説明

場合によりランタンを含むリン酸セリウムおよび/またはテルビウム、前記リン酸塩から得られる蛍光体、ならびにこの調製方法

本発明は、Lnがセリウムおよびテルビウムから選択された少なくとも1種の希土類、または上記2種の希土類の少なくとも1種と組み合わせたランタンであり、カリウム含量最大6000ppmのモナザイト型の結晶構造を有する希土類(Ln)リン酸塩に関する。このリン酸塩は、希土類塩化物を2未満の一定pHで沈澱させ、少なくとも700℃の温度でか焼し、温水に再分散することによって得られる。本発明はまた、前記リン酸塩を少なくとも1000℃でか焼することによって得られる蛍光体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場合によりランタンを含む、セリウムおよび/またはテルビウムのリン酸塩、このリン酸塩から得られる蛍光体、ならびにさらにこの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ランタン、テルビウム、およびセリウムの混合リン酸塩、ならびにランタンおよびテルビウムの混合リン酸塩(以下、一般にLAPと示す。)は、発光特性を有することでよく知られている。例えば、セリウムおよびテルビウムを含有する場合、これらのリン酸塩は、可視範囲の波長より短い波長を有するある種の高エネルギー放射線を照射されたとき(照明またはディスプレイシステムのUVまたはVUV放射)、明るい緑色の光を発する。この特性を利用する蛍光体は一般に、例えば三原色蛍光ランプ、液晶ディスプレイのバックライトシステム、またはプラズマシステムにおいて産業規模で用いられている。
【0003】
LAPを調製する幾つかの方法が知られている。これらの方法には2つの様式がある。第1に、リン酸二アンモニウムの存在下、酸化物の混合物または混合酸化物のリン酸塩処理(phosphatation)を行う「乾式」法がある。これらの方法は、比較的長く複雑であることがあり、特に得られる生成物の寸法および化学的均質性の制御に関する問題を提起する。もう1つの様式の方法はまとめて「湿式法」と称されるものであり、液体媒質中で希土類金属の混合リン酸塩または希土類金属のリン酸塩の混合物の合成が行われる。
【0004】
これらの種々の合成は、これらを発光に適用するために、還元性雰囲気下、一般に融剤(fluxing agent)またはフラックス(flux)の存在下、約1100℃の高温での熱処理を必要とする混合リン酸塩を生じる。これは、混合リン酸塩を可能なかぎり有効な蛍光体とするためには、テルビウム、および適切な場合にはセリウムをできるかぎり3+酸化状態にする必要があるためである。
【0005】
上記の乾式および湿式法は、制御されていない、特に十分に限定されていない粒度の蛍光体を生じるという欠点を有し、これはフラックスを用いる還元性雰囲気下での高温熱活性化処理の必要性によってさらに強調され、このような処理は一般にさらなる粒度の乱れの原因となり、従って寸法が一様でない蛍光体粒子を生じ、蛍光体粒子は加えて特にフラックスの使用に関連するより多量または少量の不純物を含有する可能性があり、結果として不十分な発光性能を示す。
【0006】
特に高性能の蛍光体を生じる、粒度分布の限定されたLAPの粒度の改善を可能にする方法が、特許出願EP0581621に提示されている。記載の方法は、より具体的には希土類金属塩として硝酸塩を用い、さらに塩基としてアンモニア水の使用を推奨しており、これは窒素生成物の放出という欠点を有する。従って、この方法は実際に高性能の生成物を生じるが、窒素生成物の放出を禁止または制限するいっそう厳しくなる環境上の立法に従うならば、この方法の実施はより複雑なものになる可能性がある。
【0007】
確かに、特にアンモニア水以外の強塩基、例えばアルカリ金属水酸化物を用いることができるが、アルカリ金属水酸化物は、LAPにアルカリを存在させ、この存在は使用中、特に水銀蒸気ランプにおいて、蛍光体の発光特性を低下させ得ると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0581621号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、現在のところ、硝酸塩またはアンモニア水をほとんどまたはまったく用いず、またはさらには蛍光体の調製中にフラックスの使用を必要とせず、このことが得られる生成物の発光特性に悪影響を及ぼさない、調製方法が求められている。
【0010】
本発明の主題は、窒素生成物の放出を制限するか、またはさらにはこれらの生成物を放出しない、LAPの調製方法を開発することである。
【0011】
本発明の別の主題は、それでも現在知られている蛍光体と同じ特性を有し、またはさらにはより優れた特性を有する蛍光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このために、第1の態様によれば、本発明は、希土類金属(Ln)リン酸塩を提供し、Lnは、セリウムおよびテルビウムから選択された少なくとも1種の希土類金属、または上記2種の希土類金属の少なくとも1種と組み合わせたランタンを表し、この希土類金属(Ln)リン酸塩は、モナザイト型の結晶構造を有し、カリウムを含有し、カリウム含量が最大6000ppmであることを特徴とする。
【0013】
別の態様によれば、本発明はまた、希土類金属(Ln)リン酸塩をベースとする蛍光体に関し、Lnは、上記と同じ意味を有し、この蛍光体は、モナザイト型の結晶構造を有し、カリウムを含有し、カリウム含量が最大200ppmであることを特徴とする。
【0014】
本発明の蛍光体は、アルカリ金属のカリウムが存在するにもかかわらず、良好な発光特性および良好な寿命を有する。本発明の蛍光体はさらに、既知の生成物より良好な発光効率を示すことができる。
