説明

塗布フィルム

【課題】 金属蒸着された際に、優れた金属蒸着外観を有し、かつ蒸着金属との間の接着性が極めて良好な塗布フィルムを提供する。
【解決手段】 共重合成分としてアクリロニトリルを含有する水性アクリル樹脂、メラミン化合物、および少なくとも一種以上の平均粒径0.01μm〜0.3μmの粒子を含有する塗布液から形成され、かつ少なくとも1方向に延伸された塗布層をポリエステルフィルムの少なくとも片面に有することを特徴とする塗布フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布フィルムに関するものであり、詳しくは、優れた金属蒸着外観を有し、かつ蒸着金属との間の接着性が良好な塗布フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属蒸着フィルムは、蒸着金属を選択することにより、ガスバリアー性、水分不透過性、可視・紫外光の遮蔽性、熱線反射性、導電性、透明導電性、磁気記録性、美麗性などの特性を有するため、各種の用途、例えば、包装材料、装飾用材料、窓ガラスの遮蔽用材料、金・銀糸用材料、コンデンサー材料、表示材料、配線基板材料、磁気記録材料などに利用されている。しかしながら、金属蒸着フィルムは、一般的な基材フィルムとして知られているポリエステルフィルムと蒸着金属との接着性が悪いという欠点がある。
【0003】
上記の接着性を改良するためには、ポリエステルフィルムと蒸着金属との間に下塗り層を設けるのが有効である。従来、下塗り層としては、各種ポリウレタンや各種ポリエステルを用いてコーティングすることによって設けられたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
上記の公報にしたがえば、蒸着金属との接着性および金属蒸着外観に優れたフィルムが得られるが、依然として高度な金属蒸着外観の要求や高度な蒸着金属との接着性に対する要求には対応できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−238183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、優れた金属蒸着外観を有し、かつ蒸着金属との間の接着性が良好な塗布フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を採用することによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、共重合成分としてアクリロニトリルを含有する水性アクリル樹脂、メラミン化合物、および少なくとも一種以上の平均粒径0.01μm〜0.3μmの粒子を含有する塗布液から形成され、かつ少なくとも1方向に延伸された塗布層をポリエステルフィルムの少なくとも片面に有することを特徴とする塗布フィルムに存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明よれば、優れた金属蒸着外観を有し、かつ蒸着金属との間の接着性が良好な塗布フィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の塗布フィルムの基材フィルムは、ポリエステルからなるものである。かかるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸のようなジカルボン酸またはそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなグリコールとを溶融重縮合させて製造されるポリエステルである。これらの酸成分とグリコール成分とからなるポリエステルは、通常行われている方法を任意に使用して製造することができる。 例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下、加熱して重縮合させる方法が採用される。その目的に応じ、脂肪族ジカルボン酸を共重合しても構わない。
【0011】
本発明のポリエステルとしては、代表的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられるが、その他に上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
【0012】
本発明におけるポリエステルフィルムには、フィルムの走行性を確保したり、キズが入ることを防いだりする等の目的で粒子を含有させることができる。このような粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、さらに、ポリエステル製造工程時の析出粒子等を用いることができる。
【0013】
粒子の粒径や含有量はフィルムの用途や目的に応じて選択されるが、平均粒径(d50)に関しては、0.01〜3μm、好ましくは0.02〜2.5μm、さらに好ましくは0.03〜2μmの範囲である。平均粒径が3.0μmを超えるとフィルムの表面粗度が粗くなりすぎたり、粒子がフィルム表面から脱落しやすくなったりする。平均粒径が0.01μm未満では、表面粗度が小さすぎて、十分な易滑性が得られない場合がある。
