンゾキノンはカソードで還元されて、ベンゾキノンラジカルアニオンを生成する。
【0074】
【化3】

【0075】
ベンゾキノンラジカルアニオンは、アセトニトリルのような溶媒中で比較的安定な種である。このラジカルアニオンは、以下の反応に従って、アノードのすぐ近くから漏れ出した任意の外来プロトンをクエンチする。
【0076】
【化4】

【0077】
この方法では、第二酸化還元生成物、例えばアノードで生成したプロトン、を局在させることによって、処理された基板領域の分解能を向上させることができる。
塩濃度
電気化学システムは、電気化学反応によって生成される酸化還元生成物である、バックグラウンド電解質を有する。大多数の先行技術の電気化学システムでは、電解質は、さらに、伝導率エンハンサー、即ち不活性な伝導性塩の様な電解質の伝導率を高める物質、を包含する。一般的に、電解質の伝導率を高めることは望ましく、そうすることによって、伝導率エンハンサー不存在時より低い電圧で電気分解を行うことができる。不活性であるが伝導性の塩を付加すると、電場誘導泳動が排除され、このことは、酸化還元生成物が電解質を通して自由に拡散し得ることを意味している。電解質に溶解する任意のイオン物質は、この目的に適している。例えば、電解質がアセトニトリルのような有機溶媒を包含する場合、適当な伝導率エンハンサーは、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートのような、テトラ(C1−8アルキル)アンモニウム塩であって良い。
【0078】
しかしながら、共通第一電極が存在する本発明に於いては、伝導性塩の存在は、共通第一電極の電流密度がその表面全体に拡がる原因となる。このことは、特定の第二電極の電位が変化して、第二酸化還元種が作り出される場合、(化学量論的な量で生成するであろう)第一酸化還元生成物は共通第一電極の表面全体に分配され、その結果、特定の第二電極の付近には低濃度でしか存在しないことを意味している。このように、クエンチングのために特定の第二電極付近で利用できる第一酸化還元生成物は、ほとんどなく、このことは、第二酸化還元生成物は、特定の第二電極が位置するセルに実質的に閉じ込められないことを意味している。それ故、不活性な伝導性塩の存在は、基板パターン形成の分解能の減少を導く。この問題を解決する明らかな方法は、個別にアドレス指定できる別々の第一電極(例えばWO03/20415)を有することである。しかしながら、共通カソードを用いている高分解能LCDにすでに利用されている電極のアレーを活用するために、発明者らが、不活性伝導性塩の量をより低くする必要性があることを、見出したことは驚きである。LSDスクリーンのように、第二電極とそのセルを画定する共通第一電極の部分との間の距離が非常に小さい場合、不活性伝導性塩を排除する、または不活性伝導性塩の量を非常に低いレベルに減少させることが、第二電極に最も近い共通第一電極の部分での電流密度を高くする結果となる。このように、高濃度の第一酸化還元生成物を第二電極に最も近い共通第一電極の部分で生成させると、修飾されるべき基板の領域に第二酸化還元生成物を有効に閉じ込めることができる。この高い分解能は、より低い電解質伝導率という犠牲の下にもたらされる。しかしながら、共通第一電極と第二電極の間の距離が小さい場合、このことは、デバイスの全体的な通電容量にほとんど影響を与えない。
【0079】
電解質内に許容されうる不活性伝導性塩の量は、第二電極とそれに最も近い共通第一電極の部分との間の特定の間隔、および電気化学パターン形成プロセスに必要な個々の分解能、に依存する。つまり、必要とされるパターン形成分解能が高くなるにつれて、許容される不活性導電性塩のレベルは低くなる。任意の特定の場合での使用に適当な不活性伝導性塩の濃度の範囲は、共通電極を用いた場合の酸化還元種の拡散を任意の与えられた塩濃度で作り出すことができるので、日常的な実験によって推定することができる。
【0080】
不活性伝導性塩の濃度を変化させると、酸化還元反応全体の化学を変えることができ、それによって、生成する第一および第二酸化還元生成物の量を増加させたり、または減少させたりすることができる。第一および第二酸化還元生成物の相対量が変化すると、基板の修飾およびクエンチングが起こる範囲に影響を与えるであろう。しかしながら、不活性伝導性塩の濃度を変化させることによる影響は、日常的な実験によって、容易に測定することができる。そのように、任意の特定の場合での使用に適当な不活性伝導性塩の濃度範囲を容易に推定することができる。
【0081】
パターン形成プロセスに必要な分解能によって、電解質中の不活性伝導性塩の量は、典型的には、25ミリモル、20ミリモル、15ミリモル、10ミリモル、5ミリモル、1ミリモル、0.5ミリモル、0.1ミリモル、0.05ミリモル、または0.01ミリモル等より少ない。好ましくは、電解質は、実質上、不活性伝導性塩を包含しない。
【0082】
基板
本発明の方法に用いられる基板は、第二酸化還元生成物によって修飾することのできる任意の材料または物質であってよい。
【0083】
一つの実施態様では、基板は、電極から分離していてかつ電極に向かい合う材料表面である。典型的には、この実施態様では、酸化還元反応が起こった後、基板を電極の近くから取り除く。
【0084】
基板材料は、不浸透性または浸透性であって良い。適当な基板には、ガラス、プラスチック(例えばポリアクリルアミドまたはナイロン)、固体繊維マトリックス(例えばフィルターまたは膜)、金属(例えば金)、半導体、シリコン酸化物またはゲル材料(例えばポリアクリルアミドゲル)が含まれる。好ましくは、基板は、ガラススライドである。
【0085】
基板を、下地の支持体材料に付着させても良い。
