基板検査用の検査領域の設定データ作成方法および検査データ作成システム
【課題】複数の電極ピンを有する部品を対象にした検査領域の設定データの作成処理を高速化する。
【解決手段】処理対象の部品201を含む領域内の基準画像を表示して、部品本体に対応する領域30を指定する操作を受け付けた後に、指定枠32を用いた指定を受け付ける。ユーザは、一番端の電極ピンから3本目までの電極ピンが含まれるように指定枠32の幅を調整し、指定枠32の外側の辺をランドの先端位置に合わせる。指定が完了すると、指定枠32に対応する範囲の基準画像から電極ピンおよびランドが抽出されて、これらの配置に関する規則が特定される。さらに、特定された規則や領域30に基づいて、個々の電極ピンに対応する検査領域S11,S21,S31,S41や、撮像対象領域の割り付けの基準となる検査領域S1,S2,S3,S4などが設定される。
【解決手段】処理対象の部品201を含む領域内の基準画像を表示して、部品本体に対応する領域30を指定する操作を受け付けた後に、指定枠32を用いた指定を受け付ける。ユーザは、一番端の電極ピンから3本目までの電極ピンが含まれるように指定枠32の幅を調整し、指定枠32の外側の辺をランドの先端位置に合わせる。指定が完了すると、指定枠32に対応する範囲の基準画像から電極ピンおよびランドが抽出されて、これらの配置に関する規則が特定される。さらに、特定された規則や領域30に基づいて、個々の電極ピンに対応する検査領域S11,S21,S31,S41や、撮像対象領域の割り付けの基準となる検査領域S1,S2,S3,S4などが設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装基板上の部品の実装状態を画像処理の手法により検査することを前提として、この検査に必要な検査領域の設定データを作成する方法、およびこの方法が適用された検査データ作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装基板の外観検査装置では、一般に、検査対象の基板を撮像して2次元画像を生成し、画像中の部品にその部品種に応じた検査領域を設定し、検査領域内の画像を処理することにより、はんだ付け状態の適否や部品の位置ずれの有無などを判別する(特許文献1を参照。)。また、2次元画像に高さ情報を加えて3次元画像とし、これを用いて電極や部品の高さを判別するものもある(特許文献2を参照)。
【0003】
この種の検査装置における検査データには、一般に、検査領域の設定データ(検査領域の数および各検査領域の設定位置および大きさを示すもの)や、各検査領域で被検査部位を抽出するための2値化しきい値、各検査領域における測定処理のロジック、判定基準値などが含まれる。具体的な検査の内容は、部品の外観に応じて異なるため、従来の基板外観検査装置では、ティーチング作業の負荷を軽減するために、あらかじめ部品の種毎に「ライブラリデータ」と呼ばれる標準の検査データを用意し、検査対象の部品に対し、それぞれその部品種に応じたライブラリデータを適用するようにしている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、教示対象の部品の具体的な画像と、この部品に対応する部品種について入力すべき項目とを表示し、各項目につき、所定数の外観情報の選択肢の中から表示中の部品に該当するものをユーザに選択させ、選択された外観情報に適合するライブラリデータを読み出して、これに基づき教示対象の部品に対する検査領域を特定することが記載されている。
【0005】
また特許文献2にも、電極ピン(リード)の3次元形状や輝度値に基づき、基板の3次元画像からリード領域を抽出し、総リード数、リード間距離などから検査部品の部品種類を決定することや、決定した部品種類を基にあらかじめ記憶した部品ライブラリを選択することなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−32525号公報
【特許文献2】特開2006−250609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
QFP,SOPなどのIC部品では、電極ピンの数やピッチが部品によって異なり、電極ピンの長さにもばらつきがある。このため、出願人が提供する従来の外観検査装置では、IC部品用の検査領域については、大まかな設定ルールのみを定め、検査対象の基板の基準画像から各電極ピンやこれらが接続されるランドを自動抽出して、抽出された電極ピンやランドに上記の設定ルールを適用することにより、検査領域を特定するようにしている。
【0008】
しかし、多数の電極ピンやランドを正しく抽出するには抽出用のプログラムが複雑になり、電極ピンやランドをすべて抽出し終えるまでにかなりの時間がかかる。また、画像中の抽出対象部位の色彩や明るさのばらつきが大きい場合に、均一な基準で抽出するのが困難である点や、部品の周囲の抽出対象部位によく似た色彩の部位が誤抽出される点も問題となっている。
【0009】
本発明は上記の問題点に着目し、多数の電極ピンを具備する部品を対象に検査領域の設定データを作成する場合に、ユーザの簡単な指定操作に応じて検査領域を特定することにより、検査領域の設定データの作成を高速化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による検査領域の設定方法は、部品実装後の基板の部品の電極と他の部位との区別が可能で、その表面を正面から観測した状態を表す画像を用いて、当該基板上の各部品の実装状態の検査に用いられる検査領域の設定データを作成するもので、以下の第1〜第6のステップを実行することを特徴とする。
【0011】
第1ステップでは、複数の電極ピンが部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品を設定の対象として、この対象部品の実装状態を表す基準画像をモニタに表示する。第2ステップでは、基準画像の表示画面において、対象部品の部品本体に対応する第1の領域を指定する操作と、この第1の領域の一辺を基準に、基準の辺に沿う方向および基準の辺から第1の領域の外側に向かう方向における範囲指定により第2の領域を指定する操作とを受け付ける。なお、これらの指定は、第1領域を指定した後に第2領域を指定するのが好ましいが、指定の順序を逆にすることを排除するものではない。
【0012】
第3ステップでは、第1および第2の領域が指定されたことに応じて、第2の領域に対応する範囲の基準画像から電極ピンを抽出する。第4ステップは、第3ステップの処理により基準の辺に沿って複数の電極ピン抽出されたことに応じて実施されるもので、抽出された電極ピン間の関係および電極ピンと第1の領域との関係に基づき電極ピンの配置に関する規則を特定する。
【0013】
第5ステップでは、第1の領域の各辺のうち少なくとも前記基準の辺に第4ステップで特定された規則を適用して、第1の領域の外側に、電極ピンに対する検査のための検査領域を前記規則が適用された辺に沿って複数設定する。第6ステップでは、第5ステップの実行に応じて、モニタに表示されている基準画像を検査領域が設定された状態を表すものに更新し、更新後の表示に対して確定操作が行われたことに応じて検査領域の設定に用いられた設定データを確定する。
【0014】
上記の方法によれば、複数の電極ピンが部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品に対する検査領域の設定データを作成する場合には、モニタに表示された基準画像の画面上でユーザが第1および第2の領域を指定したことに応じて、第1の領域の少なくとも一辺に沿って複数の検査領域が自動的に設定され、基準画像の表示がその設定状態を表すものに切り替えられる。ユーザが、この表示により検査領域の設定が適切であると判断して確定操作を行うと、表示中の検査領域の設定データが確定される。
【0015】
SOPやQFPの部品本体の電極ピンが配置される辺では、通常、両端部に等しいマージンをおいて、大きさおよび形状が等しい電極ピンが等間隔で配列される。したがって、このような部品に対し、ユーザが、設定対象の部品の部品本体に対応する領域を正しく指定すると共に、この部品本体の一辺に沿って並ぶ電極ピンを、端に位置する電極ピンから順に2つ以上選択して、これらに対応する領域を正しく指定すれば、電極ピンの配置に関する規則を正しく特定し、検査領域を精度良く設定することが可能になる。
【0016】
上記の方法の好ましい態様では、第4ステップでは、電極ピンの配置に関する規則として、電極ピンの幅および長さならびにピッチと、第1の領域の一角部からその直近の電極ピンまでの距離とを、それぞれ特定する。このような情報を特定すれば、部品本体の一辺における電極ピンの数や位置を割り出し、個々の電極ピンやランド毎に検査領域を設定することが可能になる。
【0017】
他の好ましい態様では、部品実装前の基準画像および部品実装後の基板の基準画像を準備して、後者の基準画像を第1ステップにおいて表示すると共に、第3ステップでは、第2指定操作による指定を各基準画像に適用して、第2の領域に対応する範囲の部品実装後の基板の基準画像から電極ピンを抽出すると共に、第2の領域に対応する範囲の部品実装前の基板の基準画像からランドを抽出する。さらに第4ステップでは、電極ピンの配置に関する規則として、電極ピンの幅および長さならびにピッチと、第1の領域の一角部からその直近の電極ピンまでの距離と、対応関係にある電極ピンとランドとの位置関係とを、それぞれ特定する。
【0018】
上記の態様によれば、部品本体の一辺に沿って並ぶ電極ピンおよびこれらに対応するランドが、それぞれ端に位置するものから順に複数含まれるようにユーザが第2の領域を指定することにより、この領域から電極ピンおよびランドの組み合わせが複数抽出される。そして、部品本体領域の一辺における電極ピンの数や位置を割り出すのに必要な情報とともに、電極ピンとランドとの位置関係が特定されるので、個々の電極ピンとランドとの接続状態を検査するための検査領域を精度良く設定することが可能になる。
【0019】
上記の方法の他の好ましい態様では、矩形状の部品本体の対向する2辺にそれぞれ複数の電極ピンが配置されると共に、これらの辺における電極ピンの配列の間に線対称の関係が成立する部品(SOP)を設定の対象とする。この場合の第5ステップでは、基準の辺に第4ステップで特定された規則を適用して、第1の領域の外側で前記基準の辺に沿う位置に複数の検査領域を設定するステップと、これらの検査領域を180度回転させたものを第1の領域の外側で基準の辺に対向する辺に沿う位置に設定するステップとを実行する。
【0020】
別の好ましい態様では、矩形状の部品本体の各辺にそれぞれ複数の電極ピンが配置されると共に、対向する関係にある2辺における電極ピンの配列の間に線対称の関係が成立する部品(QFP)を設定の対象とする。この場合の第5ステップでは、基準の辺および基準の辺に直交する2つの辺のうちの一方を対象にして、それぞれ第4ステップで特定された規則を適用して、第1の領域の外側で対象の辺に沿う位置に複数の検査領域を設定するステップと、これらの検査領域を180度回転させたものを第1の領域の外側で対象の辺に対向する辺に沿う位置に設定するステップとを実行する。
【0021】
上記の各態様によれば、対向する2辺間の対称性を利用して、一方の辺に対して設定した検査領域を他方の辺に適用して、各検査領域の設定データを効率良く作成することが可能になる。
【0022】
つぎに、本発明が適用される検査データの作成システムは、部品実装後の基板の部品の電極と他の部位との区別が可能で、その表面を正面から観測した状態を表す画像を用いて、当該基板上の各部品の実装状態の検査に必要な情報を作成するものである。このシステムは、複数の電極ピンが前記部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品を設定の対象として、この対象部品の実装状態を表す基準画像をモニタに表示する基準画像表示手段;基準画像の表示画面において、対象部品の部品本体に対応する第1の領域を指定する操作と、この第1の領域の一辺を基準に、基準の辺に沿う方向および基準の辺から第1の領域の外側に向かう方向における範囲指定により第2の領域を指定する操作とを受け付ける領域指定受付手段;領域指定受付手段が第1の領域および第2の領域にかかる指定を受け付けたことに応じて、第2の領域に対応する範囲の基準画像から電極ピンを抽出する抽出処理手段;抽出処理手段により基準の辺に沿って複数の電極ピンが抽出されたとき、抽出された電極ピン間の関係および電極ピンと第1の領域との関係に基づき電極ピンの配置に関する規則を特定する配置規則特定手段;第1の領域の各辺のうち少なくとも基準の辺に配置規則特定手段により特定された規則を適用して、第1の領域の外側に、電極ピンに対する検査のための検査領域を前記規則が適用された辺に沿って複数設定する領域設定手段;領域設定手段により検査領域が設定されたことに応じて、前記モニタに表示されている基準画像を前記検査領域が設定された状態を表すものに更新し、更新後の表示に対して確定操作が行われたことに応じて前記検査領域の設定に用いられた設定データを確定する領域確定手段、の各手段を具備することを特徴とする。
【0023】
