説明

基板材の表面処理用のスプレーユニット

【課題】第1に、基板材の揺れや脱落等が防止されると共に、第2に、基板材の無接触搬送が実現され、第3に、更に処理液の乱流や液溜まりも回避される、基板材の表面処理用のスプレーユニットを提案する。
【解決手段】このスプレーユニット2は、基板材Aの表面処理装置1で使用される。表面処理装置1は、処理液Bの液槽と、液槽内で基板材Aを液中搬送するコンベア4と、基板材Aに処理液Bを液中噴射するスプレーユニット2と、を有している。コンベア4は、基板材Aの回路形成面Dには無接触で左右両側端部Eを上下で挟んで送る端面搬送ローラー10を、備えている。スプレーユニット2は、略平板状をなし、基板材Aの回路形成面Dに対向位置して処理液Bを噴射する多数のスプレーノズル孔12と、スプレーノズル孔12の各列の間および各列の前後に配設された多数の排出孔13と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板材の表面処理用のスプレーユニットに関する。すなわち、電子回路基板の製造工程で使用される、基板材の表面処理装置用のスプレーユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
エレクトロニクス機器に用いられる電子回路基板は、小型軽量化,極薄化,フレキシブル化,そして多層化,半導体パッケージ化、等々の進展がめざましく、形成される電子回路も微細化,高密度化が著しい。
そして、このような電子回路基板の製造工程では、表面処理装置が用いられており、基板材が、薬液や洗浄液等の処理液にて表面処理される。
【0003】
《従来技術》
この種の表面処理装置では、基板材が、コンベアの上下の搬送ローラーにて挟まれて水平搬送されつつ、上下に多数配設されたスプレーノズルから処理液が噴射され、もって、表面処理が順次施されて、電子回路が形成され、電子回路基板が製造されている。
そして従来は、このようなコンベアやスプレーノズルが、雰囲気中・空中に配設されており、基板材は、雰囲気中・空中で噴射された処理液にて表面処理されていたが、最近の極薄化の進展に伴い、基板材が、噴射される処理液のスプレー圧や処理液の重量にて、揺れたり,撓んだりし易く、搬送ローラーから脱落,落下する事故も多発していた。
そこで、これらに対処すべく、コンベアやスプレーノズルを処理液で満たされた液槽中に配設し、もって、極薄で腰がない基板材を液中搬送しつつ、液中噴射される処理液にて表面処理するようにした表面処理装置も開発されており、上述した事故回避が図られていた。
【0004】
《先行技術文献情報》
上述した空中噴射方式の表面処理装置としては、例えば、次の特許文献1中に示されたものが挙げられる。液中噴射方式の表面処理装置としては、例えば、次の特許文献2中に示されたものが挙げられる。
【特許文献1】特開2002−68435号公報
【特許文献2】特開平10−079565号公報
【0005】
《端部搬送方式のコンベアについて》
さて本発明者は、液中噴射方式の表面処理装置について更に研究,開発を進め、平成18年9月28日付で特願2006−264189を、平成18年11月27日付で特願2006−317902を、平成18年11月30日付で特願2006−322810を、それぞれ特許出願した。
これらの特許出願は、表面処理装置のコンベアについて、基板材の回路形成面には無接触で両側端部のみを上下から挟んで送る端部搬送ローラーを、液中配設したことを特徴とする。
すなわち、前述した従来のこの種コンベアでは、基板材の全外表面を上下から挟んで送る全面搬送ローラーが、液中配設されていたので、基板材の回路形成面に擦り傷,傷痕,損傷等のダメージが発生し易く、信頼性,歩留まり,生産性等に問題が生じていたが、これらの特許出願では、このような問題が解決されることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような液中搬送噴射方式で端部搬送方式の表面処理装置のコンベアについては、次の各点が課題とされていた。
《第1の課題》
第1に、搬送される基板材が、依然として揺れたり撓んだりし易く、脱落,落下の虞もあり、もって基板材の搬送精度の低下、安定搬送への支障発生が懸念されていた。