有機種の付着を促進するために、材料表面を誘導体化しても良い。典型的には、一般式(RO)3SiR’のシランを用いて、リンカーおよび/または有機種の付着前に、材料表面、特にガラス表面、を修飾する。シランは、特に、オリゴヌクレオチドを表面に付着させるべき用途に好ましい。適当なシランには、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、N-(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)ブロモアセトアミド、N-(3-ジメチルエトキシシリルプロピル)ブロモアセトアミド、N-(4-ジイソプロピルメトキシシリルブチル)ブロムアセトアミド、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、(3-メルカプロプロピル)トリメトキシシラン、および(3-アミノプロピル)トリメトキシシランが含まれる。好ましくは、材料がガラスである場合、グリシドキシプロピルトリエトキシシランが用いられる。
【0086】
有機種を、材料表面に付着させてもよく、または、材料を共有結合もしくは非共有結合で誘導体化しても良い。好ましくは、有機種をリンカーまたはスぺーサーによって材料表面に付着させる。リンカーおよびスペーサー分子は、典型的には、オリゴヌクレオチドと固体支持体の間の立体相互作用を取り除くために行われる、表面を誘導体化する工程の後で加えられる。適当なリンカーまたはスペーサーには、ポリエチレングリコール、4-ニトロフェニル-クロロホルメート、アクリロイルクロリド、ジイソプロピルエチルアミン、テトラエチレンペンタミン、1,4-ビス(3-アミノプロポキシ)ブタン、4-アミノメチル-1,8-オクタジアミン、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン、N,N-ジメチル-1,6-ヘキサジアミン、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩、フェニルジイソチオシナネート、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、無水マレイン酸、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホ-スクシンイミドエステル、スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセトアリール)アミノベンゾエート、スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1カルボキシレート、N-(γ-マレイミドブチリルオキシ)スルホスクシンイミドエステル、およびスルホスクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)-ブチレートが含まれる。
【0087】
好ましくは、ガラス基板材料を、DNA成長用途に用いる場合、グリシドキシプロピルトリエトキシシランを用いてガラスを誘導体化し、次に、酸触媒でポリエチレングリコールを付着させ、その後、それにDNAホスホルアミダイトを共有結合で付着させる。
【0088】
材料自身の表面を酸化還元反応によって修飾しても良い。代わりに、材料表面に付着させた有機種を酸化還元反応によって修飾しても良い。
代替配置では、方法は上記の通りであるが、第一/第二電極それ自体を、電気化学的に発生した酸化還元生成物によって修飾する。典型的には、第二酸化還元生成物によって修飾することのできる有機種を第二電極に付着させる。好都合なことに、電極を用いてハイブリダイゼーションを検出および/または調節することができる(例えば、Thorp(1998)TiBtech16:117−121に概説されている)。伝導性リンカーを用いることもできる(米国特許第6,221,583号を参照のこと)。結合相互作用がセンサーの物理的性質を変化させるような、センサー(例えば電界効果トランジスタ(FET)のゲート)表面にバイオポリマーを付着させることが、米国特許第4,562,157号に開示されており、さらに、DNAへリックスによる光誘導電子移動が、Murphyら(1993)Science,262:1025−1029に開示されている。
【0089】
方法
本発明のデバイスは、所望のパターンに酸化還元生成物を作り出すことができ、次いで、基板の特定領域と反応させるためにこれを用いることができ、その結果、本発明のデバイスおよび方法を広く多様な用途に用いることができる。
【0090】
本発明のデバイスおよび方法は、基板の特定領域に材料を付加または除去することを望む場合、常に有効である。
一般のレベルでは、特定のパターンで基板を脱保護するために、即ち基板の特定領域から保護基を除去するために、酸化還元反応を用いても良い。これにより、脱保護された基のパターンが残る。次に、この脱保護された基を反応物にさらすと、脱保護された基は反応物と反応できるが、これに対して、保護された基は反応できず、この点で、複雑なパターンおよび反応物を付与することができる。
【0091】
脱保護された基を、電解質中または個々の反応物溶液内のいずれかで反応物にさらすことができる。反応物溶液を用いる場合、(例えば、フローセルの一部分として本発明のデバイスを有することによって)電解質と反応物溶液の循環があって良い。
【0092】
パターン形成は脱保護を繰り返すことによって行われて良く、特に、コンビナトリアル合成のような、段階的合成に好適である。次の脱保護工程は、基板の同一領域および/または異なる領域で起こって良い。配列内にいくつかの処理を行うことによって、基板上にコンビナトリアルケミストリーによって形成されたポリヌクレオチドもしくは他のポリマーまたは生成物を作り出すことができる。
【0093】
