説明

基板間の接続方法、フリップチップ実装体及び基板間接続構造

【課題】信頼性の高い実装体を実現可能とする基板間の接続方法を提供することにある。
【解決手段】複数の電極11、13をそれぞれ有する基板10、12間に、導電性粒子15及び気泡発生剤が含有された樹脂14を供給した後、樹脂14を加熱して樹脂14中に含有する導電性粒子15を溶融させるとともに、気泡発生剤から気泡20を発生させる。少なくとも一方の基板10、12には、段差部16、17が形成されており、樹脂14の加熱工程において、気泡が20成長することで、樹脂14が気泡20外に押し出されることによって、樹脂14中の溶融した導電性粒子15が、電極11、13間に誘導されて接合体21が形成されるとともに、樹脂14が、段差部16、17における基板10、12間に誘導され、樹脂14が硬化されることによって、基板10、12とが固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電極が形成された基板間の接続方法、及び該接続方法を用いて形成されるフリップチップ実装体、基板間接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に使用される半導体集積回路(LSI)や回路基板、電子部品は高密度化に伴い、電極の多ピン、狭ピッチ化が急速に進んでいる。これら電子部品を実装する工法においては、狭ピッチ対応、短タクト、接合体の一括形成などが求められている。
【0003】
このような要求の中、本願出願人は、次世代の実装方法として、導電性粒子及び気泡発生剤を含有させた樹脂を用いたフリップチップ実装方法を提案している(特許文献1)。
【0004】
図13(a)〜(d)は、特許文献1に開示したフリップチップ実装方法の基本的な工程を示した断面図である。
【0005】
図13(a)に示すように、複数の接続端子102を有する回路基板101と、複数の電極端子104を有する半導体チップ103との間に、導電性粒子106と気泡発生剤(不図示)を含有した樹脂105を供給した後、図13(b)に示すように、樹脂105を加熱して、樹脂105中の気泡発生剤から気泡110を発生させる。このとき、樹脂105は、成長する気泡110で気泡外に押し出されることによって、図13(c)に示すように、接続端子102と電極端子104との間に自己集合する。その後、図13(d)に示すように、樹脂105をさらに加熱することによって、端子102、104間に自己集合した樹脂105中の導電性粒子106を溶融させて、端子102、104間に接合体107を形成する。これにより、端子102、104間が接合体107を介して電気的に接続されたフリップチップ実装体が得られる。なお、この方法は、電子部品が搭載された基板間の接続等にも適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/103948号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記方法は、気泡発生剤から発生する気泡110の成長によって、樹脂105を端子102、104間に移動させる促進力を付与しているため、狭ピッチな端子間の接続に適している。また、端子間に誘導された樹脂105は、表面張力により端子間に安定して留まることができ、さらに、端子間に自己集合した樹脂105中の導電性粒子106は、溶融することによって、端子間に濡れ広がることができるため、端子間に安定した接合体107を形成することができる。
【0008】
ところで、上記方法において、端子間に自己集合しなかった樹脂105は、端子の形成されていない回路基板101及び半導体チップ103(以下、単に「基板」という。)周辺部まで押し出されるのが好ましいが、端子間以外の基板間に残存する場合もある。その場合、樹脂105が基板間のどこに残存するかによって、フリップチップ実装体(または電子部品実装体)の信頼性に影響を及ぼすおそれがある。
【0009】
例えば、接合体107が形成された端子間の近傍に樹脂105が残存すると、樹脂105の組成によっては、樹脂105中に存在する不純物に起因して、接合体107間で、イオンマイグレーションによる絶縁不良が発生するおそれがある。
【0010】
また、樹脂105が基板周辺部まで押し出されたとしても、図13(d)に示すように、かかる樹脂105があたかも封止材のように作用することによって、基板間に密閉空間を作ってしまった場合、樹脂105中で発生した気泡110が、密閉空間に留まることになる。その場合、例えば、フリップチップ実装体が、他の回路基板等に二次実装される際、再加熱によって気泡110に溜まった湿気が水蒸気爆発等を起こして、接続不良が発生するおそれがある。
【0011】
然るに、上記方法においては、樹脂105を端子間に自己集合させる際に、端子間以外に押し出される樹脂105が基板間のどこに残存するかについては考慮されていなかった。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その主な目的は、樹脂中に含有された導電性粒子を端子間に自己集合させて、端子間に接合体を形成することにより基板間を電気的に接続する方法において、端子間以外に押し出される樹脂を、所定の領域に誘導制御することによって、信頼性の高い実装体を実現することのできる基板間の接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するためには、本発明に係わる基板間の接続方法は、基板に形成された電極以外の所定の部位に段差部を設け、基板間に供給した導電性粒子及び気泡発生剤を含有した樹脂を、導電性粒子が溶融する温度に加熱することによって、電極間に接合体を自己集合的に形成する方法を採用したことを特徴とする。
【0014】
上記の方法によれば、樹脂を加熱して、樹脂中に含有した気泡発生剤から気泡が発生することで、樹脂が気泡外に押し出される。このことによって、樹脂は、電極間又は段差部が形成された基板間(狭隙領域)に誘導される。電極間に誘導された樹脂中に含有された溶融導電性粒子は、電極表面に濡れ広がることによって、電極間に接合体が形成される。一方、樹脂中で発生した気泡は、電極間又は段差部が形成された基板間以外の部位(広隙領域)に誘導される。また、電極間に誘導された樹脂は、電極間に接合体が形成されるにつれて電極間から追い出され、段差部が形成された基板間により多く誘導される。
【0015】
