説明

場所打ちライニングシールド工法及びシールド掘進機

【課題】コンクリート圧送能力の低下や打設配管の管路閉塞を生じさせることなく、ライニングコンクリート層の厚さを薄く形成できる場所打ちライニングシールド工法及びシールド掘進機を提供する。
【解決手段】シールド掘進機のスキンプレート2後端部にて、トンネル内周面10に沿わせて内型枠4を設置する。トンネル内周面と内型枠との間に形成されるコンクリート打設空間10の妻部を、スキンプレートと該内型枠との間に設けられて前後に移動可能な妻型枠4で閉塞する。妻型枠5にはその周方向に沿って延びる長円形のコンクリート打設孔9を開口形成し、この打設孔にその開口断面積とほぼ等しい管路断面積を有したコンクリート打設配管11を接続し、この打設配管を介してコンクリートポンプからコンクリート圧送して打設する。コンクリート打設空間内に充填されたコンクリートCは妻型枠で所定圧に加圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シールド掘進機によりトンネルを掘進しつつ、このシールド掘進機の後端部内にてその掘削したトンネル内周面に沿わせて内型枠を円筒状に組み立てて設置し、当該内型枠とトンネル内周面との間に形成されるコンクリート打設空間内にコンクリートを打設して一次覆工体のライニングを形成していく場所打ちライニングシールド工法及びシールド掘進機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
場所打ちライニングシールド工法は、シールド掘進機によるトンネルの掘進に伴い、その掘削形成されたトンネル内周面に沿わせて内型枠を当該シールド掘進機の後端部内にて逐次に組み立てて設置し、そのトンネル内周面と内型枠との間に形成されたコンクリート打設空間内にコンクリートを打設していくことによって一次覆工体のライニングを形成していくようにしたものである。
【0003】
そして、この様な場所打ちライニングシールド工法の一例として、特開平7−217385号公報に示されている技術がある。即ち、当該公報には、シールド掘進機の後部に、スキンプレートとの間に環状断面をなす生コンクリートの投入空間を形成するための内筒を設け、このコンクリート投入空間内には、その後端部に当該投入空間を前後方向に分離する開閉可能な可動隔壁を設けるとともに、この可動隔壁の前方に前後に移動可能なプレスリングを設け、このプレスリングに円形の生コンクリートの投入孔を形成してこの投入孔にコンクリート打設配管を介してコンクリートポンプを接続し、当該コンクリート投入空間に投入した生コンクリートをプレスリングで後方に向けて押圧してトンネル内周面と内型枠との間に形成されている後方のコンクリート打設空間内にコンクリートを打設し、その後、可動隔壁を閉じることで打設したコンクリートの加圧状態を損なわずにプレスリングを前方に移動し得るようにした技術が開示されている。
【特許文献1】特開平7−217385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、場所打ちライニングシールド工法はそもそも比較的に安定した地盤を掘削する場合に利用される工法であるため、設計強度の観点からすると一次覆工体のライニングコンクリート層の厚みは20cm程度にまで薄くできる場合が多々ある。しかるに、従来の場所打ちライニングシールド工法にあっては、そのライニングコンクリート層の厚みは40cm程度に形成するのが一般的であった。これは、次のような理由による。
【0005】
即ち、ライニングコンクリート層の厚みを薄く形成しようとすれば、内型枠はトンネル内周面に近づけて設置することになり、これに伴ってプレスリングの高さ寸法が小さくなる。しかしながら、プレスリングの高さ寸法が小さくなると、当該プレスリングに開口形成するコンクリート打設孔の径寸法はプレスリングの高さ寸法の制約を受けて、必然的に小さく形成せざるを得なくなる。
【0006】
ここで、コンクリート打設孔にはコンクリート打設配管を介してコンクリートポンプを接続するが、当該コンクリート打設配管には、通常ではコンクリート打設孔と同じ径のものを使用するため、当該コンクリート打設配管の径も細くなってしまい、その管路断面積が縮小してしまう。従って、ライニングコンクリート層の厚みを薄く形成しようとすると、コンクリート打設配管の管路抵抗が大きくなってコンクリート圧送量が低下してしまい、コンクリートポンプが本来有する圧送能力を十分に活用できなくなる。また、管路断面積を小さくするとコンクリート中の骨材が詰まり易くなる虞もある。