【0015】
蛍光体の前駆体である本発明のリン酸塩も、同じか焼条件下で従来技術の前駆体によって得られた蛍光体と比較して、改善された特性を有する蛍光体を生じるため、有利な特性を有する。
【0016】
本発明の他の特徴、詳細、および利点は、以下の説明、ならびに本発明を例示するための種々の具体的であるが非限定的な実施例を読むことにより、さらに明らかとなるであろう。
【0017】
以下の説明では、別段の指示のないかぎり、示される値のすべての範囲または限定において、この限界値が含まれ、従ってこのように定義される値の範囲または限定は、少なくとも下限に等しいか、もしくは下限より大きい、および/または最大でも上限に等しいか、もしくは上限より小さい任意の値を包含することも明記される。
【0018】
リン酸塩および蛍光体に関する以下の説明に言及されるカリウム含量に関して、最小値および最大値が示されることに留意されたい。本発明は、これらの最大値のいずれか1つと共にこれらの最小値のいずれか1つによって定義されるカリウム含量の任意の範囲を包含することが理解されるべきである。
【0019】
カリウム含量は2つの技法に従って測定されることも、説明全体に関してここに明記される。1つはX線蛍光技法であり、この技法は少なくとも約100ppmであるカリウム含量の測定を可能にする。この技法は、より具体的には、カリウム含量が最大であるリン酸塩もしくは前駆体、または蛍光体に用いられる。第2の技法は、ICP(誘導結合プラズマ)−AES(原子発光分光分析)またはICP−OES(発光分光分析)技法である。この技法は本明細書において、より具体的には、カリウム含量が最小である前駆体または蛍光体、特に約100ppm未満の含量に用いられる。
【0020】
用語「希土類金属」は、以下の説明において、イットリウム、および原子番号57から71(57および71を含む。)を有する周期表の元素によって形成される群の元素を意味することが意図される。
【0021】
上記のとおり、本発明は、2種類の生成物、以下で前駆体とも称されるリン酸塩、およびこれらの前駆体から得られる蛍光体に関する。蛍光体そのものは、所望の適用例に直接使用するのに十分な蛍光特性を有する。前駆体は、蛍光特性を持たないか、または場合により、これらの同じ適用例に用いるには弱すぎる蛍光特性を有する。
【0022】
これら2種類の生成物を以下に、より明確に記載する。
リン酸塩または前駆体
本発明のリン酸塩は、本質的に(他の残留リン酸塩含有物質も実際は存在できる。)、および好ましくは完全に式LnPOのオルトリン酸塩型であり、Lnは上に定義されたとおりである。
【0023】
本発明のリン酸塩は、セリウムもしくはテルビウムのリン酸塩、またはこれらの2種の希土類金属の組み合わせのリン酸塩である。本発明のリン酸塩は、上記2種の希土類金属の少なくとも1つと組み合わせたランタンのリン酸塩であることもでき、もっとも具体的には、ランタン、セリウム、およびテルビウムのリン酸塩であることもできる。
【0024】
これら種々の希土類金属のそれぞれの割合は、広範な限界値内、より具体的には以下に示す値の範囲内で多様であることができる。従って、本発明のリン酸塩は、本質的に下記の一般式(1)に相当することのできる生成物を含み、
LaCeTbPO (1)
式中、x+y+zの合計は1に等しく、yおよびzの少なくとも1つは0以外である。
【0025】
上記の式(1)において、xは、より具体的には0.2から0.98、さらに具体的には0.4から0.95であることができる。
【0026】
上述の他の残留リン酸塩含有物質の存在により、Ln(希土類金属全体)/POのモル比は、ことによるとリン酸塩全体として1未満となることがある。
【0027】
式(1)において、xおよびyの少なくとも1つが0以外である場合、好ましくは、zは最大0.5であり、zは0.05から0.2、より具体的には0.1から0.2であることができる。
【0028】
yおよびzが共に0以外である場合、xは0.2から0.7、より具体的には0.3から0.6であることができる。
【0029】
zが0である場合、yはより具体的には0.02から0.5、さらに具体的には0.05から0.25であることができる。
【0030】
yが0である場合、zはより具体的には0.05から0.6、さらに具体的には0.08から0.3であることができる。
【0031】
xが0である場合、zはより具体的には0.1から0.4であることができる。
【0032】
単に例として、以下のより具体的な組成を挙げることができる。
【0033】
La0.44Ce0.43Tb0.13PO
La0.57Ce0.29Tb0.14PO
La0.94Ce0.06PO
La0.67Tb0.33PO
【0034】
本発明のリン酸塩は、好都合には特に発光特性の促進剤(promoter)または元素セリウムおよびテルビウムの酸化度の安定剤の役割を果たす他の元素を含むことができる。これらの元素の例として、より具体的には、ホウ素、ならびに他の希土類金属、例えばスカンジウム、イットリウム、ルテチウム、およびガドリニウムなどを挙げることができる。ランタンが存在するとき、上記希土類金属は、より具体的にはこの元素の代替物として存在することができる。これらの促進剤または安定剤元素は、ホウ素の場合、一般に本発明のリン酸塩の総質量に対して元素最大1質量%、上述の他の元素の場合、一般に最大30%の量で存在する。
【0035】
本発明のリン酸塩はまた、これらの粒度を特徴とする。
【0036】
本発明のリン酸塩は実際、一般に平均寸法1μmから15μm、より具体的には2μmから6μmを有する粒子からなる。
【0037】
言及される平均直径は、粒子集団の直径の体積による平均である。
【0038】