好ましくは、本発明の方法は、ポリヌクレオチド、多糖、およびポリペプチドのような、ポリマーの段階的化学合成に用いられる。より好ましくは、本発明の方法は、ポリヌクレオチドの合成に用いられ、さらに、Fodorら、(1991)Science,251:767−763(米国特許第5,143,854号も参照されたい)、Lipshutzら(1999)Nature Genet.21:20−24、およびSingh−Gassonら(1999)Nature Biotechnol.17:974−978(米国特許第6,375,903号も参照されたい)に記載されている光指向(light-directed)コンビナトリアル技術に対する代替法を提供する。ヌクレオチドの長さが8から100の間のポリヌクレオチドが好ましい。本発明の方法は、表面に結合した小さい有機化合物のライブラリーの合成に用いることができる(例えば、Schreiber(2000)Science287:1964−1969を参照のこと)。小有機化合物のライブラリーは、創薬の分野で重要である。本方法を適用することのできる反応の範囲は、該反応がそのようなライブラリーの合成に申し分なく適していることを意味している。
【0094】
代わりの方法では、パターン形成は、セル当たり単一の脱保護工程を含んでも良い。例えば、脱保護は、基板上に反応基を露出することができ、次に、該反応基は前もって合成されたポリペプチドまたはポリヌクレオチドのような何かと反応することができる。
【0095】
しかしながら、脱保護の後、脱保護された基を反応物にさらす必要がない。このことは、例えば、半導体回路または微小流体構造の製造中のような、基板のエッチングを必要とする場合に、望ましいとされ得る。
【0096】
また、本発明の方法は、有機LED(OLED)化合物の製造に用いることもできる。典型的には、OLEDでは、有機フォトルミネセンスまたはエレクトロルミネセンス材料をITOフィルムに、またはITOフィルム上の有機層に付着させる。OLEDスクリーンの製造中に遭遇する問題は、非常に広い領域に高分解能で有機フォトルミネセンスまたはエレクトロルミネセンス材料をプリントする必要があることである。本発明の方法は、有機フォトルミネセンスまたはエレクトロルミネセンス材料をITOのような基板の特定領域に、非常に高い分解能でしかも非常に広い領域に、付着させることを可能にする。
【0097】
適当な有機フォトルミネセンスまたはエレクトロルミネセンス材料の例は、蛍光発光ポリマー[例えばポリフェニレンビニレン(PPV)およびその誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレン)を含む]、蛍光性小有機分子[例えば、トリス-(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)]、りん光性小有機分子[例えば、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィン白金(II)(PtOEP)およびユウロピウム(トリフェニルホスフィンオキシド)2(テノイルトリフルオロアセトナート)3]ならびに蛍光性またはりん光性デンドリマー[例えば、fac-トリス(2-フェニルピリジン)イリジウムコア、フェニレンデントロンもしくは2-エチルヘキシルオキシ表面基]である。
【0098】
OLEDの製造では、好ましくは、ITO層とエレクトロルミネセンスまたはフォトルミネセンス材料の間に、中間層が位置しており、該中間層は、例えば(例えば正孔注入を補助するための)電荷注入層および/または不動態層(passivation layer)として作用する。中間層は、本発明の方法を用いてITO上に堆積することができる。中間層は、ポリメリック、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)およびポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT)の混合物またはポリ(N-ビニルカルバゾール)、であって良く、または、有機小分子層、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビスフェニル-4,4’-ジアミン(TPD)、ビス(ナフタレン-2-イル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン(NPD)、4,4’-ジ(N-カルバゾール)ビフェニル(CBP)、4,4’,4”-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミン]トリフェニルアミン(MTDATA)、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸-3,4,9,10-二無水物(PTCDA)、N,N’-ビス-(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(NPB)]を包含して良い。
【0099】
CPx(式中xは3または4である)およびオルガノシラン(例えば、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(HMDS)またはα-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)は、ITO上での使用に適した不動態層のさらなる例であり、本発明の方法に用いられるITOに付着させることができる。
【0100】
好ましくは、有機材料の複数の層(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4または少なくとも5層)を、OLEDスクリーン製造中に本発明の方法を用いて堆積させる。
【0101】