上記のシステムによれば、先に述べた検査領域の設定方法を実行して検査領域の設定データを効率良く作成することができる。なお、このシステムは、検査を行う装置に導入することができるが、パーソナルコンピュータなどの外部のコンピュータに導入することもできる。後者の場合には、作成された検査データは、たとえば通信により検査装置に移植することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、SOP,QFPなど、複数の電極ピンが部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品について、各電極ピンおよびこれらに対応するランドの状態に適した検査領域を容易に特定して、検査領域の設定データの作成にかかる効率を向上することが可能になる。また、表示されている部品の形状に合わせて第1の領域を指定し、当該部品の一辺における電極ピンおよびランドの配列を対象に、その端部を含む一部の範囲を指定すれば、検査領域を正しく設定することができるので、設定作業に慣れていないユーザでも、適切な検査領域を容易に設定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】基板外観検査装置の構成を検査データ作成用のコンピュータとの関係とともに示す図である。
【図2】検査データ作成システムによるバリエーションの作成処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】チップ部品に対する検査領域の設定方法を示す図である。
【図4】SOPを対象にした検査領域の設定画面を示す図である。
【図5】図4の画面において部品対応領域を指定した後の画面表示の変化を示す図である。
【図6】指定枠による指定操作の例およびこの指定に応じた検査領域の設定例を示す図である。
【図7】検査領域の設定のために導出されるパラメータを示す図である。
【図8】SOPおよびQFPを対象にした検査領域の設定処理についての詳細を示すフローチャートである。
【図9】想定ピッチテーブルのデータ構成例を示す図である。
【図10】ランドの幅が一定でない例を示す図である。
【図11】電極ピンおよびランドに対応する領域を手動で設定する場合の設定画面を示す図である。
【図12】図11の画面において実施される指定操作の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、部品実装基板の自動外観検査を行う検査装置1の主要構成を、この検査装置1に接続されるパーソナルコンピュータ7ととともに示す。
【0027】
この実施例の検査装置1は、はんだの印刷工程、部品の実装工程、およびリフロー工程により製作された完成体の基板200を対象にした検査を実行するためのもので、カラー撮影用のカメラ2、照明部3、基板ステージ4、および制御処理部5などにより構成される。
【0028】
基板ステージ4には、基板200を支持するためのテーブル部41や、このテーブル部41をX,Yの各軸方向に移動させるための移動機構42などが設けられる。カメラ2は、基板ステージ4の上方に、撮像面を下方に向け、かつ光軸を鉛直方向に合わせた状態で配備される。
【0029】
照明部3には、赤、緑、青の各色彩光をそれぞれ発する円環状光源3R,3G,3Bが含まれており、基板ステージ4とカメラ2との間に配置される。各光源3R,3G,3Bは、それぞれ径が異なり、また各中心部をカメラ2の光軸に合わせた状態で配備される。これにより、基板200に対し、赤、緑、青の各光が、それぞれ仰角が異なる方向から照射されるので、はんだフィレットや後記する電極ピンなどの鏡面反射性の高い部位の傾斜状態を各照明光の色彩により表現した画像を生成することができる。図3〜6等の画像の模式図では、画像中の色彩を網点などのパターンに置き換えて示す。
【0030】
制御処理部5には、コンピュータによる制御部50のほか、画像入力部51、撮像制御部52、照明制御部53、XYステージ制御部54、メモリ55、表示部56、入力部57、通信インターフェース58などが設けられる。
【0031】
画像入力部51には、カメラ2からの画像をディジタル変換するためのA/D変換回路などが含まれる。撮像制御部52は、カメラ2に対し、撮像を指示するタイミング信号を出力し、照明制御部53は、各光源3R,3G,3Bの点消灯動作や光量を制御する。XYステージ制御部54は、基板ステージ4の移動のタイミングやX,Yの各軸方向における移動量を制御する。
【0032】
メモリ55には、検査を実行するための一連の処理手順が記述されたプログラムや検査データ格納用のデータベース(以下、「検査用データベース」という。)が格納される。検査用データベースには、検査対象の基板200に実装される部品毎に、設定すべき検査領域の設定に関するデータ(検査領域の位置および大きさを示すもの)、各検査領域で被検査部位の色彩を検出するための2値化しきい値、被検査部位の測定値(主として面積)の適否を判定するための判定ロジックならびに判定基準値など、複数種の検査データが設定される。
【0033】
本明細書では、上記の検査データのうち、検査領域の位置および大きさを示すデータを「検査領域の設定データ」と呼び、それ以外の検査データを「検査用パラメータ」と総称する。
【0034】
つぎに、この実施例の基板200は複数の領域に分けて撮像される。検査用データベースには、基板200に対するカメラ2の視野の割り付けに関するデータも格納されている。制御部50は、このデータに基づきXYステージ制御部54を介して基板ステージ4の移動を制御することにより、カメラ2を各撮像対象領域に順に位置合わせして撮像を行う。毎時の撮像により生成されたカラー画像は画像入力部51を介して制御部50に入力され、その内部のメモリ(RAMなど)に格納される。制御部50は、この内部メモリに格納された画像中の部品に順に着目し、着目部品に対し、その検査データに基づき、検査領域の設定、2値化、計測、良否判定の各処理を順に実行する。
【0035】
制御部50は、通信インターフェース58および通信回線6を介して、図中のパーソナルコンピュータ7や図示しない上位機器に接続されている。制御部50は、1枚の基板200の検査が終了する都度、その基板200に対する検査の結果や検査に用いられた画像などを、上位機器に出力する。また、検査結果や画像は、表示部56にも表示される。
【0036】
パーソナルコンピュータ7には、上記の検査装置で使用される検査データを作成するためのシステム(以下、「検査データ作成システム」または単に「システム」という。)が組み込まれている。この検査データ作成システムには、複数の部品種にそれぞれサブ部品種を対応づけた階層構造データが登録されている。部品種は、想定され得る各種部品の外観を、主として部品本体の形状の違いにより分類することで設定されたものである。この部品種を、部品の色彩や電極の形状などの違いに基づき細分類したものがサブ部品種である。
【0037】
各部品種には、当該部品種に適した検査領域の基本の設定ルールが登録されている。また各サブ部品種には、上位の部品種の検査領域の設定ルールへのリンク情報と、サブ部品種の外観の特徴に応じた検査用パラメータとを含む基本ライブラリデータとが登録されている。
【0038】
この実施例では、検査装置において、基板200の部品実装前および部品実装後の良品モデルをそれぞれ複数の領域に分割して領域毎に撮像し、生成された画像をつなぎ合わせることにより、基板200の全体構成を表す基準画像を生成する。以下では、部品実装前の基板を示す基準画像を「実装前基準画像」といい、部品実装後の基板を示す基準画像を「実装後基準画像」という。
【0039】
検査データ作成システムでは、各基準画像や基板200のCADデータを入力し、これらの入力情報と上記の基本ライブラリデータとを用いて、CADデータが表す部品の型式毎に、その型式に適したサブ部品種を特定し、特定されたサブ部品種にリンクする検査用パラメータを使用して、当該型式に対応するバリエーションのライブラリデータ(以下、単に「バリエーション」という。)を作成し、これを登録する。なお、既にバリエーションが登録されている型式については、この処理は不要である。
【0040】
上記の登録処理が終了すると、システムでは、CADデータが示す各部品にそれぞれその型式に応じたバリエーションを適用して、各部品の検査データを作成する。完成した検査データは、検査装置1に送信され、メモリ55内の検査用データベースに格納される。
【0041】
図2は、上記のバリエーションの作成に関して検査データ作成システムが実行する処理の概略手順を示す。
このフローチャートを参照して説明すると、まず、検査データ作成システムは、基板200のCADデータからバリエーションが登録されていない部品を検索し、この検索で抽出された部品の部品型式を示すリスト(以下、「未登録リスト」という。)を図1に示すモニタ17に表示する(ST1)。ユーザが未登録リスト中の一部品型式を選択すると(ST2が「YES」)、検査データ作成システムは、選択された型式の部品の実装位置をCADデータから割り出し、この部品を含む範囲内の実装後基準画像をモニタ17に表示する(ST3)。
【0042】
このときの表示画面には、各種部品種やサブ部品種のサンプル画像のリストも表示される。ユーザは、選択中の型式の部品の形状や色彩をこのリストと照合して、当該部品に適合する部品種およびサブ部品種を選択する。
さらにユーザは、表示中の画像上で設定対象の部品の部品本体に対応する領域を指定する。ここで指定される領域を、以下では「部品本体領域」という。
【0043】
検査データ作成システムでは、上記の各操作を受け付けると(ST4,5)、選択された部品種およびサブ部品種に適合する検査領域の設定ルールを読み出し、このルールを部品本体領域が設定された範囲に適用して検査領域を設定する(ST6)。さらに、表示中の実装後基準画像を、検査領域の設定状態を示すものに更新する(ST7)。
【0044】
この表示に対し、ユーザが確定操作を行うと(ST8)、検査データシステムでは、表示中の検査領域の設定データに、設定対象の部品につき選択されているサブ部品種の検査用パラメータを組み合わせ、この組み合わせを新規のバリエーションとして登録する(ST10)。
なお、この新規バリエーションには、バリエーション名として設定対象の部品の品番名称が付与される。また、検査領域の設定状態の表示に対し、ユーザがその表示を不適当であると判断してキャンセル操作を行った場合には、ユーザの手操作に応じて検査領域を修正する(ST9)。
【0045】
以下、未登録の部品型式がなくなるまでこれらが順に選択されて、上記と同様の処理が実行される。これにより、全ての型式に適合するバリエーションが作成されて登録されると、ST11が「NO」となり、バリエーションの作成処理を終了する。
【0046】
以下、ST6の検査領域の設定処理について詳細に説明する。
この実施例では、電極の数が比較的少なく、かつ電極数が固定されているチップ部品に対しては、図3(A)に示すように、処理対象の部品202の部品種に設定されている基本のルールに基づき、ユーザにより指定された部品本体領域30を基準にして各種検査領域S101〜S104を設定する。ただし、基板側のランドの位置や大きさには、ばらつきがあるので、図3の(B)(C)に示すように、実装前基準画像の対応範囲からランドを抽出し、この抽出結果に応じて、はんだ付け状態の検査用の検査領域S101,S102を修正するようにしている。
なお、図中の検査領域S103は、部品の有無を判別する検査に用いられる。また、検査領域S104は、実際の処理対象画像から検査対象の部品やランドを抽出して、各検査領域S101〜S103の位置を微調整する目的に使用される。
【0047】
上記に対し、SOP,QFPなど、多数の電極ピンが配置され、部品型式によって電極ピンの数が異なる部品を設定対象とする場合には、まず電極ピンの数やピッチを特定する必要がある。この特定をするには、実装前基準画像からランドを抽出したり、実装後基準画像から電極ピンを抽出する方法が考えられるが、微小で数が特定されていない部位を正確に抽出するには複雑な処理を行う必要があり、処理時間が長びく可能性がある。またランドに関してメッキ処理がされている場合に、表面の凹凸むらなどによって画像中の色彩や明るさにばらつきが生じて抽出に失敗したり、部品の周囲にある電極ピンやランドによく似た色の部位が誤抽出されるなど、抽出の精度を確保できない可能性もある。
【0048】
そこで、この実施例では、SOPやQFPでは電極ピンが規則性をもって配置されていることや、線対称の形状を有している点に着目し、ユーザに一部の電極ピンやランドを含む領域を指定させて、その領域内の画像から電極ピンおよびランドの規則性を特定し、この結果に基づき、全ての電極ピンおよびランドに対する検査領域を設定するようにしている。
【0049】
図4および図5は、上記の方法で検査領域を設定する際に用いられる作業用画面を提示される順に示す。この画面の左側には、基板200の実装後基準画像を表示するための画像表示領域100が設けられ、右側には、選択対象の部品に関する情報を表示する欄101や、ユーザの設定操作を支援するためのガイダンス領域102などが設けられる。
【0050】