ここに、および以下の説明に関して示される粒度の値は、1分30秒間、超音波(130W)によって水に分散された粒子のサンプルで、Malvernレーザー粒度分析計によって測定される。
【0039】
さらに、粒子は、好ましくは低い分散指数、典型的には最大0.5、好ましくは最大0.4を有する。
【0040】
粒子集団の「分散指数」は、本明細書では、以下に定義される比Iを意味することが意図され、
I=(φ84−φ16)/(2×φ50
式中、φ84は、粒子の84%がφ84未満の直径を有する粒子の直径であり、
φ16は、粒子の16%がφ16未満の直径を有する粒子の直径であり、
φ50は、粒子の50%がφ50未満の直径を有する直径、粒子の平均直径である。
【0041】
前駆体の粒子に関してここで示される分散指数の定義は、以下の説明において、蛍光体にも適用される。
【0042】
本発明のリン酸塩は、モナザイト結晶構造を有する。この結晶構造はX線回折(XRD)技法によって実証することができる。好ましい一実施形態によれば、本発明のリン酸塩は純粋相であり、即ち、XRD図はただ1つのモナザイト相を明らかにする。しかしながら、本発明のリン酸塩は、純粋相でなくてもよく、この場合、生成物のXRD図は非常に少量の残留相の存在を示す。
【0043】
本発明のリン酸塩は粒子からなり、これらの粒子自体が、(012)面で測定された寸法が少なくとも30nmである(この寸法はまた、この調製中に前駆体が受けたか焼の温度に応じて多様である。)結晶子の凝集からなる。
【0044】
従って、この寸法は、少なくとも60nm、より具体的には少なくとも80nm、さらに具体的には少なくとも90nmであることができる。これら後者2つの値は、例えば、約800℃から約850℃の温度でか焼されたリン酸塩に適用される。約200nmまでの範囲の結晶子寸法は、より高い温度でのか焼の場合に得ることができる。
【0045】
XRDによって測定された値は、結晶面(012)に相当する主な回折線の幅から算出されたコヒーレント領域の寸法に相当することがここに、本説明全体に関して明記される。この測定には、書籍Theorie et technique de la radiocristallographie(放射線結晶学の理論および技術)、A.Guinier、Dunod、Paris、1956に記載されているような、Scherrerモデルが用いられる。
【0046】
同じ温度での熱処理後に得られた従来技術のリン酸塩の結晶子寸法より大きく、また同じ粒度を有することもできるこの結晶子寸法は、生成物のより良好な結晶化を示している。
【0047】
本発明のリン酸塩の重要な特徴は、カリウムの存在である。カリウムは、単にリン酸塩の他の構成成分との混合物としてリン酸塩に存在するのではなく、リン酸塩の1種以上の構成化学元素と化学的に結合していると想定することができる。この結合の化学的性質は、純水を用い、大気圧で単純に洗浄することによって、リン酸塩に存在するカリウムを除去できないという事実から実証できる。
【0048】
本発明によるリン酸塩のカリウム含量は、最大6000ppm、より具体的には最大4000ppm、さらに具体的には最大3000ppmである。この含量は、ここでおよび本説明全体において、リン酸塩の総質量に対するカリウム元素の質量によって表される。
【0049】
最小カリウム含量は重要でない。最小含量は、カリウム含量を測定するために用いられる分析技法によって検出可能な最小値に相当することができる。しかしながら、この最小含量は一般に、少なくとも300ppm、より具体的には少なくとも1000ppmである。この含量は、さらに具体的には少なくとも1200ppmであることができる。
【0050】
好ましい一実施形態によれば、カリウム含量は3000から4000ppmであることができる。
【0051】
本発明の特定の一実施形態によれば、リン酸塩は、アルカリ金属元素として、カリウムのみを含有する。
【0052】
本発明によるリン酸塩または前駆体は、生成物の組成に従って変動可能な波長において、および所与の波長の放射線に暴露された後に発光特性を有するが(例えば、約550nmの波長での放射、即ち、ランタン、セリウム、およびテルビウムのリン酸塩では254nmの波長の放射線に暴露された後の緑色領域)、所望の適用例にこれ自体直接使用可能である真の蛍光体を得るために、生成物に後処理を行うことによって、これらの発光特性をさらに改善することが可能であり、さらには必要でもある。
【0053】
単純な希土類金属リン酸塩と真の蛍光体との間の境界は依然として恣意的であり、生成物が使用者によって許容可能な方法で直接使用できるとみなされる発光の閾値によってのみ決まることが理解される。
【0054】
本発明において、およびかなり一般的に、このような生成物は一般に後に変換することなく、これ自体直接使用できる商用蛍光体の明度の最低要件を満たすとはみなされない発光特性を有するため、約900℃を超える熱処理に供されていない本発明による希土類金属リン酸塩は、蛍光体前駆体としてみなされ、このように同定することができる。対照的に、場合により適切な処理に供された後、適用者によって、例えばランプ、テレビ画面、または発光ダイオードに直接使用されるのに十分な適切な明度を発現する希土類金属リン酸塩は、蛍光体とみなすことができる。
【0055】
本発明による蛍光体の説明を以下に示す。
【0056】
蛍光体
本発明の蛍光体は、直前に記載したリン酸塩または前駆体と共通の特徴を有する。
【0057】
従って、本発明の蛍光体は、前記リン酸塩または前駆体と同じ粒度の特徴、即ち、分散指数最大0.5で平均粒度1から15μmを有する。前駆体の粒度に関して上に記載したすべてのことが、同様にここでも適用される。
【0058】
