説明

塗工ペースト用ビヒクル及び塗工ペースト

【課題】デラミネーションを防止することができ、塗工後の塗膜の強度に優れる塗工ペーストを得ることができる塗工ペースト用ビヒクルを提供する。
【手段】下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位からなる変性ポリビニルアセタール樹脂を含有し、変性ポリビニルアセタール樹脂は、ガラス転移温度が55〜85℃、引張弾性率が950〜2000MPaである塗工ペースト用ビヒクル。


式中、Rは、炭素数1〜20の直鎖又は枝分かれ状のアルキル基を表し、Rは、水素、炭素数1〜20の直鎖、枝分かれ状若しくは環状のアルキル基又はアリール基を表し、nは1〜8の整数を表す。更に、変性ポリビニルアセタール樹脂中、一般式(3)で表される構造単位の含有量が1〜20モル%、一般式(4)で表される構造単位の含有量が30〜78モル%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工性、接着性に優れ、デラミネーションの発生を防止することができ、更に、塗工後に得られる塗膜の強度に優れる塗工ペーストを得ることができる塗工ペースト用ビヒクル、及び、該塗工ペースト用ビヒクルを用いた塗工ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の分野において導電粉末、セラミック粉末、ガラス粉末等の無機粉末を塗工ペースト用ビヒクルに分散させたペーストを塗工した後、焼成することにより、精密な導電膜、セラミック膜、ガラス膜等を調製する方法が行われており、例えば、このようなペーストを使用した積層セラミックコンデンサ等の積層型の電子部品は、特許文献1又は特許文献2に開示されているように、一般に次のような工程を経て製造されている。
【0003】
まず、有機溶剤にポリビニルブチラール樹脂やポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂等のバインダー樹脂、セラミック原料粉末、可塑剤、分散剤等を添加し、均一に混合することにより、セラミックスラリー組成物を作製し、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム又はSUSプレート等の支持体面に流延形成して、支持体を剥離してセラミックグリーンシートを得る。次いで、得られたセラミックグリーンシート上に、パラジウムやニッケル等の導電粉末を分散させた導電ペーストをスクリーン印刷等により塗布したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して製造した積層体に脱脂処理を行った後、焼成したセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結する工程を経て積層セラミックコンデンサが製造される。また、近年では、積層型電子部品の小型化、高性能化に伴い、導電層及びセラミックグリーンシートの薄層化、多層化が求められている。
【0004】
このように積層セラミックコンデンサ等の積層型電子部品を製造する際に用いる無機粉末を担持するための塗工ペースト用ビヒクルのバインダー樹脂としては、従来は主にエチルセルロース樹脂が用いられていた。エチルセルロース樹脂を含有する塗工ペースト用ビヒクルを用いた塗工ペーストは塗工性に優れ、とりわけスクリーン印刷等の塗工方法も採用できることから、精密な形状の塗膜を容易に形成することができる。
【0005】
しかしながら、エチルセルロースは、ポリビニルアセタール樹脂等を原料とするセラミックグリーンシートとの接着性に劣り、塗工ペースト用ビヒクルのバインダー樹脂として用いる場合には、積層、圧着工程においてプレス圧及び温度条件を大幅に上げる必要があった。そのため、得られる積層体には、高圧プレスを負荷することに起因する歪によって応力が生じ、脱灰時や焼成時に応力が緩和されることによって、デラミネーションと呼ばれる層間剥離が発生する問題があった。
【0006】
これに対して、エチルセルロースにポリビニルアセタール樹脂等のポリビニル系樹脂を添加することにより、接着性を向上させる方法や、可塑剤を添加することにより、柔軟性を付与する方法が検討されており、例えば、特許文献3にはポリビニルアセタール樹脂を添加することで、セラミックグリーンシートとの接着力を向上させ、層間剥離の発生を抑制する方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、ポリビニルアセタール樹脂を添加する方法では、塗工性が低下するという問題や、エチルセルロースが主剤であるため、接着力や柔軟性が不足するという問題があった。また、可塑剤を添加する方法では、柔軟性を付与するために可塑剤を多量に添加する必要があることから、塗工ペーストとした場合に、塗工性が低下するとともに、塗工、乾燥後に得られる塗膜の強度が低下するため、厚さの薄い塗膜を形成する際に、取扱性が
悪くなったり、積層、圧着工程において亀裂や変形が生じたりする問題があった。
【0008】
従って、近年の積層型電子部品の小型化、高性能化に伴う薄膜化や多層化に対応するため、接着力、塗工性に優れ、デラミネーションの発生を防止することができ、更に、塗工、乾燥後に得られる塗膜が、充分な強度を有する塗工ペーストを得ることができる塗工ペースト用ビヒクルが必要とされていた。
【特許文献1】特公平3−35762号公報
【特許文献2】特公平4−49766号公報