【0007】
また、コンクリート打設配管の径をコンクリート打設孔の径より大きくした場合にも、コンクリート打設孔とコンクリート打設配管の接続部分でコンクリート打設配管の径を縮小する必要があり、このため当該接続部位で管路断面積が小さくなって圧力損失が生じ、コンクリート圧送量が減少してしまうことに変わりはない。しかも、接続部分でコンクリートの閉塞が発生し易くなってしまうと言う問題も生じる。
【0008】
これ故、従来にあっては、コンクリート圧送量の確保と管路の閉塞防止の観点から、コンクリート打設孔とコンクリート打設配管との径は、往々にして必要以上に大きく維持してライニングコンクリート層を厚く形成していた。このため、コンクリートの打設量が多くなってそのコストが余分に費やされるとともに、その打設に要する時間も長くなって工期も延びてしまうという問題があった。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンクリート圧送能力の低下やコンクリート打設配管の管路閉塞を生じさせることなく、一次覆工体のライニングコンクリート層の厚さを薄く形成することができる場所打ちライニングシールド工法及びシールド掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、この発明の場所打ちライニングシールド工法は、シールド掘進機によりトンネルを掘進しつつ、該シールド掘進機のスキンプレート後端部にて、該トンネルの内周面に沿わせて内型枠を設置するとともに、該トンネル内周面と該内型枠との間に形成されるコンクリート打設空間の妻部を、該スキンプレートと該内型枠との間に設けられて前後に移動可能な妻型枠で閉塞して、該コンクリート打設空間内にコンクリートを打設していく場所打ちライニングシールド工法であって、該シールド掘進機の妻型枠に、その周方向に沿って延びる長円形のコンクリート打設孔を開口形成するとともに、該コンクリート打設孔にその開口断面積とほぼ等しい管路断面積を有したコンクリート打設配管を接続して、該コンクリート打設配管を介してコンクリートポンプからコンクリートを圧送して打設しつつ、該妻型枠で該コンクリート打設空間内に充填されたコンクリートを所定圧に加圧することを特徴とするものである。
【0011】
また、この発明に係るシールド掘進機は、切削刃を切羽面に直接接触させることにより地盤を切削しつつ前進移動してトンネルを掘削する掘進機本体と、該掘進機本体の前進移動に伴って該掘進機本体のスキンプレート後端部内にて該トンネルの内周面に沿わされて逐次に設置されていく内型枠と該トンネル内周面との間に形成されるコンクリート打設空間内に、コンクリートを打設する場所打ちライニング手段とから構成されるシールド掘進機であって、該場所打ちライニング手段が、該スキンプレートの後端部と該内型枠との間に前後に移動可能に設けられて該コンクリート打設空間の妻部を閉塞するリング状の妻型枠と、該妻型枠にその周方向に沿って延びて長円形に開口形成されたコンクリート打設孔と、該コンクリート打設孔に、その開口断面積とほぼ等しい管路断面積をもつコンクリート打設配管を介して接続されたコンクリートポンプと、該コンクリート打設空間内に打設されているコンクリートを所定値に加圧すべく該妻型枠を後方に向けて付勢するアクチュエータと、を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
また、前記コンクリート打設配管は、コンクリートポンプに接続された圧送配管と、該圧送配管の吐出側端に設けられて前記コンクリート打設孔に接続される接続管とからなり、該接続管にはその管路を開閉するシャッターが設けられている構成となし得る。
【0013】