すなわち、樹脂は、毛細管現象を利用して、間隔の狭い電極間又は段差部が形成された基板間に誘導されるが、電極間においては、濡れ性を利用して、導電性粒子が優先的に誘導される結果、樹脂は、段差部が形成された基板間に相反的に誘導される。一方、気泡は、表面張力を利用して、電極間又は段差部以外の間隔の広い基板間に優先的に誘導される。これらの性質を利用して、樹脂、導電性粒子、及び気泡を、基板間のそれぞれ所定の領域に誘導制御することができる。
【0016】
本発明に係わる基板間の接続方法は、複数の第1の電極を有する第1の基板に対向させて、複数の第2の電極を有する第2の基板を配置し、第1の電極と第2の電極とを接合体を介して電気的に接続する基板間の接続方法であって、第1の基板と第2の基板との間に、導電性粒子及び気泡発生剤が含有された樹脂を供給する工程(a)と、樹脂を加熱して、該樹脂中に含有する導電性粒子を溶融させるとともに、樹脂中に含有する気泡発生剤から気泡を発生させる工程(b)と、樹脂を硬化させる工程(c)とを有し、第1の基板及び第2の基板の少なくとも一方の基板には、段差部が形成されており、工程(b)において、気泡が成長することで、樹脂が該気泡外に押し出されることによって、樹脂中の溶融した導電性粒子が、第1の電極と第2の電極との間に誘導されて、該電極間に溶融された導電性粒子からなる接合体が形成されるとともに、樹脂が、段差部における第1の基板と第2の基板との間に誘導され、工程(c)において、樹脂が硬化されることによって、第1の基板と第2の基板とが固定されることを特徴とする。
【0017】
ある好適な実施形態において、上記工程(b)において、少なくとも電極間以外の第1の基板と第2の基板との間の領域は、樹脂が気泡によって押し出された第1の空洞部をなしている。
【0018】
ある好適な実施形態において、上記複数の第1の電極及び複数の第2の電極は、第1の基板及び第2の基板上にアレイ状に形成されており、上記段差部は、アレイ状の電極領域を取り囲むようにリング状に形成されている。
【0019】
ある好適な実施形態において、上記リング状に形成された段差部の一部に隙間が設けられており、該隙間が形成された部位における第1の基板と第2の基板との間の領域は、樹脂が気泡によって押し出された第2の空洞部をなしており、第1の空洞部は、第2の空洞部を介して外部と連通している。
【0020】
ある好適な実施形態において、上記複数の第1の電極及び複数の第2の電極は、互いに平行にライン状に形成されており、上記段差部は、ライン状の電極領域の外方に、該電極に平行に形成されている。
【0021】
ある好適な実施形態において、上記複数の第1の電極及び複数の第2の電極は、互いに平行にライン状に形成されており、上記段差部は、ライン状の電極に直交して形成されている。
【0022】
ある好適な実施形態において、上記段差部は、第1の電極及び第2の電極の材料よりも、溶融した導電性粒子に対して濡れ性の低い材料からなる。
【0023】
ある好適な実施形態において、上記段差部における第1の基板と前記第2の基板との間の距離は、導電性粒子の平均粒径よりも小さい。
【0024】
ある好適な実施形態において、上記段差部における第1の基板と第2の基板との間の距離は、段差部が形成されていない部位における第1の基板と第2の基板との間の距離の1/2以下である。
【0025】
ある好適な実施形態において、上記樹脂に気泡発生剤を含有させる代わりに、第1の基板及び第2の基板の少なくとも一方の基板に、気泡を発生させる気泡発生源が備えられ、上記工程(b)において、気泡は、気泡発生源から発生される。
【0026】
ある好適な実施形態において、上記第1の基板及び第2の基板は、回路基板または半導体チップからなる。
【0027】
本発明に係わるフリップチップ実装体は、回路基板上に半導体チップが実装されたフリップチップ実装体であって、回路基板及び半導体チップは、上記の本発明に係わる基板間の接続方法によって、回路基板及び半導体チップに形成された電極同士が接合体を介して電気的に接続されていることを特徴とする。
【0028】
本発明に係わる基板間接続構造は、複数の電極を有する基板同士が電気的に接続された基板間接続構造であって、基板間は、上記の本発明に係わる基板間の接続方法によって、電極間に形成された接合体を介して電気的に接続されていることを特徴とする。
【0029】
本発明に係わる他の基板間接続構造は、複数の第1の電極を有する第1の基板に対向させて、複数の第2の電極を有する第2の基板を配置し、前記第1及び第2の電極間が金属からなる接合体を介して電気的に接続された基板間接続構造であって、第1の基板及び第2の基板の少なくとも一方の基板に段差部が形成され、該段差部において、第1の基板及び第2の基板が樹脂を介して接着されており、第1及び第2の電極間以外の第1の極板と第2の極板との間の領域は、空洞部になっていることを特徴とする。
【0030】
ある好適な実施形態において、上記空洞部の少なくとも一部は外部と連通している。
【0031】
ある好適な実施形態において、上記第1の基板及び第2の基板の少なくとも一方の基板に形成された段差部は、該基板の周辺部に形成されている。
【0032】
ある好適な実施形態において、上記第1及び第2の電極の表面は、段差部の表面よりも金属に対する濡れ性が高く、樹脂に対する濡れ性が低い。
【0033】
ある好適な実施形態において、上記段差部における第1の基板と第2の基板との距離は、第1及び第2の電極間における第1の基板と第2の基板との距離よりも小さい。
【0034】
本発明に係わる他のフリップチップ実装体は、複数の第1の電極を有する半導体チップに対向させて、複数の第2の電極を有する基板を配置し、第1及び第2の電極間が接合体を介して電気的に接続されたフリップチップ実装体であって、半導体チップ及び基板の少なくとも一方に段差部が形成され、該段差部において、半導体チップ及び基板が樹脂を介して接着されており、第1及び第2の電極間以外の半導体チップと極板との間の領域は、空洞部になっていることを特徴とする。
【0035】
ある好適な実施形態において、上記空洞部の少なくとも一部は、外部と連通している。
【0036】