蛍光体はまた、上に示したものと同じ式のオルトリン酸塩型で、前駆体と実質的に同じ組成を有する。前駆体に関して上に示したランタン、セリウム、およびテルビウムの相対的割合がここでも適用される。同様に、蛍光体は、リン酸塩に関して上に記載した促進剤または安定剤元素を、指示した割合で含むことができる。
【0059】
蛍光体は、モナザイト型の結晶構造を有する。リンと同様に、この結晶化構造もXRDによって実証できる。好ましい一実施形態によれば、本発明の蛍光体は純粋相であり、即ち、XRD図はただ1つのモナザイト相を示す。しかしながら、本発明の蛍光体は、純粋相でなくてもよく、この場合、生成物のXRD図は非常に少量の残留相の存在を示す。
【0060】
本発明の蛍光体は、最大200ppmの量のカリウムを含有する。この含量は、ここでも同様に、蛍光体の総質量に対するカリウム元素の質量として表される。
【0061】
最小カリウム含量は重要でない。リン酸塩と同様に、ここでも最小含量は、カリウム含量を測定するために用いられる分析技法によって検出可能な最小値に相当することができる。しかしながら、この最小含量は一般に、少なくとも10ppm、より具体的には少なくとも40ppm、さらにより具体的には少なくとも50ppmである。
【0062】
最大カリウム含量は、最大200ppm、より具体的には最大150ppmである。この含量は、さらに具体的には最大100ppmであることもできる。
【0063】
本発明の蛍光体は、面(012)で測定されたコヒーレンス長が少なくとも250nmである粒子からなる。この長さは、XRDによって測定され、熱処理または調製中に蛍光体が受けたか焼の温度に応じて多様であることができる。
【0064】
このコヒーレンス長は、少なくとも280nm、より具体的には少なくとも300nmであることができる。約750から800nmまでのコヒーレンス長が観察され、しかしながら、これらの長さはXRD技法の検出限界の長さに相当する。
【0065】
さらに、このコヒーレンス長は、同じ温度での熱処理後に得られる従来技術のものより長く、同じ粒度を有することもできることが観察される。前駆体と同様に、ここでも、このことは生成物の発光特性、特に発光効率に有益である生成物の良好な結晶化を示している。
【0066】
本発明の蛍光体を構成する粒子は、実質的に球形状を有することができる。これらの粒子は密である。
【0067】
本発明の前駆体および蛍光体を調製する方法を以下に記載する。
【0068】
リン酸塩または前駆体の調製方法
前駆体を調製する方法は、以下のステップを含むことを特徴とする。
【0069】
・希土類金属(Ln)塩化物を含有する第1溶液を、リン酸イオンを含有し、初期pH2未満を有する第2溶液に連続して導入するステップ、
・第1溶液を第2溶液に導入する間、得られる媒質のpHを一定値2未満に制御し、それによって沈殿物が得られるステップであって、第1ステップの第2溶液をpH2未満にする、もしくは第2ステップのpHを制御する、またはこの両方が、少なくとも部分的に水酸化カリウムを用いて行われるステップ、
・得られる沈殿物を回収し、場合によりこれを少なくとも約650℃の温度でか焼するステップ、
・得られた生成物を温水に再分散し、その後、液体媒質から分離するステップ。
【0070】
本方法の種々のステップを以下に詳細に記載する。
【0071】
本発明によれば、1種以上の希土類金属(Ln)(これらの元素は、所望の組成の生成物を得るために必要とされる割合で存在する。)の塩化物を含有する第1溶液を、リン酸イオンを含有する第2溶液と反応させることによって、制御されたpHにおいて、希土類金属(Ln)リン酸塩の直接沈澱が行われる。
【0072】
本方法の第1の重要な特徴によれば、反応物を導入する明確に限定された順序が守られるべきであり、より具体的には、希土類金属の塩化物の溶液は、リン酸イオンを含有する溶液に、段階的および連続的に導入されるべきである。
【0073】
本発明による方法の第2の重要な特徴によれば、リン酸イオンを含有する溶液の初期pHは、2未満、好ましくは1から2であるべきである。
【0074】
第3の特徴によれば、沈澱媒質のpHは、pH値2未満、好ましくは1から2に制御されるべきである。
【0075】
用語「制御されたpH」は、希土類金属塩化物を含有する溶液が導入されるのと同時に、リン酸イオンを含有する溶液に塩基性化合物を添加することによって、沈澱媒質のpHをある一定の値または実質的に一定の値に維持することを意味することが意図される。従って、媒質のpHは、固定設定値前後で最大0.5pH単位、より好ましくはこの値前後で最大0.1pH単位変動する。この固定設定値は、有利にはリン酸イオンを含有する溶液の初期pH(2未満)に相当する。
【0076】
沈澱は、好ましくは水性媒質中、ある温度で行われ、温度は重要ではなく、有利には周囲温度(15℃から25℃)から100℃の間である。この沈澱は、反応媒質を攪拌しながら行う。
【0077】
第1溶液中の希土類金属塩化物の濃度は、広い範囲内で多様であることができる。従って、希土類金属の総濃度は、0.01モル/リットルから3モル/リットルであることができる。
【0078】
最後に、希土類金属塩化物の溶液はまた、他の金属塩、特に塩化物、例えば上に記載した促進剤または安定剤元素、即ちホウ素および他の希土類金属の塩を含むことができることに留意されたい。
【0079】
希土類金属塩化物の溶液と反応ことが意図されるリン酸イオンは、純粋な化合物または溶液中の化合物、例えば、リン酸、アルカリ金属リン酸塩、または希土類金属と会合したアニオンと共に可溶性化合物を生じる他の金属元素のリン酸塩によって提供することができる。
【0080】
リン酸イオンは、2種の溶液間のPO/Lnモル比が1超、有利には1.1から3であるような量で存在する。
【0081】