さらに、前記接続管は、その断面形状が前記コンクリート打設孔に相応した長円形の筒体となし、該筒体の周側面に前記圧送配管を接合して、該筒体内を摺動する前記シャッターで該圧送配管との接合口を開閉する構成となし得る。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る場所打ちライニングシールド工法及びシールド掘進機によれば、内型枠をトンネル内周面に近づけてコンクリート打設空間を狭く設定することで、妻型枠の高さが小さくなっても、コンクリート打設孔の開口面積とコンクリート打設配管の管路断面積とを十分な大きさに保つことができて、コンクリート圧送能率が低下したり、管路の閉塞が生じることを可及的に防止することができる。このため、ライニングコンクリート層の厚みを設計強度に可及的に合わせて薄く形成することができるようになり、もってコンクリート充填量を低減して構築コストを抑えたり、工期の短縮化を図れるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態例を添付図面を用いて詳細に説明する。図1A〜Dはこの実施形態例に係る場所打ちライニングシールド工法の施工状況を示したもので、シールド掘進機の本体1の外郭を形成しているスキンプレート2の後端部を拡大して示す部分側断面図である。また、図2は図1中におけるII−II線矢視断面図である。
【0016】
このシールド掘進機は、周知のように、図示していない切削刃を切羽面に直接接触させることにより地盤を切削しつつ前進移動して、トンネルを掘削していくものであり、掘進機本体1の外郭を形成する円筒形のスキンプレート2の内周部には、後方に向けて伸長する油圧式等でなる複数の推進用ジャッキ3が、その一端のシリンダ3a側を掘進機本体1のフレーム1aに支持されて設けられている。
【0017】
また、スキンプレート2の後端部の内方部位には、円弧状に湾曲した多数の内型枠4が相互に連結されて、そのスキンプレート2と所定の距離を隔てて円筒状に組み立てられていく。各内型枠4は、そのトンネル長方向の長さが前記推進ジャッキ3のストローク長に相応した長さに形成されていて、掘進機本体1が当該推進ジャッキ3によってその1ストローク長分を1スパンとして前進されていくのに伴って、逐次に円筒状に組み立てられて継ぎ足されていく。そして、この円筒形に組み立てられた内型枠4の外周面とスキンプレート2の内周面及び掘削されたトンネルの内周面10との間に、一次覆工体としてのライニング層7を形成するためのコンクリート打設空間20が形成されていく。また、この掘進機本体1は、その後端部内で円筒形に組み立てられて継ぎ足されていく内型枠4の端面に推進用ジャッキ3の作動ロッド3bの先端を押し当てることによって、当該内型枠4から反力を得て前進するようになっている。
【0018】
ところで、図1A〜Dと図2とに示すように、前記シールド掘進機本体1には、内型枠4とスキンプレート2との間に位置されて、コンクリート打設空間20の妻部を閉塞するための円環状の妻型枠5が、前後に移動可能に設けられている。そして、この妻型枠5には、コンクリート打設空間20内にコンクリートCを打設するためのコンクリート打設孔9が、周方向に沿って延びて長円形に開口形成されている。また、当該妻型枠5のコンクリート打設孔9には、その開口断面積とほぼ等しい管路断面積をその全長に亘ってもつコンクリート打設配管11を介して図外のコンクリートポンプが接続されている。
【0019】
ここで、前記コンクリート打設配管11は、コンクリートポンプに接続された圧送配管11aと、この圧送配管11aの吐出側端に設けられて前記コンクリート打設孔9に接続される接続管11bとからなる。図3は前記接続管11bを拡大して示す斜視図である。なお、当該図3にあっては、説明の都合上、図1中に示される接続管11bをその上下関係を逆にして描いてある。図1A〜Dと図3とに示すように、この接続管11bは、その管路断面形状と管路断面積とが前記コンクリート打設孔9に相応されて形成されていて、管路断面が長円形をなす筒体状になっており、その一端が当該コンクリート打設孔9に一体的に嵌合接続されている。
【0020】
一方、前記圧送配管11aには、その管路断面形状が円形を呈したフレキシブル管が用いられている。そして、この圧送配管11aは、接続管11bの周側面に対し、掘進機本体1の内方側から傾斜されて接合されていて、その傾斜方向は圧送配管11aの上流側が妻型枠5から離間する方向となっている。また、圧送配管11aの管路断面積S2と接続管11bの管路断面積S1とは共にコンクリート打設孔9の開口面積にほぼ一致されて等しく形成されている。即ち、圧送配管11aと接続管11bとからなるコンクリート打設配管11は、そのコンクリートポンプの吐出口からコンクリート打設孔9に至る迄の全長に亘って、その管路断面積が一様に等しくなっている。
【0021】