【0014】
粒子含有量については、ポリエステルに対し、通常0.0003〜1.0重量% 、好ましくは0.0005〜0.5 重量%の範囲である。粒子含有量が0.0003重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、1.0重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0015】
本発明において、ポリエステルフィルムの厚さは、特に制限を受けるものではないが、3〜500μmの範囲が望ましく、機械強度と可撓性の点で5〜200μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明の塗布層は、共重合成分としてアクリロニトリルを含有している水性アクリル樹脂、メラミン化合物、少なくとも一種以上の平均粒径0.01μm〜0.3μmの粒子を含有する塗布液から形成される。
【0017】
かかる塗布層は、塗布液に含有されている成分が反応しきっていない場合、その成分の未反応物と反応生成物の双方が含まれることとなる。
【0018】
本発明の塗布液は
、蒸着金属との強固な接着性を発現させる観点から、共重合成分としてアクリロニトリルを含有している水性アクリル樹脂(A)を含有する。
【0019】
(A)の含有量は、塗布液中の不揮発分中での比率で50〜95重量%が好ましく、特に65〜90重量%であることが好ましい。(A)の含有量が上記の比率を外れる場合は、蒸着金属との接着性が低下する場合がある。
【0020】
本発明の塗布液は、メラミン化合物(B)を含有する。かかるメラミン化合物としては、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物等が使用できる。また、メラミン系架橋剤と他の化合物との共重合物を使用することもでき、本発明においては特に尿素を共縮合したものが、蒸着金属との接着性を向上させ好ましい。
【0021】
メラミン系架橋剤は、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。また、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
【0022】
(B)の含有量は、塗布液中の不揮発分中での比率で7〜40重量%が好ましく、特に10〜30重量%であることが好ましい。(B)の含有量が上記の比率を外れる場合は、共重合成分としてアクリロニトリルを含有している水性アクリル樹脂(A)との相乗作用による蒸着金属との接着性の向上効果が十分に発揮されず、蒸着金属との接着性が低下する場合がある。
【0023】
また本発明の塗布液はエポキシ化合物を併用して含有することが好ましい。かかるエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。本発明においては特にポリグリセロールポリグリシジルエーテルが蒸着金属との接着性を向上させ好ましい。
【0024】
本発明の塗布液は、平均粒径0.01〜0.3μmの粒子(C)を少なくとも一種以上含有する。
【0025】
塗布液における(C)としては、フィルムの易滑性を有効に改善する効果の観点から、コロイダルシリカを用いることが好ましい。
【0026】
(C)の含有量は、塗布液中の不揮発分中での比率で1〜12重量%が好ましく、特に1〜6重量%であることが好ましい。(C)の含有量が少なすぎる場合は、フィルム表面の易滑効果が十分に得られず、フィルムの生産時にフィルム表面に傷が入ったり、ロールにフィルムが巻けなかったりする可能性がある。また、粒子の含有量が多すぎると、金属蒸着後の金属蒸着層表面の突起が大きくなり、金属蒸着外観の美麗性を損なうことがある。
【0027】
塗布フィルムのヘーズは、金属蒸着外観の観点から通常10%以下であり、5%以下であることはより好ましく、2%以下であることはさらに好ましい。
【0028】
ポリエステルフィルムまたはシートに塗布液を塗布する方法としては、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるリバースロールコータ、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーターあるいはこれら以外の塗布装置を用いてフィルム製造工程内で塗布を行う。例えば、二軸延伸フィルムに塗布層を設ける場合は、縦方向に一軸延伸したフィルムに水溶液または水分散体とされた塗布液を塗工し、乾燥または未乾燥の状態で横方向に延伸し、引続き熱処理を施す。この方法は、製膜、塗布および乾燥を同時に行えることから、製造コスト面を加味したメリットが大きいために、特に好ましく採用される方法である。
【0029】
本発明において、塗布層は片面あるいは両面に設けることができ、また、両面に設ける場合、塗布層の種類は同一でも異なっていてもよい。なお、シートまたはフィルムへの塗布性、接着性を改良するため、塗布前にシートまたはフィルムの表面に化学処理や放電処理を施してもよい。
【0030】