図4に示す画面は、処理対象の部品(現在選択されている型式の部品)の部品種およびサブ部品種が選択されたことに応じて表示されたもので、画像表示領域100には、処理対象の部品201(この例ではSOP)を中心にした実装後基準画像が、デフォルトの設定による部品本体領域30とともに表示されている。また、画面の右上およびガイダンス領域102の中央部には、選択されたサブ部品種のサンプル画像103が表示される。
【0051】
部品本体領域30は、各検査領域を設定するための基準として用いられるもので、範囲を表す矩形枠の一辺に三角形状のマーク31が設定されている。このマーク31は部品201の向きを示すもので、たとえば、マーク31が右向きであれば部品201の向きは0度であり、マーク31が上向きであれば、部品201の向きは90度である。この部品201の向きは、CADデータに基づき設定される。
【0052】
ガイダンス領域102には、「自動」および「手動」のタブが設けられる。図4,5の例のように「自動」のタブが選択されている場合には、電極ピンやランドを自動抽出するモードが設定され、ガイダンス領域102には、自動抽出の対象領域の指定に関するユーザへのメッセージ104が表示される。
【0053】
また、このときのガイダンス領域102には、2つのボタン105,106が設けられている。ボタン105は部品本体領域の指定が終了したことを通知するものであり、以下、このボタン105を「指定ボタン105」という。ボタン106は、部品本体領域30の向きが検査データの定義と異なる場合に、この向きを変更するためのものである。
【0054】
さらに、ガイダンス領域102の下方には、画面を一段階前のものに戻すための「戻る」ボタン107などが設けられる。また、画像表示領域100の下方には、この領域100内の表示倍率を切り替えるための設定領域108や、表示中の画像を切り替えるための切り替え用のボタン109などが設けられる。ボタン109は、画像表示領域100内の設定対象の部品の状態が良くない場合などに操作されるもので、この操作が行われると、画像表示領域100内の表示は、選択中の部品型式で、現在表示されているものとは別の場所にある部品を中心にするものに更新される。
【0055】
図4の例の画像表示領域100に表示されている部品本体領域30は、選択中の部品種の基本の設定ルールに基づいて設定されたものであるが、実際の部品には適合していない。この実施例では、ユーザに、マウスを用いて、部品本体領域30の各辺を実際の部品本体に合わせるように調整することを要求する。ユーザがこの要求に応じた操作を行って指定ボタン105を操作することにより、図2のST5の受付処理が実行される。
【0056】
部品本体領域30の指定が受け付けられると、画面は図5に示すものに切り替えられる。この画面の画像表示領域100では、調整後の部品本体領域30の左下の角部の近傍位置に矩形枠32が表示される。またガイダンス領域102では、コメント104の内容が、矩形枠32による指定操作を指示するものに変更され、指定ボタン105に代わって、「抽出」の文字が付されたボタン110が設けられる。このボタン110は、指定枠32内の画像を用いて検査領域を自動設定することを指示するためのものである。
以下、上記の矩形枠32を「指定枠32」といい、ボタン110を「抽出ボタン110」という。
【0057】
さらに、この段階より後の画面のガイダンス領域102の下方には、「枠変更」の文字を付したボタン111が設けられる。このボタン111は、指定枠32の位置を変更することを指示するためのものである。このボタン111が操作される都度、指定枠32は、部品本体領域30の各角部の近傍に順に移動する。
【0058】
ユーザは、ガイダンス領域102のコメント104に従って指定枠32の位置や大きさを調整し、抽出ボタン110を操作する。これにより部品本体領域30が第1の指定領域として、指定枠32に対応する領域が第2の指定領域として、それぞれ確定され、検査領域の自動設定処理が開始される。
【0059】
図6は、図5の画面より後の画像表示領域100における表示の推移を、処理対象の部品201に表示を限定して示す。図中の(1)(2)は、ユーザの指定枠32の調整作業に応じた表示を示し、(3)は最終的に検査領域が自動設定されたときの表示例を示す。
【0060】
この実施例の指定枠32は、マウスにより幅を自由に変更できるように設定されている。また、指定枠32の幅方向に沿う2辺のうちの一方は、初期段階から部品本体領域30の内側に位置づけられて固定されるが、部品本体領域の外側に位置する辺は自由に調整することができる。この実施例では、これらの調整機能を用いて、ユーザに、部品本体の一辺に沿って並ぶピン電極が一番左端のものから順に3本含まれるように指定枠32の幅を調整するとともに、指定枠32の外側の辺をランドの先端位置に合わせるように要求する。ユーザがこの要求に従って図6(1)(2)のように調整操作を行い、抽出ボタン110を操作すると、部品の検査に必要な全ての検査領域が設定され、表示状態は図6(3)に示すようなものに更新される。
【0061】
この表示では、設定された検査領域を示す矩形枠が部品201の画像に重ね表示される。
ここで設定される検査領域を簡単に説明すると、この実施例では、部品本体の一辺に沿って並ぶ電極ピンを3〜4個のグループに分けて、グループ毎に、そのグループ内の電極ピンおよびこれらに対応するランドが含まれる範囲に検査領域S1〜S4を設定する。また、個々の電極ピンにもそれぞれ個別に検査領域が設定されるが、図6(3)の表示例では、グループ毎に、そのグループ内の電極ピンの1つを代表として、代表の電極ピンに設定した検査領域S11,S21,S31,S41のみを表示する。
【0062】
また、この例では表示されていないが、S11,S21,S31,S41などの電極ピン単位の検査領域の間には、それぞれブリッジを検出するための検査領域が設定され、各電極ピンの先端からランドの先端までの範囲には、両者の間のフィレットの状態を検査するための検査領域が設定される。
【0063】
電極ピン単位の検査領域は、電極ピンの有無や位置ずれ、形状の適否などを判別する検査に用いられる。
また、グループ単位の検査領域S1〜S4は、撮像対象領域を割り付ける際の基準の単位として用いられる。すなわち、同じグループに含まれる範囲のすべてが同一の画像に含まれるように毎時の撮像対象領域が設定される。これにより電極ピンやランドの単位で実施される検査の精度を確保することができる。
【0064】
この実施例では、指定ボタン105が操作された後でも、抽出ボタン110を操作するまでの間であれば、部品本体領域30の位置や大きさを修正することができる。指定枠32も同様に、抽出ボタン110を操作する前であれば、何度でも調整することができる。また、ユーザが指定枠32の初期設定位置の画像の精度が良くないと判断した場合には、図5中の変更ボタン111を操作することによって、部品本体領域30の他の角部の付近で画像の精度が良い場所に、指定枠32を移動させることができる。
【0065】
抽出ボタン110が操作された後の全体画面に関しては図示していないが、ガイダンス領域102には、検査領域の設定を確定するための確定ボタンや、設定を破棄するキャンセルボタンなどが設けられる。ユーザが表示された検査領域を適切であると判断して確定ボタンを操作することにより、表示中の検査領域にかかる設定データが確定されて、先の図2のST10の処理が実行される。一方、キャンセルボタンが操作された場合には、検査領域の設定データは破棄され、ガイダンス領域102は図5に示した状態のものに戻される。
【0066】
図7は、上記の検査領域を設定するために導出される主要なパラメータを示す。図中、PWは電極ピンの幅であり、PMは電極ピンの長さであり、PDは電極ピン間のピッチである。また、LWはランドの幅であり、LMは部品の端縁からランドの端縁までの距離である。SDは、部品の一角部からその直近の電極ピンまでの距離(以下、この距離を「マージン」と呼ぶ。)である。
【0067】
図8は、抽出ボタン110の操作に応じて検査データ作成システムが実行する処理の手順を示す。以下、このフローチャートに沿って、SOPやQFPを対象に検査領域の設定データを作成する場合の処理を説明する。
【0068】
この処理では、まず、実装後基準画像を対象に、指定枠32に対応する範囲から電極ピンの画像を抽出する(ST101)。なお、この実施例では、指定枠32内に3本の電極ピンおよびこれらに対応するランドが含まれるようにすることを求めているが、部品本体領域30の一辺に沿う範囲を指定するのであれば、4本以上の電極ピンが含まれる範囲まで指定枠32が拡大されても、その指定を有効とする。しかし、ST101で抽出された電極ピンが2本以下の場合には、指定枠32による指定を受け付けずに、ガイダンス領域102に再度の指定を求めるメッセージを表示するなどのエラー処理を実行する。
【0069】
ST101において3本以上の電極ピンが抽出された場合(ST102が「YES」)には、これらの抽出結果に基づき、各電極ピンの幅および長さを計測し、それぞれの平均値を求める。そして、幅の計測値の平均値をPWとし、長さの計測値の平均値をPMとする(ST103)。
【0070】
つぎに、ステップST104では、1番目のピンと2番目のピンとの間の距離、および2番目のピンと3番目のピンとの間の距離をそれぞれ計測し、各計測値に基づき電極ピン間のピッチPDを特定する。この処理では正確を期すために、図9に示す想定ピッチテーブルを参照して各計測値に最も適合する想定ピッチを特定し、特定された想定ピッチをピクセルの単位に置き換えたものをPDとする。なお、想定ピッチテーブルには、開発者が経験的に構築した情報に基づくピッチの具体的な値(ただし、図9ではa〜gの文字により示す。)が格納されている。
【0071】
つぎに、部品本体の角部のマージンSDを求める処理を実行する(ST105)。ここでは、指定枠32から抽出された電極ピンの中で部品本体領域30の角部に最も近いものに着目し、当該角部と着目した電極ピンとの間の距離を計測し、その計測値をマージンSDとする。
【0072】
つぎに、実装前基準画像に処理対象を切り替えて、指定枠32に対応する範囲からランドを抽出する(ST106)。さらに、抽出された各ランドの幅および長さを計測し、各幅の計測値の平均値をLWとし、各長さの計測値の平均値をLMとする(ST107)。
【0073】
このようにして各種パラメータが導出されると、ST108では、部品本体領域30の指定枠に対応する辺を基準の辺として、この基準の辺の両端にそれぞれマージンSDを設定する。そして、両端のマージンSDを除いた範囲の長さとピッチPDとを用いて、基準の辺における電極ピンの数および各電極ピンの位置を特定する。
【0074】
つぎに、ST109では、上記の処理により特定された各電極ピンに検査領域を割り付ける。具体的には、電極ピンやランドの幅および長さを示すパラメータPW,PM,LW,LMに基づき、電極ピン単位の検査領域(図6(3)のS11,S21,S31,S41)の幅や長さを特定し、これらを各電極ピンにつき特定した位置に設定する。さらに、これらの検査領域を3個または4個の単位でグループ分けして、グループ単位の検査領域(図6(3)のS1,S2,S3,S4)を設定する。さらに、ブリッジ検査用の検査領域や、ランドに対する検査領域などを設定する。
なお、電極ピン単位の検査領域を特定する場合には、電極ピンとランドとの幅方向が中心位置で位置合わせされているものとして、検査領域の幅を設定する。
【0075】
上記の処理により、基準の辺に対応する検査領域が設定されると、これらの検査領域を180度回転させたものを基準の辺に対向する辺に設定する(ST110)。なお、検査領域の回転処理として、この実施例では、画像中の検査領域の配列を時計回りまたは反時計回りに回転させるが、これに限らず、検査領域の配列を、その配列方向を軸として軸回転させる処理(各検査領域を裏返した状態にする変換処理)を行ってもよい。
処理対象の部品がSOPである場合には、つぎのST111が「NO」となり、これをもって検査領域の設定処理が終了する。
【0076】
一方、処理対象の部品がQFPである場合(ST111が「YES」)には、部品本体領域の基準の辺に直交する二辺のうちの一方を基準の辺に変更して(ST112)、この基準の辺における電極ピンの数および位置を特定し(ST113)、その特定結果に基づき検査領域の割り付け処理を実行する(ST114)。さらに、この処理により設定された検査領域を180度回転させたものを、基準の辺に対向する辺に設定する(ST115)。これをもって、検査領域の設定処理が終了となる。
【0077】
ST113,ST114,ST115では、それぞれST108,ST109,ST110と同様の処理を実行する。ただし、処理対象の部品の部品本体が正方形でない場合には、直交する二辺におけるマージンが異なる場合がある。このマージンの違いに対応するためにST114では、電極ピン単位の検査領域を割り付けた後に、これらの検査領域の配列の中心位置が基準の辺の中心に位置合わせされるように、各検査領域を微調整する。
【0078】
