説明

基板上の残留有機物除去方法

【課題】作業時には安全に作業が行え、その処理が容易で、環境問題を起こさず、安価で効率的な残留有機物の処理方法
【解決手段】大気圧付近の圧力下又は準常圧下で、少なくともN2ガス、O2ガス、H2ガス、水蒸気、クリーンエアーのいずれか一種により構成される混合ガスをプラズマ処理し、加熱した基板に前記Oラジカル、Hラジカル、OHラジカル又は前記Nラジカルを接触させレジスト表面に形成された変質層を除去する変質層除去工程と、オゾン水と過熱水蒸気とを混合してなるオゾン溶液又はオゾン水のみをレジストを含む有機物上に滴下し変質層下のレジスト未変質層を除去する未変質層除去工程とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来、半導体ウエハの製造工程は、まず、基板表面に、化学的気相蒸着法(CVD法)、あるいはスパッタリング法などで薄膜(酸化膜)を形成し、その薄膜上にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像処理してレジストのパターンを形成し、そのレジストパターンを保護膜として、不用な薄膜をエッチングした後、イオン注入を行っていた。
【0002】
そして、そのエッチングやイオン注入が終わると、不用となったレジストを除去する必要があり、その除去の方法として、酸(例えば、硫酸)と過酸化物の混合液、あるいは有機溶剤など、種々の薬液でレジストを分解または溶解して除去するのが一般的であった。
【0003】
しかし、高濃度のイオン注入を行なった場合、レジストが変質しレジスト表面に変質層が形成された場合、該変質層を除去するのに薬液のみでは完全に除去できないという問題があった。また、薬液を使用する方法は、使用中は、上記した硫酸などは作業上及び管理上危険性が高く、使用後は、その廃液処理が必要となり環境汚染の問題が懸念されていた。
【0004】
このため、低圧でのプラズマアッシング処理により前記変質層を含むレジストを除去する方法がとられていた。しかし、この低圧でのプラズマアッシング処理は減圧プロセスを含むため、真空排気装置や真空容器が必要となり装置コストが高くなり、また、プラズマ中へ基板が曝されることで、基板へのプラズマダメージを与えることが問題となっていた。
【0005】
また、プラズマアッシング処理だけでは完全にレジスト除去を行なうことができないため、残留レジストを除去するために結局薬液を用いる必要があった。
【0006】
そこで、作業中の安全性や環境保全の観点から、上記問題を有する薬品を使用しない方法として、近年、オゾン(O3)を用いる方法が提案されている。オゾンによるレジストの除去は、オゾンガスやオゾン溶液に、そのレジストなどの残留有機物が付着した基板を曝して、オゾンによって有機物を酸化分解させるものであり、その廃液の処理が容易であり、環境保全や作業中の安全性という要望に十分応えられるものである。
【0007】
しかしながら、このオゾンによる基板表面の残留有機物の除去は、時間がかかる、という作業効率上の問題や、分解途中の有機物が熱重合や架橋反応などによって極度に変質して硬化したものに対しては洗浄作用が小さく、全く除去されない場合もあった。
【0008】
それらの不利な点に対処する発明として、大気圧付近下でのプラズマ照射とスチームあるいはオゾン水等の洗浄液との併用による方法が提案されている(特許文献1)。この方法はプラズマ照射による親水処理後、スチームによる膨潤効果、浮き上がり効果、若しくはオゾン水等の洗浄液による分解効果によりレジスト除去を行う方法である。
【特許文献1】特開2006−49712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、この方法では例えばイオン注入によりレジスト表面に変質層が形成されたレジストを除去する場合、変質層の表面改質が出来ずまたは改質したとしても多大な時間を要し、後の分解が進まず実用的な時間ではレジスト除去ができないため、結局後処理が必要となっていた。
【0010】