また、本発明は、所望の経路で基板表面に反応試薬を誘導する方法を提供し、該方法では、本発明のデバイスを用いて酸化還元生成物を所望の経路に沿って作り出し、酸化還元生成物が作り出される領域内に試薬を移動(例えば拡散または成長)させる。この方法では、基板上に事実上の流路を作ることなく、複雑なフローパターン(flow pattern)が形成される。
【0102】
本発明のデバイスでは、多数の基板(multiple substrates)を同時に用いることができる。例えば、ガラススライドを本発明の大きなデバイス上にタイル状に置くことができる。典型的には、デバイスの第二電極は、各々の多数の基板のそれぞれ上に同一パターンを作り出す配列で、スイッチをオン-オフすることができる。この方法では、同一にパターン形成された多数の基板を単一プロセスで作り出すことができ、それによって、生成物製造のスループットおよび効率が増す。
【0103】
ポリヌクレオチドアレーを製造するための好ましい方法は、
(1)本発明のデバイスに向かい合い、かつ、電解質と接触しており、その表面上に保護基を持つ基板を提供する工程、
(2)基板から保護基のセットを取り除くことによって脱保護された基を露出させる第二酸化還元生成物を作り出すように、第二電極の第一セットをスイッチングする工程、
(3)脱保護基のセットに、保護基を包含するヌクレオチドをカップリングする工程、および、
(4)所望のアレーが生成されるまで、工程(2)および(3)の連続を繰り返す工程
を包含する。繰り返しの中で、工程(3)の生成物は、工程(2)の基板になる。
【0104】
最初に工程(1)に提供された基板は、すでにヌクレオチドを結合させられていても良い。
工程(3)では、単一のヌクレオチドを用いるのと同様に、ジヌクレオチド、トリヌクレオチド等もまた、所望の配列を作り上げるために用いることができる。このように、工程(3)は、n個(nは1、2、3、4または5である)の塩基を有するオリゴヌクレオチドの使用を含み得る。工程(3)で用いられる典型的なヌクレオチド試薬は、ホスホロアミダイトである。
【0105】
この方法をポリヌクレオチドの合成に用いる場合、第二酸化還元生成物は好ましくはプロトンであり、保護基は、好ましくは、フラニルヒドロキシル基を保護するトリチルまたはジメトキシトリチル(DMT)基のような酸不安定性保護基である。当業者は、この方法が、WO93/22480に記載のように、DNAアレーのコンビナトリアル合成に特に適していることを認識するであろう。
【0106】
本発明に従って合成することのできるポリヌクレオチドには、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、ならびに修飾骨格(例えば、ホスホロチオエート、2’-O-メチル化、ペプチド核酸等)を含むポリヌクレオチドが含まれる。それらは、天然の塩基(A、C、G、T/U)またはその他の塩基(例えば、デオキシイノシン、デオキシウリジン、ハロゲン化塩基等)を含んで良い。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であって良いが、好ましくは、一本鎖である。ポリヌクレオチドを(例えば蛍光標識、ビオチン等で)標識しても良い。
【0107】
特に、本発明は、実質上、平行線のポリヌクレオチドの形成に有用である。このような平行線のポリヌクレオチドを、その表面上にチャンネル(例えば微小流体チャンネル)を包含する基板表面上に配置することもできる。ポリヌクレオチドラインは実質上チャンネルに直交して良い。
【0108】
また、本発明の方法を、ポリペプチドの合成に用いることもできる。例えば、ペプチドは、アノードで生成したプロトンを用いて窒素原子からt-ブチルオキシカルボニル(Boc)保護基を順次除去することによって合成することができる。その他のポリマー合成は、当業者には容易に理解されよう。
【0109】
合成後、ポリヌクレオチドを材料表面から切断することもできる。好ましくは、本発明のデバイス自体を用いて、例えば、第二電極の電位を変えることによって、ポリヌクレオチドを切断することができる。このことは、あるポリヌクレオチドのみを任意の一回切断することを望む場合に、特に有用となり得る。その場合、特定の第二電極を用いて、材料表面からポリヌクレオチドの特定領域を切断することができる。
【0110】
一般的事項
用語「含む」は、「含有する」ならびに「からなる」を意味し、例えば、Xを「含む」組成物は、排他的にXからなり得るか、又は、付加物を含み得る(例えばX+Y)。
【0111】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
用語「実質的に」は、「完全に」を除外しない、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを全く含んでいなくても良い。必要な場合、用語「実質的に」は、本発明の定義から省略しても良い。
【0112】
図1−図11はいずれも、第二電極を個別にアドレス指定する必要のある電気的接続を示していない。
【実施例】
【0113】
本発明の実施例
電極の配置
図1から6は、基板(図示せず)の表面を電気化学的に修飾するためのデバイス(10)の様々な実施態様を示している。図1では、第一のデバイス(10)の実施態様は、個別にアドレス指定できる第二電極(14)のアレーを有する。第二電極(14)は円形であり、支持体(12)上にマウントされている。共通第一電極(16)は、格子形状で支持体上に配置されている。共通第一電極(16)はセル(18、20)を画定する。大多数のセル(18)は単一の第二電極を含んでいる。少数のセル(20)は第二電極を含んでいない。
【0114】
