説明

塗布剤の塗布装置およびその塗布方法

【課題】 簡単な構成で、各塗布対象が均一な高さでない場合や変形あるいは傾斜している場合であっても、各塗布対象の表面にマスクを介してそれぞれ塗布剤を確実にかつ精度良くそれぞれ所定のパターンで塗布することができる塗布剤の塗布装置およびその方法を提供する。
【解決手段】 塗布装置1は、塗布対象W1〜W3の表面にマスク10を介してそれぞれ所定のパターンで塗布剤を塗布するためのもので、各塗布対象W1〜W3に塗布剤をそれぞれ塗布するパターンが穿孔されたマスク10、10、10と、各塗布対象W1〜W3の表面に対して各マスク10を移動可能に保持するフローティング機構を含む保持体11を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布剤の塗布装置およびその塗布方法に関し、特に、複数の塗布対象の表面にマスクを介してそれぞれ所定のパターンで塗布剤を塗布するための塗布剤の塗布装置およびその塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、グリスやクリーム半田などの塗布剤を半導体モジュールの放熱板や回路基板などの塗布対象に所定のパターンで塗布する場合、この塗布するパターンに従って穿孔されたマスクを用意し、このマスクを放熱板上に位置決めし、塗布剤をマスク上に塗ってスキージにより拡げて、塗布剤をマスクの孔から通して塗布対象の表面に塗布することが、一般に行われている(特許文献1)。
特許文献1は、回路基板の対向端面が平行に加工されていない場合であっても、回路基板のワークを完全にクランプして固定することができ、クリーム半田を印刷パターン通りに正確、かつ、確実に回路基板に転写することができるクリーム半田の印刷装置を提供することを目的としたものである。
【0003】
そして、特許文献1には、印刷パターンが穿孔されたマスクの上面を、へらでクリーム半田をスキージングさせることによりクリーム半田を回路基板の所要箇所に印刷するクリーム半田の印刷装置において、前記回路基板を挟持し、該回路基板をマスクに重合させてクリーム半田を回路基板に印刷させるワーク挟持装置を備え、該ワーク挟持装置は、回路基板の一端面が当接する固定クランプ部材と、この固定クランプ部材に対向し、該固定クランプ部材とで挟持して固定する回路基板の他端面に沿い、該他端面に密着するように傾動可能であり、当該他端面を押圧する移動クランプ部材と、該移動クランプ部材を前記固定クランプ部材側に押圧する押圧部材とを備えることを特徴とするクリーム半田の印刷装置が開示されている。特許文献1では、特に図13に示されていることから明確なように、ワーク挟持装置によって単一の回路基板を挟持して、クリーム半田などの塗布剤を回路基板に塗布していた。
【0004】
ところで、例えば、IPM(インテリジェントパワーモジュール)などの半導体装置においては、図10に示すように、樹脂などからなるハウジングHに対して複数の放熱板W1〜W3を配列・保持したものがある。そして、図12に示すように、各放熱板W1〜W3には、絶縁基板5を介して半導体素子6をはんだ付けしたものがある。このような半導体装置においては、アルミニウムからなる伝熱性の高いケースやヒートシンクなどの組み付け対象に組み付ける際に、放熱性能を確保するために、各放熱板W1〜W3の裏面(図では上面)に放熱性グリスを均一に塗布する。放熱板W1〜W3に放熱性グリスを塗布する際には、塗布装置3の放熱板W1〜W3を覆い得るように構成されたマスク30を放熱板W1〜W3上に載置し、スキージにより放熱性グリスをマスク30上でのばして透孔を通過させて、放熱板W1〜W3のメタルマスク30が穿孔された部分と対応する部分のみに放熱性グリースを塗布する。この場合に、メタルマスク30は、ハウジングHに保持された複数の放熱板W1〜W3の配置やその大きさなどに応じて穿孔され、単一の枠体32に固着されている。
【0005】