そこで、本発明は、上記方法を改良し、作業時には安全に作業が行え、その処理が容易で、環境問題を起こさず、安価で後処理を必要としない効率的な残留有機物の処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、レジスト表面に形成された変質層と該変質層下で変質していないレジスト未変質層などの有機物が表面に残留している基板の残留有機物除去方法において、大気圧付近の圧力下又は準常圧下で、少なくともN2ガス、O2ガス、H2ガス、水蒸気、クリーンエアーのいずれか一種により構成される単体ガス又は混合ガスをプラズマ処理し、該プラズマ処理で生成したNラジカル、Oラジカル、Hラジカル、OHラジカルのいずれかを加熱した基板表面に接触させ前記変質層を除去する変質層除去工程と、オゾン水と過熱水蒸気とを混合してなるオゾン溶液又はオゾン水のみを前記レジスト未変質層に滴下し該レジスト未変質層を除去する未変質層除去工程とを備えることを特徴とする残留有機物除去方法である。
【0012】
また本発明は、上記変質層除去工程において、前記プラズマ及び前記ラジカルが、前記レジスト未変質層に直接照射又は接触しないことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記変質層除去工程において、前記基板の加熱温度を、前記変質層に前記ラジカルによる除去が可能な活性化エネルギーを供与できる温度以上に設定したことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、上記構成の残留有機物除去方法において、前記変質層除去工程にて、前記ラジカルを照射するラジカル照射ノズルが前記基板の板面に沿って相対移動する工程を備え、前記未変質層除去工程にて、オゾン水と過熱水蒸気を独立して供給する一組の供給ノズルにより前記残留有機物の直上でオゾン水と過熱水蒸気を混合し、前記残留有機物上に滴下する工程と、前記供給ノズルが前記基板の保持体との間で、前記基板の板面に沿って相対移動する工程とを備えることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、上記構成の残留有機物除去方法において、前記変質層除去工程と前記未変質層除去工程を2回以上連続で繰り返すことを特徴とする。
【0016】
また本発明は、上記構成の残留有機物除去方法において、2回目以降の前記変質層除去工程及び未変質層除去工程をそれぞれ前回用いた装置と異なる装置で行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の構成によると、変質層除去工程により、従来用いられていたような加熱硫酸など、使用時や保存時に危険性があり環境負荷の大きい薬液や真空排気系を有する複雑で高価な装置を使用せずとも、そのような不利な点のない大気圧付近又は準常圧下でN2ガス、O2ガス、H2ガス、水蒸気、クリーンエアーのいずれか、あるいはこれらの混合ガスをプラズマ処理し生成したラジカルによりレジスト表面に形成された変質層を除去することができる。このとき、ラジカル照射によるレジスト表面に形成された変質層の除去のみを目的とすることで、ラジカル照射処理の時間を短縮し、プラズマやラジカルによる基板へのダメージを極力抑えることができる。
【0018】
また、その後の未変質層除去工程において、変質層除去後の変質していないレジスト未変質層をオゾン水により分解処理することで、レジスト未変質層を効果的に除去することができる。
【0019】
以上、変質層除去工程及び未変質層除去工程を組み合わせることにより、変質層が形成されたレジストを効率よく短時間で除去することができる。
【0020】
また、本発明の第2の構成によると、プラズマ及び励起したラジカルが、レジスト未変質層に直接照射されないため、基板へのダメージをより抑えることが可能となる。
【0021】
また、本発明の第3の構成によると、変質層除去工程において、変質層にラジカルによる除去が可能な活性化エネルギーを供与できる温度以上に基板を過熱してラジカルを接触させることにより、たとえ、加熱によりレジストが更に変質した場合でも、変質層の除去作用がこれを上回り効率よく変質層を除去することができる。
【0022】
また、本発明の第4の構成によると、変質層除去工程と未変質層除去工程において、基板を載置する保持体とラジカル照射ノズル及びオゾン水と加熱水蒸気を独立して混合滴下する供給ノズルを相対移動させ、基板上の残留有機物にラジカル照射及びオゾン溶液又はオゾン水を滴下することで、残留有機物を基板全面で除去することが可能となる。
【0023】
また、本発明の第5の構成によると、変質層除去工程において、ポッピングが発生し局所的に厚いレジスト層が形成された場合等、一度の変質層除去工程及び未変質層除去工程だけでは完全にレジストを除去できない場合がある。このとき、変質層除去工程及び未変質層除去工程をもう一度繰り返すことにより、除去できなかったレジストを完全に除去することが可能となる。