図2では、第二のデバイス(110)の実施態様の一部分を示している。デバイス(116)は、個別にアドレス指定できる第二電極(114)のアレーを有する。第二電極(114)は、支持体(112)上にマウントされている。共通第一電極(116)は、支持体上にモザイク模様で配置されている。共通第一電極(116)は、セル(118)を画定する。図2に示したデバイス(110)の一部分では、単一の第二電極(114)が個々のセル(118)内に位置している。
【0115】
第三のデバイス(210)の実施態様では、その一部分を図3に示しているが、個別にアドレス指定できる第二電極(214)のアレーが存在する。第二電極(214)は、正方形の形を有し、支持体(212)上にマウントされている。共通第一電極(216)は、支持体上に網目様模様で配置されている。共通第一電極(215)はセルを画定する。図3に示すデバイス(210)の一部分では、単一の第二電極(214)が個々のセル(218)内に位置している。
【0116】
第四のデバイス(310)の実施態様では、その一部を図4に示しているが、個別にアドレス指定できる第二電極(314)のアレーが存在する。第二電極(314)は、支持体(312)上にマウントされている。共通第一電極(316)は、不規則模様で支持体上に配置されている。共通第一電極(316)はセル(318)を画定する。図4に示したデバイス(318)の一部分では、単一の第二電極(314)が個々のセル(318)内に位置している。共通第一電極(316)は、多数のセルが共通第一電極(316)の一部によって完全に取り囲まれないように、配置されている。セル(318)を画定する共通第一電極(316)内には、小さな隙間(320)が存在し得る。
【0117】
第五のデバイス(410)の実施態様では、その一部分を図5に示すが、支持体(412)上にマウントされた、個別にアドレス指定できる第二電極(414)のアレーが存在する。共通第一電極(416)は、ハチの巣模様で支持体上に配置されている。共通第一電極(416)はセル(418)を画定している。図5に示したデバイス(410)の一部では、単一の第二電極(414)が個々のセル(418)内に位置している。
【0118】
第六のデバイス(510)の実施態様では、その一部を図6に示しているが、支持体(512)上にマウントされた個別にアドレス指定できる第二電極(514)のアレーが存在する。共通第一電極(516)は、直線格子模様で支持体上に配置され、セル(518)を画定している。図6に示すデバイス(510)の一部分では、2つの第二電極(514)が個々のセル(518)内に位置している。
【0119】
図1中の線A−Aの断面図の一部を図7に示す。図7では、図1のデバイスの第一実施態様が、電解質(22)と接触していることを示しており、デバイスはガラス基板(40)に向かい合うように配置されている。ガラス基板(40)は、デバイス(10)から一定の距離を保っているが、また、電解質(22)とも接触している。セル(18)の端(32)は、それらが電解質を突き抜けているため、ダッシュラインで示されている。保護基(28)を有するポリマー種(26)は、リンカー基(30)によって基板(40)に付着している。電解質(22)は、特定の第二電極(40)の電位が変化する時に、第二電極(14)が、特定の第二電極(14)に向かい合う基板(40)から保護基(28)を除去することができる第二酸化還元生成物(34)を作り出すことのできるような、電解質である。共通第一電極(16)は、第二酸化還元生成物(34)をクエンチすることができる第一酸化還元生成物を作り出す。この方法では、第二電極(14)によって作り出された第二酸化還元生成物(34)を、第二電極が位置しているセル(18)内に実質上閉じこめ、それによって第二酸化還元生成物が隣接するセルに向かい合う基板(40)領域内の保護基(28)を除去するのを妨げることによって、パターン形成された基板の分解能を増加させる。
【0120】
図8では、図1のデバイスの第一実施態様が、電解質(822)と接触していることを、再度示している。しかしながら、図8では、デバイスを、第二電極(814)自体が電気化学的に生成した酸化還元生成物によって修飾されている代替配置において、用いている。セル(818)の端(832)は、電解質を突き抜けているため、ダッシュラインで示されている。保護基 (828)を有するポリマー種(826)を、リンカー基(830)によって個別にアドレス指定できる第二電極(814)に付着させる。電解質(822)は、特定の第二電極(814)の電位を変化させる時、第二電極(814)が、特定の第二電極(814)にリンカー基(830)によって付着しているポリマー種(826)から保護基(828)を除去することができる第二酸化還元生成物(834)を作り出すことのできるような、電解質である。共通第一電極(816)は、第二酸化還元生成物(834)をクエンチすることができる第一酸化還元生成物(836)を作り出す。この方法では、第二電極(814)によって作り出された第二酸化還元生成物(834)を、第二電極が位置しているセル(818)に実質上閉じこめ、それによって第二酸化還元生成物が隣接する第二電極(814)に付着したポリマー種の保護基(828)を除去するのを妨げることによって、パターン形成された第二電極(814)の分解能を増加させている。
【0121】
図6に示したデバイス(510)を用いて基板を電気化学的に修飾する場合、共通第一電極(516)の配置は、セル(518)内の対をなす第二電極(514)の間に第二酸化還元生成物の閉じこめないような配置であるため、方向(a)での分解能は、方向(b)での分解能の2倍の高さである。
【0122】
ひとたび保護基(28)が基板(24)の所望の領域から除去されると、電解質(22)は、デバイス(10)との接触のために洗い出され、保護されたモノマーを含む溶液が導入される。モノマーは、保護基(28)が除去された基板の部分と結合することができ、それによって、基板の特定領域内でのポリマーの成長が可能になる。
【0123】