本説明で上に強調したとおり、リン酸イオンを含有する溶液は、初期に(即ち、希土類金属塩化物の溶液の導入を開始する前)、pH2未満、好ましくは1から2を有するべきである。従って、用いる溶液が自然にはこのようなpHを持たない場合、塩基性化合物を添加するか、または酸(例えば、塩酸、pHが高すぎる初期溶液の場合)を添加することによって、pHを所望の適切な値にする。
【0082】
続いて、および希土類金属塩化物を含有する溶液の導入中、沈澱媒質のpHは次第に低下し、従って、本発明による方法の必須の特徴の1つによれば、沈澱媒質のpHを、2未満、好ましくは1から2であるべきである所望の一定作業値(working value)に維持するために、塩基性化合物を同時にこの媒質に導入する。
【0083】
本発明の方法の別の特徴によれば、リン酸イオンを含有する第2溶液の初期pHを2未満の値にする、または沈澱中のpHを制御するために用いられる塩基性化合物は、少なくとも部分的に水酸化カリウムである。用語「少なくとも部分的に」は、この少なくとも1種が水酸化カリウムである塩基性化合物の混合物を使用できることを意味することが意図される。他の塩基性化合物は、例えば、アンモニア水であり得る。好ましい一実施形態によれば、水酸化カリウムのみである塩基性化合物が用いられ、さらに好ましい別の実施形態によれば、上述の両方の操作、即ち、第2溶液のpHを適切な値にすること、沈澱のpHを制御することの両方に水酸化カリウムが単独で用いられる。これらの2つの好ましい実施形態において、アンモニア水などの塩基性化合物によって導入され得る窒素生成物の放出が低減または排除される。
【0084】
沈澱ステップの最後に、場合により他の元素が添加された希土類金属(Ln)のリン酸塩が直接得られる。最終沈澱媒質中の希土類金属の総濃度は、有利には0.25モル/リットル超である。
【0085】
沈澱ステップの最後に、前に得られた反応媒質を、沈澱が生じた温度と同じ温度範囲内の温度に、例えば15分間から1時間であり得る期間保持することによって、場合により熟成を行うことができる。
【0086】
リン酸塩沈殿物は、これ自体知られている任意の手段によって、特に単純な濾過によって回収することができる。これは、本発明による方法の条件下では、非ゼラチン状であり、濾別できる希土類金属リン酸塩が沈澱するためである。
【0087】
その後、回収された生成物を、例えば水で洗浄し、次いで乾燥する。
【0088】
その後、生成物を、熱処理またはか焼に供する。一般に、か焼処理は少なくとも650℃であり、約700℃から1000℃未満、より具体的には最大約900℃の温度であることができる。一般に、温度が高いほど、か焼時間は短くなる。単に例として、この時間は1から3時間であることができる。
【0089】
熱処理は一般に、空気中で行われる。
【0090】
か焼温度が高いほど、リン酸塩の結晶子寸法は大きくなる。
【0091】
本発明の別の重要な特徴によれば、か焼で得られる生成物は、その後、温水に再分散される。
【0092】
この再分散は、固体生成物を攪拌しながら水に導入することによって行われる。得られる懸濁液を、約1から6時間、より具体的には約1から3時間であることのできる期間、続けて攪拌する。
【0093】
水の温度は、少なくとも30℃、より具体的には少なくとも60℃であることができ、大気圧下、この温度は約30℃から90℃、好ましくは60℃から90℃であることができる。この操作は、例えばオートクレーブ中の圧力下、100℃から200℃、より具体的には100℃から150℃であることのできる温度で行うことができる。
【0094】
最終ステップにおいて、固体は、これ自体知られている任意の手段によって、例えば単純な濾過によって分離される。再分散ステップは、上記の条件下、場合により最初の再分散が行われた温度とは異なる温度で、場合により1回以上繰り返すことができる。
【0095】
分離した生成物を、洗浄、特に水を用いて洗浄することができ、次いで乾燥することができる。
【0096】
必要とされるカリウム含量を有する、本発明のモナザイト構造を有する希土類金属(Ln)リン酸塩はこのようにして得られる。
【0097】
蛍光体の調製方法
本発明の蛍光体は、上記のリン酸塩もしくは前駆体、または同様に上に記載された方法によって得られたリン酸塩もしくは前駆体を、少なくとも1000℃の温度でか焼することによって得られる。この温度は、約1000℃から1300℃であることができる。
【0098】
この処理によって、リン酸塩または前駆体は、有効な蛍光体に変換される。
【0099】
上に示したとおり、前駆体は、これ自体内在する発光特性を示すことができるが、これらの特性は標的とされる適用例には不十分であり、焼結処理によって大いに改善される。
【0100】
か焼は、空気中、不活性ガス下、さらに好ましくは還元性雰囲気下(例えばH、N/H、またはAr/H)でも行うことができ、還元雰囲気の場合、すべてのCeおよびTb物質をこれらの酸化状態(+III)に変換するためである。
【0101】
既知の方法において、か焼は、フラックスまたは融剤、例えばフッ化リチウム、四ホウ酸リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム、リン酸リチウム、塩化アンモニウム、酸化ホウ素およびホウ酸、およびリン酸アンモニウム、ならびにこれらの混合物の存在下で行うことができる。
【0102】
フラックスを用いる場合、一般に、少なくとも既知の蛍光体と等価である発光特性を有する蛍光体が得られる。ここでもっとも重要な本発明の利点は、蛍光体が、これ自体既知の方法より少ない窒素生成物を放出するか、またはまったく放出しない方法から得られる前駆体に由来することである。
【0103】