【特許文献3】特開2002−216540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、塗工性、接着性に優れ、デラミネーションの発生を防止することができ、更に、塗工後に得られる塗膜の強度に優れる塗工ペーストを得ることができる塗工ペースト用ビヒクル、及び、該塗工ペースト用ビヒクルを用いた塗工ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、無機粉末を混合して塗工ペーストを製造するための塗工ペースト用ビヒクルであって、下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位からなる変性ポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を含有し、前記変性ポリビニルアセタール樹脂は、ガラス転移温度が55〜85℃であり、かつ、厚さ10μmのシート状に形成した場合におけるJIS K 7127に準拠した方法により測定した引張弾性率が950〜2000MPaである塗工ペースト用ビヒクルである。
【化1】

式中、Rは、炭素数1〜20の直鎖又は枝分かれ状のアルキル基を表し、Rは、水素、炭素数1〜20の直鎖、枝分かれ状若しくは環状のアルキル基又はアリール基を表し、また、nは1〜8の整数を表す。更に、変性ポリビニルアセタール樹脂中、一般式(3)で表される構造単位の含有量が1〜20モル%、及び、一般式(4)で表される構造単位の含有量が30〜78モル%である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、塗工用ペースト用ビヒクルに用いるバインダー樹脂として、特定の構造及びガラス転移温度を有し、かつ、シート状とした場合の引張弾性率が所定の範囲内である変性ポリビニルアセタール樹脂を用いることによって、塗工性、接着性に優れ、デラミネーションの発生を防止することができ、更に、塗工後に得られる塗膜の強度に優れる塗工ペーストを得ることができる塗工ペーストを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、ガラス転移温度の下限が55℃、上限が85℃である。ガラス転移温度が上記範囲内であることにより、積層、圧着工程において温度や圧力を低減できるため、積層体中の歪が小さくなり、脱灰時や焼成時に応力が緩和されることに起因するデラミネーションの発生を防止することができる。55℃未満であると、無機粉末、有機溶剤等と混合して、塗工ペーストとした場合に低温で粘度が低くなるため、
無機粉末の分散性が悪化する。85℃を超えると、積層、圧着工程においてプレス圧及び温度条件を大幅に上げる必要が生じるため、積層体内部の歪が大きくなり、脱灰時や焼成時に応力が急激に緩和されることに起因するデラミネーションが発生する。好ましい下限は58℃、好ましい上限は80℃である。
なお、本明細書において、ガラス転移温度とは、DSC曲線において、低温側、高温側の各ベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる部分の温度のことをいう。なお、ガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量計(DSC−6200R、セイコー電子工業社製)等を用い、JIS K 7121に準拠する方法により測定することができる。
【0013】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、厚さ10μmのシート状に形成した場合におけるJIS K 7127に準拠した方法により測定した引張弾性率の下限が950MPa、上限が2000MPaである。上記範囲内とすることにより、本発明の塗工ペースト用ビヒクルを用いてなる塗工ペーストを印刷、乾燥した後に得られる塗膜の強度が向上するとともに、ハンドリング性についても改善することから、例えば、厚さ2.0μm未満の薄膜を多層形成することが容易となる。950MPa未満であると、積層、圧着工程において、形成した膜の一部に亀裂が生じたり、変形したりすることにより、各層の距離が不均一となり、電気特性が悪化する。また、裁断工程において、断面に亀裂や変形が生じ、層間剥離が発生する。2000MPaを超えると、塗工ペーストとした場合に、粘度が高くなりすぎて塗工性が悪化したり、塗工用ペーストの生産性が低下したりする。好ましい下限は1000MPa、好ましい上限は1500MPaである。
なお、本明細書において、引張弾性率とは、引張応力とこれに対応するひずみの比であり、引張応力−ひずみ曲線の直線部分の傾きのことをいう。なお、引張弾性率は、JIS K 7127に準拠する方法で測定することができる。
【0014】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位からなるものである。
【0015】
【化2】

【0016】
式中、Rは、炭素数1〜20の直鎖又は枝分かれ状のアルキル基を表し、Rは、水素、炭素数1〜20の直鎖、枝分かれ状若しくは環状のアルキル基又はアリール基を表す。また、nは1〜8の整数を表す。更に、変性ポリビニルアセタール樹脂中、一般式(3)で表される構造単位の含有量は1〜20モル%、一般式(4)で表される構造単位の含有量は30〜78モル%である。