すなわち、この種のコンベアでは、極薄化が進み腰のない基板材が、挟み代・掴み代10mm程度の幅しかない狭い両側端部のみにおいて、左右上下の端部搬送ローラー間に挟んで液中搬送されつつ、上下に多数かつ個別に配設されたスプレーノズルから、処理液が液中噴射される。
そこで基板材が、処理液のスプレー圧や重量の影響を受けて、平坦な状態のまま搬送されずに、上下に揺れて,波打ち,撓み,弛み易く、もって脱落,落下等の搬送トラブル発生が懸念されていた。
【0007】
《第2の課題》
第2に、そこで基板材の回路形成面について、擦り傷,傷痕,損傷等のダメージ発生も、懸念されていた。
すなわち、前述した揺れ,撓み,脱落,落下等に起用して、例えば基板材の回路形成面が、コンベアの搬送ローラー等に接触し、もって各種傷等発生の虞があり、信頼性,歩留まり,生産性等への問題が指摘されていた。
【0008】
《第3の課題》
第3に、噴射された処理液が、基板材表面から事後スムーズに排出されずに、基板材表面を搬送方向に乱流化したり、基板材表面に液留まりとなって滞留する、との指摘もあった。
もって、このような乱流や液溜まりに起因して、処理液の更新が妨げられ、基板材の回路形成面の表面処理に遅速,過不足,バラツキ等が生じてしまい、均一な回路形成に支障が生じる虞があり、この面からも信頼性,歩留まり,生産性等に問題が指摘されていた。
【0009】
《本発明について》
本発明の基板材の表面処理用のスプレーユニットは、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、基板材の揺れや脱落等が防止されると共に、第2に、基板材の無接触搬送が実現され、第3に、更に処理液の乱流や液溜まりも回避される、基板材の表面処理用のスプレーユニットを提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。
まず、請求項1については次のとおり。請求項1の基板材の表面処理用のスプレーユニットは、基板材の表面処理装置で使用され、該表面処理装置は、コンベアと該スプレーユニットとを、有している。
そして該コンベアは、該基板材を上下で挟んで送る。該スプレーユニットは、略平板状をなし、搬送される該基板材の回路形成面に対向位置して処理液を噴射する多数のスプレーノズル孔を備えており、もって処理液による該基板材の揺れや落下が防止されること、を特徴とする。
請求項2については、次のとおり。請求項2の基板材の表面処理用のスプレーユニットでは、請求項1において、該コンベアは、該基板材を水平搬送し、該基板材の回路形成面には無接触で、該基板材の左右両側端部を上下で挟んで送る端部搬送ローラーが、搬送方向に列設されてなる。そして該スプレーユニットは、搬送される該基板材の上下に対向配設されていること、を特徴とする。
【0011】
請求項3については、次のとおり。請求項3の基板材の表面処理用のスプレーユニットでは、請求項2において、該表面処理装置は、更に、処理液で満たされた液槽を備えている。そして該コンベアは、該液槽内で該基板材を液中搬送し、該スプレーユニットは、該液槽内で該基板材に処理液を液中噴射すること、を特徴とする。
請求項4については、次のとおり。請求項4の基板材の表面処理用のスプレーユニットでは、請求項2において、上側の該スプレーユニットの各スプレーノズル孔と、下側の該スプレーユニットの各スプレーノズル孔とは、それぞれが上下で対峙位置していること、を特徴とする。
請求項5については、次のとおり。請求項5の基板材の表面処理用のスプレーユニットでは、請求項2において、該スプレーユニットは、処理液を噴射する多数の該スプレーノズル孔と共に、更に、該基板材に噴射された処理液を事後排出させる排出孔を、多数備えていること、を特徴とする。
請求項6については、次のとおり。請求項6の基板材の表面処理用のスプレーユニットでは、請求項5において、該スプレーユニットは、対向する該基板材との上下距離を、調節可能となっている。
かつ、該スプレーユニットの各スプレーノズル孔は、左右の幅方向に多数列設されると共に、このような該スプレーノズル孔の列が、前後の搬送方向に複数列配設されている。そして、該スプレーユニットの各排出孔は、該スプレーノズル孔の各列の間および各列の前後に配設されていること、を特徴とする。
