説明

基礎断熱材とこれを用いた断熱基礎構造

【課題】建物基礎の立ち上げ部への断熱材装着に際して、立ち上げ部に対しての装着の確実化と施工性の向上を図る。
【解決手段】断熱基礎構造10は、養生硬化したコンクリート製の立ち上げ部30と基礎コンクリート部20に基礎断熱材40を接合して備える。基礎断熱材40の接合に際し、打込コンクリートは、基礎断熱材40のコンクリート接触面40Sにおいて、断熱材本体42の発泡気泡や耐熱短繊維間に入り込んで養生硬化して、剥がれ止め機能を果たす。また、打込コンクリートは、基礎断熱材40のアンカーブロック44bをその周囲で覆って養生硬化して、剥がれ止め機能を果たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物基礎の立ち上げ部の建物屋外側に配置される平板状の基礎断熱材や、この基礎断熱材を用いて建物基礎の建物屋外側で断熱を図る断熱基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、建物の断熱化を建物基礎においても図ることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−23593号公報
【0004】
この特許文献では、建物基礎の立ち上げ部の建物屋外側に断熱材を配した上で、当該断熱材を化粧材で覆い、断熱材と化粧材とを、その上端側でステンレス製の断熱材抑え具で挟むようにして建物基礎の立ち上げ部に固定している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献で提案された建物基礎では、断熱材と化粧材をその上端側でしか立ち上げ部に対して断熱抑え具にて挟持していない。よって、抑え具による挟持が不十分であると、立ち上げ部の表面の側に隙ができることも有り得る。こうなると、隙がある分だけ上端側で断熱材や化粧材が風等を受けてバタ付くので、このバタ付きによる不用意な異音の発生や、断熱材や化粧板の破損が危惧されるに到った。
【0006】
また、建物基礎の立ち上げ部は、建物の規模や様式に応じてその厚みは多様である。よって、上記した断熱抑え具にて断熱材と化粧材とを多様な厚みの建物基礎の立ち上げ部に挟持・固定するためには、断熱抑え具を種々の寸法で用意する必要があり施工の上で煩雑であった。
【0007】
本発明は、上記した課題を踏まえ、建物基礎の立ち上げ部への断熱材装着に際して、立ち上げ部に対しての装着の確実化と施工性の向上を図ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明では、以下の構成を採用した。
【0009】
[適用1:基礎断熱材]
建物基礎の立ち上げ部の建物屋外側に配置される平板状の基礎断熱材であって、
断熱性を有する平板状基材から形成された断熱材本体と、
固定用金具による固定の用をなす硬さを呈する材料から形成され、前記断熱材本体に予め定めたピッチで配設された固定用部材とを備え、
該固定用部材は、
前記断熱材本体の内部に留まる内部部材と、
該内部部材に連設されて前記断熱材本体の一方の面の側から突出し、前記一方の面の側に形成されたコンクリート製の前記立ち上げ部に埋設されることになる凸状のボス体とを備える
ことを要旨とする。
【0010】
上記構成を有する平板状の基礎断熱材は、建物基礎の立ち上げ部の建物屋外側に配設され、立ち上げ部に断熱性を有する平板状基材から形成された断熱材本体を接合させる。この断熱材本体には、固定用金具、例えば釘やネジによる固定の用をなす硬さを呈する材料から形成された固定用部材が配設済みであり、当該固定用部材は、断熱材本体の内部に留まる内部部材に連設された凸状のボス体を断熱材本体の一方の面の側から突出させて備える。
【0011】
建物基礎の立ち上げ部は基礎構造物であるが故に通常はコンクリート製とされ、この立ち上げ部への基礎断熱材の配設は、立ち上げ部の養生後、即ちコンクリート硬化後の立ち上げ部に対して行われるものではなく、建物基礎とその立ち上げ部の型枠取りの際になされる。つまり、基礎断熱材を組み込んだ状態で形成した型枠にコンクリートを打ち込み、型枠内でのコンクリートの養生を経て、基礎断熱材を建物屋外側に配設した状態の立ち上げ部が建物基礎と共に得られる。
【0012】
基礎断熱材は、型枠内において、打ち込み済みの打込コンクリートとコンクリート養生後まで接している。よって、コンクリートは、その養生の間において、基礎断熱材が有する断熱材本体の一方の面における断熱のための発泡気孔や断熱繊維の積層空隙に入り込み、その状態で養生硬化して立ち上げ部となり、基礎断熱材は立ち上げ部に接合される。このようにして断熱材本体の一方の面に入り込んで養生硬化したコンクリートは、立ち上げ部への基礎断熱材の剥がれ止め機能、保持および固定機能を果たす。