【0017】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、一般式(1)で表されるビニルエステル単位、一般式(2)で表されるビニルアルコール単位、一般式(3)で表されるα−オレフィン単位及び一般式(4)で表されるアセタール単位からなる。また、各構成単位の比率やR、Rの選択、又は、nの選択により、粘度、チキソトロピー性等の諸性質を調整して優れた塗工性を発揮させることができ、とりわけスクリーン印刷性にも優れたペーストを得ることができる。
【0018】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(1)で表されるビニルエステル単位としては特に限定されず、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられる。なかでも、経済性の観点から酢酸ビニルが好適である。上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(1)で表されるビニルエステル単位の含有量としては特に限定されない。
【0019】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(2)で表されるビニルアルコール単位の含有量の好ましい下限は20モル%、好ましい上限は30モル%である。20モル%未満であると、変性ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性が低く、塗工ペースト用ビヒクルのバインダー樹脂として用いることができないことがある。30モル%を超えると、導電粉末、セラミック粉末、ガラス粉末等の分散性が低下することがある。より好ましい上限は27モル%である。
【0020】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(2)で表されるビニルアルコール単位が連続する場合、隣り合う水酸基がトランス位にある割合の好ましい下限は60%である。60%以上であると、分子内の水酸基間の相互作用に比べて、分子間の水酸基間の相互作用が大きくなり、導電粉末、セラミック粉末又はガラス粉末等の無機粉末との親和性が向上して、これらの分散性が向上する。より好ましい下限は70%である。
【0021】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記一般式(3)で表される構造単位を含有する。
上記一般式(3)で表されるα−オレフィン単位を含有することにより、得られる塗工ペーストはチキソトロピー性に優れ、印刷特性が向上する。
【0022】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(3)で表されるα−オレフィン単位の含有量の下限は1モル%、上限は20モル%である。1モル%未満であると、得られる塗工ペーストの熱分解性が低下する。20モル%を超えると、変性ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性が低く、バインダー樹脂として用いることができなかったり、バインダー樹脂の経時粘度安定性が低下したりする。好ましい下限は2モル%、好ましい上限は10モル%である。更に好ましい上限は8モル%である。
【0023】
上記α−オレフィン単位としては特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等に由来する単位が挙げられる。なかでも、エチレンに由来するエチレン単位であることが好適である。
【0024】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、一般式(3)で表されるα−オレフィン単位が連続する場合、連続するα−オレフィン単位の数の好ましい上限は10である。10を超えると、変性ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性が低下し、バインダー樹脂として用いることができないことがある。
【0025】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(4)で表されるアセタール単位の含有量の下限は30モル%、上限は78モル%である。30モル%未満であると、有機溶剤に不溶となり、塗工ペースト用ビヒクル作製に支障となる。78モル%を超えると、残存水酸基が少なくなって、強靱性が損なわれ、塗工ペーストとして印刷した場合の塗膜強度が低下する。好ましい下限は55モル%である。
【0026】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、一般式(4)で表されるアセタール単位が連続する場合、隣り合うアセタール基がトランス位にある割合の好ましい下限は30%、好ましい上限は70%である。30%未満であると、変性ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性が低下し、バインダー樹脂として用いることができないことがある。70%を超えると、アセタール結合が解離しやすくなり、粘度の変化が大きくなる等、保存安定性が低下することがある。
【0027】
上記一般式(4)で表されるアセタール単位において、Rは、CH及び/又はC
であることが好ましい。CH及び/又はCであると、目的とする組成のポリビニルアセタール樹脂を安定的に生産することができ、また、溶剤溶解性が向上する。