【0012】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)表面処理装置は、電子回路基板の製造工程で使用され、基板材を表面処理する。
(2)そして代表的には、処理液の液槽中に、そのコンベアとスプレーユニットが配設されている。
(3)スプレーユニットの各スプレーノズル孔から噴射された処理液は、基板材を表面処理した後、反射されて液膜を形成してから、スプレーユニットの各排出孔から反対側へと排出される。
(4)コンベアは、端部搬送ローラーが基板材の左右両側端部を挟んで送る。
(5)又、各スプレーノズル孔から噴射された処理液は、基板材を表面処理して反射され、基板材とスプレーユニット間で液膜を形成する。
(6)従って第1に、この液膜が、基板材を挟んで平坦なまま保持し、揺れや脱落等を防止する。それでも基板材が揺れた場合は、スプレーユニットがこれをガイドして、元に復帰させる。
第2に、そこで基板材は、両側端部のみを端部搬送ローラーに挟まれて送られることも相俟って、回路形成面についての無接触搬送が実現される。
第3に、更に処理液は事後、スプレーユニットの各排出孔から、反対側へと排出される。もって、基板材での処理液の乱流化,液溜まり等が回避される。
(7)さてそこで、本発明の基板材の表面処理用のスプレーユニットは、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0013】
《第1の効果》
第1に、基板材の揺れや脱落等が、防止される。すなわち本発明では、噴射された処理液が、スプレーユニットと基板材との間で液膜を形成する。
そこで基板材は、代表的には液中でしかも両側端部のみを挟まれて搬送されるものの、この液膜にて平坦な状態のまま維持される。それでも大きく揺れそうになった場合は、スプレーユニットにて平坦な状態へとガイドされる。
そこで、極薄化が進み腰のない基板材であっても、前述したこの種従来例のように、処理液のスプレー圧や重量の影響を受けることがなく、上下に揺れて波打ち,撓み,弛むことは防止され、脱落,落下等の搬送トラブルも防止される。
もって本発明では、搬送精度が向上し、基板材の安定搬送が実現されるようになる。
【0014】
《第2の効果》
第2に、基板材の無接触搬送が、実現される。すなわち、本発明では、このように基板材の揺れ,脱落等が防止される。そこで基板材は、両側端部のみを挟まれて送られることも相俟って、回路形成面が、搬送ローラーやスプレーユニットに接触するようなことが阻止され、無接触搬送が実現される。
従って、前述したこの種従来例のように、基板材の回路形成面に、擦り傷,傷痕,損傷等のダメージが発生する虞はなく、信頼性,歩留まり,生産性が向上する。
【0015】
《第3の効果》
第3に、処理液の乱流や液溜まりも、回避される。すなわち、本発明では、処理液を事後に排出させる排出孔を備えている。そこで、前述したこの種従来例のように、噴射された処理液が基板材付近から事後スムーズに排出されない事態は回避される。
もって処理液が、基板材表面を搬送方向に乱流化したり、基板材表面に液溜まりとなって滞留することもなくなり、処理液の更新が促進される。従って、基板材の回路形成面の表面処理に、遅速,過不足,バラツキ等が発生することもなく、均一な表面処理そして均一な回路形成が実現され、この面からも、信頼性,歩留まり,生産性が向上する。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
《図面について》
以下、本発明の基板材の表面処理用のスプレーユニットを、図面に示した発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。図1〜図4は、本発明を実施するための最良の形態の説明に供する。
そして、図1の(1)図は、平面図であり、(2)図は、(1)図の要部拡大図である。図2の(1)図は、正面の断面図、(2)図は、側面の断面図、(3)図は、(2)図の要部拡大図である。図3は、全体正面の断面概略図、図4は、全体側面の断面概略図である。
【0017】
《電子回路基板について》
本発明の表面処理装置1用のスプレーユニット2は、電子回路用の電子回路基板の製造工程で使用される。そこで、まず電子回路基板について説明しておく。