塗布層の塗工量は、最終的な被膜としてみた際に、通常0.002〜1g/m、好ましくは0.005〜0.5g/m、さらに好ましくは0.01〜0.2g/mである。塗工量が0.002g/m未満の場合は均一な樹脂層が得難い傾向があり、そのため製品に塗布むらが生じる場合があり、1g/mを超える塗布層は、金属蒸着外観の悪化やフィルムの滑り性が低下してフィルムの取扱いが困難となることがある。
【0031】
なお、上記の塗工量における塗布層の厚みは、塗布層の比重によって変わるが、仮に塗布層の比重を1.2g/cmとすると、塗工量0.002〜1g/mは塗布厚さ0.0017〜0.83μmに相当する。
【0032】
また、実際の塗布厚みは、塗布フィルムをルテニウム化合物やオスミウム化合物等の重金属を用いて染色を行い、超薄切片法により塗布フィルムの断面を調整した後、透過型電子顕微鏡にて塗布フィルム断面の塗布層を複数個所観測し、その実測値を平均することで確認することができる。
【0033】
本発明において、蒸着する金属としては、アルミニウム、パラジウム、亜鉛、ニッケル、銀、銅、金、インジウム、錫、ステンレス鋼、クロム、チタン等が挙げられるが、最も好ましい金属は、アルミニウムである。なお、上記の金属には、金属の酸化物も含まれる。蒸着する金属膜の厚さは、金属被覆フィルムの最終用途によって適宜選択される。蒸着の方法は、一般には真空蒸着によるが、エレクトロプレーティング、スパッタリング等の方法によってもよい。なお、金属蒸着後に接着性、特に、耐水接着性や耐擦傷性等を付与するために、蒸着金属面に樹脂保護層を設けてもよい。
【0034】
蒸着フィルムは表裏の美麗さが要求されるので、表面が平坦であることが好ましい。具体的には、塗布フィルム表面の粗さRaが0.001〜0.05μm、さらには0.001〜0.02μmであることが好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。本発明で用いる評価方法は次に示すとおりである。
【0036】
(1)表面粗さRa
小坂研究所社製表面粗さ測定機(SE−3F)を用いて次のようにして求めた。すなわち、フィルム断面曲線から、その中心線の方向に基準長さL(2.5mm)の部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をx軸、縦倍率の方向をy軸として粗さ曲線y=f(x)で表したとき、次の式で与えられた値を〔μm〕で表す。
【0037】
【数1】

【0038】
中心線平均粗さは、試料フィルム表面から10本の断面曲線を求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の中心線平均粗さの平均値で表した。なお、触針の先端半径は2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08mmとした。
【0039】
(2)ポリエステルの極限粘度
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0040】
(3)フィルム中の粒子の平均粒径(d50)
レーザー回折散乱法(堀場製作所社製 LA−910)によって求められる全粒子の50%点にある粒子の等価球形直径をもって平均粒径(μm)とした。
【0041】
(4)金属蒸着フィルムの作製
塗布フィルムの塗布面に、抵抗加熱型金属蒸着装置を用い、真空室の圧力を10-4Torrにてアルミニウムを450Åの厚みに蒸着した。
【0042】
(5)蒸着金属との接着性評価
塗布フィルムと同種でコロナ処理を行った同一厚さのフィルム表面に、92.9重量%の酢酸エチル、15重量%の東洋モートン社製AD−502、1重量%の東洋モートン社製CAT−10Lからなる溶液を塗工量1.1g/mで塗布し、90℃で1分間乾燥させて、糊フィルムを作成した。金属蒸着フィルムの蒸着薄膜層表面に、上記糊フィルムを圧着温度50℃、圧着圧28.9N/cm、圧着時間1分間の条件のドライラミネート法により積層した後、積層フィルムを温度60℃、湿度90%RHの恒温槽に3時間入れてエージング処理を行った。得られた積層フィルムを幅25mmの短冊状にし、短冊状試料の端部を一部剥離して、剥離試験機により100mm/分の速度でT型剥離を行った。
得られた剥離強度と剥離後の蒸着金属の剥離面積の度合で接着性の評価を行った。評価の基準は下記のとおりである。
【0043】
・剥離強度
○:4N/25mm以上
△:2.1N/25mm以上、4N/25mm未満
×:2.0N/25mm未満
【0044】
・蒸着金属の剥離面積
○:金属蒸着膜の剥がれが全く無い。
○△:5〜10%の金属蒸着膜の剥がれがある。
△:11〜50%の金属蒸着膜の剥がれがある。
×:51%以上の金属蒸着膜の剥がれがある。
【0045】
(6)金属蒸着外観
金属蒸着フィルムを暗室の三波長ランプ下にて目視検査し、金属蒸着外観を下記の基準により判定した。
○:黒く引き締まった金属外観。
○△:極微量に白みを帯びた金属外観。
△:白みを帯びた金属外観。
×:蛍光灯下でも確認が可能な白い金属外観。
【0046】
(7)ヘーズ