また、図9に示した想定ピッチテーブル中に値が接近したピッチが複数格納されている場合には、これらが想定ピッチテーブル中に画像から計測されたピッチに近似して、いずれを選択するのが良いかを判別するのが困難になる場合があると考えられる。この点につきこの実施例では、ST104において、想定ピッチテーブル中の2以上の値が画像から計測されたピッチに近似した場合には、これらの値をすべてPDとして仮設定する。さらにST108においては、PDの各仮設定値に基づき電極ピンの数および位置を特定し、各電極ピンを等間隔により近い状態で配置できたときの特定結果およびその特定に用いたPDを採用する。さらに、この後にST113を実行する場合には、ピッチPDとして、ST106で採用した方の値を使用する。
【0079】
また、図4〜6に示した例では、各ランドの幅が均一であるものとしたが、基板によっては、図10に示すように、端部のランドの幅LW1が他のランドの幅LW2より大きくなっている場合もある。このような場合には、ST107では、各幅LW1およびLW2を個別に算出して、これらの値を検査領域の設定に反映させる。
【0080】
この実施例で指定枠32内に3本以上の電極ピンを含めることを要求するのは、上記の例のようなランドの幅のばらつきや、電極ピンやランドを画像から抽出する際の抽出精度を考慮してのことである。ただし、抽出の精度を保証できるのであれば、一番端とその隣の2つの電極ピン、ならびにこれらに対応するランドのみを含む範囲にまで指定枠32の有効範囲を許容してもよい。
【0081】
上記のとおり、この実施例では、SOPやQFPについては、各電極ピンや各ランドの配置の規則性や部品の線対称の形状を利用して、部品本体の一辺に沿って並ぶ電極ピンのうち、端から順に3本の電極ピンおよびこれらに対応するランドを画像から抽出し、抽出された部位における規則性を部品全体に適用することによって、全ての電極ピンおよびランドに対する検査領域を設定する。よって、電極ピンやランドを抽出するための画像処理にかかる負担が軽減され、検査領域の設定に要する処理の時間を短縮することが可能になる。また、ユーザが部品本体領域30や指定枠32を正しく設定すれば、これらの指定に基づき、電極ピンやランドの配置の規則を示すパラメータを十分に精度良く求めることができるから、検査領域の設定の精度を確保することができる。
【0082】
またこの実施例では、指定枠32に対応する範囲のランドや電極ピンの画像が抽出に適さない場合には、変更ボタン111を用いて指定枠32の位置を変更することができる。よって、ユーザは、ランドや電極ピンの抽出に最も適した場所を選択して、指定枠32による指定を行うことができるから、検査領域の精度を確保することができる。
【0083】
しかしながら、部品の構成や画像の状態によっては、画像からのランドや電極ピンの抽出精度を確保するのが困難な場合もある。そこでこの実施例では、画像処理によらずに、ユーザにランドや電極ピンに対応する範囲を指定させる手動設定のモードも実行できるようにしている。
【0084】
図11は、手動設定が選択されている場合の作業画面の例を示す。この例の画面は、部品本体領域30の指定が完了した段階のもので、画像表示領域100には、処理対象部品の左下角部に近い位置に、図11の例よりも小さい指定枠33が表示される。また、ガイダンス領域102には、図5の例と同様のボタン106,110に加えて、指定や設定の対象を切り替えるための切替ボタン112,113,114、リセットボタン115、上下左右の各方向への移動ボタン116などが設けられる。
【0085】
図12は、ユーザの指定操作に応じた画像表示領域100内の表示の変化を、処理対象部品201の一部(指定枠33に対応する部分)に限定して示す。
この実施例では、一列に並ぶ電極ピンを端から順に2つ指定すると共に、これらの電極ピンに対応するランドを指定する。
【0086】
図11および図12を参照して具体的な作業の流れを説明すると、まず、ガイダンス領域内102の「1ピン」ボタン112を操作することにより、指定枠33を呼び出して、この指定枠33を左端の電極ピンに合うように調整する(図12(1))。つぎに、「1ランド」ボタン113を操作すると、上記の指定枠33よりやや外側に、この指定枠33とは異なる色彩により、ランド指定用の指定枠34が表示される(図12(2))。ユーザは、この指定枠34の先端が左端のランドの先端に合うように調整する(図12(3))。
【0087】
つぎにユーザがガイダンス領域102の「2ピン・ランド」のボタン114を操作すると、各指定枠33,34が複写されて、現在の表示位置の右手に表示される(図12(4))。ユーザは、この複写された指定枠33,34を、マウスのドラッグ・ドロップ操作や矢印キー116の操作により、左から2番目の電極ピンおよびランドに位置合わせする(図12(5))。なお、図10のように、端部のランドが幅広になっている場合には、2番目のランドに対する指定枠34や指定枠33,34間の位置関係を調整する作業が必要になる。
【0088】
上記のようにして、部品本体領域30の一角部の直近の電極ピンおよびその隣の電極ピンと、これらに対応するランドとを指定することができる。この後、抽出ボタン110が操作されると、検査データ作成システムでは、各指定枠33,34をそれぞれ電極ピンおよびランドとみなして、図8のST103以下と同様の処理(ただし、ST106を除く。)を実行する。これにより、電極ピンやランドを抽出するための画像処理を行うことなく、検査領域を設定することが可能になる。
【0089】
したがって、画像からの電極ピンやランドの抽出精度に問題があって、検査領域の設定がうまくいかなかった場合でも、ユーザが電極ピンやランドを目視で確認して、これらを正しく指定すれば、検査領域を精度良く設定することが可能になる。またユーザによる指定も、電極ピンおよびランドを2つずつ指定する程度のものであるので、大きな負担をかけることがなく、検査領域の設定作業を短時間で完了することができる。
【0090】
なお、1番目の実施例では、指定枠32内に電極ピンおよびランドを含むように指定することを要求しているが、これに限らず、指定枠32に完全に含める必要がある部位を電極ピンのみに限定してもよい。この場合でも、たとえば、実装後基準画像の指定枠32に対応する領域から各電極ピンを抽出した後に、実装前基準画像を対象に、各電極ピンの先端に対応する位置を起点にランドの色彩を検索することにより、各電極ピンに対応するランドを抽出することができるから、図7に示したパラメータを支障なく求めることが可能になる。
【0091】
また、各実施例とも、SOP,QFPなど、対向する2辺間における電極ピンの配列に線対称の関係が成立する部品を設定の対象としたが、このような形状以外の部品(たとえばコネクタ)に関しても、電極ピンが複数配置されている辺に指定枠32(または33,34)を設定することにより、上記実施例と同様の手法で検査領域の設定データを作成することが可能である。
【0092】
また、上記の実施例では、部品型式に対応するサブ部品種用のライブラリデータを作成する処理の中で、検査領域の設定データを作成しているが、ライブラリデータによらずに、基板200の実装後基準画像を用いて個々の部品毎に検査領域の設定データを特定する場合にも、同様の処理を適用することができる。
【0093】
また、処理対象の画像は、上記実施例のような2次元画像に限らず、2次元画像に各部位の高さデータを組み合わせた3次元画像や、X線CT画像から復元された3次元情報を対象にした検査を行う場合にも、上記と同様の方法で検査領域の設定データを特定することが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 検査装置
2 カメラ
7 パーソナルコンピュータ
17 モニタ
30 部品対応領域
32,33,34 指定枠
100 画像表示領域
102 ガイダンス領域
110 抽出ボタン
201 部品
S1,S2,S3,S4,S11,S21,S31,S41 検査領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装基板上の部品の実装状態を画像処理の手法により検査することを前提として、この検査に必要な検査領域の設定データを作成する方法、およびこの方法が適用された検査データ作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装基板の外観検査装置では、一般に、検査対象の基板を撮像して2次元画像を生成し、画像中の部品にその部品種に応じた検査領域を設定し、検査領域内の画像を処理することにより、はんだ付け状態の適否や部品の位置ずれの有無などを判別する(特許文献1を参照。)。また、2次元画像に高さ情報を加えて3次元画像とし、これを用いて電極や部品の高さを判別するものもある(特許文献2を参照)。
【0003】
この種の検査装置における検査データには、一般に、検査領域の設定データ(検査領域の数および各検査領域の設定位置および大きさを示すもの)や、各検査領域で被検査部位を抽出するための2値化しきい値、各検査領域における測定処理のロジック、判定基準値などが含まれる。具体的な検査の内容は、部品の外観に応じて異なるため、従来の基板外観検査装置では、ティーチング作業の負荷を軽減するために、あらかじめ部品の種毎に「ライブラリデータ」と呼ばれる標準の検査データを用意し、検査対象の部品に対し、それぞれその部品種に応じたライブラリデータを適用するようにしている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、教示対象の部品の具体的な画像と、この部品に対応する部品種について入力すべき項目とを表示し、各項目につき、所定数の外観情報の選択肢の中から表示中の部品に該当するものをユーザに選択させ、選択された外観情報に適合するライブラリデータを読み出して、これに基づき教示対象の部品に対する検査領域を特定することが記載されている。
【0005】
また特許文献2にも、電極ピン(リード)の3次元形状や輝度値に基づき、基板の3次元画像からリード領域を抽出し、総リード数、リード間距離などから検査部品の部品種類を決定することや、決定した部品種類を基にあらかじめ記憶した部品ライブラリを選択することなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−32525号公報
【特許文献2】特開2006−250609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
QFP,SOPなどのIC部品では、電極ピンの数やピッチが部品によって異なり、電極ピンの長さにもばらつきがある。このため、出願人が提供する従来の外観検査装置では、IC部品用の検査領域については、大まかな設定ルールのみを定め、検査対象の基板の基準画像から各電極ピンやこれらが接続されるランドを自動抽出して、抽出された電極ピンやランドに上記の設定ルールを適用することにより、検査領域を特定するようにしている。
【0008】
しかし、多数の電極ピンやランドを正しく抽出するには抽出用のプログラムが複雑になり、電極ピンやランドをすべて抽出し終えるまでにかなりの時間がかかる。また、画像中の抽出対象部位の色彩や明るさのばらつきが大きい場合に、均一な基準で抽出するのが困難である点や、部品の周囲の抽出対象部位によく似た色彩の部位が誤抽出される点も問題となっている。
【0009】
本発明は上記の問題点に着目し、多数の電極ピンを具備する部品を対象に検査領域の設定データを作成する場合に、ユーザの簡単な指定操作に応じて検査領域を特定することにより、検査領域の設定データの作成を高速化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による検査領域の設定方法は、部品実装後の基板の部品の電極と他の部位との区別が可能で、その表面を正面から観測した状態を表す画像を用いて、当該基板上の各部品の実装状態の検査に用いられる検査領域の設定データを作成するもので、以下の第1〜第6のステップを実行することを特徴とする。
【0011】
第1ステップでは、複数の電極ピンが部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品を設定の対象として、この対象部品の実装状態を表す基準画像をモニタに表示する。第2ステップでは、基準画像の表示画面において、対象部品の部品本体に対応する第1の領域を指定する操作と、この第1の領域の一辺を基準に、基準の辺に沿う方向および基準の辺から第1の領域の外側に向かう方向における範囲指定により第2の領域を指定する操作とを受け付ける。なお、これらの指定は、第1領域を指定した後に第2領域を指定するのが好ましいが、指定の順序を逆にすることを排除するものではない。
【0012】
第3ステップでは、第1および第2の領域が指定されたことに応じて、第2の領域に対応する範囲の基準画像から電極ピンを抽出する。第4ステップは、第3ステップの処理により基準の辺に沿って複数の電極ピン抽出されたことに応じて実施されるもので、抽出された電極ピン間の関係および電極ピンと第1の領域との関係に基づき電極ピンの配置に関する規則を特定する。
【0013】
第5ステップでは、第1の領域の各辺のうち少なくとも前記基準の辺に第4ステップで特定された規則を適用して、第1の領域の外側に、電極ピンに対する検査のための検査領域を前記規則が適用された辺に沿って複数設定する。第6ステップでは、第5ステップの実行に応じて、モニタに表示されている基準画像を検査領域が設定された状態を表すものに更新し、更新後の表示に対して確定操作が行われたことに応じて検査領域の設定に用いられた設定データを確定する。
