説明

基板表面処理方法および基板表面処理装置

【課題】基板表面を加工する際に、裏面には加工が施されない基板表面処理方法を提供する。
【解決手段】真空容器内の基板ステージに基板を載置する基板載置工程と、真空容器内を排気する排気工程と、基板ステージの基板保持面側から不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程と、真空容器内に処理ガスを供給してエッチングするエッチング工程と、エッチングの終了後に不活性ガスの供給を停止する不活性ガス供給停止工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板表面処理方法および基板表面処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は、化石燃料による火力発電の代替エネルギとして期待されており、太陽光発電システムの生産量は年々増加している。このため、シリコン基板を原材料に用いるバルク型太陽電池ではシリコンウェハが不足するという事態が発生し、シリコン基板の価格高騰により製造コストの増大が懸念されている。そこで、ガラス基板上にシリコン膜を形成する薄膜シリコン太陽電池が注目されている。
【0003】
薄膜シリコン太陽電池は、たとえばガラス基板上に、透明導電膜からなる第1電極層と、P型アモルファスシリコン膜、発電層であるI型アモルファスシリコン膜およびN型アモルファスシリコン膜からなるアモルファスシリコンセルと、透明導電膜および金属電極膜からなる第2電極層と、が積層された構造を有する。薄膜シリコン太陽電池では、ガラス基板を介して入射した太陽光を効率的に発電に利用するため、たとえばガラス基板の表面にテクスチャと呼ばれる凹凸形状を形成して入射光を散乱させ、発電層内での光路長を長くすることで高い発電電流を得ている。
【0004】
薄膜太陽電池で使用するガラス基板の表面への凹凸形状の形成方法としては、サンドブラストを用いる方法などが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。また、HFガスを用いた気相エッチング装置として、シリコン基板上に作製する半導体デバイス用の気相HFエッチング装置が知られている(たとえば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−199745号公報
【特許文献2】特開2008−187105号公報
【特許文献3】特許第2833946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、サンドブラスト法を用いた場合には、ガラス基板表面の凹凸形状の形状制御が困難であり、この上に太陽電池を作製した場合、安定した太陽電池特性が得られないという問題点があった。また、従来の気相HFエッチング装置は、シリコン基板表面に形成されたシリコン酸化膜やシリコン窒化膜をエッチングするための装置であり、薄膜太陽電池で使用するガラス基板の表面に凹凸形状を形成するための装置ではない。そのため、従来の気相HFエッチング装置を用いて薄膜シリコン太陽電池用のガラス基板をエッチングして基板表面に凹凸形状の形成を行なった場合には、基板ステージ上に設置したガラス基板の端部のわずかな空隙からHFガスの周り込みが生じ、ガラス基板の裏面にも凹凸形状が形成されてしまうという問題点があった。
【0007】
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、基板表面を加工する際に、裏面には加工が施されない基板表面処理方法および基板表面処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明にかかる基板処理方法は、処理室内の基板保持手段に基板を載置する基板載置工程と、前記処理室内を排気する排気工程と、前記基板保持手段の基板保持面側から不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程と、前記処理室内に処理ガスを供給してエッチングするエッチング工程と、エッチングの終了後に前記不活性ガスの供給を停止する不活性ガス供給停止工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、薄膜シリコン太陽電池などに用いられるガラス基板などの基板表面を、ガスエッチングによって処理する場合に、基板保持手段の基板載置面から不活性ガスを供給し、不活性ガスを基板保持手段と基板との間を通して、基板端部から処理室内に供給するようにしたので、処理ガスの基板裏面への回り込みが抑制され、基板裏面に不必要な処理が施されてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、この発明の実施の形態1による基板表面処理装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、基板ステージの上面図である。