JIS−K7136に準じて、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−2000により塗布フィルムのヘーズを測定した。
【0047】
以下の実施例および比較例において、塗布液成分としては下記を用いた。
A−1:下記の組成で構成されたTg=65℃のポリエステル樹脂
酸成分:テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//ジオール成分:エチレングリコール/ネオペンチルグリコール =49/48/3//50/50(モル%)
A−2:ポリウレタン樹脂 (DSMネオレジン社製 ネオレッツR960)
A−3:アクリル樹脂 (ロームアンドハースジャパン社製 プライマルHA−16)
A−4:メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルを主成分として構成されているTg=約50℃のアクリル樹脂
A−5:アクリロニトリル含有アクリル樹脂 (日本カーバイド工業社製 ニカゾールPK−8012P)
A−6:メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、アクリロニトリルを主成分として構成されるTg=約25℃のアクリル樹脂
B−1:アルキロールメラミン/尿素共重合の架橋性樹脂(日本資材社製 ベッカミンMA−S)
B−2:オキサゾリン基がアクリル系樹脂にブランチされたポリマー型架橋剤。(日本触媒社製 エポクロスWS−500)
B−3:ポリグリセロールポリグリシジルエーテル。(ナガセケムテックス社製 デナコールEX−521)
B−4:ヘキサアルキロールメラミンの架橋性樹脂。(日本資材社製 ベッカミンJ−101)
C−1:平均粒径0.07μmのシリカゾル水分散体
【0048】
実施例、比較例中で使用したポリエステル原料は次のとおりである。
(ポリエステル1):実質的に粒子を含有しない、極限粘度0.66のポリエチレンテレフタレート
(ポリエステル2):平均粒径(d50)が3.2μmの非晶質シリカを0.6重量%含有する、極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレート
【0049】
比較例1〜7,実施例1〜5:
ポリエステル1とポリエステル2とを重量比で
93/7でブレンドしたものをA層、ポリエステル1のみのものをB層の原料として、二台のベント式二軸押出機にそれぞれを供給し、285℃に加熱溶融し、A層を二分配して再外層(表層)、B層を中間層とする二種三層(A/B/A)の層構成で共押出し、静電密着法を用いて表面温度40℃〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させて、厚み構成比がA/B/A=1/8/1となる未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成した。このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。この一軸配向フィルムの片面に、下記表1に示すとおりの塗布組成物を塗布した。次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、100℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施した後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、フィルム厚みが23μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に0.019g/mの量の塗布層を設けた塗布フィルムを得た。これらのフィルムのヘーズは0.7%〜0.8%の範囲にあり、表面粗さは0.01μm〜0.015μmの範囲にあった。得られた塗布フィルムは、蒸着金属との接着性評価および金属蒸着外観において、下記表2に示すとおりの蒸着金属との接着性と金属蒸着外観を有していた。なお、表1中の比率は乾燥塗膜中での比率を重量%で表している。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のフィルムは、例えば、金属蒸着が施される用途において好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合成分としてアクリロニトリルを含有する水性アクリル樹脂、メラミン化合物、および少なくとも一種以上の平均粒径0.01μm〜0.3μmの粒子を含有する塗布液から形成され、かつ少なくとも1方向に延伸された塗布層をポリエステルフィルムの少なくとも片面に有することを特徴とする塗布フィルム。

【公開番号】特開2012−224696(P2012−224696A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91747(P2011−91747)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】