か焼は、フラックスの不在下で、従って融剤をリン酸塩と予め混合することなく行うこともでき、それにより方法は簡略化され、それにより蛍光体に存在する不純物のレベルが低減される。さらに、上述した多数の融剤がこの事例であるが、窒素を含有する可能性があるか、または考えられる毒性を所与として厳しい安全基準の範囲内で用いなければならない生成物の使用がこれによって回避される。
【0104】
さらにフラックスを用いないか焼の場合、本発明の前駆体によって、同じか焼温度で従来技術の前駆体から得られた蛍光体より高い発光特性を有する蛍光体が得られることが特に言及され、本発明の重要な利点となる。この利点はまた、本発明の前駆体によって、より迅速に、即ち低温で、従来技術の前駆体から得られる蛍光体と同じ発光特性を有する蛍光体が得られると述べることによって表すこともできる。
【0105】
処理後、有利には、できるかぎり純粋であり、脱凝集状態または低凝集状態である蛍光体が得られるように、粒子を洗浄する。低凝集状態である場合、穏やかな条件下で脱凝集処理に供することによって、蛍光体を脱凝集することができる。
【0106】
フラックスを用いないか焼から得られる本発明の蛍光体は、同じか焼条件下で得られた従来技術の蛍光体と比較して、改善された発光効率を示すことに留意されたい。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、このより良好な効率は、本発明の蛍光体のより良好な結晶化の結果であり、このより良好な結晶化はさらに前駆体リン酸塩のより良好な結晶化の結果であると想定することができる。
【発明の効果】
【0107】
本発明の蛍光体は、生成物の様々な吸収場に相当する電磁励起において強い発光特性を有する。
【0108】
従って、本発明のセリウムおよびテルビウムをベースとする蛍光体は、UV領域(200から280nm)、例えば約254nmに励起源を有する照明またはディスプレイシステムに用いることができる。具体的には、水銀蒸気三原色ランプ、管式またはフラット型の液晶システムのバックライト(LCDバックライト)のランプが言及される。本発明のセリウムおよびテルビウムをベースとする蛍光体は、UV励起下で高い明度を有し、熱処理後の発光損失がない。これらの発光は、特に比較的高い温度(100から300℃)においてUV下で安定である。
【0109】
本発明のテルビウムおよびランタン、またはランタン、セリウム、およびテルビウムをベースとする蛍光体はまた、VUV(または「プラズマ」)励起システム、例えば、プラズマスクリーン、および水銀を用いない三原色ランプ、具体的にはキセノン励起ランプ(管式またはフラット)用の緑色蛍光体の良好な候補である。本発明の蛍光体は、VUV励起下(例えば、約147nmから172nm)で強い緑色の発光を有する。これらの蛍光体は、VUV励起下で安定である。
【0110】
本発明の蛍光体はまた、発光ダイオードで励起されるデバイスにおいて緑色蛍光体として用いることができる。本発明の蛍光体は、特にUV近傍で励起され得るシステムで用いることができる。
【0111】
本発明の蛍光体はまた、UV励起マーキングシステムにおいても用いることができる。
【0112】
本発明の蛍光体は、周知の技法によって、例えばスクリーン印刷、噴霧、電気泳動、または沈降によって、ランプおよびスクリーンシステムに用いることができる。
【0113】
本発明の蛍光体はまた、有機マトリクス(例えば、プラスチックマトリクス、またはUV下で透明なポリマーのマトリクスなど)、無機マトリクス(例えば、シリカマトリクス)、または有機−無機混合マトリクスに分散することもできる。
【0114】
別の態様によれば、本発明はまた、上記の蛍光体、または同様に上に記載された方法を用いて得られた蛍光体を緑色発光源として含む、上述した型の発光デバイスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0115】
実施例を以下に示す。
【0116】
これらの実施例において、カリウム含量は、上記のとおり2つの測定技法によって決定される。X線蛍光技法の場合、この技法はそのままの状態の生成物の粉末で行われる半定量分析である。用いられる計器は、PANalyticalのMagiX PRO PW 2540X線蛍光分光計である。ICP−AES(またはOES)技法は、Jobin YvonのUltima計器を用いて、計量添加による定量分析を行うことにより実行される。サンプルは事前に、密閉反応器においてマイクロ波を利用して、硝酸−過塩素酸媒質中で無機化(または蒸解(digestion))に供する(MARSシステム−CEM)。
【0117】
発光効率は、254nmでの励起下、蛍光分光計で記録された380nmから750nmの発光スペクトルの曲線下面積を比較し、比較生成物に関して得られた面積を100%の値とすることによって、粉末形態の生成物で測定する。
【0118】
(比較実施例1)
この実施例は、従来技術によるランタン、セリウム、およびテルビウムのリン酸塩の調製に関する。
【0119】
事前にアンモニア水を添加してpH1.6とし、60℃にした、1.73mol/lの分析用リン酸HPOを含有する溶液1lに、1時間かけて、総濃度1.5mol/lを有し、以下のとおり:硝酸ランタン0.66mol/l、硝酸セリウム0.65mol/l、および硝酸テルビウム0.20mol/lに分けることができる、純度4Nの希土類金属硝酸塩の溶液1lを添加する。沈澱中のpHは、アンモニア水を添加することによって1.6に調節する。
【0120】
沈澱ステップの最後に、混合物をさらに1時間、60℃で保持する。その後、得られた沈殿物を濾過によって回収し、水で洗浄し、次いで空気中、60℃で乾燥した後、空気中、840℃で2時間、熱処理に供する。このステップの最後に、組成(La0.44Ce0.43Tb0.13)POを有する前駆体が得られる。
【0121】
(実施例2)