図9および10に示すように、デバイス(610)のさらなる実施態様は、個別にアドレス指定できる第二電極(614)のアレーを有する。個々の第二電極(614)は、絶縁材の支持体(612)上にマウントされている。支持体(612)は、金属シートの形の共通第一電極(616)上にマウントされている。共通第一電極(616)は、絶縁材の第二支持体(650)上にマウントされている。第二電極のための支持体(612)は、隣接する第二電極の支持体(612)同士の間に隙間(652)が存在するように、共通第一電極(616)上に配置されている。隙間(652)は、電解質(622)と接触している共通第一電極(616)の部分を露わにしている。隙間(652)によって露わになった共通第一電極(616)の部分は、セル(618)を画定している。セル(618)の端(632)は、それらが電解質を突き抜けているため、ダッシュラインで示している。
【0124】
図11に示した実施態様では、図1に示したようなデバイスが、個別にアドレス指定できる第二電極(714)および共通第一電極(716)を円筒の中心に向かって内側方向に面した支持体(712)上にマウントしている、円筒形のデバイス内に形成されている。円筒形の基板(724)は、第二電極(714)が基板(724)に面することができるように、円筒形デバイス(710)にフィットさせることができる。電解質は、(示していないが、)同心円の円筒(710と724)の間の隙間を満たしている。
【0125】
LCDスクリーンベースのデバイス
本発明のデバイスは、ガラス支持体上にマウントされたアノードアレーをLCDディスプレー製造プラントから得ることによって作られる。アノードアレーは、個々のアノードが個別にアドレス指定できるような、回路構成を有する。アノードアレーは、RGBカラーラップトップコンピュタースクリーン用であり、方形のアレー内に配置された4800×1200のアノードを有する。4800のアノードが存在する方向のアノードの寸法は、1200のアノードが存在する方向の寸法の1/3である。
【0126】
直線格子状のイリジウムを、ガラス支持体上、アレー内の個々のアノードの間に、堆積させる。イリジウム格子は、共通カソードを形成する。
次に、ガラス支持体をフローセル内に取り込み、その中に、ベンゾキノン/ヒドロキノン電解質を導入する。デバイスの配置は、アノードおよび共通カソードが電解質と接触しているような配置である。
【0127】
トリチルリンカー分子で誘導体化されたガラススライド基板は、ベンゾキノン/ヒドロキノン電解質と接触しており、アノードアレーおよび共通カソードに向かい合うようなフローセル内に位置している。
【0128】
アレー内で対角線交差を形成している個々のアノードの電位を、アノードが水素イオンを生成し、共通カソードがベンゾキノンラジカルアニオンを生成するように変化させる。
電解質はフローセルを通して洗浄され、等容量の無水酢酸およびジメチルアミノピリジンの水溶液で置き換えられ、水素イオンにさらされた基板領域をさらなる化学修飾に対して反応しないようにする。残っているトリチル基はフローセルを通してジクロロ酢酸で洗浄することにより取り除かれる。Cy5ホスホロアミダイトをフローセルを通して洗浄する。基板をフローセルから取り除き、空気中で乾燥させる。
【0129】
Leica TCS NT 共焦点顕微鏡を用いた基板検査では、明確な十文字様の像を除く全領域で、蛍光を示す。このことは、Cy5ホスホロアミダイトが、水素イオンを生成していないアノードに直接向かい合う基板の領域、即ち水素イオンによって脱トリチル化されていない基板のそのような領域にのみ結合していることを示している。
【0130】
塩濃度
第一電極から80μm、160μm、240μmおよび320μm離れた一連の第二電極を有する、デバイスを製造した。電極を25mMヒドロキノンおよび25mMベンゾキノンを包含する電解質溶液内に浸した。第一実験では、不活性な伝導性塩である、25mMテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(TBAHFP) を電解質に加えた。第二実験では、TBAHEPを電解溶液に加えなかった。
【0131】
電極は、ガラス基板に向かい合うように位置しており、該ガラス基板はグリシドキシプロピルトリメトキシシランで誘導体化されており、その上に、ポリ(エチレングリコール)リンカー、次に、DMT−含有ホスホロアミダイトを、Anal.Chem.,2002,74,1590−1596に記載の方法で、付着させた。1.33Vの電位差を、15秒間、第一電極を基準にして各々の第二電極にかけた。第二酸化還元生成物と基板との相互作用の範囲を、Anal.Chem.,2002,74,1590−1596に記載の蛍光検出法を用いて調べた。
【0132】
共焦点顕微鏡は、25mM TBAHEPを含む電解質ついて、基板の修飾がもっとも遠くの第二電極によって画定される領域全体に起こっていることを示した。しかしながら、TBAHEPを加えなかった電解質では、基板の修飾は、最も近い第二電極によって画定される領域に限られていた。このことは、大きい共通電極を有している場合でさえ、高分解能を有する基板の修飾のために、高抵抗電解質溶液中での本発明のデバイスが適合することを証明している。
【0133】
本発明は、ほんの一部の例によって記載されているにすぎないこと、および、本発明の範囲および精神を残しつつ修正を行ってよいことが、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明のデバイスの実施態様を示している。
【図2】本発明のデバイスの異なる実施態様を示している。
【図3】本発明のデバイスの異なる実施態様を示している。
【図4】本発明のデバイスの異なる実施態様を示している。
【図5】本発明のデバイスの異なる実施態様を示している。