【特許文献1】特開平4−238037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図10に示すように、成形された放熱板W1〜W3の厚さに誤差が生じることにより、ハウジングHに保持されたときの放熱板W1〜W3の高さが異なることとなる(図10では放熱板W2が他の放熱板W1、W3よりも高い)。上述したように単一の枠体32に固着されたメタルマスク30を使用する従来の技術にあっては、図11に斜線を施した部分で示すように、高さが高い放熱板W2に対してはその全面にわたってメタルマスク30が密着するために、その全面にわたって放熱性グリースを塗布することができるが、低い放熱板W1、W3に対してはその全面にわたってメタルマスク30が密着せず、放熱性グリースを塗布できなかったり所定のパターンの通りに塗布できない部分Fが生じるという問題があった。
【0007】
また、上記従来の技術にあっては、図12に示すように、絶縁基板5を介して半導体素子6をはんだ付けする際の熱や成形誤差などによって放熱板W1〜W3が反るように変形する場合もある。このような場合にも、上述したように配列された放熱板W1〜W3によってはその全面にメタルマスク30が密着しないのは同様のこと、各放熱板W1〜W3のなかでも部分的にメタルマスク30が全面にわたって密着せず、放熱性グリースを塗布できなかったり所定のパターンの通りに塗布できない部分Fが生じるという問題があった。
さらに、図13に示すように、複数の放熱板W1〜W3を保持するハウジングHの中央部が高くなるように反ったり(a)、周辺部が高くなるように反ったりする(b)など、変形することによっても、メタルマスク30が放熱板W1〜W3に対して全面にわたって密着せず、放熱性グリースを塗布できなかったり所定のパターンの通りに塗布できない部分Fが生じるという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した問題を優位に解決するためになされたもので、簡単な構成で、各塗布対象が均一な高さでない場合や変形あるいは傾斜している場合であっても、各塗布対象の表面にマスクを介してそれぞれ塗布剤を確実にかつ精度良くそれぞれ所定のパターンで塗布することができる塗布剤の塗布装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の塗布剤の塗布装置に係る発明は、上記目的を達成するため、複数の塗布対象の表面にマスクを介してそれぞれ所定のパターンで塗布剤を塗布するための塗布剤の塗布装置であって、各塗布対象の表面に対してそれぞれマスクを移動可能に保持する保持体を有することを特徴とする。
請求項2の塗布剤の塗布装置に係る発明は、上記目的を達成するため、複数の塗布対象の表面にマスクを介してそれぞれ所定のパターンで塗布剤を塗布するための塗布剤の塗布装置であって、マスクが複数の塗布対象を覆い得るよう構成されており、該マスクの、塗布対象の間と対応する部位の剛性を、塗布対象と対応する部位よりも低下させたことを特徴とする。
また、請求項3の塗布剤の塗布方法に係る発明は、上記目的を達成するため、複数の塗布対象の表面にマスクを介してそれぞれ所定のパターンで塗布剤を塗布するための塗布剤の塗布方法であって、塗布対象の表面に対してマスクをそれぞれ移動可能に保持して、各マスクを介して塗布剤を各塗布対象の表面に所定パターンで塗布することを特徴とする。
請求項4の塗布剤の塗布方法に係る発明は、上記目的を達成するため、複数の塗布対象の表面にマスクを介してそれぞれ所定のパターンで塗布剤を塗布するための塗布剤の塗布方法であって、複数の塗布対象を覆い得るよう構成されたマスクの、塗布対象の間と対応する部位の剛性を、塗布対象と対応する部位よりも低下させ、該マスクを各塗布対象の表面上に配置して、前記剛性を低下させた部位を少なくとも屈曲または延伸させて各塗布対象の表面に密着させて、マスクを介して塗布剤を各塗布対象の表面に所定パターンで塗布することを特徴とする。
【0010】
請求項1の発明では、各塗布対象と対応するマスクが、保持体により各塗布対象の表面に対してそれぞれ移動可能に保持されていることにより、各塗布対象が均一な高さでない場合や変形あるいは傾斜している場合であっても、各塗布対象の表面に対してマスクがそれぞれ移動して密着するため、塗布剤が確実にかつ精度良くそれぞれ所定のパターンで各塗布対象の表面に塗布される。