【0013】
基礎断熱材の断熱材本体は、コンクリートが発泡気泡に入り込む側の一方の面に、その面から固定用部材の凸状のボス体を突出させている。よって、型枠に打ち込まれたコンクリートは、この凸状のボス体をその周囲で覆った状態で養生硬化して立ち上げ部となり、凸状のボス体はコンクリート製の立ち上げ部に埋設される。このボス体は、釘やネジ等の固定用金具による固定の用をなす硬さを呈する材料から形成された固定用部材の一部であることから、養生硬化後のコンクリート製の立ち上げ部に埋設された状態で、その凸状形状を維持する。このようにして凸形状を維持したままのボス体を覆って養生硬化したコンクリートは、ボス体をその周囲にて把持することから、既述したように立ち上げ部への基礎断熱材の剥がれ止め機能、保持および固定機能を果たす。
【0014】
これらの結果、上記構成の基礎断熱材は、養生硬化したコンクリートの上記した剥がれ止め機能等により、コンクリートの養生硬化を経て得られた立ち上げ部に確実に接合固定して装着される。また、上記構成の基礎断熱材を建物基礎の立ち上げ部に装着するに際しては、立ち上げ部の厚み方向において挟持するような器具を用いる必要がないので、種々の厚み寸法を取り得る立ち上げ部に対しての装着の施工性も高まる。
【0015】
そして、建物基礎の立ち上げ部に装着済みの基礎断熱材をその外側から化粧板等の表皮ボードで覆う場合には、表皮ボードの側から基礎断熱材が有する固定用部材に対して釘打ち或いはネジ止めすればよい。この場合、固定用部材は、固定用金具による固定の用をなす硬さを備えている上に、基礎断熱材の断熱材本体に予め定めたピッチで配設されている。よって、このピッチに従って固定用部材に釘打ち或いはネジ止めを行うことで、表皮ボードを確実に基礎断熱材に固定して、断熱材表面を表皮ボードで覆うことができる。
【0016】
上記した基礎断熱材は、次のような態様とすることができる。例えば、前記ボス体を、前記形成されたコンクリート製の前記立ち上げ部に対してアンカー効果を呈する突起形状とでき、その一例は傾斜側面を有する突起形状である。こうすれば、ボス体は、ボス体を覆って養生硬化したコンクリートに対しての抜止機能を果たすので、建物基礎の立ち上げ部に対しての基礎断熱材の剥がれ防止効果がより高まる。
【0017】
また、前記固定用部材を前記ピッチで多列に前記断熱材本体に配設することができ、こうすれば、ボス体も多列となることから、ボス体を覆って養生硬化したコンクリートによる剥がれ止め機能等がより高まり、基礎断熱材の剥がれ防止効果の実効性も高くなる。しかも、基礎断熱材をその外側から表皮ボードで覆う場合の表皮ボードの固定箇所を増やすこともできるので、基礎断熱材への表皮ボード固定の実効性も高まる。
【0018】
更に、固定用部材が有する前記内部部材を、前記断熱材本体を貫通して前記一方の面と反対側の面において前記断熱材本体と面一とすることもできる。こうすれば、基礎断熱材をその外側から覆う表皮ボードを、固定用部材の内部部材で直接支えることができるので、表皮ボードの釘打ち等の固定の際に、断熱材本体を不用意に圧縮させないようにできる。
【0019】
[適用2:断熱基礎構造]
建物基礎の建物屋外側で断熱を図る断熱基礎構造であって、
前記建物基礎の一部をなし、少なくとも前記建物屋外側がコンクリート製とされた立ち上げ部と、
既述したいずれかの態様の基礎断熱材と、
該基礎断熱材の外表側に配置された表皮ボードとを備え、
前記基礎断熱材は、
前記固定用部材が有する前記ボス体の側の前記断熱材本体の表面を前記立ち上げ部におけるコンクリート部に接合させると共に、前記ボス体を前記立ち上げ部におけるコンクリートに埋設させ、
該表皮ボードは、
前記建物基礎の下端にて土中に埋設される捨てコンクリートの上面から延びて前記基礎断熱材を被覆すると共に、前記基礎断熱材が有する前記内部部材に対してボード表面側から釘打ちおよび/またはネジ締めにより前記基礎断熱材に固定され、
前記表皮ボードと前記基礎断熱材は、
前記捨てコンクリートの側で土中に埋設されている
ことを要旨とする。
【0020】
上記構成の断熱基礎構造によっても、立ち上げ部に対しての基礎断熱材装着の確実性や施工性が高まる。しかも、表皮ボードは、白蟻の食害に対する耐性、即ち防蟻性を有するボードとできるので、この防蟻性の表皮ボードにて基礎断熱材を捨てコンクリート上面から覆うことができる。よって、基礎断熱材への白蟻の進入抑制の実効性が高まる。