【0014】
上記の方法によれば、複数の電極ピンが部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品に対する検査領域の設定データを作成する場合には、モニタに表示された基準画像の画面上でユーザが第1および第2の領域を指定したことに応じて、第1の領域の少なくとも一辺に沿って複数の検査領域が自動的に設定され、基準画像の表示がその設定状態を表すものに切り替えられる。ユーザが、この表示により検査領域の設定が適切であると判断して確定操作を行うと、表示中の検査領域の設定データが確定される。
【0015】
SOPやQFPの部品本体の電極ピンが配置される辺では、通常、両端部に等しいマージンをおいて、大きさおよび形状が等しい電極ピンが等間隔で配列される。したがって、このような部品に対し、ユーザが、設定対象の部品の部品本体に対応する領域を正しく指定すると共に、この部品本体の一辺に沿って並ぶ電極ピンを、端に位置する電極ピンから順に2つ以上選択して、これらに対応する領域を正しく指定すれば、電極ピンの配置に関する規則を正しく特定し、検査領域を精度良く設定することが可能になる。
【0016】
上記の方法の好ましい態様では、第4ステップでは、電極ピンの配置に関する規則として、電極ピンの幅および長さならびにピッチと、第1の領域の一角部からその直近の電極ピンまでの距離とを、それぞれ特定する。このような情報を特定すれば、部品本体の一辺における電極ピンの数や位置を割り出し、個々の電極ピンやランド毎に検査領域を設定することが可能になる。
【0017】
他の好ましい態様では、部品実装前の基準画像および部品実装後の基板の基準画像を準備して、後者の基準画像を第1ステップにおいて表示すると共に、第3ステップでは、第2指定操作による指定を各基準画像に適用して、第2の領域に対応する範囲の部品実装後の基板の基準画像から電極ピンを抽出すると共に、第2の領域に対応する範囲の部品実装前の基板の基準画像からランドを抽出する。さらに第4ステップでは、電極ピンの配置に関する規則として、電極ピンの幅および長さならびにピッチと、第1の領域の一角部からその直近の電極ピンまでの距離と、対応関係にある電極ピンとランドとの位置関係とを、それぞれ特定する。
【0018】
上記の態様によれば、部品本体の一辺に沿って並ぶ電極ピンおよびこれらに対応するランドが、それぞれ端に位置するものから順に複数含まれるようにユーザが第2の領域を指定することにより、この領域から電極ピンおよびランドの組み合わせが複数抽出される。そして、部品本体領域の一辺における電極ピンの数や位置を割り出すのに必要な情報とともに、電極ピンとランドとの位置関係が特定されるので、個々の電極ピンとランドとの接続状態を検査するための検査領域を精度良く設定することが可能になる。
【0019】
上記の方法の他の好ましい態様では、矩形状の部品本体の対向する2辺にそれぞれ複数の電極ピンが配置されると共に、これらの辺における電極ピンの配列の間に線対称の関係が成立する部品(SOP)を設定の対象とする。この場合の第5ステップでは、基準の辺に第4ステップで特定された規則を適用して、第1の領域の外側で前記基準の辺に沿う位置に複数の検査領域を設定するステップと、これらの検査領域を180度回転させたものを第1の領域の外側で基準の辺に対向する辺に沿う位置に設定するステップとを実行する。
【0020】
別の好ましい態様では、矩形状の部品本体の各辺にそれぞれ複数の電極ピンが配置されると共に、対向する関係にある2辺における電極ピンの配列の間に線対称の関係が成立する部品(QFP)を設定の対象とする。この場合の第5ステップでは、基準の辺および基準の辺に直交する2つの辺のうちの一方を対象にして、それぞれ第4ステップで特定された規則を適用して、第1の領域の外側で対象の辺に沿う位置に複数の検査領域を設定するステップと、これらの検査領域を180度回転させたものを第1の領域の外側で対象の辺に対向する辺に沿う位置に設定するステップとを実行する。
【0021】
上記の各態様によれば、対向する2辺間の対称性を利用して、一方の辺に対して設定した検査領域を他方の辺に適用して、各検査領域の設定データを効率良く作成することが可能になる。
【0022】
つぎに、本発明が適用される検査データの作成システムは、部品実装後の基板の部品の電極と他の部位との区別が可能で、その表面を正面から観測した状態を表す画像を用いて、当該基板上の各部品の実装状態の検査に必要な情報を作成するものである。このシステムは、複数の電極ピンが前記部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品を設定の対象として、この対象部品の実装状態を表す基準画像をモニタに表示する基準画像表示手段;基準画像の表示画面において、対象部品の部品本体に対応する第1の領域を指定する操作と、この第1の領域の一辺を基準に、基準の辺に沿う方向および基準の辺から第1の領域の外側に向かう方向における範囲指定により第2の領域を指定する操作とを受け付ける領域指定受付手段;領域指定受付手段が第1の領域および第2の領域にかかる指定を受け付けたことに応じて、第2の領域に対応する範囲の基準画像から電極ピンを抽出する抽出処理手段;抽出処理手段により基準の辺に沿って複数の電極ピンが抽出されたとき、抽出された電極ピン間の関係および電極ピンと第1の領域との関係に基づき電極ピンの配置に関する規則を特定する配置規則特定手段;第1の領域の各辺のうち少なくとも基準の辺に配置規則特定手段により特定された規則を適用して、第1の領域の外側に、電極ピンに対する検査のための検査領域を前記規則が適用された辺に沿って複数設定する領域設定手段;領域設定手段により検査領域が設定されたことに応じて、前記モニタに表示されている基準画像を前記検査領域が設定された状態を表すものに更新し、更新後の表示に対して確定操作が行われたことに応じて前記検査領域の設定に用いられた設定データを確定する領域確定手段、の各手段を具備することを特徴とする。
【0023】
上記のシステムによれば、先に述べた検査領域の設定方法を実行して検査領域の設定データを効率良く作成することができる。なお、このシステムは、検査を行う装置に導入することができるが、パーソナルコンピュータなどの外部のコンピュータに導入することもできる。後者の場合には、作成された検査データは、たとえば通信により検査装置に移植することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、SOP,QFPなど、複数の電極ピンが部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品について、各電極ピンおよびこれらに対応するランドの状態に適した検査領域を容易に特定して、検査領域の設定データの作成にかかる効率を向上することが可能になる。また、表示されている部品の形状に合わせて第1の領域を指定し、当該部品の一辺における電極ピンおよびランドの配列を対象に、その端部を含む一部の範囲を指定すれば、検査領域を正しく設定することができるので、設定作業に慣れていないユーザでも、適切な検査領域を容易に設定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】基板外観検査装置の構成を検査データ作成用のコンピュータとの関係とともに示す図である。
【図2】検査データ作成システムによるバリエーションの作成処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】チップ部品に対する検査領域の設定方法を示す図である。
【図4】SOPを対象にした検査領域の設定画面を示す図である。
【図5】図4の画面において部品対応領域を指定した後の画面表示の変化を示す図である。
【図6】指定枠による指定操作の例およびこの指定に応じた検査領域の設定例を示す図である。
【図7】検査領域の設定のために導出されるパラメータを示す図である。
【図8】SOPおよびQFPを対象にした検査領域の設定処理についての詳細を示すフローチャートである。
【図9】想定ピッチテーブルのデータ構成例を示す図である。
【図10】ランドの幅が一定でない例を示す図である。
【図11】電極ピンおよびランドに対応する領域を手動で設定する場合の設定画面を示す図である。
【図12】図11の画面において実施される指定操作の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、部品実装基板の自動外観検査を行う検査装置1の主要構成を、この検査装置1に接続されるパーソナルコンピュータ7ととともに示す。
【0027】
この実施例の検査装置1は、はんだの印刷工程、部品の実装工程、およびリフロー工程により製作された完成体の基板200を対象にした検査を実行するためのもので、カラー撮影用のカメラ2、照明部3、基板ステージ4、および制御処理部5などにより構成される。
【0028】
基板ステージ4には、基板200を支持するためのテーブル部41や、このテーブル部41をX,Yの各軸方向に移動させるための移動機構42などが設けられる。カメラ2は、基板ステージ4の上方に、撮像面を下方に向け、かつ光軸を鉛直方向に合わせた状態で配備される。
【0029】
照明部3には、赤、緑、青の各色彩光をそれぞれ発する円環状光源3R,3G,3Bが含まれており、基板ステージ4とカメラ2との間に配置される。各光源3R,3G,3Bは、それぞれ径が異なり、また各中心部をカメラ2の光軸に合わせた状態で配備される。これにより、基板200に対し、赤、緑、青の各光が、それぞれ仰角が異なる方向から照射されるので、はんだフィレットや後記する電極ピンなどの鏡面反射性の高い部位の傾斜状態を各照明光の色彩により表現した画像を生成することができる。図3〜6等の画像の模式図では、画像中の色彩を網点などのパターンに置き換えて示す。
【0030】
制御処理部5には、コンピュータによる制御部50のほか、画像入力部51、撮像制御部52、照明制御部53、XYステージ制御部54、メモリ55、表示部56、入力部57、通信インターフェース58などが設けられる。
【0031】
画像入力部51には、カメラ2からの画像をディジタル変換するためのA/D変換回路などが含まれる。撮像制御部52は、カメラ2に対し、撮像を指示するタイミング信号を出力し、照明制御部53は、各光源3R,3G,3Bの点消灯動作や光量を制御する。XYステージ制御部54は、基板ステージ4の移動のタイミングやX,Yの各軸方向における移動量を制御する。
【0032】
メモリ55には、検査を実行するための一連の処理手順が記述されたプログラムや検査データ格納用のデータベース(以下、「検査用データベース」という。)が格納される。検査用データベースには、検査対象の基板200に実装される部品毎に、設定すべき検査領域の設定に関するデータ(検査領域の位置および大きさを示すもの)、各検査領域で被検査部位の色彩を検出するための2値化しきい値、被検査部位の測定値(主として面積)の適否を判定するための判定ロジックならびに判定基準値など、複数種の検査データが設定される。
【0033】
本明細書では、上記の検査データのうち、検査領域の位置および大きさを示すデータを「検査領域の設定データ」と呼び、それ以外の検査データを「検査用パラメータ」と総称する。
【0034】
つぎに、この実施例の基板200は複数の領域に分けて撮像される。検査用データベースには、基板200に対するカメラ2の視野の割り付けに関するデータも格納されている。制御部50は、このデータに基づきXYステージ制御部54を介して基板ステージ4の移動を制御することにより、カメラ2を各撮像対象領域に順に位置合わせして撮像を行う。毎時の撮像により生成されたカラー画像は画像入力部51を介して制御部50に入力され、その内部のメモリ(RAMなど)に格納される。制御部50は、この内部メモリに格納された画像中の部品に順に着目し、着目部品に対し、その検査データに基づき、検査領域の設定、2値化、計測、良否判定の各処理を順に実行する。
【0035】
制御部50は、通信インターフェース58および通信回線6を介して、図中のパーソナルコンピュータ7や図示しない上位機器に接続されている。制御部50は、1枚の基板200の検査が終了する都度、その基板200に対する検査の結果や検査に用いられた画像などを、上位機器に出力する。また、検査結果や画像は、表示部56にも表示される。
【0036】
パーソナルコンピュータ7には、上記の検査装置で使用される検査データを作成するためのシステム(以下、「検査データ作成システム」または単に「システム」という。)が組み込まれている。この検査データ作成システムには、複数の部品種にそれぞれサブ部品種を対応づけた階層構造データが登録されている。部品種は、想定され得る各種部品の外観を、主として部品本体の形状の違いにより分類することで設定されたものである。この部品種を、部品の色彩や電極の形状などの違いに基づき細分類したものがサブ部品種である。
【0037】
各部品種には、当該部品種に適した検査領域の基本の設定ルールが登録されている。また各サブ部品種には、上位の部品種の検査領域の設定ルールへのリンク情報と、サブ部品種の外観の特徴に応じた検査用パラメータとを含む基本ライブラリデータとが登録されている。