請求項2の発明では、マスクが複数の塗布対象を覆い得るような大きさで構成されており、該マスクの、塗布対象の間と対応する部位の剛性を、塗布対象と対応する部位よりも低下させたことにより、各塗布対象が均一な高さでない場合や変形あるいは傾斜している場合であっても、マスクの互いに隣接する塗布対象の間と対応する部位が屈曲および/または延伸するため、各塗布対象の表面に対してマスクがそれぞれ密着し、塗布剤が確実にかつ精度良くそれぞれ所定のパターンで各塗布対象の表面に塗布される。
また、請求項3の発明では、塗布対象の表面に対してマスクをそれぞれ移動可能に保持して、各マスクを介して塗布剤を各塗布対象の表面に所定パターンで塗布することにより、各塗布対象が均一な高さでない場合や変形あるいは傾斜している場合であっても、各塗布対象の表面に対してマスクをそれぞれ密着させるため、塗布剤が確実にかつ精度良くそれぞれ所定のパターンで各塗布対象の表面に塗布される。
請求項4の発明では、複数の塗布対象を覆い得るような大きさで構成されたマスクの、塗布対象の間と対応する部位の剛性を、塗布対象と対応する部位よりも低下させ、該マスクを各塗布対象の表面上に配置して、前記剛性を低下させた部位を少なくとも屈曲または延伸させて各塗布対象の表面に密着させて、マスクを介して塗布剤を各塗布対象の表面に所定パターンで塗布するため、各塗布対象が均一な高さでない場合や変形あるいは傾斜している場合であっても、塗布剤が確実にかつ精度良くそれぞれ所定のパターンで各塗布対象の表面に塗布される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、各塗布対象と対応するマスクが、保持体により各塗布対象の表面に対してそれぞれ移動可能に保持されているという簡単な構成により、各塗布対象が均一な高さでない場合や変形あるいは傾斜している場合であっても、各塗布対象の表面に対してマスクがそれぞれ移動して密着するため、塗布剤を確実にかつ精度良くそれぞれ所定のパターンで各塗布対象の表面に塗布することができる塗布剤の塗布装置を提供することができる。
請求項2の発明によれば、マスクが複数の塗布対象を覆い得るよう構成されており、該マスクの、塗布対象の間と対応する部位の剛性を、塗布対象と対応する部位よりも低下させたという簡単な構成により、各塗布対象が均一な高さでない場合や変形あるいは傾斜している場合であっても、マスクの互いに隣接する塗布対象の間と対応する部位が屈曲および/または延伸するため、各塗布対象の表面に対してマスクがそれぞれ密着し、塗布剤を確実にかつ精度良くそれぞれ所定のパターンで各塗布対象の表面に塗布することができる塗布剤の塗布装置を提供することができる。
また、請求項3の発明によれば、塗布対象の表面に対してマスクをそれぞれ移動可能に保持して、各マスクを介して塗布剤を各塗布対象の表面に所定パターンで塗布するという簡単な構成により、各塗布対象が均一な高さでない場合や変形あるいは傾斜している場合であっても、各塗布対象の表面に対してマスクがそれぞれ密着するため、塗布剤を確実にかつ精度良くそれぞれ所定のパターンで各塗布対象の表面に塗布することができる塗布剤の塗布方法を提供することができる。
請求項4の発明によれば、複数の塗布対象を覆い得るよう構成されたマスクの、塗布対象の間と対応する部位の剛性を、塗布対象と対応する部位よりも低下させ、該マスクを各塗布対象の表面上に配置して、前記剛性を低下させた部位を少なくとも屈曲または延伸させて各塗布対象の表面に密着させて、マスクを介して塗布剤を各塗布対象の表面に所定パターンで塗布するため、各塗布対象が均一な高さでない場合や変形あるいは傾斜している場合であっても、塗布剤を確実にかつ精度良くそれぞれ所定のパターンで各塗布対象の表面に塗布することができる塗布剤の塗布方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
最初に、本発明の塗布剤の塗布装置1およびその塗布方法の実施の一形態を、図1〜図6に基いて詳細に説明する。