【0021】
上記した断熱基礎構造にあっては、L字状に屈曲した耐食性を有する防蟻体を、屈曲コーナが前記捨てコンクリートの上面から延びる前記表皮ボードの下端側に位置するよう、前記捨てコンクリートの上面と前記表皮ボードの表面に密着させて備えるようにできる。こうした前記防蟻体として、蟻の進入通過を防止する細孔を多列に有するメッシュ体とすることもできる。
【0022】
基礎断熱材は、発泡性である際には白蟻により食害されやすく、基礎断熱材自体が白蟻の進入経路となり易い。しかしながら、上記したようにL字状に屈曲した防蟻体を配置することで、土中に埋設された状態の表皮ボードの下端側からの白蟻進入回避、延いては基礎断熱材の白蟻による食害回避を図ることができる。この場合、表皮ボード自体も上記した防蟻性を有することから、白蟻進入回避や食害回避の実効性はより高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の形態を実施例に基づき説明する。図1は実施例に係る断熱基礎構造10を一部破断して概略的に示す説明図、図2は土中に埋設した状態の断熱基礎構造10を概略的に断面視して示す説明図、図3は断熱基礎構造10の完成前状態を示すよう一部分解視して示す説明図である。
【0024】
図示するように、断熱基礎構造10は、捨てコンクリート12を最下層として、この捨てコンクリート12に、建物(図示略)の建物基礎の一部となる基礎コンクリート部20と上方に延びた立ち上げ部30とを備える。この立ち上げ部30は、後述の工程を経て形成されたコンクリート製であり、基礎コンクリート部20と一体となって建物基礎を構成する。また、断熱基礎構造10は、この立ち上げ部30の建物屋外側に、平板状の基礎断熱材40と、表皮ボード50とを備え、表皮ボード50の下端側にはL字状に屈曲した防蟻メッシュ60を備える。
【0025】
基礎断熱材40は、断熱材本体42と固定用ブロック44とを備える。断熱材本体42は断熱性を有する平板状基材であり、例えば、硬質ウレタン発泡成型品、ポリスチレン発泡成型品、ポリオレフィン発泡成型品等のプラスチック発泡成型品や、グラスウール、ロックウール、セルローズファイバー等の断熱性の短繊維の平板成型品である。固定用ブロック44は、後述の表皮ボード50の釘打ちに際しての固定の用をなす硬さを呈する材料、例えば木材やプラスチックから形成され、断熱材本体42に予め定めたピッチで配設される。本実施例では、図示するように固定用ブロック44を上下に2列で所定ピッチで備える。
【0026】
この固定用ブロック44は、断熱材本体42の内部に留まる内部ブロック44aと、アンカーブロック44bとを一体に備える。アンカーブロック44bは、内部ブロック44aに連設されて断熱材本体42の一方の面の側から突出した凸状体であり、図示するように、コンクリート製の立ち上げ部30に埋設される。本実施例では、固定用ブロック44を、円柱状の内部ブロック44aに傾斜側面を有する円錐台形状のアンカーブロック44bを連設したが、内部ブロック44aを角柱とし、アンカーブロック44bを角錐台形状とすることもできる。
【0027】
固定用ブロック44を断熱材本体42に備えた基礎断熱材40を得るには、断熱材本体42を発泡成型品とする際において、型内に固定用ブロック44を所定ピッチで配した上で、発泡剤を発泡させればよい。また、断熱性短繊維の平板成型品の場合にあっても、成型型内に固定用ブロック44を所定ピッチで配した上で、型成型すればよい。この他、平板状に形成済みの断熱材本体42に、固定用ブロック44を所定ピッチで埋設固定することもできる。
【0028】
表皮ボード50は、石膏等を用いた不燃性のボードであり、土中に埋設した場合の耐性や、白蟻による食害回避が可能である。そして、この表皮ボード50は、基礎断熱材40の外表側に配置されて当該断熱材に接合し、釘Nにて基礎断熱材40の固定用ブロック44に固定される。この表皮ボード50の釘打ち固定に際して、表皮ボード50は、その下端を土中に埋設される捨てコンクリート12の上面に当接させて当該上面から上に延びて基礎断熱材40を被覆した状態で行われる。
【0029】