ある好適な実施形態において、上記複数の第1の電極及び複数の第2の電極は、半導体チップ及び基板上にアレイ状に形成されており、段差部は、アレイ状の電極領域を取り囲むようにリング状に形成されており、該リング状に形成された段差部の一部に隙間が設けられている。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、電極以外の基板の部位に段差部を設け、基板間に供給した導電性粒子及び気泡発生剤を含有する樹脂を、導電性粒子が溶融する温度に加熱することによって、電極間に形成された接合体を介して基板間を電気的に接続するとともに、電極間以外の基板間に形成した空洞部によって、接合体間を電気的に絶縁し、かつ、段差部に形成された樹脂を介して基板間を固定することができる。これにより、電極間のピッチが狭小になっても、信頼性の高い基板間の接続を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)〜(d)は、本発明の実施の形態1における基板間の接続方法の工程を示した断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における基板間の接続方法を示した図で、(a)はその平面図、(b)は(a)のIIb−IIbに沿った断面図、(c)は(a)のIIc−IIcに沿った断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1の変形例における基板間接続構造の構成を示した断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1の変形例における基板間の接続方法を示した図で、(a)はその平面図、(b)は(a)のIVb−IVbに沿った断面図、(c)は(a)のIVc−IVcに沿った断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2における基板間の接続方法を示した図で、(a)はその斜視図、(b)は(a)のVb−Vbに沿った断面図、(c)は(a)のVc−Vcに沿った断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2の変形例における基板間の接続方法を示した図で、(a)はその斜視図、(b)は(a)のVIb−VIbに沿った断面図、(c)は(a)のVIc−VIcに沿った断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2の変形例における基板間の接続方法を示した図で、(a)はその斜視図、(b)は(a)のVIIb−VIIbに沿った断面図、(c)は(a)のVIIc−VIIcに沿った断面図である。
【図8】(a)、(b)は、本発明の実施の形態2の変形例における基板間の接続方法を示した断面図である。
【図9】本発明の実施の形態3における基板間の接続方法を示した図で、(a)はその平面図、(b)は(a)のIXb−IXbに沿った断面図である。
【図10】本発明の実施例6における基板間の接続方法を示した平面図である。
【図11】本発明の各実施例、比較例における実装体の主要な構成条件を示した図である。
【図12】実施例4の実装体の断面観察を行った結果を示した図で、(a)は実装体の断面図、(b)は、(a)の矢印Bに示した領域における実装体の断面X写真、(c)は、(a)の矢印Cに示した領域における実装体の断面X写真である。
【図13】(a)〜(d)は、従来のフリップチップ実装方法の基本的な工程を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、説明の簡略化のため実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0040】
(実施の形態1)
図1(a)〜(d)は、発明の実施の形態1における基板間の接続方法の工程を示した断面図である。
【0041】
図1(a)に示すように、複数の第1の電極11が形成された第1の基板10に、導電性粒子15及び気泡発生剤(不図示)を含む樹脂14を供給し、複数の第2の電極13が形成された第2の基板12を位置決めして配置する。ここで、電極11、13が形成されていない部位における第1の基板10と第2の基板12との基板間距離をLとする。
【0042】
第1の基板10及び第2の基板12には、互いに対向する位置に段差部16、17がそれぞれ設けられており、この段差部16、17における基板間距離Lは、Lよりも狭くなっている。なお、段差部16、17は、第1の基板10または第2の基板12のいずれか一方に設けてあればよい。また、樹脂14は、電極11にパターン塗布する必要はなく、第1の基板10上に一様に塗布されていればよい。
【0043】
次に、図1(b)に示すように、樹脂14を加熱して、樹脂14中に含有する導電性粒子15を溶融するとともに、気泡発生剤から気泡20を発生させる。なお、樹脂14中に気泡発生剤を含有させる代わりに、例えば、基板に気泡発生源を設け、そこから気泡20を発生させる方法を用いてもよい。気泡発生源としては、基板中に予め水分や蒸発型ガス発生剤としてブチルカルビトールなど、加熱されて気泡を発生させる成分などが利用できる。また、基板中に加熱されて分解する事で気泡を発生させる分解型ガス発生剤(水酸化アルミニウムやアルミン酸カルシウムなど)も利用可能である。
【0044】
発生した気泡20は、表面張力によりギャップの広いところに集まる。すなわち、基板間距離Lの領域(広隙領域)に集まろうとする。また、気泡20の発生により、溶融した導電性粒子15を含む樹脂14は、電極11、13間(狭隙領域)に誘導され、自己集合する。導電性粒子がハンダ粉などの金属粒子の場合、溶融した導電性粒子15は、電極11、13面に濡れ広がる。
【0045】
濡れが進むと、図1(c)に示すように、第1の電極11と第2の電極13とが繋がり、電気的に接続された接合体21が形成される。一方、接合体21が形成されるにつれて、樹脂14は順次、電極11、13間から追い出されていくことになる。
【0046】
これらのプロセスが繰り返され、気泡20の発生、接合体21の形成がなされていく訳であるが、図1(d)に示すように、電極11、13間から追い出された樹脂14は、気泡20の力により移動している間に、毛細管現象により、基板間距離Lより狭い基板間距離Lの領域、すなわち、段差部16、17間にその多くが誘導される。最後に、段差部16、17間に誘導された樹脂14を硬化させることによって、基板10、12間を固定する。
【0047】
以上の工程により、電極11、13間に接合体21を、段差部16、17間に樹脂14を、電極11、13間以外の基板10、12間に気泡20をそれぞれ選択的に形成して、基板10、12間の接続を完了する。
【0048】
このような方法で形成された基板間接続構造においては、電極11、13間以外の基板10、12間の領域は空洞部になって、接合体21の近傍には樹脂14が残存しないため、接合体21間で、イオンマイグレーションによる絶縁不良の発生を防止することができる。逆に言えば、樹脂14として、絶縁信頼性より接着強度や他の特性を優先することが可能となり、材料選択の幅が広がる。また、段差部16、17において、基板10、12が樹脂14を介して接着されるため、基板10、12間の接着を確実に行うことができる。
【0049】