エレクトロニクス機器にて使用されるプリント配線基板等の電子回路基板は、小型軽量化,極薄化,そして微細回路化,高密度回路化,多層化等の進展がめざましい。例えば、その大きさに関しては、比較的大きなマザーボードと共に、半導体素子,部品が回路と一体的に組み込まれた小さな半導体パッケージ基板の普及も急速である。硬軟に関しても、従来よりのリジット基板等の硬性基板に比し、フレキシブル基板その他の極薄で柔軟な軟性基板の進展,増加が著しい。
そこで、最近の電子回路基板の要求度としては、そのトータル板厚が100μm〜25μm程度、回路厚が10μm程度、回路幅や回路間スペースが30μm〜20μm程度まで、極薄化,微細化されている。
そして、このような電子回路基板は、例えば、次の製造工程を辿って製造される。すなわち、銅張り積層板よりなる基板材Aの外表面に、→感光性レジストを塗布又は張り付けてから、→電子回路のネガフィルムを当てて露光した後、→回路形成部分以外のレジストを、現像により溶解除去し、→回路形成部分以外の銅箔を、エッチングにより溶解除去してから、→回路形成部分のレジストを、剥膜除去することにより、→基板材Aの外表面に、銅箔にて電子回路が形成され、→もって、電子回路基板が製造される。
電子回路基板は、このようになっている。
【0018】
《表面処理装置1について》
表面処理装置1は、このような電子回路基板の製造工程で使用され、基板材Aを処理液Bにて表面処理する。まず表面処理装置1について、図3,図4を参照して一般的に説明しておく。
表面処理装置1は、電子回路基板の製造工程中、例えば現像工程,エッチング工程,剥離工程又は洗浄工程において、現像装置,エッチング装置,剥離装置又は洗浄装置として使用される。
そして表面処理装置1では、その処理室3内において、コンベア4で搬送される感光性レジストが張付けられた銅張積層板製の基板材Aに対し、スプレーユニット2から現像液,エッチング液,剥離液,又は洗浄液等の処理液Bが順次噴射され、もって基板材Aが薬液処理や洗浄処理等、表面処理される。
そして、図示例の表面処理装置1は、その処理室3内に、液槽5,コンベア4,スプレーユニット2,貯槽6等を有している。
【0019】
まず液槽5は、処理液Bで満たされている。すなわち液槽5は、処理室3上部において、コンベアフレーム兼用の区画壁7を使用して形成されると共に、スプレーユニット2から噴射される処理液Bと同じ処理液Bで、満たされている。なお、このように液槽5を使った液中搬送,液中噴射方式は、現像装置やエッチング装置では最近多用されており、剥離装置や洗浄装置では、空中搬送,空中噴射方式と適宜選択使用される。
コンベア4は、液槽5の処理液B内に配設されており、基板材Aを搬送方向Cに液中搬送する。スプレーユニット2は、液槽5の処理液B内に配設されており、搬送される基板材Aの回路形成面Dに対し、処理液Bを液中噴射する。
処理液Bは、処理室3下部の貯槽6から、→ポンプ8や配管9を介し、スプレーユニット2に圧送されて、→基板材Aに噴射されて、→基板材Aの回路形成面Dを表面処理する。→そして、基板材Aから反射されて、→跳ね返った処理液Bが、最終的には液槽5中の処理液B中に吸収される。→その結果、液槽5からオーバーフローした処理液Bが、→貯槽6に回収されて貯蔵され、→事後、再び循環使用されることになる。
表面処理装置1は、このようになっている。
【0020】
《端部搬送方式(無接触搬送方式)のコンベア4について》
このような表面処理装置1のコンベア4について、図1の(1)図,図2の(1)図,図3,図4等を参照して、更に詳細に説明する。
コンベア4では、基板材Aの回路形成面Dには無接触で、基板材Aの左右両側端部Eのみを、上下から挟んで水平搬送する多数の端部搬送ローラー10が、液槽5内において搬送方向Cに沿い列設されている。
基板材Aは、前後の搬送方向Cと直交する左右の幅方向Fについて観察した場合、中央部の広い回路形成面Dと、その外周縁の狭い前後端部や左右両側端部Eと、から構成されており、前後端部や両側端部Eは、幅10mm程度よりなり、みみ部とも称され非回路面となっている。
そして、上側の端部搬送ローラー10と下側の端部搬送ローラー10とが、基板材Aの左右両側端部Eを挟み代・掴み代として、上下から挟んで送るべく上下で対をなすと共に、左右において搬送方向Cに列設されている。この端面搬送ローラー10は、回転駆動される駆動ローラー(ドライブローラー)よりなり、軸11,伝達ギヤ,駆動ギヤ,駆動シャフト等を介し、モータ等の駆動機構(図示せず)に接続されている。なお端部搬送ローラー10は、樹脂製よりなるが、金属製も可能である。