【図3】図3は、実施の形態1による基板表面処理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】図4は、実施の形態1による基板ステージの他の構成例を示す上面図である。
【図5】図5は、実施の形態2によるガラス基板の表面処理装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
【図6】図6は、基板ステージの上面図である。
【図7】図7は、実施の形態2によるガラス基板の表面処理装置の概略構成の他の例を模式的に示す断面図である。
【図8】図8は、実施の形態3による基板表面処理装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
【図9】図9は、従来の気相HFエッチング装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図10】図10は、従来の気相HFエッチング時のガラス基板と基板ステージとHFガスとの関係を模式的に示す図である。
【図11】図11は、従来の気相HFエッチング処理後のガラス基板の状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、この発明の実施の形態にかかる基板表面処理方法および基板表面処理装置を詳細に説明する。なお、これらの実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下では、従来の気相HFエッチング装置の構成とその問題点について説明した後、実施の形態について説明する。
【0012】
図9は、従来の気相HFエッチング装置の構成を模式的に示す断面図である。気相HFエッチング装置210は、処理室である真空容器211内に、処理対象であるシリコン基板250を保持する基板ステージ212と、シリコン基板250上に処理ガスをシャワー状に供給するシャワーヘッド214と、を備える。シャワーヘッド214は、真空容器211の上部に、基板ステージ212に対向するように設けられている。シャワーヘッド214には、HFガスを供給するガス配管221と、H2O(水蒸気)ガスを供給するガス配管222と、が接続されており、各ガス配管221,222には各ガスの流量を制御するマスフローコントローラ223が設けられている。また、真空容器211の下部には、排気口213が設けられ、配管を介して図示しない真空ポンプと接続される。
【0013】
このような気相HFエッチング装置でのHFエッチング処理について説明する。まず、表面にシリコン酸化膜251が形成されたシリコン基板250を真空容器211内に搬入し、基板ステージ212上に載置する。ついで、図示しない真空ポンプによって排気口213を介して真空容器211内を所定の真空度にした後、マスフローコントローラ223によって流量調整されたHFガスやH2Oガスを配管221,222を介して真空容器211内に供給する。このとき、供給されるガスは、シャワーヘッド214から基板ステージ212上に載置されたシリコン基板250上にシャワー状に導入され、これによってシリコン基板250の表面のシリコン酸化膜251がエッチング除去される。
【0014】
つぎに、このような気相HFエッチング装置を、トランジスタなどの半導体装置が形成された半導体基板ではなく、薄膜太陽電池用のガラス基板のエッチングに適用する場合について説明する。図10は、従来の気相HFエッチング時のガラス基板と基板ステージとHFガスとの関係を模式的に示す図であり、図11は、従来の気相HFエッチング処理後のガラス基板の状態を模式的に示す断面図である。図10に示されるように、従来の気相HFエッチング装置210を用いて薄膜太陽電池用のガラス基板50をエッチングしてガラス基板50の表面に凹凸形状の形成を行う場合、基板ステージ212上に載置したガラス基板50の端部のわずかな空隙255からHFガスの周り込みが生じる。その結果、図11に示されるように、ガラス基板50の表面に形成される凹凸形状50aだけでなく、裏面の周縁部付近にも凹凸形状50bが形成されてしまうという問題点があった。
【0015】
特に、薄膜太陽電池の製造に用いられる1m角を超える大面積のガラス基板50の場合には、ガラス基板50の平坦性の確保が難しく、HFガスの周り込みが顕著となっていた。そして、裏面に凹凸形状50bが形成されたガラス基板50の表面上に薄膜シリコン太陽電池を作製した場合、ガラス基板50の裏面の凹凸形状50bが形成された領域では、本来であればガラス基板50に入射すべき光が凹凸形状50bによって散乱されてしまい、局所的に太陽電池特性が劣化(発電電流が低下)して製品歩留まりの低下が引き起こされるという問題点があった。
【0016】
以下の実施の形態では、気相HFエッチング処理時に、ガラス基板50の裏面のエッチングを抑制することができる基板表面処理方法および基板表面処理装置について説明する。