この実施例は、本発明によるランタン、セリウム、およびテルビウムのリン酸塩の調製に関する。
【0122】
事前に水酸化カリウムKOHを添加してpH1.6とし、60℃にした、1.5mol/lの分析用リン酸HPOを含有する溶液1lに、1時間かけて、総濃度1.3mol/lを有し、以下のとおり:塩化ランタン0.57mol/l、塩化セリウム0.56mol/l、および塩化テルビウム0.17mol/lに分けることができる、純度4Nの希土類金属塩化物の溶液1lを添加する。沈澱中のpHは、水酸化カリウムを添加することによって1.6に調節する。
【0123】
沈澱ステップの最後に、混合物をさらに1時間、60℃で保持する。その後、得られた沈殿物を濾過によって回収し、水で洗浄し、次いで空気中、60℃で乾燥した後、空気中、840℃で2時間、熱処理に供する。か焼の最後に、得られた生成物を80℃で3時間、水に再分散し、次いで洗浄し、濾過し、最後に乾燥する。このステップの最後に、組成(La0.44Ce0.43Tb0.13)POを有する前駆体が得られる。
【0124】
実施例1および2の生成物の特徴を下記の表1に示す。
【0125】
【表1】

本発明の前駆体リン酸塩は、従来技術のものと比べてより良好に結晶化されており、この一方で類似の粒度の特徴を維持している。
【0126】
(比較実施例3)
この実施例は、実施例1のリン酸塩から得られる、従来技術による蛍光体の調製に関する。
【0127】
実施例1で得られた前駆体リン酸塩を、還元性雰囲気下(Ar/H)、1000℃で2時間、再処理する。次いで、得られたか焼生成物を80℃で3時間、温水中で洗浄し、その後、濾過し、乾燥する。
【0128】
(実施例4)
この実施例は、実施例2のリン酸塩から得られる、本発明による蛍光体の調製に関する。
【0129】
実施例2で得られた前駆体リン酸塩を、実施例3に記載したものと同じ条件下で再処理する。
【0130】
実施例3および4の生成物の特徴を下記の表2に示す。
【0131】
【表2】

本発明の生成物4の発光効率は、比較生成物3に対して相対的に測定する。
【0132】
従って、本発明の蛍光体は、比較実施例で得られた蛍光体と比較してはるかに改善された結晶化度および発光効率を有し、この一方で同じ粒度特性を維持している。
【0133】
本発明の蛍光体はまた優れたランプ安定性を示すことが、老化試験によって示される。
【0134】
(比較実施例5)
この実施例は、従来技術によるランタン、セリウム、およびテルビウムのリン酸塩の調製に関する。
【0135】
この方法は、最終熱処理まで実施例1と同様に行い、熱処理は、840℃で行う代わりに、700℃で2時間行う。
【0136】
このステップの最後に、組成(La0.44Ce0.43Tb0.13)POを有する前駆体が得られる。
【0137】
(実施例6)
この実施例は、本発明によるランタン、セリウム、およびテルビウムのリン酸塩の調製に関する。
【0138】
この方法は、最終熱処理まで実施例2と同様に行い、熱処理は、840℃で行う代わりに、700℃で2時間行う。
【0139】
このステップの最後に、組成(La0.44Ce0.43Tb0.13)POを有する前駆体が得られる。
【0140】
実施例5および6の生成物の特徴を下記の表3に示す。
【0141】
【表3】

本発明の前駆体リン酸塩は、従来技術のものと比べてより良好に結晶化されており、この一方で類似の粒度の特徴を維持している。
【0142】
(比較実施例7)
この実施例は、実施例5のリン酸塩から得られる、従来技術による蛍光体の調製に関する。
【0143】
実施例5で得られた前駆体リン酸塩を、実施例3と同じ条件下で再処理する。
【0144】
(実施例8)
この実施例は、実施例6のリン酸塩から得られる、本発明による蛍光体の調製に関する。
【0145】
実施例6で得られた前駆体リン酸塩を、実施例3と同じ条件下で再処理する。
【0146】
実施例7および8の生成物の特徴を下記の表4に示す。
【0147】
【表4】

本発明の蛍光体8の発光効率は、比較蛍光体7の効率に対して相対的に算出する。
【0148】
従って、本発明の蛍光体は、比較実施例で得られた蛍光体と比較してはるかに改善された結晶化度および発光効率を有し、この一方で同じ粒度特性を維持している。
【0149】
本発明の蛍光体はまた優れたランプ安定性を示すことが、老化試験によって示される。
【0150】
(比較実施例9)
この実施例は、従来技術によるランタン、セリウム、およびテルビウムのリン酸塩の調製に関する。
【0151】
この方法は実施例1と同様に行う。しかしながら、沈澱中のpHは、アンモニア水を添加することによって1.8に調節される。
【0152】
沈澱ステップの最後に、混合物をさらに1時間、60℃で保持する。その後、得られた沈殿物を濾過によって回収し、水で洗浄し、次いで空気中、60℃で乾燥した後、空気中、700℃で2時間、熱処理に供する。このステップの最後に、組成(La0.44Ce0.43Tb0.13)POを有する前駆体が得られる。
【0153】
(実施例10)
この実施例は、本発明によるランタン、セリウム、およびテルビウムのリン酸塩の調製に関する。
【0154】
この方法は実施例2と同様に行う。しかしながら、沈澱中のpHは、水酸化カリウムを添加することによって1.8に調節される。
【0155】
沈澱ステップの最後に、混合物をさらに1時間、60℃で保持する。その後、得られた沈殿物を濾過によって回収し、水で洗浄し、次いで空気中、60℃で乾燥した後、空気中、700℃で2時間、熱処理に供する。か焼の最後に、得られた生成物を80℃で3時間、水に再分散し、次いで洗浄し、濾過し、最後に乾燥する。このステップの最後に、組成(La0.43Ce0.43Tb0.14)POを有する前駆体が得られる。
【0156】