端部搬送方式のコンベア4は、このようになっている。
【0021】
《スプレーユニット2について》
以下、表面処理装置1のスプレーユニット2について、図1〜図4の各図を参照して、説明する。
このスプレーユニット2は、略平板状をなしている。そして、搬送される基板材Aの回路形成面Dに対向位置して処理液Bを噴射する多数のスプレーノズル孔12を備えており、もって処理液Bによる基板材Aの揺れや落下が、防止されることになる。
そしてスプレーユニット2は、搬送される基板材Aの上下に対向配設されており、上下方向Gの基板材Aとの上下間隔つまり上下距離寸法を、調節可能となっている。因に、上下の両スプレーユニット2間の上下距離寸法は、3mm〜5mm程度であり、その中間に基板材Aが位置している。
又、上側のスプレーユニット2の各スプレーノズル孔12と、下側のスプレーユニット2の各スプレーノズル孔12とは、それぞれが上下で対峙位置している。
【0022】
このようなスプレーユニット2について、更に詳述する。まずスプレーユニット2は、水平で平坦な所定肉厚を備えた略平板状つまりプレート状をなし、搬送される基板材Aに対し、それぞれ上下方向Gに距離を存しつつ、上下に対向配設されると共に、液槽5中に液中配設されている。
そして、基板材Aに対する上下距離寸法を、より近く又はより遠く調節可能となっており、もって、表面処理される基板材Aの材質,肉厚,硬軟等々に対応して、作用効果を適切に発揮できるようになっている。
又、図示例のスプレーユニット2は、基板材Aの表裏両面に向け上下に対向配置されているが、基板材Aの回路形成面Dが片面のみの片面基板の場合は、その片面に向けてのみ対向配設されるケースも考えられる。勿論、片面基板の場合も、その表裏両面に向けて対向配設するようにしてもよい。
スプレーノズル孔12は、このような上下のスプレーユニット2について、上下貫通孔として、それぞれに多数穿設されている。スプレーノズル孔12の反基板材A側は、隣接された配管9の管路と一体化されており、この配管9に対し縦横に配設,接続されたその他の配管9を介し、ポンプ8からの処理液Bが供給されるようになっている。
又、上側のスプレーユニット2の各スプレーノズル孔12と、下側のスプレーユニット2の各スプレーノズル孔12とは、その穿設位置が、1つ1つ上下で対峙位置している。
更に、各スプレーノズル孔12は、略板状のスプレーユニット2について、左右の幅方向Fに多数列設されていると共に、このようなスプレーノズル孔12の列が、前後の搬送方向Cにそれぞれ間隔を存しつつ複数列配設されている。
勿論、このような各スプレーノズル孔12による処理液B噴射の有効幅、つまり左右の幅方向Fへの有効噴射幅は、処理材である基板材Aの処理幅と等しくなるように、設定されている。つまり、基板材Aの回路形成面Dの左右の幅方向Fの幅寸法と等しくなるように、設定されている。
スプレーユニット2は、このようになっている。
【0023】
《排出孔13について》
次に、図1,図2を参照して、スプレーユニット2に設けられた排出孔13について、説明する。
スプレーユニット2は、処理液Bを噴射する多数のスプレーノズル孔12と共に、更に、基板材Aに噴射された処理液Bを事後において排出させる排出孔13を、多数備えている。
図示例の各排出孔13は、前述したスプレーノズル孔12の各列の間、および各列の前後に配設されている。
【0024】
このような排出孔13について、更に詳述する。排出孔13は、上下貫通孔として、上下の両スプレーユニット2について、それぞれ多数穿設されており、上下が共に開放されている。図示例では、処理液Bの液中に開放されている。
ところで、図2の(3)図に写したように、処理液Bは、各スプレーノズル孔12から噴射された後、→図示例では液中を、上下方向Gに直進して→基板材Aを直射する。→そして基板材Aを表面処理すると共に、→反射され跳ね返って、基板材Aの表裏近くで液膜Hを形成する。
→それから処理液Bは、略板状のスプレーユニット2の基板材A側から、→各排出孔13を介し、→スプレーユニット2の反基板材A側、つまり基板材Aとは反対側の外側へと、上下方向Gに沿って排出された後、→液槽5の処理液B中へと吸収される。