本発明の塗布剤の塗布装置1は、概略、複数の塗布対象W1〜W3の表面にマスク10を介してそれぞれ所定のパターンで塗布剤を塗布するためのものであって、各塗布対象W1〜W3に塗布剤をそれぞれ塗布するパターンが穿孔されたマスク10、10、10と、各塗布対象W1〜W3の表面に対して各マスク10を移動可能に保持するフローティング機構を含む保持体11を有している。
また、本発明の塗布剤の塗布方法は、概略、複数の塗布対象W1〜W3の表面にマスク10を介してそれぞれ所定のパターンで塗布剤を塗布するためのものであって、各塗布対象W1〜W3に塗布剤を塗布するパターンが穿孔されたマスク10、10、10を塗布対象W1〜W3の表面に対してそれぞれ移動可能に保持して、各マスク10を介して塗布剤を各塗布対象W1〜W3の表面に所定パターンで塗布するものである。
なお、以下の実施の形態では、塗布対象が半導体装置のハウジングHに配列保持される3つの放熱板W1〜W3であり、塗布剤が放熱性グリースである場合により説明する。
【0013】
ハウジングHは、各放熱板W1〜W3を収容する収容部50が形成されており、各収容部50の底面中央には開口部51が形成されて放熱板W1〜W3の下面が露出している。各収容部50の底面の開口部51周囲は、各放熱板W1〜W3を支持する段部52が構成されている。放熱板W1〜W3は、ハウジングHの収容部50にそれぞれ嵌め込まれて段部52で支持されると、その厚さ方向の上半分がハウジングHの上面から突出し、隣接する放熱板W1とW2、および、W2とW3の間に所定の間隔をあけた状態で配列される。なお、放熱板W1〜W3の表面(図では下面)には、図12に示したように、絶縁基板5を介して半導体素子6がはんだ付けされている場合があり、かかる絶縁基板5および半導体素子6は、開口部51に通される。
【0014】
マスク10は、各放熱板W1〜W3と個別に対応するよう複数用意される。各マスク10は、例えばアルミニウムやニッケルなど、金属製の薄板により構成されたもので、それぞれ放熱性グリースを塗布するパターンに応じて、すなわちこの実施の形態では、各放熱板W1〜W3の表面にほぼ全面にわたって放熱性グリースを塗布する場合には各放熱板W1〜W3と相似形で、その大きさと同じかまたは僅かに小さい大きさで開口するよう穿孔されている。なお、各マスクW1〜W3に穿孔するパターンは、塗布対象に塗布するパターンに応じて、部分的である場合があり、また塗布対象によって異なる場合もある。各マスクW1〜W3は、その周縁が枠体12の一方側の面に固着されている。
【0015】
保持体11は、放熱板W1〜W3の表面に対して垂直方向に延在するウエブ13と、ウエブ13の両端に放熱板W1〜W3の表面と平行に延在するフランジ14、15とにより構成されている。各マスク10の枠体12は、両フランジ14、15の間でウエブ13に沿って移動することができ、かつ、その移動がフランジ14、15によって規制されるよう保持されており、これによりフローティング機構が構成されている。このような保持体11にマスク10の枠体12を組み付けるためには、図3に示すように、保持体11の一方のフランジ14を構成する板状の部材11Aと、他方のフランジ15とウエブ13を構成する部材11Bとに分割して成形し、互いに隣接するウエブ15、15の間に各マスク10の枠体12をそれぞれ嵌挿配置し、部材11Aのフランジ14と部材11Bのウエブ15の端面とを接着、溶着、あるいはボルトで締結するなど、接合することにより構成することができる。なお、本発明の保持体11は、各マスク10の枠体12を取り囲むようにして板材を屈曲成形して接合することにより、ウエブ13とフランジ14、15とを構成することもできる。なお、下方のフランジ15は、放熱板W1〜W3に干渉することなく、ハウジングHの上面に当接し得る幅に成形される。
【0016】