また、図3に示すように、接続管11bには、コンクリート打設配管11の管路を開閉するシャッター12が設けられている。このシャッター12は接続管11b内に摺動自在に嵌合挿入されていてピストン状を呈しており、コンクリート打設孔9に対して反対側の端部に設けられた油圧式アクチュエータ13によって前後に駆動されるようになっている。即ち、このシャッター12は接続管11b内を前後に摺動して、圧送配管11の接合口14を開閉することによって、その管路を適宜に遮断乃至開放するようになっている。
【0022】
また、妻型枠5には、これを前後に駆動するアクチュエータとして油圧ジャッキ6が連結されている。この油圧ジャッキ6はそのシリンダー6a側が掘進機本体1のフレーム1aに取り付けられる一方、その作動ロッド6bの先端が妻型枠5に接続されている。そして、シリンダー6a内には絶えず所定値の作動油圧が作用されるようになっていて、妻型枠5を常時後方に付勢することで、コンクリート打設空間20内に打設されているコンクリートCを当該妻型枠5で所定値に加圧して保持するようになっている。
【0023】
ここで、コンクリートポンプからコンクリート打設配管11を通じてコンクリート打設空間20内に圧送されるコンクリート圧力は、油圧ジャッキ6によって加圧されているコンクリート打設空間20内のコンクリート圧力よりも大きく設定されていて、コンクリート打設配管11からコンクリート打設空間20内にコンクリートが打設されていくと、その打設量に応じて油圧ジャッキ6の作動ロッド6bがその付勢力を維持したまま押し戻されて、妻型枠5が前進するようになっている。
【0024】
以上の様に構成されるシールド掘進機を用いた場所打ちライニングシールド工法では、図1A(コンクリート打設工程終了状態)に示すごとく、最前端部に設置された内型枠4とスキンプレート2との間に環状に形成され、かつ、その妻部が妻型枠5によって閉塞されているコンクリート打設空間20内にコンクリートCが打設されて充満されると、推進ジャッキ3が伸長作動されてシールド掘進機本体1を前進させつつトンネルを掘削していく。この際、妻型枠5は油圧ジャッキ6によって常時後方に付勢されているので、シールド掘進機本体1の前進に伴って妻型枠5は掘進機本体1に対して相対的に後方に向けて移動して、コンクリート打設空間20内のコンクリートを所定値に加圧し続ける。
【0025】
そして、推進用ジャッキ3が内型枠4の1リング長分に相当する1スパン分伸長されてシールド掘進機本体1が前進すると、その前進に伴って、掘進機本体1のスキンプレート2がコンクリート打設空間20からその前方に抜け出していく。この際にも、妻型枠5は所定の付勢力で後方に押圧されているので、打設されたコンクリートCは所定圧に保持されており、当該スキンプレート2が抜け出して行くに連れて、順次にその抜け出した外周部側の空間内に向けてコンクリートCが流動していき、図1B(掘進工程終了状態)に示すように、内型枠4とトンネル内周面10とによって形成されるコンクリート打設空間20内に隙間無く充填されていく。
【0026】
次に、図1C(内型枠設置終了状態)に示すように、推進用ジャッキ3が縮められて、当該推進用ジャッキ3が前方に待避した状態で、新たに内型枠4が円筒状に組み立てられて既設の内型枠4の前端部に継ぎ足される。そして、新たな内型枠4の継ぎ足しが完了してその設置が終了すると、この継ぎ足された内型枠4の前端部に推進用ジャッキ3の作動ロッド3aの先端が当接される。
【0027】
次に、図1D(コンクリート打設工程)に示すように、コンクリート打設配管11を通じて、コンクリートポンプからコンクリートを圧送する。このとき、コンクリート打設配管11の接続管11bに設けられたシャッター12を前方に移動させて接合口14を開放させ、接続管11bを介して妻型枠5のコンクリート打設孔9からコンクリートを後方に吐出させる。この際にも、妻型枠5は油圧ジャッキ6によって所定の付勢力で後方に押圧されているが、コンクリート打設配管11から吐出されるコンクリート圧力の方が妻型枠5の押圧力よりも高いので、妻型枠5後方のコンクリート打設空間20内に向けてコンクリートが打設されていき、その吐出された打設量に応じて妻型枠5は前方に移動し、油圧ジャッキ6はその付勢力を維持しながらも押し縮められていく。この様にして一次覆工体のライニング層7が打ち継ぎ形成されていく。そして、妻型枠5が新たに設置した内型枠4の前端部にまで前進して、再び図1Aの状態になると、コンクリートの圧送を停止して、接続管11bのシャッター12を後方に作動させ、接合口14を閉じてコンクリート打設配管11の管路を遮断する。以後、図1A〜Dに示す同じ作業を繰り返し行って、トンネルを構築していく。
