説明

塗工装置、及び塗工方法

【課題】 基材フィルムをロールから浮上させることなく安定して搬送し、同時に、ロールに形成した溝の痕跡のない樹脂塗工膜を得ることのできるような塗工装置を提供すること。
【解決手段】 連続的に搬送される基材フィルム上に樹脂塗工液を塗工する塗工手段と、該塗工手段により樹脂塗工液の塗工された前記基材フィルムと接する1又は2以上のロールとを備え、前記塗工された樹脂塗工液の粘度が1000mPa・s以下である範囲内で該基材フィルムと接する少なくとも1以上の前記ロールの表面には、該基材フィルムと接する幅全域に亘って幅(W)0.5mm未満の溝(10)が形成されていることを特徴とする塗工装置による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工装置、及び塗工方法に関し、より詳しくは、基材フィルム上に樹脂塗工液を塗工することにより傷やロール跡のない樹脂塗工フィルムを製造する際に好適な塗工装置及び塗工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルム等の樹脂塗工フィルムを製造する塗工装置として、従来、長尺の基材フィルムを長手方向に連続的に搬送し、塗工手段より該基材フィルム上に樹脂塗工液を吐出し、基材フィルム上に樹脂塗工膜を形成する装置が知られている。
【0003】
該塗工装置には、通常、樹脂塗工液を吐出する塗工手段や該塗工手段に前記基材フィルムを近接させるように搬送するバックアップロールのほか、該基材フィルムを所望の方向へと案内しながら搬送するための、複数のガイドロールが備えられている。
【0004】
この種のガイドロールは、基材フィルムと接触する円筒状の外周面を有して構成されたものであるが、この外周面と基材フィルムとの間に空気が入り込むと、基材フィルムがこの外周面から浮上してしまい、基材フィルムの搬送状態に悪影響を及ぼすという問題がある。
基材フィルムがガイドロールから浮上してしまうと、基材フィルムがばたついたりガイドロールが空回りするといった現象が起こり、そして、ばたついた基材フィルムがガイドロールに接触すると、基材フィルムに傷が入る原因となる。
【0005】
従来、ロール面からの基材フィルムの浮上を抑制する方法として、これらバックアップロールやガイドロールに溝を形成し、ロール表面と基材フィルムとの間に入り込む空気を排除する方法が知られている(下記特許文献1、2等ご参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−225368号公報
【特許文献2】特開2005−270880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが更なる検討を行ったところ、単にロール表面に溝を形成して基材フィルムの搬送安定化を図った場合、得られた樹脂塗工膜に、その溝の形状が転写されたような痕跡が模様となって残るという新たな問題点を見出した。
【0008】
このような従来技術の問題点に鑑み、本発明は、基材フィルムをロールから浮上させることなく安定して搬送し、同時に、ロールに形成した溝の痕跡のない樹脂塗工膜を得ることのできるような塗工装置及び塗工方法を提供することを一の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、塗工された樹脂塗工液の粘度が比較的小さい段階において所定の幅よりも細い溝の形成されたロールを用いることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明に係る塗工装置は、連続的に搬送される基材フィルム上に樹脂塗工液を塗工する塗工手段と、該塗工手段により樹脂塗工液の塗工された前記基材フィルムと接する1又は2以上のロールとを備え、前記塗工された樹脂塗工液の粘度が1000mPa・s以下である範囲内で該基材フィルムと接する少なくとも1以上の前記ロールの表面には、幅0.5mm未満の溝が形成されていることを特徴とする。
また、本発明に係る塗工方法は、連続的に搬送される基材フィルム上に樹脂塗工液を塗工し、樹脂塗工液の塗工された前記基材フィルムを1又は2以上のロールで支持しながら搬送する塗工方法であって、前記塗工された樹脂塗工液の粘度が1000mPa・s以下である範囲内で該基材フィルムと接する少なくとも1以上の前記ロールの表面には、幅0.5mm未満の溝が形成されていることを特徴とする。
【0011】