防蟻メッシュ60は、ステンレス等の耐食性に富む金属メッシュ鋼板であり、白蟻の食害耐性は勿論、メッシュサイズにおいても、白蟻の進入通過を許さないようにされている。そして、この防蟻メッシュ60は、図1や図3に示すように、基礎断熱材40に固定済みの表皮ボード50の下端と捨てコンクリート12の上面12Uとで形成される角部CにL字状屈曲コーナを位置させて、配設・固定される。防蟻メッシュ60の固定に際しては、捨てコンクリート12の上面12Uと表皮ボード50の下端側表面に角部Cを含めて接着剤を予め塗布し、この接着剤に防蟻メッシュ60を押しつけることで行われる。つまり、接着剤は、防蟻メッシュ60のメッシュを埋めつつメッシュ上面にまで達して硬化するので、防蟻メッシュ60は、捨てコンクリート12の上面12Uと表皮ボード50の下端側表面に角部Cを含めて隙なく接着される。本実施例では、表皮ボード50の下端を捨てコンクリート12の上面12Uに当接させている。
【0030】
上記した構成の断熱基礎構造10は、表皮ボード50の釘打ち固定と防蟻メッシュ60の配設・固定後に、図2に示すように、建物屋外側において防蟻メッシュ60を含む表皮ボード50の下端側が土中となるよう、埋設される。本実施例では、グランドライン(GL)にて、基礎断熱材40の下端側の約1/3が土中となるよう断熱基礎構造10を埋設した。
【0031】
次に、断熱基礎構造10の製造工程について説明する。図4は基礎コンクリート部20の形成・養生の様子と基礎断熱材40との関係を示す説明図、図5は養生済みの基礎コンクリート部20と基礎断熱材40との関係を示す説明図、図6は立ち上げ部30の形成・養生の様子と基礎断熱材40との関係を示す説明図である。
【0032】
図4に示すように、まず、敷き詰められた捨て石Sの上に捨てコンクリート12を形成・養生する。その養生後に、建物屋外側型枠100を捨てコンクリート12の上面12Uに設置する。建物屋外側型枠100は、外側縦枠102をその上下端で補強枠材104U、104Dに固定した状態で、外側縦枠102の下端が捨てコンクリート12の上面12Uに当接するよう、外側縦枠102を立設させる。上下の補強枠材104U、104Dは、適宜な間隔で縦補強材106にて補強されている。この場合、外側縦枠102の一面には、この基礎断熱材40の下端と捨てコンクリート12の上面12Uとの間に数十mmの間隙を確保して、基礎断熱材40が配設される。このように配設された基礎断熱材40は、その有する固定用ブロック44に対して外側縦枠102の側から打ち込まれた釘Nにて、外側縦枠102に保持される。この場合、基礎断熱材40の下端と捨てコンクリート12の上面12Uとの間の上記間隙は、L字状の防蟻メッシュ60における片の長さより短くされる。つまり、上記したように間隙を確保した場合にあっても、基礎断熱材40の下端は、防蟻メッシュ60で塞がれることになる。
【0033】
こうして建物屋外側型枠100が設置されると、図4において点線で示す領域にコンクリートが打ち込まれる。打込コンクリートは、図5に示すように、建物屋外側型枠100の側にまで行き渡り、外側縦枠102に保持済みの基礎断熱材40の表面(コンクリート接触面40S)を覆う。この際、図示するように、基礎断熱材40が有する固定用ブロック44のアンカーブロック44bは、打込コンクリートでその周囲が覆われる。この後、コンクリートは養生されて硬化し、図5に示すように、基礎コンクリート部20が形成される。
【0034】
この基礎コンクリート部20の形成までのコンクリート養生の際、打込コンクリートは、その養生の間において、基礎断熱材40が有する断熱材本体42のコンクリート接触面40Sにおける発泡気孔や断熱短繊維の積層空隙に入り込み、その状態で養生硬化する。これによって、基礎断熱材40は、養生硬化後のコンクリート製の立ち上げ部30の一部をなす基礎コンクリート部20の端部側と接合する。しかも、このコンクリート養生の際、コンクリートは、基礎断熱材40が有する断熱材本体42の下端側端面40Dにおける発泡気孔や断熱短繊維の積層空隙にも入り込み、その状態で養生硬化する。
【0035】
また、基礎断熱材40のコンクリート接触面40Sから突出したアンカーブロック44bをその周囲で覆っていた打込コンクリートにあっては、アンカーブロック44bを覆ったまま養生硬化する。この場合、アンカーブロック44bを有する固定用ブロック44は、木材やプラスチックであるために釘やネジ等の固定用金具による固定の用をなす硬さを有することから、養生硬化後のコンクリート製の立ち上げ部30の一部をなす基礎コンクリート部20に埋設された状態で、その凸状形状を維持する。よって、アンカーブロック44bを覆って養生硬化したコンクリートは、このアンカーブロック44bをその周囲にて把持することになる。
【0036】