【0028】
ここで、本実施形態にあっては、コンクリートポンプからコンクリート打設空間20内に向けてコンクリートを圧送するにあたっては、妻型枠5に開口するコンクリート打設孔9はその形状を長円形に形成するとともに、この打設孔9には当該打設孔9とその形状及び断面積とが符合する接続管11bを繋ぎ、この接続管11bの周側面にコンクリートポンプから延設されてくる円形断面の圧送配管11aを接合して、コンクリート打設配管11の管路を形成するようにしており、かつ接続管11bの管路断面積S1と圧送配管11aの管路断面積S2とが等しく設定されている。
【0029】
即ち、このコンクリート打設配管11を用いれば、コンクリートポンプの吐出口から妻型枠5のコンクリート打設孔9に至るまでの圧送管路の全長に亘って、その管路断面積をほぼ一定に保持できる。このため、圧力損失がほとんど生じることがなく、単位時間当たりのコンクリート圧送量は低下しない。また、コンクリートの閉塞も発生し難い。
【0030】
しかも、コンクリート圧送配管11の管路断面積をコンクリートポンプの吐出能力に相応した大きさに維持しても、妻型枠5に開口するコンクリート打設孔9の形状を扁平な長円形にすることで、その開口面積を縮小せずに圧送配管11aの管路断面積と同等に形成できる。つまり、内型枠4をスキンプレート2に近づけて配置して、これにより円環状の妻型枠5の径方向寸法が小さくなってしまっても、当該妻型枠5に形成するコンクリート打設孔9の形状を長円形にすることで、その開口面積を縮小せずに圧送配管11aの管路断面積と同等に形成できる。
【0031】
従って、以上の様なシールド掘進機を用いて施工する場所打ちライニングシールド工法によれば、コンクリート打設配管11の管路断面積をその全長に亘って縮小せずに、コンクリートポンプの圧送能力に見合った断面積に一定に保持しつつ、トンネルの一次覆工体をなすライニングコンクリート層7の厚みをその設計強度に近づけて薄く形成することができるようになる。また、ライニングコンクリート層7が薄くなる分だけ、そのコンクリートの総使用量を低減できるばかりか、コンクリート圧送時間も短縮できるようになる。このため、トンネル構築コストの低減化と工期の短縮化も可及的に図れるようになる。
【0032】
また、この実施形態例にあっては、コンクリート打設配管11の接続管11bには、その管路断面の形状と面積とがコンクリート打設孔9に符合した長円形を呈してた筒体を使用し、当該筒体の周側面に圧送配管11aを接合するとともに、その筒体の内部には前後に摺動可能に嵌合して圧送配管11aの接合口14を開閉するシャッター12を設けて接続管11bを構成している。即ち、接続管11bにこの様なシャッター12を設ければ、コンクリート打設工程以外の時に当該シャッター12を閉じることで、コンクリート打設孔9の直近でコンクリート打設配管11の管路を閉塞できるようになる。このため、掘進工程時や内型枠設置工程時等のコンクリート打設工程以外の時に、コンクリートポンプの作動を休止できるようになる。
【0033】
また、シャッター12を閉じることで接続管11b内のコンクリートをコンクリート打設空間20内に押し出すことができるので、コンクリートの圧送休止中に当該接続管11b内にコンクリートが残留することが無く、コンクリートによる接続管11bの閉塞が生じることを確実に防止できるようになる。
【0034】
また、接続管11bを管路断面積が一様で前後方向に延びる長円形な筒体で構成しているので、その管路を開閉自在となすにあたっては、当該接続管11b内を前後に摺動するピストン状のシャッター12と、このシャッター12を前後に駆動させる油圧式アクチュエータ13とで構成することで、これらを他の周辺部材との干渉が起きにくい前後方向に沿わせて容易に配置することができる。
【0035】
なお、コンクリート圧送配管11aの吐出側を妻型枠5のコンクリート打設孔9に接続させるための接続管11bの形状は、上記図3の実施例に限定されるものではない。即ち、他の実施形態としては、図4に例示した接続管11cのように、圧送配管11aとの接合側端はこれに符合した円形をなす一方、コンクリート打設孔9との接合側端は当該打設孔9に符合した長円形をなして、その管路断面積を一定に保持されたまま円形から長円形になめらかに形状変化させて形成されたものであっても良い。また、この場合にあっては、管路遮断用のシャッターは、妻型枠5の周方向に開閉移動するように構成すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1A】本発明の実施形態例に係る場所打ちライニングシールド工法の施工状況を示す部分側断面図で、コンクリート打設工程の終了時を示すものである。