【0017】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による基板表面処理装置の概略構成を模式的に示す断面図であり、図2は、基板ステージの上面図である。基板表面処理装置としての気相エッチング装置10は、真空容器11を備え、真空容器11の内部には、ガラス基板50などの基板が載置される基板ステージ12と、基板ステージ12の基板載置面に対向して配置されるシャワーヘッド14と、が設けられる。
【0018】
基板ステージ12の上面のガラス基板50を載置する領域(以下、基板載置領域という)には、たとえばザグリ加工によって施された基板載置用溝121が形成されている。すなわち、基板ステージ12の上面に基板載置用溝121を設けることで、基板ステージ12上面の外周部には、ガラス基板50を所定の位置に保持する基板ガイド122が形成され、ガラス基板50が基板ステージ12から落下しない構造となっている。なお、この例では、ガラス基板50は矩形状を有しており、基板ステージ12の基板載置用溝121も平面視で矩形状に加工されている。また、基板載置用溝121の底面には、ガラス基板50の裏面に均一に不活性ガスを拡散させる不活性ガス供給溝123が設けられている。不活性ガス供給溝123は、基板ステージ12の略中央部を貫通するガス流路33と接続され、ガス流路33の吐出口332から放射状に形成されている。また、基板載置用溝121の外周部に沿っても不活性ガス供給溝123が形成されている。なお、ガス流路33の流入口331は、後述する不活性ガス供給機構30に接続されている。さらに、基板ステージ12は、ガラス基板50を所望の温度に加熱することができるように、図示しない加熱手段を備えている。
【0019】
シャワーヘッド14には、処理ガス(プロセスガス)を真空容器11内に均一に導入するための複数個のガス供給口141が設けられている。また、真空容器11の下部には排気口13が設けられており、この排気口13には図示しない圧力調整バルブと真空ポンプが接続され、真空容器11内の圧力を所望の圧力に調整可能な構成となっている。
【0020】
気相エッチング装置10は、真空容器11内に処理ガスを供給する処理ガス供給機構20と、真空容器11内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構30と、を真空容器11の外部に備える。処理ガス供給機構20は、HFガスを供給するHFガス供給配管21とH2Oガスを供給するH2Oガス供給配管22と、ガス流量制御装置としてのマスフローコントローラ23と、を備える。HFガス供給配管21とH2Oガス供給配管22は、それぞれマスフローコントローラ23を介して真空容器11のシャワーヘッド14の設置位置に接続されている。これらの処理ガスはシャワーヘッド14を介して真空容器11内に吐出される。
【0021】
不活性ガス供給機構30は、N2ガスやArガス、Heガスなどの不活性ガスを供給する不活性ガス供給配管31と、マスフローコントローラ32と、を備える。不活性ガス供給配管31は、マスフローコントローラ32を介して基板ステージ12に設けられたガス流路33の流入口331に接続される。基板ステージ12に供給された不活性ガスは、ガス流路33を介して、基板ステージ12の上面より真空容器11内に供給される。
【0022】
このような構成の気相エッチング装置10では、HFガスとH2Oガスとをガラス基板50に供給してエッチングを行う際に、ガラス基板50の裏面から不活性ガスを供給し、ガラス基板50の外周部から真空容器11内へと流出されるようにしているので、HFガスがガラス基板50の外周部から裏面に周り込むことを抑えることができる。
【0023】
つぎに、気相エッチング装置10によるガラス基板50の表面処理方法について説明する。図3は、実施の形態1による基板表面処理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0024】
まず、ガラス基板50を真空容器11内の基板ステージ12に設置し(ステップS1)、真空容器11内を真空排気する(ステップS2)。ついで、不活性ガス供給機構30からN2ガスなどの不活性ガスをガス流路33を介して基板ステージ12の上面に供給する(ステップS3)。このとき、不活性ガスは、ガス流路33の吐出口332から、基板ステージ12の基板載置用溝121の底面に設けられた不活性ガス供給溝123から基板ステージ12の上面へと供給される。また、基板ステージ12の上面にはガラス基板50が設置されているため、ガス流路33より基板ステージ12の上面に流出した不活性ガスは、基板ステージ12の上面に形成された不活性ガス供給溝123を通って、ガラス基板50の端部から基板ステージ12外部の真空容器11内に供給される。
【0025】
その後、処理ガス供給機構20から、シャワーヘッド14を介してHFガスを真空容器11内に供給し(ステップS4)、排気口13に接続される図示しない圧力調整バルブと真空ポンプとによって真空容器11内を所定の圧力に調整する(ステップS5)。この際、HFガスがガラス基板50に吸着することでガラス基板50の表面がエッチングされて凹凸形状が形成される。