【0028】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、更に、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、アクリロニトリルメタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はそのナトリウム塩、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム等のエチレン性不飽和単量体に由来する成分を含有してもよい。これらのエチレン性不飽和単量体に由来する成分を含有することにより、上記変性ポリビニルアセタール樹脂に経時粘度安定性等を付与することができる。ただし、これらのエチレン性不飽和単量体に由来する成分を含有する場合であっても、その含有量は2.0モル%未満であることが好ましい。
【0029】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多官能モノマー等により架橋されてもよい。
【0030】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度としては特に限定はされないが、好ましい下限は350、好ましい上限は2400である。350未満であると、上記変性ポリビニルアセタール樹脂を有機溶剤に溶解し、厚さ10μmのシート状に形成した場合におけるJIS K 7127に準拠した方法により測定した引張弾性率が950MPa未満となるため、印刷後に得られる塗膜の強度が低下し、クラック等が入りやすくなり、薄層化することができないことがある。2400を超えると、塗工ペーストとした場合の粘度が高くなり、ハンドリング性が低下することがある。
【0031】
本発明の塗工ペースト用ビヒクルにおける上記変性ポリビニルアセタール樹脂の含有量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は50重量%である。1重量%未満であると、塗工ペースト用ビヒクルの粘度が低く塗工用としての特性が得られない。50重量%を超えると、粘度が高いためにハンドリング性が悪く、塗工ペーストを作製することができない。より好ましい下限は3重量%、より好ましい上限は33重量%である。更に好ましい下限は5重量%、更に好ましい上限は20重量%である。
【0032】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、α−オレフィン単位の含有量が1〜20モル%、ケン化度が80モル%以上である変性ポリビニルアルコールをアセタール化することにより製造することができる。
【0033】
上記変性ポリビニルアルコールは、ビニルエステルとα−オレフィンとを共重合した共重合体をケン化することにより得ることができる。上記ビニルエステルとしては、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられる。なかでも、経済性の観点から酢酸ビニルが好適である。また、上記エチレン性不飽和単量体に由来する成分を含有する変性ポリビニルアセタールを得る場合には、更にエチレン性不飽和単量体を共重合させる。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物の存在下で、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体とα−オレフィンを共重合し、それをケン化することによって得られる末端変性ポリビニルアルコールも用いることができる。
【0034】
上記変性ポリビニルアルコールのケン化度の好ましい下限は80モル%である。80モル
%未満であると、変性ポリビニルアルコールの水溶性が低下するため、アセタール化反応が困難になることがある。また、水酸基量が少ないとアセタール化反応自体が困難になることがある。
【0035】
上記変性ポリビニルアルコールとしては、上記α−オレフィン含有量が1〜20モル%の範囲である変性ポリビニルアルコールを単独で使用してもよいが、最終的に得られる変性ポリビニルアセタール樹脂のα−オレフィン含有量が1〜20モル%であれば、変性ポリビニルアルコールと未変性ポリビニルアルコールとを混合して使用してもよい。
更に、上記変性ポリビニルアルコールは、アセタール化を行う際のケン化度が80モル%以上であればよい。従って、ケン化度が80モル%以上である変性ポリビニルアルコールを単独で用いてもよく、ケン化度80モル%以上の変性ポリビニルアルコールとケン化度80モル%未満の変性ポリビニルアルコールとを混合して、全体としてケン化度を80モル%以上に調整したものを用いてもよい。
【0036】
上記アセタール化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、塩酸等の酸触媒の存在下で上記変性ポリビニルアルコールの水溶液に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
【0037】