【図1B】同上、掘進工程の終了時を示すものである。
【図1C】同上、内型枠設置工程の終了時を示すものである。
【図1D】同上、コンクリート打設工程の途中を示すものである。
【図2】妻型枠に形成されるコンクリート打設孔を示すもので、図1A中のII−II線矢視図である。
【図3】本実施形態例に係るコンクリート打設配管の接続管を拡大して示す斜視図である。
【図4】他の実施形態例に係る接続管を拡大して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 シールド掘進機
2 スキンプレート
3 推進用ジャッキ
4 内型枠
5 妻型枠
6 ジャッキ(妻型枠押圧用)
7 ライニング層
9 コンクリート打設孔
10 トンネル内周面
11 コンクリート打設配管
11a コンクリート圧送管
11b,11c 接続管
12 シャッター
13 油圧式アクチュエータ
14 接合口
20 コンクリート打設空間
C コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機によりトンネルを掘進しつつ、該シールド掘進機のスキンプレート後端部にて、該トンネルの内周面に沿わせて内型枠を設置するとともに、該トンネル内周面と該内型枠との間に形成されるコンクリート打設空間の妻部を、該スキンプレートと該内型枠との間に設けられて前後に移動可能な妻型枠で閉塞して、該コンクリート打設空間内にコンクリートを打設していく場所打ちライニングシールド工法であって、
該シールド掘進機の妻型枠に、その周方向に沿って延びる長円形のコンクリート打設孔を開口形成するとともに、該コンクリート打設孔にその開口断面積とほぼ等しい管路断面積を有したコンクリート打設配管を接続して、該コンクリート打設配管を介してコンクリートポンプからコンクリートを圧送して打設しつつ、該妻型枠で該コンクリート打設空間内に充填されたコンクリートを所定圧に加圧することを特徴とする場所打ちライニングシールド工法。
【請求項2】
切削刃を切羽面に直接接触させることにより地盤を切削しつつ前進移動してトンネルを掘削する掘進機本体と、
該掘進機本体の前進移動に伴って該掘進機本体のスキンプレート後端部内にて該トンネルの内周面に沿わされて逐次に設置されていく内型枠と該トンネル内周面との間に形成されるコンクリート打設空間内に、コンクリートを打設する場所打ちライニング手段とから構成されるシールド掘進機であって、
該場所打ちライニング手段が、
該スキンプレートの後端部と該内型枠との間に前後に移動可能に設けられて該コンクリート打設空間の妻部を閉塞する円環状の妻型枠と、
該妻型枠にその周方向に沿って延びて長円形に開口形成されたコンクリート打設孔と、
該コンクリート打設孔に、その開口断面積とほぼ等しい管路断面積をもつコンクリート打設配管を介して接続されたコンクリートポンプと、
該コンクリート打設空間内に打設されているコンクリートを所定値に加圧すべく該妻型枠を後方に向けて付勢するアクチュエータと、
を備えていることを特徴とするシールド掘進機。
【請求項3】
前記コンクリート打設配管が、コンクリートポンプに接続された圧送配管と、該圧送配管の吐出側端に設けられて前記コンクリート打設孔に接続される接続管とからなり、該接続管にはその管路を開閉するシャッターが設けられていることを特徴とする請求項2に記載のシールド掘進機。
【請求項4】
前記接続管は、その断面形状が前記コンクリート打設孔に相応した長円形の筒体でなり、該筒体の周側面に前記圧送配管が接合されており、前記シャッターは該筒体内を摺動して該圧送配管との接合口を開閉することを特徴とする請求項3に記載のシールド掘進機。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−121099(P2009−121099A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294615(P2007−294615)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】