【0038】
この実施例では、検査装置において、基板200の部品実装前および部品実装後の良品モデルをそれぞれ複数の領域に分割して領域毎に撮像し、生成された画像をつなぎ合わせることにより、基板200の全体構成を表す基準画像を生成する。以下では、部品実装前の基板を示す基準画像を「実装前基準画像」といい、部品実装後の基板を示す基準画像を「実装後基準画像」という。
【0039】
検査データ作成システムでは、各基準画像や基板200のCADデータを入力し、これらの入力情報と上記の基本ライブラリデータとを用いて、CADデータが表す部品の型式毎に、その型式に適したサブ部品種を特定し、特定されたサブ部品種にリンクする検査用パラメータを使用して、当該型式に対応するバリエーションのライブラリデータ(以下、単に「バリエーション」という。)を作成し、これを登録する。なお、既にバリエーションが登録されている型式については、この処理は不要である。
【0040】
上記の登録処理が終了すると、システムでは、CADデータが示す各部品にそれぞれその型式に応じたバリエーションを適用して、各部品の検査データを作成する。完成した検査データは、検査装置1に送信され、メモリ55内の検査用データベースに格納される。
【0041】
図2は、上記のバリエーションの作成に関して検査データ作成システムが実行する処理の概略手順を示す。
このフローチャートを参照して説明すると、まず、検査データ作成システムは、基板200のCADデータからバリエーションが登録されていない部品を検索し、この検索で抽出された部品の部品型式を示すリスト(以下、「未登録リスト」という。)を図1に示すモニタ17に表示する(ST1)。ユーザが未登録リスト中の一部品型式を選択すると(ST2が「YES」)、検査データ作成システムは、選択された型式の部品の実装位置をCADデータから割り出し、この部品を含む範囲内の実装後基準画像をモニタ17に表示する(ST3)。
【0042】
このときの表示画面には、各種部品種やサブ部品種のサンプル画像のリストも表示される。ユーザは、選択中の型式の部品の形状や色彩をこのリストと照合して、当該部品に適合する部品種およびサブ部品種を選択する。
さらにユーザは、表示中の画像上で設定対象の部品の部品本体に対応する領域を指定する。ここで指定される領域を、以下では「部品本体領域」という。
【0043】
検査データ作成システムでは、上記の各操作を受け付けると(ST4,5)、選択された部品種およびサブ部品種に適合する検査領域の設定ルールを読み出し、このルールを部品本体領域が設定された範囲に適用して検査領域を設定する(ST6)。さらに、表示中の実装後基準画像を、検査領域の設定状態を示すものに更新する(ST7)。
【0044】
この表示に対し、ユーザが確定操作を行うと(ST8)、検査データシステムでは、表示中の検査領域の設定データに、設定対象の部品につき選択されているサブ部品種の検査用パラメータを組み合わせ、この組み合わせを新規のバリエーションとして登録する(ST10)。
なお、この新規バリエーションには、バリエーション名として設定対象の部品の品番名称が付与される。また、検査領域の設定状態の表示に対し、ユーザがその表示を不適当であると判断してキャンセル操作を行った場合には、ユーザの手操作に応じて検査領域を修正する(ST9)。
【0045】
以下、未登録の部品型式がなくなるまでこれらが順に選択されて、上記と同様の処理が実行される。これにより、全ての型式に適合するバリエーションが作成されて登録されると、ST11が「NO」となり、バリエーションの作成処理を終了する。
【0046】
以下、ST6の検査領域の設定処理について詳細に説明する。
この実施例では、電極の数が比較的少なく、かつ電極数が固定されているチップ部品に対しては、図3(A)に示すように、処理対象の部品202の部品種に設定されている基本のルールに基づき、ユーザにより指定された部品本体領域30を基準にして各種検査領域S101〜S104を設定する。ただし、基板側のランドの位置や大きさには、ばらつきがあるので、図3の(B)(C)に示すように、実装前基準画像の対応範囲からランドを抽出し、この抽出結果に応じて、はんだ付け状態の検査用の検査領域S101,S102を修正するようにしている。
なお、図中の検査領域S103は、部品の有無を判別する検査に用いられる。また、検査領域S104は、実際の処理対象画像から検査対象の部品やランドを抽出して、各検査領域S101〜S103の位置を微調整する目的に使用される。
【0047】
上記に対し、SOP,QFPなど、多数の電極ピンが配置され、部品型式によって電極ピンの数が異なる部品を設定対象とする場合には、まず電極ピンの数やピッチを特定する必要がある。この特定をするには、実装前基準画像からランドを抽出したり、実装後基準画像から電極ピンを抽出する方法が考えられるが、微小で数が特定されていない部位を正確に抽出するには複雑な処理を行う必要があり、処理時間が長びく可能性がある。またランドに関してメッキ処理がされている場合に、表面の凹凸むらなどによって画像中の色彩や明るさにばらつきが生じて抽出に失敗したり、部品の周囲にある電極ピンやランドによく似た色の部位が誤抽出されるなど、抽出の精度を確保できない可能性もある。
【0048】
そこで、この実施例では、SOPやQFPでは電極ピンが規則性をもって配置されていることや、線対称の形状を有している点に着目し、ユーザに一部の電極ピンやランドを含む領域を指定させて、その領域内の画像から電極ピンおよびランドの規則性を特定し、この結果に基づき、全ての電極ピンおよびランドに対する検査領域を設定するようにしている。
【0049】
図4および図5は、上記の方法で検査領域を設定する際に用いられる作業用画面を提示される順に示す。この画面の左側には、基板200の実装後基準画像を表示するための画像表示領域100が設けられ、右側には、選択対象の部品に関する情報を表示する欄101や、ユーザの設定操作を支援するためのガイダンス領域102などが設けられる。
【0050】
図4に示す画面は、処理対象の部品(現在選択されている型式の部品)の部品種およびサブ部品種が選択されたことに応じて表示されたもので、画像表示領域100には、処理対象の部品201(この例ではSOP)を中心にした実装後基準画像が、デフォルトの設定による部品本体領域30とともに表示されている。また、画面の右上およびガイダンス領域102の中央部には、選択されたサブ部品種のサンプル画像103が表示される。
【0051】
部品本体領域30は、各検査領域を設定するための基準として用いられるもので、範囲を表す矩形枠の一辺に三角形状のマーク31が設定されている。このマーク31は部品201の向きを示すもので、たとえば、マーク31が右向きであれば部品201の向きは0度であり、マーク31が上向きであれば、部品201の向きは90度である。この部品201の向きは、CADデータに基づき設定される。
【0052】
ガイダンス領域102には、「自動」および「手動」のタブが設けられる。図4,5の例のように「自動」のタブが選択されている場合には、電極ピンやランドを自動抽出するモードが設定され、ガイダンス領域102には、自動抽出の対象領域の指定に関するユーザへのメッセージ104が表示される。
【0053】
また、このときのガイダンス領域102には、2つのボタン105,106が設けられている。ボタン105は部品本体領域の指定が終了したことを通知するものであり、以下、このボタン105を「指定ボタン105」という。ボタン106は、部品本体領域30の向きが検査データの定義と異なる場合に、この向きを変更するためのものである。
【0054】
さらに、ガイダンス領域102の下方には、画面を一段階前のものに戻すための「戻る」ボタン107などが設けられる。また、画像表示領域100の下方には、この領域100内の表示倍率を切り替えるための設定領域108や、表示中の画像を切り替えるための切り替え用のボタン109などが設けられる。ボタン109は、画像表示領域100内の設定対象の部品の状態が良くない場合などに操作されるもので、この操作が行われると、画像表示領域100内の表示は、選択中の部品型式で、現在表示されているものとは別の場所にある部品を中心にするものに更新される。
【0055】
図4の例の画像表示領域100に表示されている部品本体領域30は、選択中の部品種の基本の設定ルールに基づいて設定されたものであるが、実際の部品には適合していない。この実施例では、ユーザに、マウスを用いて、部品本体領域30の各辺を実際の部品本体に合わせるように調整することを要求する。ユーザがこの要求に応じた操作を行って指定ボタン105を操作することにより、図2のST5の受付処理が実行される。
【0056】
部品本体領域30の指定が受け付けられると、画面は図5に示すものに切り替えられる。この画面の画像表示領域100では、調整後の部品本体領域30の左下の角部の近傍位置に矩形枠32が表示される。またガイダンス領域102では、コメント104の内容が、矩形枠32による指定操作を指示するものに変更され、指定ボタン105に代わって、「抽出」の文字が付されたボタン110が設けられる。このボタン110は、指定枠32内の画像を用いて検査領域を自動設定することを指示するためのものである。
以下、上記の矩形枠32を「指定枠32」といい、ボタン110を「抽出ボタン110」という。
【0057】
さらに、この段階より後の画面のガイダンス領域102の下方には、「枠変更」の文字を付したボタン111が設けられる。このボタン111は、指定枠32の位置を変更することを指示するためのものである。このボタン111が操作される都度、指定枠32は、部品本体領域30の各角部の近傍に順に移動する。
【0058】
ユーザは、ガイダンス領域102のコメント104に従って指定枠32の位置や大きさを調整し、抽出ボタン110を操作する。これにより部品本体領域30が第1の指定領域として、指定枠32に対応する領域が第2の指定領域として、それぞれ確定され、検査領域の自動設定処理が開始される。
【0059】
図6は、図5の画面より後の画像表示領域100における表示の推移を、処理対象の部品201に表示を限定して示す。図中の(1)(2)は、ユーザの指定枠32の調整作業に応じた表示を示し、(3)は最終的に検査領域が自動設定されたときの表示例を示す。
【0060】
この実施例の指定枠32は、マウスにより幅を自由に変更できるように設定されている。また、指定枠32の幅方向に沿う2辺のうちの一方は、初期段階から部品本体領域30の内側に位置づけられて固定されるが、部品本体領域の外側に位置する辺は自由に調整することができる。この実施例では、これらの調整機能を用いて、ユーザに、部品本体の一辺に沿って並ぶピン電極が一番左端のものから順に3本含まれるように指定枠32の幅を調整するとともに、指定枠32の外側の辺をランドの先端位置に合わせるように要求する。ユーザがこの要求に従って図6(1)(2)のように調整操作を行い、抽出ボタン110を操作すると、部品の検査に必要な全ての検査領域が設定され、表示状態は図6(3)に示すようなものに更新される。
【0061】
この表示では、設定された検査領域を示す矩形枠が部品201の画像に重ね表示される。
ここで設定される検査領域を簡単に説明すると、この実施例では、部品本体の一辺に沿って並ぶ電極ピンを3〜4個のグループに分けて、グループ毎に、そのグループ内の電極ピンおよびこれらに対応するランドが含まれる範囲に検査領域S1〜S4を設定する。また、個々の電極ピンにもそれぞれ個別に検査領域が設定されるが、図6(3)の表示例では、グループ毎に、そのグループ内の電極ピンの1つを代表として、代表の電極ピンに設定した検査領域S11,S21,S31,S41のみを表示する。
【0062】
また、この例では表示されていないが、S11,S21,S31,S41などの電極ピン単位の検査領域の間には、それぞれブリッジを検出するための検査領域が設定され、各電極ピンの先端からランドの先端までの範囲には、両者の間のフィレットの状態を検査するための検査領域が設定される。
【0063】
電極ピン単位の検査領域は、電極ピンの有無や位置ずれ、形状の適否などを判別する検査に用いられる。
また、グループ単位の検査領域S1〜S4は、撮像対象領域を割り付ける際の基準の単位として用いられる。すなわち、同じグループに含まれる範囲のすべてが同一の画像に含まれるように毎時の撮像対象領域が設定される。これにより電極ピンやランドの単位で実施される検査の精度を確保することができる。
【0064】
この実施例では、指定ボタン105が操作された後でも、抽出ボタン110を操作するまでの間であれば、部品本体領域30の位置や大きさを修正することができる。指定枠32も同様に、抽出ボタン110を操作する前であれば、何度でも調整することができる。また、ユーザが指定枠32の初期設定位置の画像の精度が良くないと判断した場合には、図5中の変更ボタン111を操作することによって、部品本体領域30の他の角部の付近で画像の精度が良い場所に、指定枠32を移動させることができる。
【0065】
抽出ボタン110が操作された後の全体画面に関しては図示していないが、ガイダンス領域102には、検査領域の設定を確定するための確定ボタンや、設定を破棄するキャンセルボタンなどが設けられる。ユーザが表示された検査領域を適切であると判断して確定ボタンを操作することにより、表示中の検査領域にかかる設定データが確定されて、先の図2のST10の処理が実行される。一方、キャンセルボタンが操作された場合には、検査領域の設定データは破棄され、ガイダンス領域102は図5に示した状態のものに戻される。