このようにして基礎コンクリート部20がコンクリート養生を経て形成されると、基礎コンクリート部20の端部側に立ち上げ部30を形成すべく、図6に示すように、建物屋内側型枠110を捨て基礎コンクリート部20の上面に設置して、建物屋外側型枠100と対向させる。建物屋内側型枠110は、内側縦枠112をその上下端で補強枠材114U、114Dに固定した状態で、内側縦枠112の下端が基礎コンクリート部20の上面に当接するよう、内側縦枠112を立設させる。上下の補強枠材114U、114Dは、適宜な間隔で図示しない縦補強材にて補強される。この場合、形成済みの建物屋外側型枠100の外側縦枠102と建物屋内側型枠110の内側縦枠112との間には、その上端側、即ち形成する立ち上げ部30の上端面より上方位置において、間隔保持材118が適宜配設される。間隔保持材118の長さは、形成対象となる立ち上げ部30の厚みに合わせて調整されていることから、外側縦枠102と内側縦枠112とは、形成対象となる立ち上げ部30の厚みに相当する間隔を隔てて対向し、立ち上げ部30の形成領域を形成する。
【0037】
こうして建物屋内側型枠110が設置されると、図6において点線で示す領域にコンクリートが打ち込まれる。打込コンクリートは、対向する外側縦枠102と内側縦枠112で形成された領域に堆積し、外側縦枠102に保持済みの基礎断熱材40のコンクリート接触面40Sを覆う。この際、図示するように、基礎断熱材40が有する固定用ブロック44のアンカーブロック44bは、打込コンクリートでその周囲が覆われる。この後、打込コンクリートは養生されて硬化し、図1〜図3に示すように、基礎コンクリート部20の端部側で当該コンクリート部と一体となった立ち上げ部30が形成される。本実施例では、立ち上げ部30の上端面を基礎断熱材40の上端面と同じ高さとなるようにしたが、立ち上げ部上端面を基礎断熱材40の上端より数十mm程度高くすることもできる。
【0038】
この立ち上げ部30の形成までのコンクリート養生の際、打込コンクリートは、その養生の間において、基礎断熱材40が有する断熱材本体42のコンクリート接触面40Sにおける発泡気孔や断熱短繊維の積層空隙に入り込み、その状態で養生硬化する。これによって、基礎断熱材40は、養生硬化後のコンクリート製の立ち上げ部30と接合する。
【0039】
また、基礎断熱材40のコンクリート接触面40Sから突出したアンカーブロック44bをその周囲で覆っていた打込コンクリートにあっては、アンカーブロック44bを覆ったまま養生硬化する。この場合、アンカーブロック44bを有する固定用ブロック44は、木材やプラスチックであるために固定用金具による固定の用をなす硬さを有することから、養生硬化後のコンクリート製の立ち上げ部30に埋設された状態で、その凸状形状を維持する。よって、アンカーブロック44bを覆って養生硬化したコンクリートは、このアンカーブロック44bをその周囲にて把持することになる。
【0040】
立ち上げ部30のコンクリートが養生硬化すれば、建物屋外側型枠100と建物屋内側型枠110を撤去し、次いで、図3に示すように、基礎断熱材40を覆うよう表皮ボード50を基礎断熱材40に接合させた上で、基礎断熱材40の固定用ブロック44に釘Nにて釘打ち固定する。この釘打ちは、既述したように固定用ブロック44の点在ピッチが所定ピッチとされていることから、このピッチに従ってなされる。
【0041】
その後、釘打ち固定済みの表皮ボード50の下端側表面と、捨てコンクリート12の上面12Uとに角部Cを含んで接着剤を塗布等した上で、この塗布済み接着剤に対して防蟻メッシュ60を押圧する。メッシュ押圧に際しては、表皮ボード50の下端と捨てコンクリート12の上面12Uとで形成される角部CにL字状屈曲コーナが位置するようにされる。これにより、防蟻メッシュ60は、L字状の屈曲コーナで角部Cを塞ぎつつ、表皮ボード50の下端表面と捨てコンクリート12の上面12Uに密着する。防蟻メッシュ60は、白蟻の進入通過を許さない細孔を有するとはいえメッシュであることから、既述したように、接着剤は、防蟻メッシュ60のメッシュを埋めつつメッシュ上面にまで達して硬化して、防蟻メッシュ60を捨てコンクリート12の上面12Uと表皮ボード50の下端側表面に角部Cを含めて隙なく接着させる。この場合、防蟻メッシュ60は、そのメッシュ自体を白蟻が通過できない細孔としているので、接着剤による防蟻メッシュ60の密着固定は、防蟻メッシュ60の長手方向全域において施す必要はなく、適宜な間隔で行えばよい。接着剤の硬化後には、図2に示すように、断熱基礎構造10の建物屋外側を埋め戻す。こうして、断熱基礎構造10が完成する。
【0042】