各放熱板W1〜W3に放熱性グリースを塗布するに際しては、各放熱板W1〜W3に対して各マスク10が対応するように保持体11をハウジング上に位置決め載置し、各マスク10上に放熱性グリースを載せてスキージより拡げる。ここで、放熱板W1〜W3は、その成形誤差などによって、高さが異なる場合がある。図4に示した実施の形態の場合、中央の放熱板W2の厚さが両側の放熱板W1、W3よりも高くなっている。しかしながら、本発明では、マスク10の枠体12が放熱板W1〜W3の高さに応じてウエブ13に沿って保持体に対して相対的に垂直方向に昇降移動可能に案内される。また、図12に示したように放熱板W1〜W3が変形したり、図13に示したようにハウジングHが変形して、放熱板W1〜W3が傾斜した状態で保持されたような場合であっても、各マスク10が保持体11に対してフランジ14、15の間で昇降したり傾斜するよう移動可能に支持されているために、放熱板W1〜W3の表面の変形や傾斜に応じてマスク10が昇降したり傾斜するよう移動する。そのため、互いに隣接する放熱板W1〜W3の高さの違いや変形あるいは傾斜などに影響されることなく、放熱板W1〜W3の上面にマスク10がそれぞれ密着することとなる。したがって、従来の技術のように放熱性グリースを塗布できなかったり所定のパターンの通りに塗布できない部分F(図11を参照)が生じることがなく、放熱板W1〜W3の上面に放熱性グリースをマスク10に穿孔されたパターン通りに確実かつ精度良く塗布することができる。
【0017】
ここで、塗布対象である放熱板W1〜W3に対して各マスク10を正確に位置決めする必要がある場合には、図5に部分拡大図で示すように、保持体11の下方のフランジ15を放熱板W1とW2、W2とW3の間隔にそれぞれ応じた幅に成形し、マスク10の枠体12を保持体11のウエブ13に摺動可能に接するように構成して、放熱板W1〜W3に対して保持体11が位置決めされ、この保持体11に対してマスク10の枠体12が位置決めされるように構成することができる。この場合においては、フランジ15を放熱板W1とW2、W2とW3の間に容易に挿入することができるようフランジ15の下方角隅部に傾斜面を形成することが望ましい。
また、図6に部分拡大図で示すように、マスク10の枠体12を放熱板W1〜W3に直接嵌合することにより、放熱板W1〜W3に対してマスク10が位置決めされるように構成することもできる。この場合においては、マスク10の枠体12を各放熱板W1〜W3に容易に嵌合することができるよう枠体12の下方内周角隅部に傾斜面を形成することが望ましい。また、保持体11の下方のフランジ15を放熱板W1とW2、W2とW3の間隔よりも狭い幅に成形し、マスク10の枠体12の外周が保持体11のウエブ13に接することがないようにして、保持体11が放熱板W1〜W3に対して僅かに遊びを有するように構成することができる。
【0018】
次に、上述した実施の形態の変形例を図7に基いて説明する。なお、ここでは、上述した実施の形態と同様の部分または相当する部分については、同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
図7は、ハウジングHに配列された放熱板W1とW2、W2とW3の間隔Kが上述した実施の形態よりも狭い場合を示した部分拡大断面図である。この実施の形態における保持体11’は、上述した実施の形態において放熱板W1とW2、W2とW3の間に位置するウエブ13がない代りに、両フランジ14、15の間にわたって延在する線条のガイド部材16が設けられており、マスク10の枠体12’にはガイド部材16を挿通するガイド孔17が形成されている。このような構成により、ガイド部材16がガイド孔17に挿通された枠体12’は、保持体11’に対して相対的に昇降したり傾斜するよう移動することができ、したがって、放熱板W1〜W3の高さの違いや変形あるいは傾斜などに応じてマスク10が移動することができる。そして、ガイド部材16によりマスク10の枠体12が昇降移動することができるよう構成したことにより、上述した実施の形態のように放熱板W1とW2、W2とW3の間に位置するウエブ13をなくすることができるため、互いに隣接するマスク10の枠体12を近付けることができ、したがって、ハウジングHに配列された放熱板W1とW2、W2とW3の間隔Kが狭い場合にも対応することができる。
【0019】