【0026】
エッチングを所定の時間行なった後(ステップS6)、HFガスの供給を停止してエッチングを終了する(ステップS7)。その後、基板ステージ12に供給している不活性ガスの供給を停止し(ステップS8)、真空容器11内の残留ガスや反応生成物を真空排気する(ステップS9)。そして、上面に凹凸形状が形成されたガラス基板50を真空容器11から取り出して(ステップS10)、基板表面処理方法が終了する。
【0027】
なお、上述した説明では、基板ステージ12の上面に形成した不活性ガス供給溝123は、基板ステージ12の平面視上で中央部から放射状に形成した場合を例に挙げたが、これに限られることなく、不活性ガス供給溝123は不活性ガスをガラス基板50の周辺から真空容器11内へと均一に供給することができる形状であればよい。
【0028】
また、この実施の形態1では、ガス流路33の吐出口332を、平面視上で基板ステージ12の中央部に1箇所設けた場合を例に挙げたが、これに限られることなく、基板ステージ12の上面に複数個のガス流路33の吐出口332を設置してもよい。図4は、実施の形態1による基板ステージの他の構成例を示す上面図である。
【0029】
薄膜シリコン太陽電池で用いられる大面積のガラス基板50を処理する場合には、図1や図2に示されるように、基板ステージ12の中央部の1箇所から供給される不活性ガスをガラス基板50の裏面に均一に拡散させることが難しい。そのため、図4に示されるように、ガラス基板50の裏面周縁部付近に対応する基板載置用溝121の底面の周縁部付近にのみ不活性ガス供給溝123を形成し、この不活性ガス供給溝123の中に複数個のガス流路33を設けるようにしてもよい。このようにすることで、大面積のガラス基板50であっても基板端部より真空容器11内に均一に不活性ガスを供給することができる。なお、図2と同じ構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略している。
【0030】
以上説明したように、この実施の形態1では、少なくとも、HFガスを真空容器11内に供給している期間、基板ステージ12の上面(基板載置用溝121)からガラス基板50の裏面に不活性ガスを供給し、この不活性ガスを基板ステージ12とガラス基板50の裏面の間を通してガラス基板50の端部より真空容器11内に供給させるようにした。これによって、ガラス基板50の裏面へのHFガスの周り込みが抑制される。特に、平坦性が確保されない1m角を超える大面積のガラス基板50でも、裏面へのHFガスの周り込みが抑制される。その結果、ガラス基板50の裏面への凹凸形状の形成を防止することができる。
【0031】
また、このようにして形成されたガラス基板50上に、たとえば透明導電膜からなる第1電極層と、P型半導体膜、発電層であるI型半導体膜およびN型半導体膜からなる光電変換層と、透明導電膜および金属電極膜からなる第2電極層と、が積層された構造の薄膜太陽電池を形成した場合に、ガラス基板50の裏面の周縁部に凹凸形状が形成されないので、ガラス基板50に入射すべき光が散乱されずにガラス基板50に入射するようになり、局所的に太陽電池特性が劣化(発電電流が低下)して製品歩留まりの低下が引き起こされる事態を防止することができるという効果も有する。
【0032】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2によるガラス基板の表面処理装置の概略構成を模式的に示す断面図であり、図6は、基板ステージの上面図である。この実施の形態2では、基板ステージ12の基板載置用溝121の底面の外周部に沿って複数のガス流路34が設けられる。ガス流路34は、それぞれの位置で基板ステージ12の厚さ方向を貫通するように設けられる。また、不活性ガス供給機構30の不活性ガス供給配管31は、真空容器11の外部で分岐し、それぞれのガス流路34に接続される。この実施の形態2では、ガス流路34は、ガラス基板50を基板ステージ12上に載置したときに、実施の形態1のようにガラス基板50の周縁部の下部になるように配置されるのではなく、ガラス基板50の外縁の外側になるように配置される。このような構造によって、基板ステージ12とガラス基板50との間の密着性を確保することができる。その結果、基板ステージ12を加熱している際には、基板ステージ12に載置したガラス基板50の温度を一定に保つことができる。なお、実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略している。また、このような構造のガラス基板の表面処理装置における表面処理方法についても、実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0033】
この実施の形態2では、基板ステージ12の上面に、実施の形態1のように不活性ガス供給溝123が形成されていないため、加熱している基板ステージ12とガラス基板50との密着性が実施の形態1の場合に比して確保される。その結果、基板ステージ12に載置したガラス基板50の温度を一定に保つことができ、ガラス基板50の基板面内でのエッチング分布の劣化を抑制することができるという効果を実施の形態1の効果に加えて得ることができる。