上記アルデヒドとしては特に限定されず、例えばホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドが、生産性と特性バランス等の点で好適である。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記アセタール化を行う場合のアセタール化度は、上記アルデヒドを単独で用いる場合、2種以上を併用して用いる場合のいずれにおいても、全アセタール化度の好ましい下限は30モル%、好ましい上限は78モル%である。30モル%未満であると、得られる変性ポリビニルアセタール樹脂が有機溶剤に不溶となることがあり、塗工ペースト用ビヒクルを作製する際に支障となる。78モル%を超えると、残存水酸基が少なくなって、得られる変性ポリビニルアセタール樹脂の強靱性が損なわれ、塗工ペーストとした場合に印刷時の塗膜強度が低下することがある。
なお、本明細書において、アセタール化度の計算方法としては、変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基からアセタール化されて形成されていることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を計算する。
【0039】
上記アルデヒドとしてホルムアルデヒドを使用し、全アセタール化度を上記範囲内とする場合、ホルムアルデヒドの添加量の好ましい上限は45モル%である。45モル%を超えると、ガラス転移温度が85℃より高くなるため、積層、圧着工程においてプレス圧及び温度条件を大幅に上げる必要が生じることがある。
【0040】
本発明の塗工ペースト用ビヒクルは、有機溶剤を含有する。
上記有機溶剤としては特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;プロピ
オン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸ブチル、ペンタン酸メチル、ペンタン酸エチル、ペンタン酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酪酸2−エチルヘキシル等のエステル類;メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、α−テルピネオール、ブチルセルソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明の塗工ペースト用ビヒクルの製造方法としては特に限定されず、例えば、上記有機溶剤に上記変性ポリビニルアセタール樹脂を溶解する方法が挙げられる。
【0042】
本発明の塗工ペースト用ビヒクルに、無機粉末等を分散させることにより、塗工ペーストを得ることができる。このようにして得られた塗工ペーストは、塗膜強度、接着性に優れ、デラミネーションの発生を防止することができ、かつ、塗工性、スクリーン印刷性にも優れる。本発明の塗工ペースト用ビヒクルと無機粉末とを含有する塗工ペーストもまた、本発明の1つである。
【0043】
本発明の塗工ペーストは無機粉末を含有する。
上記無機粉末としては特に限定されず、例えば、導電粉末、セラミック粉末、ガラス粉末等が挙げられる
【0044】
上記無機粉末として導電粉末を用いる場合、本発明の塗工ペーストは導電ペーストとして使用することができる。
上記導電粉末としては充分な導電性を示すものであれば特に限定されず、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、銅、これらの合金等からなる粉末が挙げられる。これらの導電粉末は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記導電粉末を用いる場合の上記変性ポリビニルアセタール樹脂の含有量としては特に限定されないが、上記導電粉末100重量部に対して好ましい下限は3重量部、好ましい上限は25重量部である。3重量部未満であると、導電ペーストの成膜性能が低下することがあり、25重量部を超えると、脱脂、焼成後にカーボン成分が残留しやすくなる。より好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は15重量部である。
【0046】
上記無機粉末としてセラミック粉末を用いる場合、本発明の塗工ペーストはセラミックペーストとして使用することができる。
上記セラミック粉末としては特に限定されず、例えば、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、マグネシア、サイアロン、スピネムルライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等からなる粉末が挙げられる。なかでも、用いるセラミックグリーンシートに含有されるセラミック粉末と同一の成分からなることが好ましい。これらのセラミック粉末は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記セラミック粉末を用いる場合の上記変性ポリビニルアセタール樹脂の含有量としては特に限定されないが、上記セラミック粉末100重量部に対して好ましい下限は1重量部、好ましい上限は50重量部である。1重量部未満であると、セラミックペーストの成膜性能が低下することがあり、50重量部を超えると、脱脂、焼成後にカーボン成分が残留しやすくなる。より好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0048】
本発明の塗工ペーストは、分散剤を含有してもよい。
上記分散剤としては特に限定されないが、例えば、脂肪酸、脂肪族アミン、アルカノール
アミド、リン酸エステルが好適である。
【0049】