次に、本発明の塗布剤の塗布装置およびその塗布方法の別の実施の形態を、図8および図9に基いて詳細に説明する。この実施の形態を説明するに際しては、上述した実施の形態と同様の部分または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略する。
本発明の塗布剤の塗布装置2は、概略、複数の塗布対象W1〜W3の表面にマスク20を介してそれぞれ所定のパターンで塗布剤を塗布するためのものであって、マスク20が複数の塗布対象W1〜W3を覆い得るよう構成されており、このマスクは、塗布対象W1とW2、W2とW3の間と対応する部位24が、塗布対象W1〜W3と対応する部位23よりも剛性を低下させている。
また、本発明の塗布剤の塗布方法は、概略、複数の塗布対象W1〜W3の表面にマスク20を介してそれぞれ所定のパターンで塗布剤を塗布するためのものであって、複数の塗布対象W1〜W3を覆い得るようマスクを構成するとともに、このマスク20の、塗布対象W1WとW2、W2とW3の間と対応する部位24の剛性を、塗布対象W1〜W3と対応する部位23の剛性よりも低下させ、このマスク20を各塗布対象W1〜W3の表面上に配置して、前記剛性を低下させた部位24を少なくとも屈曲または延伸させることにより各塗布対象W1〜W3の表面に密着させて、マスク20を介して塗布剤を各塗布対象W1〜W3の表面に所定パターンで塗布するものである。
なお、この実施の形態においても、上述した実施の形態と同様に、塗布対象が半導体装置のハウジングHに配列保持される3つの放熱板W1〜W3であり、塗布剤が放熱性グリースである場合で説明する。
【0020】
マスク20は、各放熱板W1〜W3を覆い得る大きさに成形されており、単一の枠体22に固着されている。マスク20の、互いに隣接する放熱板W1とW2、W2とW3の間と対応する部位24はその剛性が低下されている。マスク20の剛性を部分的に低下させるための手法としては、図9の(a)に断面図で示すようにマスク20の板厚を減少させた部分24aを形成したり、図9の(b)に断面図で示すようにマスク20に波状あるいは蛇腹状の部分24bを屈曲成形したり、図9の(c)に平面図で示すように、開口部24cを複数穿設することなどにより達成することができる。
【0021】
各放熱板W1〜W3に放熱性グリースを塗布するに際しては、図8に示すように、全ての放熱板W1〜W3に対してマスク20が覆うように載置し、マスク20上に放熱性グリースを載せてスキージより拡げる。放熱板W1〜W3の高さが異なる(図8ではW2が高い)場合には、マスク20の剛性を低下された部分24が屈曲および/または延伸することにより、マスク20の塗布対象W1〜W3と対応する部位23が昇降移動して、各放熱板W1〜W3に密着することとなる。また、放熱板W1〜W3が変形したり傾斜するよう保持されている場合であっても、放熱板W1〜W3の表面に応じて、塗布対象W1〜W3と対応する部位23が傾斜移動して各放熱板W1〜W3に密着することとなる。そのため、互いに隣接する放熱板W1〜W3の高さの違いに影響されることなく、放熱板W1〜W3の上面にマスク20の対応する部分23が密着することとなる。したがって、従来の技術のように放熱性グリースを塗布できなかったり所定のパターンの通りに塗布できない部分F(図11を参照)が生じることがなく、各放熱板W1〜W3の上面に放熱性グリースをマスク20に穿孔されたパターン通りに確実かつ精度良く塗布することができる。なお、マスク20の剛性が低下された部分24が延伸した場合においては、特に図9の(b)に示したように蛇腹状などに成形することにより、放熱性グリースの塗布が完了して放熱板W1〜W3上からマスク20を除去したときに、かかる延伸した部分24が収縮復帰するよう構成することができる。
【0022】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されることはない。半導体装置のハウジングHに配列保持された放熱板以外の塗布対象に塗布剤を塗布する場合にも適用することができ、3つ以外の複数の塗布対象にも適用することができる。また塗布剤としては、放熱性グリース以外にクリーム半田など、ゲル状の流動性を有する他のものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の塗布剤の塗布装置の一実施の形態を説明するために概念的に示した断面図である。