斯かる構成の塗工装置及び塗工方法によれば、樹脂塗工液の塗布された基材フィルムが、該樹脂塗工液の粘度が1000mPa・sを超えて流動性が低下するまでの初期段階において、幅0.5mm未満の細い溝が形成されたロールと接触することとなるため、基材フィルムの浮上が防止されると同時に、形成された樹脂塗工膜にロールの溝跡が転写されることも防止されることなる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係る塗工装置よれば、基材フィルムの搬送安定化が図られると同時に、ロールに形成した溝の痕跡のない樹脂塗工膜を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の塗工装置1は、帯状に形成された長尺の基材フィルムIを長手方向に連続的に搬送する搬送手段として、複数のガイドロール2及びバックアッ
プロール3を備え、さらに、該基材フィルムI上に樹脂塗工液を吐出して樹脂塗工膜を形
成する塗工手段として、ダイコータ4を備える。
なお、図1の基材フィルムIに示される矢印は、基材フィルムの搬送方向を示す。
【0015】
本実施形態の塗工装置1においては、これら複数のガイドロール2のうち、バックアップロール3の下流側に配されるガイドロール2aの表面に、幅0.5mm未満の溝が形成されている。
図2は、該ガイドロール2aの表面を展開して示した図である。該図2に示したように、本実施形態におけるガイドロール2aの表面には、幅0.5mm未満の溝10がロールの全幅に亘って形成されている。また、該溝10は、ロールの円周方向、即ちロールの回転方向に対して、好ましくは0〜60°の角度を成して形成され、本実施形態では、約45°の角度を成して、いわゆる螺旋状に形成されている。
【0016】
図3は、ガイドロール2aの中心軸を通る該ガイドロール2aの断面図のうち、表面部分を拡大して示した図である。該図3に示すように、該ガイドロール2aの中心軸を通る断面における溝10の幅Wは、0.5mm未満とするものであるが、好ましくは0.1〜0.3mmとする。また、該溝の深さDは、通常0.01〜1.0mmとし、好ましくは0.01〜0.3mmとする。
【0017】
前記溝10は、上述のような螺旋状に形成されたもののほか、格子状や、ロールの円周方向と平行なもの、或いは波状に形成されたものであってもよい。
【0018】
また、前記ロールに形成する溝の断面積Sとその本数nは、下記式(1)を満たすようにすることが好ましい。
【数1】

(ここで、Sは、ロールの中心軸を通る断面における溝一本当たりの断面積(m2)、nは前記断面において基材フィルムと接する範囲に形成された溝の本数、Lはロールと接する基材フィルムの幅(m)、hは下記式(2)で表される基材フィルムの浮上量(m)を示す。)
【数2】

(ここで、Rはロール半径(m)、μは空気の粘度(Pa・s)、Tは基材フィルムの張力(N/m)、Uは基材フィルムの搬送速度(m/s)、λは下記式(3)で表される数である。)
【数3】

(ここで、L、R、μ、T、およびUは上記式(1)および(2)と同義である。)
【0019】
前記溝の断面積Sとその本数nが、前記式(1)を満たす場合、ロール表面から基材フィルムIが浮上することを、より確実に防止するとができる。
【0020】
さらに、前記ガイドロール2aの中心軸を通る断面における溝10と溝10との間隔は、上記式(1)乃至(3)より求められる溝の本数nと、ロールと接する基材フィルムの幅Lとから算出される範囲としうるが、通常、0.1〜50mmとし、好ましくは0.1〜5mmとする。
このような幅で溝を形成することにより、基材フィルムの浮上がより確実に防止され、しかも樹脂塗工膜に溝跡が形成されることについても、より一層確実に防止される。
【0021】
本発明は、塗工手段の下流側において、塗工された樹脂塗工液の粘度が1000mPa・s以下である範囲内で、該樹脂塗工液の塗布された基材フィルムと接するように、上記のような溝10を形成したガイドロール2aを少なくとも一つ設置することにより、該ガイドロールにおける基材フィルムの浮上を防止し、しかも、溝跡のない樹脂塗工膜を形成することが可能となる。
好ましくは、塗工された樹脂塗工液の粘度が800mPa・s以下である範囲内に設置されるガイドロール2aの少なくとも一つを上記のような構成とし、より好ましくは、塗工された樹脂塗工液の粘度が1000mPa・s以下である範囲内全てのガイドロール2aを上述の如く構成するものとし、これにより、上記効果がより一層顕著なものとなる。