【0034】
なお、上述した説明では、基板ステージ12の外周部に設けた不活性ガスのガス流路34は、基板ステージ12の上面からシャワーヘッド14の方向に向けて不活性ガスが供給される構成を例示したが、これに限られるものではなく、基板ステージ12の上面に形成する不活性ガスのガス流路34は、不活性ガスをガラス基板50の周辺から真空容器11内に均一に供給できる形状であれば、どのように配置されるものでもよい。
【0035】
図7は、実施の形態2によるガラス基板の表面処理装置の概略構成の他の例を模式的に示す断面図である。この例では、不活性ガスのガス流路35は、基板ステージ12の基板載置領域内に厚さ方向に延在し、基板ステージ12の上部で載置されるガラス基板50の基板面と平行な方向に向きを変えるように構成されている。すなわち、基板載置領域の周縁部で、ガラス基板50の裏面と平行な方向に不活性ガスを吐出することができるようにガス流路35が構成されている。なお、この場合には、基板ステージ12には基板ガイド122が設けられていない。また、図1や図5と同一の構成要素には、同一の符号を付して、その説明を省略している。
【0036】
このような構成の気相エッチング装置10によれば、不活性ガスは、ガラス基板50の裏面と平行な方向に真空容器11内に供給され、不活性ガスをシャワーヘッド14の方向に供給する場合と比較して、シャワーヘッド14から供給されるHFガスの流れを乱すことなく不活性ガスを真空容器11内に供給することができる。そのため、基板周辺部でのエッチング分布の劣化を抑制できるという効果を有する。
【0037】
実施の形態3.
この実施の形態3では、不活性ガス供給機構から基板ステージに供給される不活性ガスを予め加熱するガラス基板の表面処理装置と表面処理方法について説明する。
【0038】
図8は、実施の形態3による基板表面処理装置の概略構成を模式的に示す断面図である。この基板表面処理装置としての気相エッチング装置10は、実施の形態2の図7の構成で、不活性ガス供給機構30のマスフローコントローラ32と真空容器11との間を接続する不活性ガス供給配管31に、不活性ガスを加熱する配管加熱部36と、不活性ガスの温度が所定の温度となるように配管加熱部36の温度を制御する加熱制御部37と、をさらに備える。加熱制御部37は、不活性ガスの温度がたとえば基板ステージ12の温度と同程度の温度となるように、配管加熱部36を制御する。これによって、加熱された不活性ガスが基板ステージ12内に供給される。なお、実施の形態1,2と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略している。また、このような構造の気相エッチング装置における表面処理方法についても、実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。さらに、ここでは、図7の不活性ガス供給機構30に配管加熱部36と加熱制御部37とを設ける場合を例示したが、図1や図5の不活性ガス供給機構30に配管加熱部36と加熱制御部37とを設けるようにしてもよい。
【0039】
この実施の形態3では、加熱制御部37によって温度制御された配管加熱部36で加熱された不活性ガスが基板ステージ12に供給されるが、不活性ガスがたとえば基板ステージ12の温度程度に温められているので、基板ステージ12に到達する不活性ガスによって、加熱された基板ステージ12の温度が低下してしまうことを防ぐことができる。すなわち、加熱された基板ステージ12内を不活性ガスが流れることで生じる基板ステージ12の温度低下が抑制され、この結果、ガラス基板50面内でのエッチング分布の悪化を抑制することができるという効果を実施の形態1,2の効果に加えて得ることができる。
【0040】
なお、実施の形態1〜3において、処理ガスとしてHFガスおよびH2Oガスを用いる場合を例に挙げて説明したが、H2Oガスについては、これに限られることなく、エチルアルコールやメチルアルコール、またはこれらの混合ガスを用いてもよい。
【0041】
また、実施の形態1〜3において、基板ステージ12内に導入される不活性ガスとしてN2ガスを例に挙げて説明したが、不活性ガスは、気相HFによるガラス基板50のエッチングに対して不活性なガスであればよく、N2,Ar,He,Xe,Krまたはこれらの混合ガスを用いても同様の効果を得ることができる。特に、不活性ガスとして、N2,Ar,Heまたはこれらの混合ガスを用いることで、Xe,Krなどの高価な不活性ガスを用いた場合と比較して、気相HFエッチングプロセスを低コスト化することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 気相エッチング装置
11 真空容器
12 基板ステージ
13 排気口
14 シャワーヘッド