【図6】本発明のデバイスの異なる実施態様を示している。
【図7】デバイスに付着した基板に向かい合う図1のデバイスの断面図を示している。
【図8】基板がデバイスから離れている図1のデバイスの断面図を示している。
【図9】本発明のデバイスのさらなる実施態様の断面図を示している。
【図10】図9と同じ実施態様の平面図を示している。
【図11】本発明のデバイスのさらなる実施態様の、基板に向かい合う斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を電気化学的に処理する方法であって、
(a)基板と接触している電解質を提供する工程、
(b)基板に向かい合い、かつ電解質と接触しているデバイスであって、
(i)複数のセルを画定するように配置された共通第一電極、および
(ii)個別にアドレス指定できる複数の第二電極
を有し、複数のセルが、個別にアドレス指定できる第二電極を収容している、該デバイスを提供する工程、並びに、
(c)第二電極のうちの少なくとも1個の、共通第一電極に対する電位を変化させ、その結果、(i)共通第一電極が第一酸化還元生成物を生成し、かつ、(ii)第二電極のうちの少なくとも1個が、基板の該第二電極に向かい合う領域を修飾することのできる第二酸化還元生成物を生成する工程
を含み、前記電解質は、第二酸化還元生成物が第一酸化還元生成物によってクエンチできるような電解質であることを特徴とする、該方法。
【請求項2】
第一酸化還元生成物と第二酸化還元生成物の間のクエンチング反応が電解質中にはじめから含まれる一種以上の物質を再生成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第二酸化還元生成物が、酸、塩基、ラジカルまたはハロゲンである、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
処理される基板が、酸-不安定性保護基または塩基-不安定性保護基を有する物質を包含する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第一酸化還元生成物がアニオンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
アニオンが有機ラジカルアニオンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
電解質が、(a)IおよびS462−、(b)ケトンおよび対応するアルコール、(c)2-プロパノンおよびイソ-プロパノール、(d)ベンゾフェノンおよびベンズヒドロール、または(e)ベンゾキノンおよびヒドロキノンを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
電解質がアセトニトリル中のベンゾキノンとヒドロキノンの混合物を含む、第二酸化還元生成物が水素イオンである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
電解質が25ミリモルより少ない不活性な導電性の塩を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
基板が、電極から離れ且つ電極に向かい合う材料の表面である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
基板材料が不浸透性である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
基板材料が、ガラス、プラスチック、金属、半導体、ケイ素酸化物またはゲルである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
基板を電気化学的に修飾するためのデバイスであって、
(i)その中に複数のセルを画定するように配置された共通第一電極、および
(ii)個別にアドレス指定できる複数の第二電極
を有し、複数のセルは、個別にアドレス指定できる第二電極を収容しており、
共通第一電極および複数の第二電極は、使用中、電解質と接触しており、さらに、
電解質は、共通第一電極が第一酸化還元生成物を生成することができ、第二電極が第二酸化還元生成物を生成することができ、さらに第二酸化還元生成物が第一酸化還元生成物によってクエンチされ得るようなものである、該デバイス。
【請求項14】
共通第一電極がカソードであり、第二電極がアノードである、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
共通第一電極は単一のアドレス指定が可能であり、その結果、該第一電極の電位を、単一の接続を行うことによって変化させることができる、請求項13又は14に記載のデバイス。
【請求項16】
共通第一電極が、スイッチング可能でもアドレス指定可能でもないバスラインである、請求項13又は14のいずれかに記載のデバイス。
【請求項17】
共通第一電極が、格子、網目、ハチの巣状、一連の交差する円形またはその他のモザイク状形状のような、実質的に規則的な模様である幾何学的形状を有する、請求項13〜16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
共通第一電極の配列が少なくともn×106のセルであり、式中nは0.5またはそれより大きい、請求項13〜17のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
共通第一電極の配列が、セルの中心と該セルの直近の少なくとも1つのセルの中心との間の距離が0.5mmより小さいような配列である、請求項13〜18のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