【0022】
また、本発明に係る塗工装置は、粘度が1000mPa・s未満の樹脂塗工液を使用しうるが、1〜700mPa・sの樹脂塗工液に対して好適であり、1〜10mPa・sの樹脂塗工液に対して特に好適である。
【0023】
該樹脂塗工液を構成する樹脂としては、特に限定されるものではなく、樹脂塗工膜の用途に応じて任意に選択することができる。光学用途としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミド−イミド、或いは、ポリエステル−イミド等のポリマーなどが挙げられる。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよく、また、例えば、ポリエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種類以上の混合物として使用してもよい。
このような樹脂の中でも、透明性、配向性及び延伸性に優れるという観点から、ポリイミドを好適に使用することができる。
【0024】
また、前記ポリマーの分子量は、特に制限されるものではないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは、2,000〜500,000の範囲であることよい。また、前記ポリイミドとしては、例えば、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミドが好ましい。
【0025】
また、前記樹脂を溶解させる溶剤としては、前記樹脂材料を溶解でき、且つ、前記フィルムを浸食しにくいものであればよく、使用する樹脂材料及びフィルムに応じ任意に選択することができる。具体的には、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、O−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、酢酸エチル、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ブチロニトリル、メチルイソブチルケトン、メチルエーテルケトン、シクロペンタノン、二硫化炭素等を用いることができる。
上記溶剤の中では、メチルイソブチルケトンが樹脂組成物の溶解性に優れ、且つ、基材フィルムを浸食することがないので特に好ましい。
これら溶剤は、1種又は2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。
【0026】
また、本発明において使用される基材フィルムについては特に限定されず、用途に応じて適宜選択されうるが、光学用途としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムを基材フィルムとして好適に使用することができる。
【0027】
さらにイミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルムなども基材フィルムとして使用することができる。
【0028】
また、該基材フィルムの厚みについては、樹脂塗工膜の用途に応じて適宜選択されるが、一般には、10〜1000μmの厚みの基材フィルムを用いることができる。
【0029】
なお、本発明に係る塗工装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0030】
上記実施形態では、ガイドロールに溝が形成された場合について説明したが、本発明は該実施形態に限定されるものではなく、例えば、塗工手段と対向するように設けられるバックアップロール4に上記のような溝を形成することも可能である。
【0031】
また、上記実施形態では、溝10をロールの全幅に亘って形成した場合について説明したが、少なくとも基材フィルムと接する部分にのみ上記のような溝を形成してもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、溝の断面が三角形となるよいうに形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、半円形や四角形、或いはU字状等の任意の形状とすることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0034】
<使用材料>