以上説明した本実施例の断熱基礎構造10では、基礎コンクリート部20とその端部の立ち上げ部30とをコンクリートにて形成する際、コンクリート養生の間において、打込コンクリートを、基礎断熱材40が有する断熱材本体42のコンクリート接触面40Sはもとより下端側端面40Dにおける発泡気孔や断熱短繊維の積層空隙に入り込ませて養生硬化させる。これによって、基礎コンクリート部20と立ち上げ部30が養生形成されると共に、基礎断熱材40は、養生硬化後のコンクリート製の立ち上げ部30とその一部をなす基礎コンクリート部20の端部側に対して、コンクリート接触面40Sと下端側端面40Dにおいて接合する。よって、本実施例の断熱基礎構造10によれば、断熱材本体42のコンクリート接触面40Sと下端側端面40Dに入り込んで養生硬化したコンクリートにより、立ち上げ部30および基礎コンクリート部20への基礎断熱材40の剥がれ止め機能、保持および固定機能を発揮する。
【0043】
しかも、本実施例の断熱基礎構造10では、断熱材本体42に設けた固定用ブロック44のアンカーブロック44bをコンクリート接触面40Sから突出させた上で、打込コンクリートを、その養生の間にアンカーブロック44bをその周囲で覆った状態で養生硬化させる。よって、アンカーブロック44bは、養生硬化したコンクリート製の立ち上げ部30と基礎コンクリート部20に埋設される。アンカーブロック44bは、固定用ブロック44の材料である木材やプラスチックであるために固定用金具による固定の用をなす硬さを有することから、養生硬化後のコンクリート製の立ち上げ部30と基礎コンクリート部20に埋設された状態で、その凸状形状を維持する。このため、本実施例の断熱基礎構造10によれば、アンカーブロック44bを覆って養生硬化したコンクリートによりこのアンカーブロック44bをその周囲にて把持するので、この把持によっても、立ち上げ部30および基礎コンクリート部20への基礎断熱材40の剥がれ止め機能、保持および固定機能を発揮する。
【0044】
こうしたことから、本実施例の断熱基礎構造10は、養生硬化したコンクリートの上記した剥がれ止め機能等により、基礎断熱材40を、コンクリートの養生硬化を経て得られた立ち上げ部30および基礎コンクリート部20に確実に接合固定した建物基礎となる。そして、このように基礎断熱材40を建物基礎における立ち上げ部30および基礎コンクリート部20に装着するに際しては、立ち上げ部30の厚みの制約を受けない。この結果、本実施例の断熱基礎構造10によれば、種々の厚み寸法を取り得る立ち上げ部30に対しての基礎断熱材40の装着の際の施工性を向上させることができる。
【0045】
また、本実施例の断熱基礎構造10では、上記のようにして装着済みの基礎断熱材40を建物屋外側から表皮ボード50で覆うに当たり、この表皮ボード50を、表皮ボード表面の側から基礎断熱材40が有する固定用ブロック44の内部ブロック44aに対して釘打ち或いはネジ止めする。この場合、固定用ブロック44は、固定用金具による固定の用をなす硬さを備えている上に、基礎断熱材40の断熱材本体42に予め定めたピッチで配設されている。よって、このピッチに従って固定用ブロック44の内部ブロック44aに釘Nを用いた釘打ち或いはネジ止めを行うことで、表皮ボード50を支障なく確実に基礎断熱材40に固定できる。この結果、本実施例の断熱基礎構造10によれば、基礎断熱材40の建物屋外側表面を表皮ボード50で容易且つ確実に覆うことができると共に、基礎断熱材40はもとより表皮ボード50のバタツキを起こさないようにできる。
【0046】
加えて、本実施例では、アンカーブロック44bを傾斜側面を有する円錐台形状としたので、養生形成されたコンクリート製の立ち上げ部30および基礎コンクリート部20に対してアンカー効果を発揮する。このため、アンカーブロック44bを覆って養生硬化したコンクリートに対して高い実効性で抜止機能を発揮するので、建物基礎の立ち上げ部30および基礎コンクリート部20に対しての基礎断熱材40の剥がれ防止効果をより高めることができる。
【0047】
しかも、本実施例では、固定用ブロック44を上下の2列で所定ピッチで複数も受けたので、アンカーブロック44bによる上記アンカー効果の発揮箇所も増えることから、アンカーブロック44bを覆って養生硬化したコンクリートによる剥がれ止め機能等がより一層高まり、基礎断熱材40の剥がれ防止効果の実効性も更に向上する。加えて、固定用ブロック44が多くなる分、表皮ボード50の固定箇所を増やすこともできるので、基礎断熱材40への表皮ボード固定の実効性も高まる。
【0048】