上記脂肪酸としては特に限定されないが、例えば、ベヘニン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、ヤシ脂肪酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ソルビン酸、牛脂脂肪酸、ヒマシ硬化脂肪酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。なかでも、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が好適である。
上記脂肪族アミンとしては特に限定されず、例えば、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アルキル(ヤシ)アミン、アルキル(硬化牛脂)アミン、アルキル(牛脂)アミン、アルキル(大豆)アミン等が挙げられる。
上記アルカノールアミドとしては特に限定されず、例えば、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
上記リン酸エステルとしては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸エステルが挙げられる。
【0050】
本発明の塗工ペーストは、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0051】
本発明の塗工ペーストを製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記変性ポリビニルアセタール樹脂、上記有機溶剤、上記無機粉末をブレンダーミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合する方法が挙げられる。
【0052】
本発明の塗工ペーストをスクリーン印刷等の方法で塗工することにより、無機粉末を含有する極めて精密な塗膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明により、塗工性、接着性に優れ、デラミネーションの発生を防止することができ、更に、塗工後に得られる塗膜の強度に優れる塗工ペーストを得ることができる塗工ペースト用ビヒクル、及び、該塗工ペースト用ビヒクルを用いた塗工ペーストを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
重合度1700、エチレン含有量5モル%、ケン化度99モル%の変性ポリビニルアルコール193gを純水2900gに加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を28℃に冷却し、濃度35重量%の塩酸20gとn−ブチルアルデヒド115gとを添加し、更に20℃に冷却、保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、溶液を30℃で5時間保持して反応を完了させ、中和、水洗及び乾燥工程を行い、変性ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂を、DMSO―d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてブチラール化度及び水酸基量を測定したところ、ブチラール化度は71モル%で、水酸基量は23モル%であった。
【0056】
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂について、示差走査熱量計(DSC−6200R
、セイコー電子工業社製)を用い、JIS K 7121に準拠する方法により、昇温速度10℃/分でガラス転移温度を測定したところ、64℃であった。
【0057】
また、得られた変性ポリビニルアセタール樹脂10重量部を、テルピネオール90重量部に溶解し、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥後の厚さが10μmとなるよう塗布した後、100℃で1時間乾燥することによってシート状に形成し、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離することにより、変性ポリビニルアセタール樹脂からなるシートを得た。得られたシートについて、JIS K 7127に準拠する方法で引張弾性率を測定したところ、1250MPaであった。
【0058】
(塗工ペースト用ビヒクルの作製)
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂10重量部を、テルピネオール90重量部に溶解し、塗工ペースト用ビヒクルを得た。
【0059】
(導電ペーストの作製)
得られた塗工ペースト用ビヒクル100重量部に、導電粉末としてニッケル微粒子(2020SS、三井金属社製)100重量部を加え、三本ロールで混練して導電ペーストを得た。混練は光学顕微鏡にて凝集物(未解砕物)が認められなくなるまでロールを通すことにより行った。
【0060】
(セラミックペーストの作製)
得られた塗工ペースト用ビヒクル100重量部に、セラミック粉末としてチタン酸バリウム(BT−03、平均粒子径0.3μm、堺化学工業社製)100重量部を加え、三本ロールで混練してセラミックペーストを得た。
【0061】
(実施例2)
重合度500、エチレン含有量10モル%、ケン化度88モル%の変性ポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様の方法により変性ポリビニルアセタール樹脂、塗工ペースト用ビヒクル、導電ペースト及びセラミックペーストを得た。