20 処理ガス供給機構
21 HFガス供給配管
22 H2Oガス供給配管
23,32 マスフローコントローラ
30 不活性ガス供給機構
31 不活性ガス供給配管
33〜35 ガス流路
36 配管加熱部
37 加熱制御部
50 ガラス基板
50a,50b 凹凸形状
121 基板載置用溝
122 基板ガイド
123 不活性ガス供給溝
141 ガス供給口
331 流入口
332 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内の基板保持手段に基板を載置する基板載置工程と、
前記処理室内を排気する排気工程と、
前記基板保持手段の基板保持面側から不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程と、
前記処理室内に処理ガスを供給してエッチングするエッチング工程と、
エッチングの終了後に前記不活性ガスの供給を停止する不活性ガス供給停止工程と、を含むことを特徴とする基板表面処理方法。
【請求項2】
前記基板はガラス基板であり、
前記処理ガスはHFガスを含むガスであることを特徴とする請求項1に記載の基板表面処理方法。
【請求項3】
前記不活性ガス供給工程では、前記基板保持手段の前記基板が載置される基板載置領域から、前記基板保持手段の前記基板保持面と前記基板の裏面との間を通って、前記基板の端部から前記処理室内に前記不活性ガスを供給することを特徴とする請求項1または2に記載の基板表面処理方法。
【請求項4】
前記不活性ガス供給工程では、前記基板保持手段の前記基板載置領域の外周部から前記処理室内に前記不活性ガスを供給することを特徴とする請求項1または2に記載の基板表面処理方法。
【請求項5】
前記不活性ガス供給工程では、前記不活性ガスは、前記基板保持手段に導入される前に加熱されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の基板表面処理方法。
【請求項6】
前記不活性ガスは、N2,Ar,Heのうち少なくとも何れかのガスが含まれることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の基板表面処理方法。
【請求項7】
処理室と、
前記処理室内で基板を保持する基板保持手段と、
前記処理室内に前記基板を処理する処理ガスを供給する処理ガス供給手段と、
前記基板保持手段の基板保持面に対向して配置され、前記基板保持手段に向けて処理ガスを吐出する処理ガス吐出手段と、
前記処理室内のガスを排気する排気手段と、
前記処理室内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、
前記不活性ガス供給手段からの前記不活性ガスを前記基板保持手段の前記基板保持面側から前記処理室内に吐出させる不活性ガス吐出手段と、
を備えることを特徴とする基板表面処理装置。
【請求項8】
前記不活性ガス吐出手段は、
前記不活性ガス供給手段から前記基板保持手段の前記基板が載置される基板載置領域内の前記基板保持面側までを結ぶガス流路と、
前記ガス流路の前記基板保持面側の開口から、前記基板載置領域の周縁に向かうとともに、前記基板載置領域の周縁部に沿って設けられる不揮発性ガス供給溝と、
を有することを特徴とする請求項7に記載の基板表面処理装置。
【請求項9】
前記不活性ガス吐出手段は、前記不活性ガス供給手段から前記基板保持手段の前記基板が載置される基板載置領域の外周部の位置までを結ぶ複数のガス流路によって構成されることを特徴とする請求項7に記載の基板表面処理装置。
【請求項10】
前記不活性ガス吐出手段は、前記不活性ガス供給手段から前記基板保持手段の前記基板が載置される基板載置領域の周縁部までを結び、前記基板載置領域の周縁部で、前記基板保持手段に載置される前記基板の基板面と平行な方向に前記不活性ガスを吐出するように流出口が設けられている複数のガス流路によって構成されることを特徴とする請求項7に記載の基板表面処理装置。
【請求項11】
前記不活性ガス供給手段と前記基板保持手段とを接続する配管に、前記配管を流れる不活性ガスを加熱する加熱手段をさらに備えることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1つに記載の基板表面処理装置。
【請求項12】
前記基板はガラス基板であり、
前記処理ガスはHFガスを含むガスであることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1つに記載の基板表面処理装置。
【請求項13】
前記不活性ガスは、N2,Ar,Heのうち少なくとも何れかのガスが含まれることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1つに記載の基板表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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