・基材フィルムI:トリアセチルセルロースフィルム。
・樹脂塗工液A:ポリエステル系ポリウレタン樹脂(東洋紡製「VYRON UR−1400」)を、溶媒としてメチルイソブチルケトンを用いて溶解し、ポリエステル系ポリウレタン樹脂の濃度が5重量%、粘度が5mPa・sとなるように調整したもの。
・樹脂塗工液B:2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンおよび2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’ジアミノビフェニルから合成されたポリイミドを、溶媒としてメチルイソブチルケトンを用いて溶解し、粘度が700mPa・sとなるように調整したもの。
【0035】
(実施例1)
図1に示したような前記実施形態の塗工装置を用い、基材フィルムI上に樹脂塗工液A(粘度5mPa・s)を塗工し、樹脂塗工膜を形成した。具体的には、ダイコータ5によって樹脂塗工液を基材フィルムIの一面に塗工し、表面全体に幅0.1mm、深さ0.05mmの溝が0.25mm間隔で格子状に形成されたガイドロール2a(半径50mm)を経由させた後、120℃で3分間熱処理を行い、次いで、テンター延伸機にて樹脂膜層を有する基材フィルムIの幅方向の端部を把持し、160℃で1.15倍に延伸し、樹脂塗工膜を有する透明の樹脂塗工フィルムを作製した。
【0036】
尚、前記基材フィルムIの搬送速度は毎分40mとし、且つ該基材フィルムの張力は100Nとなるように制御した。また、溝の形成された前記ガイドロール2aは、ダイコータの下流側1.5mの位置に配置した。
【0037】
さらに、基材フィルム上に塗工された樹脂塗工液の粘度は、以下のようにして測定した。先ず、ミラー式赤外線多成分計(チノー社製、IRM−D5125S)にて塗工直後のウエット状態にある樹脂層の厚みを測定し、また、同ミラー式赤外線多成分計にて知りたいポイント(例えば、ガイドロール2aの直前)におけるウエット状態にある樹脂層の厚みを測定する。そして、測定された樹脂層の厚みの差から、厚みの減少量を算出し、揮発した溶媒量を算出する。塗工直後の溶媒量は、塗工装置に供給した塗工液の溶媒量と同じであるから、その塗工直後の溶媒量から揮発した溶媒量を引くことにより、知りたいポイントでの溶媒量、即ち、固形分濃度が推算できる。一方、粘度測定装置(セコニック社製、FVM−80A)を用いて複数の樹脂固形分濃度における樹脂塗工液の粘度を測定し、樹脂の固形分濃度と樹脂塗工液の粘度との関係式を別途算出しておき、上記測定により推算された固形分濃度を該関係式に照らし合わせることにより、知りたいポイントでの粘度を求める。
【0038】
(実施例2)
幅0.1mm、深さ0.05mmの溝が0.25mm間隔で螺旋状に形成されたガイドロール2aを使用することを除き、他は実施例1の条件と同様にして樹脂塗工フィルムを作製した。
【0039】
(実施例3)
樹脂塗工液B(粘度700mPa・s)を使用することを除き、他は実施例1の条件と同様にして樹脂塗工フィルムを作製した。
【0040】
(実施例4)
幅0.1mm、深さ0.05mmの溝が0.25mm間隔で螺旋状に形成されたガイドロール2aを使用し、且つ樹脂塗工液B(粘度700mPa・s)を使用することを除き、他は実施例1の条件と同様にして樹脂塗工フィルムを作製した。
【0041】
(比較例1)
幅0.5mm、深さ0.5mmの溝が12mm間隔で格子状に形成されたガイドロール2aを使用することを除き、他は実施例1の条件と同様にして樹脂塗工フィルムを作製した。
【0042】
(比較例2)
幅0.5mm、深さ0.5mmの溝が12mm間隔で螺旋状に形成されたガイドロール2aを使用することを除き、他は実施例1の条件と同様にして樹脂塗工フィルムを作製した。
【0043】
(比較例3)
幅0.5mm、深さ0.5mmの溝が12mm間隔で格子状に形成されたガイドロール2aを使用し、且つ樹脂塗工液B(粘度700mPa・s)を使用することを除き、他は実施例1の条件と同様にして樹脂塗工フィルムを作製した。
【0044】
(比較例4)
幅0.5mm、深さ0.5mmの溝が12mm間隔で螺旋状に形成されたガイドロール2aを使用し、且つ樹脂塗工液B(粘度700mPa・s)を使用することを除き、他は実施例1の条件と同様にして樹脂塗工フィルムを作製した。
【0045】
(比較例5)
溝が形成されていないガイドロール2aを使用することを除き、他は実施例1の条件と同様にして樹脂塗工フィルムを作製した。