なお、本発明において、「電極間以外の極板間の領域」とは、必ずしも全ての基板間の領域を意味するものではなく、イオンマイグレーションによる絶縁不良の発生を防止する効果が失わない範囲において、一部の領域に樹脂14が残存している場合も含む。
【0050】
また、本発明において、必ずしも全ての段差部16、17において、基板10、12間に樹脂14が介在する必要はなく、また、段差部16、17の全面に亘って樹脂14が存在しなくてもよい。
【0051】
また、基板10、12間を接着している樹脂14は、基板間距離Lの狭い段差部16、17間に誘導されているため、樹脂14を薄く(例えば、50μm以下の厚み)形成することができる。そのため、段差部16、17を設けない場合に比べて、樹脂14での凝集破壊(樹脂14が界面で剥離するのではなく、樹脂14部分での破壊)が起こりにくくなって、接着強度を増すことができる。逆に言えば、樹脂14の成分として、接着強度より絶縁信頼性や他の特性を優先することが可能となり、材料選択の幅も広がる。
【0052】
なお、段差部16、17における第1の基板10と第2の基板12との距離(すなわち、樹脂14の厚み)は、第1及び第2の電極11、13間における第1の基板10と第2の基板12との距離(すなわち、接合体21の厚み)よりも小さいことが好ましい。これにより、樹脂14の接着強度をより増すことができる。
【0053】
また、樹脂14にフィラーなどの他の固体成分を含有させると、一般的には接着強度が低下することが予想されるが、そのような形態においても、樹脂14の接着強度が確保されるため、フィラー添加が可能となる。なお、フィラーを添加する場合、フィラーの平均粒径は、段差部16、17間における基板間距離L以下であることが好ましい。これにより、段差部16、17間に、フィラー添加の樹脂14を誘導させることが可能となる。フィラーとしては、例えば、線膨張係数を抑える目的で、アルミナなどの無機フィラーを添加したり、EMCシールドを目的で、銅、ニッケル、カーボンなどの金属フィラーを添加したりすることが可能である。なお、金属フィラーは、導電性粒子15よりも融点の高い材料を用いることが好ましい。これにより、導電性粒子15は、電極11、13間に自己集合させ、金属フィラー添加の樹脂14は、段差部16、17間に誘導させることができる。なお、電極11、13間に金属フィラーが混入されても問題はない。
【0054】
また、本発明の方法によれば、基板にポリイミド基板を用いた場合、ポリイミド基板との接着性が弱い材質の電子部品を実装する場合でも、接着強度を確保することができる。すなわち、段差部16、17に、ポリイミド基板との接着性が高い材質を選択することによって、樹脂14に、ポリイミド樹脂との接着性を向上させる材料を選択しなくても、十分な接着強度を確保することができる。逆に言えば、樹脂14として、接着強度より他の特性を優先することが可能となり、材料選択の幅が広がる。
【0055】
図2は、複数の電極11、13がアレイ状に形成された場合の基板間の接続方法を示した図で、(a)はその平面図、(b)は(a)のIIb−IIbに沿った断面図、(c)は(a)のIIc−IIcに沿った断面図である。
【0056】
図2(a)に示すように、アレイ状の電極11、13を取り囲むようにリング状の段差部16、17が形成されており、その段差部16、17の一部には隙間が設けられている。これにより、隙間が形成された部位における基板10、12間は、樹脂14が気泡20によって押し出された空洞部20bをなしている。そして、電極11、13間以外の基板10、12間に形成された空洞部20aは、空洞部20bを介して外部と連通している。
【0057】
このような構成により、吸湿リフロー信頼性に対しても優れた品質を確保することができる。すなわち、基板10、12間に形成された空洞部20aは、外部と連通しているため、湿気が貯まりにくく、また、急速加熱時に蒸発した水分も外部に逃がすことができるため、気圧の上昇が少なく、接続不良を防止することができる。
【0058】
なお、基板10、12間に形成された空洞部20aは、必ずしも連続して繋がっている必要はなく、少なくとも一部の空洞部20aが、空洞部20bを介して外部と連通していればよい。また、吸湿リフロー信頼性に適合するかどうかは、連続して外部と繋がっている空洞部20aの割合や、樹脂14の透湿度、接着強度などによって大きく変化するため、アプリケーションの形態や、試験条件によって、適宜決めることができる。特に、全ての空洞部20aが外部と連通していることが、吸湿リフロー信頼性などの面でより好ましい。また、絶縁信頼性に関しても、基板10、12間に形成された空洞部20aにおいて、結露や水分の吸着を低減することができるため、湿気が貯まりにくく、絶縁信頼性が向上する。
【0059】
本発明においては、図3に示すように、段差部は、第1の基板10または第2の基板12のいずれか一方の基板にだけ(図3では、第1の基板10に段差部16を設けた例を示す)設けてもよい。また、電極11、13間以外の基板10、12間に形成された空洞部20の一部に、樹脂14が残存していても、イオンマイグレーションによる絶縁不良の発生を防止する効果は失われない。
【0060】
また、段差部16、17は、基板10、12の周辺部に形成されているため、段差部16、17間に誘導された樹脂14は緩衝材としての作用も発揮する。それ故に、基板間接続構造に衝撃が加わっても、基板10、12の周辺部に存在する樹脂14によって、衝撃が緩和されるため、信頼性の高い基板間接続構造を得ることができる。
【0061】
また、本発明において、第1の基板10及び第2の基板12は、図2(a)〜(c)に示したように、同じ大きさのサイズのものに限定されず、例えば、図4(a)〜(c)に示すように、第1の基板10が、第2の基板12よりも大きなサイズのものであってもよい。ここで、図4(a)は、基板間接続構造の平面図、(b)は(a)のIVb−IVbに沿った断面図、(c)は(a)のIVc−IVcに沿った断面図である。なお、図4(b)に示すように、本例では、段差部16は、第1の基板10にだけ形成されている。
【0062】
なお、両方の基板10、12に段差部16、17を設けた場合、それらの高さを必ずしも同じにする必要はない。段差部16、17は、例えば、基板10、12上の所定の領域に、予めレジストやカバーレイ等を形成して設けておくことができる。あるいは、実装時に、フィルム状樹脂(Bステージなどの樹脂あるいは硬化した樹脂フィルム)、液状の樹脂(熱硬化性樹脂など)、板状の無機材料(セラミックや金属材料)等を設置するようにしてもよい。この場合、樹脂14の加熱とともに、段差部16、17自身が、第1の基板10または第2の基板12に接着されるような材料を選択してもよい。また、段差部16、17の材質は必ずしも同一である必要はない。