【0024】
また、本発明の第6の構成によると前回の変質層除去工程及び未変質層除去工程と異なる装置で変質層除去工程又は未変質層除去工程を繰り返すことで、前回行なったレジスト除去工程で発生したガスやレジストのかすの再付着を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本方法の実施の形態を図面を参照して説明する。図1はレジスト除去において用いるレジスト除去装置の模式的な略断面図であり、図2は、本発明の実施形態にかかるレジスト除去方法を適用した工程別素子断面図である。ここで、図2(a)は変質層除去工程を経る前の基板1、(b)はその後、変質層除去工程を経た場合の基板1、(c)はその後、未変質層除去工程を経た場合の基板1、(d)はその後、残渣除去工程を経た場合の基板1が示され、(e)は、変質層除去工程でポッピング現象が発生した場合の基板1、(f)はその後、未変質層除去工程を経た場合の基板1、(g)はその後、残渣処理工程を経た場合の基板1表面が示されている。
【0026】
本発明に係る具体的実施例としては、基板を加熱しつつ大気圧付近の圧力下のN2ガス、O2ガス、H2ガス、水蒸気、クリーンエアーのいずれか、あるいはこれらの混合ガスをプラズマ励起し、生成したラジカルをレジスト表面の変質層に照射し変質層除去を行う変質層除去工程(図1(a)参照)、オゾン水と過熱水蒸気の供給ノズルから供給される過熱水蒸気とオゾン水とを変質層除去後の前記残留有機物の直上で混合し、滴下することで変質層除去後のレジスト未変質層の除去を行う未変質層除去工程(図1(b)参照)、前記変質層除去工程と同様の構成により、前記未変質層除去工程後のレジスト残渣除去を行う残渣除去工程(図1(c)参照)、前記未変質層除去工程と同様の構成により、最終洗浄を行う仕上げ洗浄工程(図1(d)参照)を組み合わせたものが考えられる。
【0027】
変質層除去工程は、チャンバ内上部に設けられたガス供給ユニット、該ガス供給ユニットから供給されたN2ガス、O2ガス、H2ガス、水蒸気をラジカル化させるプラズマ発生部4、及びチャンバ内下部に設けられた基板保持体2、基板保持体2上の基板1の温度を調整する基板温度制御ユニット3、反応後の処理ガスをチャンバ外に排出する排気口7を備えた変質層除去装置10により行なわれる。このとき、チャンバ内は大気圧付近又は準常圧の内圧で変質層除去が行なわれるため、装置の簡易化が図られている。
【0028】
ここで、プラズマ発生部4は、例えば高周波プラズマ又は、マイクロ波プラズマを高密度で発生するプラズマ発生装置により構成されている。なお、高周波プラズマ又は、マイクロ波プラズマ以外にもECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマ、ICP(Inductively Coupled Plasma)プラズマ、ヘリコン波プラズマを発生するプラズマ発生装置で構成することも可能である。
【0029】
具体的な変質層除去方法は、まず基板保持体2上に基板1を載置し、原料ガスとしてのN2ガス、O2ガス、H2ガス、水蒸気の混合ガスをガス供給ユニットからプラズマ発生部4に供給し、該プラズマ発生部4でこれらのガスをプラズマ励起させNラジカル、Oラジカル、Hラジカル、OHラジカル等の活性種を多量に生成する。次に、これら活性種を基板表面に接触させ、図2(b)に示すように基板表面の変質層を除去する。なお、この変質層除去後の処理ガスは排気口7からチャンバ外に排出される。
【0030】
また、基板温度制御ユニット3により基板保持体2を加熱し、その伝導熱で基板の温度を変質層除去に必要な活性化エネルギーが得られる程度の温度に調節することができる。具体的には本実験に用いたレジストとイオン注入条件では200℃前後が望ましく、これにより、変質層の除去時間を安定的に短縮することが可能となる。なお、この基板の加熱により、レジストが新たに変質することがあるが、それ以上に変質層の除去効率が高まるため、問題にならない。
【0031】
ここで、上記変質層とはイオン注入処理によってレジストの表面が硬化した層をいい、未変質層とは変質層下でイオン注入処理前と実質的に変わらない状態のレジスト層のことをいう。また、本変質層除去工程においては、レジスト表面の変質層のみ除去することを目的としているため、プラズマ及びラジカルが未変質層に直接照射せず、ラジカルの照射時間を短縮することができる。これにより、未変質層下部と基板表面にラジカルが接触することを避け、基板へのダメージを極力抑えることができる。また、変質層以外の部分は未変質層除去工程により除去する。