【0066】
図7は、上記の検査領域を設定するために導出される主要なパラメータを示す。図中、PWは電極ピンの幅であり、PMは電極ピンの長さであり、PDは電極ピン間のピッチである。また、LWはランドの幅であり、LMは部品の端縁からランドの端縁までの距離である。SDは、部品の一角部からその直近の電極ピンまでの距離(以下、この距離を「マージン」と呼ぶ。)である。
【0067】
図8は、抽出ボタン110の操作に応じて検査データ作成システムが実行する処理の手順を示す。以下、このフローチャートに沿って、SOPやQFPを対象に検査領域の設定データを作成する場合の処理を説明する。
【0068】
この処理では、まず、実装後基準画像を対象に、指定枠32に対応する範囲から電極ピンの画像を抽出する(ST101)。なお、この実施例では、指定枠32内に3本の電極ピンおよびこれらに対応するランドが含まれるようにすることを求めているが、部品本体領域30の一辺に沿う範囲を指定するのであれば、4本以上の電極ピンが含まれる範囲まで指定枠32が拡大されても、その指定を有効とする。しかし、ST101で抽出された電極ピンが2本以下の場合には、指定枠32による指定を受け付けずに、ガイダンス領域102に再度の指定を求めるメッセージを表示するなどのエラー処理を実行する。
【0069】
ST101において3本以上の電極ピンが抽出された場合(ST102が「YES」)には、これらの抽出結果に基づき、各電極ピンの幅および長さを計測し、それぞれの平均値を求める。そして、幅の計測値の平均値をPWとし、長さの計測値の平均値をPMとする(ST103)。
【0070】
つぎに、ステップST104では、1番目のピンと2番目のピンとの間の距離、および2番目のピンと3番目のピンとの間の距離をそれぞれ計測し、各計測値に基づき電極ピン間のピッチPDを特定する。この処理では正確を期すために、図9に示す想定ピッチテーブルを参照して各計測値に最も適合する想定ピッチを特定し、特定された想定ピッチをピクセルの単位に置き換えたものをPDとする。なお、想定ピッチテーブルには、開発者が経験的に構築した情報に基づくピッチの具体的な値(ただし、図9ではa〜gの文字により示す。)が格納されている。
【0071】
つぎに、部品本体の角部のマージンSDを求める処理を実行する(ST105)。ここでは、指定枠32から抽出された電極ピンの中で部品本体領域30の角部に最も近いものに着目し、当該角部と着目した電極ピンとの間の距離を計測し、その計測値をマージンSDとする。
【0072】
つぎに、実装前基準画像に処理対象を切り替えて、指定枠32に対応する範囲からランドを抽出する(ST106)。さらに、抽出された各ランドの幅および長さを計測し、各幅の計測値の平均値をLWとし、各長さの計測値の平均値をLMとする(ST107)。
【0073】
このようにして各種パラメータが導出されると、ST108では、部品本体領域30の指定枠に対応する辺を基準の辺として、この基準の辺の両端にそれぞれマージンSDを設定する。そして、両端のマージンSDを除いた範囲の長さとピッチPDとを用いて、基準の辺における電極ピンの数および各電極ピンの位置を特定する。
【0074】
つぎに、ST109では、上記の処理により特定された各電極ピンに検査領域を割り付ける。具体的には、電極ピンやランドの幅および長さを示すパラメータPW,PM,LW,LMに基づき、電極ピン単位の検査領域(図6(3)のS11,S21,S31,S41)の幅や長さを特定し、これらを各電極ピンにつき特定した位置に設定する。さらに、これらの検査領域を3個または4個の単位でグループ分けして、グループ単位の検査領域(図6(3)のS1,S2,S3,S4)を設定する。さらに、ブリッジ検査用の検査領域や、ランドに対する検査領域などを設定する。
なお、電極ピン単位の検査領域を特定する場合には、電極ピンとランドとの幅方向が中心位置で位置合わせされているものとして、検査領域の幅を設定する。
【0075】
上記の処理により、基準の辺に対応する検査領域が設定されると、これらの検査領域を180度回転させたものを基準の辺に対向する辺に設定する(ST110)。なお、検査領域の回転処理として、この実施例では、画像中の検査領域の配列を時計回りまたは反時計回りに回転させるが、これに限らず、検査領域の配列を、その配列方向を軸として軸回転させる処理(各検査領域を裏返した状態にする変換処理)を行ってもよい。
処理対象の部品がSOPである場合には、つぎのST111が「NO」となり、これをもって検査領域の設定処理が終了する。
【0076】
一方、処理対象の部品がQFPである場合(ST111が「YES」)には、部品本体領域の基準の辺に直交する二辺のうちの一方を基準の辺に変更して(ST112)、この基準の辺における電極ピンの数および位置を特定し(ST113)、その特定結果に基づき検査領域の割り付け処理を実行する(ST114)。さらに、この処理により設定された検査領域を180度回転させたものを、基準の辺に対向する辺に設定する(ST115)。これをもって、検査領域の設定処理が終了となる。
【0077】
ST113,ST114,ST115では、それぞれST108,ST109,ST110と同様の処理を実行する。ただし、処理対象の部品の部品本体が正方形でない場合には、直交する二辺におけるマージンが異なる場合がある。このマージンの違いに対応するためにST114では、電極ピン単位の検査領域を割り付けた後に、これらの検査領域の配列の中心位置が基準の辺の中心に位置合わせされるように、各検査領域を微調整する。
【0078】
また、図9に示した想定ピッチテーブル中に値が接近したピッチが複数格納されている場合には、これらが想定ピッチテーブル中に画像から計測されたピッチに近似して、いずれを選択するのが良いかを判別するのが困難になる場合があると考えられる。この点につきこの実施例では、ST104において、想定ピッチテーブル中の2以上の値が画像から計測されたピッチに近似した場合には、これらの値をすべてPDとして仮設定する。さらにST108においては、PDの各仮設定値に基づき電極ピンの数および位置を特定し、各電極ピンを等間隔により近い状態で配置できたときの特定結果およびその特定に用いたPDを採用する。さらに、この後にST113を実行する場合には、ピッチPDとして、ST106で採用した方の値を使用する。
【0079】
また、図4〜6に示した例では、各ランドの幅が均一であるものとしたが、基板によっては、図10に示すように、端部のランドの幅LW1が他のランドの幅LW2より大きくなっている場合もある。このような場合には、ST107では、各幅LW1およびLW2を個別に算出して、これらの値を検査領域の設定に反映させる。
【0080】
この実施例で指定枠32内に3本以上の電極ピンを含めることを要求するのは、上記の例のようなランドの幅のばらつきや、電極ピンやランドを画像から抽出する際の抽出精度を考慮してのことである。ただし、抽出の精度を保証できるのであれば、一番端とその隣の2つの電極ピン、ならびにこれらに対応するランドのみを含む範囲にまで指定枠32の有効範囲を許容してもよい。
【0081】
上記のとおり、この実施例では、SOPやQFPについては、各電極ピンや各ランドの配置の規則性や部品の線対称の形状を利用して、部品本体の一辺に沿って並ぶ電極ピンのうち、端から順に3本の電極ピンおよびこれらに対応するランドを画像から抽出し、抽出された部位における規則性を部品全体に適用することによって、全ての電極ピンおよびランドに対する検査領域を設定する。よって、電極ピンやランドを抽出するための画像処理にかかる負担が軽減され、検査領域の設定に要する処理の時間を短縮することが可能になる。また、ユーザが部品本体領域30や指定枠32を正しく設定すれば、これらの指定に基づき、電極ピンやランドの配置の規則を示すパラメータを十分に精度良く求めることができるから、検査領域の設定の精度を確保することができる。
【0082】
またこの実施例では、指定枠32に対応する範囲のランドや電極ピンの画像が抽出に適さない場合には、変更ボタン111を用いて指定枠32の位置を変更することができる。よって、ユーザは、ランドや電極ピンの抽出に最も適した場所を選択して、指定枠32による指定を行うことができるから、検査領域の精度を確保することができる。
【0083】
しかしながら、部品の構成や画像の状態によっては、画像からのランドや電極ピンの抽出精度を確保するのが困難な場合もある。そこでこの実施例では、画像処理によらずに、ユーザにランドや電極ピンに対応する範囲を指定させる手動設定のモードも実行できるようにしている。
【0084】
図11は、手動設定が選択されている場合の作業画面の例を示す。この例の画面は、部品本体領域30の指定が完了した段階のもので、画像表示領域100には、処理対象部品の左下角部に近い位置に、図11の例よりも小さい指定枠33が表示される。また、ガイダンス領域102には、図5の例と同様のボタン106,110に加えて、指定や設定の対象を切り替えるための切替ボタン112,113,114、リセットボタン115、上下左右の各方向への移動ボタン116などが設けられる。
【0085】
図12は、ユーザの指定操作に応じた画像表示領域100内の表示の変化を、処理対象部品201の一部(指定枠33に対応する部分)に限定して示す。
この実施例では、一列に並ぶ電極ピンを端から順に2つ指定すると共に、これらの電極ピンに対応するランドを指定する。
【0086】
図11および図12を参照して具体的な作業の流れを説明すると、まず、ガイダンス領域内102の「1ピン」ボタン112を操作することにより、指定枠33を呼び出して、この指定枠33を左端の電極ピンに合うように調整する(図12(1))。つぎに、「1ランド」ボタン113を操作すると、上記の指定枠33よりやや外側に、この指定枠33とは異なる色彩により、ランド指定用の指定枠34が表示される(図12(2))。ユーザは、この指定枠34の先端が左端のランドの先端に合うように調整する(図12(3))。
【0087】
つぎにユーザがガイダンス領域102の「2ピン・ランド」のボタン114を操作すると、各指定枠33,34が複写されて、現在の表示位置の右手に表示される(図12(4))。ユーザは、この複写された指定枠33,34を、マウスのドラッグ・ドロップ操作や矢印キー116の操作により、左から2番目の電極ピンおよびランドに位置合わせする(図12(5))。なお、図10のように、端部のランドが幅広になっている場合には、2番目のランドに対する指定枠34や指定枠33,34間の位置関係を調整する作業が必要になる。
【0088】
上記のようにして、部品本体領域30の一角部の直近の電極ピンおよびその隣の電極ピンと、これらに対応するランドとを指定することができる。この後、抽出ボタン110が操作されると、検査データ作成システムでは、各指定枠33,34をそれぞれ電極ピンおよびランドとみなして、図8のST103以下と同様の処理(ただし、ST106を除く。)を実行する。これにより、電極ピンやランドを抽出するための画像処理を行うことなく、検査領域を設定することが可能になる。
【0089】
したがって、画像からの電極ピンやランドの抽出精度に問題があって、検査領域の設定がうまくいかなかった場合でも、ユーザが電極ピンやランドを目視で確認して、これらを正しく指定すれば、検査領域を精度良く設定することが可能になる。またユーザによる指定も、電極ピンおよびランドを2つずつ指定する程度のものであるので、大きな負担をかけることがなく、検査領域の設定作業を短時間で完了することができる。
【0090】
なお、1番目の実施例では、指定枠32内に電極ピンおよびランドを含むように指定することを要求しているが、これに限らず、指定枠32に完全に含める必要がある部位を電極ピンのみに限定してもよい。この場合でも、たとえば、実装後基準画像の指定枠32に対応する領域から各電極ピンを抽出した後に、実装前基準画像を対象に、各電極ピンの先端に対応する位置を起点にランドの色彩を検索することにより、各電極ピンに対応するランドを抽出することができるから、図7に示したパラメータを支障なく求めることが可能になる。
【0091】
また、各実施例とも、SOP,QFPなど、対向する2辺間における電極ピンの配列に線対称の関係が成立する部品を設定の対象としたが、このような形状以外の部品(たとえばコネクタ)に関しても、電極ピンが複数配置されている辺に指定枠32(または33,34)を設定することにより、上記実施例と同様の手法で検査領域の設定データを作成することが可能である。
【0092】
また、上記の実施例では、部品型式に対応するサブ部品種用のライブラリデータを作成する処理の中で、検査領域の設定データを作成しているが、ライブラリデータによらずに、基板200の実装後基準画像を用いて個々の部品毎に検査領域の設定データを特定する場合にも、同様の処理を適用することができる。
【0093】
また、処理対象の画像は、上記実施例のような2次元画像に限らず、2次元画像に各部位の高さデータを組み合わせた3次元画像や、X線CT画像から復元された3次元情報を対象にした検査を行う場合にも、上記と同様の方法で検査領域の設定データを特定することが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 検査装置