第二電極を、CMOSスイッチング回路によって、またはトランジスタベース回路によって、電極からデバイス周辺上のボンドパッドへの直接接続を用いてアドレス指定する、請求項13〜19のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項21】
第二電極をTFT回路を用いてアドレス指定する、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
第二電極の中心と少なくとも1つのそれに隣接する第二電極の中心との間の距離が0.5mmより小さい、請求項13〜21のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項23】
少なくともn×106の第二電極を含み、nは0.5以上である、請求項13〜22のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項24】
第二電極数に対するセル数の比率が1より小さい、請求項13〜23のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項25】
第二電極数に対するセル数の比率が1より大きい、請求項に13〜23のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項26】
第二電極数に対するセル数の比率が実質的に1である、請求項に13〜23のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項27】
共通第一電極および第二電極が、インジウムスズ酸化物、イリジウム、白金、パラジウム、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、チタニウム、タングステン、アルミニウムおよびこれらの金属の合金から独立的に選択された材料から作られている、請求項13〜26のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項28】
共通第一電極および第二電極が、もう一つの材料の上にイリジウムコーティングを含む、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
第二電極が位置する支持体および第二電極と接続する回路構成が、液晶ディスプレーデバイスに見られるようなものである、請求項13〜28のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項30】
フローセル配置内に組み込まれている、請求項13〜29のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項31】
特定のパターンでの基板の脱保護に用いるための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法または請求項13〜30のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項32】
基板の特定領域から保護基を取り除いて、脱保護基のパターンを残し、次に、脱保護基を反応物質にさらして、反応基と脱保護基を反応させるように用いるための、請求項31に記載の方法またはデバイス。
【請求項33】
コンビナトリアル合成に用いるための、請求項31に記載の方法またはデバイス。
【請求項34】
表面に結合した小有機化合物のライブラリーの合成に用いるための、請求項31に記載の方法またはデバイス。
【請求項35】
ポリマーの合成に用いるための、請求項31に記載の方法またはデバイス。
【請求項36】
ポリヌクレオチド、多糖およびポリペプチドの合成に用いるための、請求項34に記載の方法またはデバイス。
【請求項37】
基板をエッチングするための、請求項31に記載の方法またはデバイス。
【請求項38】
有機LED材料の製造に用いるための、請求項31に記載の方法またはデバイス。
【請求項39】
ポリヌクレオチドアレーを製造するための方法であって、
(1)表面上に保護基を有し、請求項13から30のいずれか一項に記載のデバイスに向かい合い且つ電解質と接触している基板を提供する工程、
(2)基板から保護基のセットを除去することによって脱保護基を露出した第二酸化還元生成物を生成させるために第二電極の第一セットをスイッチングする工程、
(3)保護基を包含するヌクレオチドを脱保護基のセットとカップリングし、および
(4)所望のアレーが作り出されるまで、工程(2)および(3)を順番に繰り返す工程
を含む、該方法。
【請求項40】
第二酸化還元生成物がプロトンであり、保護基がフラニルヒドロキシル基を保護する酸-不安定性保護基である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
基板表面に沿って所望の経路に試薬を導く方法であって、請求項13〜30のいずれか一項に記載のデバイスを用いて、所望の経路に沿って酸化還元生成物を作り出し、酸化還元生成物が作り出される領域に試薬を移動させることを特徴とする、該方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−508137(P2007−508137A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534828(P2006−534828)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004390
【国際公開番号】WO2005/037425
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(506128466)オックスフォード・ジーン・テクノロジー・アイピー・リミテッド (7)
【Fターム(参考)】