なお図示例において、各排出孔13は、前述したスプレーノズル孔12の各列に対し、その各列間の間隔、および各列の前側(上流側)、各列の後側(下流側)に、配設されている。
又、図2の(3)に示したように、排出孔13は、テーパー状をなしており、基板材A側の孔径が、反対側の孔径より徐々に広くなるように設定されている。これにより、断面積と流速の関係等から、排出された処理液Bの逆流が防止されるようになる。
排出孔13は、このようになっている。
【0025】
《作用等》
本発明の基板材Aの表面処理用のスプレーユニット2は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)表面処理装置1は、電子回路基板の製造工程で使用され、基板材Aを処理液Bにて表面処理する。特にフレキシブル基板、その他の極薄で腰のない軟性基板の製造工程で使用され、基板材Aを搬送しつつスプレーユニット2から処理液Bを噴射して、電子回路形成用に表面処理する。
【0026】
(2)そして、代表的な表面処理装置1では、処理液Bで満たされた液槽5中に、コンベア4とスプレーユニット2が配設されている。
【0027】
(3)そこで、スプレーユニット2の各スプレーノズル孔12から液中噴射された処理液Bは、→液槽5の処理液B中を直進した後、→コンベア4にて液中搬送される基板材Aの回路形成面Dを、直射して表面処理する。
→これと共に処理液Bは、反射され跳ね返って、液膜Hを形成した後、→スプレーユニット2の各排出孔13経由して、→基板材Aの反対側へと排出され、→もって、液槽5の処理液B中に吸収される。
【0028】
(4)又、この表面処理装置1のコンベア4では、左右上下の端部搬送ローラー10が、基板材Aの回路形成面Dには非接触で、基板材Aの非回路面である左右両側端部Eのみを、挟んで送るようになっている。
【0029】
(5)そして、このスプレーユニットにあっては、各スプレーノズル孔12から噴射された処理液Bが、基板材Aから跳ね返ると共に、基板材Aとスプレーユニット2との間で、液膜Hを形成する。
すなわち、略平板状をなす上下のスプレーユニット2と、同じく平坦状をなす基板材Aとの間に挟まれたエリアにおいて、それぞれ処理液Bのスプレー膜,噴射膜つまり液膜Hが形成される。因に、水平をなす上下のスプレーユニット2間の上下距離寸法は、3mm〜5mm程度であり、その間に同じく水平をなす基板材Aが位置する。
【0030】
(6)さてそこで、本発明の表面処理用のスプレーノズル2にあっては、次の第1,第2,第3のようになる。
まず第1に、基板材Aは、極薄化が進み腰のないものも多く、しかも液中で両側端部Eのみを、コンベア4の端部搬送ローラー10に挟まれて搬送されるが、このような状態の基板材Aに対して、処理液Bがスプレー圧と重量を伴って噴射される。
さて、このような状況にも拘らず、基板材Aは、処理液Bにて形成された液膜Hにて、上下から挟まれ上下から平坦な状態のまま保持されている。従って、基板材Aは平坦なまま維持され、上下への揺れやコンベア4からの脱落等は防止される。
更に、それでも上下に大きく揺れそうになった場合は、略平板状をなすスプレーユニット2に当接することにより、元の平坦な状態へとガイドされて、復帰する。
【0031】
第2に、このように基板材Aは、表面処理のため次々と噴射される処理液Aにて液膜Hが形成され、もって平坦な状態に保持,維持されており、その揺れ,脱落等が防止される。
そこで基板材Aは、両側端部Eのみを端部搬送ローラー10に挟まれて送られることも相俟って、その回路形成面Dが、端部搬送ローラー10やスプレーユニット2に接触するようなことは回避される。もって、回路形成面Dの無接触搬送が実現される。
【0032】
第3に、このスプレーユニット2は、排出孔13を多数備えており、基板材Aに噴射された後、→液膜Hを形成した処理液Bを、→事後、基板材A側から反対側へと排出するようになっている。
もって、噴射された処理液Bが、基板材Aの外表面付近にて乱流化したり滞留したりすることが防止され、もって液溜まり発生が回避され、処理液Bの更新が促進される。