更に、本実施例では、固定用ブロック44が有する内部ブロック44aを断熱材本体42を貫通させ、内部ブロック44aの頂上面を断熱材本体42の他方の面と面一とした。よって、基礎断熱材40をその外側から覆う表皮ボードを、固定用ブロック44の内部ブロック44aの頂上面で直接支えることができるので、表皮ボード50の釘打ち等の固定の際に、断熱材本体42を不用意に圧縮させないようにできる。つまり、表皮ボード50を発泡体等の断熱材本体42で支えることがないので、表皮ボード50にその釘打ち等によるうねりやへこみを生じないようにでき、見栄え向上の点で有益である。
【0049】
加えて、本実施例の断熱基礎構造10にあっては、L字状に屈曲したステンレス製の防蟻メッシュ60を接着剤にて、表皮ボード50の下端側において、当該ボード下端面と捨てコンクリート12の上面12Uに密着固定した。その際、防蟻メッシュ60の屈曲コーナを、捨てコンクリート12の上面12Uに当接して上に延びる表皮ボード50の下端側に位置して角部Cに密着させ、防蟻メッシュ60のメッシュ片にあっては、捨てコンクリート12の上面12Uと表皮ボード50の下端表面にも密着させた。このため、上記のように密着固定した防蟻メッシュ60により、土中に埋設された状態の表皮ボード50の下端側からの白蟻進入回避、延いては基礎断熱材40の白蟻による食害回避を図ることができる。
【0050】
この他、本実施例では、表皮ボード50をその下端端面を捨てコンクリート12の上面12Uに当接させると共に、表皮ボード50を固定用ブロック44で直接支えつつ基礎断熱材40の表面(詳しくは、断熱材本体42の表面)に密着させている。このため、上記配設した防蟻メッシュ60と相まって、基礎断熱材40までの白蟻進入を高い実効性で回避できる。
【0051】
この場合、表皮ボード50は、不燃材料であると共に、白蟻が食い破れない堅さを備えて、割れ難いボード材とできる。よって、地震等による破損や亀裂発生が起きない限りにおいて、表皮ボード50自体で、基礎断熱材40の側への白蟻の侵入防止を図ることができる。
【0052】
一般に、表皮ボード50は定尺材であることから、断熱基礎構造10の立ち上げ部30に配置するに当たり、一定の間隔で継がれることになる。よって、本実施例では、このボード継手箇所に、硬化後には白蟻が食い破れない堅さを呈する目地充填材を充填・塗布して、この目地充填材にてボード継手箇所の隙間を埋めるようにした。よって、表皮ボード50のボード継手箇所においても、基礎断熱材40の側への白蟻の侵入防止を図ることができる。つまりは、表皮ボード50そのものと、ボード継手箇所の目地充填処理と、および捨てコンクリート12と表皮ボード50の角部Cへの防蟻メッシュ60の設置とで、立ち上げ部30の野外側をその周囲において連続した隙間のない防蟻層を形成できるので、外部から基礎断熱材40への白蟻の侵入をこの防蟻層にて物理的、且つ効果的に防止できる。
【0053】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記した実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。例えば、本実施例では、アンカーブロック44bを円錐台形状や角錐台形状としたが、このアンカーブロック44bを内部ブロック44aと同一形状の円柱状や角柱状とすることもできる。また、固定用ブロック44をプラスチックにて成形する場合には、アンカーブロック44bの部分をメッシュ状とできる。こうすれば、打込コンクリートはメッシュ状のアンカーブロック44bの内部にまで入り込んで養生硬化するので、アンカーブロック44bを覆って養生硬化するコンクリートにより剥がれ防止効果がより一層高まる。
【0054】
また、表皮ボード50の下端側に防蟻メッシュ60を設置したが、平板状のステンレス薄鋼板を屈曲形成したL字状の屈曲プレートとすることもできる。この他、断熱基礎構造10の形成に当たり、基礎コンクリート部20を先に形成してから立ち上げ部30をコンクリート形成したが、これらをほぼ同時に形成することもできる。この場合には、捨てコンクリート12に設置した建物屋外側型枠100に対して予め建物屋内側型枠110を対向設置した上で、基礎コンクリート部20に相当する量のコンクリートを先に打ち込み、その打込コンクリートの養生初期でいわゆる生乾きの状態で、立ち上げ部30に相当する量のコンクリートを打ち込めばよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例に係る断熱基礎構造10を一部破断して概略的に示す説明図である。