2 カメラ
7 パーソナルコンピュータ
17 モニタ
30 部品対応領域
32,33,34 指定枠
100 画像表示領域
102 ガイダンス領域
110 抽出ボタン
201 部品
S1,S2,S3,S4,S11,S21,S31,S41 検査領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装後の基板の部品の電極と他の部位との区別が可能で、その表面を正面から観測した状態を表す画像を用いて、当該基板上の部品の実装状態の検査に用いられる検査領域の設定データを作成する方法において、
複数の電極ピンが前記部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品を設定の対象として、この対象部品の実装状態を表す基準画像をモニタに表示する第1ステップ、
前記基準画像の表示画面において、前記対象部品の部品本体に対応する第1の領域を指定する操作と、この第1の領域の一辺を基準に、基準の辺に沿う方向および基準の辺から第1の領域の外側に向かう方向における範囲指定により第2の領域を指定する操作とを受け付ける第2ステップ、
前記第1および第2の領域が指定されたことに応じて、第2の領域に対応する範囲の基準画像から電極ピンを抽出する第3ステップ、
前記第3ステップの処理により前記基準の辺に沿って複数の電極ピンが抽出されたとき、抽出された電極ピン間の関係および電極ピンと前記第1の領域との関係に基づき電極ピンの配置に関する規則を特定する第4ステップ、
前記第1の領域の各辺のうち少なくとも前記基準の辺に前記第4ステップで特定された規則を適用して、前記第1の領域の外側に、電極ピンに対する検査のための検査領域を前記規則が適用された辺に沿って複数設定する第5ステップ、
前記第5ステップの実行に応じて、前記モニタに表示されている基準画像を前記検査領域が設定された状態を表すものに更新し、更新後の表示に対して確定操作が行われたことに応じて前記検査領域の設定に用いられた設定データを確定する第6ステップ、の各ステップを実行することを特徴とする基板検査用の検査領域の設定データ作成方法。
【請求項2】
請求項1に記載された方法において、
前記第4ステップでは、前記電極ピンの配置に関する規則として、電極ピンの幅および長さならびにピッチと、前記第1の領域の一角部からその直近の電極ピンまでの距離とを、それぞれ特定する、基板検査用の検査領域の設定データ作成方法。
【請求項3】
請求項1に記載された方法において、
部品実装前の基板の基準画像および部品実装後の基板の基準画像を準備して、後者の基準画像を前記第1ステップにおいて表示すると共に、第3ステップでは、前記第2指定操作による指定を各基準画像に適用して、第2の領域に対応する範囲の部品実装後の基板の基準画像から電極ピンを抽出すると共に、第2の領域に対応する範囲の部品実装前の基板の基準画像からランドを抽出し、
前記第4ステップでは、前記電極ピンの配置に関する規則として、電極ピンの幅および長さならびにピッチと、前記第1の領域の一角部からその直近の電極ピンまでの距離と、対応関係にある電極ピンとランドとの位置関係とを、それぞれ特定する、
基板検査用の検査領域の設定データ作成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された方法において、
矩形状の部品本体の対向する2辺にそれぞれ複数の電極ピンが配置されると共に、これらの辺における電極ピンの配列の間に線対称の関係が成立する部品を設定の対象とし、
前記第5ステップにおいて、前記基準の辺に前記第4ステップで特定された規則を適用して、前記第1の領域の外側で前記基準の辺に沿う位置に複数の検査領域を設定するステップと、これらの検査領域を180度回転させたものを前記第1の領域の外側で基準の辺に対向する辺に沿う位置に設定するステップとを実行する、基板検査用の検査領域の設定データ作成方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載された方法において、
矩形状の部品本体の各辺にそれぞれ複数の電極ピンが配置されると共に、対向する関係にある2辺における電極ピンの配列の間に線対称の関係が成立する部品を設定の対象とし、
前記第5ステップにおいて、前記基準の辺および基準の辺に直交する2つの辺のうちの一方を対象にして、それぞれ前記第4ステップで特定された規則を適用して、第1の領域の外側で対象の辺に沿う位置に複数の検査領域を設定するステップと、これらの検査領域を180度回転させたものを前記第1の領域の外側で対象の辺に対向する辺に沿う位置に設定するステップとを実行する、基板検査用の検査領域の設定データ作成方法。
【請求項6】
部品実装後の基板の部品の電極と他の部位との区別が可能で、その表面を正面から観測した状態を表す画像を用いて、当該基板上の部品の実装状態の検査に必要な情報を作成するシステムであって、
複数の電極ピンが前記部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品を設定の対象として、この対象部品の実装状態を表す基準画像をモニタに表示する基準画像表示手段、
前記基準画像の表示画面において、前記対象部品の部品本体に対応する第1の領域を指定する操作と、この第1の領域の一辺を基準に、基準の辺に沿う方向および基準の辺から第1の領域の外側に向かう方向における範囲指定により第2の領域を指定する操作とを受け付ける領域指定受付手段、
前記領域指定受付手段が第1の領域および第2の領域にかかる指定を受け付けたことに応じて、第2の領域に対応する範囲の基準画像から電極ピンを抽出する抽出処理手段、
前記抽出処理手段により前記基準の辺に沿って複数の電極ピンが抽出されたとき、抽出された電極ピン間の関係および電極ピンと前記第1の領域との関係に基づき電極ピンの配置に関する規則を特定する配置規則特定手段、
前記第1の領域の各辺のうち少なくとも前記基準の辺に前記配置規則特定手段により特定された規則を適用して、前記第1の領域の外側に、電極ピンに対する検査のための検査領域を前記規則が適用された辺に沿って複数設定する領域設定手段、
前記領域設定手段により検査領域が設定されたことに応じて、前記モニタに表示されている基準画像を前記検査領域が設定された状態を表すものに更新し、更新後の表示に対して確定操作が行われたことに応じて前記検査領域の設定に用いられた設定データを確定する領域確定手段、
の各手段を具備することを特徴とする基板検査用の検査データ作成システム。
【請求項1】
部品実装後の基板の部品の電極と他の部位との区別が可能で、その表面を正面から観測した状態を表す画像を用いて、当該基板上の部品の実装状態の検査に用いられる検査領域の設定データを作成する方法において、
複数の電極ピンが前記部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品を設定の対象として、この対象部品の実装状態を表す基準画像をモニタに表示する第1ステップ、
前記基準画像の表示画面において、前記対象部品の部品本体に対応する第1の領域を指定する操作と、この第1の領域の一辺を基準に、基準の辺に沿う方向および基準の辺から第1の領域の外側に向かう方向における範囲指定により第2の領域を指定する操作とを受け付ける第2ステップ、
前記第1および第2の領域が指定されたことに応じて、第2の領域に対応する範囲の基準画像から電極ピンを抽出する第3ステップ、
前記第3ステップの処理により前記基準の辺に沿って複数の電極ピンが抽出されたとき、抽出された電極ピン間の関係および電極ピンと前記第1の領域との関係に基づき電極ピンの配置に関する規則を特定する第4ステップ、
前記第1の領域の各辺のうち少なくとも前記基準の辺に前記第4ステップで特定された規則を適用して、前記第1の領域の外側に、電極ピンに対する検査のための検査領域を前記規則が適用された辺に沿って複数設定する第5ステップ、
前記第5ステップの実行に応じて、前記モニタに表示されている基準画像を前記検査領域が設定された状態を表すものに更新し、更新後の表示に対して確定操作が行われたことに応じて前記検査領域の設定に用いられた設定データを確定する第6ステップ、の各ステップを実行することを特徴とする基板検査用の検査領域の設定データ作成方法。
【請求項2】
請求項1に記載された方法において、
前記第4ステップでは、前記電極ピンの配置に関する規則として、電極ピンの幅および長さならびにピッチと、前記第1の領域の一角部からその直近の電極ピンまでの距離とを、それぞれ特定する、基板検査用の検査領域の設定データ作成方法。
【請求項3】
請求項1に記載された方法において、
部品実装前の基板の基準画像および部品実装後の基板の基準画像を準備して、後者の基準画像を前記第1ステップにおいて表示すると共に、第3ステップでは、前記第2指定操作による指定を各基準画像に適用して、第2の領域に対応する範囲の部品実装後の基板の基準画像から電極ピンを抽出すると共に、第2の領域に対応する範囲の部品実装前の基板の基準画像からランドを抽出し、
前記第4ステップでは、前記電極ピンの配置に関する規則として、電極ピンの幅および長さならびにピッチと、前記第1の領域の一角部からその直近の電極ピンまでの距離と、対応関係にある電極ピンとランドとの位置関係とを、それぞれ特定する、
基板検査用の検査領域の設定データ作成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された方法において、
矩形状の部品本体の対向する2辺にそれぞれ複数の電極ピンが配置されると共に、これらの辺における電極ピンの配列の間に線対称の関係が成立する部品を設定の対象とし、
前記第5ステップにおいて、前記基準の辺に前記第4ステップで特定された規則を適用して、前記第1の領域の外側で前記基準の辺に沿う位置に複数の検査領域を設定するステップと、これらの検査領域を180度回転させたものを前記第1の領域の外側で基準の辺に対向する辺に沿う位置に設定するステップとを実行する、基板検査用の検査領域の設定データ作成方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載された方法において、
矩形状の部品本体の各辺にそれぞれ複数の電極ピンが配置されると共に、対向する関係にある2辺における電極ピンの配列の間に線対称の関係が成立する部品を設定の対象とし、
前記第5ステップにおいて、前記基準の辺および基準の辺に直交する2つの辺のうちの一方を対象にして、それぞれ前記第4ステップで特定された規則を適用して、第1の領域の外側で対象の辺に沿う位置に複数の検査領域を設定するステップと、これらの検査領域を180度回転させたものを前記第1の領域の外側で対象の辺に対向する辺に沿う位置に設定するステップとを実行する、基板検査用の検査領域の設定データ作成方法。
【請求項6】
部品実装後の基板の部品の電極と他の部位との区別が可能で、その表面を正面から観測した状態を表す画像を用いて、当該基板上の部品の実装状態の検査に必要な情報を作成するシステムであって、
複数の電極ピンが前記部品本体の端縁に沿って規則性をもって配置されている部品を設定の対象として、この対象部品の実装状態を表す基準画像をモニタに表示する基準画像表示手段、
前記基準画像の表示画面において、前記対象部品の部品本体に対応する第1の領域を指定する操作と、この第1の領域の一辺を基準に、基準の辺に沿う方向および基準の辺から第1の領域の外側に向かう方向における範囲指定により第2の領域を指定する操作とを受け付ける領域指定受付手段、
前記領域指定受付手段が第1の領域および第2の領域にかかる指定を受け付けたことに応じて、第2の領域に対応する範囲の基準画像から電極ピンを抽出する抽出処理手段、
前記抽出処理手段により前記基準の辺に沿って複数の電極ピンが抽出されたとき、抽出された電極ピン間の関係および電極ピンと前記第1の領域との関係に基づき電極ピンの配置に関する規則を特定する配置規則特定手段、
前記第1の領域の各辺のうち少なくとも前記基準の辺に前記配置規則特定手段により特定された規則を適用して、前記第1の領域の外側に、電極ピンに対する検査のための検査領域を前記規則が適用された辺に沿って複数設定する領域設定手段、
前記領域設定手段により検査領域が設定されたことに応じて、前記モニタに表示されている基準画像を前記検査領域が設定された状態を表すものに更新し、更新後の表示に対して確定操作が行われたことに応じて前記検査領域の設定に用いられた設定データを確定する領域確定手段、
の各手段を具備することを特徴とする基板検査用の検査データ作成システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−95053(P2011−95053A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247994(P2009−247994)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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