【0032】
未変質層除去工程は、チャンバ内の上部に設けられたオゾン水を供給するオゾン水供給ノズル5、及び過熱水蒸気を供給する水蒸気供給ノズル6、チャンバ下部に設けられた基板保持体2、反応後の処理ガス、処理液をチャンバ外に排出する排気口7及び排水口8からなる未変質層除去装置20により行なわれる。ここで、オゾン水供給ノズル5と加熱水蒸気供給ノズル6は開口部から放出されるオゾン水及び水蒸気が基板直上で混合され基板上のレジストに滴下するよう配設されている。
【0033】
ここで、基板保持体2として、回転テーブル、XYテーブル等の移動機構を用いて基板1を移動させ、残留有機物の付着している領域全てに対しオゾン溶液の滴下を行い基板1の全面にて残留レジスト除去処理を施すことが可能である。また、オゾン水供給ノズル5と水蒸気供給ノズル6に可動機構を設け、残留有機物に対して局所的にオゾン溶液を滴下し除去することも可能である。
【0034】
また、オゾン溶液は硫酸などの酸性溶液や有機溶剤に比べてクリーンな洗浄が可能であり、環境及び人体に悪影響を与えることがない。
【0035】
具体的な未変質層除去方法としては、オゾン水供給ノズル5及び過熱水蒸気供給ノズル6からオゾン水及び加熱水蒸気を独立して供給し、レジスト領域の直上でオゾン水及び過熱水蒸気を混合させ該レジスト形成領域に滴下する。このとき、滴下したオゾン溶液により変質層下のレジスト未変質層が分解除去される(図2(c)参照)。なお、オゾン水を加熱水蒸気と混合させることなくオゾン水のみをレジスト領域に滴下しレジストを除去することも可能だが、分解作用は低下する。
【0036】
また、通常、オゾン水と加熱水蒸気を混合したオゾン溶液でもレジストの分解作用は低く、レジストが硬化した変質層を分解除去することは困難であるが、上記変質層除去工程において変質層が除去されているため、オゾン溶液で変質層以外の残留有機物を分解除去することが可能となっている。これにより、上記変質層除去工程とオゾン水による未変質層除去工程を組み合わせることで、変質層を含むレジストの除去を従来の方法より基板へのダメージを低減しながら短時間で行なうことができる。
【0037】
また、変質層除去工程において、レジスト層の温度が上昇し、未変質層から発生したガスにより、変質層が破壊され未変質層が外部に吹き出し基板上に付着するポッピング現象が発生した場合、変質層上にレジストポッピング層が付着し(図2(e)参照)、その後の未変質層除去工程だけでは、残渣した変質層を完全に分解除去することができないことがある(図2(f)参照)。そこで、残渣除去工程によりもう一度、該変質層を取り除きレジストの除去性能をより高めることができる。
【0038】
ここで、残渣除去工程は、上記変質層除去工程で用いた変質層除去装置10と同じ構成の装置を用い、ラジカルを照射し残渣したレジストを除去する。また仕上げ洗浄工程では、上記未変質層除去工程で用いた未変質層除去装置20と同じ構成の装置を用いオゾン溶液を滴下し基板の仕上げ洗浄を行なう。
【0039】
また、残渣除去工程は変質層除去工程と同構造であるが、変質層除去工程は処理中に発生するガスの再付着物やレジストかすなどの異物が多い。このため変質層除去工程と残渣除去工程は別装置を用いることが望ましい。また、残渣除去工程での処理後、最終洗浄として仕上げ洗浄工程でのWet洗浄を行なうことがさらに望ましい。
【0040】
以上各工程を経て、レジスト除去を行うことにより、レジスト残渣の発生を、高い再現性の下に安定的に無くすことができる。なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。以下、実施例において、本発明のレジスト除去方法の有効性について具体的に説明する。
【0041】
[実施例]
まず、変質層除去装置内のステージ上に、ドーズ量5.0×1015ions/cm2、加速エネルギー50keVで31+イオン注入し、レジスト表面に変質層が形成されたシリコン基板を載置し、基板温度制御ユニットを用いて基板の温度が200℃になるよう設定した。次いで、ガス供給ユニットよりN2ガス、O2ガス、H2ガス、水蒸気、の混合ガスを100L/分の流量でプラズマ発生部に導入し、このチャンバ内を大気圧近傍の圧力に保持した状態で、プラズマ発生部により20〜40kHzの高周波を導入し、プラズマを発生させ、励起したラジカルによりレジストの変質層の除去を行った。