【図2】土中に埋設した状態の断熱基礎構造10を概略的に断面視して示す説明図である。
【図3】断熱基礎構造10の完成前状態を示すよう一部分解視して示す説明図である。
【図4】基礎コンクリート部20の形成・養生の様子と基礎断熱材40との関係を示す説明図である。
【図5】養生済みの基礎コンクリート部20と基礎断熱材40との関係を示す説明図である。
【図6】立ち上げ部30の形成・養生の様子と基礎断熱材40との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
10…断熱基礎構造
12…捨てコンクリート
12U…上面
20…基礎コンクリート部
30…立ち上げ部
40…基礎断熱材
40D…下端側端面
40S…コンクリート接触面
42…断熱材本体
44…固定用ブロック
44a…内部ブロック
44b…アンカーブロック
50…表皮ボード
60…防蟻メッシュ
100…建物屋外側型枠
102…外側縦枠
104U、104D…補強枠材
106…縦補強材
110…建物屋内側型枠
112…内側縦枠
114U、114D…補強枠材
118…間隔保持材
C…角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物基礎の立ち上げ部の建物屋外側に配置される平板状の基礎断熱材であって、
断熱性を有する平板状基材から形成された断熱材本体と、
固定用金具による固定の用をなす硬さを呈する材料から形成され、前記断熱材本体に予め定めたピッチで配設された固定用部材とを備え、
該固定用部材は、
前記断熱材本体の内部に留まる内部部材と、
該内部部材に連設されて前記断熱材本体の一方の面の側から突出し、前記一方の面の側に形成されたコンクリート製の前記立ち上げ部に埋設されることになる凸状のボス体とを備える
基礎断熱材。
【請求項2】
前記ボス体は、前記形成されたコンクリート製の前記立ち上げ部に対してアンカー効果を呈する突起形状とされている請求項1に記載の基礎断熱材。
【請求項3】
前記ボス体は、傾斜側面を有する突起形状とされている請求項2に記載の基礎断熱材。
【請求項4】
前記固定用部材は、前記ピッチで多列に前記断熱材本体に配設されている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基礎断熱材。
【請求項5】
前記内部部材は、前記断熱材本体を貫通し、前記一方の面と反対側の面において前記断熱材本体と面一とされている請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の基礎断熱材。
【請求項6】
建物基礎の建物屋外側で断熱を図る断熱基礎構造であって、
前記建物基礎の一部をなし、少なくとも前記建物屋外側がコンクリート製とされた立ち上げ部と、
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の基礎断熱材と、
該基礎断熱材の外表側に配置された表皮ボードとを備え、
前記基礎断熱材は、
前記固定用部材が有する前記ボス体の側の前記断熱材本体の表面を前記立ち上げ部におけるコンクリート部に接合させると共に、前記ボス体を前記立ち上げ部におけるコンクリートに埋設させ、
該表皮ボードは、
前記建物基礎の下端にて土中に埋設される捨てコンクリートの上面から延びて前記基礎断熱材を被覆すると共に、前記基礎断熱材が有する前記内部部材に対してボード表面側から固定用金具により前記基礎断熱材に固定され、
前記表皮ボードと前記基礎断熱材は、
前記捨てコンクリートの側で土中に埋設されている
断熱基礎構造。
【請求項7】
請求項6に記載の断熱基礎構造であって、
L字状に屈曲した耐食性を有する防蟻体を、屈曲コーナが前記捨てコンクリートの上面から延びる前記表皮ボードの下端側に位置するよう、前記捨てコンクリートの上面と前記表皮ボードの表面に密着させて備える
断熱基礎構造。
【請求項8】
前記防蟻体は、蟻の進入通過を防止する細孔を多列に有するメッシュ体である請求項7に記載の断熱基礎構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−24738(P2010−24738A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188525(P2008−188525)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(507032797)丸七ホーム株式会社 (4)
【Fターム(参考)】