【0063】
段差部16、17における基板間距離Lは、電極11、13が形成されていない部位における基板間距離Lの1/2以下であることが好ましい。これにより、樹脂14が、より段差部16、17間に誘導されやすくなる。また、基板間距離Lは、導電性粒子15の平均粒径以下であることが好ましい。これにより、導電性粒子15は、段差部16、17間に入りにくくなり、その結果、電極11、13間に自己集合しやすくなる。なお、段差部16、17間に誘導された樹脂14中には、導電性粒子15の一部が混入されていても構わない。
【0064】
また、第1の基板10及び第2の基板12を、所定の基板間距離L及びLを維持して保持する手段としては、機械的に基板10、12を吸着あるいは掴む方法、あるいは、基板10、12間の一部に、所定の均一な粒径の粒子もしくは線状物質を挟み込み方法等を用いることができる。
【0065】
ここで、本発明における導電性粒子15としては、例えば、ハンダ粉を用いることができる。ハンダ粉としては、SnPbなどの従来の鉛含有ハンダ、SnAgCu、SnAg、SnAgBiIn、SnSb、SnBiなどの鉛フリーハンダなど、特にその種類は問わない。また、その大きさも特に問わないが、平均粒径が1〜50um程度のものを用いることが好ましい。なお、導電性粒子15は、第1の電極11及び第2の電極13との濡れ性が、第1の基板10及び第2の基板12との濡れ性よりも高い。
【0066】
本発明における樹脂14としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィドなどの熱可塑性樹脂などを用いることができる。また、洗浄工程がある場合は、シリコーンオイル、グリセリン類、炭化水素系のオイルなども用いることができる。
【0067】
本発明における第1の基板10及び第2の基板12は、回路基板、半導体チップ、モジュール部品、受動部等の、略平坦な基板で構成されるものであれば、特に制限はない。例えば、回路基板と半導体チップとの接合により、フリップチップ実装体を形成することができる。また、回路基板同士の接合により、基板間接続構造を形成することができる。
【0068】
本発明における第1の電極11及び第2の電極13の形状は特に限定されないが、例えば、円形状のものやライン状のものを用いることができる。また、電極11、13の材料は特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、ハンダ、パラジウムなどを用いることができる。これらの材料は、導電性粒子15との濡れ性がよいため、導電性粒子15の電極11、13間への自己集合が促進される。
【0069】
なお、本実施における導電性粒子15の「自己集合」とは、導電性粒子15が一様に分散された樹脂14を、複数の電極11、13を含む基板10、12間に一様に塗布し、樹脂14の加熱により樹脂14中に気泡20を発生させ、気泡20を利用して導電性粒子15を電極11、13間に誘導して接合体21を形成することをいう。
【0070】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における基板間の接続方法を示した図で、(a)はその斜視図、(b)は(a)のIVb−IVbに沿った断面図、(c)は(a)のIVc−IVcに沿った断面図である。なお、本実施形態において、実施の形態1と同様の構成については同じ符号を記している。また、特に記述がない限り、実施の形態1と同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0071】
図5(a)に示すように、第1の基板10には、複数のライン状の第1の電極11が形成されており、その外方には、第1の電極11に平行に段差部16が形成されている。同様に、第2の基板12には、複数のライン状の第2の電極13が形成されており、その外方には、第2の電極13に平行に段差部17が形成されている。
【0072】
本実施形態では、図5(b)に示すように、第1の基板10及び第2の基板12は、ライン状の電極11、13間に形成された接合体21により、電気的に接続されているとともに、ライン状に形成された段差部16、17間に誘導された樹脂14により、機械的に接着されている。
【0073】
本実施形態は、例えば、回路基板同士が電気的に接続された基板間接続構造に適用することができ、図5(b)に示すように、電極11、13間に形成された接合体21は、電極11、13間以外の基板10、12間に形成された空洞部20によって絶縁されているため、絶縁信頼性に優れている。また、図5(c)に示すように、空洞部20は、外部に連通しているため、湿気が貯まりにくく、また、急速加熱時に蒸発した水分も外部に逃がすことができるため、気圧の上昇が少なく、接続不良を防止することができる。
【0074】
なお、本実施形態において、第1の基板10及び第2の基板12は、図5(a)〜(c)に示したように、同じ大きさのサイズのものに限定されず、例えば、図6(a)〜(c)に示すように、第1の基板10が、第2の基板12よりも大きなサイズのものであってもよい。ここで、図6(a)は、基板間接続構造の平面図、(b)は(a)のVIb−VIbに沿った断面図、(c)は(a)のVIc−VIcに沿った断面図である。
【0075】
また、本実施形態において、段差部16、17は、図7(a)〜(c)に示すように、ライン状の第1及び第2の電極11、13に直交するように形成してもよい。
【0076】
また、図8(a)、(b)に示すように、電極11、13間以外の基板10、12間に形成された空洞部20の一部に、樹脂14が残存していても、イオンマイグレーションによる絶縁不良の発生を防止する効果は失われない。
【0077】
(実施の形態3)
図9は、本発明の実施の形態3における基板間の接続方法を示した図で、(a)はその平面図、(b)は(a)のIXb−IXbに沿った断面図である。なお、本実施形態において、実施の形態1と同様の構成については同じ符号を記している。また、特に記述がない限り、実施の形態1と同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0078】
図9(a)に示すように、第1の基板10には、複数の第1の電極11がアレイ状に形成されており、隣接する第1の電極11の間には、複数の段差部16がアレイ状に形成されている。同様に、第2の基板12には、複数の第2の電極13がアレイ状に形成されており、隣接する第2の電極13の間には、複数の段差部17がアレイ状に形成されている。
【0079】