本発明の作用等は、このようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る基板材の表面処理用のスプレーユニットについて、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、(1)図は、平面図であり、(2)図は、(1)図の要部拡大図である。
【図2】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、(1)図は、正面の断面図、(2)図は、側面の断面図、(3)図は、(2)図の要部拡大図である。
【図3】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、全体正面の断面概略図である。
【図4】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、全体側面の断面概略図である。
【符号の説明】
【0034】
1 表面処理装置
2 スプレーユニット
3 処理室
4 コンベア
5 液槽
6 貯槽
7 区画壁
8 ポンプ
9 配管
10 端部搬送ローラー
11 軸
12 スプレーノズル孔
13 排出孔
A 基板材
B 処理液
C 搬送方向
D 回路形成面
E 両側端部
F 幅方向
G 上下方向
H 液膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板材の表面処理装置で使用されるスプレーユニットであって、該表面処理装置は、コンベアと該スプレーユニットとを、有しており、
該コンベアは、該基板材を上下で挟んで送り、該スプレーユニットは、略平板状をなし、搬送される該基板材の回路形成面に対向位置して処理液を噴射する多数のスプレーノズル孔を備えており、もって処理液による該基板材の揺れや落下が防止されること、を特徴とする、基板材の表面処理用のスプレーユニット。
【請求項2】
請求項1に記載した基板材の表面処理用のスプレーユニットにおいて、該コンベアは、該基板材を水平搬送し、該基板材の回路形成面には無接触で、該基板材の左右両側端部を上下で挟んで送る端部搬送ローラーが、搬送方向に列設されてなり、
該スプレーユニットは、搬送される該基板材の上下に対向配設されていること、を特徴とする、基板材の表面処理用のスプレーユニット。
【請求項3】
請求項2に記載した基板材の表面処理用のスプレーユニットにおいて、該表面処理装置は、更に、処理液で満たされた液槽を備えており、
該コンベアは、該液槽内で該基板材を液中搬送し、該スプレーユニットは、該液槽内で該基板材に処理液を液中噴射すること、を特徴とする、基板材の表面処理用のスプレーユニット。
【請求項4】
請求項2に記載した基板材の表面処理用のスプレーユニットにおいて、上側の該スプレーユニットの各スプレーノズル孔と、下側の該スプレーユニットの各スプレーノズル孔とは、それぞれが上下で対峙位置していること、を特徴とする、基板材の表面処理用のスプレーユニット。
【請求項5】
請求項2に記載した基板材の表面処理用のスプレーユニットにおいて、該スプレーユニットは、処理液を噴射する多数の該スプレーノズル孔と共に、更に、該基板材に噴射された処理液を事後排出させる排出孔を、多数備えていること、を特徴とする、基板材の表面処理用のスプレーユニット。
【請求項6】
請求項5に記載した基板材の表面処理用のスプレーユニットにおいて、該スプレーユニットは、対向する該基板材との上下距離を調節可能となっており、
かつ、該スプレーユニットの各スプレーノズル孔は、左右の幅方向に多数列設されると共に、このような該スプレーノズル孔の列が、前後の搬送方向に複数列配設されており、 該スプレーユニットの各排出孔は、該スプレーノズル孔の各列の間および各列の前後に配設されていること、を特徴とする、基板材の表面処理用のスプレーユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−125675(P2009−125675A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303995(P2007−303995)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000220240)東京化工機株式会社 (22)
【Fターム(参考)】