【0042】
このとき、プラズマを発生させた時間を処理時間とし、上記条件において、処理時間30分でレジスト除去処理を行なったシリコン基板をサンプル1〜3とした。また、上記条件と同様の条件で、処理時間60分でレジスト除去処理を行なった基板をサンプル4、基板温度を150℃に設定し、処理時間30分でレジスト除去処理を行なった基板をサンプル5、基板を加熱せず、室温(25℃)、処理時間30分でレジスト除去処理を行なった基板をサンプル6とし、変質層除去工程でレジスト除去処理を行なわなかった基板をサンプル7とした。
【0043】
次に、未変質層除去装置内のステージに上記変質層除去工程を経たシリコン基板を載置し、温度50℃、オゾン濃度130ppmのオゾン水を基板表面に滴下した。このとき、オゾン溶液を滴下した後、オゾン溶液を洗浄除去するまでの時間をオゾン処理時間とし、上記未変質層除去工程を経たサンプル1、2、5、6にオゾン処理時間10分で未変質層除去処理をおこない、サンプル7についてオゾン処理時間60分の未変質層除去処理をおこなった。また、サンプル3、4については未変質除去処理を行なわなかった。
【0044】
次に上記変質層除去工程で用いた装置と同等の構成からなる変質層除去装置を用いて、基板を200℃に加熱し、処理時間10分で上記サンプル1に係る基板の残渣除去処理を行なった。また、上記サンプル5に係る基板は150℃に加熱し、処理時間10分の残渣除去処理を行い、上記サンプル6に係る基板においては、基板を加熱せず、室温(25℃)で、処理時間10分で残渣除去処理を行なった。
【0045】
以上、サンプル1〜7に係る基板の変質層除去工程、未変質層除去工程、残渣除去工程における基板温度、処理時間及びオゾン処理時間を図3の表にまとめた。
【0046】
次にレジスト除去を行ったサンプルについて電子顕微鏡を用いてレジストの残渣を観察した。このとき、サンプル1の表面拡大写真は図4(a)であり、サンプル2の表面拡大写真は図4(b)、サンプル4の表面拡大写真は図4(c)、サンプル5の表面拡大写真は図4(d)、サンプル7の表面拡大写真は図4(e)である。
【0047】
以上、サンプル1〜7のレジスト除去後の拡大写真のうちサンプル1におけるレジスト除去工程を経た基板のみレジストの残渣が確認されなかった。また、サンプル2に係る基板ではポッピングによりはみだしたレジストの残渣が確認された(図4(b)、実線で囲まれた領域参照)。このことから、レジストを完全に除去するためには本発明に係る残渣除去工程を経ることがより効果的であることがわかった。なお、本実施例に使用したプラズマ発生部及びオゾン水噴射部の改善により更に処理時間の短縮は可能と考えられる。
【0048】
また、図4(c)のサンプル4に係る基板表面にレジストの大半が除去されず残っていることが確認された。このことから、基板温度を200℃に設定してラジカル照射を行なっても未変質層の除去には時間がかかり、処理時間を60分に設定しても変質層除去工程のみではレジスト除去の実効性に乏しいことがわかった。
【0049】
また、図4(d)のサンプル5に係る基板表面よりサンプル6に係る基板表面(不図示)に多くのレジスト残渣が確認された。このことから、プラズマにより励起されたラジカルにより行なうレジスト除去においては、基板温度を少なくとも150℃以上に確保することで、除去効率がある程度確保されることがわかった。また、図4(a)でレジストが完全に除去されていたことから、基板温度は200℃前後が好適であることもわかった。
【0050】
また、図4(e)よりサンプル7の基板表面には変質層のレジストが確認された。このことから、未変質層除去工程のみで基板を処理した場合、未変質層の除去は可能であるが、変質層に対しては、十分な分解効果がないことがわかった。
【0051】
以上より、レジスト除去を実用的な時間で行うためには、変質層除去工程にて150℃より高温で基板加熱しつつ大気圧付近の圧力下のN2ガス、O2ガス、H2ガス、水蒸気、クリーンエアーのいずれか、あるいはこれらの混合ガスのラジカル照射を行いレジスト表面の変質層除去を行った後、未変質層除去工程でオゾン水により未変質層の除去を行うことで変質層を形成したレジストにおいても効果的にレジストの除去を行なうことができることがわかった。
【0052】