なお、得られた変性ポリビニルアセタール樹脂について、実施例1と同様の方法によりガラス転移温度及び引張弾性率を測定したところ、ガラス転移温度は60℃、引張弾性率は1050MPaであった。
【0062】
(比較例1)
市販のエチルセルロース(STD100型、ダウケミカル社製)を塗工ペーストのバインダー樹脂として用いた以外は、実施例1と同様の方法により塗工ペースト用ビヒクル、導電ペースト及びセラミックペーストを得た。
市販のエチルセルロースについて、実施例1と同様の方法によりガラス転移温度及び引張弾性率を測定したところ、ガラス転移温度は190℃、引張弾性率は1080MPaであった。
【0063】
(比較例2)
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックB「BM−S」、重合度800、積水化学工業社製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により塗工ペースト用ビヒクル、導電ペースト及びセラミックペーストを得た。
なお、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックB「BM−S」、重合度800、積水化学工業社製)について、実施例1と同様の方法によりガラス転移温度及び引張弾性率を測定したところ、ガラス転移温度は63℃、引張弾性率は1100MPaであった。
【0064】
(比較例3)
重合度300、エチレン含有量5モル%、ケン化度99モル%の変性ポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様の方法により変性ポリビニルアセタール樹脂、塗工ペースト用ビヒクル、導電ペースト及びセラミックペーストを得た。
なお、得られたポリビニルアセタール樹脂について、実施例1と同様の方法によりガラス転移温度及び引張弾性率を測定したところ、ガラス転移温度は59℃、引張弾性率は900MPaであった。
【0065】
(比較例4)
n−ブチルアルデヒドに代えて、n−ブチルアルデヒドとアセトアルデヒドとを1:2の重量比で混合したものを用いた以外は、実施例1と同様の方法により変性ポリビニルアセタール樹脂、塗工ペースト用ビヒクル、導電ペースト及びセラミックペーストを得た。
なお、得られたポリビニルアセタール樹脂について、実施例1と同様の方法によりガラス転移温度及び引張弾性率を測定したところ、ガラス転移温度は95℃、引張弾性率は1300MPaであった。
また、得られた変性ポリビニルアセタールのアセタール化度は71モル%で、アセトアセタール化度は48モル%であった。
【0066】
(評価)
実施例1、2及び比較例1〜4で得られた導電ペースト及びセラミックペーストについて、以下の方法により評価を行った。
結果は表1に示した。
【0067】
(1)導電ペーストの評価
(1−1)強度評価
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックB「BM−S」、重合度800、積水化学工業社製)10重量部、トルエン30重量部、エタノール15重量部を混合し、攪拌溶解し、更に、可塑剤としてジブチルフタレート3重量部を加え、攪拌溶解した。得られた樹脂溶液に、セラミック粉末としてチタン酸バリウム(BT−03、平均粒径0.3μm、堺化学工業社製)100重量部を加え、ボールミルで48時間混合してセラミックスラリー組成物を得た。得られたセラミックスラリー組成物を、離型処理したポリエステルフィルム上に、乾燥後に所定の厚さ(1.0、1.5、2.0、2.5、3.0μm)となるように塗布し、常温で1時間風乾し、熱風乾燥機によって80℃で3時間乾燥し、続いて120℃で2時間乾燥させてセラミックグリーンシートを得た。
得られたセラミックグリーンシートを5cm角の大きさに切断し、これに得られた導電ペーストをスクリーン印刷した後、同じ厚さのセラミックグリーンシートを100枚積重ね、70℃、圧力150kg/cm、10分間の熱圧着条件で圧着して、セラミックグリーンシート積層体を得た。
得られたセラミックグリーンシート積層体を目視で観察し、亀裂や変形を生じなかったものの中で、厚さが最も薄いものを確認し、評価した。
【0068】
(1−2)スクリーン印刷性評価
スクリーン印刷機(ミノマットY−3540、ミノグループ社製)とSXスクリーン版(SX300B、東京プロセスサービス社製)とを用いて、導電ペーストをセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷し、印刷面を目視又は拡大顕微鏡で観察し、以下の基準によりスクリーン印刷性を評価した。
〇:印刷面に糸状のセラミックペーストが全く認められなかった。
×:印刷面に糸状のセラミックペーストが認められた。
【0069】
(1−3)熱分解性評価
得られたセラミックグリーンシート積層体を窒素雰囲気で、昇温速度3℃/分で450℃
まで昇温し、5時間保持後、更に昇温速度5℃/分で1350℃まで昇温し、10時間保持してセラミック焼結体を得た。得られたセラミック焼結体について目視にて観察し、以下の基準によりセラミックグリーンシート積層体の熱分解性を評価した。
○:均一に焼結されており、セラミックパウダー以外のものは認められない。
△:シート内に黒色の点状のものが一部まれに確認される。