本実施形態では、図9(b)に示すように、第1の基板10及び第2の基板12は、アレイ状の電極11、13間に形成された接合体21を介して電気的に接続されているとともに、アレイ状に形成された段差部16、17間に誘導された樹脂14を介して機械的に接着されている。
【0080】
本実施形態においては、基板10、12の内部においても、アレイ状に形成された段差部16、17間に誘導された樹脂14を介して基板10、12間が接着されているため、機械的信頼性の高い基板間の接続を実現することができる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明の実施例を挙げて本発明の構成及び効果をさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0082】
(実施例1)
第1の基板10として回路基板を用い、第2の基板12として半導体チップを用いて、図1(a)〜(d)に示した基板間の接続方法により、回路基板と半導体チップとのフリップチップ実装体を作製した。
【0083】
なお、回路基板は、大きさが10mm×10mmで、電極100μmφ、ピッチ200μm、電極数3×3=9個のビルドアップ基板を用いた。また、半導体チップは、電極100μmφ、ピッチ200μm、電極数3x3=9個のTEGチップを用いた。
【0084】
回路基板には、図2(a)に示したパターンの段差部16を設けた。段差部16はソルダーレジストで形成し、そのサイズは、幅が4.6mm、厚み20μmで、レジスト端部と電極間は150μmとした。一方、半導体チップには段差を設けなかった。
【0085】
樹脂14は、イミダゾール系硬化剤(四国化成社製)及びカルボン酸系フラックス剤を含むビスフェノールF型エポキシ系樹脂(エピコート806、ジャパンエポキシレジン社製)を49wt%、導電性粒子15としてハンダ粉(SnAgCu:平均粒径30μm)を50wt%、気泡発生剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル(和光純薬社製)を1wt%を混練したものを用いた。
【0086】
この樹脂を、回路基板に塗布し、その上に、回路基板の電極と半導体チップの電極とが互いに対向するように半導体チップを位置決めして搭載した。この時、電極が形成されていない部位における基板間距離Lが70μm、段差部における基板間距離Lが50μmとなるように、回路基板と半導体チップとを固定した。
【0087】
この状態で、樹脂を250℃に加熱し、ハンダ粉を溶融させるとともに、気泡発生剤から気泡を発生させた。これにより、ハンダ粉を電極間に自己集合させて接合体を形成するとともに、樹脂を段差部に誘導した。
【0088】
最後に、樹脂を硬化させて、回路基板と半導体チップとを、段差部に誘導した樹脂を介して接着させた。
【0089】
(実施例2)
実施例1と同様の部材及び方法により、回路基板と半導体チップとのフリップチップ実装体を作製した。
【0090】
回路基板には、図2(a)に示したパターンの段差部16を設けた。段差部16はソルダーレジストで形成し、そのサイズは、幅が4.4mm、厚み30μmで、レジスト端部と電極間は150μmとした。一方、半導体チップにも、図2(a)に示したパターンの段差部17を設けた。段差部17は、酸無水物系エポキシ樹脂を用いて、印刷法により形成した。そのサイズは、幅が4.3mm、厚み15μmで、段差部17と電極間は450μmとした。そして、電極が形成されていない部位における基板間距離Lが65μm、段差部における基板間距離Lが20μmとなるように、回路基板と半導体チップとを固定して、基板間の接続を行った。
【0091】
(実施例3)
第1の基板10及び第2の基板12として回路基板を用いて、図1(a)〜(d)に示した基板間の接続方法により、回路基板同士を接続した基板間接続構造を作製した。
【0092】
回路基板は、大きさが10mm×20mmで、幅が50μmのライン状電極で、ピッチ100μm、電極本数30本のフレキシブル基板を用いた。
【0093】
また、回路基板には、図5(a)に示したパターンの段差部16、17を設けた。段差部は、カバーレイフィルムで形成し、そのサイズを、2.5mm(電極と直交方向)x1.5mm(電極と平行方向)、厚み10μmとした。また、カバーレイフィルム端部と電極間は約1mmとした。
【0094】
樹脂は、イミダゾール系硬化剤(四国化成社製)及びカルボン酸系フラックス剤を含むビスフェノールF型エポキシ系樹脂(エピコート806、ジャパンエポキシレジン社製)を44wt%、導電性粒子としてハンダ粉(SnAgCu:粒径20μm)を55wt%、気泡発生剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル(和光純薬社製)を1wt%を混練したものを用いた。
【0095】
回路基板同士の接合は、電極が形成されていない部位における基板間距離Lが25μm、段差部における基板間距離Lが5μmとなるように固定した状態で、樹脂を250℃に加熱することにより行った。
【0096】
(実施例4)
第1及び第2の回路基板の段差厚みを15μm、電極が形成されていない部位における基板間距離Lを50μm、段差部における基板間距離Lを20μm、はんだ粉の粒径を25μmとした以外は、実施例3と同様の部材、及び方法により、回路基板同士を接続した基板間接続構造を作製した。
【0097】
(実施例5)
第1の基板10及び第2の基板12として回路基板を用いて、図1(a)〜(d)に示した基板間の接続方法により、回路基板同士を接続した基板間接続構造を作製した。
【0098】
回路基板は、大きさが10mm×20mmで、幅が100μmのライン状電極で、ピッチ200μm、電極本数20本のフレキシブル基板を用いた。
【0099】
また、回路基板には、図7(a)に示したパターンの段差部16、17を設けた。段差部は、カバーレイフィルムで形成し、そのサイズを、10mm(電極と直交方向)x10mm(電極と平行方向)、厚み15μmとした。
【0100】
樹脂は、イミダゾール系硬化剤(四国化成社製)及びカルボン酸系フラックス剤を含むビスフェノールF型エポキシ系樹脂(エピコート806、ジャパンエポキシレジン社製)を44wt%、導電性粒子としてハンダ粉(SnAgCu:粒径20μm)を55wt%、気泡発生剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル(和光純薬社製)を1wt%を混練したものを用いた。
【0101】
回路基板同士の接合は、電極が形成されていない部位における基板間距離Lが40μm、段差部における基板間距離Lが10μmとなるように固定した状態で、樹脂を250℃に加熱することにより行った。