実施例9および10の生成物の特徴を下記の表5に示す。
【0157】
【表5】

【0158】
(実施例11)
この実施例は、実施例9のリン酸塩から得られる、従来技術による蛍光体の調製に関する。
【0159】
実施例9で得られた前駆体リン酸塩を、実施例3と同じ条件下で再処理する。
【0160】
(実施例12)
この実施例は、実施例10のリン酸塩から得られる、本発明による蛍光体の調製に関する。
【0161】
実施例10で得られた前駆体リン酸塩を、実施例3と同じ条件下で再処理する。
【0162】
実施例11および12の生成物の特徴を下記の表6に示す。
【0163】
【表6】

蛍光体12の発光効率は、比較生成物11に対して相対的に算出する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Lnがセリウムおよびテルビウムから選択された少なくとも1種の希土類金属、または上記2種の希土類金属の少なくとも1種と組み合わせたランタンを表す希土類金属(Ln)リン酸塩であって、モナザイト型の結晶構造を有し、カリウムを含有し、カリウム含量が最大6000ppmであることを特徴とする希土類金属(Ln)リン酸塩。
【請求項2】
カリウム含量が、最大4000ppm、より具体的には最大3000ppmであることを特徴とする、請求項1に記載のリン酸塩。
【請求項3】
カリウム含量が、少なくとも300ppm、より具体的には少なくとも1000ppmであることを特徴とする、請求項1または2に記載のリン酸塩。
【請求項4】
面(012)で測定された寸法が、少なくとも30nm、より具体的には少なくとも60nm、さらにより具体的には少なくとも80nmである結晶子からなることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載のリン酸塩。
【請求項5】
好ましくは分散指数最大0.5で、平均寸法1から15μmを有する粒子からなることを特徴とする、請求項1から4の一項に記載のリン酸塩。
【請求項6】
下記の一般式(I)を有する生成物を含み、
LaCeTbPO (1)
式中、x+y+zの合計は1に等しく、yおよびzの少なくとも1つは0以外であり、xは、より具体的には0.2から0.98、さらに具体的には0.4から0.95であることができることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載のリン酸塩。
【請求項7】
Lnがセリウムおよびテルビウムから選択された少なくとも1種の希土類金属、または上記2種の希土類金属の少なくとも1種と組み合わせたランタンを表す希土類金属(Ln)リン酸塩をベースとする蛍光体であって、モナザイト型の結晶構造を有し、カリウムを含有し、カリウム含量が最大200ppmであることを特徴とする蛍光体。
【請求項8】
カリウム含量少なくとも10ppm、より具体的には少なくとも40ppmを有することを特徴とする、請求項7に記載の蛍光体。
【請求項9】
面(012)で測定されたコヒーレンス長が、少なくとも250nmである粒子からなることを特徴とする、請求項7または8に記載の蛍光体。
【請求項10】
面(012)で測定されたコヒーレンス長が、少なくとも280nm、より具体的には少なくとも330nmである粒子からなることを特徴とする、請求項7から9の一項に記載の蛍光体。
【請求項11】
分散指数最大0.5で、平均寸法1から15μmを有する粒子からなることを特徴とする、請求項7から10の一項に記載の蛍光体。
【請求項12】
請求項1から6の一項に記載のリン酸塩を調製する方法であって、
・希土類金属(Ln)塩化物を含有する第1溶液を、リン酸イオンを含有し、初期pH2未満を有する第2溶液に連続して導入するステップ、
・第1溶液を第2溶液に導入する間、得られる媒質のpHを一定値2未満に制御し、それによって沈殿物が得られるステップであって、第1ステップの第2溶液をpH2未満にする、もしくは第2ステップのpHを制御する、またはこの両方が、少なくとも部分的に水酸化カリウムを用いて行われるステップ、
・得られる沈殿物を回収し、これを少なくとも約650℃、より具体的には700℃から900℃の温度でか焼するステップ、
・得られた生成物を温水に再分散し、その後、液体媒質から分離するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から6の一項に記載のリン酸塩、または請求項12に記載の方法によって得られたリン酸塩を、少なくとも1000℃の温度でか焼することを特徴とする、請求項7から11の一項に記載の蛍光体を調製する方法。
【請求項14】
か焼を還元性雰囲気下で行なうことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項7から11の一項に記載の蛍光体、または請求項13もしくは14に記載の方法によって得られた蛍光体を含むか、またはこれを用いて製造されることを特徴とする、プラズマシステム、水銀蒸気ランプ、液晶システムのバックライト用ランプ、水銀を用いない三原色ランプ、発光ダイオードで励起されるデバイス、またはUV励起マーキングシステム型のデバイス。

【公表番号】特表2012−509240(P2012−509240A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536852(P2011−536852)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065388
【国際公開番号】WO2010/057918
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(508183151)ロデイア・オペラシヨン (70)
【Fターム(参考)】