×:シート内に黒色の点状のものがかなり多く確認される。
【0070】
(1−4)デラミネーション評価
得られた焼結体を常温まで冷却した後、半分に割り、ちょうど50層付近のシートの状態を電子顕微鏡で観察し、セラミック層と導電層とのデラミネーションの有無を観察し、以下の基準により接着性を評価した。
○:デラミネーションなし。
×:デラミネーションあり。
【0071】
(2)セラミックペーストの評価
(2−1)スクリーン印刷性評価
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックB「BM−S」、重合度800、積水化学工業社製)10重量部、トルエン30重量部、エタノール15重量部を混合し、攪拌溶解し、更に、可塑剤としてジブチルフタレート3重量部を加え、攪拌溶解した。得られた樹脂溶液に、セラミック粉末としてチタン酸バリウム(BT−03、平均粒径0.3μm、堺化学工業社製)100重量部を加え、ボールミルで48時間混合してセラミックスラリー組成物を得た。得られたスラリー組成物を、離型処理したポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚みが約10μmになるように塗布し、常温で1時間風乾し、熱風乾燥機によって80℃で3時間乾燥し、続いて120℃で2時間乾燥させてセラミックグリーンシートを得た。
スクリーン印刷機(ミノマットY−3540、ミノグループ社製)とSXスクリーン版(SX300B、東京プロセスサービス社製)とを用いて、セラミックペーストをセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷し、印刷面を目視又は拡大顕微鏡で観察し、以下の基準によりスクリーン印刷性を評価した。
〇:印刷面に糸状のセラミックペーストが全く認められなかった。
×:印刷面に糸状のセラミックペーストが認められた。
【0072】
(2−2)デラミネーション評価
ニッケル粉末(2020SS、三井金属社製)100重量部に対してバインダー樹脂7重量部とα−テルピネオール60重量部とを加え混合した後、三本ロールで混練して導電ペーストを調製した。
得られたセラミックグリーンシートを5cm角の大きさに切断し、これに得られた導電ペーストをスクリーン印刷により塗工した。次いで、セラミックグリーンシート上の導電ペーストが塗工されていない部分に、スクリーン印刷によりセラミックペーストを塗工した。
塗工されたセラミックグリーンシートを100枚積重ね、70℃、圧力150kg/cm、10分間の熱圧着条件で圧着して、セラミックグリーンシート積層体を得た。
得られたセラミックグリーンシート積層体を窒素雰囲気で、昇温速度3℃/分で450℃まで昇温し、5時間保持後、更に昇温速度5℃/分で1350℃まで昇温し、10時間保持して積層セラミックコンデンサを得た。
得られた積層セラミックコンデンサを常温まで冷却した後、半分に割り、ちょうど50層付近のシートの状態を電子顕微鏡で観察し、デラミネーションの発生の有無を評価した。
○:デラミネーションなし。
×:デラミネーションあり。
【0073】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、塗工性、接着性に優れ、デラミネーションの発生を防止することができ、更に、塗工後に得られる塗膜の強度に優れる塗工ペーストを得ることができる塗工ペースト用ビヒクル、及び、該塗工ペースト用ビヒクルを用いた塗工ペーストを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉末を混合して塗工ペーストを製造するための塗工ペースト用ビヒクルであって、
下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位からなる変性ポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を含有し、
前記変性ポリビニルアセタール樹脂は、ガラス転移温度が55〜85℃であり、かつ、
厚さ10μmのシート状に形成した場合におけるJIS K 7127に準拠した方法により測定した引張弾性率が950〜2000MPaである
ことを特徴とする塗工ペースト用ビヒクル。
【化1】

式中、Rは、炭素数1〜20の直鎖又は枝分かれ状のアルキル基を表し、Rは、水素、炭素数1〜20の直鎖、枝分かれ状若しくは環状のアルキル基又はアリール基を表し、また、nは1〜8の整数を表す。更に、変性ポリビニルアセタール樹脂中、一般式(3)で表される構造単位の含有量が1〜20モル%、及び、一般式(4)で表される構造単位の含有量が30〜78モル%である。
【請求項2】
一般式(2)で表される構造単位の含有量が20〜30モル%であることを特徴とする請求項1記載の塗工ペースト用ビヒクル。
【請求項3】
がCH及び/又はCであることを特徴とする請求項1又は2記載の塗工ペー
スト用ビヒクル。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の塗工ペースト用ビヒクルと無機粉末とを含有することを特徴とする塗工ペースト。

【公開番号】特開2006−241322(P2006−241322A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59580(P2005−59580)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】