【0102】
(実施例6)
図2(a)に示したパターンの段差部16に代わりに、図10に示したパターンの段差部を用いた以外は、実施例1と同様の部材、及び方法により、回路基板と半導体チップとのフリップチップ実装体を作製した。
【0103】
(比較例1)
第1の基板10及び第2の基板12に段差部16、17を設けなかった以外は、実施例1と同様の部材及び方法により、回路基板と半導体チップとのフリップチップ実装体を作製した。なお、電極が形成されていない部位における基板間距離Lは60μmとした。
【0104】
(比較例2)
第1の基板10及び第2の基板12に段差部16、17を設けなかった以外は、実施例3と同様の部材及び方法により、回路基板同士を接続した基板間接続構造を作製した。なお、電極が形成されていない部位における基板間距離Lは60μmとした。
【0105】
上記実施例1〜6及び比較例1、2で作製したフリップチップ実装体または基板間接続構造(以下、単に「実装体」という。)の主要な構成条件を図11に示す。
【0106】
《接合体の断面観察等》
まず、実施例1〜6及び比較例1、2で作製した実装体の電極間に形成された接合体を、X線および断面観察を行った。
【0107】
その結果、作製した全ての実装体において、電極間にハンダ粉が溶融してなる接合体が形成されているのが確認できた。
【0108】
また、段差部を形成した実施例1〜6の実装体においては、段差部分に樹脂が誘導されて、回路基板と半導体チップ、または回路基板同士が樹脂を介して接着されているのが確認できた。
【0109】
しかしながら、段差部に誘導された樹脂のうち、実施例2〜5の実装体においては、樹脂中にハンダ粉はほとんど存在しなかったのに対し、実施例1、6の実装体においては、樹脂中にハンダ粉が存在しているのが確認できた。これは、実施例1、6においては、段差部における基板間距離(L=50μm)が、ハンダ粉の平均粒径(30μm)よりも大きかったため、段差部における基板間にもハンダ粉が入り込んだものと考えられる。
【0110】
また、実施例2〜5の実装体においては、接合体以外の基板間は、空洞部が形成されているのが確認できた。これは、実施例2〜5においては、段差部における基板間距離Lが、電極が形成されていない部位における基板間距離Lよりも1/2以下であったため、樹脂が効率よく段差部に誘導されたものと考えられる。なお、実施例1、6の実装体においても、接合体以外の基板間には空洞部は形成されていたが、一部に樹脂が残存したものが確認できた。これに対して、比較例1、2の実装体においては、接合体以外の基板間には、樹脂が残存しているのが確認できた。
【0111】
図12(a)〜(c)は、実施例4の実装体について、断面観察を行った結果を示した図で、(a)は実装体の断面図、(b)は、(a)の矢印Bに示した領域における実装体の断面X写真、(c)は、(a)の矢印Cに示した領域における実装体の断面X写真である。
【0112】
図12(b)に示すように、全ての電極11、13間にハンダ粉が溶融してなる接合体21が形成されているのが確認できる。また、電極11、13間以外の回路基板10、12間の領域は、全て空洞部20になっていることが確認できる。さらに、図12(c)に示すように、段差部16、17間に樹脂14が誘導されて、回路基板10、12同士が樹脂を介して接着されているのが確認できる。
【0113】
《信頼性の試験》
実施例1〜6及び比較例1、2で作製した実装体について、吸湿リフロー試験、絶縁信頼性試験を行った。なお、吸湿リフロー試験では接続抵抗を、絶縁信頼性試験では絶縁抵抗を見るために、接合体からの配線引き回しは異なるものにした。
【0114】
吸湿リフロー試験は、85℃/85%RH、168時間吸湿後、240℃リフローを3回行った。その結果、実施例1〜5、比較例1、比較例2の実装体においては、試験後の抵抗値変化が±10%以内であり、試験後の外観も特に問題なかった。これに対して、実施例6の実装体においては、試験後にオープン不良が発生しており、外観検査においても、実装体の回路基板側に膨れが観測された。これは、実施例6における段差部は、基板周辺に電極を取り囲むように形成されていたため、段差部に誘導された樹脂によって、基板間の接合体以外に形成された空洞部が密閉された状態になっていたためと考えられる。
【0115】
絶縁信頼性試験は、PCT試験条件(120℃85%RH/15V印加/96時間)で行った。その結果、比較例1、2の実装体においては、抵抗値が10Ω程度まで低下しており、接合体間でイオンマイグレーションによる絶縁不良が発生していた。これは、
比較例1、2の実装体においては、接合体以外の基板間に樹脂が残存していたためと考えられる。これに対して、実施例1〜6の実装体においては、試験後も1010Ω以上の抵抗値を示し、イオンマイグレーションによる絶縁不良は確認されなかった。
【0116】
以上の結果から、電極以外の基板の部位に段差部を設け、基板間に供給した導電性粒子及び気泡発生剤を含有する樹脂を、導電性粒子が溶融する温度に加熱することによって、電極間に形成された接合体によって基板間を電気的に接続するとともに、電極間以外の基板間に形成した空洞部によって、接合体間を電気的に絶縁し、かつ、段差部に形成された樹脂によって、基板間を固定することができることが分かる。これにより、電極間のピッチが狭小になっても、信頼性の高い基板間の接続を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、次世代の薄型化・高密度実装化が進む電子機器におけるフリップチップ実装や基板間接続に有用である。
【符号の説明】
【0118】
10 第1の基板
11 第1の電極
12 第2の基板
13 第2の電極
14 樹脂
15 導電性粒子
16、17 段差部
20 気泡
20a、20b 空洞部
21 接合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の電極を有する第1の基板に対向させて、複数の第2の電極を有する第2の基板を配置し、前記第1の電極と前記第2の電極とを接合体を介して電気的に接続する基板間の接続方法であって、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に、導電性粒子及び気泡発生剤が含有された樹脂を供給する工程(a)と、
前記樹脂を加熱して、該樹脂中に含有する前記導電性粒子を溶融させるとともに、前記樹脂中に含有する気泡発生剤から気泡を発生させる工程(b)と、
前記樹脂を硬化させる工程(c)と
を有し、