また、変質層除去工程でポッピング現象が発生した場合、飛散した未変質層のレジストが局部的に変質層上に付着し、レジスト厚が厚くなった部分にレジストの残渣が発生し易いため、残渣除去工程にて再度プラズマ処理を行うことでレジストの完全除去が可能となることがわかった。
【技術分野】
【0053】
この発明は、例えば、半導体ウエハ、液晶パネルの基板、あるいは電子回路基板などの製造工程において、それら基板の表面に付着したレジストなどの残留有機物を除去する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】レジスト除去装置の模式的な略断面図
【図2】本発明に係るレジスト除去方法を適用した工程別素子断面図
【図3】本実施例における処理工程を示す表
【図4】(a)本実施例におけるサンプル1のレジスト除去後の表面画像、(b)本実施例におけるサンプル2のレジスト除去後の表面画像、(c)本実施例におけるサンプル4のレジスト除去後の表面画像、(d)本実施例におけるサンプル5のレジスト除去後の表面画像、(e)本実施例におけるサンプル7のレジスト除去後の表面画像
【符号の説明】
【0055】
1 基板
2 基板保持体
3 基板温度制御ユニット
4 プラズマ発生部
5 オゾン水供給ノズル
6 過熱水蒸気供給ノズル
7 排気口
8 排水口
10 変質層除去装置
20 未変質層除去装置
R レジスト未変質層
E レジスト変質層
P レジストポッピング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスト表面に形成された変質層と該変質層下で変質していないレジスト未変質層などの有機物が表面に残留している基板の残留有機物除去方法において、
大気圧付近の圧力下又は準常圧下で、少なくともN2ガス、O2ガス、H2ガス、水蒸気、クリーンエアーのいずれか一種により構成される単体ガス又は混合ガスをプラズマ処理し、該プラズマ処理で生成したNラジカル、Oラジカル、Hラジカル、OHラジカルのいずれかを加熱した基板表面に接触させ前記変質層を除去する変質層除去工程と、
オゾン水と過熱水蒸気とを混合してなるオゾン溶液又はオゾン水のみを前記レジスト未変質層に滴下し該レジスト未変質層を除去する未変質層除去工程とを備えることを特徴とする残留有機物除去方法。
【請求項2】
前記変質層除去工程において、
前記プラズマ及び前記ラジカルが、前記レジスト未変質層に直接照射又は接触しないことを特徴とする請求項1に記載の残留有機物除去方法。
【請求項3】
前記変質層除去工程において、
前記基板の加熱温度を、前記変質層に前記ラジカルによる除去が可能な活性化エネルギーを供与できる温度以上に設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の残留有機物除去方法。
【請求項4】
前記変質層除去工程にて、
前記ラジカルを照射するラジカル照射ノズルが前記基板の板面に沿って相対移動する工程を備え、
前記未変質層除去工程にて、
オゾン水と過熱水蒸気を独立して供給する一組の供給ノズルにより前記残留有機物の直上でオゾン水と過熱水蒸気を混合し、前記残留有機物上に滴下する工程と、
前記供給ノズルが前記基板の保持体との間で、前記基板の板面に沿って相対移動する工程とを備えることを特徴とする請求項1及至請求項3のいずれか1に記載の残留有機物除去方法。
【請求項5】
前記変質層除去工程と前記未変質層除去工程をこの順で少なくとも2回以上繰り返すことを特徴とする請求項1及至請求項4のいずれか1に記載の残留有機物除去方法。
【請求項6】
2回目以降の前記変質層除去工程及び未変質層除去工程をそれぞれ前回用いた装置と異なる装置で行なうことを特徴とする請求項5に記載の残留有機物除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−85231(P2008−85231A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265986(P2006−265986)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(591072569)シャープマニファクチャリングシステム株式会社 (17)
【出願人】(503187073)アクアサイエンス株式会社 (13)
【出願人】(502303164)株式会社イー・スクエア (10)
【Fターム(参考)】