【0046】
<基材フィルムの浮上量の測定>
レーザ変位計(キーエンス社製、LT−9000)を用い、停止状態におけるガイドロール2a上の基材フィルム位置と、運転状態における位置とを比較し、変位があれば浮きが発生していると判断した。
【0047】
<ガイドロールの空回りの有無>
ガイドロール2aと基材フィルムとの接触状態を目視により確認した。
【0048】
<溝跡の有無についての評価>
得られた樹脂塗工フィルムを100mm×100mmの大きさに裁断し、試験片を作成した。その試験片の、基材フィルム側(樹脂塗工膜が形成されていない側)に粘着材を用いて黒色板を貼り付け、樹脂塗工膜側から蛍光灯を用いて可視光線を照射し、その反射状態を目視により評価することにより、溝跡の有無の評価を行った。尚、その際に撮影した写真を、図4〜図11に示す。
【0049】
上記各実施例及び比較例における製造条件と、基材フィルムの浮上量及び溝跡有無の評価結果を下記表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1に示すように、溝を有しないガイドロールのみを用いた比較例5では、ガイドロールから基材フィルムが浮上し、ロールの空転を生じていることが認められ、一方、溝幅0.5mmの溝を有する比較例1〜4では、基材フィルムの浮上を防止できたものの、図8〜図11に示すように、樹脂塗工膜には溝跡が形成されたことが認められた。
これに対し、溝幅0.1の溝を有するガイドーロールを用いた実施例1〜4では、何れも基材フィルムの浮上を防止しつつ、また、図4〜図7に示すように、樹脂塗工膜にも溝跡が形成されなかったことが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る塗工装置の一実施形態を示した概略図。
【図2】ガイドロール2aの表面展開図。
【図3】ガイドロール2aの中心軸を通る該ガイドロール2aの断面図のうち、表面部分を拡大して示した図。
【図4】実施例1により得られた試験片の写真。
【図5】実施例2により得られた試験片の写真。
【図6】実施例3により得られた試験片の写真。
【図7】実施例4により得られた試験片の写真。
【図8】比較例1により得られた試験片の写真。
【図9】比較例2により得られた試験片の写真。
【図10】比較例3により得られた試験片の写真。
【図11】比較例4により得られた試験片の写真。
【符号の説明】
【0053】
I 基材フィルム
1 塗工装置
2a、2b ガイドロール
3 バックアップロール
4 ダイコーター
10 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に搬送される基材フィルム上に樹脂塗工液を塗工する塗工手段と、該塗工手段により樹脂塗工液の塗工された前記基材フィルムと接する1又は2以上のロールとを備え、
前記塗工された樹脂塗工液の粘度が1000mPa・s以下である範囲内で該基材フィルムと接する少なくとも1以上の前記ロールの表面には幅0.5mm未満の溝が形成されていることを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
前記溝が、前記基材フィルムと接する幅全域に亘って前記ロール表面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の塗工装置。
【請求項3】
連続的に搬送される基材フィルム上に樹脂塗工液を塗工し、樹脂塗工液の塗工された前記基材フィルムを1又は2以上のロールで支持しながら搬送する塗工方法であって、
前記塗工された樹脂塗工液の粘度が1000mPa・s以下である範囲内で該基材フィルムと接する少なくとも1以上の前記ロールの表面には、幅0.5mm未満の溝が形成されていることを特徴とする塗工方法。
【請求項4】
前記溝が、前記基材フィルムと接する幅全域に亘って前記ロール表面に形成されていることを特徴とする請求項2記載の塗工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−101271(P2009−101271A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273816(P2007−273816)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】