前記第1の基板及び前記第2の基板の少なくとも一方の基板には、段差部が形成されており、
前記工程(b)において、前記気泡が成長することで、前記樹脂が該気泡外に押し出されることによって、前記樹脂中の溶融した導電性粒子が、前記第1の電極と前記第2の電極との間に誘導されて、該電極間に前記溶融された導電性粒子からなる前記接合体が形成されるとともに、前記樹脂が、前記段差部における前記第1の基板と前記第2の基板との間に誘導され、
前記工程(c)において、前記樹脂が硬化されることによって、前記第1の基板と前記第2の基板とが固定される、基板間の接続方法。
【請求項2】
前記工程(b)において、少なくとも前記電極間以外の前記第1の基板と前記第2の基板との間の領域は、前記樹脂が前記気泡によって押し出された第1の空洞部をなしている、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項3】
前記複数の第1の電極及び前記複数の第2の電極は、前記第1の基板及び前記第2の基板上にアレイ状に形成されており、
前記段差部は、前記アレイ状の電極領域を取り囲むようにリング状に形成されている、請求項1または2に記載の基板間の接続方法。
【請求項4】
前記リング状に形成された段差部の一部に隙間が設けられており、該隙間が形成された部位における前記第1の基板と前記第2の基板との間の領域は、前記樹脂が前記気泡によって押し出された第2の空洞部をなしており、
前記第1の空洞部は、前記第2の空洞部を介して外部と連通している、請求項3に記載の基板間の接続方法。
【請求項5】
前記複数の第1の電極及び前記複数の第2の電極は、互いに平行にライン状に形成されており、
前記段差部は、前記ライン状の電極領域の外方に、該電極に平行に形成されている、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項6】
前記複数の第1の電極及び前記複数の第2の電極は、互いに平行にライン状に形成されており、
前記段差部は、前記ライン状の電極に直交して形成されている、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項7】
前記段差部は、前記第1の電極及び第2の電極の材料よりも、前記溶融した導電性粒子に対して濡れ性の低い材料からなる、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項8】
前記段差部における前記第1の基板と前記第2の基板との間の距離は、前記導電性粒子の平均粒径よりも小さい、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項9】
前記段差部における前記第1の基板と前記第2の基板との間の距離は、前記段差部が形成されていない部位における前記第1の基板と前記第2の基板との間の距離の1/2以下である、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項10】
前記樹脂に前記気泡発生剤を含有させる代わりに、前記第1の基板及び前記第2の基板の少なくとも一方の基板に、気泡を発生させる気泡発生源が備えられ、
前記工程(b)において、前記気泡は、前記気泡発生源から発生される、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項11】
前記第1の基板及び前記第2の基板は、回路基板または半導体チップからなる、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項12】
回路基板上に半導体チップが実装されたフリップチップ実装体であって、
前記回路基板及び前記半導体チップは、請求項1に記載された基板間の接続方法によって、前記回路基板及び前記半導体チップに形成された電極同士が接合体を介して電気的に接続されている、フリップチップ実装体。
【請求項13】
複数の電極を有する回路基板同士が電気的に接続された基板間接続構造であって、
前記回路基板間は、請求項1に記載された基板間の接続方法によって、前記電極間に形成された接合体を介して電気的に接続されている、基板間接続構造。
【請求項14】
複数の第1の電極を有する第1の基板に対向させて、複数の第2の電極を有する第2の基板を配置し、前記第1及び第2の電極間が金属からなる接合体を介して電気的に接続された基板間接続構造であって、
前記第1の基板及び前記第2の基板の少なくとも一方の基板に段差部が形成され、該段差部において、前記第1の基板及び前記第2の基板が樹脂を介して接着されており、
前記第1及び第2の電極間以外の前記第1の極板と前記第2の極板との間の領域は、空洞部になっている、基板間接続構造。
【請求項15】
前記空洞部の少なくとも一部は、外部と連通している、請求項14に記載の基板間接続構造。
【請求項16】
前記第1の基板及び前記第2の基板の少なくとも一方の基板に形成された段差部は、該基板の周辺部に形成されている、請求項14に記載の基板間接続構造。
【請求項17】
前記第1及び第2の電極の表面は、前記段差部の表面よりも、金属に対する濡れ性が高く、樹脂に対する濡れ性が低い、請求項14に記載の基板間接続構造。
【請求項18】
前記段差部における前記第1の基板と前記第2の基板との距離は、前記第1及び第2の電極間における前記第1の基板と前記第2の基板との距離よりも小さい、請求項14に記載の基板間接続構造。
【請求項19】
複数の第1の電極を有する半導体チップに対向させて、複数の第2の電極を有する基板を配置し、前記第1及び第2の電極間が接合体を介して電気的に接続されたフリップチップ実装体であって、
前記半導体チップ及び前記基板の少なくとも一方に段差部が形成され、該段差部において、前記半導体チップ及び前記基板が樹脂を介して接着されており、
前記第1及び第2の電極間以外の前記半導体チップと前記極板との間の領域は、空洞部になっている、フリップチップ実装体。
【請求項20】
前記空洞部の少なくとも一部は、外部と連通している、請求項19に記載のフリップチップ実装体。
【請求項21】
前記複数の第1の電極及び前記複数の第2の電極は、前記半導体チップ及び前記基板上にアレイ状に形成されており、
前記段差部は、前記アレイ状の電極領域を取り囲むようにリング状に形成されており、該リング状に形成された段差部の一部に隙間が設けられている、請求項19に記載のフリップチップ実装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図12】
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