【図2】図1の底面図である。
【図3】図1に示した塗布剤の塗布装置を組み立てるための構成を概念的に示した断面図である。
【図4】図1に示した塗布剤の塗布装置を、複数の塗布対象である放熱板を保持したハウジングに適用した場合を示す断面図である。
【図5】塗布対象に対してマスクを位置決めする必要がある場合の実施の一形態を示す部分拡大断面図である。
【図6】塗布対象に対してマスクを位置決めする必要がある場合の図5と異なる実施の一形態を示す部分拡大断面図である。
【図7】図1に示した本発明の塗布剤の塗布装置の変形例を説明するために示した部分拡大断面図である。
【図8】本発明の塗布剤の塗布装置の別の実施の形態を、複数の塗布対象である放熱板を保持したハウジングに載置した状態で説明するために示した断面図である。
【図9】図8に示した塗布剤の塗布装置のマスクの剛性を低下させるための構成の実施の形態を説明するために示した断面図(a)(b)および、平面図(c)である。
【図10】従来の塗布剤の塗布装置を、高さが異なる放熱板を保持したハウジングに載置した状態で説明するために示した断面図である。
【図11】図10に示した高さの異なる放熱板に対して塗布装置により塗布剤を塗布した状態を説明するために示した平面図である。
【図12】従来の塗布剤の塗布装置を、変形した放熱板を保持したハウジングに載置した状態で説明するために示した断面図である。
【図13】複数の放熱板を保持するためのハウジングが変形した状態で成形された状態を説明するために示した断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1:本発明の塗布装置、 10:マスク、 11:保持体、 2:本発明の塗布装置、 20:マスク、 23:マスクの塗布対象と対応する部位、 24:マスクの塗布対象の間と対応する部位(剛性低下部分)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の塗布対象の表面にマスクを介してそれぞれ所定のパターンで塗布剤を塗布するための塗布剤の塗布装置であって、
各塗布対象の表面に対してそれぞれマスクを移動可能に保持する保持体を有することを特徴とする塗布剤の塗布装置。
【請求項2】
複数の塗布対象の表面にマスクを介してそれぞれ所定のパターンで塗布剤を塗布するための塗布剤の塗布装置であって、
マスクが複数の塗布対象を覆い得るよう構成されており、
該マスクの、塗布対象の間と対応する部位の剛性を、塗布対象と対応する部位よりも低下させたことを特徴とする塗布剤の塗布装置。
【請求項3】
複数の塗布対象の表面にマスクを介してそれぞれ所定のパターンで塗布剤を塗布するための塗布剤の塗布方法であって、
塗布対象の表面に対してマスクをそれぞれ移動可能に保持して、各マスクを介して塗布剤を各塗布対象の表面に所定パターンで塗布することを特徴とする塗布剤の塗布方法。
【請求項4】
複数の塗布対象の表面にマスクを介してそれぞれ所定のパターンで塗布剤を塗布するための塗布剤の塗布方法であって、
複数の塗布対象を覆い得るよう構成されたマスクの、塗布対象の間と対応する部位の剛性を、塗布対象と対応する部位よりも低下させ、
該マスクを各塗布対象の表面上に配置して、前記剛性を低下させた部位を少なくとも屈曲または延伸させて各塗布対象の表面に密着させて、マスクを介して塗布剤を各塗布対象の表面に所定パターンで塗布することを特徴とする塗布剤の塗布方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−346562(P2006−346562A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175155(P2005−175155)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】